JP2004016109A - 軟骨細胞様細胞、及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軟骨欠損を伴う疾患の治療法における移植材料として用いることができる軟骨細胞様細胞の作製方法を提供する。
【解決手段】以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
a) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
b) 培養後の細胞を回収するステップ。
【選択図】 なし
【解決手段】以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
a) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
b) 培養後の細胞を回収するステップ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は軟骨細胞様細胞及びその作製方法、並びに軟骨組織形成用組成物及びその作製方法に関する。本発明により提供される軟骨細胞様細胞又は軟骨組織形成用組成物は軟骨組織の再生に利用でき、例えば軟骨の初期変性、オステオコンドラルフラクチャー、軟骨壊死、変性疾患、外傷を始めとする軟骨欠損治療に移植材料として用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
人体の組織の中で、関節軟骨組織は十分な再生能力を持たない。このため損傷された軟骨組織は修復されず、更に大きな軟骨欠損に至ることが多い。高齢化社会を迎えるに当たり、外傷性軟骨欠損や変形性関節症を始めとする軟骨欠損を伴う疾患の治療法開発は社会的な要求度が高い。軟骨欠損には古くから軟骨移植という治療手段が考えられていた。特に治療手技としてのAutologous chondrocytetransplantationが1994年以降広く臨床的に用いられるようになってから、軟骨細胞・組織を移植して治療する試みは現実のものとなった。しかし、人体組織に不要な軟骨組織は存在せず、移植治療に足る十分な軟骨の確保が出来ていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、軟骨組織分化の研究により、分化のメカニズムが解明されつつある。軟骨分化のメカニズムを利用して純度の高い軟骨細胞(組織)を効率よく作り出す事が出来れば軟骨(細胞)組織移植に用いることが出来ると考えられる。即ち、広く軟骨組織の再生に用いることができると考えられる。
本発明は以上の背景の下なされたものであって、軟骨欠損を伴う疾患の治療法において移植材料として用いることができる軟骨細胞様細胞又は軟骨組織形成用組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは以上の課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入した後、細胞密度を高めて培養を行うことにより、軟骨細胞へと分化させることができた。即ち、間葉系幹細胞から軟骨細胞様細胞を作製することに成功した。一方で、Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度の状態とし、これを移植材料として移植術を実施したところ異所的な軟骨組織の形成に成功した。これらの結果から、Sox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度の環境におくことによって軟骨細胞への分化が促されるとの知見が得られた。本発明はかかる知見に基づき完成されたものであって、次の構成を提供するものである。
[1] 以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
a) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
b) 培養後の細胞を回収するステップ。
[2] 前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、[1]に記載の軟骨細胞様細胞の作製方法。
[3] 前記ステップa)が以下のステップを含む、[1]又は[2]に記載の軟骨細胞様細胞の作製方法、
a1) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態に懸濁した細胞懸濁液を調製するステップ、
a2) 前記細胞懸濁液を、その中の細胞の一部が培養容器表面に付着するまで培養容器内で静置するステップ、及び
a3) 前記培養容器内に培養液を追加した後、間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ。
[4] 以下の特徴を有する軟骨細胞様細胞、
(1) Sox9遺伝子が外来的に導入された間葉系幹細胞に由来する、
(2) II型コラーゲン及びプロテオグリカンを産生する。
[5] 以下の特徴を有する軟骨細胞様細胞、
(1) Sox9遺伝子が外来的に導入された間葉系幹細胞に由来する、
(2) II型コラーゲン及びプロテオグリカンを産生する、
(3) X型コラーゲンを産生しない。
[6] [4]又は[5]の軟骨細胞様細胞によって形成された軟骨様組織。
[7] [1]〜[3]のいずれかの方法によって作製された軟骨細胞様細胞、又は[4]若しくは[5]に記載の軟骨細胞様細胞を含む、ことを特徴とする軟骨組織形成用組成物。
[8] Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態で含有する、ことを特徴とする軟骨組織形成用組成物。
[9] 前記間葉系幹細胞の密度が1×107個/cm3以上である、ことを特徴とする[8]に記載の軟骨組織形成用組成物。
[10] 以下のステップを含む、軟骨組織形成用組成物の作製方法、
A) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
B) 培養後の細胞を高密度状態にするステップ。
[11] 前記高密度状態が、細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、ことを特徴とする[10]に記載の軟骨組織形成用組成物の作製方法。
尚、本明細書において「軟骨細胞様細胞」とは、生体において軟骨組織を構成する軟骨細胞に類似ないし同一の細胞であって、軟骨細胞の代替として用いることができる細胞をいう。また「軟骨組織形成用組成物」とは、軟骨組織を形成(再生)するために移植に供され得る組成物を意味する用語として使用される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の局面は軟骨細胞様細胞の作製方法に関し、Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ(ステップa))、及び培養後の細胞を回収するステップ(ステップb))を含んで構成される。
ステップa)ではSox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)が用いられる。ここで、Sox9遺伝子とは配列番号1の塩基配列(Accession No.Z46629)を有し、個体発生時期においては性を決定し、また軟骨分化を誘導する転写因子として知られる。Sox9遺伝子は例えば、骨・軟骨細胞から常法に従って分離、精製することによって取得することができる。遺伝子導入に用いられる核酸の種類は特に限定されず、ゲノムDNA、cDNA、mRNAのいずれであってもよい。また、遺伝子導入に用いられるSox9遺伝子は導入後に適切に発現され、且つその機能が発揮される程度において一部の塩基に改変が施されていてもよい。また、他の遺伝子由来のプロモーター、例えばサイトメガロウイルス、SV40、アデノウィルス等のプロモーターを用いることもできる。
