JP2004016951A - 砥石屑からの砥粒回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】砥石屑から不純物を除去し、再資源化用の砥粒を回収処理する方法の提供。
【解決手段】砥石屑を加熱処理することにより樹脂成分を気化させて分離除去し、前記の気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物中の砥粒を、粒径分離操作により所定の粒子径により分離し、前記所定の粒子径以上の砥粒を回収する、砥石屑からの砥粒回収方法。気化分離後の残留物を破砕したり、残留物中の鉄分を磁力選別により分離除去することが好ましい。また、加熱処理温度は600〜900℃とするのが好ましい。
【選択図】 図2
【解決手段】砥石屑を加熱処理することにより樹脂成分を気化させて分離除去し、前記の気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物中の砥粒を、粒径分離操作により所定の粒子径により分離し、前記所定の粒子径以上の砥粒を回収する、砥石屑からの砥粒回収方法。気化分離後の残留物を破砕したり、残留物中の鉄分を磁力選別により分離除去することが好ましい。また、加熱処理温度は600〜900℃とするのが好ましい。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用済み砥石屑を処理して再資源化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工業用グラインダーの砥石は、円盤状、または、タイヤ状の形状を呈し、大型砥石は、鉄鋼スラブなどの研削用に使用されている。砥石は、一般には、Al2O3系、または、SiC系の粒子径44〜3000μmの粒子(以下、「砥粒」ともいう)にバインダーを添加した後、金型に入れて成型したものである。一部の砥石では、加熱成形も行なわれており、窯に装入して170℃前後で2〜3日間熟成するものもある。熟成温度が低いので、バインダーの中に珪石粉などの研削助剤を添加することができ、また、補強材としてグラスファイバーや鉄筋などを添加することができる。
【0003】
このように砥石には、砥粒以外の樹脂バインダー、珪石粉、グラスファイバー、鉄筋などが含まれているため、砥粒だけを回収することは難しく、使用済みの砥石屑は埋め立て用材料として処理されている。しかし、埋め立て処理は、護岸建設、防水対策、整地および運搬などの費用を必要とする上に、含有されるバインダーによる土壌汚染の問題を伴うことから、現実には避けなければならない。
【0004】
特開平5−70852号公報には、少なくとも1種の金属、特にFeおよび/またはその金属化合物を含有する固体および液体の廃物質からなり、使用不可能な状態または困難な状態にある混合物を処理する方法において、混合物を十分に均質化し、この混合物に、フライアッシュおよび/またはコークスおよび/または炉からのガス灰を含有した微粒状乾燥物質を、合成混合物が殆ど凝集塊の形で存在するようになるまでの量だけ添加して混和し、再利用するために熱処理に供しうるようにする廃棄物処理方法が開示されている。
しかしながら、上記の開示された方法は、粒状ないしは粉塵状の廃棄物を凝集塊として再資源化するものであり、砥石屑のような少なくとも塊状の形態の廃棄物の処理にそのまま適用することは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記の問題点を解消し、砥石屑から不純物を除去し、バインダーなどによる土壌汚染の問題を伴わずに、再資源化用の砥粒を回収処理する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記した従来技術の問題点について検討を行い、以下の知見を得た。
【0007】
(a)砥石中の主としてSiC系またはAl2O3系からなる砥粒には、珪石粉およびグラスファイバーなどが20〜30質量%混入しているため、樹脂バインダーを除去しても、耐火物原料として再利用するにはSiCやAl2O3 の含有率が低すぎる。
(b)研削助剤の珪石粉は、砥粒に比較して粒度が小さいので、樹脂バインダーを加熱処理により燃焼除去後、粒径分離操作することにより、除去できる。
(c)樹脂バインダーは600〜900℃に加熱保持することにより、燃焼除去できる。
【0008】
(d)補強材としてのグラスファイバーは、加熱により溶融して低強度の粒子状となるので、破砕後に粒径分離操作することにより、珪石粉とともに除去できる。
(e)補強材としての鉄筋は、樹脂バインダーを燃焼除去後、磁力選別することにより除去できる。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)〜(4)に示す砥石屑からの砥粒回収方法にある。
