JP2004019497A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Kazuhiro Ichinomoto
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Abstract

【課題】機関始動時に迅速に進角室内に作動油を供給して進角状態を形成し、応答性のよいバルブタイミング制御を行う。
【解決手段】内燃機関のバルブタイミング制御において、作動ポンプからは、シリンダヘッドの作動油供給穴、カムシャフトの作動油導入穴、作動油通路という順で作動油が導入され、その作動油の液圧に応答してバルブタイミングが制御される。内燃機関が停止した状態では、停止位置制御手段により、カムシャフトの作動油導入穴とシリンダヘッドの作動油供給穴とが整合しない位置となるように、カムシャフトとシリンダヘッドとの相対位置が制御される。これにより、内燃機関が停止した状態で作動油通路内に作動油を残留させることができ、機関始動時に迅速にバルブタイミング制御を開始することが可能となる。
【選択図】   図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の運転状態に応じて機関バルブの開閉弁時期(バルブタイミング)を可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変更して、内燃機関の吸気バルブの開閉タイミングを調整するものが知られている。この種のバルブタイミング制御装置は、クランクシャフトと同期して回転するハウジングと、カムシャフトに結合されハウジングに対して相対的に回転可能なベーンと、油の流入によってその体積を広げてベーンのクランクシャフトに対する回転位相を進角させる進角室と、油の流入によってその体積を広げてベーンのクランクシャフトに対する回転位相を遅角させる遅角室とを備える。
【0003】
進角室及び遅角室は個々の液圧路を介して油圧制御弁に接続されている。油圧制御弁は、電子制御装置などの指令信号に基づいて動作し、オイルポンプから送られる作動油を進角室及び遅角室に供給し、また、作動油を進角室及び遅角室から排出する。ベーンは、その両側面に形成された進角室内と遅角室内の圧力の相対的関係により、ハウジングに対する相対的回転位相が所望の位相に調整される。それによりクランクシャフトに対するカムシャフトの相対的回転位相が変更され、機関のバルブタイミングが変更される。
【0004】
なお、機関始動時に液圧路内が低圧状態でのままハウジング内の内部ロータが回転し、ベーンが遅角室などの側壁と衝突して異音が生じることを防止するため、機関停止時にベーンを最遅角位置へロックするためのロック機構を設けることも知られている。そのようなバルブタイミング制御装置の一例が特開2000−230408号公報に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなバルブタイミング制御装置では、機関停止時にはオイルポンプの作動が停止されるため、液圧路内に導入されていた作動油が液圧路を通じてオイルパンへと抜けていく。通常は、機関停止時に液圧路内の作動油が抜けて液圧路内の圧力が低下すると、カムシャフトのフリクションによってベーンは最遅角位置に至ることになる。そして、機関停止後は進角室内の作動油は進角側液圧路を通じてオイルパンへと抜けていく。オイルパンから進角室に至る液圧路のうち、カムシャフトとシリンダヘッドの一部との接続部は、カムシャフトとシリンダヘッドのそれぞれにオイル穴が設けられ、両者が連通することにより作動油が移動するように構成されている。また、シリンダヘッドには、シリンダヘッド側のオイル穴を含むように、オイル溝が形成されている。よって、機関停止後には、進角室内の作動油が上記オイル穴及びオイル溝を通じてオイルパンへと抜けてしまう。
【0006】