【0006】
間葉系幹細胞へのSox9遺伝子の導入は常法で行うことができ、例えばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等のウイルスベクターを用いる方法、又はリン酸カルシウムを利用したトランスフェクション、エレクトロポーレーション(Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161−7165(1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413−7417(1984))、マイクロインジェクション(Graessmann,M. & Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 73,366−370(1976))等の方法により行うことができる。
【0007】
間葉系幹細胞(未分化間葉系幹細胞)源としては骨髄、骨膜、脂肪組織、末梢血を挙げることができる。これらの生体液を常法に従い採取した後、未分化間葉系細胞を付着性の有無により選択する。即ち、骨髄等に含まれる細胞の中で付着性を有するものを選択することにより間葉系幹細胞を得ることができる。
ここで、利用可能な場合にはレシピエント自身の間葉系幹細胞を用いることが好ましい。移植に供した際に免疫拒絶反応の惧れが無い軟骨細胞様細胞ないし軟骨移植用組成物の作製が可能となり、これによって免疫拒絶反応を伴わない移植術が可能となるからである。レシピエント自身の間葉系幹細胞が入手できないか或は入手が困難な場合にはレシピエント以外の間葉系幹細胞を用いることもできるが、この場合には免疫適合性を考慮してドナーを選択することが好ましい。
【0008】
遺伝子導入操作の後、Sox9遺伝子が導入された細胞が選択され、培養に供される。遺伝子導入された細胞を選択するためにはカナマイシン耐性遺伝子などの選択マーカーを利用することができる。Sox9遺伝子が導入された細胞を選択してその純度を上げておくとより効率の良い軟骨分化が導かれると考えられる。尚、遺伝子導入操作の後、遺伝子導入細胞の選択を行わずに直接培養に供することもできる。このような方法によれば、培養に供される細胞群における遺伝子導入細胞の含有率が低下するものの、細胞の選択操作によって遺伝子導入細胞の一部が損失されることがないため、より多くの遺伝子導入細胞を培養に供することが可能となる。したがって、最終的に得られる軟骨細胞様細胞数の増大を期待できる。
【0009】
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞は高密度の環境(高密度状態)で培養される。例えば、遺伝子導入操作後の細胞懸濁液を遠心処理して得られる沈渣(ペレット)を少量の溶媒に懸濁し、これを培養容器内に移し、細胞が高密度に存在する環境(高密度状態)をつくる。そして、この環境を崩さないように培養容器内に培養液を追加した後に培養を行う。培養初期の状態において細胞密度が1×107個/cm3以上、例えば、1×108個/cm3〜1×109個/cm3であることが好ましい。このような高密度状態で培養することにより軟骨細胞への分化が促される。これは、細胞が密に存在することによって各細胞への栄養素の供給量が少ない状態が形成されることや、細胞同士の接触が行われることなどによって軟骨細胞への分化に適した環境となるためであると予測される。細胞密度の上限値は例えば、1×1010個/cm3である。尚、細胞密度が必要以上に高い場合には細胞懸濁液の取り扱いが困難となり、また却って軟骨細胞への分化に好ましくないと考えられる。
【0010】
培養は間葉系幹細胞が増殖可能な条件で行われる。培養液としてはDulbecco’sModified Eagle’s Mediun (DMEM)をベースとしたものを用いることができる。具体的には、DMEMにペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質、アスコルビン酸、及び/又はbasic FGF等添加して得られる培養液を用いることができる。DMEMのほか、α−MEM、HAM’S F12等を用いることもできる。細胞の増殖を促すため、培養液にTGF−βを添加することもできる。しかし、TGF−βは軟骨細胞を肥大軟骨細胞(Hypertrophic chondrocyte)へと分化誘導することが報告されていることからTGF−βの過剰な使用は好ましくなく、またTGF−βを使用するとしても培養の初期段階で使用するに留め、培養細胞が軟骨細胞へと分化することが認められた後はTGF−βを使用しないことが好ましい。
培養容器(培養皿)にはその表面にI型コラーゲン、ファイブロネクチン、ポリ−Lリジン等をコーティングしてあるものを使用することが好ましい。培養細胞の接着が促され、良好な増殖が行われるからである。
【0011】
培養温度としては例えば25℃〜45℃、好ましくは30℃〜40℃、更に好ましくは約37℃を挙げることができる。培養時間ついては特に限定されないが、例えば7日〜1ヶ月である。
【0012】
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞が増殖した後に継代培養を行うことができる。継代培養は次のように行うことができる。まずtrypsin−EDTA等で処理することによって細胞を培養容器表面から剥がし、次いで細胞を回収する。回収した細胞に培養液を加えて細胞浮遊液とする。細胞を回収する際、或は回収後に遠心処理を行うことが好ましい。かかる遠心処理によって細胞密度の高い細胞浮遊液を調製することができる。細胞浮遊液は初期培養と同様に培養容器に播種され、培養に供される。継代培養は上記の初期培養と同様の培養条件で行うことができる。以上の継代培養は必要に応じて複数回行うことができる。継代培養を繰り返すことにより細胞数を増加させることができる。
【0013】
以上の条件で培養することにより、Sox9遺伝子が導入された細胞は軟骨細胞へと分化する。軟骨細胞への分化が行われたことは、例えば培養後の細胞のアルシアンブルーに対する染色性を調べることにより確認することができる。即ち、軟骨細胞への分化が行われている場合、細胞はアルシアンブルーに対する染色性を示し、青紫色に染色される。軟骨細胞への分化が行われたことは軟骨細胞に特徴的なII型コラーゲンを指標としても確認することができる。例えば、II型コラーゲンに特異的な結合性を有する抗体を用いた免疫染色によってII型コラーゲンを産生していること、即ち軟骨細胞様細胞であることを確認できる。
【0014】
間葉系幹細胞(Sox9遺伝子導入前、導入後の間葉系幹細胞、軟骨細胞へと分化した細胞を含む)の培養を支持細胞の共存下で行うことができる。支持細胞とはfeeder細胞とも呼ばれ、培養液中に成長因子等などを供給する。支持細胞との共存下で培養することにより、細胞の増殖効率の向上、分化促進などの効果が期待できる。支持細胞には、例えば、3T3細胞(スイスマウス3T3細胞、マウスNIH3T3細胞、3T3J2細胞など)、STO株細胞などを用いることができる。
【0015】
支持細胞の細胞密度は、例えば約1×102個/cm2以上、好ましくは約1×102個/cm2〜約1×107個/cm2、更に好ましくは約1×103個/cm2〜約1×105個/cm2とすることができる。支持細胞数が少ないと間葉系幹細胞の増殖率が低下することが考えられ好ましくない。一方、支持細胞数が多すぎる場合には、かえって間葉系幹細胞の増殖率を低下させることとなり好ましくない。
【0016】
培養後の細胞はtrypsin−EDTA等を用いて培養容器から剥離され、回収される。例えば、剥離処理した後に遠心処理によって細胞を集めて回収することができる。以上の方法によって得られる軟骨細胞様細胞は以下の特徴を有する。
