JP2004017501A - 木質系成形体および木質系成形体の製造方法 - Google Patents

木質系成形体および木質系成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】木質系成形体の強度を向上させて用途を拡げることにより木質系材料の有効利用を促進させることが望まれていた。
【解決手段】微粒状の木質系材料と、溶融可能な溶融混合用樹脂と、溶融状態の同溶融混合用樹脂を付着可能な繊維状素材とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形して木質系成形体とした。溶融状態の溶融混合用樹脂は、木質系材料に滲み込みながら強固に付着するとともに、繊維状素材にも付着する。従って、木質系成形体の強度をさらに向上させることができ、木質系成形体の用途を拡げることが可能になるとともに、コンクリート等の軽量化を図るための軽量骨材等としても使用しやすくなり、木質系材料の有効利用を促進させることができる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質系材料と溶融混合用樹脂とを用いて成形した木質系成形体および木質系成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、木材の廃材等の木質系材料を有効利用するため、微粒状とされた木質系材料と熱可塑性樹脂とを加熱し、熱可塑性樹脂を溶融させながら混合して成形することにより、木質系成形体を製造している。なお、木質系材料の配合割合を多くすると、温度変化による変形が少なく、木質感は向上し、製品の質が向上する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の木質系成形体は、強度を意味する機械的性能が大きくなかった。このため、板状に成形された木質系成形体では例えば金属製のプレートで挟み込むことにより補強をしたり、棒状に成形された木質系成形体では例えば金属製の筒を内部に貫通させることにより補強をしたりする必要があった。特に、熱可塑性樹脂の配合割合が少ないと機械的性能が小さくなるため、さらなる強度向上が望まれていた。また、ペレット化して軽量骨材等として使用する場合でも、強度の向上が求められていた。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、さらに強度を向上して木質系材料の有効利用を促進させることが可能な木質系成形体および木質系成形体の製造方法の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、微粒状の木質系材料と、溶融可能な溶融混合用樹脂と、溶融状態の同溶融混合用樹脂を付着可能な繊維状素材とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形した構成としてある。すなわち、溶融混合用樹脂が溶融させられながら、微粒状の木質系材料と溶融混合用樹脂と繊維状素材とは混合され、成形される。ここで、溶融状態の溶融混合用樹脂は、木質系材料に滲み込みながら強固に付着するとともに、繊維状素材にも付着する。従って、木質系成形体の強度をさらに向上させることができ、木質系成形体の用途を拡げることが可能になるとともに、コンクリート等の軽量化を図るための軽量骨材等としても使用しやすくなる。
【0005】
ここで、木質系材料は、木粉,木毛,木片,木質繊維,木質パルプ,木質繊維束,等、さまざまなものを採用可能であるし、竹繊維,麻繊維,バカス,モミガラ,稲わら等セルロースを主成分とする材料を混合してもよい。
また、木質系材料は、微粒状とされていればよく、粉末状であっても本発明にいう微粒状に含まれる。なお、木質系材料の粒度を調整することによって、木質系成形体の強度を調整することができる。
木材は家具工場や建築現場等あらゆる場面で常用されており、これらの場面で木材の切り屑が発生すればこのような切り屑を集めれば本発明における木質系材料として使用することができる。また、木材本体を家具や建築用材等の原料にした後には多量の廃材が発生するので、このような廃材を粉砕すればよい。さらに、家具や建築用材が廃棄されたときには当該廃棄物を粉砕すればよい。このような構成によれば木質系成形体のコストが非常に低くなり、また、ゴミを低減することに大きく寄与することができるし、廃棄物リサイクルを促進することもできる。
