JP2004016976A - セルフロッキングカーボン吸着体 - Google Patents
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Abstract
【課題】メタンガスの貯蔵等に有用で、各種の気体を室温で準液体状態として高密度で貯蔵することができる、新しいセルフロッキングカーボン吸着体を提供する。
【解決手段】壁部に開孔が設けられたカーボンナノホーン凝集体からなる吸着体であって、等温あるいは等圧吸着において、被吸着物質の開孔の通過が、カーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体とする。
【選択図】 図3
【解決手段】壁部に開孔が設けられたカーボンナノホーン凝集体からなる吸着体であって、等温あるいは等圧吸着において、被吸着物質の開孔の通過が、カーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体とする。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、セルフロッキングカーボン吸着体に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、メタンガスの貯蔵等に有用で、各種の気体を室温で準液体状態として高密度で貯蔵することができる、新しいセルフロッキングカーボン吸着体に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
地球環境の保全、資源の効果的利用等の面から、石油にとって代わるクリーンエネルギーとして天然ガスが注目されている。天然ガスの主成分であるメタンガスの密度は、303K,3.5MPaで23g/Lであるものの、沸点あるいは109Kでは419g/Lと極めて高くなる。このような特長から、液化天然ガスは、主成分であるメタン成分に精製した後に加圧冷却して液化し、冷凍液体メタン(RLM)と呼ばれる高度に精製された液化天然ガスとして供給されている。
【0003】
しかしながら、この液化天然ガスは、貯蔵および移送等の全過程で、−160℃以下という超低温を維持しなければならないという欠点から、実際的な利用には困難を有している。そこで、室温でメタンを大量に貯蔵することができるメタン貯蔵システムの開発が期待されている。
【0004】
たとえば、米国エネルギー省(DOE)は、メタン吸着材として多孔質固体である活性炭を利用して、500psig(約3.5MPa)で、単位体積当たりメタンガス150倍(V/Vs;Vは被吸着ガスの体積、Vsは吸着体の体積)という貯蔵率を目標として、室温でのメタンガス貯蔵装置の実現を試みている。
【0005】
この活性炭によるメタンの貯蔵率は、DOEの150倍という値に近づいてはいるものの、現在までには達成するには至っていない。その理由は、メタンガスは、室温において、たとえ超高圧状態にしたとしても臨界超過状態をとるために液化しないからであると考えられている。
【0006】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、メタンガスの貯蔵等に有用で、各種の気体を室温で準液体状態として高密度で貯蔵することができる、新しいセルフロッキングカーボン吸着体を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0008】
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、壁部に開孔が設けられたカーボンナノホーン凝集体からなる吸着体であって、等温あるいは等圧吸着において、被吸着物質の開孔の通過が、カーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体を提供する。
【0009】
そしてこの出願の発明は、上記発明の方法について、第2には、被吸着物質が、常温で超臨界状態となる気体であることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体を、第3には、被吸着物質がメタンガスであって、このメタンガスがカーボンナノホーンの内部に準液体状態で吸着可能とされていることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体を、第4には、メタンガスの吸着能V/Vs(ここで、Vは被吸着ガスの体積を、Vsは吸着体の体積を示す)が、303K、3.5MPaで150以上であることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体を提供する。
【0010】
この出願の発明者らは、従来よりカーボンナノホーン凝集体を用いたより高性能な吸着材を実現するための研究を行なっており、カーボンナノホーン凝集体が吸着能力を有すること、カーボンナノホーン凝集体のホーン部に開孔を設けることで、吸着容量が増大することや分子ふるいが実現できることなどを既に見出している。そしてこの出願の発明は、更なる鋭意研究の結果、開孔を有するカーボンナノホーン凝集体が、メタンガスの貯蔵(吸蔵)に際して極めて特異な性質を示すことを全く初めて見出して実現するに至ったものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0012】
この出願の発明が提供するセルフロッキングカーボン吸着体は、壁部に開孔が設けられたカーボンナノホーン凝集体からなる吸着体であって、等温あるいは等圧吸着において、被吸着物質の開孔の通過が、カーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されていることを特徴としている。