このように、機関停止後に作動油が液圧路から抜けてしまうと、その後の機関始動時には、オイルポンプが動作して進角室に作動油が充填されるまではバルブタイミング制御が開始できず、応答が遅れるという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、機関始動時に迅速に進角室内に作動油を供給して進角状態を形成し、応答性のよいバルブタイミング制御を行うことが可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による内燃機関の制御装置は、内燃機関の回転に連動して作動する作動ポンプと、内部に形成された作動液通路と、前記作動液通路と通じるとともに外部へ開口する第1の作動液穴とを有する前記内燃機関の回転軸と、前記回転軸回転に伴って前記第1の作動液穴と周期的に整合する位置に形成されるとともに前記作動ポンプに通じる第2の作動液穴を有し、前記回転軸を回転可能に支持する回転軸支持体と、前記作動液通路に導入された作動液の液圧に応答して作動するアクチュエータと、前記内燃機関が停止した状態で、前記第1の作動液穴と前記第2の作動液穴とが整合しない位置となるように前記回転軸と前記回転軸支持体との相対位置を制御する停止位置制御手段と、を備える。
【0009】
上記の内燃機関の制御装置において、内燃機関の回転軸の内部には作動液通路が形成され、その作動液通路は第1の作動液穴により回転軸外部へ通じている。回転軸は回転軸支持体により回転可能に支持される。回転軸支持体は、回転軸に形成された第1の作動液穴と周期的に整合する位置に設けられた第2の作動液穴を有する。第2の作動液穴は、内燃機関の回転に連動して作動する作動ポンプに通じている。作動ポンプからは、回転軸支持体に設けられた第2の作動液穴、回転軸に設けられた第1の作動液穴、回転軸内部に設けられた作動液通路という順で作動液が導入され、その作動液の液圧に応答してアクチュエータが動作する。そして、内燃機関が停止した状態では、停止位置制御手段により、第1の作動液穴と第2の作動液穴とが整合しない位置となるように、回転軸と回転軸支持体との相対位置が制御される。これにより、内燃機関が停止した状態では、回転軸側の作動液通路内の作動液は回転軸支持体側へ流動しにくくなり、作動液通路内に作動液を残留させることができる。よって、その後に内燃機関を始動する際には、作動液通路内に作動液が残留しているので、迅速にアクチュエータを作動させることが可能となる。
【0010】
上記の内燃機関の制御装置の一態様では、前記回転軸支持体は、前記回転軸の第1作動液穴と対応する内周上に一部分を除いて形成された環状の溝を有し、前記停止位置制御手段は、前記第1の作動液通過穴が、前記溝が形成されていない一部分と整合するように前記回転軸と前記回転軸支持体との相対位置を制御する。
【0011】
この態様では、回転軸支持体側には、第1作動液穴が移動する内周上に、一部分を除いて環状の溝が形成されている。この溝は、内燃機関の動作中には、作動液を回転軸支持体側の第2の作動液穴から、回転軸の第1の作動液穴へ円滑に導入するための補助的役割を果たす一方、内燃機関が停止している状態では、環状の溝が形成されていない部分と、回転軸側の第1作動液穴とが整合するように回転軸と回転軸支持体との相対位置関係が制御される。よって、内燃機関の動作中は円滑に作動液を導入させることができるとともに、内燃機関が停止した状態では回転軸内の作動液通路から作動液が抜けることを効果的に防止することができる。
【0012】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記アクチュエータは、前記内燃機関のクランクシャフトと前記回転軸との相対的回転位相を変更することにより前記内燃機関のバルブ開閉特性を変更する機構とすることができる。この態様では、内燃機関の停止状態では、作動液を回転軸内の作動液通路に残留させることができるので、内燃機関の始動時には迅速にバルブ開閉制御を開始することができる。
【0013】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記停止位置制御手段は、前記クランクシャフトの回転位置を制御するモータ又はジェネレータにより構成することができる。この態様では、モータ又はジェネレータがクランクシャフトの回転位置を制御すると、それに応じて回転軸の回転位置が制御され、その結果、回転軸の第1の作動液穴と回転軸支持体の第2の作動液穴との位置制御が行われる。
【0014】
上記の内燃機関の制御装置の好適な実施例では、前記内燃機関はハイブリッド車両に搭載されるものであり、前記モータ又はジェネレータは、前記ハイブリッド車両に駆動力を付与し、又は、前記内燃機関の出力の一部を電気エネルギーに変換する。これによれば、ハイブリッド車両で使用されるモータ又はジェネレータにより、機関停止時に第1の作動液穴と第2の作動液穴との位置制御を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0016】
