JP2004018902A - 防錆用コート剤及び積層金属材料 - Google Patents

防錆用コート剤及び積層金属材料 Download PDF

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Yoshito Shiba
志波 賢人
Masashi Okamoto
岡本 昌司
Akifumi Yamada
山田 昌文
Arihiro Anada
穴田 有弘
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Abstract

【課題】クロムを含まず、短時間の熱処理で優れた防錆性、硬度、耐溶剤を発現する防錆用コート剤を提供する。
【解決手段】分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が少なくとも1個ずつ結合されている化合物(B)、化合物(B)中のカルボキシル基に対して0.1〜50モル%の塩基性化合物(C)、及び水系溶媒(D)を含有し、化合物(A)と化合物(B)の質量比が95/5〜10/90であることを特徴とする防錆用コート剤。また、この防錆用コート剤から水系溶媒(D)を除去してなる被膜を金属材料の表面に設けてなり、この被膜の、60℃の熱水に30分間浸漬した場合の質量減少量が5%以下である積層金属材料。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄塗りで優れた防錆性、硬度、耐溶剤性を発現する防錆コート剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼板の防錆性を一層高めるために、6価クロムを用いたクロメート処理が採用されてきている。このクロメート処理により亜鉛メッキ材料の防錆性は向上するが、有害な6価クロムによる作業環境や設置場所のクロム汚染の問題が、指摘されており、クロムを使用しない、いわゆるノンクロメート防錆処理剤の開発が急務となっている。
【0003】
ノンクロメート防錆処理剤として、ポリビニルアルコールを用いる試みがなされている。ポリビニルアルコールは、食品包装用の紙加工やフィルムのコーティングにも使用されており、従来の防錆剤に比べて環境汚染の恐れは非常に少ない。
ポリビニルアルコールを用いた防錆処理剤として、特開昭55−8406号公報には金属鋼板をポリビニルアルコール水溶液に浸漬することで防錆効果が向上することが開示されている。しかしながら、ポリビニルアルコールは非常に親水性の高い樹脂であるために、単独で鋼板に塗装しても、被膜厚みが薄い場合には防錆効果を発現させるのは困難であり、特に塩水噴霧等の過酷な条件下では防錆効果は殆ど認められない。
また、特開平61−254676号公報、特開平62−57471号公報、特開平62−57472号公報には、ポリビニルアルコールと低分子化合物からなる防錆塗料が開示されているが、これらの場合も塗装厚みが薄いと防錆効果を発現するのは困難であり、特に塩水噴霧等の過酷な条件下では防錆効果は殆ど認められない。
【0004】
特開平9−118875号公報には、化成処理した鋼板をポリビニルアルコールやセルロース系の高分子化合物とポリアクリル酸塩を含む処理液に浸漬した後、水洗い及び乾燥する撥水処理方法が開示されている。しかしながら、この場合の防錆性の向上は化成処理に依るところが大部分である。実際に、化成処理していない鋼板では、特開平9−118875号公報記載の撥水処理方法を用いても防錆効果を発現するのは困難であり、塩水噴霧等の過酷な条件下では防錆効果は殆ど認められない。これは、特開平9−118875号公報記載の撥水処理方法では乾燥温度が40〜60℃と低いためにポリマー間で殆ど架橋反応は起こっておらず、耐水性、防錆性を有する被膜が得られていないためである。
【0005】
また、特開2002−86059号公報には、ポリビニルアルコールとポリカルボン酸との混合物を金属材料にコートし、熱処理することで優れた防錆性を発現することが開示されている。しかし、この場合、優れた防錆性を発現させるために高温で長時間の熱処理を必要とし、生産性を考えると熱処理時間の短縮が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記のような問題に対して、生産性が高く、クロムを使用せず、しかも薄塗りで優れた防錆性、硬度、耐溶剤性を発現する防錆用コート剤を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の樹脂組成物を含有するコート液から得られる層を金属材料の表面に積層することにより、短時間の熱処理で優れた防錆性、硬度、耐溶剤性を発現することを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が少なくとも1個ずつ結合されている化合物(B)、化合物(B)中のカルボキシル基に対して0.1〜50モル%の塩基性化合物(C)、及び水系溶媒(D)を含有し、化合物(A)と化合物(B)の質量比が95/5〜10/90であることを特徴とする防錆用コート剤。
(2)化合物(A)がケン化度85〜100%のポリビニルアルコールである上記(1)の防錆用コート剤。
(3)化合物(B)が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸である上記(1)または(2)の防錆用コート剤。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの防錆用コート剤に対し、(A)〜(C)成分の総量100質量部あたり、さらに架橋剤成分を0.1〜50質量部含有することを特徴とする防錆用コート剤。
