JP2004018463A - 徐放性物質及び該徐放性物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ゲル化剤や添加される精油類等の蒸散物質の量や種類又は性質や、温度等の使用環境に影響を受けることなく、長期間にわたって均一で安定した蒸散速度と強度とを有する徐放性物質及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリビニルアルコール水溶液にゲル化剤を溶解させた後、冷凍、解することにより形成される三次元網目構造からなるマトリックスを構成し、前記マトリックス中に、蒸散物質が保持されてなることを特徴とする。
【選択図】
【解決手段】ポリビニルアルコール水溶液にゲル化剤を溶解させた後、冷凍、解することにより形成される三次元網目構造からなるマトリックスを構成し、前記マトリックス中に、蒸散物質が保持されてなることを特徴とする。
【選択図】
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺菌、抗菌、防虫等の諸機能を有する蒸散物質を、空気中に長期にわたって均一に蒸散させる徐放性物質及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、植物由来の各種精油等は薬効作用を有することが知られている。中でも、ヒバ、ヒノキ、ユーカリ、ラベンダー等の精油類には、殺菌、抗菌作用や防虫作用があることから害虫忌避剤として用いられており、これらを液状で塗布又は噴霧して使用したり或いは容器に入れて自然蒸散させて使用していた。しかし、精油類は油性であるため、液状ままで使用すると、手指に付着したときにべた付きがあったり、誤って衣服に付着した場合にはシミが残るなどして、使い勝手が良くなかった。そこで、固形状の徐放性物質として製造されたものが使用されるようになってきた。
【0003】
徐放性物質には、主に寒天やカラギーナンなどの多糖類、ゼラチン等のゲル化剤と精油とを混合してゲル状の固形物とし、精油成分をゲル内の水分と共に自然蒸散させるものがある。寒天、カラギーナン、ゼラチン等のゲル化剤は、食品添加物として広く使用されているため安全性が高く、また、安価で製造することができる点で優れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、徐放性物質を構成する寒天、カラギーナン、ゼラチン等のゲル化剤は、熱可逆性の性質を有することから、高温下に長時間曝されると溶解して、高温となる場所には設置することができなかった。また、弾力性に欠けるため、落下させるなどして衝撃が加わると崩壊しやすいという問題もあった。
【0005】
また、ゲル化剤や蒸散物質の量、種類又は性質等によっては、蒸散速度や強度に変動が生じやすく、長期間にわたって使用する際にはその安定性に問題があった。さらに、長期使用の目的でゲル化剤の配合量を増やしたり澱粉などの保湿成分を添加して蒸散量を抑えた場合、次第に徐放性物質の表面が硬化して蒸散物質の蒸散が十分に行われなくなることがあった。逆に、ゲル化剤の配合量を少なくして蒸散量を多くした場合には、徐放性物質が柔軟になって強度が低下するため、徐放性物質を収納する容器を別途用意する必要もあり不経済であった。さらに容器に収納すると、徐放性物質は底面及び側面を容器に覆われてしまうため、上面からしか蒸散することができず、蒸散効率が悪くなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、蒸散物質を長期間均一に蒸散するとともに、衝撃に強く、温度等の使用環境に影響されることのない優れた弾力性と耐熱性とを有する徐放性物質及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ポリビニルアルコールとゲル化剤とによって三次元網目構造を形成するマトリックスが構成されており、前記マトリックス中に、蒸散物質が保持されてなることを特徴とする徐放性物質をその要旨とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、マトリックスは、ポリビニルアルコールを5.0〜10.0wt%の範囲で含有し、ゲル化剤を1.0〜7.0wt%の範囲で含有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、蒸散物質が、1.0〜40.0wt%の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、ゲル化剤が、寒天、カラギーナン、カードラン、ゼラチンからなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0011】
請求項5に記載の発明は、蒸散物質が、害虫忌避剤であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0012】
請求項6に記載の発明は、害虫忌避剤が、ヒバ精油、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ヒノキ精油、ヒノキチオール、丁子油、ブナ精油、シトロネロール、ジエチルトルアミド、ピレスロイドからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項5に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0013】
請求項7に記載の発明は、蒸散物質が、殺虫剤であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0014】
請求項8に記載の発明は、殺虫剤が、メタアルデヒド、トリメチルナフタレンのいずれか、または両方であることを特徴とする請求項7に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0015】
請求項9に記載の発明は、増粘保湿剤として、澱粉類を含有することを特徴とする請求項1から8に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0016】
請求項10に記載の発明は、澱粉類が、グァーガム、小麦粉、タピオカ、コーンスターチ、デキストリンからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項9に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0017】
請求項11に記載の発明は、蒸散遅延剤として、グリセリンを含有することを特徴とする請求項1から10に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0018】
請求項12に記載の発明は、ポリビニルアルコールによって形成される架橋構造を有する徐放性物質の製造方法であって、前記ポリビニルアルコールを、75〜80℃まで加温しながら水に溶解させてから、ゲル化剤と、蒸散物質とを加えて混合溶液を調整し、該混合溶液を−15〜−20℃の範囲で8〜15時間冷凍させた後、解凍することを特徴とする徐放性物質の製造方法をその要旨とした。
【0019】
尚、本明細書において、蒸散物質とは、害虫等に対する忌避、誘引、殺虫等の薬効作用を有する揮発性又は昇華性の物質をいうものとする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る徐放性物質及びその製造方法について詳細に説明する。