【0013】
この出願の発明において、カーボンナノホーン凝集体としては、カーボンナノチューブの先端が角(ホーン)状となったカーボンナノホーンにが、その角状の先端を外側に突き出して多数が球状に凝集したカーボンナノホーン凝集体において、その管壁に開孔が設けられている各種のものを対象とすることができる。たとえば、直径80〜100nm程度の球状に集合したダリヤ状カーボンナノホーン凝集体や、その表面に角状の突起が見られずに滑らかな表面を有するつぼみ状カーボンナノホーン凝集体のいずれを用いることもできる。より高効率及び高性能な吸着体を実現するためには、カーボンナノホーン凝集体は、開孔が設けられたダリヤ状カーボンナノホーン凝集体であることが好ましい。また、単独のカーボンナノホーン凝集体から構成されていてもよいし、複数のカーボンナノホーン凝集体が分散した状態のものとして、あるいは凝集された状態のものとして構成されていてもよい。
【0014】
そしてこの出願の発明において、カーボンナノホーンの壁部に設けられている開孔の数や大きさについては特に制限はなく、たとえば被吸着物質の大きさにあわせて任意のものとすること等が可能とされる。たとえば、被吸着物質がメタン(分子径0.37nm)の場合には、開孔の大きさは少なくとも0.37nmより大きいものであって、直径が分子2個〜3個分程度の0.7〜1.1nmであることがより好ましい例として示される。また、このような開孔は、カーボンナノホーンの壁部にのみ比較的少数存在することが好ましいと考えられる。
【0015】
このようなこの出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体は、カーボンナノホーンの壁部に開孔が設けられていることから、カーボンナノホーン凝集体を構成する個々のカーボンナノホーンの間隙、およびカーボンナノホーンの内部を吸着容積として有することになる。そして複数のカーボンナノホーン凝集体が凝集されて構成されている場合には、隣接するカーボンナノホーン凝集体の間に形成される空間をも吸着容量として有することができる。
【0016】
より具体的に、図1を用いてセルフロッキングカーボン吸着体について説明する。たとえば、(a)に示したこの出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体は、平均的なダリア状カーボンナノホーン凝集体が集合したものであり、単独のダリア状カーボンナノホーン凝集体については、直径が80〜100nm程度の球状体である。そして(b)に示したように、この球状体を構成する1つのカーボンナノホーンは、管部の直径が2〜4nm程度で、長さが5Onm程度のものとして例示される。このダリア状カーボンナノホーン凝集体において、隣接するカーボンナノホーンの管部の距離は、(c)に示したように0.4nm程度である。このようなセルフロッキングカーボン吸着体においては、壁部には開孔が設けられているため、隣接したカーボンナノホーンの隙間に形成される気孔(Interstitial pore)と、カーボンナノホーン内部の気孔(Internal pore)、さらには、(d)に示したように、集合したダリア状カーボンナノホーン凝集体により形成される間隙(Void)をも吸着容量とすることができる。
【0017】
被吸着物質については特に制限はなく、窒素、メタン、水素等の常温で超臨界状態となる各種の気体を考慮することができる。そしてこの出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体の特性をより有効に利用できる被吸着物質として、メタンを例示することができる。
【0018】
このセルフロッキングカーボンナノ吸着体において特徴的なことは、上記のとおり、カーボンナノホーン凝集体を構成する個々のカーボンナノホーンの管部の間隔が0.4nm程度と狭いことから、カーボンナノホーンの間隙に毛細管現象が働き、十分な量の被吸着物質が供給される場合には、被吸着物質は、個々のカーボンナノホーンの間隙および開孔を通ってナノホーンの内部に送られることになる。このとき、図2に例示したように、カーボンナノホーンの間隙には被吸着物質が充填されていることから、被吸着物質は開孔を通ってカーボンナノホーンの内部に入ることはできても、カーボンナノホーンの内部から外部に出ることはできなくなるのである。すなわち、たとえば等温あるいは等圧状態等の外力の作用しない状態での吸着においては、被吸着物質の開孔の通過はカーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されることになるのである。
【0019】
そして、たとえば被吸着物質がメタンガスである場合には、メタンガスは、最初はカーボンナノホーンの内部に低濃度で吸着される。ここで驚くべきことに、カーボンナノホーンの内部に十分な濃度のメタンガスが供給されると、メタンガスはカーボンナノホーン壁との相互作用によって、内部で自然に凝縮して準液体の状態となるのである。ここで、準液体状態とは、超臨界状態において低圧で液体密度を達成している状態である。そして低圧とは、気体の種類や温度によって変わってくるため具体的に示すことはできないが、いわゆる臨界圧力程度であって、たとえばメタンガスの場合には約4.7MPaを例示することができる。このような準液体状態は、たとえばメタンガスの沸点付近の極低温で確認されているが、この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体においては、室温付近という液体メタンにとっては極めて高温において実現され、極めて特異な現象として位置付けられる。