[車両]
まず、本発明の制御装置を適用した車両について簡単に説明する。図1に、本発明の制御装置を適用した車両100の構成を示す。図1に示すように、車両100は、エンジン60と、エンジン60から出力される動力により発電すると共にエンジン60を始動する際のセルモータとして駆動可能な発電用モータ69と、駆動輪174,176にディファレンシャルギヤ172を介して結合された駆動軸170を駆動する駆動用モータ150と、発電用モータ69を駆動する発電用モータ駆動回路142と、駆動用モータ150を駆動する駆動用モータ駆動回路152と、発電用モータ駆動回路142を介して発電用モータ69と電力の授受を行うと共に駆動用モータ駆動回路152を介して駆動用モータ150と電力の授受を行うバッテリ160と、エンジン60および両モータ69,150を駆動制御すると共にバルブタイミング制御装置10を制御する電子制御ユニット(以下、ECUという)50とを備える、いわゆるハイブリッド型の電気自動車である。ここで、本発明によるバルブタイミング制御装置10は、エンジン60に組み込まれた後述する位相変更機構11やECU50などにより構成される。
【0017】
ECU50は、CPU(図示せず)を中心としたマイクロコンピュータであり、制御プログラムを記憶したROMやワーク用のRAM、入出力ポートなどを備える。ECU50の入力ポートには、エンジン60の運転状態や発電用モータ69および駆動用モータ150の運転状態等を示す種々のセンサやこれらを運転するのに必要なセンサが接続されている。例えば、エンジン60の運転状態を検出するセンサとしては、エンジン60の負荷を検出する吸気圧センサ80、図示しないディストリビュータに設けられクランクシャフト68の回転数と回転角度を検出する回転数センサ81およびクランク角センサ82、吸気側カムシャフト11の回転角度を検出するカム角センサ83、エンジン60の水温を検出する水温センサ84などが接続されている。また、発電用モータ69および駆動用モータ150の運転状態を検出するセンサとしては、発電用モータ駆動回路142を介して発電用モータ69に流される三相の電流を検出する電流計144や駆動用モータ駆動回路152を介して駆動用モータ150に流される三相の電流を検出する電流計154などが接続されている。このほか、ECU50には、例えば、イグニッションキーの状態を検出するイグニッションスイッチ85や時間を計測するタイマ86、アクセルペダル163の踏込量を検出するアクセルペダルポジションセンサ164、ブレーキペダル165の踏込量を検出するブレーキペダルポジションセンサ166、バッテリ160の残容量BRMを検出する残容量計162、図示しないスロットルバルブの開度(ポジション)を検出するスロットルバルブポジションセンサなども接続されているが、その他のセンサ,スイッチなどの図示は省略する。また、ECU50の出力ポートには、発電用モータ駆動回路142や駆動用モータ駆動回路152、図示しないイグナイタや燃料噴射弁やスロットルバルブアクチュエータ等が接続されている。
【0018】
このように構成された車両100において、ECU50は、アクセルペダルポジションセンサ164やブレーキペダルポジションセンサ166により検出されたアクセルペダル163やブレーキペダル165の踏込量に応じたトルクを駆動用モータ150から出力するよう駆動用モータ駆動回路152を制御すると共に、残容量計162により検出されるバッテリ160の残容量BRMが所定範囲内となるようエンジン60を間欠運転制御する。
【0019】
[バルブタイミング制御装置]
次に、上記の車両100に組み込まれるバルブタイミング制御装置10について説明する。図2は、エンジン60におけるカムシャフトとクランクシャフトの同期機構を示す。図3は本実施形態のバルブタイミング制御装置10の可変バルブタイミング機構の側部断面構造と、同制御装置の油圧回路構造とを併せて示している。また、図4は、上記可変バルブタイミング機構の正面図を示している。
【0020】
吸気側カムシャフト11は、図3に示すように、エンジン60のシリンダヘッド23の上端面とカムキャップ24により回転可能に軸支されており、吸気側カムシャフト11には図2に示すように外周部に2つで1対をなす4対のカム70が形成されている。各カム70には、エンジン60の気筒毎に設けられた吸気バルブ62の上端部が当接されており、吸気側カムシャフト11と共にカム70が回転することにより吸気バルブ62が開閉するようになっている。