【0006】
混合された材料に対しては、押出成形や射出成形等、様々な成形を行うことができる。成形する形状としては、例えば板状や棒状等、様々考えられる。
また、溶融混合用樹脂を溶融させながら混合された材料を、押出機や造粒機等によってペレット化してもよい。押出機は多数の穴に流動体を通過させてペレット状にする装置であり、溶融混合された木質系材料と溶融混合用樹脂と繊維状素材とからなる流動体を押し出してペレット状にすることができる。造粒機は材料を投入する容器等に振動や回転を与えて微粒状の材料を結合させてペレット化する装置であり、振動や回転と同時に加熱可能である。従って、造粒機を使用すると木質系材料と溶融混合用樹脂と繊維状素材とは加熱されながら溶融混合され、ペレット状にされる。
【0007】
繊維状素材は、溶融状態の溶融混合用樹脂を付着することができればよく、様々なものを採用することができる。その一例として、請求項2にかかる発明は、上記繊維状素材は、上記溶融状態の溶融混合用樹脂と相溶性のある樹脂繊維である構成としてある。すなわち、溶融状態の溶融混合用樹脂が樹脂繊維に付着しやすくなるので、木質系成形体の強度はさらに向上する。
【0008】
また、請求項3にかかる発明のように、上記樹脂繊維は、上記溶融混合用樹脂と同じ素材である構成としてもよい。すなわち、確実に溶融状態の溶融混合用樹脂が樹脂繊維に付着するので、木質系成形体の強度はさらに向上する。
【0009】
上記溶融混合用樹脂と樹脂繊維の一例として、請求項4にかかる発明は、上記溶融混合用樹脂と樹脂繊維は、熱可塑性樹脂であるである構成としてある。すなわち、加熱することにより溶融混合用樹脂を溶融させて木質系材料、樹脂繊維と混合させることができ、冷却することにより固化させることができる。また、加熱することにより樹脂繊維の表面も溶融状態となるため、溶融混合用樹脂が樹脂繊維に強固に付着し、木質系成形体は高強度となる。
むろん、フェノール樹脂,ユリア樹脂,メラミン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いることも可能である。
【0010】
なお、上記樹脂繊維は、上記溶融状態の熱可塑性樹脂と相溶性があるとともに、融点が同熱可塑性樹脂よりも高い素材とされている構成としてもよい。すなわち、溶融状態の熱可塑性樹脂が樹脂繊維に付着しやすい一方、樹脂繊維自体は溶融されにくいので切断されにくい。従って、さらに木質系成形体の強度を向上させることができる。
【0011】
上記樹脂繊維は、単一の素材から形成されたものであってもよいし、複数の素材から形成されたものであってもよい。樹脂繊維を複数の素材から形成した構成の一例として、請求項5にかかる発明は、上記樹脂繊維は、第一の樹脂繊維と、同第一の樹脂繊維の外周に形成された第二の樹脂繊維とから構成され、同第一の樹脂繊維の融点が同第二の樹脂繊維の融点よりも高くされている構成としてある。すなわち、樹脂繊維は、加熱されても径方向内側の第一の樹脂繊維が溶融されにくいので混合されても切断されにくくなり、さらに木質系成形体の強度を向上させることができる。
【0012】
また、繊維状素材の別の素材の一例として、請求項6にかかる発明は、上記繊維状素材は、多孔質の鉱物繊維または/および多数の針状突起を有する鉱物繊維である構成としてある。すなわち、溶融状態の溶融混合用樹脂が多孔質の鉱物繊維の孔に入り込んだり、針状突起に絡まるようにして同鉱物繊維に強固に付着するので、木質系成形体の強度はさらに向上する。また、溶融混合用樹脂の高分子が鉱物繊維に強固に付着することにより、押出成形等により鉱物繊維は配向せず、押出方向とは略垂直方向に対する曲げ強度や引っ張り強度が向上する。
ここで、鉱物繊維としては、ワラストナイト、アスベスト、セピオライト、マグネシュウムウイスカ、等、様々なものを採用可能である。また、多孔質および多数の針状突起状とされていない鉱物繊維の場合には、同鉱物繊維に対して多孔質化する処理等を行えば本発明に使用することができる。
また、繊維状素材は、上記樹脂繊維と鉱物繊維との組み合わせであってもよい。
【0013】
上記溶融混合用樹脂は、単一の素材であってもよいし、複数の素材であってもよい。溶融混合用樹脂を複数の素材とする構成の一例として、請求項7にかかる発明は、上記溶融混合用樹脂には、所定の酸により変性された樹脂が含まれる構成としてある。すなわち、所定の酸により変性された樹脂と木質系材料とがなじみ易くなるので、さらに木質系成形体の強度を向上させることができる。ここで、所定の酸は樹脂に親水基を付与する酸であればよく、例えばマレイン酸等、種々の酸を使用可能である。