【0020】
なお、この出願の発明において、準液体状態のメタンとは、たとえば、DubininらとOzawaらが提案(R. K. Agarwal, J. A. Schwarz, Carbon 26, 873(1988))する303Kで0.26〜0.31g/Lの密度を有する高密度のメタンを意味している。より具体的に例示すると、この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体は、たとえば、メタンガスの吸着能をV/Vsで示したとき、303K、3.5MPaの条件でメタンガスの吸着能150以上を実現できることが確認されている。この値はDOE目標値よりも約10%高い値であり、高性能なメタンガス貯蔵装置の実現に結びつくことを示唆している。なお、上記式中、Vは被吸着ガスの体積を、Vsは吸着体の体積を示している。そしてさらに、確認されてはいないものの、この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体を用いて改良を重ねることで、液化メタン(密度0.31g/L)よりも濃厚な、大量のメタンの格納の可能性もが期待できるのである。
【0021】
このようなこの出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体は、たとえば、各分野にて将来の利用が期待される燃料電池用の燃料ボンベ材料としての応用が期待される。
【0022】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0023】
【実施例】
(実施例1)
ダリア状のカーボンナノホーン(SWNH)と、このSWNHを酸化熱処理することで管壁あるいは先端部に開孔を設けたカーボンナノホーン(開孔SWNH)、および活性炭ファイバー(ACF)およびKOH活性炭(AX21)について等温吸着特性を調べた。測定に先立って、SWNHおよび開孔SWNHには1mPa、423Kの熱処理を施し、吸着しているガスおよび水分の除去を行なった。
【0024】
SWNH、開孔SWNH、ACFおよびAX21のメタン吸着特性を、303K、10kPa〜10MPaの圧力範囲で、電子天秤を利用して測定した。また、これらの気孔構造を、77KにおけるN2吸着等温線から、細孔の影響を控除するSPE法(subtracting pore effect method)を利用して見積もった。さらに、CH4とSWNHの相間特性を、間隙気孔および内部気孔についてはthe Steele−Bojan smooth−walled cylinder potentialを利用して、そして従来の活性炭が有するスリット形の気孔については、このsteeleの10−4−3式を使用して計算した。
【0025】
図3に各材料のメタン貯蔵能を示した。図中の“黒丸”はSWNHを、“黒四角”は開孔SWNHを、△はACFを、および▽はAX21を示している。図中のメタン貯蔵能を示すV/Vapにおいて、Vapは材料の体積から全細孔体積を差し引いた値、Vは細孔を含む固体の体積であり、VはVapより必ず大きい値となる。
【0026】
図3より、メタン貯蔵に関して、SWNH自体のメタン吸着能は低いものの、開孔SWNHについては、DOEの目標値である単位固体体積当たりメタンガス150倍(V/Vs)という貯蔵率を、4MPaにおいて達成できることが確認された。
【0027】
ACFとAX21のメタン貯蔵能は、7〜8MPaの高圧領域であっても150V/Vapに満たないレベルであり、また、たとえ圧力を上げてもDOE目標値を達成できないことが分かった。これは、AX21がモノリス構造を形成するのに必要な大量の空隙とバインダーを含有していることや、ACFが繊維状の材料であるのでAX21よりさらに大量の空隙を含有していることによるものと考えられる。これに対して、SWNHはナノ次元の球状粒子であり、バインダーを必要とせずにモノリス構造を形成していることから、SWNHを開孔した開孔SWNHはメタンの吸着および充填に極めて有効であると考えられる。以上のことから、この実施例においては、開孔SWNHのみにDOE目標達成の可能性が示された。
【0028】
そこで、以下に、開孔SWNHがDOE目標を達成する程のメタン吸着能を示す理由について検討する。メタンは通常は室温で液化しないが、開孔SWNHに吸着されたメタンについては、その密度が液体メタンの密度に比較可能な程度にまで近づくことによるものと考えられる。図4に、開孔SWNH、ACF、AX21について、303Kで細孔中に吸着されたメタンの平均密度を示した。図中の◆は開孔SWNHの間隙気孔に、◆は開孔SWNHの内部気孔に、△はACFのスリット形気孔に、▽はAX21のスリット形気孔に、そして――はバルク活性炭に吸着されたメタンの平均密度について示している。ここで、メタンの平均密度ρadは、n/V0−ρbulkと定義した。この式中、nは吸着量、V0は細孔体積、ρbulkはガス相の密度である。
【0029】
SWNHの間隙気孔および内部気孔の吸着メタン平均密度は、ACFおよびAX21よりも1.5〜2倍大きい値である。しかし、この測定温度の303Kはメタンの臨界温度よりも高いので、303Kで圧縮してもメタンを液化することはできない。一方で、Dubininらと小沢らは、303Kにおいて、図3に帯状に示した0.26〜0.31g/Lの領域の密度のメタンは準液体状態にあると提案している。すなわち、この開孔SWNHについての吸着メタン密度は、303Kでの準液体メタンの密度範囲にある。それゆえ、SWNHの内部気孔中に吸着されたメタンは、たとえ多層位置におけるSWNH壁との相関ポテンシャルが小さくて吸着されなくても(後述のFig.4を参照)、5MPa以上で準液体の状態をとるのである。これは、通常、メタンが臨界超過の状態をとり、高圧下でさえ液体状態に圧縮することができないことを考慮すると、極めて特異な現象であることがわかる。