【0021】
吸気側カムシャフト11のシリンダヘッド23およびカムキャップ24により軸支された部分より先端側(図2の左側)には、図3に示すようにカムスプロケット15が取り付けられている。排気側カムシャフト73には、吸気側カムシャフト11と同様に、2つで1対をなす4対のカム75が形成されており、各カム75には、エンジン60の気筒毎に設けられた排気バルブ64の上端部が当接されている。この結果、排気側カムシャフト73と共にカム75が回転することにより排気バルブ64が開閉駆動する。
【0022】
カムスプロケット15及び74は、図2に示すように、クランクシャフト68の端部に取り付けられたクランクスプロケット68Aにタイミングチェーン77によって掛装されている。こうして、クランクシャフト68と吸気側カムシャフト11とが同期回転される。
【0023】
次に、バルブタイミング制御装置10の詳細について、図3及び図4を参照して説明する。図3に示すように、回転に伴い吸気バルブ62を開閉駆動するカムシャフト11は、シリンダヘッド23の上端部及びカムキャップ24によって回転可能に支持されている。このカムシャフト11の先端には、内部ロータ12がセンタボルト14によって、一体となって回転するように固定されている。
【0024】
カムシャフト11の先端部には、図2に示すように機関出力軸であるクランクシャフト68と駆動連結され、これと同期して回転するカムスプロケット15がカムシャフト11に対して相対回転可能に装着されている。このカムスプロケット15には、ハウジング16及びカバー17が取付ボルト18によって一体となって回転するように取り付けられている。ハウジング16は円環形状をなしており、その内周部に上記内部ロータ12を内包するように設けられている。また、カバー17は、これらハウジング16及び内部ロータ12の先端面を覆っている。
【0025】
一方、図4に示すように、内部ロータ12の外周には、複数の(ここでは4つの)ベーン13が設けられている。このベーン13は、ハウジング16の内周にその周方向に沿って形成された溝状の凹部19内に収容されている。この凹部19は、ベーン13によって2つの圧力室21,22に区画されている。なお以下では、これら圧力室21,22のうち、ベーン13から見てカムシャフト11の回転方向(図4では時計回り方向側)に形成される圧力室22を「遅角側圧力室」、またその反対側に形成される圧力室21を「進角側圧力室」という。
【0026】
内部ロータ12の各ベーン13の先端及びハウジング16の凹部19同士を区画する凸状の部分20の先端には、シール部材28が装着されている。このシール部材28は、図3に示すように、板ばね29によって上記各凹部19の内壁面及び内部ロータ12の外周面にそれぞれ圧接されている。そのため、このシール部材28によって、上記進角側圧力室21及び遅角側圧力室22の間がシールされる。また、こうして進角側圧力室21及び遅角側圧力室22の間がシールされることで、これら両圧力室21,22内に作動油が充填された状態では、それら作動油を介して内部ロータ12とハウジング16とが連結され、ハウジング16に固定されたカムスプロケット15の回転がカムシャフト11へと伝達されるようになる。
【0027】
このバルブタイミング制御装置では、これら圧力室21,22内の作動油の圧力によって内部ロータ12をハウジング16に対して相対回動させるようにしている。すなわち、進角側圧力室21内の圧力を遅角側圧力室22内の圧力に対して高くした場合、内部ロータ12はハウジング16に対してカムシャフト11の回転方向に相対回動される。このとき、内部ロータ12に固定されたカムシャフト11の回転位相は、ハウジング16に固定されたカムスプロケット15と同期回転するクランクシャフトの回転位相に対して進角されるようになる。
【0028】
一方、遅角側圧力室22内の圧力を進角側圧力室21内の圧力に対して高くした場合、内部ロータ12はハウジング16に対してカムシャフト11の回転方向と逆方向に相対回動され、カムシャフト11の回転位相はクランクシャフトの回転位相に対して遅角されるようになる。
【0029】