【0014】
繊維状素材として樹脂繊維を用いる場合において、溶融混合用樹脂と樹脂繊維とが疎水性樹脂であるとき、溶融混合用樹脂に所定の酸により変性された樹脂を併用することにより、溶融混合用樹脂は樹脂繊維に付着されるとともに木質系材料ともなじみが良くなって強固に結合し、木質系成形体は高強度となる。
また、繊維状素材として鉱物繊維を用いる場合、所定の酸により変性された樹脂は鉱物繊維ともなじみが良くなるので、強固な構造が形成され、木質系成形体は高強度となる。
【0015】
なお、木質系成形体は、上記木質系材料と溶融混合用樹脂と繊維状素材のみから構成されてもよいし、これら以外の材料が添加されて構成されてもよい。
【0016】
以上説明した木質系成形体において、その製造方法に発明の重要な技術的思想が含まれていると捉えることも可能である。そこで、請求項8にかかる発明のように、木質系成形体の製造方法としても発明は成立する。むろん、請求項2〜請求項7に対応させた方法の発明が成立することは言うまでもない。
ここで、木質系材料と溶融混合用樹脂と繊維状素材とを混合して成形した材料を硬化させる工程を付加してもよい。成形した材料を硬化させる手法は様々考えられ、冷却して固化させてもよいし、化学反応により硬化させてもよく、これらの場合のいずれも上記硬化に含まれる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1にかかる発明によれば、さらに強度を向上して木質系材料の有効利用を促進させることが可能となる。
請求項2、請求項3、請求項5、請求項7にかかる発明によれば、さらに木質系成形体の強度を向上させることができる。
請求項4にかかる発明によれば、容易に木質系成形体を製造することが可能となる。
【0018】
請求項6にかかる発明によれば、さらに木質系成形体の強度を向上させることができる。また、曲げ方向や引っ張り方向の違いによる強度の差を少なくすることが可能となる。
請求項8にかかる発明によれば、木質系成形体の強度をさらに向上して木質系材料の有効利用を促進させることが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)樹脂繊維を用いた木質系成形体とその製造方法:
(2)樹脂繊維の変形例:
(3)鉱物繊維を用いた木質系成形体とその製造方法:
(4)まとめ:
【0020】
(1)樹脂繊維を用いた木質系成形体とその製造方法:
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる木質系成形体とその製造方法を模式的に示している。本実施形態では、微粒状の木質系材料10と、熱可塑性樹脂(溶融混合用樹脂)20と、樹脂繊維(繊維状素材)30とを所定の素材として、木質系成形体80を製造する。その際、従来から樹脂製品の押出成形に用いられる機械50〜70を利用して木質系成形体80を製造することにしている。
種々の工場等で発生する廃材を粉砕して微粒状の木質系材料10を得る態様が、本発明の好適な実施形態である。木質系材料10の粒径は種々の径が採用可能であり、後述する熱可塑性樹脂20によって木質系材料10同士が結合できるような粒径であればよい。なお、木質系材料10がより微粉化されると、木質系成形体80の強度を向上させることができる。
【0021】
熱可塑性樹脂20としては、種々の樹脂を採用可能であり、例えば、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリメチルメタアクリレート,塩化ビニル,ナイロン,ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンテレフタレート等を使用可能である。むろん、これらの樹脂を複数組み合わせて使用してもよい。また、加熱混合機50に投入する際には、固形の原反として投入してもよいし、溶融された状態にして投入してもよい。
【0022】