【0021】
本発明に係る徐放性物質は、ポリビニルアルコールとゲル化剤とから形成される三次元網目構造のマトリックスを構成し、そのマトリックス内部に蒸散物質が保持されてなることを特徴とする徐放性物質である。この三次元網目構造のマトリックスは、ポリビニルアルコールの架橋構造により形成される格子内にゲル化剤からなるゲル状物質が形成されることで構成される。そして、このマトリックスの内部に形成される微細な空隙部分に蒸散物質が入り込むことにより、徐放性物質が形成される。
【0022】
マトリックスを構成するポリビニルアルコールとゲル化剤からなるゲル状物質とでは、水分の蒸発によって生じる収縮性が異なる。このため、水分が蒸発すると、両者の間に隙間が形成され、この隙間が蒸散物質の蒸散経路となる。このような構造を採ることにより、蒸散速度に偏りを生じることなく蒸散物質を均一に蒸散できるようになって、長期にわたって安定した徐放性を示すとともに、高弾性、高強度を有する徐放性物質となる。
【0023】
ポリビニルアルコールは、その水溶液を冷凍、解凍することによって架橋構造を形成する。ポリビニルアルコールの配合量は、5.0〜10.0wt%の範囲内とすることが好ましい。これよりも低い配合量とすると、徐放性物質として十分な強度や弾性を得ることができず、逆に、高い配合量とすると架橋構造が密になりすぎてしまうため十分な徐放性を得ることができなくなるからである。
【0024】
ゲル化剤は、寒天、カラギーナン、カードラン等の多糖類またはゼラチンなどを用いることができる。これらは単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。このゲル化剤の配合量を増減することにより、マトリックスを構成するゲルの緻密性を変化させることができる。ゲルの緻密性を加減することで、用途や温度等の使用環境に応じた蒸散性能を有する徐放性物質を作製することができる。すなわち、ゲル化剤の配合量を多くすると、マトリックスの緻密性が高まって硬質なゲルとなって、蒸散量を少なくすることができ、逆にゲル化剤の配合量を少なくすると、マトリックスの緻密性が低下して柔軟なゲルとなって、蒸散量を多くすることができる。ゲル化剤の配合量は、1.0〜7.0wt%の範囲とすることが好ましい。この範囲よりも低い配合量とすると、蒸散量が過剰となってしまい、逆に、高い配合量とすると、蒸散量が抑制されすぎてしまうため徐放性物質としての機能を発揮できなくなるからである。
【0025】
また、本発明に係る徐放性物質には、増粘保湿剤を添加してもよい。増粘保湿剤を添加することによって、急激な水分蒸散を防止することができるため、長期にわたってより均一かつ安定した蒸散性能を有する徐放性物質を作製することが可能となる。増粘保湿剤としては、グァーガム、小麦粉、タピオカ、コーンスターチ、デキストリン等の澱粉類が用いられる。これらは単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0026】
さらに、本発明に係る徐放性物質には、蒸散遅延剤としてのグリセリンを添加してもよい。これにより、精油類等の蒸散物質の急激な蒸散が防止されるので、長期にわたってより安定した蒸散性能が得られる。グリセリンは1.0〜2.0wt%の範囲で配合することが好ましい。この範囲よりも低い配合量とすると、蒸散遅延剤としての効果が十分に得られず、逆に、この範囲よりも高い配合量としても、それ以上の効果が得られないからである。
【0027】
蒸散物質には、揮発性又は昇華性を有する精油類又は薬剤からなる害虫忌避剤や殺虫剤を用いることができる。害虫忌避剤としては、ヒバ精油、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ヒノキ精油、ヒノキチオール、丁子油、ブナ精油、シトロネロール、ジエチルトルアミド、ピレスロイド等が挙げられる。また、殺虫剤としては、メタアルデヒド、トリメチルナフタレン等が挙げられる。これらの蒸散物質は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。蒸散物質は、1.0〜40.0wt%の範囲で配合することが好ましい。これよりも低い配合量とすると、蒸散量が微量となりすぎて十分な薬効作用が得られず、逆に、高い配合量として蒸散量を多くしても薬効作用はあまり向上しないため不経済となるからである。
【0028】
本発明に係る徐放性物質は、水にポリビニルアルコールとゲル化剤と蒸散物質等とを加熱溶解して調製される水溶液を冷凍し、解凍することにより作製される。具体的には、まず、ポリビニルアルコールを、水を75〜80℃まで加温しながらポリビニルアルコールを溶解させて、これにゲル化剤、蒸散物質を添加、溶解させて混合溶液を調製する。そして、この混合溶液を所定容器に移して冷凍し、その後解凍することによって行われる。
【0029】
このように混合溶液を冷凍、解凍処理を行うことによって、ポリビニルアルコールによる強固な架橋構造が形成される。そして、この架橋構造の形成とともに、格子内にゲル化剤からなるゲル状物質が形成される。このゲル状物質とポリビニルアルコールによる架橋構造とが一体化することにより、高強度、高弾力な三次元網目構造のマトリックスが構成され、マトリックス内の空隙部に蒸散物質が保持される構造を採ることができるものと考えられる。冷凍処理は、−15〜20℃の範囲内で8〜15時間行う。冷凍処理の温度と時間を加減することにより、ポリビニルアルコールの架橋の度合いが異なってくるため、徐放性物質の用途や使用環境に応じてその硬さや蒸散量等の特性を調節することも可能である。
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
(実施例)
まず、水450mLを80℃に加温し、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−14・重合度1400、ケン化度98mol%、日本合成工業株式会社製)50gを加え20分間溶解撹拌し、撹拌後、一昼夜静置してポリビニルアルコール(以下、PVAという)10%水溶液を調製した。
【0031】
表1には、実施例1、2及び比較例1〜4の配合成分が示されている。これらはゲル化剤に寒天(寒天1級、キシダ化学製)を用いたものである。
【0032】
実施例1,2の各サンプルの調製は次のようにして行った。PVA10%水溶液97.5g(実施例1)、95.0g(実施例2)を、およそ75〜80℃に加熱し、寒天2.5g(実施例1)、5.0g(実施例2)を加え5分間溶解撹拌後、容器に移して−20℃で15時間冷凍した。冷凍後、容器より取り出して3時間室温にて解凍してサンプルを得た。
【0033】
比較例1、2の各サンプルの調製は次のようにして行った。水97.5g(比較例1)、95.0g(比較例2)を90℃に加熱し、寒天2.5g(比較例1)、5.0g(比較例2)を加えて5分間溶解撹拌後、粗熱を取り容器に移して5℃で4時間冷蔵してサンプルを得た。
【0034】
比較例3,4の各サンプルの調製は次のようにして行った。PVA10%水溶液97.5g(比較例3)、95.0g(比較例4)を、およそ75〜80℃に加熱し、寒天2.5g(比較例3)、5.0g(比較例4)を加え5分間溶解撹拌後、粗熱を取り容器に移して5℃で4時間冷蔵してサンプルを得た。
【0035】
【表1】
【0036】