なお、このバルブタイミング制御装置では、内部ロータ12は、ベーン13が凹部19の一方の側壁に当接する位相から凹部19の反対側の側壁に当接する位相までの範囲で相対回動できるようになっている。すなわち、この相対回動可能な位相の範囲が、このバルブタイミング制御装置における回動位相の制御範囲となる。以下では、内部ロータ12が最も遅角方向(カムシャフト11の回転方向とは逆方向)に相対回動したときの位置、すなわち上記制御範囲の遅角側の最大制御位置を「最遅角位置」といい、最も進角方向(カムシャフト11の回転方向)に相対回動したときの位置、すなわち上記制御範囲の進角側の最大制御位置を「最進角位置」という。
【0030】
このようにバルブタイミング制御装置10では、上記各圧力室21,22内の圧力制御に基づき、内部ロータ12を上記「最遅角位置」から「最進角位置」までの範囲で相対回動させている。そしてこの相対回動によって、クランクシャフトに対するカムシャフト11の相対回転位相を変更し、カムシャフト11の回転に伴い開閉駆動される機関バルブの開閉弁時期(バルブタイミング)を可変としている。
【0031】
また、バルブタイミング制御装置10では、機関始動時などの圧力低下時に、内部ロータ12の相対回動を規制するようにロック機構が設けられている。
【0032】
図3及び図4に示すように、ベーン13の一つには、カムシャフト11の軸方向と平行に延びる段付きの収容孔30が形成されており、この収容孔30の内部の空間には、ロックピン31が往復摺動可能に配設されている。
【0033】
このロックピン31は、図3にその断面構造を示すように、外周面が上記収容孔30の内周面に摺接した状態でカムシャフト11の軸方向に移動するようになっている。また、ロックピン31はコイルばね33によってカムスプロケット15側に向けて付勢されている。カムスプロケット15には、内部ロータ12が上記最遅角位置に位置するときに、上記ロックピン31が挿入可能なロック穴32が形成されている。ロックピン31がコイルばね33の付勢力によってこのロック穴32内に挿入されることで、内部ロータ12はカムスプロケット15に機械的に締結され、その相対回動が規制(ロック)されるようになる。一方、進角側圧力室21及び遅角側圧力室22の一方若しくは両方の圧力が十分に高まると、ロックピン31は収容孔30から離脱する方向に移動して、上記相対回動の規制(ロック)が解除される。
【0034】
このように、バルブタイミング制御装置10は、機関始動直後の圧力低下時には内部ロータ12の相対回動を最遅角位置で規制(ロック)し、オイルポンプ41が十分な作動油を供給できるようになると直ちに上記相対回動の規制を解除して、バルブタイミング制御を行えるようにしている。
【0035】
続いて、進角側及び遅角側圧力室21,22内の作動油の圧力を調整するための油圧回路構成について、図3に基づき説明する。
【0036】
図3に示すように、進角側圧力室21及び遅角側圧力室22は、カムシャフト11の内部やシリンダヘッド23の内部などに形成された進角側油通路45及び遅角側油通路44を通じて、それぞれ油圧制御弁42に接続されている。この油圧制御弁42には、オイルポンプ41によってオイルパン40から吸引吐出された潤滑油の一部が可変バルブタイミング機構の作動油として給油通路46を通じて供給されるようになっている。更にこの油圧制御弁42からは、同油圧制御弁42に接続されたドレイン通路47を通じてオイルパン40へと作動油を還流するようになっている。
【0037】
油圧制御弁42は、電子制御装置50のデューティ制御に基づき作動し、進角側油通路45及び遅角側油通路44に対して給油通路46及びドレイン通路47のいずれかを連結する。こうして進角側油通路45及び遅角側油通路44に作動油を供給する、あるいはこれら油通路44,45から作動油を排出することによって、油圧制御弁42は上記進角側圧力室21及び遅角側圧力室22内の圧力を調整している。
【0038】
次に、機関停止時に作動油が圧力室から抜ける量を減らすための機構について説明する。本発明では、以下の方法により、機関停止時に圧力室からオイルパン40へと抜ける作動油の量を減らして、機関停止時においてもある程度の量の作動油が進角側油通路45内に残るようにする。これにより、その後の機関始動時における応答性を改善する。
【0039】