上述したいずれかの樹脂のみを上記熱可塑性樹脂20とすることにより上記木質系成形体80を製造することができるが、本実施形態では、上記樹脂のいずれかを選択して熱可塑性樹脂20の主成分とするとともに、マレイン酸(所定の酸)を用いて選択された樹脂を変性したものを熱可塑性樹脂20の副成分としている。むろん、熱可塑性樹脂を変性させる酸はマレイン酸に限られないし、主成分とは異なる樹脂を変性したものを熱可塑性樹脂20の副成分としてもよい。熱可塑性樹脂20に占める変性した樹脂は、例えば1〜50重量%と様々な配合割合とすることができる。さらに、熱可塑性樹脂を酸により変性した樹脂も通常熱可塑性樹脂であるため、変性した樹脂のみを上記熱可塑性樹脂20として使用してもよい。
変性した樹脂を製造するには、例えば付加重合前の原料にマレイン酸を添加して付加重合を行えばよい。すると、付加重合後の高分子には、親水基の一つであるカルボキシル基が付加され、木質系材料10となじみが良くなっている。
【0023】
本実施形態の樹脂繊維30は、熱可塑性樹脂20と同じ素材としてある。従って、樹脂繊維30は、熱可塑性樹脂20と相溶性を有している。この結果、熱可塑性樹脂20は、溶融されると確実に樹脂繊維30に付着する。
加熱溶融された熱可塑性樹脂20により樹脂繊維30が溶融されすぎて切断されないようにするため、同樹脂繊維30は、大量に市販されて汎用的に用いられる通常の樹脂繊維の径よりも大きい径としてある。樹脂繊維30の径は、溶融混合時に木質系材料や熱可塑性樹脂と混合でき、かつ、溶融されて混合による剪断力によって切断されない径とされていればよい。一般的に、樹脂繊維30の径は0.1μm〜3mmであると強度が良好で良質の木質系成形体を製造することができる。
また、樹脂繊維30のアスペクト比(径に対する長さの比)は、木質系成形体に要求される性質に応じて適宜好ましい比を選択可能である。
【0024】
さらに、樹脂繊維30の素材も、溶融状態の熱可塑性樹脂20を付着させることが可能であれば、木質系成形体に要求される性質に応じて適宜好ましい素材を選択可能である。特に、熱可塑性樹脂20と相溶性があれば強度の良好な木質系成形体を得ることができるため、樹脂繊維30は熱可塑性樹脂20と同一の素材にされていなくてもよい。例えば、熱可塑性樹脂がポリエチレンであるとき、樹脂繊維をポリプロピレンとしてもよい。ポリエチレンとポリプロピレンとはともに疎水の樹脂であるため、相溶性があり、溶融状態のポリエチレンは容易にポリプロピレン製樹脂繊維に付着する。ここで、熱可塑性樹脂と樹脂繊維とは任意の割合で溶解可能な相溶性を有していてもよいし、ある範囲内の割合にて溶解可能な相溶性を有していてもよい。
【0025】
なお、ポリプロピレンの融点はポリエチレンの融点よりも高いため、ポリプロピレンが溶融されない温度とされればポリエチレンが加熱溶融されてもポリプロピレン製樹脂繊維は溶融されないことになる。すると、ポリプロピレン製樹脂繊維は表面に溶融されたポリエチレンを付着させながら混合による剪断力によって切断されにくいことになり、得られる木質系成形体の強度を向上させることができる。
【0026】
木質系材料10と熱可塑性樹脂20と樹脂繊維30の配合割合は、木質系成形体の用途に応じて適宜決定可能である。一般に、木質系材料が多いと温度変化による変形は少なく、より軽量化され、木質感が向上する。一方、熱可塑性樹脂が多いと、加熱軟化した素材の流動性は大きく、製造された木質系成形体は強度を意味する機械的性能が大きくなり、耐水性が向上する。各素材10〜30の重量割合は、木質系成形体に要求される性質に応じて適宜好ましい比率を選択可能である。
なお、木質系成形体に靱性を与え、ビス等の加工を可能にするための好ましい木質系材料10の配合割合は、70重量%以上である。
本実施形態では、木質系材料10と、同木質系材料10と等重量以下の熱可塑性樹脂20と、同熱可塑性樹脂20と等重量以下の樹脂繊維30とを、同熱可塑性樹脂20を溶融させながら混合して押し出し、成形する。
【0027】
上記熱可塑性樹脂20は、微粒状の木質系材料10と樹脂繊維30とともに加熱混合機50に投入され、加熱されながら木質系材料10と混合される。加熱混合機50は、下方に向かって径が徐々に狭まる略筒形状にされており、図示しないヒータや撹拌機やスクリュー等を備えている。そして、投入された原料をヒータにより加熱し、撹拌機により原料をかき混ぜながら混合し、スクリューにより混合された原料を下方に押し出す。
【0028】
ここで、ヒータは、樹脂繊維30全てを溶融させることなく熱可塑性樹脂20を溶融させる温度に上昇させることができればよく、熱可塑性樹脂や樹脂繊維の種類に応じてヒータの加熱能力を決定すればよい。原料の温度が熱可塑性樹脂の融点よりも高く、木質系材料が炭化しないようにヒータ部の加熱を設定すると、木質系材料を炭化させずに両者を溶融混合することができる。