【0010】
(1)砥石屑を加熱処理することにより樹脂成分を気化させて分離除去し、前記の気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物に粒径分離操作を施すことにより、粒子径の大きい群として砥粒を回収する、砥石屑からの砥粒回収方法。 (2)前記(1)に記載の砥石からの砥粒回収方法において、気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物を破砕することが好ましい。
(3)前記(1)または(2)に記載の砥石からの砥粒回収方法において、加熱処理における加熱温度を600〜900℃とすることが好ましい。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の砥石からの砥粒回収方法において、気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物中の磁性物を磁力選別により分離除去することが好ましい。
【0011】
本発明において、「砥石屑」とは、鉄鋼スラブ研削用の砥石をはじめとする各種工業用砥石の屑をいう。
【0012】
「樹脂成分」とは、砥石中の砥粒同士を結合させるために加えられているバインダーとしての樹脂成分をいう。例えば、フェノール系樹脂をはじめとする砥石用樹脂が含まれる。
「気化させて分離」とは、加熱処理により樹脂成分を燃焼させ、樹脂成分をガス化して分離することをいう。
【0013】
「粒径分離操作」とは、篩分け操作、または分級操作により粒子を粒子径の異なる2以上の群に分離することをいう。ここで、篩分け操作とは、篩目を通過するか否かによって固体粒子を大小の異なる群に分離する操作をいう。また、分級操作とは、流体中における粒子の沈降速度、または斜面上における降下速度などの運動速度の差を利用して固体粒子を粒子径の異なる群に分離することをいう。
【0014】
「粒子径の大きい群」とは、前記残留物を粒径分離操作により粒子径の異なる群に分けたときの、粒子径の小さい他の群に比べて粒子径の大きい目標とする群をいう。
【0015】
【発明の実施の形態】
砥石屑は、一般にはAl2O3 系、または、SiC系の粒子径44〜3000μmの砥粒にバインダー、珪石粉などの研削助剤、および、グラスファイバーを添加した後に成型し、低温熟成させたものである。したがって、バインダーを除去してもAl2O3系、または、SiC系からなる砥粒には、珪石粉、および、グラスファイバーなどの不純物が20〜30質量%混入しているため、耐火物原料としてリサイクルするには、なお純度が低すぎて、砥粒のリサイクルは困難であった。
【0016】
これに対して、本発明は、前記のとおり、砥石屑を加熱処理することにより樹脂成分を気化させて分離除去し、気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物に粒径分離操作を施すことにより、粒子径の大きい群として砥粒を回収するものである。
図1は、本発明方法の工程を示す流れ図である。砥石屑1は、加熱工程2において加熱され、樹脂成分3を気化により分離される。樹脂成分の除去された残留物4は、粒径分離工程5において粒径の大きい群と粒径の小さい群とに分離される。この工程において、不純物粒子6は、粒子径の小さい群として除去され、SiC系またはAl2O3系からなる砥粒は、粒子径の大きい群として残留し、回収砥粒7として回収される。
【0017】
1)粒径分離工程:
発明者は、実際に砥石屑を加熱処理してバインダーを除去し、不純物が混入した砥粒の状態を観察した。研削助剤である珪石粉は、粒度が砥粒に比べて小さいので、粒径分離操作を行うことによって、粒子径の小さい群として分離し、除去できることが判明した。ここで、粒径分離操作とは、前記のとおり、篩分け操作、または分級操作により粒子を粒子径の異なる2以上の群に分離することをいう。また、粒子径の小さい群とは、前記残留物を粒径分離操作により粒子径の異なる群に分けたときの、粒子径の異なる他の群に比べて粒子径の小さい群をいう。例えば、篩分けの場合、Tyler標準篩の篩目代表径147μm(100メッシュ)の篩により篩分けを行えば、珪石粉のうちの約95質量%が、同104μm(150メッシュ)の篩により篩分けを行えば約90質量%が、そして、同74μm(200メッシュ)の篩により篩分けを行えば約80質量%がそれぞれ篩下(粒子径の小さい群)として除去できる。
2)破砕工程:
グラスファイバーは加熱により軟化溶融し、その表面張力により粒子状になるが、この粒子はAl2O3 系粒子やSiC系粒子に比べて強度が低く、衝撃を与えて崩壊させた後に粒径分離操作を行うことにより、粒子径の小さい群として珪石粉とともに分離除去することが好ましい。