表2には、実施例3、4及び比較例5〜8の配合成分が示されている。これらは、ゲル化剤にカラギーナン(カラギーナン、ケルコジャパン社製)を用いたものであり、実施例3、4は実施例1、2と、比較例5、6は比較例1、2と、比較例7、8は比較例3、4と、それぞれ同様の方法により各サンプルを得た。
【0037】
【表2】
【0038】
また、表3には実施例5、6及び比較例9〜12の配合成分が示されている。これらはゲル化剤にゼラチン(ゼラチンパウダー ゴールド、新田ゼラチン製)を用いたものであり、実施例5、6は実施例1、2と、比較例9、10は比較例1、2と、比較例11、12は比較例3、4と、それぞれ同様の方法により各サンプルを得た。
【0039】
【表3】
【0040】
また、PVA10%水溶液100gを容器に移して−20℃で15時間冷凍した後、容器より取り出して3時間室温にて解凍して比較例13のサンプルを得た。
【0041】
上記のようにして得られた各サンプルについて、蒸散試験、弾力性試験及び加熱試験を行った。
【0042】
蒸散試験は、各サンプルを水分計(kett FD−220)で水分含有量を測定し、水分含有量がおよそ1gとなるように各サンプルを切り取り、得られた試験片を乾燥機(yamato Drying−Oven DX−38)内にて50℃で乾燥させ、1時間毎に各試験片の重量を測定し、その差を水分蒸散量とし、これに基づいて蒸散割合を算出した。
【0043】
表4、5及び図1、2には、それぞれ実施例1、2及び比較例1〜4の水分蒸散量及び蒸散割合の経時変化を示している。これによれば、PVAを含まない寒天のみからなる比較例1及び比較例2では、蒸散割合が90%を超えるのに要した時間に2時間の差があり、寒天の添加量が少ない比較例1の方が早い蒸散速度を示した。また、PVAを含有して冷蔵処理を行った比較例3、4では、蒸散割合が90%を超えるまでに要した時間の差が比較例1、2より小さくはなっているものの、寒天の添加量の少ない比較例3の方が早く蒸散する傾向がみられた。これに対し、PVAを含有する実施例1及び実施例2では、蒸散割合がほぼ同時期に90%に達しており、寒天の添加量の差があっても、蒸散速度にほとんど差がみられなかった。
このことから、PVAを添加しかつ冷凍、解凍処理をすることにより、寒天の添加量の多少にかかわらず、蒸散速度が平均化されて、長期間にわたり安定した徐放性を有することが明らかとなった。
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
表6、7及び図3、4には、実施例3、4及び比較例5〜8の水分蒸散量及び蒸散割合の経時変化を示している。実施例3,4及び比較例5〜8のいずれにおいても、蒸散推移に大きな差は見られなかったが、5時間を経過するあたりから、PVAを含まないカラギーナン単体からなる比較例5,6では、PVAを含有する比較例7,8及び実施例3,4よりも約10%程度多く蒸散している。このことから、PVAの添加はカラギーナンの蒸散特性に与える影響は小さいものの、PVAを含有することにより蒸散速度をより平均化することができるといえる。
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
表8、9及び図5、6には、実施例5、6及び比較例9〜12の水分蒸散量及び蒸散割合の経時変化が示されている。比較例9〜12では、試験開始後約2〜3時間で蒸散割合が90%に達しており、短時間で激しく蒸散する傾向がみられた。これに対し、実施例5,6では、蒸散割合が90%を超えるまでに約6時間を要しており、極めて安定した蒸散推移を示して、時間当たりの水分蒸散量を大きく抑制することが確認された。また、ゼラチン単体からなる比較例9、10と、PVAを添加して冷蔵処理をした比較例11、12とを比較すると、比較例11、12の方が急激な蒸散を若干抑える傾向にあるが、それほど大きな差はみられなかった。このことから、PVAを添加し、冷蔵処理しただけでは、蒸散速度を安定させることはできず、PVAを添加しかつ冷凍、解凍処理を行うことによって、蒸散速度を安定化させることができるといえる。
【0050】
【表8】
【0051】
【表9】
【0052】
図7には比較例1〜12の水分蒸散量の経時変化を示し、図8には実施例1〜6の水分蒸散量の経時変化を示している。
図7より、各比較例を比較すると、PVAを含有しない単一のゲル化剤からなる比較例1、2、5,6、9、10では、ゲル化剤の添加量によって蒸散量が変動しやすく、短時間で急激に蒸散する傾向にある。また、PVAを含有し冷蔵処理された比較例3、4、7、8、11、12のうち、比較例4、7、8は、比較的安定した蒸散推移を示してはいるものの、比較例3、11、12では、十分に安定した蒸散速度を示しているとはいえず、短時間で高い蒸散割合を示す傾向にある。
これに対して、図8より、PVAを添加しかつ冷凍、解凍処理をした実施例1〜6では、いずれもが安定した蒸散推移を示しかつ均一化されて、蒸散が緩やかに行われる傾向にあることがわかる。
【0053】
このことから、PVAと他のゲル化剤との2種類を組み合わせ、かつ冷凍、解凍処理をすることにより、ゲル化剤の量や種類に影響をうけることなく、極めて安定した蒸散推移を示すようになるといえる。
【0054】
弾力性試験は、2通りの方法で行った。まず、各サンプルを直径10mmの球体(重量約0.6〜0.7g)に加工し地上1mから落下させ、落下後の弾んだ距離を測定することにより行った。立てた板に10mm間隔に線を引き、各サンプルの球体が弾んで最終線を越したところを弾み距離とし、これを10回行ってその平均値を求めた。また、これと同時に落下後の形状を観察した。表10、表11には、それぞれ比較例1〜13、実施例1〜6の弾力性試験の結果を示している。
【0055】
【表10】
【0056】
【表11】
【0057】
表10より、比較例1〜13では、比較例6及び比較例13以外は、弾まなかったり、崩壊するなどして測定することが不可能であった。これに対して、PVAと他のゲル化剤との2種類よりなる実施例1〜6では、そのいずれもが100mm以上の高い弾み距離を示し、比較例1〜13の中で最も高く弾んだ比較例13と比べて最大で2.7倍の弾み距離が認められた。また、落下後のその形状に変化はなく、高い強度を示した。
【0058】
次いで、各サンプルを15mm×15mm×10mmの直方体に切り取り、得られた試験片にデジタル荷重計(SL−2001、今田製作所製)の先端部(直径8mmの球体)を試験片上部より5mm挿入させて、そのときの最大荷重を求めた。また、同時に、デジタル荷重計の先端部の挿入による挿入痕が復元されるかどうかを観察した。表12、表13には、それぞれ比較例1〜3、実施例1〜6についての試験結果を示している。
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
表12より、比較例1〜13は、いずれも弾力性が弱く、中でも寒天のみからなる比較例1、2は、デジタル荷重計を挿入した際に形状の崩壊がみられた。一方、表13より、実施例1〜6では、いずれも各比較例より高い弾力性を示した。
【0062】
また、実施例1〜6は、PVAのみからなり、冷凍、解凍処理された比較例13よりも高い弾力性を示していることから、PVAと、寒天、カラギーナン、ゼラチン等の他のゲル化剤との2種類より構成し、かつ冷凍、解凍処理を行うことによって初めて高い弾力性を生じるものと思われる。
【0063】