図5(a)に、シリンダヘッド23とカムキャップ24によりカムシャフト11を支持している部分の断面、具体的には図3の切断線A−A’における断面を示す(但し、図3に示すタイミングとは異なるタイミングの状態を示している)。図3及び図5(a)に示すように、シリンダヘッド23とカムキャップ24の間にカムシャフト11が回転可能に保持されている。カムシャフト11には、その中心に進角側油通路45が形成されるとともに、中心から円周側へずれた位置に遅角側油通路44が形成されている。進角側油通路45は、カムシャフト11内を半径方向に延びて外部まで貫通した油導入穴96に接続されている。
【0040】
シリンダヘッド23とカムキャップ24には、カムシャフト11を保持するその内周面上に環状の油通路91a及び91bがそれぞれ形成されている。即ち、カムキャップ24には半円周に相当する油通路91aが形成され、シリンダヘッド23には半円周に相当する油通路91bが形成されている。油通路91a及び91bを図5(a)の上方から見た様子を図5(b)に示す。なお説明の便宜上、油導入穴96及び油供給穴92の開口位置も図示している。図5(b)に示すように、油通路91a及び91bは所定の幅を有し、その中を作動油が移動することができる。
【0041】
機関動作中は、作動油はオイルポンプ41から、給油通路46、油圧制御弁42、進角側油通路45、シリンダヘッドの油供給穴92を通って油通路91a、91b内に供給され、さらにカムシャフト11の油導入穴96を通ってカムシャフト11内部の進角側油通路45内に導入される。機関動作中は、シリンダヘッド23及びカムキャップ24に対してカムシャフト11は相対的に回転するが、図5(a)に示すようにカムシャフト11の外周には油通路91a、91bが形成されているため、油通路91a及び91bを介して作動油は進角側油通路45内に導入される。そして、進角側圧力室21及び遅角側圧力室22内の作動油量に応じてバルブタイミング制御が実行される。
【0042】
そして、機関が停止すると、オイルポンプ41からの作動油の供給が停止し、進角側圧力室21内の作動油は、進角側油通路45、カムシャフト11の油導入穴96、シリンダヘッド23の油供給穴92を通じてオイルパン40へと移動を開始する。その際、本発明では、カムシャフト11の油導入穴96とシリンダヘッド23の油供給穴92とが整合しない位置となるように、エンジン60を停止する。これにより、図5(a)に示すように、カムシャフト11の油導入穴96の位置とシリンダヘッド23の油供給穴92の位置とずれるので、機関停止時に進角側圧力室21からの作動油がオイルパン40の方へ抜けていきにくくなる。機関停止時には前述のようにベーン13は最遅角位置でロックされるため、進角側圧力室21内には作動油はあまり残留しないが、カムシャフト11の油導入穴96とシリンダヘッド23の油供給穴92を相互に整合しない配置とすることにより、シリンダヘッド23側へ抜ける作動油の量は減少し、より多量の作動油をカムシャフト11内の進角側油通路45内に残留させることができる。
【0043】
なお、図5(a)に示すように、カムシャフト11の油導入穴96とシリンダヘッド23の油供給穴92とが整合しない位置でエンジンを停止させたとしても、カムシャフト11の外周に形成されている油通路91a、91bを通じて作動油はオイルパン40方向へ抜けていくことが可能であるが、カムキャップ11及びシリンダヘッド23と、カムシャフト11との間の間隔(即ち、油通路91a、91bの断面積)はそれほど大きくはないため、そこから作動油が抜けていく速度及び最終的に抜ける量はそれほど大きくはない。よって、油導入穴96と油供給穴92が整合しない位置で機関を停止することにより、機関停止後にカムシャフト11内の進角側油通路45内に残留する作動油量を増加させることができる。こうすれば、次の機関始動時には、進角側油通路45内にある程度の量の作動油が残っている状態で機関を始動するので、カムシャフト11の回転位相を迅速に進角させることができる。
【0044】