図2は、破砕工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。樹脂成分の除去された残留物4は、破砕工程8において破砕された後、粒径分離工程5に供給される。
【0018】
例えば、前記の加熱処理後の残留物をインパクトクラッシャーに装入し、800rpmにて15分間破砕処理したものを、篩目代表径147μmの篩により篩分けを行った場合は、グラスファイバーのうちの約97質量%が、同104μmの篩により篩分けを行った場合は、約85質量%が、そして、同74μmの篩により篩分けを行った場合は、約76質量%がそれぞれ篩下として除去できる。
【0019】
したがって、砥石屑を加熱処理して樹脂バインダーを燃焼除去した後、不純物の混入した砥粒に衝撃を与えて脆弱な不純物からなる粒子を崩壊させた後に砥粒の粒子径よりも小さい粒子径を境界として粒径分離操作を行うことにより、砥粒を一層効率よく回収することができる。
【0020】
3)加熱工程:
加熱工程においてバインダーの樹脂成分を燃焼させ、気化して分離するに際し、その加熱温度は、600〜900℃とするのが好ましい。
【0021】
加熱温度が600℃以下では、樹脂バインダーの燃焼が十分ではなく、砥粒間の結合を切断して砥粒を粉体または粒子状とするのに長時間を要し、効率が必ずしも高くない。一方、900℃を超えると、SiC系の場合には、砥粒の酸化が始まるので好ましくない。また、酸化の問題がないAl2O3 系の場合においても、過度に処理温度を高くすることは、投入エネルギー効率が低下し、好ましくないからである。
【0022】
4)磁力選別工程:
補強材として鉄筋などが用いられている場合は、バインダーの樹脂成分を燃焼除去した後に磁力選別を行うことにより、これらを簡単に除去できるため、磁力選別処理を行うことが好ましい。なお、磁力選別装置は、電磁石または永久磁石により砥粒中の磁性物を非磁性物と区別して分離する機能を有するもので有ればよく、乾式または湿式など、その形式には特に限定されない。
図3は、磁力選別工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。樹脂成分の除去された残留物4は、磁力選別工程9において磁力選別され、鉄筋などの磁性物10を分離除去された後、粒径分離工程5に供給される。
図4は、磁力選別工程および破砕工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。磁力選別され、鉄筋などの磁性物を分離除去された残留物は破砕工程8において破砕された後、粒径分離工程5に供給される。
【0023】
このようにして回収されたAl2O3系またはSiC系の砥粒は、例えば、高温の溶鉄あるいは溶滓を扱う製銑または製鋼用不定形耐火物の原料として使用することができる。
【0024】
【実施例】
鉄鋼スラブ研削用のタイヤ型砥石屑を処理した例を示す。鉄鋼スラブ研削用の砥石は非常に強固なため、軸芯の金具と砥石部分を割って分離することは困難である。そこで、金具が付いたまま、砥石の回収処理を行った。
【0025】
直径約500mm、厚み200mmで、砥石部分の重量が約10kgの砥石屑を処理した。本砥石屑では、砥粒は主としてSiC粒子から構成されており、樹脂バインダーとしてフェノール樹脂が用いられている。
【0026】
まず、砥石屑を直径1m、長さ2mの横形回転式円筒炉に装入し、両端側から重油バーナーにより加熱した。炉内の平均温度は、570〜950℃の範囲で4水準に調整し、2時間加熱保持した。昇温過程において、550℃を超えた時点から砥石屑表面の樹脂が燃焼を開始し、表面から少しずつ砥粒が剥がれ落ち、約2時間で砥粒が全部剥がれて、金具だけが残った。金具は普通鋼から構成されており、不純物を含まない高級スクラップとしてリサイクル可能である。
【0027】
次いで、剥がれ落ちた砥粒を800rpmのインパクトクラッシャーに装入し、粒状となったグラスファイバーなどの脆弱な粒子を崩壊させた。SiC粒子は非常に硬度が高く、インパクトクラッシャーを通した程度では破砕されなかった。Al2O3 粒子の場合も同様であり、インパクトクラッシャーを通した程度では破砕されなかった。
【0028】
補強鉄筋などの磁性物が含まれている場合には、前記の図3または図4に示されるように、加熱工程の後、例えば、搬送用ベルトコンベアのヘッドの落ち口に磁力選別装置を設置し、電磁石または永久磁石により、磁性物を分離除去すればよい。
【0029】
インパクトクラッシャーを通した後、篩目代表径100メッシュ(147μm)のTyler標準篩で篩分けを行った。篩上の残留物が砥粒で、篩下が不純物である。これらの処理により回収した砥粒の成分を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