以上、2通りの方法により弾力性試験を行ったが、双方ともに、PVAを含有し冷凍、解凍処理を行った実施例1〜6が優れた弾力性能を示すことが確認された。
【0064】
加熱試験は、各サンプルを一辺が10mmの直方体に切り取り、この試験片をシャーレ中央に配置して乾燥機内に入れ、60℃で4時間加熱し、その後形状を観察して行った。表14、表15には、それぞれ比較例1〜13と実施例1〜6の加熱試験の結果を示している。
【0065】
【表14】
【0066】
【表15】
【0067】
表14より、比較例1〜13のうち、PVAとカラギーナンとからなる比較例7、8を除いて、PVAを含有するか否かに拘わらず、そのほとんどにおいて溶解が生じた。これは、寒天、カラギーナン、ゼラチンが、熱可逆性であるため、加熱により溶解したものと思われる。
これに対して、PVAと組み合わせた実施例1〜6は、表15より、蒸散作用によってその形状に若干の収縮が見られたものの、溶解することはなく、元の直方体形状を保持していた。このことから、PVAを配合しかつ冷凍処理を行うことによって、その冷却温度が架橋構造の形成に何らかの影響を与えて、より強固な架橋構造を形成されるものと推察される。
【0068】
次に、ジエチルトルアミド、ユーカリオイル、ヒバ精油、ラベンダーオイル、メタアルデヒドの各種蒸散物質を添加した実施例7〜21について、蒸散性試験及び弾力性試験を行った。
実施例7〜21の各サンプルの調製は次のようにして行った。実施例1と同様の方法で調整したPVA10%水溶液に、75℃に加熱しながらパラベンを添加して2分間撹拌し、次いで蒸散物質を添加して2分間撹拌した後、ゲル化剤をゆっくりと添加して3分間撹拌しながら加熱溶解させた。得られた混合溶液を粗熱を取ってから容器に移して−20℃で15時間冷凍し、その後解凍して各サンプルを得た。
【0069】
比較例14〜16の各サンプルの調製は次のようにして行った。75℃に加温した水にパラベンを添加し2分間撹拌し、次いで蒸散物質としてユーカリオイルを添加して2分間撹拌した後、ゲル化剤を添加して加熱溶解させた。得られた混合溶液を容器に移して4℃で4時間冷蔵して各サンプルを得た。
【0070】
表16には、ゲル化剤として寒天を使用する実施例7〜11及び比較例14の各成分の配合量を示している。比較例14は、PVAを含有しておらず、寒天のみの単一のゲル化剤からなっている。
【0071】
【表16】
【0072】
表17には、ゲル化剤にカラギーナンを使用する実施例12〜16及び比較例15の各成分の配合量を示している。比較例15は、PVAを含有しておらず、カラギーナンのみの単一のゲル化剤からなっている。
【0073】
【表17】
【0074】
表18には、ゲル化剤としてゼラチンを使用する実施例17〜21及び比較例16の各成分の配合量を示している。比較例16は、PVAを含有しないゼラチンのみの単一のゲル化剤からなっている。
【0075】
【表18】
【0076】
蒸散性試験は、各サンプルを15mm×15mm×10mmの直方体に切り取り、この試験片を乾燥機内に入れて30℃で2時間乾燥後、重量変化を測定し、蒸散の有無を確認した。また、乾燥中に乾燥機の排気口より匂いを嗅ぎ、匂いの有無を判別した。
【0077】
弾力性試験は、上記の実施例1〜6で行った方法と同様にして行った。
これらの結果を表19〜21に示している。
【0078】
【表19】
【0079】
【表20】
【0080】
【表21】
【0081】
寒天、カラギーナン、ゼラチンの単一のゲル化剤で作製された比較例14〜16のうち、比較例15、16はいずれも弾力性はほとんど示さなかった。また、比較例14では、比較的高い弾力性がみられるが、これは荷重計の先端部を試験片に挿入したときに形状が崩壊したことから考えて、試験片の弾力性によるものではなく、単に試験片の硬さを表す数値であると考えられる。これに対して、PVAが配合される実施例7〜21では、比較例15を基準とするとおよそ11〜16倍の弾力性を示し、また、比較例16を基準とした場合でも、およそ6〜8倍の高い弾力性が認められた。このことから、PVAを配合することによって弾力性が増すとともに、また、異なる蒸散物質を添加した場合でもその作用効果に影響を及ぼさないことが確認された。
【0082】
また、蒸散性と匂いについても、比較例14〜16と実施例7〜21とでは、違いはみられず、PVAの添加が蒸散性等に何らの影響を及ぼさないことも確認された。
【0083】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る徐放性物質は、ポリビニルアルコールとゲル化剤とによって三次元網目構造のマトリックスを構成し、このマトリックス内部に、蒸散物質が保持される構造を採ることにより、長期にわたって均一かつ安定した蒸散性能を発揮するとともに、高弾力性、高耐熱性を有するので、落下等の衝撃にも強く、設置場所や温度等の使用環境に左右されることのない徐放性物質を提供することができる。
【0084】
また、本発明に係る徐放性物質の製造方法によれば、水にポリビニルアルコールとゲル化剤と蒸散物質等を加熱溶解して混合溶液を調製し、この混合溶液を冷凍し、解凍することにより、ポリビニルアルコールによる強固な架橋構造が形成され、格子内にゲル化剤からなるゲル状物質が形成される。このようにして、ゲル状物質とポリビニルアルコールによる架橋構造とが一体化して三次元網目構造のマトリックスが構成され、マトリックス内の空隙部に蒸散物質が保持される構造を形成することができるので、長期にわたって均一かつ安定した蒸散性能を発揮するとともに、高弾力性、高耐熱性を有する徐放性物質を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、2及び比較例1〜4の水分蒸散量の経時変化を示すグラフである。
【図2】実施例1、2及び比較例1〜4の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例3、4及び比較例5〜8の水分蒸散量の経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例3、4及び比較例5〜8の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例5、6及び比較例9〜12の水分蒸散量の経時変化を示すグラフである。
【図6】実施例5、6及び比較例9〜12の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【図7】比較例1〜12の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【図8】実施例1〜6の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺菌、抗菌、防虫等の諸機能を有する蒸散物質を、空気中に長期にわたって均一に蒸散させる徐放性物質及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、植物由来の各種精油等は薬効作用を有することが知られている。中でも、ヒバ、ヒノキ、ユーカリ、ラベンダー等の精油類には、殺菌、抗菌作用や防虫作用があることから害虫忌避剤として用いられており、これらを液状で塗布又は噴霧して使用したり或いは容器に入れて自然蒸散させて使用していた。しかし、精油類は油性であるため、液状ままで使用すると、手指に付着したときにべた付きがあったり、誤って衣服に付着した場合にはシミが残るなどして、使い勝手が良くなかった。そこで、固形状の徐放性物質として製造されたものが使用されるようになってきた。