(1)II型コラーゲン及びプロテオグリカンを産生する。これは生体における軟骨細胞が有する特徴である。II型コラーゲンの産生の有無は、例えばII型コラーゲンに特異的な抗体を用いた免疫染色によって確認することができる。一方、プロテオグリカンの産生の有無は、例えばアルシアンブルー染色、トルイジンブルーなどの塩基性色素による染色によって確認することができる。
(2)X型コラーゲンを産生しない。X型コラーゲンは肥大軟骨細胞(Hypertrohicchondrocyte)が産生することが知られており、これを産生しないということは硝子軟骨組織を形成する軟骨細胞の機能を維持していることを意味する。X型コラーゲンの産生の有無は、例えばX型コラーゲンに特異的な抗体を用いた免疫染色によって確認することができる。
【0017】
回収された細胞を適当な溶媒に懸濁することにより軟骨組織形成用組成物を構成することができる。組成物中の細胞密度は高い状態にすることが好ましく、例えば細胞密度を1×107個/cm3以上、具体的には例えば1×108個/cm3〜1×109個/cm3とすることが好ましい。
ここでの溶媒としては例えば生理食塩水、PBSを用いることができる。本発明の軟骨組織形成用組成物は、上記の方法によって取得される細胞の他、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、フィブリン糊、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブリン糊、無機系生体吸収性材料などを含有していてもよい。これらの材料を用いることにより移植後に軟骨細胞の成長の場としての足場が確保され、移植部において良好な生着、増殖を期待することができる。また組成物に適度な粘性を付与することができ、移植の際の操作性が向上することはもとより、移植後の生着が良好となってより効果的な軟骨の再生が期待できる。これらの材料の中でもコラーゲンを用いることが好ましい。コラーゲンとしてはI型、II型、IV型コラーゲン等を用いることができる。特に、軟骨組織に特異的なコラーゲンであるII型コラーゲンを用いることが好ましい。コラーゲンを用いる場合には、抗原性を低下させる目的からペプシンやトリプシンなどの分解酵素で処理することによりテロペプチドを除去した、いわゆるアテロコラーゲンとしたものを採用することが好ましい。尚、コラーゲン等は市販のものを用いることができる。
【0018】
以上のコラーゲンなどの材料を軟骨細胞様細胞を作製する過程において用いることができる。即ち、培養液中にコラーゲンなど添加した状態でSox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を培養することができる。コラーゲンなどは例えば繊維状、シート状、メッシュ状、スポンジ状、ゲル状などとして用いることができる。
【0019】
上述の培養操作によって得られる軟骨細胞様細胞からなる組織塊をそのまま軟骨組織形成用組成物として利用することもできる。ここでの「そのまま」とは、組織塊を細胞ごとに分離する操作を経ることなく利用することを意味し、組織塊の一部を切除することや、夾雑物の除去、滅菌処理などを行った後に利用する場合も含む。
【0020】
以上の軟骨組織形成用組成物では軟骨細胞への分化が行われた細胞を用いているが、軟骨細胞への分化が完全に完了していない状態の細胞、あるいは分化誘導をかける前の細胞を用いて軟骨組織形成用組成物を構成することもできる。この場合には軟組成物中の細胞密度を高い状態にすることが好ましく、例えば細胞密度を1×107個/cm3以上、具体的には例えば1×108個/cm3〜1×109個/cm3とすることが好ましい。
例えば上述の方法で間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入した後、必要に応じて増殖可能な条件で培養し、その後遠心処理などによって細胞を回収する。そして、回収された細胞を適当な溶媒に懸濁して軟骨組織形成用組成物とする。
【0021】
【実施例】
<実施例1> 間葉系幹細胞の培養
Std:ddyマウス(日齢28〜30日、体重25〜30g)の大腿骨を無菌的に取りだし、Dulbecco’s Modified Eagle’s Mediun (DMEM) にて骨髄液を流し出し、径10cmのculture dish(培養容器)にsuspension(懸濁)した。培養液は5ml DMEMに100μg/ml Penicillin G、10%FBS、0.2mM ascorbic acid、10ng/ml basic FGFを添加したもの(以下、「medium」という)を使用した。4日後にPBSで数回洗浄し、浮遊性細胞を取り除いた。付着性細胞(間葉系幹細胞)を37℃、5% CO2 / 95% air のincubator(インキュベータ)内に静置し、3日毎にmediumを交換し、confluent(コンフルエント)に達するまで一次培養した。その時点でtrypsin−EDTAを用いて培養皿表面から細胞をはがし、6穴dish(培養皿)に5×105 cells/dishの濃度で播種し、二次培養した。
【0022】
<実施例2> マウス完全長Sox9 cDNAのクローニング
ICRマウス(日齢18日)の大腿骨、脛骨を取りだし、Trizolを用いてtotal RNAを調製し、それをtemplate(鋳型)としてReverse Transcription System (Promega社製) によりcDNAを調製した。完全長Sox9 cDNAが得られるようにプライマーをセットし(Forward primerは開始コドンより上流、Reverse primerは終止コドンより下流)PCRを行い、産物をアガロースゲルで電気泳動した。使用したForward primer及びReverse primerは以下のとおりである。
Forward primer:5’−CTTCTCGCCTTTCCCGGCCA−3’ (配列番号2)
Reverse primer:5’−GATCAGCTCTGTCACCATAGC−3’(配列番号3)
目的とするバンド(約1.5kbp、図1を参照)をゲルから精製し、pCR 2.1−TOPO vector(Invitrogen社製)に組み込みサブクローニングした。Insert DNA(挿入DNA)はBigDye Terminator Cycle Sequencing Kit (PE Applied Biosystems社製)を用いたSequencingで塩基配列を確認した。Sox9の組み込まれたベクターを制限酵素EcoRIで消化し、約1.5kbpのSox9 cDNA(配列番号4)を調製した。
【0023】
<実施例3> 発現ベクターの構築および遺伝子導入
実施例2で得られた完全長Sox9 cDNAをDNA ligation kit Ver.2 (Takara社製)にてpIRES2−EGFP vector (Clontech社製) のEcoRI siteにligation(ライゲーション)した。この発現vector(ベクター)はサイトメガロウィルスのプロモーターを有し、Insert DNA(挿入DNA)はEGFPの翻訳領域の上流に組み込まれるような構造をとっている(図2を参照)。完全長Sox9 cDNAを組み込んだEGFP発現vectorを制限酵素EcoRIでカットして得られたDNA断片を電気泳導したところ1.5kbp付近に Sox9遺伝子(cDNA)のバンドが認められた。上述の6穴dish(培養皿)に二次培養した細胞が約90% confluent(コンフルエント)になった時点で、Sox9 cDNAが組み込まれた発現ベクターをLipofectAMINE 2000 reagent (GIBCO BRL社製) を用いて遺伝子導入した。EGFPの発現は励起フィルターを通した蛍光顕微鏡で観察して確認した。
【0024】
<実施例4> 高密度培養(micromass culture)