また、撹拌機やスクリューの能力は、混合される素材の粘度等の性質に応じて決定すればよい。また、素材がよく溶融混合されると、良質の木質系成形体を製造することができる。
【0029】
加熱混合機50に投入された熱可塑性樹脂20は加熱されて溶融し、木質系材料10や樹脂繊維30と混合される。ここで、木質系材料10は多孔質であるので、木質系成形体80の構造を模式的に表す図2に示すように、溶融状態の熱可塑性樹脂20は、木質系材料10に滲み込みながら強固に付着する。木質系材料は親水性であるが、熱可塑性樹脂にはマレイン酸により親水性のカルボキシル基が付与された樹脂も併用されているので、熱可塑性樹脂は容易に親水性の木質系材料に滲み込む。すなわち、所定の酸により変性した樹脂は、疎水性の熱可塑性樹脂と親水性の木質系材料との橋渡しをさせる役目を果たすことになる。従って、熱可塑性樹脂が例えばポリプロピレンのように疎水性樹脂であっても、所定の酸により親水基を付与された樹脂が併用されることにより、熱可塑性樹脂を親水性の木質系材料に強固に付着させることが可能となる。
【0030】
また、木質系材料は水酸基等が存在するため、マレイン酸により変性した樹脂に含まれるカルボキシル基等の親水基によって同樹脂となじみが良くなる。
さらに、樹脂繊維30は溶融状態の熱可塑性樹脂20と相溶性がある同一素材とされているので、同熱可塑性樹脂20は確実に樹脂繊維30の表面に付着する。ここで、樹脂繊維30は溶融状態の熱可塑性樹脂20により全てが溶融されることのない径とされているので、同樹脂繊維30の長さ方向に対する垂直断面における径方向内側部分は繊維状態のまま残存し、木質系成形体を補強する。
【0031】
加熱混合機50により混合された材料は、流動体とされているため、下方に押し出され、押出機60に流れ込む。本押出機60は、図示しないスクリューを備えており、混合された材料を板状に成形して押し出す。図では、混合された材料が右方向に連続して押し出している様子を示している。そして、押出機60の材料出口に取り付けられた切断機70により、固化前の混合材料を切断する。このようにして、熱可塑性樹脂を溶融させながら混合された材料を、所定の形状に成形することができる。
【0032】
そして、切断された混合材料を冷却させると、同混合材料は固化し、木質系材料10と熱可塑性樹脂20と樹脂繊維30とから構成される木質系成形体80となる。ここで、成形された混合材料を固化させるには、同混合材料をベルトコンベア上にて自然に冷却するようにしてもよいし、製造効率を向上させるため、空冷や水冷等、強制的に冷却するようにしてもよい。
【0033】
以上説明した、微粒状の木質系材料と、熱可塑性樹脂と、溶融状態の同熱可塑性樹脂を付着可能な樹脂繊維とを、同熱可塑性樹脂を溶融させながら混合して成形することにより製造された木質系成形体は、以下の性質を有する。
図2で示したように、木質系成形体80は、熱可塑性樹脂20が多孔質の木質系材料10に滲み込んで強固に付着しているし、樹脂繊維30の表面に熱可塑性樹脂20の溶融した部分が付着しているので、樹脂繊維を使用していなかった従来と比べて強度が向上している。従って、木質系成形体の用途を拡げることが可能になるとともに、コンクリート等の軽量化を図るための軽量骨材等としても使用しやすくなり、木質系材料の有効利用を促進させることが可能となる。
【0034】
本実施形態では、熱可塑性樹脂20にマレイン酸により変性した樹脂を併用しているので、熱可塑性樹脂が疎水性樹脂であっても同熱可塑性樹脂を親水性の木質系材料に強固に付着させ、高強度の木質系成形体を製造することができる。また、マレイン酸により変性した樹脂と木質系材料10とのなじみが良くなって強固な構造が形成されるので、この点でも高強度の木質系成形体を得ることができる。
さらに、樹脂繊維30は溶融状態の熱可塑性樹脂20と相溶性があり、熱可塑性樹脂20は樹脂繊維30に対して容易にかつ強固に付着する。このように、所定の素材として単に繊維を添加するのではなく、溶融状態の溶融混合用樹脂を付着させることが可能な繊維状素材を用いることにより、木質系成形体の強度を向上させることができる。
なお、溶融混合用樹脂として熱可塑性樹脂を用いることにより、加熱して木質系成形や樹脂繊維と溶融混合させて成形し、冷却して固化させるという簡易な工程で木質系成形体を製造することができる。
【0035】