【0030】
この特異な現象は、メタン分子と炭素壁との相互作用ポテンシャルによって理解することができる。図5は、(a)(c)に気孔構造を、(b)(d)に炭素とメタンの相関ポテンシャル特性を示した。(a)(b)はACFおよびAX21におけるスリット形の気孔について、(c)(d)はSWNH(開孔SWNH)におけるチューブ形の気孔について示している。また、(b)と(d)のX軸は、それぞれ気孔の中心から炭素壁までの距離、およびO点からX点まで間での距離を示し、(b)における点線はACFの、実線はAX21の、(d)はSWNHについてのポテンシャル特性を示している。
【0031】
(b)に示したとおり、ACFおよびAX21におけるメタン分子と炭素壁との相関ポテンシャル深さは、それぞれ、−1240および−1250Kであった。一方、SWNH(開孔SWNH)の細孔は、部分的に三方晶系の秩序構造を組織するように配向している。そこで、これらのポテンシャル計算は、Steelの10−4−3式によって行なった。ここで、SWNHのチューブ直径および近接するチューブ間距離は、N2等温吸着の結果から求めた2.8nm、0.4nmの値をそれぞれ用いた。その結果、SWNHの間隙および内部における炭素壁とメタン分子との相関ポテンシャル深さは、それぞれ−2400Kおよび−1450Kとなった。
【0032】
活性炭およびACFに対するメタンの吸着特性は、ともにスリット形の細孔を有するので、吸着量の規則性はそれぞれの平均ポテンシャル深さの規則性に相当し、メタン吸着量はGCMCシミュレーションおよび理論研究と一致する結果となった。
【0033】
しかしながら、開孔SWNHへのメタン吸着については異なるものとなった。(d)に示したように、SWNHの内部気孔の平均ポテンシャル深さ(A)は間隙(B)(C)のに比べて浅いため、開孔SWNHの内部気孔に吸着されたメタン密度についても低くなることが推察された。しかしながら、図4の結果からは、開孔SWNHの内部気孔のメタン密度は、SWNHの間隙のメタン密度に匹敵し、AX21とACFの吸着メタン密度よりはるかに大きくなるはずである。このような不一致は、理論的な研究でよく支持されており、チューブ内部のメタンは孤立されているため、理論的な密度が実際の結果より低くなるのである。
【0034】
以上のことから、開孔SWNH、すなわちセルフロッキングカーボン吸着体においては、図2に示したセルフロック機構により気孔内部に異常な高密度でメタンが濃縮されると考えることができる。間隙気孔に吸着されたメタン分子は、管部に設けられた開孔を通って内部気孔へと拡散していくが、この逆の拡散は、開孔の外に既に存在しているメタン分子によりブロックされて不可能となる。つまり、セルフロックにより、メタン分子は内部気孔へのみ一方向拡散することになるのである。
【0035】
この現象は、カーボンナノホーンの管部で形成される狭い間隙、管部に設けられた開孔、および大きな容量を有するカーボンナノホーン凝集体の特有の構造により、はじめて引き起こされるものである。
(実施例2)
ダリア状のカーボンナノホーンを酸化熱処理することで管壁あるいは先端部に開孔を設けたカーボンナノホーン(開孔SWNH)について、水素の吸着特性を調べた。吸着測定に先立って、開孔SWNHに1mPa以下423Kの熱処理を施し、吸着しているガス及び水分を除去した。
【0036】
開孔SWNHのメタン等温吸着特性を、77K、196K、303Kの異なる3つの温度で、10kPaから10MPaの圧力範囲で電子天秤を用いて測定した。その結果を図6に示す。
【0037】
また、同じ管直径の炭素チューブについて計算機を用いたシミュレーションを行い、水素の貯蔵量の理論予測を行った結果も併せて示した。この理論予測は、平板状の炭素にはさまれたスリット型の細孔を持つ炭素材料では、実験の貯蔵量との整合性が確認されている。シミュレーションは、グランドカノニカルモンテカルロ(GCMC)法を用いた。GCMC法で用いるCH4とSWNHの相関特性は、the Steel−Bojan smooth−walled cylinder potentialを利用して計算した。
【0038】
図6より、水素貯蔵量の実験値がGCMC法によって予想される値よりも77Kで約20%、196Kで約40%も大きいことが確認された。
【0039】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、メタンガスの貯蔵等に有用で、各種の気体を室温で準液体状態として高密度で貯蔵することができる、新しいセルフロッキングカーボン吸着体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体の構造を説明するSEM像および模式図である。
【図2】この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体におけるセルフロック機構を説明する模式図である。
【図3】SWNH、開孔SWNH、ACFおよびAX21のメタン吸着特性を例示した図である。
【図4】開孔SWNHの内部気孔および間隙、ACF、AX21、バルク活性炭に吸着されたメタンの平均密度を例示した図である。
【図5】(a)〜(d)は、開孔SWNH、ACFおよびAX21の気孔構造と、メタン分子と炭素壁との相互作用ポテンシャルを例示した図である。