(5)(1)〜(4)のいずれかの防錆用コート剤に対し、(A)〜(C)成分の総量100質量部あたり、さらにシリカまたはリン酸塩化合物を5〜100質量部含有することを特徴とする防錆用コート剤。
(6)上記(1)〜(5)いずれかの防錆用コート剤から水系溶媒(D)を除去してなる被膜を金属材料の表面に設けてなり、この被膜の、60℃の熱水に30分間浸漬した場合の質量減少量が5%以下である積層金属材料。
(7)金属材料が亜鉛めっき鋼である(6)の積層金属材料。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の防錆コート剤において、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が少なくとも1個ずつ結合されている化合物(B)との質量比は、95/5〜10/90である必要があり、防錆性の点からこれらの質量比が85/15〜10/90であることが好ましく、75/25〜15/85であることがより好ましく、短時間の熱処理で各種性能を発現させる上で70/30〜15/85であることがさらに好ましく、65/35〜20/80であることが特に好ましい。この範囲を外れる場合には、防錆性が低下し、特に塩水噴霧下等の過酷な条件下での防錆性を発現することが困難である。
【0010】
[化合物(A)]
本発明における分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)としては高分子、オリゴマー、低分子化合物の何れでもよい。高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレートや、これらの共重合体、糖類、あるいは水酸基変成された各種高分子化合物や、ポリエチレングリコールのように両末端が水酸基である高分子化合物などが挙げられる。オリゴマーとしては例えばオリゴ糖や上記高分子化合物における分子鎖の短いものが挙げられる。低分子化合物としては例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、単糖類、糖アルコールなど、さらには芳香族化合物としてカテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン)、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)などが挙げられる。これらの化合物の中でも特にポリビニルアルコールが防錆性、耐溶剤性の点で最も好ましい。
【0011】
ポリビニルアルコールはビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化するなどの公知の方法で得ることが出来る。ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に好ましい。
【0012】
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0013】
なお、ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。
ケン化度は100%に近いほど防錆性の観点からは好ましい。ケン化度が低すぎると防錆性が低下してくる。ケン化度は通常約90%以上、好ましくは95%以上で、平均重合度は200〜3000、好ましくは200〜2500、より好ましくは200〜2000のものがよい。
【0014】
[化合物(B)]
分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が少なくとも1個ずつ結合されている化合物(B)とは、分子内に下記構造式(1)で表される構造を含む化合物のことである。
【0015】
【化1】
Figure 2004018902
【0016】
ここでRは原子または原子団を表し、全て同じでも、全て異なっていてもよく、またいくつかは同じ原子または原子団であってもよい。Rとしてはたとえば水素や、塩素や臭素といったハロゲン原子のほか、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エステル基、フェニル基等でもよく、メチル基やエチル基など炭素数1〜30のアルキル基でもよい。また、化合物(B)は環状になっていてもよく、芳香環であってもよい。そのような場合には構造式(1)におけるRの数が少なくなることもある。
【0017】
さらに、化合物(B)のカルボキシル基のうち、2つのカルボキシル基の間で作られる無水物構造を少なくとも1つ有する化合物も本発明においては構造式(1)で表される化合物と同様の効果を発現する。このような化合物としては高分子、オリゴマー、低分子化合物の何れでもよいが、コート剤としては粘度が低い方が取り扱いやすいので、なかでも数平均分子量が10,000未満であるオリゴマー、低分子化合物が好ましく、低分子化合物が特に好ましい。
【0018】
低分子化合物を用いればさらに粘度が低く取り扱いやすいので、より好ましく用いられる。その様な化合物としては1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、あるいはこれら化合物の無水物などが挙げられるが、特に1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が化合物(A)との反応性の点で好ましい。