製造される木質系成形体は高強度であるものの、樹脂製品を製造する装置を利用して容易に押出成形や射出成形等の成形を行うことができる。なお、樹脂製品を製造する工場であれば、高額な設備投資が不要であるため、簡単に木質系成形体を製造することが可能となる。従って、製造された木質系成形体を、建造物の材料等(上記板状の木質系成形体であれば、家屋の壁や遊歩道の路面等)に使用することができ、大量に生じる廃材等から生成される木質系材料を有効利用することが可能となる。
また、木質系材料と熱可塑性樹脂と樹脂繊維の他に別の材料が添加されてから混合される場合であっても、同様の効果が得られることに変わりはない。
【0036】
さらに、図3に示すようにペレット化された木質系成形体81を成形しても、同木質系成形体81は高強度であるため、コンクリート骨材や、建築用材への混合材等として好適である。
図に示すように、上記加熱混合機50と同様の加熱混合機51に微粒状の木質系材料10と熱可塑性樹脂20と樹脂繊維30とを投入し、加熱することにより熱可塑性樹脂20を溶融させ、投入した素材を混合する。そして、混合した流動体をスクリューにて下方に押し出しつつペレット状に形成する。本加熱混合機51の材料出口には、拡大図に示すような多数の円形の流出穴51aを有する円形板状の部材が取り付けられている。混合された材料は流出穴51aから押し出され、切断機71にて所定の長さに切断される。切断された混合材料は、冷却され、固化する。このようにして、ペレット化された所定形状の木質系成形体81を成形することができる。
【0037】
製造された木質系成形体81は、建築用材等に配合して使用することができる。例えば、セメントと混合するための撹拌容器90に、木質系成形体81、セメント原料粉91、水92を投入し、撹拌する。むろん、砂利も撹拌容器90に投入してもよい。そして、所定の形状を有する建築用材の型に流し込むと、流し込まれた建築材料原料は時間の経過とともに固化して建築用材93となり、種々の建築物に使用することができる。
このように、本木質系成形体は高強度であるため、コンクリート骨材や建築用材の混合材料としても使用することができ、木質系材料を有効利用することができる。
【0038】
また、木質系材料と混合する溶融混合用樹脂として、図4に示すように、熱硬化性樹脂を使用してもよい。ここで、微粒状の木質系材料10と溶融状態の熱硬化性樹脂21と樹脂繊維31とは造粒機52に投入され、混合される。なお、樹脂繊維31には、溶融状態の熱硬化性樹脂21と相溶性のある素材を採用している。同造粒機52は、投入された原料を回転させながら加熱し、ペレット化するものである。すなわち、木質系材料10と熱硬化性樹脂21と樹脂繊維31とは、同熱硬化性樹脂21が溶融した状態で混合させられ、ペレット状に硬化されて、木質系成形体82とされる。このようにして成形された木質系成形体82も、高強度であるため、コンクリート骨材や建築用材の混合材料として使用することができる。
【0039】
なお、木質系成形体に機能性を付与するため、第四の材料として機能性材料を添加したうえで、混合して硬化させることにより木質系成形体を製造してもよい。この場合であっても、高強度の木質系成形体を提供することができる。第四の材料としては種々の物性を有する機能性材料を採用することができ、例えばフェライト材を採用すれば電磁波進入防止機能を持たせることができる。
【0040】
(2)樹脂繊維の変形例:
なお、多層構造とされた樹脂繊維を用いて木質系成形体を成形してもよい。図5は、変形例にかかる木質系成形体の製造に用いる樹脂繊維の長さ方向とは垂直な断面と製造された木質系成形体の構造とを模式的に示す図である。
図の上段に示すように、樹脂繊維32は、第一・第二の樹脂繊維32a,bから構成され、2層構造とされている。すなわち、長さ方向とは垂直な断面における径方向内側が第一の樹脂繊維32aとされ、同第一の樹脂繊維32aの外周に第二の樹脂繊維32bの層が形成されている。そして、第一の樹脂繊維32aの融点は、第二の樹脂繊維32bの融点よりも高くされている。第一・第二の樹脂繊維の組み合わせは様々考えられ、例えば、第一の樹脂繊維をポリプロピレンとすると第二の樹脂繊維をポリエチレンとすることができる。このとき、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン等を採用することができる。
【0041】