実施例3でSox9を遺伝子導入した骨髄細胞に対しmediumに抗生剤(カナマイシン)を添加することによりSox9が導入された細胞を選択した。遺伝子導入細胞が6穴dish(培養皿) でconfluent(コンフルエント)に達した時点でtrypsin−EDTAを用いてそれらをはがし、遠心して集めた(細胞数は約5×105個)。次に集めた細胞を20μlのmediumに縣濁し、6穴dish中央に静置した。細胞が充分に付着するまでIncubator内で静置し(約2時間)、付着を確認した後mediumを追加して37℃、5% CO2 / 95% airの条件で培養を行った。3日毎にmediumを交換し、約2週間培養した。その結果、約3 mm径の組織塊が得られた。この組織塊に対してアルシアンブルー染色を行ったところ、図3に示されるようにこの組織塊はアルシアンブルー陽性であって、軟骨様組織が形成されていることが確認された。一方、EGFPの発現を調べたところ、図4に示すようにEGFP陽性細胞が多数認められ、遺伝子導入された細胞の軟骨様組織形成への関与が示唆された。
【0025】
<実施例5> 遺伝子導入細胞のヌードマウスへの移植
実施例3でSox9を遺伝子導入した骨髄細胞(間葉系幹細胞)がconfluent(コンフルエント)に達した時点でtrypsin−EDTAを用いそれらをはがし、遠心して回収した後に少量のmediumに縣濁した。続いて、細胞約1×105個を6穴dishに播種し、二次培養に供した。培養後の細胞約1×106個をtrypsin−EDTAではがし、遠心して集め、mediumに縣濁しdiffusion chamber (Millipore社製 HA−membranes, 100μm thick(厚)、0.45um pore size(孔径))内に封入した。遺伝子導入していない骨髄細胞(間葉系幹細胞)も同様に封入し、control(コントロール群)とした。これら2つのchamberを同一ヌードマウスの背部皮下に移植した。移植4週後にchamberを取り出したところ、数mm径の組織塊を認めた(図5)。組織学的検討を行うために組織塊10%ホルマリンで固定後、パラフィンに包埋し、アルシアンブルー染色を行った。その結果、図6に示されるように組織塊はアルシアンブルー陽性であった。また、II型コラーゲンに特異的な抗体を用いて免疫染色を行ったところ染色性が認められた(図7)。これらの結果から軟骨組織が形成されたものと考えられた。一方、組織塊におけるEGFPの発現を調べたところ、軟骨組織の周辺部にはEGFPによる蛍光を発する細胞が多数認められ(図8)、Sox9遺伝子を導入した骨髄細胞(間葉系幹細胞)の軟骨組織形成への関与が示唆された。尚、コントロールでは、脂肪細胞様に変化した細胞が、薄い膜様組織を形成しているのみであった(図9)。
【0026】
骨髄には様々な間葉系細胞(筋、脂肪、軟骨、骨芽、線維芽細胞など)に分化しうる幹細胞が存在するとされる。外部からの細胞成分の流入が不可能なdiffusion chmaber内で形成された軟骨組織は、Sox9遺伝子を導入された骨髄細胞が軟骨細胞へ分化し、軟骨基質(II型コラーゲンやプロテオグリカンなど)を産生したことを示している。コントロールでは一部脂肪細胞様に変化したものが認められたが、これは骨髄間葉系幹細胞が、移植された脂肪組織内に存在するPPARγ2など脂肪細胞分化誘導因子の影響を受けたものと考えられる。外部環境を考えると、脂肪組織内でも軟骨組織を形成し得たことは、軟骨欠損部へ移植する臨床応用の場合、さらに良好な軟骨形成が期待される。
【0027】
In vivoで形成された軟骨組織では、EGFPの発現は形態が軟骨細胞様細胞に変化している中心部でやや少ない傾向があった。これは細胞分裂によりある程度EGFPの発現が減少していったものと思われた。それとともに、導入された細胞のみが軟骨細胞に分化するのではなく、導入細胞からのSox9タンパクが非導入細胞にもparacrine的に働きかけ、それら細胞をも軟骨分化に導いた可能性も考えられる。
Sox9遺伝子はin vitroにおいて、II型コラーゲンやアグリカンの発現を誘導することが知られているが、軟骨分化にはL−Sox5やSox6などのco−factorの協調作用が必須であるとされてきた。以上の実施例では高密度培養条件下において、Sox9のみを強制発現させることにより、軟骨分化が可能であることが示された。即ち、これまで通説となっていたco−factorの必要性が高密度培養法によって補い得ることが明らかとなった。
【0028】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば骨髄などに含まれる間葉系幹細胞を出発材料として軟骨細胞様細胞・軟骨様組織を得ることが可能となる。本発明によれば、比較的簡便な方法で、かつ効率よく間葉系幹細胞を軟骨へと分化させることができる。加えて、遺伝子導入をリポフェクション等の方法により行えば生体毒性も少なくでき、臨床応用が可能である。
【0030】
培養液へのデキサメタゾンやTGF−βなどの軟骨分化誘導物質の添加により、骨髄細胞をin vitroで軟骨細胞に分化させる実験系はすでに報告されているが、本発明の方法では間葉系幹細胞にSox9を遺伝子導入することにより、培養液中への特別な物質の添加なしで軟骨分化を促進することができる。分化誘導物質の培養液への添加ではその効果は一時的であることから繰り返し添加をする必要があるが、遺伝子導入法では発現したタンパク質の効果の永続性が期待される。また、デキサメタゾンの添加などによる従来の方法では軟骨細胞へと分化した細胞のみを選択することができないが、本発明の方法では抗生剤添加の選択培地の使用などにより遺伝子導入された細胞のみの生存を可能にし、純度の高い軟骨細胞様細胞・軟骨様組織を得ることが出来る。
【0031】
これまでに報告される軟骨分化誘導実験では、特にTGF−βなどを用いた場合、軟骨が肥大化し、さらに骨にまで分化してしまうことが報告されている。Sox9にはPTHrPなどを介して、肥大軟骨細胞(骨組織へ移行する軟骨の最終分化細胞)への分化を抑制する作用があることが知られている。この点においても、TGF−β等を用いる従来技術に比較して本発明での軟骨細胞誘導は関節軟骨組織・細胞を作り出すのに優れた技術であると考えられる。事実、本発明の方法によって得られた軟骨様組織では肥大軟骨のマーカーであるX型コラーゲンの発現は認めず、硝子軟骨組織の機能、形態を維持していた。このことは実際の臨床応用にきわめて有利である。
【0032】
高齢化社会の到来とともに、変形性関節症など軟骨の変性にともなう疼痛、可動域制限などのため、日常生活に支障をきたす症例が激増している。本発明で提供される軟骨細胞様細胞などはこれらの疾患など軟骨の再生が必要とされる各種疾患の治療に利用できる。また、本発明で提供される軟骨細胞様細胞などを利用すれば、既に欧米で広く行われつつあるAutologous chondrocyte transplantationに際してのドナー細胞不足を補うことができる。本発明によって提供される軟骨細胞様細胞などは例えば、変形性関節症を始めとする軟骨組織変性をともなう疾患については骨切り術と併用して用いることもできる。また、スポーツ障害外傷を始めとする軟骨欠損についてはAutologous chondrocyte transplantationのドナー細胞として用いることもできる。さらに、靱帯損傷に合併する軟骨損傷には靱帯再建術時に並行して用いることができる。
【0033】
以下、次の事項を開示する。
11.以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後の細胞を回収するステップ。
12.以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
間葉系幹細胞源より間葉系幹細胞を分離し、培養するステップ、