【0019】
本発明で好ましく用いられる1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸は部分的にエステル化もしくはアミド化されていてもよい。なお、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸中のカルボキシル基は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してカルボン酸構造となるが、本発明ではこれら閉環、開環を区別せず1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸として記述する。
【0020】
[塩基性化合物(C)]
本発明では、特定量の塩基性化合物(C)で化合物(B)中のカルボキシル基が部分的に中和されていることがきわめて重要である。適当な分量の塩基性化合物を添加することで、得られる被膜の防錆性能自体も格段に高められる。適切な塩基性化合物の量は、化合物(B)の種類によって異なるが、化合物(B)中のカルボキシル基に対して0.1〜50モル%添加する必要がある。塩基性化合物の添加量が0.1モル%未満であったり、50モル%以上であったりした場合は、十分な防錆効果が得られない。好ましくは1〜40モル%、より好ましくは2〜30モル%、さらに好ましくは3〜25モル%の範囲がよい。
【0021】
本発明に用いられる塩基性化合物は、カルボキシル基を中和できるものであればよい。例えば、LiOH、KOH、NaOH、Ca(OH)等の金属水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の有機アミンを挙げることができる。
【0022】
[水系溶媒(D)]
本発明で用いる水系溶媒(D)としては水が最も好ましい。また水性化の改善や乾燥工程の短縮、コート剤の安定性の改善あるいは、鋼板にコートするときのぬれ性を改善する目的で水に対してアルコールや有機溶媒を少量添加することも可能である。
【0023】
[架橋剤]
また、本発明において、防錆性を一層向上させるために、コート剤中の(A)〜(C)の総量100質量部に対して架橋剤を0.1〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部添加することが好ましい。架橋剤の添加量が0.1質量部未満の場合は、防錆性を向上の程度が小さく、50質量部を超える場合は、液安定性や防錆性が低下する恐れがある。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤でも良く、水酸基やカルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物または多価の配位座を持つ金属錯体等でも良い。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用しても良い。
【0024】
[シリカまたはリン酸塩化合物]
本発明において、防錆性を一層向上させるために、水性分散体にシリカまたはリン酸塩化合物を含有させることが好ましく、この両方を用いることもできる。シリカおよび/またはリン酸塩化合物の添加量は、コート剤中の(A)〜(C)の総量100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、5〜80質量部がより好ましく、7〜70質量部がさらに好ましく、8〜60質量部が特に好ましい。添加量が5質量部未満の場合は、防錆性の向上効果の程度が小さく、また、添加量が100質量部を超えると金属材料への密着性が低下してしまう。
【0025】
シリカとしては、分散性の点から、コロイダルシリカを用いるのが好ましい。2種類以上のシリカを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0026】
リン酸塩化合物としては、金属のリン酸塩化合物が好ましく、中でも、防錆性の面から、多価金属のリン酸塩化合物が特に好ましく、例えば、リン酸亜鉛あるいはリン酸アルミニウム等を挙げることができる。なお、ここでいうリン酸塩とは、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩等を含んだ広義のリン酸塩を意味し、これらのいずれのリン酸塩構造をとっていてもよい。
【0027】
リン酸塩化合物を用いる場合には、その分散性を向上させるために、リン酸塩化合物を添加したコート剤をホモジナイザー処理、ボールミル処理、ペイントシェーカー処理、或いはジェット粉砕処理等の高圧分散処理を行うことが好ましい。
【0028】
[積層金属材料]
本発明の防錆用コート剤から形成される被膜を金属材料の表面に形成させることで、積層金属材料が得られる。
【0029】
金属材料は特に限定されないが、亜鉛めっき鋼、銅材料、あるいはアルミニウム材料に用いると、防錆効果が高く、好ましく、亜鉛めっき鋼を用いることが特に好ましい。亜鉛めっき鋼のめっき方法としては、電気めっき法や溶融めっき法などが挙げられるが、いずれの方法を用いたものでもよい。また、亜鉛めっき鋼の表面は化成処理されていてもよい。化成処理方法としては、環境を配慮するとクロムを含まない化成液で処理されたものが好ましいが、クロメート処理を施した亜鉛めっき鋼に使用しても防錆性を発揮することができる。亜鉛めっき鋼は、板状で使用される形態が代表的である。
