JP2004017167A - 螺子の締付方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸力を安定して管理できる螺子の締付方法を提供すること。
【解決手段】締付トルクTと締付角度θの計測データ(最新のn点)からトルク勾配(dT/dθ)i を算出し、そのトルク勾配が安定したか否かを判定する。トルク勾配が安定した場合は、その安定領域におけるトルク勾配がトルク線図の角度軸と交わった点を仮の締付開始角度θsiとして求め、更にトルク勾配の安定領域全体で平均化して真の締付開始角度θS を算出する。その締付開始角度θS から締付終了角度θE を求めて、現在の締付角度θi が締付終了角度θE に到達した場合に締付を終了する。この方法によれば、トルク勾配の安定領域から締付開始角度θS を求めているので、軸力のバラツキを抑えることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】締付トルクTと締付角度θの計測データ(最新のn点)からトルク勾配(dT/dθ)i を算出し、そのトルク勾配が安定したか否かを判定する。トルク勾配が安定した場合は、その安定領域におけるトルク勾配がトルク線図の角度軸と交わった点を仮の締付開始角度θsiとして求め、更にトルク勾配の安定領域全体で平均化して真の締付開始角度θS を算出する。その締付開始角度θS から締付終了角度θE を求めて、現在の締付角度θi が締付終了角度θE に到達した場合に締付を終了する。この方法によれば、トルク勾配の安定領域から締付開始角度θS を求めているので、軸力のバラツキを抑えることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸力を安定して管理するための螺子の締付方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
軸力を管理するための螺子の締付方法として、一般によく使われるトルク法と角度法がある。トルク法は、ナットランナ等の締付装置から出力される締付トルクから軸力を管理するものであるが、トルクと軸力との間に摩擦係数が関わるため、その摩擦係数のバラツキにより軸力を安定して管理できない。
一方、角度法は、締付装置から出力される締付角度値から軸力を管理するものであるが、角度制御の開始角度をある一定のトルク(スナッグトルクと呼ぶ)で決めているため、一部だがトルク法制御を含む。このため、角度法でも軸力を安定に管理することができなかった。
【0003】
上記角度法の改良として、特開昭62−102978 号公報には、スナッグトルクに依らず、開始角度を求める方法(従来技術▲1▼)が提案されている。これは、トルク−角度曲線がほぼ直線に収束する任意の角度2点を予め決めておき、この時のトルクから仮想直線を引き、この線が角度軸と交わった点を開始角度とするものである。
また、特開昭63−74577号公報には、開始角度をモニタし、開始角度が収束した時を真の開始角度とする方法(従来技術▲2▼)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の従来技術▲1▼では、図7に示す様に、予め決めた2点でトルク−角度曲線が直線に収束しない場合、開始角度にズレが生じるため、軸力を安定して管理できないという問題がある。
また、従来技術▲2▼では、図8に示す様に、トルク勾配の微小な変化に対して開始角度が敏感に反応するため、開始角度の変化量が大きくなり、収束の判断が困難である。また、一度でも収束したと判断すると、それによって締付終了角度を決めてしまうため、開始角度が変化した時に対応できず、やはり軸力のバラツキが大きくなるという問題があった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、軸力を安定して管理できる螺子の締付方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)
本発明は、螺子に加えられる締付トルクと締付角度の最新n個の計測データからトルク勾配を随時算出し、そのトルク勾配が安定したか否かを判定して、安定した場合には、その安定領域におけるトルク勾配がトルク線図の角度軸と交わった点を締付開始角度とすることを特徴とする。