また、カムキャップ24及びシリンダヘッド23と、カムシャフト11との間に形成される油通路91a、91bの溝の幅を小さくすることにより、さらに機関停止後に進角側油通路45から作動油を抜けにくくすることができる。即ち、図5(b)に示す油通路91a、91bの幅に比べ、図5(c)に示すように油通路91a、91bの幅を狭めることにより、機関停止後に進角側油通路45から抜ける作動油量はより少なくなる。また、油通路91a、91bの幅を狭くする代わりに、深さを浅くすることにより、油通路91a、91bの断面積を小さくしても、同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、機関停止時に作動油をさらに抜けにくくする方法としては、図5(d)に示すように、シリンダヘッド23に形成された油通路91bの一部に凸部95を形成して油通路を遮断することができる。凸部95は油通路91bが形成されていない部分とすることができる。即ち、環状の油通路91bは凸部95の部分でのみ不連続となる。そして、機関停止時には、カムシャフト11の油導入穴96が、油通路91bの凸部95と整合するように機関を停止する。この方法によれば、カムシャフト11の油導入穴96は、シリンダヘッド23に設けられた、油通路91bの凸部95により封止された状態となるので、進角側油通路45から作動油が抜けることを効果的に防止できる。
【0046】
なお、油通路91bの凸部95は、図5(d)に示すように、一旦形成された油通路91bの一部を他の部材により埋めるようにして構成することもできるし、シリンダヘッド23に油通路91bを形成する際に、その部分を除いて油通路91bを形成してもよい。
【0047】
また、この際の凸部95のカムシャフト11の周方向における長さは、最低でもカムシャフト11の油導入穴96の周方向長さ以上である必要がある。また、実際には、機関停止時のカムシャフト11の回転位置はクランクシャフト68を回転させるモータ69により制御される。よって、凸部95の周方向長さは、カムシャフト11の油導入穴96の周方向長さに、クランクシャフトを回転制御するモータ69の回転誤差分のマージンを加えた長さとすることが好ましい。この場合のマージンは、モータ69の最小単位回転角以上となる。
【0048】
なお、上記のように、シリンダヘッド23の油通路91bに凸部95を形成すると、機関動作中にカムシャフト11が回転する間に、カムシャフト11の油導入穴96が凸部95と周期的に整合して、作動油が進角側油通路45内へ導入されないタイミングが生じることになるが、そのタイミングは時間的には一瞬であるので、凸部95を設けたことにより、機関動作中における作動油の進角側油通路45内への導入の際に作動油の脈動が生じる恐れはない。
【0049】
[エンジン停止処理]
次に、本実施形態のバルブタイミング制御装置10によるエンジン停止処理について図6を参照して説明する。図6は、エンジン停止処理を示すフローチャートである。なお、この制御は、主としてECU50が各種センサからの出力信号などに基づいて実行する。
【0050】
まず、ECU50は、エンジンを停止すべき状態となったか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、ECU50は、バッテリ160の残容量BRMが所定の基準量を超えた場合(即ち、充電量が十分である場合)に、エンジンを停止すべき状態であると判定する。また、ECU50は、イグニッションスイッチ85からの出力信号に基づいて、運転者がイグニッションキーをオフとしたことをイグニッションスイッチ85が検出したときや、車両が一時的に停止したときにエンジンを停止すべき状態であると判定する。
【0051】
エンジンを停止すべき状態であると判定されると、ECU50はエンジン60の回転を徐々に低下させ(ステップS2)、回転数センサ81により検出されるクランクシャフト68の回転数、即ちエンジン60の回転数を読み込み、エンジンが停止したか否かを判定する(ステップS3)。エンジンが停止したと判定すると、ECU50は、クランク角センサ82とカム角センサ83とにより検出されるクランクシャフト68の回転角に基づいて、クランクシャフト68が所定の停止位置となるように、発電用モータ69を制御する(ステップS4)。ここで、クランクシャフト68の所定の停止位置とは、図5(a)を参照して説明したように、カムシャフト11の油導入穴96がシリンダヘッド23の油供給穴92と整合しない位置であり、クランクシャフト68とカムシャフト11との相対回転位相関係に基づいて予め決定される。一方、図5(d)の例では、クランクシャフトの所定位置は、カムシャフト11の油導入穴96が、シリンダヘッド23に設けられた凸部95と整合する位置である。こうして、カムシャフト11の油導入穴96が、シリンダヘッド23の油供給穴92と整合しない位置にある状態でエンジンが停止される。よって、エンジン停止後に進角側油通路45から、シリンダヘッド23を通じてオイルパンへ抜ける作動油量を減少させ、進角側油通路45内に残留する作動油量を増加させることができる。