培養後の間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後の細胞を回収するステップ。
13.前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、11.又は12.に記載の軟骨細胞様細胞の作製方法。
14.Sox9遺伝子の導入がウイルスベクターを用いない遺伝子導入法によって行われることを特徴とする、11.〜13.のいずれかに記載の軟骨細胞様細胞の作製方法。
15.11.〜14.のいずれかの作製方法によって作製された軟骨細胞様細胞を含む、ことを特徴とする軟骨組織形成用組成物。
16.以下のステップを含む、軟骨組織形成用組成物の作製方法、
間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後の細胞を高密度状態にするステップ。
17.以下のステップを含む、軟骨組織形成用組成物の作製方法、
間葉系幹細胞源より間葉系幹細胞を分離し、培養するステップ、
培養後の間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後の細胞を高密度状態にするステップ。
18.前記高密度状態が、細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、ことを特徴とする16.又は17.のいずれかに記載の軟骨組織形成用組成物の作製方法。
19.Sox9遺伝子の導入がウイルスベクターを用いない遺伝子導入法によって行われることを特徴とする、16.〜18.のいずれかに記載の軟骨組織形成用組成物の作製方法。
【0034】
21.以下のステップを含む、軟骨様組織の作製方法、
a) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
b) 培養後、形成された組織塊を回収するステップ。
22.前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、21.に記載の軟骨様組織の作製方法。
23.前記ステップa)が以下のステップを含む、21.又は22.に記載の軟骨様組織の作製方法。
a1) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態に懸濁した細胞懸濁液を調製するステップ、
a2) 前記細胞懸濁液を、その中の細胞の一部が培養容器表面に付着するまで培養容器内で静置するステップ、及び
a3) 前記培養容器内に培養液を追加した後、間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ。
24.以下のステップを含む、軟骨様組織の作製方法、
間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後、形成された組織塊を回収するステップ。
25.以下のステップを含む、軟骨様組織の作製方法、
間葉系幹細胞源より間葉系幹細胞を分離し、培養するステップ、
培養後の間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後、形成された組織塊を回収するステップ。
26.前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、24.又は25.に記載の軟骨様組織の作製方法。
27.Sox9遺伝子の導入がウイルスベクターを用いない遺伝子導入法によって行われることを特徴とする、24.〜26.のいずれかに記載の軟骨様組織の作製方法。
【0035】
30.請求項4若しくは5に記載の軟骨細胞様細胞、又は請求項1〜3若しくは11.〜14.のいずれかの方法によって作製された軟骨細胞様細胞を軟骨組織欠損部に移植する、ことを特徴とする軟骨組織再生方法。
31.請求項6に記載の軟骨様組織、又は21.〜27.のいずれかの方法によって作製された軟骨様組織を軟骨組織欠損部に移植する、ことを特徴とする軟骨組織再生方法。
32.請求項7〜9のいずれかに記載の軟骨組織形成用組成物、又は請求項10、請求項11、若しくは16.〜19.のいずれかの方法によって作製された軟骨組織形成用組成物を軟骨組織欠損部に移植する、ことを特徴とする軟骨組織再生方法。
【0036】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は完全長Sox9 cDNAを組み込んだEGFP発現vectorを制限酵素EcoRIでカットして得られたDNA断片を電気泳導した結果(染色したゲル)を示す図である。1.5kbp付近に Sox9遺伝子のバンドが認められる。
【図2】図2は完全長Sox9 cDNAを組み込んだEGFP発現vector(ベクター)の構成を模式的に示す図である。
【図3】図3はSox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度培養した結果得られた組織塊のアルシアンブルー染色像である。中央部円形状に染色されているのが観察される。
【図4】図4はSox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度培養した結果得られた組織塊におけるEGFPの発現を蛍光顕微鏡で観察したイメージ図である。組織塊の全体に亘ってEGFPの発現が認められる。
【図5】図5はSox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度状態としてヌードマウスに移植した場合の移植4週後の状態を示す図であり、取り出された組織塊が示される。
【図6】図6はSox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度状態としてヌードマウスに移植した場合の効果を示す図であり、移植4週後に取り出した組織塊のアルシアンブルー染色像である。
【図7】図7は同じく移植4週後に取り出した組織塊をII型コラーゲンに特異的な抗体で免疫染色した結果を示す図である。
【図8】図8は同じく移植4週後に取り出した組織塊におけるEGFPの発現を調べた結果を示す図である。
【図9】図9はコントロール(Sox9遺伝子を導入していない間葉系幹細胞を移植した例)の移植4週後における移植部のアルシアンブルー染色像である。
【産業上の利用分野】
本発明は軟骨細胞様細胞及びその作製方法、並びに軟骨組織形成用組成物及びその作製方法に関する。本発明により提供される軟骨細胞様細胞又は軟骨組織形成用組成物は軟骨組織の再生に利用でき、例えば軟骨の初期変性、オステオコンドラルフラクチャー、軟骨壊死、変性疾患、外傷を始めとする軟骨欠損治療に移植材料として用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
人体の組織の中で、関節軟骨組織は十分な再生能力を持たない。このため損傷された軟骨組織は修復されず、更に大きな軟骨欠損に至ることが多い。高齢化社会を迎えるに当たり、外傷性軟骨欠損や変形性関節症を始めとする軟骨欠損を伴う疾患の治療法開発は社会的な要求度が高い。軟骨欠損には古くから軟骨移植という治療手段が考えられていた。特に治療手技としてのAutologous chondrocytetransplantationが1994年以降広く臨床的に用いられるようになってから、軟骨細胞・組織を移植して治療する試みは現実のものとなった。しかし、人体組織に不要な軟骨組織は存在せず、移植治療に足る十分な軟骨の確保が出来ていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、軟骨組織分化の研究により、分化のメカニズムが解明されつつある。軟骨分化のメカニズムを利用して純度の高い軟骨細胞(組織)を効率よく作り出す事が出来れば軟骨(細胞)組織移植に用いることが出来ると考えられる。即ち、広く軟骨組織の再生に用いることができると考えられる。