本発明の方法では、トルク勾配が安定してから締付開始角度を求めているので、安定して軸力を管理することができる。即ち、トルク勾配の安定領域では、角度軸に対するトルク勾配の角度が安定する(傾きのバラツキが小さい)ので、精度良く締付開始角度を求めることができる。
【0006】
(請求項2の発明)
請求項1に記載した螺子の締付方法において、
トルク勾配の安定領域全体に対して近似直線を引き、この近似直線が角度軸と交わった点を締付開始角度とする。
この方法では、トルク勾配の安定領域全体に対して近似直線を引いているので、安定領域でのトルク勾配の微小な変動を吸収でき、精度良く締付開始角度を求めることができる。
【0007】
(請求項3の発明)
請求項1に記載した螺子の締付方法において、
トルク勾配の安定領域でトルク勾配を随時算出すると共に、その算出された個々のトルク勾配が角度軸と交わった点をそれぞれ仮の締付開始角度として求め、これら仮の締付開始角度を平均化して真の締付開始角度とする。
この方法では、個々に求められる仮の締付開始角度を平均化することにより、トルク勾配の微小な変化による締付開始角度のバラツキを吸収できるので、より精度の高い締付開始角度を求めることが可能である。
【0008】
(請求項4の発明)
請求項1〜3に記載した何れかの螺子の締付方法において、
締付開始角度が決定された後、その締付開始角度に所定の回転角度を加算して締付終了角度を算出し、現在の締付角度が締付終了角度に到達した時点で螺子の締め付けを終了することを特徴とする。
この方法によれば、締付開始角度と共に締付終了角度を精度良く求めることができるので、現在の締付角度が締付終了角度に到達した時点で締め付け終了することにより、軸力の安定化を図ることができる。
【0009】
(請求項5の発明)
請求項4に記載した螺子の締付方法において、
現在の締付角度が締付終了角度に到達するまで継続してトルク勾配を監視し、そのトルク勾配が収束する安定領域が段階的に現れる場合は、最新の安定領域から締付開始角度を求めることを特徴とする。
この方法では、一旦トルク勾配が収束した後、再びトルク勾配が上昇し、その後、再度収束する様な場合(トルク勾配が段階的に現れる場合)に、最初に現れる安定領域から求めた締付開始角度ではなく、最新の安定領域から求めた締付開始角度を最終の締付開始角度として決定することにより、トルク勾配の変動にも影響されることなく、精度良く締付開始角度を求めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は螺子の締付角度に対する締付トルクの変化を示すトルク線図(a) と、螺子の締付角度に対するトルク勾配の変化を示すトルク勾配線図(b) である。
本実施例に示す締付方法は、例えばディーゼル機関のインジェクタに使用されるバルブとオリフィスのような高硬度部品同士の締め付けに有効であり、図2に示す螺子締付装置1により実施される。
【0011】
螺子締付装置1は、螺子2の頭部2aに嵌合するナットランナ3と、このナットランナ3に回転力を付与するモータ4、螺子2に加わる締付トルクを測定するトランスデューサ5、螺子2の締付角度を検出するエンコーダ6、モータ4を制御する制御装置7、及び螺子2に加えられる締付力を軸力として付加する軸力付加部品8等より構成される。
【0012】
制御装置7は、中央処理装置(CPU)、メモリ、I/O装置等を備えるマイクロコンピュータであり、トランスデューサ5とエンコーダ6からの信号を入力して所定の演算を行い、その演算結果に従ってモータ4を制御する。
なお、トランスデューサ5及びエンコーダ6は、従来の螺子締付装置にも使用されている極めて周知なものであり、説明は省略する。
【0013】
次に、モータ4を制御する制御装置7の処理手順を図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
Step10…現在の締付トルクTi が規定トルク(予め設定された締付トルクの上限値)より小さいか否かを判定する。
この判定結果がNOの場合は、トルクオーバと判定されて処理を終了する。判定結果がYES の場合は次のStep20へ進む。
Step20…締付トルクTと締付角度θの計測データ(最新のn点)からトルク勾配(dT/dθ)i を算出する。