【0052】
なお、上記実施形態のバルブタイミング制御装置10では、エンジン停止時にベーン13の位置が最遅角側にロックされるため、進角側圧力室21内にはそれほど多量の作動油が残ることはない。しかし、エンジン停止時にベーンが最遅角側にロックされないタイプのバルブタイミング制御装置などで、エンジン停止時に進角側圧力室内にスペースが確保されるものの場合には、上述のようにエンジン停止時にカムシャフトとシリンダヘッド間の作動油の抜けを抑制することにより、進角側圧力室内に多量の作動油を残留させることができる。よって、エンジン再始動時に直ちにベーンを進角状態とすることができ、応答をより迅速化することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、バルブタイミング制御装置において、カムシャフト側の作動油穴とシリンダヘッド側の作動油穴とが整合しない位置でエンジンを停止させるので、エンジン停止後に圧力室や油通路内に作動油を残留させることができる。よって、次回のエンジン始動時に圧力室内に作動油を迅速に供給して、始動の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したバルブタイミング制御装置を備える車両の概略構成図である。
【図2】図1に示すエンジンにおけるカムシャフト及びクランクシャフトの連結機構を示す。
【図3】本発明を適用したバルブタイミング制御装置の構造を示す側部断面図である。
【図4】本発明を適用したバルブタイミング制御装置の構造を示す正面図である。
【図5】カムシャフトとシリンダヘッド間の油通路の位置関係を示す図である。
【図6】本発明によるエンジン停止処理のフローチャートである。
【符号の説明】
10 バルブタイミング制御装置
11 カムシャフト
12 内部ロータ
13 ベーン
21 進角側圧力室
22 遅角側圧力室
23 シリンダヘッド
40 オイルパン
41 オイルポンプ
50 ECU
60 エンジン
69 発電用モータ
160 バッテリ

Claims (5)

  1. 内燃機関の回転に連動して作動する作動ポンプと、
    内部に形成された作動液通路と、前記作動液通路と通じるとともに外部へ開口する第1の作動液穴とを有する前記内燃機関の回転軸と、
    前記回転軸回転に伴って前記第1の作動液穴と周期的に整合する位置に形成されるとともに前記作動ポンプに通じる第2の作動液穴を有し、前記回転軸を回転可能に支持する回転軸支持体と、
    前記作動液通路に導入された作動液の液圧に応答して作動するアクチュエータと、
    前記内燃機関が停止した状態で、前記第1の作動液穴と前記第2の作動液穴とが整合しない位置となるように前記回転軸と前記回転軸支持体との相対位置を制御する停止位置制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記回転軸支持体は、前記回転軸の第1作動液穴と対応する内周上に一部分を除いて形成された環状の溝を有し、前記停止位置制御手段は、前記第1の作動液通過穴が、前記溝が形成されていない一部分と整合するように前記回転軸と前記回転軸支持体との相対位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記アクチュエータは、前記内燃機関のクランクシャフトと前記回転軸との相対的回転位相を変更することにより前記内燃機関のバルブ開閉特性を変更する機構であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記停止位置制御手段は、前記クランクシャフトの回転位置を制御するモータ又はジェネレータにより構成されることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記内燃機関はハイブリッド車両に搭載されるものであり、前記モータ又はジェネレータは、前記ハイブリッド車両に駆動力を付与し、又は、前記内燃機関の出力の一部を電気エネルギーに変換することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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