【図6】開孔SWNHのメタン吸着特性と、その理論値を例示した図である。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、セルフロッキングカーボン吸着体に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、メタンガスの貯蔵等に有用で、各種の気体を室温で準液体状態として高密度で貯蔵することができる、新しいセルフロッキングカーボン吸着体に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
地球環境の保全、資源の効果的利用等の面から、石油にとって代わるクリーンエネルギーとして天然ガスが注目されている。天然ガスの主成分であるメタンガスの密度は、303K,3.5MPaで23g/Lであるものの、沸点あるいは109Kでは419g/Lと極めて高くなる。このような特長から、液化天然ガスは、主成分であるメタン成分に精製した後に加圧冷却して液化し、冷凍液体メタン(RLM)と呼ばれる高度に精製された液化天然ガスとして供給されている。
【0003】
しかしながら、この液化天然ガスは、貯蔵および移送等の全過程で、−160℃以下という超低温を維持しなければならないという欠点から、実際的な利用には困難を有している。そこで、室温でメタンを大量に貯蔵することができるメタン貯蔵システムの開発が期待されている。
【0004】
たとえば、米国エネルギー省(DOE)は、メタン吸着材として多孔質固体である活性炭を利用して、500psig(約3.5MPa)で、単位体積当たりメタンガス150倍(V/Vs;Vは被吸着ガスの体積、Vsは吸着体の体積)という貯蔵率を目標として、室温でのメタンガス貯蔵装置の実現を試みている。
【0005】
この活性炭によるメタンの貯蔵率は、DOEの150倍という値に近づいてはいるものの、現在までには達成するには至っていない。その理由は、メタンガスは、室温において、たとえ超高圧状態にしたとしても臨界超過状態をとるために液化しないからであると考えられている。
【0006】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、メタンガスの貯蔵等に有用で、各種の気体を室温で準液体状態として高密度で貯蔵することができる、新しいセルフロッキングカーボン吸着体を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0008】
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、壁部に開孔が設けられたカーボンナノホーン凝集体からなる吸着体であって、等温あるいは等圧吸着において、被吸着物質の開孔の通過が、カーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体を提供する。
【0009】
そしてこの出願の発明は、上記発明の方法について、第2には、被吸着物質が、常温で超臨界状態となる気体であることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体を、第3には、被吸着物質がメタンガスであって、このメタンガスがカーボンナノホーンの内部に準液体状態で吸着可能とされていることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体を、第4には、メタンガスの吸着能V/Vs(ここで、Vは被吸着ガスの体積を、Vsは吸着体の体積を示す)が、303K、3.5MPaで150以上であることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体を提供する。
【0010】
この出願の発明者らは、従来よりカーボンナノホーン凝集体を用いたより高性能な吸着材を実現するための研究を行なっており、カーボンナノホーン凝集体が吸着能力を有すること、カーボンナノホーン凝集体のホーン部に開孔を設けることで、吸着容量が増大することや分子ふるいが実現できることなどを既に見出している。そしてこの出願の発明は、更なる鋭意研究の結果、開孔を有するカーボンナノホーン凝集体が、メタンガスの貯蔵(吸蔵)に際して極めて特異な性質を示すことを全く初めて見出して実現するに至ったものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0012】
この出願の発明が提供するセルフロッキングカーボン吸着体は、壁部に開孔が設けられたカーボンナノホーン凝集体からなる吸着体であって、等温あるいは等圧吸着において、被吸着物質の開孔の通過が、カーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されていることを特徴としている。
【0013】
この出願の発明において、カーボンナノホーン凝集体としては、カーボンナノチューブの先端が角(ホーン)状となったカーボンナノホーンにが、その角状の先端を外側に突き出して多数が球状に凝集したカーボンナノホーン凝集体において、その管壁に開孔が設けられている各種のものを対象とすることができる。たとえば、直径80〜100nm程度の球状に集合したダリヤ状カーボンナノホーン凝集体や、その表面に角状の突起が見られずに滑らかな表面を有するつぼみ状カーボンナノホーン凝集体のいずれを用いることもできる。より高効率及び高性能な吸着体を実現するためには、カーボンナノホーン凝集体は、開孔が設けられたダリヤ状カーボンナノホーン凝集体であることが好ましい。また、単独のカーボンナノホーン凝集体から構成されていてもよいし、複数のカーボンナノホーン凝集体が分散した状態のものとして、あるいは凝集された状態のものとして構成されていてもよい。