【0014】
Step30…トルク勾配が安定したか否かを判定(収束判定)する。
この判定は、次式▲1▼に示す様に、今回算出されたトルク勾配(dT/dθ)i と前回算出されたトルク勾配(dT/dθ)i−1 との比αを求め、そのαが所定の範囲内に入る時に安定したものと判定する。
α1 ≦α≦α2 …………………………………………………………▲1▼
なお、α1 及びα2 は、実験等で得られた任意の定数である。
この判定結果がNOの場合、つまり安定していない場合はStep40へ進み、判定結果がYES の場合はStep60へ進む。
【0015】
Step40…メモリP及びカウンタjをリセットしてStep50へ進む。
Step50…序数iを更新(i=i+1)してStep10へ戻る。
Step60…今回算出されたトルク勾配(dT/dθ)i から次式▲2▼に従って仮の締付開始角度θsiを推定する。
θsi=〔(dT/dθ)i ×θi −Ti 〕/(dT/dθ)i ……………▲2▼
なお、θi :現在の締付角度
【0016】
Step70…メモリPとカウンタjをそれぞれ更新する。
メモリPは、Step60で算出された仮の締付開始角度θsiを累計して順次更新する。カウンタjは、Step70を通過する毎にカウンタ値を“1”ずつアップする。
Step80…トルク勾配の安定領域全体で仮の締付開始角度θsiを平均化して真の締付開始角度θS を算出する。
ここでは、次式▲3▼に示す様に、メモリPに記憶された仮の締付開始角度θsiの累計値をカウンタjのカウンタ値で除算して平均化する。
θS =P/j……………………………………………………………▲3▼
【0017】
Step90…締付終了角度θE を算出する。
このθE は、次式▲4▼に示す様に、Step80で求めた真の締付開始角度θS に予め設定されている必要締付角度θL を加算して求められる(図1(a) 参照)。
θE =θS +θL ………………………………………………………▲4▼
Step100 …現在の締付角度θi が締付終了角度θE に到達したか否かを判定する。この判定結果がYES の場合は、締付が完了したものとして処理を終了する。判定結果がNOの場合は、Step50で序数iを更新した後、Step10へ戻る。
【0018】
(第1実施例の効果)
本実施例の方法では、図1に示す様に、トルク勾配の安定領域から締付開始角度θS を求めているので、軸力のバラツキを抑えることができる。即ち、トルク勾配の安定領域では、角度軸に対するトルク勾配の角度が安定する(傾きのバラツキが小さい)ので、精度良く締付開始角度θS を求めることができる。特に、上記の実施例では、個々に求められる仮の締付開始角度θsiを平均化して真の締付開始角度θS を求めているので、トルク勾配の微小な変化による締付開始角度θS のバラツキを吸収でき、より精度の高い締付開始角度θS を求めることが可能である。その結果、締付開始角度θS から必要締付角度θL だけ螺子2を締め付けることにより、軸力を安定して管理することができる。
【0019】
また、従来技術で説明した角度法では、スナッグトルクに達した時点を締付開始角度としているため、スナッグトルクの安定化が必須であり、そのために2度締めを行っている。これは、一旦締め付けて緩めることでネジ面や座面を馴らし、摩擦係数の安定を狙っている。但し、2度締めを行うことでサイクルタイムが大幅に上昇する欠点がある。これに対し、第1実施例に記載した方法では、摩擦係数の安定した領域が少しでもあれば締付開始角度を見出せるため、2度締めを行う必要が無く、締め付け工程を大幅に高速化できる。
【0020】
なお、本実施例では、トルク勾配の安定領域全体で仮の締付開始角度θsiを平均化して真の締付開始角度θS を算出しているが、トルク勾配の安定領域全体でなくても、安定領域の中で算出される複数のトルク勾配から求められる仮の締付開始角度θsiを平均化して真の締付開始角度θS を算出しても良い。
【0021】
(第2実施例)
図4は制御装置7の処理手順を示すフローチャートである。
本実施例は、締付開始角度の求め方が第1実施例の場合と異なるもので、以下にその方法を説明する。