【0003】
徐放性物質には、主に寒天やカラギーナンなどの多糖類、ゼラチン等のゲル化剤と精油とを混合してゲル状の固形物とし、精油成分をゲル内の水分と共に自然蒸散させるものがある。寒天、カラギーナン、ゼラチン等のゲル化剤は、食品添加物として広く使用されているため安全性が高く、また、安価で製造することができる点で優れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、徐放性物質を構成する寒天、カラギーナン、ゼラチン等のゲル化剤は、熱可逆性の性質を有することから、高温下に長時間曝されると溶解して、高温となる場所には設置することができなかった。また、弾力性に欠けるため、落下させるなどして衝撃が加わると崩壊しやすいという問題もあった。
【0005】
また、ゲル化剤や蒸散物質の量、種類又は性質等によっては、蒸散速度や強度に変動が生じやすく、長期間にわたって使用する際にはその安定性に問題があった。さらに、長期使用の目的でゲル化剤の配合量を増やしたり澱粉などの保湿成分を添加して蒸散量を抑えた場合、次第に徐放性物質の表面が硬化して蒸散物質の蒸散が十分に行われなくなることがあった。逆に、ゲル化剤の配合量を少なくして蒸散量を多くした場合には、徐放性物質が柔軟になって強度が低下するため、徐放性物質を収納する容器を別途用意する必要もあり不経済であった。さらに容器に収納すると、徐放性物質は底面及び側面を容器に覆われてしまうため、上面からしか蒸散することができず、蒸散効率が悪くなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、蒸散物質を長期間均一に蒸散するとともに、衝撃に強く、温度等の使用環境に影響されることのない優れた弾力性と耐熱性とを有する徐放性物質及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ポリビニルアルコールとゲル化剤とによって三次元網目構造を形成するマトリックスが構成されており、前記マトリックス中に、蒸散物質が保持されてなることを特徴とする徐放性物質をその要旨とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、マトリックスは、ポリビニルアルコールを5.0〜10.0wt%の範囲で含有し、ゲル化剤を1.0〜7.0wt%の範囲で含有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、蒸散物質が、1.0〜40.0wt%の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、ゲル化剤が、寒天、カラギーナン、カードラン、ゼラチンからなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0011】
請求項5に記載の発明は、蒸散物質が、害虫忌避剤であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0012】
請求項6に記載の発明は、害虫忌避剤が、ヒバ精油、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ヒノキ精油、ヒノキチオール、丁子油、ブナ精油、シトロネロール、ジエチルトルアミド、ピレスロイドからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項5に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0013】
請求項7に記載の発明は、蒸散物質が、殺虫剤であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0014】
請求項8に記載の発明は、殺虫剤が、メタアルデヒド、トリメチルナフタレンのいずれか、または両方であることを特徴とする請求項7に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0015】
請求項9に記載の発明は、増粘保湿剤として、澱粉類を含有することを特徴とする請求項1から8に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0016】
請求項10に記載の発明は、澱粉類が、グァーガム、小麦粉、タピオカ、コーンスターチ、デキストリンからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項9に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0017】
請求項11に記載の発明は、蒸散遅延剤として、グリセリンを含有することを特徴とする請求項1から10に記載の徐放性物質をその要旨とした。
【0018】
請求項12に記載の発明は、ポリビニルアルコールによって形成される架橋構造を有する徐放性物質の製造方法であって、前記ポリビニルアルコールを、75〜80℃まで加温しながら水に溶解させてから、ゲル化剤と、蒸散物質とを加えて混合溶液を調整し、該混合溶液を−15〜−20℃の範囲で8〜15時間冷凍させた後、解凍することを特徴とする徐放性物質の製造方法をその要旨とした。
【0019】
尚、本明細書において、蒸散物質とは、害虫等に対する忌避、誘引、殺虫等の薬効作用を有する揮発性又は昇華性の物質をいうものとする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る徐放性物質及びその製造方法について詳細に説明する。
【0021】
本発明に係る徐放性物質は、ポリビニルアルコールとゲル化剤とから形成される三次元網目構造のマトリックスを構成し、そのマトリックス内部に蒸散物質が保持されてなることを特徴とする徐放性物質である。この三次元網目構造のマトリックスは、ポリビニルアルコールの架橋構造により形成される格子内にゲル化剤からなるゲル状物質が形成されることで構成される。そして、このマトリックスの内部に形成される微細な空隙部分に蒸散物質が入り込むことにより、徐放性物質が形成される。
【0022】
マトリックスを構成するポリビニルアルコールとゲル化剤からなるゲル状物質とでは、水分の蒸発によって生じる収縮性が異なる。このため、水分が蒸発すると、両者の間に隙間が形成され、この隙間が蒸散物質の蒸散経路となる。このような構造を採ることにより、蒸散速度に偏りを生じることなく蒸散物質を均一に蒸散できるようになって、長期にわたって安定した徐放性を示すとともに、高弾性、高強度を有する徐放性物質となる。
【0023】
ポリビニルアルコールは、その水溶液を冷凍、解凍することによって架橋構造を形成する。ポリビニルアルコールの配合量は、5.0〜10.0wt%の範囲内とすることが好ましい。これよりも低い配合量とすると、徐放性物質として十分な強度や弾性を得ることができず、逆に、高い配合量とすると架橋構造が密になりすぎてしまうため十分な徐放性を得ることができなくなるからである。
【0024】