ここで、表1の化学成分中のイグロス(イグニションロス)とは、砥石屑の加熱処理による質量減少を表し、含有されていた樹脂成分の含有率を示す。また、SiO2 は研削助剤の珪石粉であり、Al2O3、Fe2O3、およびCaOはそれぞれ補強材のグラスファイバーの構成成分である。
【0032】
試験番号1〜4は、それぞれ、加熱温度を570℃、630℃、800℃および950℃として行った試験であり、全て本発明例である。いずれの試験番号の場合についても、回収された砥粒成分中のSiO2、Al2O3、CaOなどの不純物成分は高い割合で除去され、SiCの含有率の高い砥粒が回収できており、いずれも、不定形耐火物用原料として十分使用できることが分かる。
【0033】
特に、加熱温度が600〜900℃の範囲内にある試験番号2および3では、SiCの純度が90%以上であり、極めてSiC純度の高い砥粒が回収されている。
【0034】
【発明の効果】
本発明法によれば、10tonの使用済み砥石屑はバインダーの燃焼除去により、約8.5tonに減容し、さらにインパクトクラッシャーを用いて衝撃を与え、不純物粒子を破砕させた場合には、その後、粒径分離操作を施すことにより、約6tonの純度の高い砥粒を回収することができる。
【0035】
その効果は、7.5ton(10tonの砥石屑−2.5tonの不純物)の埋め立て量低減となり、埋め立て処分費用の削減につながる。さらに、本発明法は、バージンの耐火物原料の使用削減、耐火物コスト低減にも貢献でき、産業の発展に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の工程を示す流れ図である。
【図2】破砕工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。
【図3】磁力選別工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。
【図4】磁力選別工程および破砕工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。
【符号の説明】
1:砥石屑、
2:加熱処理、
3:樹脂成分、
4:樹脂成分の除去された残留物、
5:粒径分離、
6:不純物粒子、
7:回収砥粒、
8:破砕、
9:磁力選別、
10:磁性物。
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用済み砥石屑を処理して再資源化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工業用グラインダーの砥石は、円盤状、または、タイヤ状の形状を呈し、大型砥石は、鉄鋼スラブなどの研削用に使用されている。砥石は、一般には、Al2O3系、または、SiC系の粒子径44〜3000μmの粒子(以下、「砥粒」ともいう)にバインダーを添加した後、金型に入れて成型したものである。一部の砥石では、加熱成形も行なわれており、窯に装入して170℃前後で2〜3日間熟成するものもある。熟成温度が低いので、バインダーの中に珪石粉などの研削助剤を添加することができ、また、補強材としてグラスファイバーや鉄筋などを添加することができる。
【0003】
このように砥石には、砥粒以外の樹脂バインダー、珪石粉、グラスファイバー、鉄筋などが含まれているため、砥粒だけを回収することは難しく、使用済みの砥石屑は埋め立て用材料として処理されている。しかし、埋め立て処理は、護岸建設、防水対策、整地および運搬などの費用を必要とする上に、含有されるバインダーによる土壌汚染の問題を伴うことから、現実には避けなければならない。
【0004】
特開平5−70852号公報には、少なくとも1種の金属、特にFeおよび/またはその金属化合物を含有する固体および液体の廃物質からなり、使用不可能な状態または困難な状態にある混合物を処理する方法において、混合物を十分に均質化し、この混合物に、フライアッシュおよび/またはコークスおよび/または炉からのガス灰を含有した微粒状乾燥物質を、合成混合物が殆ど凝集塊の形で存在するようになるまでの量だけ添加して混和し、再利用するために熱処理に供しうるようにする廃棄物処理方法が開示されている。
しかしながら、上記の開示された方法は、粒状ないしは粉塵状の廃棄物を凝集塊として再資源化するものであり、砥石屑のような少なくとも塊状の形態の廃棄物の処理にそのまま適用することは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記の問題点を解消し、砥石屑から不純物を除去し、バインダーなどによる土壌汚染の問題を伴わずに、再資源化用の砥粒を回収処理する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記した従来技術の問題点について検討を行い、以下の知見を得た。
【0007】