なお、Step10〜Step30までの処理は第1実施例と同じであり(説明は省略する)、Step30の判定結果がNOの場合、つまりトルク勾配が安定していない場合はStep10へ戻り、判定結果がYES の場合はStep60へ進む。
【0022】
Step60…トルク勾配の安定領域全体に対して近似直線を引き、その近似直線がトルク線図の角度軸と交わる点を締付開始角度θS として求める。
Step90…締付終了角度θE を算出する。このθE は、次式▲5▼に示す様に、Step60で求めた締付開始角度θS に、予め設定されている必要締付角度θL を加算して求められる。
θE =θS +θL ………………………………………………………▲5▼
Step100 …現在の締付角度θi が締付終了角度θE に到達したか否かを判定する。この判定結果がYES の場合は、締付が完了したものとして処理を終了する。判定結果がNOの場合はStep10へ戻る。
【0023】
(第2実施例の効果)
本実施例の方法では、トルク勾配の安定領域全体で近似直線を引いているので、安定領域でのトルク勾配の微小な変動を吸収できるため、精度良く締付開始角度θS を求めることができる。
この実施例では、トルク勾配の安定領域全体で近似直線を引いて締付開始角度θS を求めているが、トルク勾配が安定したと判断された時に求められる最初の締付開始角度を用いることもできる。
【0024】
(第3実施例)
図5は単純形状ワークを締め付けた場合のトルク線図、図6は異形状ワークを締め付けた場合のトルク線図である。
本実施例は、トルク勾配の安定領域が段階的に現れる場合の一例である。
トルク勾配は、締付力を受ける座面の接触面積が影響するため、螺子部品のガタや座面の形状精度等により、トルク勾配の非安定領域が発生する。
【0025】
例えば、図5に示す様な単純形状ワークを締め付ける場合は、締付開始から部品同士の接触面積が変化することで非安定領域が発生し、その後、部品同士が完全に密着すると、トルク勾配が収束して安定する。
これに対し、図6に示す様な異形状ワーク(例えば孔や溝等を有するワーク)を締め付ける場合は、締付開始から非安定領域を経て部品同士の一部が密着すると、一旦トルク勾配が安定する。しかし、更に締め付けが進むと、他の部位が接触を開始することにより、再度非安定領域が発生することがある。
【0026】
この様な場合、最初に現れる安定領域から締付開始角度を求めると、締付終了角度が変化して安定した軸力が得られなくなる。そこで、現在の締付角度が締付終了角度に到達するまで継続してトルク勾配を監視し、そのトルク勾配の安定領域が段階的に現れる場合は、最新の安定領域から締付開始角度を求める(締付開始角度を求める方法は第1実施例または第2実施例と同じである)こととする。これにより、更に精度良く締付開始角度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】螺子の締付角度に対する締付トルクの変化を示すトルク線図(a) と螺子の締付角度に対するトルク勾配の変化を示すトルク勾配線図(b) である。
【図2】螺子締付装置の全体図である。
【図3】制御装置の処理手順を示すフローチャートである(第1実施例)。
【図4】制御装置の処理手順を示すフローチャートである(第2実施例)。
【図5】単純形状ワークを締め付けた場合のトルク線図である。
【図6】
異形状ワークを締め付けた場合のトルク線図である(第3実施例)。
【図7】
螺子の締付角度に対する締付トルクの変化を示すトルク線図である(従来技術
の説明)。
【図8】
トルク勾配の微小な変化に対する締付開始角度の変化量を示すグラフである(
従来技術の説明)。
【符号の説明】
1 螺子締付装置
2 螺子
7 制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸力を安定して管理するための螺子の締付方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
軸力を管理するための螺子の締付方法として、一般によく使われるトルク法と角度法がある。トルク法は、ナットランナ等の締付装置から出力される締付トルクから軸力を管理するものであるが、トルクと軸力との間に摩擦係数が関わるため、その摩擦係数のバラツキにより軸力を安定して管理できない。