【0014】
そしてこの出願の発明において、カーボンナノホーンの壁部に設けられている開孔の数や大きさについては特に制限はなく、たとえば被吸着物質の大きさにあわせて任意のものとすること等が可能とされる。たとえば、被吸着物質がメタン(分子径0.37nm)の場合には、開孔の大きさは少なくとも0.37nmより大きいものであって、直径が分子2個〜3個分程度の0.7〜1.1nmであることがより好ましい例として示される。また、このような開孔は、カーボンナノホーンの壁部にのみ比較的少数存在することが好ましいと考えられる。
【0015】
このようなこの出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体は、カーボンナノホーンの壁部に開孔が設けられていることから、カーボンナノホーン凝集体を構成する個々のカーボンナノホーンの間隙、およびカーボンナノホーンの内部を吸着容積として有することになる。そして複数のカーボンナノホーン凝集体が凝集されて構成されている場合には、隣接するカーボンナノホーン凝集体の間に形成される空間をも吸着容量として有することができる。
【0016】
より具体的に、図1を用いてセルフロッキングカーボン吸着体について説明する。たとえば、(a)に示したこの出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体は、平均的なダリア状カーボンナノホーン凝集体が集合したものであり、単独のダリア状カーボンナノホーン凝集体については、直径が80〜100nm程度の球状体である。そして(b)に示したように、この球状体を構成する1つのカーボンナノホーンは、管部の直径が2〜4nm程度で、長さが5Onm程度のものとして例示される。このダリア状カーボンナノホーン凝集体において、隣接するカーボンナノホーンの管部の距離は、(c)に示したように0.4nm程度である。このようなセルフロッキングカーボン吸着体においては、壁部には開孔が設けられているため、隣接したカーボンナノホーンの隙間に形成される気孔(Interstitial pore)と、カーボンナノホーン内部の気孔(Internal pore)、さらには、(d)に示したように、集合したダリア状カーボンナノホーン凝集体により形成される間隙(Void)をも吸着容量とすることができる。
【0017】
被吸着物質については特に制限はなく、窒素、メタン、水素等の常温で超臨界状態となる各種の気体を考慮することができる。そしてこの出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体の特性をより有効に利用できる被吸着物質として、メタンを例示することができる。
【0018】
このセルフロッキングカーボンナノ吸着体において特徴的なことは、上記のとおり、カーボンナノホーン凝集体を構成する個々のカーボンナノホーンの管部の間隔が0.4nm程度と狭いことから、カーボンナノホーンの間隙に毛細管現象が働き、十分な量の被吸着物質が供給される場合には、被吸着物質は、個々のカーボンナノホーンの間隙および開孔を通ってナノホーンの内部に送られることになる。このとき、図2に例示したように、カーボンナノホーンの間隙には被吸着物質が充填されていることから、被吸着物質は開孔を通ってカーボンナノホーンの内部に入ることはできても、カーボンナノホーンの内部から外部に出ることはできなくなるのである。すなわち、たとえば等温あるいは等圧状態等の外力の作用しない状態での吸着においては、被吸着物質の開孔の通過はカーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されることになるのである。
【0019】
そして、たとえば被吸着物質がメタンガスである場合には、メタンガスは、最初はカーボンナノホーンの内部に低濃度で吸着される。ここで驚くべきことに、カーボンナノホーンの内部に十分な濃度のメタンガスが供給されると、メタンガスはカーボンナノホーン壁との相互作用によって、内部で自然に凝縮して準液体の状態となるのである。ここで、準液体状態とは、超臨界状態において低圧で液体密度を達成している状態である。そして低圧とは、気体の種類や温度によって変わってくるため具体的に示すことはできないが、いわゆる臨界圧力程度であって、たとえばメタンガスの場合には約4.7MPaを例示することができる。このような準液体状態は、たとえばメタンガスの沸点付近の極低温で確認されているが、この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体においては、室温付近という液体メタンにとっては極めて高温において実現され、極めて特異な現象として位置付けられる。
【0020】
なお、この出願の発明において、準液体状態のメタンとは、たとえば、DubininらとOzawaらが提案(R. K. Agarwal, J. A. Schwarz, Carbon 26, 873(1988))する303Kで0.26〜0.31g/Lの密度を有する高密度のメタンを意味している。より具体的に例示すると、この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体は、たとえば、メタンガスの吸着能をV/Vsで示したとき、303K、3.5MPaの条件でメタンガスの吸着能150以上を実現できることが確認されている。この値はDOE目標値よりも約10%高い値であり、高性能なメタンガス貯蔵装置の実現に結びつくことを示唆している。なお、上記式中、Vは被吸着ガスの体積を、Vsは吸着体の体積を示している。そしてさらに、確認されてはいないものの、この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体を用いて改良を重ねることで、液化メタン(密度0.31g/L)よりも濃厚な、大量のメタンの格納の可能性もが期待できるのである。