(a)砥石中の主としてSiC系またはAl2O3系からなる砥粒には、珪石粉およびグラスファイバーなどが20〜30質量%混入しているため、樹脂バインダーを除去しても、耐火物原料として再利用するにはSiCやAl2O3 の含有率が低すぎる。
(b)研削助剤の珪石粉は、砥粒に比較して粒度が小さいので、樹脂バインダーを加熱処理により燃焼除去後、粒径分離操作することにより、除去できる。
(c)樹脂バインダーは600〜900℃に加熱保持することにより、燃焼除去できる。
【0008】
(d)補強材としてのグラスファイバーは、加熱により溶融して低強度の粒子状となるので、破砕後に粒径分離操作することにより、珪石粉とともに除去できる。
(e)補強材としての鉄筋は、樹脂バインダーを燃焼除去後、磁力選別することにより除去できる。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)〜(4)に示す砥石屑からの砥粒回収方法にある。
【0010】
(1)砥石屑を加熱処理することにより樹脂成分を気化させて分離除去し、前記の気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物に粒径分離操作を施すことにより、粒子径の大きい群として砥粒を回収する、砥石屑からの砥粒回収方法。 (2)前記(1)に記載の砥石からの砥粒回収方法において、気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物を破砕することが好ましい。
(3)前記(1)または(2)に記載の砥石からの砥粒回収方法において、加熱処理における加熱温度を600〜900℃とすることが好ましい。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の砥石からの砥粒回収方法において、気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物中の磁性物を磁力選別により分離除去することが好ましい。
【0011】
本発明において、「砥石屑」とは、鉄鋼スラブ研削用の砥石をはじめとする各種工業用砥石の屑をいう。
【0012】
「樹脂成分」とは、砥石中の砥粒同士を結合させるために加えられているバインダーとしての樹脂成分をいう。例えば、フェノール系樹脂をはじめとする砥石用樹脂が含まれる。
「気化させて分離」とは、加熱処理により樹脂成分を燃焼させ、樹脂成分をガス化して分離することをいう。
【0013】
「粒径分離操作」とは、篩分け操作、または分級操作により粒子を粒子径の異なる2以上の群に分離することをいう。ここで、篩分け操作とは、篩目を通過するか否かによって固体粒子を大小の異なる群に分離する操作をいう。また、分級操作とは、流体中における粒子の沈降速度、または斜面上における降下速度などの運動速度の差を利用して固体粒子を粒子径の異なる群に分離することをいう。
【0014】
「粒子径の大きい群」とは、前記残留物を粒径分離操作により粒子径の異なる群に分けたときの、粒子径の小さい他の群に比べて粒子径の大きい目標とする群をいう。
【0015】
【発明の実施の形態】
砥石屑は、一般にはAl2O3 系、または、SiC系の粒子径44〜3000μmの砥粒にバインダー、珪石粉などの研削助剤、および、グラスファイバーを添加した後に成型し、低温熟成させたものである。したがって、バインダーを除去してもAl2O3系、または、SiC系からなる砥粒には、珪石粉、および、グラスファイバーなどの不純物が20〜30質量%混入しているため、耐火物原料としてリサイクルするには、なお純度が低すぎて、砥粒のリサイクルは困難であった。
【0016】
これに対して、本発明は、前記のとおり、砥石屑を加熱処理することにより樹脂成分を気化させて分離除去し、気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物に粒径分離操作を施すことにより、粒子径の大きい群として砥粒を回収するものである。
図1は、本発明方法の工程を示す流れ図である。砥石屑1は、加熱工程2において加熱され、樹脂成分3を気化により分離される。樹脂成分の除去された残留物4は、粒径分離工程5において粒径の大きい群と粒径の小さい群とに分離される。この工程において、不純物粒子6は、粒子径の小さい群として除去され、SiC系またはAl2O3系からなる砥粒は、粒子径の大きい群として残留し、回収砥粒7として回収される。
【0017】
1)粒径分離工程:
発明者は、実際に砥石屑を加熱処理してバインダーを除去し、不純物が混入した砥粒の状態を観察した。研削助剤である珪石粉は、粒度が砥粒に比べて小さいので、粒径分離操作を行うことによって、粒子径の小さい群として分離し、除去できることが判明した。ここで、粒径分離操作とは、前記のとおり、篩分け操作、または分級操作により粒子を粒子径の異なる2以上の群に分離することをいう。また、粒子径の小さい群とは、前記残留物を粒径分離操作により粒子径の異なる群に分けたときの、粒子径の異なる他の群に比べて粒子径の小さい群をいう。例えば、篩分けの場合、Tyler標準篩の篩目代表径147μm(100メッシュ)の篩により篩分けを行えば、珪石粉のうちの約95質量%が、同104μm(150メッシュ)の篩により篩分けを行えば約90質量%が、そして、同74μm(200メッシュ)の篩により篩分けを行えば約80質量%がそれぞれ篩下(粒子径の小さい群)として除去できる。
2)破砕工程:
グラスファイバーは加熱により軟化溶融し、その表面張力により粒子状になるが、この粒子はAl2O3 系粒子やSiC系粒子に比べて強度が低く、衝撃を与えて崩壊させた後に粒径分離操作を行うことにより、粒子径の小さい群として珪石粉とともに分離除去することが好ましい。
図2は、破砕工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。樹脂成分の除去された残留物4は、破砕工程8において破砕された後、粒径分離工程5に供給される。
【0018】
例えば、前記の加熱処理後の残留物をインパクトクラッシャーに装入し、800rpmにて15分間破砕処理したものを、篩目代表径147μmの篩により篩分けを行った場合は、グラスファイバーのうちの約97質量%が、同104μmの篩により篩分けを行った場合は、約85質量%が、そして、同74μmの篩により篩分けを行った場合は、約76質量%がそれぞれ篩下として除去できる。
【0019】
したがって、砥石屑を加熱処理して樹脂バインダーを燃焼除去した後、不純物の混入した砥粒に衝撃を与えて脆弱な不純物からなる粒子を崩壊させた後に砥粒の粒子径よりも小さい粒子径を境界として粒径分離操作を行うことにより、砥粒を一層効率よく回収することができる。
【0020】
3)加熱工程:
加熱工程においてバインダーの樹脂成分を燃焼させ、気化して分離するに際し、その加熱温度は、600〜900℃とするのが好ましい。
【0021】
加熱温度が600℃以下では、樹脂バインダーの燃焼が十分ではなく、砥粒間の結合を切断して砥粒を粉体または粒子状とするのに長時間を要し、効率が必ずしも高くない。一方、900℃を超えると、SiC系の場合には、砥粒の酸化が始まるので好ましくない。また、酸化の問題がないAl2O3 系の場合においても、過度に処理温度を高くすることは、投入エネルギー効率が低下し、好ましくないからである。
【0022】
4)磁力選別工程:
補強材として鉄筋などが用いられている場合は、バインダーの樹脂成分を燃焼除去した後に磁力選別を行うことにより、これらを簡単に除去できるため、磁力選別処理を行うことが好ましい。なお、磁力選別装置は、電磁石または永久磁石により砥粒中の磁性物を非磁性物と区別して分離する機能を有するもので有ればよく、乾式または湿式など、その形式には特に限定されない。
図3は、磁力選別工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。樹脂成分の除去された残留物4は、磁力選別工程9において磁力選別され、鉄筋などの磁性物10を分離除去された後、粒径分離工程5に供給される。
図4は、磁力選別工程および破砕工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。磁力選別され、鉄筋などの磁性物を分離除去された残留物は破砕工程8において破砕された後、粒径分離工程5に供給される。
【0023】
このようにして回収されたAl2O3系またはSiC系の砥粒は、例えば、高温の溶鉄あるいは溶滓を扱う製銑または製鋼用不定形耐火物の原料として使用することができる。
【0024】
【実施例】
鉄鋼スラブ研削用のタイヤ型砥石屑を処理した例を示す。鉄鋼スラブ研削用の砥石は非常に強固なため、軸芯の金具と砥石部分を割って分離することは困難である。そこで、金具が付いたまま、砥石の回収処理を行った。
【0025】
直径約500mm、厚み200mmで、砥石部分の重量が約10kgの砥石屑を処理した。本砥石屑では、砥粒は主としてSiC粒子から構成されており、樹脂バインダーとしてフェノール樹脂が用いられている。
【0026】
まず、砥石屑を直径1m、長さ2mの横形回転式円筒炉に装入し、両端側から重油バーナーにより加熱した。炉内の平均温度は、570〜950℃の範囲で4水準に調整し、2時間加熱保持した。昇温過程において、550℃を超えた時点から砥石屑表面の樹脂が燃焼を開始し、表面から少しずつ砥粒が剥がれ落ち、約2時間で砥粒が全部剥がれて、金具だけが残った。金具は普通鋼から構成されており、不純物を含まない高級スクラップとしてリサイクル可能である。
【0027】