【0030】
コート剤を金属材料に積層(塗装)する方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等の方法を用いることができる。
【0031】
本発明においては上述のコート剤を金属材料に塗装した後、金属材料の温度が130℃以上で処理することが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。熱処理によって、ポリビニルアルコールの水酸基とポリカルボン酸のカルボキシル基とが脱水架橋し、疎水性の被覆層が形成され、優れた耐水性、防錆性が発現する。熱処理時の温度が130℃より低いと、化合物(A)と(B)とのエステル反応速度が著しく遅く、十分な架橋が行われないため結果として防錆性、硬度が低下する傾向にある。なお、この架橋反応を加速するためには、酸などの触媒を添加すると効果的である。
【0032】
金属材料の表面に設けた層における化合物(A)と(B)とのエステル架橋の程度は、60℃の熱水に30分間、浸せきした場合のコート層の質量減量で評価でき、この値が5%以下である必要があり、防錆性の点から3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。熱水処理後の層の質量減少量が5%を超える場合は、十分な架橋が行われないため耐水性が悪く、優れた防錆性を得ることができない。
【0033】
積層金属材料の被膜の厚みは、コート剤中の全固形分濃度や塗装方法によって適宜、制御が可能である。好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.3〜20μm、より好ましくは0.3〜10μmがよい。被膜の厚みが0.1μm未満の場合は、充分な防錆性を付与することができなくなる。一方、厚みが30μmを超える場合は、固形分濃度を高くする必要があり、コート剤の粘度が高くなるために塗装や保存などに問題を生じやすくなる。このような観点から、全ポリマー濃度は溶液全体の5重量%から50重量%の範囲にすることが好ましい。
【0034】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定又は評価した。
(1)積層鋼板の耐水性評価方法
積層鋼板を作成後、室温で1日放置し、被膜を水で濡らした布で数回擦り、被膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:被膜がくもる、×:被膜が完全に溶解
(2)積層鋼板の耐溶剤性評価方法
積層鋼板を作成後、室温で1日放置し、被膜をエタノールで濡らした布で数回擦り、被膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:被膜がくもる、×:被膜が完全に溶解
(3)防錆性評価方法
積層鋼板を作成後、室温で1日放置し、JIS Z−2371規格の塩水噴霧試験機を用いて、35℃での5%NaCl水溶液の噴霧を行い、100時間後の被膜状態を評価した。
◎:発錆面積率5%未満、○:発錆面積率5%以上、10%未満、△:発錆面積率10 %以上、50%未満、×:発錆面積率50%以上
(4)熱水処理による被膜の質量減少量の評価方法
積層前の鋼板の質量(a)を測定しておき、実施例に記載のコート剤を所定の条件で 積層させた後の積層鋼板の質量を(b)を測定し、その差{(b)−(a)}から熱水 処理前の層の質量(A)を求めた。積層鋼板を室温で1日放置後、60℃の熱水に30 分間浸漬させた後、60℃で1時間乾燥させた積層鋼板の質量(c)を測定した。{( c)−(a)}から熱水処理後の層の質量(B)を求めた。熱水処理後の被膜の質量減 少量(%)は、次式:〔{(A)−(B)}/(A)〕×100から求めた。
(5)密着性評価:クロスカット・テープ剥離
積層鋼板を作成後、室温で1日放置し、JIS K5400 8.5.2に準ずる。セロハンテープにより1mm×1mm×100個の碁盤目部分をひき剥がし、剥離せずに残っている数で評価した。「n/100」は、試験後に100個の碁盤目中のn個が剥離せず残っていることを示す。
(6)被膜の硬度
積層鋼板を作成後、室温で1日放置し、JIS K5400に準じて鉛筆硬度で評価した。三菱ユニ鉛筆を用いて被膜にキズが残らない硬度を調べた。
【0035】
実施例1
容器に、化合物(B)として1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(新日本理化株式会社製、リカシッドBTW)、化合物(A)としてポリビニルアルコール(ユニチカケミカル株式会社製、UF−100、重合度1000、ケン化度99.4)を30/70の質量比になるように仕込んだ。さらに、固形分濃度が20質量%になるように化合物(B)中のカルボキシル基に対して15モル%の水酸化ナトリウムを含む水溶液を添加した。これを加熱下、攪拌して化合物(A)と化合物(B)を溶解させコート剤を調製した。
このコート剤を脱脂した溶融亜鉛めっき鋼板(日本テストパネル大阪社製、サイズ70mm×150mm×0.8mm)上に乾燥後の被膜厚みが3μmになるようにメイヤーバーで塗装し、250℃雰囲気中で鋼板温度が200℃に達してから1分間熱処理して積層鋼板を得た。得られた積層鋼板の性能を表1にまとめた。積層鋼板の耐水性、耐溶剤性、防錆性は良好であり、熱水処理後のコート層の質量減少はほぼ0%であった。また、コート層の表面は、5Hの鉛筆を用いても傷が残らなかったため、鉛筆硬度5H以上と判定した。