本発明は以上の背景の下なされたものであって、軟骨欠損を伴う疾患の治療法において移植材料として用いることができる軟骨細胞様細胞又は軟骨組織形成用組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは以上の課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入した後、細胞密度を高めて培養を行うことにより、軟骨細胞へと分化させることができた。即ち、間葉系幹細胞から軟骨細胞様細胞を作製することに成功した。一方で、Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度の状態とし、これを移植材料として移植術を実施したところ異所的な軟骨組織の形成に成功した。これらの結果から、Sox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度の環境におくことによって軟骨細胞への分化が促されるとの知見が得られた。本発明はかかる知見に基づき完成されたものであって、次の構成を提供するものである。
[1] 以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
a) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
b) 培養後の細胞を回収するステップ。
[2] 前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、[1]に記載の軟骨細胞様細胞の作製方法。
[3] 前記ステップa)が以下のステップを含む、[1]又は[2]に記載の軟骨細胞様細胞の作製方法、
a1) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態に懸濁した細胞懸濁液を調製するステップ、
a2) 前記細胞懸濁液を、その中の細胞の一部が培養容器表面に付着するまで培養容器内で静置するステップ、及び
a3) 前記培養容器内に培養液を追加した後、間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ。
[4] 以下の特徴を有する軟骨細胞様細胞、
(1) Sox9遺伝子が外来的に導入された間葉系幹細胞に由来する、
(2) II型コラーゲン及びプロテオグリカンを産生する。
[5] 以下の特徴を有する軟骨細胞様細胞、
(1) Sox9遺伝子が外来的に導入された間葉系幹細胞に由来する、
(2) II型コラーゲン及びプロテオグリカンを産生する、
(3) X型コラーゲンを産生しない。
[6] [4]又は[5]の軟骨細胞様細胞によって形成された軟骨様組織。
[7] [1]〜[3]のいずれかの方法によって作製された軟骨細胞様細胞、又は[4]若しくは[5]に記載の軟骨細胞様細胞を含む、ことを特徴とする軟骨組織形成用組成物。
[8] Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態で含有する、ことを特徴とする軟骨組織形成用組成物。
[9] 前記間葉系幹細胞の密度が1×107個/cm3以上である、ことを特徴とする[8]に記載の軟骨組織形成用組成物。
[10] 以下のステップを含む、軟骨組織形成用組成物の作製方法、
A) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
B) 培養後の細胞を高密度状態にするステップ。
[11] 前記高密度状態が、細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、ことを特徴とする[10]に記載の軟骨組織形成用組成物の作製方法。
尚、本明細書において「軟骨細胞様細胞」とは、生体において軟骨組織を構成する軟骨細胞に類似ないし同一の細胞であって、軟骨細胞の代替として用いることができる細胞をいう。また「軟骨組織形成用組成物」とは、軟骨組織を形成(再生)するために移植に供され得る組成物を意味する用語として使用される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の局面は軟骨細胞様細胞の作製方法に関し、Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ(ステップa))、及び培養後の細胞を回収するステップ(ステップb))を含んで構成される。
ステップa)ではSox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)が用いられる。ここで、Sox9遺伝子とは配列番号1の塩基配列(Accession No.Z46629)を有し、個体発生時期においては性を決定し、また軟骨分化を誘導する転写因子として知られる。Sox9遺伝子は例えば、骨・軟骨細胞から常法に従って分離、精製することによって取得することができる。遺伝子導入に用いられる核酸の種類は特に限定されず、ゲノムDNA、cDNA、mRNAのいずれであってもよい。また、遺伝子導入に用いられるSox9遺伝子は導入後に適切に発現され、且つその機能が発揮される程度において一部の塩基に改変が施されていてもよい。また、他の遺伝子由来のプロモーター、例えばサイトメガロウイルス、SV40、アデノウィルス等のプロモーターを用いることもできる。
【0006】
間葉系幹細胞へのSox9遺伝子の導入は常法で行うことができ、例えばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等のウイルスベクターを用いる方法、又はリン酸カルシウムを利用したトランスフェクション、エレクトロポーレーション(Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161−7165(1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413−7417(1984))、マイクロインジェクション(Graessmann,M. & Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 73,366−370(1976))等の方法により行うことができる。
【0007】
間葉系幹細胞(未分化間葉系幹細胞)源としては骨髄、骨膜、脂肪組織、末梢血を挙げることができる。これらの生体液を常法に従い採取した後、未分化間葉系細胞を付着性の有無により選択する。即ち、骨髄等に含まれる細胞の中で付着性を有するものを選択することにより間葉系幹細胞を得ることができる。
ここで、利用可能な場合にはレシピエント自身の間葉系幹細胞を用いることが好ましい。移植に供した際に免疫拒絶反応の惧れが無い軟骨細胞様細胞ないし軟骨移植用組成物の作製が可能となり、これによって免疫拒絶反応を伴わない移植術が可能となるからである。レシピエント自身の間葉系幹細胞が入手できないか或は入手が困難な場合にはレシピエント以外の間葉系幹細胞を用いることもできるが、この場合には免疫適合性を考慮してドナーを選択することが好ましい。
【0008】
遺伝子導入操作の後、Sox9遺伝子が導入された細胞が選択され、培養に供される。遺伝子導入された細胞を選択するためにはカナマイシン耐性遺伝子などの選択マーカーを利用することができる。Sox9遺伝子が導入された細胞を選択してその純度を上げておくとより効率の良い軟骨分化が導かれると考えられる。尚、遺伝子導入操作の後、遺伝子導入細胞の選択を行わずに直接培養に供することもできる。このような方法によれば、培養に供される細胞群における遺伝子導入細胞の含有率が低下するものの、細胞の選択操作によって遺伝子導入細胞の一部が損失されることがないため、より多くの遺伝子導入細胞を培養に供することが可能となる。したがって、最終的に得られる軟骨細胞様細胞数の増大を期待できる。
【0009】