ゲル化剤は、寒天、カラギーナン、カードラン等の多糖類またはゼラチンなどを用いることができる。これらは単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。このゲル化剤の配合量を増減することにより、マトリックスを構成するゲルの緻密性を変化させることができる。ゲルの緻密性を加減することで、用途や温度等の使用環境に応じた蒸散性能を有する徐放性物質を作製することができる。すなわち、ゲル化剤の配合量を多くすると、マトリックスの緻密性が高まって硬質なゲルとなって、蒸散量を少なくすることができ、逆にゲル化剤の配合量を少なくすると、マトリックスの緻密性が低下して柔軟なゲルとなって、蒸散量を多くすることができる。ゲル化剤の配合量は、1.0〜7.0wt%の範囲とすることが好ましい。この範囲よりも低い配合量とすると、蒸散量が過剰となってしまい、逆に、高い配合量とすると、蒸散量が抑制されすぎてしまうため徐放性物質としての機能を発揮できなくなるからである。
【0025】
また、本発明に係る徐放性物質には、増粘保湿剤を添加してもよい。増粘保湿剤を添加することによって、急激な水分蒸散を防止することができるため、長期にわたってより均一かつ安定した蒸散性能を有する徐放性物質を作製することが可能となる。増粘保湿剤としては、グァーガム、小麦粉、タピオカ、コーンスターチ、デキストリン等の澱粉類が用いられる。これらは単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0026】
さらに、本発明に係る徐放性物質には、蒸散遅延剤としてのグリセリンを添加してもよい。これにより、精油類等の蒸散物質の急激な蒸散が防止されるので、長期にわたってより安定した蒸散性能が得られる。グリセリンは1.0〜2.0wt%の範囲で配合することが好ましい。この範囲よりも低い配合量とすると、蒸散遅延剤としての効果が十分に得られず、逆に、この範囲よりも高い配合量としても、それ以上の効果が得られないからである。
【0027】
蒸散物質には、揮発性又は昇華性を有する精油類又は薬剤からなる害虫忌避剤や殺虫剤を用いることができる。害虫忌避剤としては、ヒバ精油、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ヒノキ精油、ヒノキチオール、丁子油、ブナ精油、シトロネロール、ジエチルトルアミド、ピレスロイド等が挙げられる。また、殺虫剤としては、メタアルデヒド、トリメチルナフタレン等が挙げられる。これらの蒸散物質は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。蒸散物質は、1.0〜40.0wt%の範囲で配合することが好ましい。これよりも低い配合量とすると、蒸散量が微量となりすぎて十分な薬効作用が得られず、逆に、高い配合量として蒸散量を多くしても薬効作用はあまり向上しないため不経済となるからである。
【0028】
本発明に係る徐放性物質は、水にポリビニルアルコールとゲル化剤と蒸散物質等とを加熱溶解して調製される水溶液を冷凍し、解凍することにより作製される。具体的には、まず、ポリビニルアルコールを、水を75〜80℃まで加温しながらポリビニルアルコールを溶解させて、これにゲル化剤、蒸散物質を添加、溶解させて混合溶液を調製する。そして、この混合溶液を所定容器に移して冷凍し、その後解凍することによって行われる。
【0029】
このように混合溶液を冷凍、解凍処理を行うことによって、ポリビニルアルコールによる強固な架橋構造が形成される。そして、この架橋構造の形成とともに、格子内にゲル化剤からなるゲル状物質が形成される。このゲル状物質とポリビニルアルコールによる架橋構造とが一体化することにより、高強度、高弾力な三次元網目構造のマトリックスが構成され、マトリックス内の空隙部に蒸散物質が保持される構造を採ることができるものと考えられる。冷凍処理は、−15〜20℃の範囲内で8〜15時間行う。冷凍処理の温度と時間を加減することにより、ポリビニルアルコールの架橋の度合いが異なってくるため、徐放性物質の用途や使用環境に応じてその硬さや蒸散量等の特性を調節することも可能である。
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
(実施例)
まず、水450mLを80℃に加温し、ポリビニルアルコール(ゴーセノールNM−14・重合度1400、ケン化度98mol%、日本合成工業株式会社製)50gを加え20分間溶解撹拌し、撹拌後、一昼夜静置してポリビニルアルコール(以下、PVAという)10%水溶液を調製した。
【0031】
表1には、実施例1、2及び比較例1〜4の配合成分が示されている。これらはゲル化剤に寒天(寒天1級、キシダ化学製)を用いたものである。
【0032】
実施例1,2の各サンプルの調製は次のようにして行った。PVA10%水溶液97.5g(実施例1)、95.0g(実施例2)を、およそ75〜80℃に加熱し、寒天2.5g(実施例1)、5.0g(実施例2)を加え5分間溶解撹拌後、容器に移して−20℃で15時間冷凍した。冷凍後、容器より取り出して3時間室温にて解凍してサンプルを得た。
【0033】
比較例1、2の各サンプルの調製は次のようにして行った。水97.5g(比較例1)、95.0g(比較例2)を90℃に加熱し、寒天2.5g(比較例1)、5.0g(比較例2)を加えて5分間溶解撹拌後、粗熱を取り容器に移して5℃で4時間冷蔵してサンプルを得た。
【0034】
比較例3,4の各サンプルの調製は次のようにして行った。PVA10%水溶液97.5g(比較例3)、95.0g(比較例4)を、およそ75〜80℃に加熱し、寒天2.5g(比較例3)、5.0g(比較例4)を加え5分間溶解撹拌後、粗熱を取り容器に移して5℃で4時間冷蔵してサンプルを得た。
【0035】
【表1】
【0036】
表2には、実施例3、4及び比較例5〜8の配合成分が示されている。これらは、ゲル化剤にカラギーナン(カラギーナン、ケルコジャパン社製)を用いたものであり、実施例3、4は実施例1、2と、比較例5、6は比較例1、2と、比較例7、8は比較例3、4と、それぞれ同様の方法により各サンプルを得た。
【0037】
【表2】
【0038】
また、表3には実施例5、6及び比較例9〜12の配合成分が示されている。これらはゲル化剤にゼラチン(ゼラチンパウダー ゴールド、新田ゼラチン製)を用いたものであり、実施例5、6は実施例1、2と、比較例9、10は比較例1、2と、比較例11、12は比較例3、4と、それぞれ同様の方法により各サンプルを得た。
【0039】
【表3】
【0040】
また、PVA10%水溶液100gを容器に移して−20℃で15時間冷凍した後、容器より取り出して3時間室温にて解凍して比較例13のサンプルを得た。
【0041】
上記のようにして得られた各サンプルについて、蒸散試験、弾力性試験及び加熱試験を行った。
【0042】
蒸散試験は、各サンプルを水分計(kett FD−220)で水分含有量を測定し、水分含有量がおよそ1gとなるように各サンプルを切り取り、得られた試験片を乾燥機(yamato Drying−Oven DX−38)内にて50℃で乾燥させ、1時間毎に各試験片の重量を測定し、その差を水分蒸散量とし、これに基づいて蒸散割合を算出した。
【0043】
表4、5及び図1、2には、それぞれ実施例1、2及び比較例1〜4の水分蒸散量及び蒸散割合の経時変化を示している。これによれば、PVAを含まない寒天のみからなる比較例1及び比較例2では、蒸散割合が90%を超えるのに要した時間に2時間の差があり、寒天の添加量が少ない比較例1の方が早い蒸散速度を示した。また、PVAを含有して冷蔵処理を行った比較例3、4では、蒸散割合が90%を超えるまでに要した時間の差が比較例1、2より小さくはなっているものの、寒天の添加量の少ない比較例3の方が早く蒸散する傾向がみられた。これに対し、PVAを含有する実施例1及び実施例2では、蒸散割合がほぼ同時期に90%に達しており、寒天の添加量の差があっても、蒸散速度にほとんど差がみられなかった。