【0021】
このようなこの出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体は、たとえば、各分野にて将来の利用が期待される燃料電池用の燃料ボンベ材料としての応用が期待される。
【0022】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0023】
【実施例】
(実施例1)
ダリア状のカーボンナノホーン(SWNH)と、このSWNHを酸化熱処理することで管壁あるいは先端部に開孔を設けたカーボンナノホーン(開孔SWNH)、および活性炭ファイバー(ACF)およびKOH活性炭(AX21)について等温吸着特性を調べた。測定に先立って、SWNHおよび開孔SWNHには1mPa、423Kの熱処理を施し、吸着しているガスおよび水分の除去を行なった。
【0024】
SWNH、開孔SWNH、ACFおよびAX21のメタン吸着特性を、303K、10kPa〜10MPaの圧力範囲で、電子天秤を利用して測定した。また、これらの気孔構造を、77KにおけるN2吸着等温線から、細孔の影響を控除するSPE法(subtracting pore effect method)を利用して見積もった。さらに、CH4とSWNHの相間特性を、間隙気孔および内部気孔についてはthe Steele−Bojan smooth−walled cylinder potentialを利用して、そして従来の活性炭が有するスリット形の気孔については、このsteeleの10−4−3式を使用して計算した。
【0025】
図3に各材料のメタン貯蔵能を示した。図中の“黒丸”はSWNHを、“黒四角”は開孔SWNHを、△はACFを、および▽はAX21を示している。図中のメタン貯蔵能を示すV/Vapにおいて、Vapは材料の体積から全細孔体積を差し引いた値、Vは細孔を含む固体の体積であり、VはVapより必ず大きい値となる。
【0026】
図3より、メタン貯蔵に関して、SWNH自体のメタン吸着能は低いものの、開孔SWNHについては、DOEの目標値である単位固体体積当たりメタンガス150倍(V/Vs)という貯蔵率を、4MPaにおいて達成できることが確認された。
【0027】
ACFとAX21のメタン貯蔵能は、7〜8MPaの高圧領域であっても150V/Vapに満たないレベルであり、また、たとえ圧力を上げてもDOE目標値を達成できないことが分かった。これは、AX21がモノリス構造を形成するのに必要な大量の空隙とバインダーを含有していることや、ACFが繊維状の材料であるのでAX21よりさらに大量の空隙を含有していることによるものと考えられる。これに対して、SWNHはナノ次元の球状粒子であり、バインダーを必要とせずにモノリス構造を形成していることから、SWNHを開孔した開孔SWNHはメタンの吸着および充填に極めて有効であると考えられる。以上のことから、この実施例においては、開孔SWNHのみにDOE目標達成の可能性が示された。
【0028】
そこで、以下に、開孔SWNHがDOE目標を達成する程のメタン吸着能を示す理由について検討する。メタンは通常は室温で液化しないが、開孔SWNHに吸着されたメタンについては、その密度が液体メタンの密度に比較可能な程度にまで近づくことによるものと考えられる。図4に、開孔SWNH、ACF、AX21について、303Kで細孔中に吸着されたメタンの平均密度を示した。図中の◆は開孔SWNHの間隙気孔に、◆は開孔SWNHの内部気孔に、△はACFのスリット形気孔に、▽はAX21のスリット形気孔に、そして――はバルク活性炭に吸着されたメタンの平均密度について示している。ここで、メタンの平均密度ρadは、n/V0−ρbulkと定義した。この式中、nは吸着量、V0は細孔体積、ρbulkはガス相の密度である。
【0029】
SWNHの間隙気孔および内部気孔の吸着メタン平均密度は、ACFおよびAX21よりも1.5〜2倍大きい値である。しかし、この測定温度の303Kはメタンの臨界温度よりも高いので、303Kで圧縮してもメタンを液化することはできない。一方で、Dubininらと小沢らは、303Kにおいて、図3に帯状に示した0.26〜0.31g/Lの領域の密度のメタンは準液体状態にあると提案している。すなわち、この開孔SWNHについての吸着メタン密度は、303Kでの準液体メタンの密度範囲にある。それゆえ、SWNHの内部気孔中に吸着されたメタンは、たとえ多層位置におけるSWNH壁との相関ポテンシャルが小さくて吸着されなくても(後述のFig.4を参照)、5MPa以上で準液体の状態をとるのである。これは、通常、メタンが臨界超過の状態をとり、高圧下でさえ液体状態に圧縮することができないことを考慮すると、極めて特異な現象であることがわかる。
【0030】
この特異な現象は、メタン分子と炭素壁との相互作用ポテンシャルによって理解することができる。図5は、(a)(c)に気孔構造を、(b)(d)に炭素とメタンの相関ポテンシャル特性を示した。(a)(b)はACFおよびAX21におけるスリット形の気孔について、(c)(d)はSWNH(開孔SWNH)におけるチューブ形の気孔について示している。また、(b)と(d)のX軸は、それぞれ気孔の中心から炭素壁までの距離、およびO点からX点まで間での距離を示し、(b)における点線はACFの、実線はAX21の、(d)はSWNHについてのポテンシャル特性を示している。