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞は高密度の環境(高密度状態)で培養される。例えば、遺伝子導入操作後の細胞懸濁液を遠心処理して得られる沈渣(ペレット)を少量の溶媒に懸濁し、これを培養容器内に移し、細胞が高密度に存在する環境(高密度状態)をつくる。そして、この環境を崩さないように培養容器内に培養液を追加した後に培養を行う。培養初期の状態において細胞密度が1×107個/cm3以上、例えば、1×108個/cm3〜1×109個/cm3であることが好ましい。このような高密度状態で培養することにより軟骨細胞への分化が促される。これは、細胞が密に存在することによって各細胞への栄養素の供給量が少ない状態が形成されることや、細胞同士の接触が行われることなどによって軟骨細胞への分化に適した環境となるためであると予測される。細胞密度の上限値は例えば、1×1010個/cm3である。尚、細胞密度が必要以上に高い場合には細胞懸濁液の取り扱いが困難となり、また却って軟骨細胞への分化に好ましくないと考えられる。
【0010】
培養は間葉系幹細胞が増殖可能な条件で行われる。培養液としてはDulbecco’sModified Eagle’s Mediun (DMEM)をベースとしたものを用いることができる。具体的には、DMEMにペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質、アスコルビン酸、及び/又はbasic FGF等添加して得られる培養液を用いることができる。DMEMのほか、α−MEM、HAM’S F12等を用いることもできる。細胞の増殖を促すため、培養液にTGF−βを添加することもできる。しかし、TGF−βは軟骨細胞を肥大軟骨細胞(Hypertrophic chondrocyte)へと分化誘導することが報告されていることからTGF−βの過剰な使用は好ましくなく、またTGF−βを使用するとしても培養の初期段階で使用するに留め、培養細胞が軟骨細胞へと分化することが認められた後はTGF−βを使用しないことが好ましい。
培養容器(培養皿)にはその表面にI型コラーゲン、ファイブロネクチン、ポリ−Lリジン等をコーティングしてあるものを使用することが好ましい。培養細胞の接着が促され、良好な増殖が行われるからである。
【0011】
培養温度としては例えば25℃〜45℃、好ましくは30℃〜40℃、更に好ましくは約37℃を挙げることができる。培養時間ついては特に限定されないが、例えば7日〜1ヶ月である。
【0012】
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞が増殖した後に継代培養を行うことができる。継代培養は次のように行うことができる。まずtrypsin−EDTA等で処理することによって細胞を培養容器表面から剥がし、次いで細胞を回収する。回収した細胞に培養液を加えて細胞浮遊液とする。細胞を回収する際、或は回収後に遠心処理を行うことが好ましい。かかる遠心処理によって細胞密度の高い細胞浮遊液を調製することができる。細胞浮遊液は初期培養と同様に培養容器に播種され、培養に供される。継代培養は上記の初期培養と同様の培養条件で行うことができる。以上の継代培養は必要に応じて複数回行うことができる。継代培養を繰り返すことにより細胞数を増加させることができる。
【0013】
以上の条件で培養することにより、Sox9遺伝子が導入された細胞は軟骨細胞へと分化する。軟骨細胞への分化が行われたことは、例えば培養後の細胞のアルシアンブルーに対する染色性を調べることにより確認することができる。即ち、軟骨細胞への分化が行われている場合、細胞はアルシアンブルーに対する染色性を示し、青紫色に染色される。軟骨細胞への分化が行われたことは軟骨細胞に特徴的なII型コラーゲンを指標としても確認することができる。例えば、II型コラーゲンに特異的な結合性を有する抗体を用いた免疫染色によってII型コラーゲンを産生していること、即ち軟骨細胞様細胞であることを確認できる。
【0014】
間葉系幹細胞(Sox9遺伝子導入前、導入後の間葉系幹細胞、軟骨細胞へと分化した細胞を含む)の培養を支持細胞の共存下で行うことができる。支持細胞とはfeeder細胞とも呼ばれ、培養液中に成長因子等などを供給する。支持細胞との共存下で培養することにより、細胞の増殖効率の向上、分化促進などの効果が期待できる。支持細胞には、例えば、3T3細胞(スイスマウス3T3細胞、マウスNIH3T3細胞、3T3J2細胞など)、STO株細胞などを用いることができる。
【0015】
支持細胞の細胞密度は、例えば約1×102個/cm2以上、好ましくは約1×102個/cm2〜約1×107個/cm2、更に好ましくは約1×103個/cm2〜約1×105個/cm2とすることができる。支持細胞数が少ないと間葉系幹細胞の増殖率が低下することが考えられ好ましくない。一方、支持細胞数が多すぎる場合には、かえって間葉系幹細胞の増殖率を低下させることとなり好ましくない。
【0016】
培養後の細胞はtrypsin−EDTA等を用いて培養容器から剥離され、回収される。例えば、剥離処理した後に遠心処理によって細胞を集めて回収することができる。以上の方法によって得られる軟骨細胞様細胞は以下の特徴を有する。
(1)II型コラーゲン及びプロテオグリカンを産生する。これは生体における軟骨細胞が有する特徴である。II型コラーゲンの産生の有無は、例えばII型コラーゲンに特異的な抗体を用いた免疫染色によって確認することができる。一方、プロテオグリカンの産生の有無は、例えばアルシアンブルー染色、トルイジンブルーなどの塩基性色素による染色によって確認することができる。
(2)X型コラーゲンを産生しない。X型コラーゲンは肥大軟骨細胞(Hypertrohicchondrocyte)が産生することが知られており、これを産生しないということは硝子軟骨組織を形成する軟骨細胞の機能を維持していることを意味する。X型コラーゲンの産生の有無は、例えばX型コラーゲンに特異的な抗体を用いた免疫染色によって確認することができる。
【0017】
回収された細胞を適当な溶媒に懸濁することにより軟骨組織形成用組成物を構成することができる。組成物中の細胞密度は高い状態にすることが好ましく、例えば細胞密度を1×107個/cm3以上、具体的には例えば1×108個/cm3〜1×109個/cm3とすることが好ましい。
ここでの溶媒としては例えば生理食塩水、PBSを用いることができる。本発明の軟骨組織形成用組成物は、上記の方法によって取得される細胞の他、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、フィブリン糊、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブリン糊、無機系生体吸収性材料などを含有していてもよい。これらの材料を用いることにより移植後に軟骨細胞の成長の場としての足場が確保され、移植部において良好な生着、増殖を期待することができる。また組成物に適度な粘性を付与することができ、移植の際の操作性が向上することはもとより、移植後の生着が良好となってより効果的な軟骨の再生が期待できる。これらの材料の中でもコラーゲンを用いることが好ましい。コラーゲンとしてはI型、II型、IV型コラーゲン等を用いることができる。特に、軟骨組織に特異的なコラーゲンであるII型コラーゲンを用いることが好ましい。コラーゲンを用いる場合には、抗原性を低下させる目的からペプシンやトリプシンなどの分解酵素で処理することによりテロペプチドを除去した、いわゆるアテロコラーゲンとしたものを採用することが好ましい。尚、コラーゲン等は市販のものを用いることができる。
【0018】