【0036】
実施例2、3
化合物(A)と化合物(B)との質量比を表1のように変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた積層鋼板の性能を表1にまとめた。
【0037】
実施例4
実施例1と同様の操作でコート剤を調製した後、コート剤中の樹脂固形分100重量部に対して、20重量部のメラミン化合物(三井サイテック社製、サイメル325)を添加し、攪拌した。このコート剤を脱脂した溶融亜鉛めっき鋼板上に乾燥後の被膜厚みが3μmになるようにメイヤーバーで塗装し、250℃雰囲気中で鋼板温度が200℃に達してから3分間熱処理して積層鋼板を得た。得られた積層鋼板の性能を表1にまとめた。
【0038】
実施例5
実施例2と同様の操作でコート剤を調製した後、コート剤中の樹脂固形分100重量部に対して15重量部のメラミン化合物(三井サイテック社製、サイメル325)と5重量部のエポキシ化合物(ナガセ化成工業社製、デナコールEX−313)を添加した以外は実施例4と同様の操作で積層鋼板を得た。得られた積層鋼板の性能を表1にまとめた。
【0039】
実施例6
実施例1と同様の操作でコート剤を調製した後、コート剤中の樹脂固形分100重量部に対して、リン酸アルミニウム(石津製薬社製)を20重量部になるように添加した以外は実施例1と同様の操作で積層鋼板を得た。得られた積層鋼板の性能を表1にまとめた。リン酸アルミニウムを添加すると防錆性が向上した。
【0040】
実施例7
実施例1と同様の操作でコート剤を調製した後、コート剤中の樹脂固形分100重量部に対して、コロイダルシリカ(スノーテックスO、粒子径0.01〜0.02μm、日産化学社製)を30質量部になるように添加した以外は実施例1と同様の操作で積層鋼板を得た。得られた積層鋼板の性能を表1にまとめた。シリカを添加すると防錆性が向上した。
【0041】
比較例1
化合物(A)ポリビニルアルコール(ユニチカケミカル株式会社製、UF−100、重合度1000、ケン化度99.4)の10質量%水溶液のみをコート剤として用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた積層鋼板の性能を表1にまとめた。ポリビニルアルコールのみでは防錆性は殆ど認められなかった。
【0042】
比較例2
ポリアクリル酸水溶液(和光純薬工業社製、ポリアクリル酸25重量%水溶液、数平均分子量150000)をポリアクリル酸のカルボキシル基に対して10モル%の水酸化ナトリウムを含む水溶液で希釈し15質量%とした。この溶液と、ポリビニルアルコール(ユニチカケミカル株式会社製、UF−100、重合度1000、ケン化度99.4)の15質量%水溶液とをポリビニルアルコールとポリアクリル酸の固形分質量比が30/70となるように混合、攪拌してコート剤を調製した。
このコート剤を用いた以外は実施例1と同様の操作で積層鋼板を得た。得られた積層鋼板の性能を表1にまとめた。1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸に変えてポリアクリル酸を用いた場合、同じ熱処理時間では、防錆性は劣っていた。
【0043】
実施例1〜7及び比較例1〜2の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 2004018902
【発明の効果】
本発明の防錆用コート剤によれば、薄塗りで優れた防錆性、硬度、耐溶剤性を発現する積層金属材料が提供され、自動車、家電、構造物等に広く用いることができる。

Claims (7)

  1. 分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が少なくとも1個ずつ結合されている化合物(B)、化合物(B)中のカルボキシル基に対して0.1〜50モル%の塩基性化合物(C)、及び水系溶媒(D)を含有し、化合物(A)と化合物(B)の質量比が95/5〜10/90であることを特徴とする防錆用コート剤。
  2. 化合物(A)がケン化度85〜100%のポリビニルアルコールである請求項1記載の防錆用コート剤。
  3. 化合物(B)が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸である請求項1または2記載の防錆用コート剤。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の防錆用コート剤に対し、(A)〜(C)成分の総量100質量部あたり、さらに架橋剤成分を0.1〜50質量部含有することを特徴とする防錆用コート剤。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の防錆用コート剤に対し、(A)〜(C)成分の総量100質量部あたり、さらにシリカまたはリン酸塩化合物を5〜100質量部含有することを特徴とする防錆用コート剤。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載の防錆用コート剤から水系溶媒(D)を除去してなる被膜を金属材料の表面に設けてなり、この被膜の、60℃の熱水に30分間浸漬した場合の質量減少量が5%以下である積層金属材料。
  7. 金属材料が亜鉛めっき鋼である請求項6に記載の積層金属材料。
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