一方、角度法は、締付装置から出力される締付角度値から軸力を管理するものであるが、角度制御の開始角度をある一定のトルク(スナッグトルクと呼ぶ)で決めているため、一部だがトルク法制御を含む。このため、角度法でも軸力を安定に管理することができなかった。
【0003】
上記角度法の改良として、特開昭62−102978 号公報には、スナッグトルクに依らず、開始角度を求める方法(従来技術▲1▼)が提案されている。これは、トルク−角度曲線がほぼ直線に収束する任意の角度2点を予め決めておき、この時のトルクから仮想直線を引き、この線が角度軸と交わった点を開始角度とするものである。
また、特開昭63−74577号公報には、開始角度をモニタし、開始角度が収束した時を真の開始角度とする方法(従来技術▲2▼)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の従来技術▲1▼では、図7に示す様に、予め決めた2点でトルク−角度曲線が直線に収束しない場合、開始角度にズレが生じるため、軸力を安定して管理できないという問題がある。
また、従来技術▲2▼では、図8に示す様に、トルク勾配の微小な変化に対して開始角度が敏感に反応するため、開始角度の変化量が大きくなり、収束の判断が困難である。また、一度でも収束したと判断すると、それによって締付終了角度を決めてしまうため、開始角度が変化した時に対応できず、やはり軸力のバラツキが大きくなるという問題があった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、軸力を安定して管理できる螺子の締付方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)
本発明は、螺子に加えられる締付トルクと締付角度の最新n個の計測データからトルク勾配を随時算出し、そのトルク勾配が安定したか否かを判定して、安定した場合には、その安定領域におけるトルク勾配がトルク線図の角度軸と交わった点を締付開始角度とすることを特徴とする。
本発明の方法では、トルク勾配が安定してから締付開始角度を求めているので、安定して軸力を管理することができる。即ち、トルク勾配の安定領域では、角度軸に対するトルク勾配の角度が安定する(傾きのバラツキが小さい)ので、精度良く締付開始角度を求めることができる。
【0006】
(請求項2の発明)
請求項1に記載した螺子の締付方法において、
トルク勾配の安定領域全体に対して近似直線を引き、この近似直線が角度軸と交わった点を締付開始角度とする。
この方法では、トルク勾配の安定領域全体に対して近似直線を引いているので、安定領域でのトルク勾配の微小な変動を吸収でき、精度良く締付開始角度を求めることができる。
【0007】
(請求項3の発明)
請求項1に記載した螺子の締付方法において、
トルク勾配の安定領域でトルク勾配を随時算出すると共に、その算出された個々のトルク勾配が角度軸と交わった点をそれぞれ仮の締付開始角度として求め、これら仮の締付開始角度を平均化して真の締付開始角度とする。
この方法では、個々に求められる仮の締付開始角度を平均化することにより、トルク勾配の微小な変化による締付開始角度のバラツキを吸収できるので、より精度の高い締付開始角度を求めることが可能である。
【0008】
(請求項4の発明)
請求項1〜3に記載した何れかの螺子の締付方法において、
締付開始角度が決定された後、その締付開始角度に所定の回転角度を加算して締付終了角度を算出し、現在の締付角度が締付終了角度に到達した時点で螺子の締め付けを終了することを特徴とする。
この方法によれば、締付開始角度と共に締付終了角度を精度良く求めることができるので、現在の締付角度が締付終了角度に到達した時点で締め付け終了することにより、軸力の安定化を図ることができる。
【0009】
(請求項5の発明)
請求項4に記載した螺子の締付方法において、
現在の締付角度が締付終了角度に到達するまで継続してトルク勾配を監視し、そのトルク勾配が収束する安定領域が段階的に現れる場合は、最新の安定領域から締付開始角度を求めることを特徴とする。