このことから、PVAを添加しかつ冷凍、解凍処理をすることにより、寒天の添加量の多少にかかわらず、蒸散速度が平均化されて、長期間にわたり安定した徐放性を有することが明らかとなった。
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
表6、7及び図3、4には、実施例3、4及び比較例5〜8の水分蒸散量及び蒸散割合の経時変化を示している。実施例3,4及び比較例5〜8のいずれにおいても、蒸散推移に大きな差は見られなかったが、5時間を経過するあたりから、PVAを含まないカラギーナン単体からなる比較例5,6では、PVAを含有する比較例7,8及び実施例3,4よりも約10%程度多く蒸散している。このことから、PVAの添加はカラギーナンの蒸散特性に与える影響は小さいものの、PVAを含有することにより蒸散速度をより平均化することができるといえる。
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
表8、9及び図5、6には、実施例5、6及び比較例9〜12の水分蒸散量及び蒸散割合の経時変化が示されている。比較例9〜12では、試験開始後約2〜3時間で蒸散割合が90%に達しており、短時間で激しく蒸散する傾向がみられた。これに対し、実施例5,6では、蒸散割合が90%を超えるまでに約6時間を要しており、極めて安定した蒸散推移を示して、時間当たりの水分蒸散量を大きく抑制することが確認された。また、ゼラチン単体からなる比較例9、10と、PVAを添加して冷蔵処理をした比較例11、12とを比較すると、比較例11、12の方が急激な蒸散を若干抑える傾向にあるが、それほど大きな差はみられなかった。このことから、PVAを添加し、冷蔵処理しただけでは、蒸散速度を安定させることはできず、PVAを添加しかつ冷凍、解凍処理を行うことによって、蒸散速度を安定化させることができるといえる。
【0050】
【表8】
【0051】
【表9】
【0052】
図7には比較例1〜12の水分蒸散量の経時変化を示し、図8には実施例1〜6の水分蒸散量の経時変化を示している。
図7より、各比較例を比較すると、PVAを含有しない単一のゲル化剤からなる比較例1、2、5,6、9、10では、ゲル化剤の添加量によって蒸散量が変動しやすく、短時間で急激に蒸散する傾向にある。また、PVAを含有し冷蔵処理された比較例3、4、7、8、11、12のうち、比較例4、7、8は、比較的安定した蒸散推移を示してはいるものの、比較例3、11、12では、十分に安定した蒸散速度を示しているとはいえず、短時間で高い蒸散割合を示す傾向にある。
これに対して、図8より、PVAを添加しかつ冷凍、解凍処理をした実施例1〜6では、いずれもが安定した蒸散推移を示しかつ均一化されて、蒸散が緩やかに行われる傾向にあることがわかる。
【0053】
このことから、PVAと他のゲル化剤との2種類を組み合わせ、かつ冷凍、解凍処理をすることにより、ゲル化剤の量や種類に影響をうけることなく、極めて安定した蒸散推移を示すようになるといえる。
【0054】
弾力性試験は、2通りの方法で行った。まず、各サンプルを直径10mmの球体(重量約0.6〜0.7g)に加工し地上1mから落下させ、落下後の弾んだ距離を測定することにより行った。立てた板に10mm間隔に線を引き、各サンプルの球体が弾んで最終線を越したところを弾み距離とし、これを10回行ってその平均値を求めた。また、これと同時に落下後の形状を観察した。表10、表11には、それぞれ比較例1〜13、実施例1〜6の弾力性試験の結果を示している。
【0055】
【表10】
【0056】
【表11】
【0057】
表10より、比較例1〜13では、比較例6及び比較例13以外は、弾まなかったり、崩壊するなどして測定することが不可能であった。これに対して、PVAと他のゲル化剤との2種類よりなる実施例1〜6では、そのいずれもが100mm以上の高い弾み距離を示し、比較例1〜13の中で最も高く弾んだ比較例13と比べて最大で2.7倍の弾み距離が認められた。また、落下後のその形状に変化はなく、高い強度を示した。
【0058】
次いで、各サンプルを15mm×15mm×10mmの直方体に切り取り、得られた試験片にデジタル荷重計(SL−2001、今田製作所製)の先端部(直径8mmの球体)を試験片上部より5mm挿入させて、そのときの最大荷重を求めた。また、同時に、デジタル荷重計の先端部の挿入による挿入痕が復元されるかどうかを観察した。表12、表13には、それぞれ比較例1〜3、実施例1〜6についての試験結果を示している。
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
表12より、比較例1〜13は、いずれも弾力性が弱く、中でも寒天のみからなる比較例1、2は、デジタル荷重計を挿入した際に形状の崩壊がみられた。一方、表13より、実施例1〜6では、いずれも各比較例より高い弾力性を示した。
【0062】
また、実施例1〜6は、PVAのみからなり、冷凍、解凍処理された比較例13よりも高い弾力性を示していることから、PVAと、寒天、カラギーナン、ゼラチン等の他のゲル化剤との2種類より構成し、かつ冷凍、解凍処理を行うことによって初めて高い弾力性を生じるものと思われる。
【0063】
以上、2通りの方法により弾力性試験を行ったが、双方ともに、PVAを含有し冷凍、解凍処理を行った実施例1〜6が優れた弾力性能を示すことが確認された。
【0064】
加熱試験は、各サンプルを一辺が10mmの直方体に切り取り、この試験片をシャーレ中央に配置して乾燥機内に入れ、60℃で4時間加熱し、その後形状を観察して行った。表14、表15には、それぞれ比較例1〜13と実施例1〜6の加熱試験の結果を示している。
【0065】
【表14】
【0066】
【表15】
【0067】
表14より、比較例1〜13のうち、PVAとカラギーナンとからなる比較例7、8を除いて、PVAを含有するか否かに拘わらず、そのほとんどにおいて溶解が生じた。これは、寒天、カラギーナン、ゼラチンが、熱可逆性であるため、加熱により溶解したものと思われる。
これに対して、PVAと組み合わせた実施例1〜6は、表15より、蒸散作用によってその形状に若干の収縮が見られたものの、溶解することはなく、元の直方体形状を保持していた。このことから、PVAを配合しかつ冷凍処理を行うことによって、その冷却温度が架橋構造の形成に何らかの影響を与えて、より強固な架橋構造を形成されるものと推察される。
【0068】
次に、ジエチルトルアミド、ユーカリオイル、ヒバ精油、ラベンダーオイル、メタアルデヒドの各種蒸散物質を添加した実施例7〜21について、蒸散性試験及び弾力性試験を行った。
実施例7〜21の各サンプルの調製は次のようにして行った。実施例1と同様の方法で調整したPVA10%水溶液に、75℃に加熱しながらパラベンを添加して2分間撹拌し、次いで蒸散物質を添加して2分間撹拌した後、ゲル化剤をゆっくりと添加して3分間撹拌しながら加熱溶解させた。得られた混合溶液を粗熱を取ってから容器に移して−20℃で15時間冷凍し、その後解凍して各サンプルを得た。
【0069】