微粒状の木質系材料10と熱可塑性樹脂と樹脂繊維32とが加熱されながら混合されると、熱可塑性樹脂が溶融し、図の下段に示すように、同じ素材である第二の樹脂繊維32bに強固に付着する。一方、第一の樹脂繊維32aは、融点が第二の樹脂繊維32bよりも高いため熱可塑性樹脂が加熱溶融されても溶融されにくく、混合による剪断力により切断されにくい。すなわち、樹脂繊維32の長さ方向に対する垂直断面における径方向内側部分は確実に繊維状態のまま残存し、木質系成形体を補強する。従って、さらに木質系成形体の強度を向上させることができる。
【0042】
(3)鉱物繊維を用いた木質系成形体とその製造方法:
本発明を適用可能な繊維状素材は、上述した樹脂繊維以外にも様々なものがある。
例えば、比表面積の大きい多孔質の鉱物繊維や、やはり比表面積の大きい多数の針状突起を有する鉱物繊維(いわゆる毛羽立った鉱物繊維)を用いてもよい。これらの場合であっても、図1で示した流れにより木質系成形体80を製造することができる。以下、第二の実施形態にかかる木質系成形体とその製造方法を、図1を参照して説明する。
【0043】
多孔質の鉱物繊維または/および多数の針状突起を有する鉱物繊維としては、セピオライト(Si12Mg30(OH)(HO)・8HO)、ワラストナイト(CaSiO)、アスベスト(石綿)、マグネシウムウイスカ、等、様々なものを採用可能である。例えば、セピオライトは、多孔質であるとともに多数の針状突起を有する繊維状の結晶からなる鉱物である。
鉱物繊維40の大きさは、溶融混合時に木質系材料や熱可塑性樹脂と混合でき、かつ、溶融されて混合による剪断力によって切断されない太さとされていればよい。
また、鉱物繊維40のアスペクト比は、木質系成形体に要求される性質に応じて適宜好ましい比を選択可能である。
【0044】
溶融混合用樹脂としては、第一の実施形態と同じ樹脂を使用可能である。本実施形態でも、マレイン酸により変性した樹脂を一部に含む熱可塑性樹脂20を使用するものとする。鉱物繊維40も水酸基等が含まれており、変性した樹脂に含まれるカルボキシル基等により同樹脂となじみが良くなる。
【0045】
木質系材料10と熱可塑性樹脂20と鉱物繊維40とを加熱混合機50に投入すると、熱可塑性樹脂20は加熱により溶融され、微粒状の木質系材料10や鉱物繊維40と混合される。混合された材料は、下方に押し出され、押出機60に流れ込む。同混合された材料は、押出機60のスクリューにて板状に成形されて押し出され、切断機70により固化前の状態で切断される。そして、切断された混合材料を冷却させると、同混合材料は固化し、木質系材料10と熱可塑性樹脂20と鉱物繊維40とから構成される板状の木質系成形体80となる。このとき、鉱物繊維40は溶融されないので、確実に繊維状態のまま残存し、木質系成形体を補強する。
【0046】
ここで、鉱物繊維40を用いない従来の場合、図6の左側に示すように、熱可塑性樹脂20の高分子鎖20aや木質系材料10は押出機からの押出方向(図では上下方向)に配向するので、同押出方向とは略垂直方向(図では左右方向)に対して曲げ強度や引っ張り強度が小さい木質系成形体が製造されていた。押出成形以外に射出成形等でも、同様の現象が生じていた。本実施形態のように、混合する素材として鉱物繊維40を用いると、図の右側に示すように、溶融状態の熱可塑性樹脂の高分子鎖20aが多孔質の鉱物繊維の孔に入り込んだり、針状突起に絡まるようにして同鉱物繊維に強固に付着する。この結果、製造される木質系成形体80は、高強度となる。また、押出成形等により熱可塑性樹脂の高分子鎖や木質系材料は押出方向に配向するものの、鉱物繊維は押出方向に配向しないので、同押出方向とは略垂直方向に対する曲げ強度や引っ張り強度が向上し、曲げ方向や引っ張り方向の違いによる強度の差は小さくなる。特に、鉱物繊維40が多数の針状突起を有していると、押出成形等による鉱物繊維の配向を効果的に防止することができる。
なお、繊維状素材として上記鉱物繊維を用いる場合でも、木質系成形体をペレット状に成形することができる。すると、コンクリート等への混合材料として使用することも可能となる。また、溶融混合用樹脂として熱硬化性樹脂等を用いてもよい。
【0047】
以上説明した、微粒状の木質系材料と、熱可塑性樹脂と、多孔質の鉱物繊維または/および多数の針状突起を有する鉱物繊維とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形した木質系成形体は、以下の性質を有する。