この方法では、一旦トルク勾配が収束した後、再びトルク勾配が上昇し、その後、再度収束する様な場合(トルク勾配が段階的に現れる場合)に、最初に現れる安定領域から求めた締付開始角度ではなく、最新の安定領域から求めた締付開始角度を最終の締付開始角度として決定することにより、トルク勾配の変動にも影響されることなく、精度良く締付開始角度を求めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は螺子の締付角度に対する締付トルクの変化を示すトルク線図(a) と、螺子の締付角度に対するトルク勾配の変化を示すトルク勾配線図(b) である。
本実施例に示す締付方法は、例えばディーゼル機関のインジェクタに使用されるバルブとオリフィスのような高硬度部品同士の締め付けに有効であり、図2に示す螺子締付装置1により実施される。
【0011】
螺子締付装置1は、螺子2の頭部2aに嵌合するナットランナ3と、このナットランナ3に回転力を付与するモータ4、螺子2に加わる締付トルクを測定するトランスデューサ5、螺子2の締付角度を検出するエンコーダ6、モータ4を制御する制御装置7、及び螺子2に加えられる締付力を軸力として付加する軸力付加部品8等より構成される。
【0012】
制御装置7は、中央処理装置(CPU)、メモリ、I/O装置等を備えるマイクロコンピュータであり、トランスデューサ5とエンコーダ6からの信号を入力して所定の演算を行い、その演算結果に従ってモータ4を制御する。
なお、トランスデューサ5及びエンコーダ6は、従来の螺子締付装置にも使用されている極めて周知なものであり、説明は省略する。
【0013】
次に、モータ4を制御する制御装置7の処理手順を図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
Step10…現在の締付トルクTi が規定トルク(予め設定された締付トルクの上限値)より小さいか否かを判定する。
この判定結果がNOの場合は、トルクオーバと判定されて処理を終了する。判定結果がYES の場合は次のStep20へ進む。
Step20…締付トルクTと締付角度θの計測データ(最新のn点)からトルク勾配(dT/dθ)i を算出する。
【0014】
Step30…トルク勾配が安定したか否かを判定(収束判定)する。
この判定は、次式▲1▼に示す様に、今回算出されたトルク勾配(dT/dθ)i と前回算出されたトルク勾配(dT/dθ)i−1 との比αを求め、そのαが所定の範囲内に入る時に安定したものと判定する。
α1 ≦α≦α2 …………………………………………………………▲1▼
なお、α1 及びα2 は、実験等で得られた任意の定数である。
この判定結果がNOの場合、つまり安定していない場合はStep40へ進み、判定結果がYES の場合はStep60へ進む。
【0015】
Step40…メモリP及びカウンタjをリセットしてStep50へ進む。
Step50…序数iを更新(i=i+1)してStep10へ戻る。
Step60…今回算出されたトルク勾配(dT/dθ)i から次式▲2▼に従って仮の締付開始角度θsiを推定する。
θsi=〔(dT/dθ)i ×θi −Ti 〕/(dT/dθ)i ……………▲2▼
なお、θi :現在の締付角度
【0016】
Step70…メモリPとカウンタjをそれぞれ更新する。
メモリPは、Step60で算出された仮の締付開始角度θsiを累計して順次更新する。カウンタjは、Step70を通過する毎にカウンタ値を“1”ずつアップする。
Step80…トルク勾配の安定領域全体で仮の締付開始角度θsiを平均化して真の締付開始角度θS を算出する。
ここでは、次式▲3▼に示す様に、メモリPに記憶された仮の締付開始角度θsiの累計値をカウンタjのカウンタ値で除算して平均化する。
θS =P/j……………………………………………………………▲3▼
【0017】
Step90…締付終了角度θE を算出する。
このθE は、次式▲4▼に示す様に、Step80で求めた真の締付開始角度θS に予め設定されている必要締付角度θL を加算して求められる(図1(a) 参照)。
θE =θS +θL ………………………………………………………▲4▼
Step100 …現在の締付角度θi が締付終了角度θE に到達したか否かを判定する。この判定結果がYES の場合は、締付が完了したものとして処理を終了する。判定結果がNOの場合は、Step50で序数iを更新した後、Step10へ戻る。