【0031】
(b)に示したとおり、ACFおよびAX21におけるメタン分子と炭素壁との相関ポテンシャル深さは、それぞれ、−1240および−1250Kであった。一方、SWNH(開孔SWNH)の細孔は、部分的に三方晶系の秩序構造を組織するように配向している。そこで、これらのポテンシャル計算は、Steelの10−4−3式によって行なった。ここで、SWNHのチューブ直径および近接するチューブ間距離は、N2等温吸着の結果から求めた2.8nm、0.4nmの値をそれぞれ用いた。その結果、SWNHの間隙および内部における炭素壁とメタン分子との相関ポテンシャル深さは、それぞれ−2400Kおよび−1450Kとなった。
【0032】
活性炭およびACFに対するメタンの吸着特性は、ともにスリット形の細孔を有するので、吸着量の規則性はそれぞれの平均ポテンシャル深さの規則性に相当し、メタン吸着量はGCMCシミュレーションおよび理論研究と一致する結果となった。
【0033】
しかしながら、開孔SWNHへのメタン吸着については異なるものとなった。(d)に示したように、SWNHの内部気孔の平均ポテンシャル深さ(A)は間隙(B)(C)のに比べて浅いため、開孔SWNHの内部気孔に吸着されたメタン密度についても低くなることが推察された。しかしながら、図4の結果からは、開孔SWNHの内部気孔のメタン密度は、SWNHの間隙のメタン密度に匹敵し、AX21とACFの吸着メタン密度よりはるかに大きくなるはずである。このような不一致は、理論的な研究でよく支持されており、チューブ内部のメタンは孤立されているため、理論的な密度が実際の結果より低くなるのである。
【0034】
以上のことから、開孔SWNH、すなわちセルフロッキングカーボン吸着体においては、図2に示したセルフロック機構により気孔内部に異常な高密度でメタンが濃縮されると考えることができる。間隙気孔に吸着されたメタン分子は、管部に設けられた開孔を通って内部気孔へと拡散していくが、この逆の拡散は、開孔の外に既に存在しているメタン分子によりブロックされて不可能となる。つまり、セルフロックにより、メタン分子は内部気孔へのみ一方向拡散することになるのである。
【0035】
この現象は、カーボンナノホーンの管部で形成される狭い間隙、管部に設けられた開孔、および大きな容量を有するカーボンナノホーン凝集体の特有の構造により、はじめて引き起こされるものである。
(実施例2)
ダリア状のカーボンナノホーンを酸化熱処理することで管壁あるいは先端部に開孔を設けたカーボンナノホーン(開孔SWNH)について、水素の吸着特性を調べた。吸着測定に先立って、開孔SWNHに1mPa以下423Kの熱処理を施し、吸着しているガス及び水分を除去した。
【0036】
開孔SWNHのメタン等温吸着特性を、77K、196K、303Kの異なる3つの温度で、10kPaから10MPaの圧力範囲で電子天秤を用いて測定した。その結果を図6に示す。
【0037】
また、同じ管直径の炭素チューブについて計算機を用いたシミュレーションを行い、水素の貯蔵量の理論予測を行った結果も併せて示した。この理論予測は、平板状の炭素にはさまれたスリット型の細孔を持つ炭素材料では、実験の貯蔵量との整合性が確認されている。シミュレーションは、グランドカノニカルモンテカルロ(GCMC)法を用いた。GCMC法で用いるCH4とSWNHの相関特性は、the Steel−Bojan smooth−walled cylinder potentialを利用して計算した。
【0038】
図6より、水素貯蔵量の実験値がGCMC法によって予想される値よりも77Kで約20%、196Kで約40%も大きいことが確認された。
【0039】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、メタンガスの貯蔵等に有用で、各種の気体を室温で準液体状態として高密度で貯蔵することができる、新しいセルフロッキングカーボン吸着体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体の構造を説明するSEM像および模式図である。
【図2】この出願の発明のセルフロッキングカーボン吸着体におけるセルフロック機構を説明する模式図である。
【図3】SWNH、開孔SWNH、ACFおよびAX21のメタン吸着特性を例示した図である。
【図4】開孔SWNHの内部気孔および間隙、ACF、AX21、バルク活性炭に吸着されたメタンの平均密度を例示した図である。
【図5】(a)〜(d)は、開孔SWNH、ACFおよびAX21の気孔構造と、メタン分子と炭素壁との相互作用ポテンシャルを例示した図である。
【図6】開孔SWNHのメタン吸着特性と、その理論値を例示した図である。
Claims (4)
- 壁部に開孔が設けられたカーボンナノホーン凝集体からなる吸着体であって、等温あるいは等圧吸着において、被吸着物質の開孔の通過が、カーボンナノホーンの外部から内部への一方向に限定されることを特徴とするセルフロッキングカーボン吸着体。
- 被吸着物質が、常温で超臨界状態となる気体であることを特徴とする請求項1記載のセルフロッキングカーボン吸着体。
- 被吸着物質がメタンガスであって、このメタンガスがカーボンナノホーンの内部に準液体状態で吸着可能とされていることを特徴とする請求項1または2記載のセルフロッキングカーボン吸着体。
- メタンガスの吸着能V/Vs(ここで、Vは被吸着ガスの体積を、Vsは吸着体の体積を示す)が、303K、3.5MPaで150以上であることを特徴とする請求項3記載のセルフロッキンカーボン吸着体。
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