比較例14〜16の各サンプルの調製は次のようにして行った。75℃に加温した水にパラベンを添加し2分間撹拌し、次いで蒸散物質としてユーカリオイルを添加して2分間撹拌した後、ゲル化剤を添加して加熱溶解させた。得られた混合溶液を容器に移して4℃で4時間冷蔵して各サンプルを得た。
【0070】
表16には、ゲル化剤として寒天を使用する実施例7〜11及び比較例14の各成分の配合量を示している。比較例14は、PVAを含有しておらず、寒天のみの単一のゲル化剤からなっている。
【0071】
【表16】
【0072】
表17には、ゲル化剤にカラギーナンを使用する実施例12〜16及び比較例15の各成分の配合量を示している。比較例15は、PVAを含有しておらず、カラギーナンのみの単一のゲル化剤からなっている。
【0073】
【表17】
【0074】
表18には、ゲル化剤としてゼラチンを使用する実施例17〜21及び比較例16の各成分の配合量を示している。比較例16は、PVAを含有しないゼラチンのみの単一のゲル化剤からなっている。
【0075】
【表18】
【0076】
蒸散性試験は、各サンプルを15mm×15mm×10mmの直方体に切り取り、この試験片を乾燥機内に入れて30℃で2時間乾燥後、重量変化を測定し、蒸散の有無を確認した。また、乾燥中に乾燥機の排気口より匂いを嗅ぎ、匂いの有無を判別した。
【0077】
弾力性試験は、上記の実施例1〜6で行った方法と同様にして行った。
これらの結果を表19〜21に示している。
【0078】
【表19】
【0079】
【表20】
【0080】
【表21】
【0081】
寒天、カラギーナン、ゼラチンの単一のゲル化剤で作製された比較例14〜16のうち、比較例15、16はいずれも弾力性はほとんど示さなかった。また、比較例14では、比較的高い弾力性がみられるが、これは荷重計の先端部を試験片に挿入したときに形状が崩壊したことから考えて、試験片の弾力性によるものではなく、単に試験片の硬さを表す数値であると考えられる。これに対して、PVAが配合される実施例7〜21では、比較例15を基準とするとおよそ11〜16倍の弾力性を示し、また、比較例16を基準とした場合でも、およそ6〜8倍の高い弾力性が認められた。このことから、PVAを配合することによって弾力性が増すとともに、また、異なる蒸散物質を添加した場合でもその作用効果に影響を及ぼさないことが確認された。
【0082】
また、蒸散性と匂いについても、比較例14〜16と実施例7〜21とでは、違いはみられず、PVAの添加が蒸散性等に何らの影響を及ぼさないことも確認された。
【0083】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る徐放性物質は、ポリビニルアルコールとゲル化剤とによって三次元網目構造のマトリックスを構成し、このマトリックス内部に、蒸散物質が保持される構造を採ることにより、長期にわたって均一かつ安定した蒸散性能を発揮するとともに、高弾力性、高耐熱性を有するので、落下等の衝撃にも強く、設置場所や温度等の使用環境に左右されることのない徐放性物質を提供することができる。
【0084】
また、本発明に係る徐放性物質の製造方法によれば、水にポリビニルアルコールとゲル化剤と蒸散物質等を加熱溶解して混合溶液を調製し、この混合溶液を冷凍し、解凍することにより、ポリビニルアルコールによる強固な架橋構造が形成され、格子内にゲル化剤からなるゲル状物質が形成される。このようにして、ゲル状物質とポリビニルアルコールによる架橋構造とが一体化して三次元網目構造のマトリックスが構成され、マトリックス内の空隙部に蒸散物質が保持される構造を形成することができるので、長期にわたって均一かつ安定した蒸散性能を発揮するとともに、高弾力性、高耐熱性を有する徐放性物質を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、2及び比較例1〜4の水分蒸散量の経時変化を示すグラフである。
【図2】実施例1、2及び比較例1〜4の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例3、4及び比較例5〜8の水分蒸散量の経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例3、4及び比較例5〜8の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例5、6及び比較例9〜12の水分蒸散量の経時変化を示すグラフである。
【図6】実施例5、6及び比較例9〜12の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【図7】比較例1〜12の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
【図8】実施例1〜6の水分蒸散割合の経時変化を示すグラフである。
Claims (12)
- ポリビニルアルコールとゲル化剤とによって三次元網目構造を形成するマトリックスが構成されており、
前記マトリックス中に、蒸散物質が保持されてなることを特徴とする徐放性物質。 - マトリックスは、ポリビニルアルコールを5.0〜10.0wt%の範囲で含有し、ゲル化剤を1.0〜7.0wt%の範囲で含有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質。
- 蒸散物質が、1.0〜40.0wt%の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質。
- ゲル化剤が、寒天、カラギーナン、ゼラチン、カードランからなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質。
- 蒸散物質が、害虫忌避剤であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質。
- 害虫忌避剤が、ヒバ精油、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ヒノキ精油、ヒノキチオール、丁子油、ブナ精油、シトロネロール、ジエチルトルアミド、ピレスロイドからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項5に記載の徐放性物質。
- 蒸散物質が、殺虫剤であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性物質。
- 殺虫剤が、メタアルデヒド、トリメチルナフタレンのいずれか、または両方であることを特徴とする請求項7に記載の徐放性物質。
- 増粘保湿剤として、澱粉類を含有することを特徴とする請求項1から8に記載の徐放性物質。
- 澱粉類が、グァーガム、小麦粉、タピオカ、コーンスターチ、デキストリンからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項9に記載の徐放性物質。
- 蒸散遅延剤として、グリセリンを含有することを特徴とする請求項1から10に記載の徐放性物質。
- ポリビニルアルコールによって形成される架橋構造を有する徐放性物質の製造方法であって、
前記ポリビニルアルコールを、75〜80℃まで加温しながら水に溶解させてから、ゲル化剤と、蒸散物質とを加えて混合溶液を調整し、該混合溶液を−15〜−20℃の範囲で8〜15時間冷凍させた後、解凍することを特徴とする徐放性物質の製造方法。
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