【0018】
(第1実施例の効果)
本実施例の方法では、図1に示す様に、トルク勾配の安定領域から締付開始角度θS を求めているので、軸力のバラツキを抑えることができる。即ち、トルク勾配の安定領域では、角度軸に対するトルク勾配の角度が安定する(傾きのバラツキが小さい)ので、精度良く締付開始角度θS を求めることができる。特に、上記の実施例では、個々に求められる仮の締付開始角度θsiを平均化して真の締付開始角度θS を求めているので、トルク勾配の微小な変化による締付開始角度θS のバラツキを吸収でき、より精度の高い締付開始角度θS を求めることが可能である。その結果、締付開始角度θS から必要締付角度θL だけ螺子2を締め付けることにより、軸力を安定して管理することができる。
【0019】
また、従来技術で説明した角度法では、スナッグトルクに達した時点を締付開始角度としているため、スナッグトルクの安定化が必須であり、そのために2度締めを行っている。これは、一旦締め付けて緩めることでネジ面や座面を馴らし、摩擦係数の安定を狙っている。但し、2度締めを行うことでサイクルタイムが大幅に上昇する欠点がある。これに対し、第1実施例に記載した方法では、摩擦係数の安定した領域が少しでもあれば締付開始角度を見出せるため、2度締めを行う必要が無く、締め付け工程を大幅に高速化できる。
【0020】
なお、本実施例では、トルク勾配の安定領域全体で仮の締付開始角度θsiを平均化して真の締付開始角度θS を算出しているが、トルク勾配の安定領域全体でなくても、安定領域の中で算出される複数のトルク勾配から求められる仮の締付開始角度θsiを平均化して真の締付開始角度θS を算出しても良い。
【0021】
(第2実施例)
図4は制御装置7の処理手順を示すフローチャートである。
本実施例は、締付開始角度の求め方が第1実施例の場合と異なるもので、以下にその方法を説明する。
なお、Step10〜Step30までの処理は第1実施例と同じであり(説明は省略する)、Step30の判定結果がNOの場合、つまりトルク勾配が安定していない場合はStep10へ戻り、判定結果がYES の場合はStep60へ進む。
【0022】
Step60…トルク勾配の安定領域全体に対して近似直線を引き、その近似直線がトルク線図の角度軸と交わる点を締付開始角度θS として求める。
Step90…締付終了角度θE を算出する。このθE は、次式▲5▼に示す様に、Step60で求めた締付開始角度θS に、予め設定されている必要締付角度θL を加算して求められる。
θE =θS +θL ………………………………………………………▲5▼
Step100 …現在の締付角度θi が締付終了角度θE に到達したか否かを判定する。この判定結果がYES の場合は、締付が完了したものとして処理を終了する。判定結果がNOの場合はStep10へ戻る。
【0023】
(第2実施例の効果)
本実施例の方法では、トルク勾配の安定領域全体で近似直線を引いているので、安定領域でのトルク勾配の微小な変動を吸収できるため、精度良く締付開始角度θS を求めることができる。
この実施例では、トルク勾配の安定領域全体で近似直線を引いて締付開始角度θS を求めているが、トルク勾配が安定したと判断された時に求められる最初の締付開始角度を用いることもできる。
【0024】
(第3実施例)
図5は単純形状ワークを締め付けた場合のトルク線図、図6は異形状ワークを締め付けた場合のトルク線図である。
本実施例は、トルク勾配の安定領域が段階的に現れる場合の一例である。
トルク勾配は、締付力を受ける座面の接触面積が影響するため、螺子部品のガタや座面の形状精度等により、トルク勾配の非安定領域が発生する。
【0025】
例えば、図5に示す様な単純形状ワークを締め付ける場合は、締付開始から部品同士の接触面積が変化することで非安定領域が発生し、その後、部品同士が完全に密着すると、トルク勾配が収束して安定する。
これに対し、図6に示す様な異形状ワーク(例えば孔や溝等を有するワーク)を締め付ける場合は、締付開始から非安定領域を経て部品同士の一部が密着すると、一旦トルク勾配が安定する。しかし、更に締め付けが進むと、他の部位が接触を開始することにより、再度非安定領域が発生することがある。
【0026】