すなわち、木質系成形体は、熱可塑性樹脂20が多孔質の木質系材料10に滲み込んで強固に付着しているし、溶融状態の熱可塑性樹脂の高分子鎖20aが多孔質の鉱物繊維の孔に入り込んだり針状突起に絡まるようにして同鉱物繊維に強固に付着しているし、マレイン酸により変性した樹脂が木質系材料10および鉱物繊維40となじみが良くなっているので、樹脂繊維を使用していなかった従来と比べて強度が向上している。また、鉱物繊維が配向しないので、曲げ方向や引っ張り方向の違いによる強度の差は小さくなり、木質系成形体の品質を向上させることができる。従って、木質系成形体の用途をさらに拡げることが可能になるとともに、コンクリート等の軽量化を図るための軽量骨材等としても使用しやすくなり、木質系材料の有効利用をさらに促進させることが可能となる。
なお、鉱物繊維は一般に樹脂繊維より安価であるため、鉱物繊維を使用することにより木質系成形体のコストダウンを図ることができる。
【0048】
(4)まとめ:
なお、上記繊維状素材は、上記鉱物繊維40と樹脂繊維30との組み合わせであってもよい。すると、押出成形等により鉱物繊維は配向せず、曲げ方向や引っ張り方向の違いによる強度の差を小さくすることができるので、高強度かつ品質の良好な木質系成形体を製造することができる。
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、さらに強度を向上して木質系材料の有効利用を促進させることが可能な木質系成形体および木質系成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】木質系成形体とその製造方法を模式的に示す図である。
【図2】木質系成形体の構造を模式的に示す図である。
【図3】変形例にかかる木質系成形体とその製造方法を模式的に示す図である。
【図4】変形例にかかる木質系成形体とその製造方法を模式的に示す図である。
【図5】変形例にかかる木質系成形体の製造に用いる樹脂繊維の断面と木質系成形体の構造とを模式的に示す図である。
【図6】第二の実施形態における鉱物繊維の添加の有無による木質系成形体の構造の違いを模式的に示す図である。
【符号の説明】
10…木質系材料
20…熱可塑性樹脂(溶融混合用樹脂)
20a…高分子鎖
21…熱硬化性樹脂(溶融混合用樹脂)
30〜32…樹脂繊維(繊維状素材)
32a…第一の樹脂繊維
32b…第二の樹脂繊維
40…鉱物繊維(繊維状素材)
50,51…加熱混合機
52…造粒機
60…押出機
70,71…切断機
80〜82…木質系成形体

Claims (8)

  1. 微粒状の木質系材料と、溶融可能な溶融混合用樹脂と、溶融状態の同溶融混合用樹脂を付着可能な繊維状素材とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形したことを特徴とする木質系成形体。
  2. 上記繊維状素材は、上記溶融状態の溶融混合用樹脂と相溶性のある樹脂繊維であることを特徴とする請求項1に記載の木質系成形体。
  3. 上記樹脂繊維は、上記溶融混合用樹脂と同じ素材であることを特徴とする請求項2に記載の木質系成形体。
  4. 上記溶融混合用樹脂と樹脂繊維は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の木質系成形体。
  5. 上記樹脂繊維は、第一の樹脂繊維と、同第一の樹脂繊維の外周に形成された第二の樹脂繊維とから構成され、同第一の樹脂繊維の融点が同第二の樹脂繊維の融点よりも高くされていることを特徴とする請求項4に記載の木質系成形体。
  6. 上記繊維状素材は、多孔質の鉱物繊維または/および多数の針状突起を有する鉱物繊維であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の木質系成形体。
  7. 上記溶融混合用樹脂には、所定の酸により変性された樹脂が含まれることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の木質系成形体。
  8. 微粒状の木質系材料と、溶融可能な溶融混合用樹脂と、溶融状態の同溶融混合用樹脂を付着可能な繊維状素材とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形することを特徴とする木質系成形体の製造方法。
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