次いで、剥がれ落ちた砥粒を800rpmのインパクトクラッシャーに装入し、粒状となったグラスファイバーなどの脆弱な粒子を崩壊させた。SiC粒子は非常に硬度が高く、インパクトクラッシャーを通した程度では破砕されなかった。Al2O3 粒子の場合も同様であり、インパクトクラッシャーを通した程度では破砕されなかった。
【0028】
補強鉄筋などの磁性物が含まれている場合には、前記の図3または図4に示されるように、加熱工程の後、例えば、搬送用ベルトコンベアのヘッドの落ち口に磁力選別装置を設置し、電磁石または永久磁石により、磁性物を分離除去すればよい。
【0029】
インパクトクラッシャーを通した後、篩目代表径100メッシュ(147μm)のTyler標準篩で篩分けを行った。篩上の残留物が砥粒で、篩下が不純物である。これらの処理により回収した砥粒の成分を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
ここで、表1の化学成分中のイグロス(イグニションロス)とは、砥石屑の加熱処理による質量減少を表し、含有されていた樹脂成分の含有率を示す。また、SiO2 は研削助剤の珪石粉であり、Al2O3、Fe2O3、およびCaOはそれぞれ補強材のグラスファイバーの構成成分である。
【0032】
試験番号1〜4は、それぞれ、加熱温度を570℃、630℃、800℃および950℃として行った試験であり、全て本発明例である。いずれの試験番号の場合についても、回収された砥粒成分中のSiO2、Al2O3、CaOなどの不純物成分は高い割合で除去され、SiCの含有率の高い砥粒が回収できており、いずれも、不定形耐火物用原料として十分使用できることが分かる。
【0033】
特に、加熱温度が600〜900℃の範囲内にある試験番号2および3では、SiCの純度が90%以上であり、極めてSiC純度の高い砥粒が回収されている。
【0034】
【発明の効果】
本発明法によれば、10tonの使用済み砥石屑はバインダーの燃焼除去により、約8.5tonに減容し、さらにインパクトクラッシャーを用いて衝撃を与え、不純物粒子を破砕させた場合には、その後、粒径分離操作を施すことにより、約6tonの純度の高い砥粒を回収することができる。
【0035】
その効果は、7.5ton(10tonの砥石屑−2.5tonの不純物)の埋め立て量低減となり、埋め立て処分費用の削減につながる。さらに、本発明法は、バージンの耐火物原料の使用削減、耐火物コスト低減にも貢献でき、産業の発展に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の工程を示す流れ図である。
【図2】破砕工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。
【図3】磁力選別工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。
【図4】磁力選別工程および破砕工程を備えた本発明の工程を示す流れ図である。
【符号の説明】
1:砥石屑、
2:加熱処理、
3:樹脂成分、
4:樹脂成分の除去された残留物、
5:粒径分離、
6:不純物粒子、
7:回収砥粒、
8:破砕、
9:磁力選別、
10:磁性物。
Claims (4)
- 砥石屑を加熱処理することにより樹脂成分を気化させて分離除去し、前記樹脂成分の除去された残留物に粒径分離操作を施すことにより、粒子径の大きい群として砥粒を回収することを特徴とする砥石屑からの砥粒回収方法。
- 前記気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物を破砕することを特徴とする請求項1に記載の砥石屑からの砥粒回収方法。
- 前記加熱処理における加熱温度が600〜900℃であることを特徴とする請求項1または2に記載砥石屑からの砥粒回収方法。
- 前記気化分離により樹脂成分を除去した後の残留物中の磁性物を磁力選別により分離除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の砥石屑からの砥粒回収方法。
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---|---|---|---|
JP2002176677A JP2004016951A (ja) | 2002-06-18 | 2002-06-18 | 砥石屑からの砥粒回収方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN107413814A (zh) * | 2017-05-11 | 2017-12-01 | 芜湖市华峰砂轮有限公司 | 一种废砂轮再利用工艺 |
-
2002
- 2002-06-18 JP JP2002176677A patent/JP2004016951A/ja active Pending
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