この様な場合、最初に現れる安定領域から締付開始角度を求めると、締付終了角度が変化して安定した軸力が得られなくなる。そこで、現在の締付角度が締付終了角度に到達するまで継続してトルク勾配を監視し、そのトルク勾配の安定領域が段階的に現れる場合は、最新の安定領域から締付開始角度を求める(締付開始角度を求める方法は第1実施例または第2実施例と同じである)こととする。これにより、更に精度良く締付開始角度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】螺子の締付角度に対する締付トルクの変化を示すトルク線図(a) と螺子の締付角度に対するトルク勾配の変化を示すトルク勾配線図(b) である。
【図2】螺子締付装置の全体図である。
【図3】制御装置の処理手順を示すフローチャートである(第1実施例)。
【図4】制御装置の処理手順を示すフローチャートである(第2実施例)。
【図5】単純形状ワークを締め付けた場合のトルク線図である。
【図6】
異形状ワークを締め付けた場合のトルク線図である(第3実施例)。
【図7】
螺子の締付角度に対する締付トルクの変化を示すトルク線図である(従来技術
の説明)。
【図8】
トルク勾配の微小な変化に対する締付開始角度の変化量を示すグラフである(
従来技術の説明)。
【符号の説明】
1 螺子締付装置
2 螺子
7 制御装置
Claims (5)
- 螺子に加えられる締付トルクを前記螺子の締付角度に対して表示するトルク線図から制御上の締付開始角度を求め、この締付開始角度を基準として所定の回転角度だけ前記螺子を締め付ける方法であって、
前記締付トルクと締付角度の最新n個の計測データからトルク勾配を随時算出し、そのトルク勾配が安定したか否かを判定して、安定した場合には、その安定領域におけるトルク勾配が前記トルク線図の角度軸と交わった点を前記締付開始角度とすることを特徴とする螺子の締付方法。 - 請求項1に記載した螺子の締付方法において、
前記トルク勾配の安定領域全体に対して近似直線を引き、この近似直線が前記角度軸と交わった点を前記締付開始角度とすることを特徴とする螺子の締付方法。 - 請求項1に記載した螺子の締付方法において、
前記トルク勾配の安定領域でトルク勾配を随時算出すると共に、その算出された個々のトルク勾配が前記角度軸と交わった点をそれぞれ仮の締付開始角度として求め、これら仮の締付開始角度を平均化して真の締付開始角度とすることを特徴とする螺子の締付方法。 - 請求項1〜3に記載した何れかの螺子の締付方法において、
前記締付開始角度が決定された後、その締付開始角度に前記所定の回転角度を加算して締付終了角度を算出し、現在の締付角度が前記締付終了角度に到達した時点で前記螺子の締め付けを終了することを特徴とする螺子の締付方法。 - 請求項4に記載した螺子の締付方法において、
前記現在の締付角度が前記締付終了角度に到達するまで継続してトルク勾配を監視し、そのトルク勾配が収束する安定領域が段階的に現れる場合は、最新の安定領域から前記締付開始角度を求めることを特徴とする螺子の締付方法。
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---|---|---|---|
JP2002170999A JP2004017167A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 螺子の締付方法 |
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Cited By (2)
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CN102029586A (zh) * | 2009-10-01 | 2011-04-27 | 日立工机株式会社 | 旋转打击工具 |
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-
2002
- 2002-06-12 JP JP2002170999A patent/JP2004017167A/ja active Pending
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