以上のコラーゲンなどの材料を軟骨細胞様細胞を作製する過程において用いることができる。即ち、培養液中にコラーゲンなど添加した状態でSox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を培養することができる。コラーゲンなどは例えば繊維状、シート状、メッシュ状、スポンジ状、ゲル状などとして用いることができる。
【0019】
上述の培養操作によって得られる軟骨細胞様細胞からなる組織塊をそのまま軟骨組織形成用組成物として利用することもできる。ここでの「そのまま」とは、組織塊を細胞ごとに分離する操作を経ることなく利用することを意味し、組織塊の一部を切除することや、夾雑物の除去、滅菌処理などを行った後に利用する場合も含む。
【0020】
以上の軟骨組織形成用組成物では軟骨細胞への分化が行われた細胞を用いているが、軟骨細胞への分化が完全に完了していない状態の細胞、あるいは分化誘導をかける前の細胞を用いて軟骨組織形成用組成物を構成することもできる。この場合には軟組成物中の細胞密度を高い状態にすることが好ましく、例えば細胞密度を1×107個/cm3以上、具体的には例えば1×108個/cm3〜1×109個/cm3とすることが好ましい。
例えば上述の方法で間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入した後、必要に応じて増殖可能な条件で培養し、その後遠心処理などによって細胞を回収する。そして、回収された細胞を適当な溶媒に懸濁して軟骨組織形成用組成物とする。
【0021】
【実施例】
<実施例1> 間葉系幹細胞の培養
Std:ddyマウス(日齢28〜30日、体重25〜30g)の大腿骨を無菌的に取りだし、Dulbecco’s Modified Eagle’s Mediun (DMEM) にて骨髄液を流し出し、径10cmのculture dish(培養容器)にsuspension(懸濁)した。培養液は5ml DMEMに100μg/ml Penicillin G、10%FBS、0.2mM ascorbic acid、10ng/ml basic FGFを添加したもの(以下、「medium」という)を使用した。4日後にPBSで数回洗浄し、浮遊性細胞を取り除いた。付着性細胞(間葉系幹細胞)を37℃、5% CO2 / 95% air のincubator(インキュベータ)内に静置し、3日毎にmediumを交換し、confluent(コンフルエント)に達するまで一次培養した。その時点でtrypsin−EDTAを用いて培養皿表面から細胞をはがし、6穴dish(培養皿)に5×105 cells/dishの濃度で播種し、二次培養した。
【0022】
<実施例2> マウス完全長Sox9 cDNAのクローニング
ICRマウス(日齢18日)の大腿骨、脛骨を取りだし、Trizolを用いてtotal RNAを調製し、それをtemplate(鋳型)としてReverse Transcription System (Promega社製) によりcDNAを調製した。完全長Sox9 cDNAが得られるようにプライマーをセットし(Forward primerは開始コドンより上流、Reverse primerは終止コドンより下流)PCRを行い、産物をアガロースゲルで電気泳動した。使用したForward primer及びReverse primerは以下のとおりである。
Forward primer:5’−CTTCTCGCCTTTCCCGGCCA−3’ (配列番号2)
Reverse primer:5’−GATCAGCTCTGTCACCATAGC−3’(配列番号3)
目的とするバンド(約1.5kbp、図1を参照)をゲルから精製し、pCR 2.1−TOPO vector(Invitrogen社製)に組み込みサブクローニングした。Insert DNA(挿入DNA)はBigDye Terminator Cycle Sequencing Kit (PE Applied Biosystems社製)を用いたSequencingで塩基配列を確認した。Sox9の組み込まれたベクターを制限酵素EcoRIで消化し、約1.5kbpのSox9 cDNA(配列番号4)を調製した。
【0023】
<実施例3> 発現ベクターの構築および遺伝子導入
実施例2で得られた完全長Sox9 cDNAをDNA ligation kit Ver.2 (Takara社製)にてpIRES2−EGFP vector (Clontech社製) のEcoRI siteにligation(ライゲーション)した。この発現vector(ベクター)はサイトメガロウィルスのプロモーターを有し、Insert DNA(挿入DNA)はEGFPの翻訳領域の上流に組み込まれるような構造をとっている(図2を参照)。完全長Sox9 cDNAを組み込んだEGFP発現vectorを制限酵素EcoRIでカットして得られたDNA断片を電気泳導したところ1.5kbp付近に Sox9遺伝子(cDNA)のバンドが認められた。上述の6穴dish(培養皿)に二次培養した細胞が約90% confluent(コンフルエント)になった時点で、Sox9 cDNAが組み込まれた発現ベクターをLipofectAMINE 2000 reagent (GIBCO BRL社製) を用いて遺伝子導入した。EGFPの発現は励起フィルターを通した蛍光顕微鏡で観察して確認した。
【0024】
<実施例4> 高密度培養(micromass culture)
実施例3でSox9を遺伝子導入した骨髄細胞に対しmediumに抗生剤(カナマイシン)を添加することによりSox9が導入された細胞を選択した。遺伝子導入細胞が6穴dish(培養皿) でconfluent(コンフルエント)に達した時点でtrypsin−EDTAを用いてそれらをはがし、遠心して集めた(細胞数は約5×105個)。次に集めた細胞を20μlのmediumに縣濁し、6穴dish中央に静置した。細胞が充分に付着するまでIncubator内で静置し(約2時間)、付着を確認した後mediumを追加して37℃、5% CO2 / 95% airの条件で培養を行った。3日毎にmediumを交換し、約2週間培養した。その結果、約3 mm径の組織塊が得られた。この組織塊に対してアルシアンブルー染色を行ったところ、図3に示されるようにこの組織塊はアルシアンブルー陽性であって、軟骨様組織が形成されていることが確認された。一方、EGFPの発現を調べたところ、図4に示すようにEGFP陽性細胞が多数認められ、遺伝子導入された細胞の軟骨様組織形成への関与が示唆された。
【0025】
<実施例5> 遺伝子導入細胞のヌードマウスへの移植
実施例3でSox9を遺伝子導入した骨髄細胞(間葉系幹細胞)がconfluent(コンフルエント)に達した時点でtrypsin−EDTAを用いそれらをはがし、遠心して回収した後に少量のmediumに縣濁した。続いて、細胞約1×105個を6穴dishに播種し、二次培養に供した。培養後の細胞約1×106個をtrypsin−EDTAではがし、遠心して集め、mediumに縣濁しdiffusion chamber (Millipore社製 HA−membranes, 100μm thick(厚)、0.45um pore size(孔径))内に封入した。遺伝子導入していない骨髄細胞(間葉系幹細胞)も同様に封入し、control(コントロール群)とした。これら2つのchamberを同一ヌードマウスの背部皮下に移植した。移植4週後にchamberを取り出したところ、数mm径の組織塊を認めた(図5)。組織学的検討を行うために組織塊10%ホルマリンで固定後、パラフィンに包埋し、アルシアンブルー染色を行った。その結果、図6に示されるように組織塊はアルシアンブルー陽性であった。また、II型コラーゲンに特異的な抗体を用いて免疫染色を行ったところ染色性が認められた(図7)。これらの結果から軟骨組織が形成されたものと考えられた。一方、組織塊におけるEGFPの発現を調べたところ、軟骨組織の周辺部にはEGFPによる蛍光を発する細胞が多数認められ(図8)、Sox9遺伝子を導入した骨髄細胞(間葉系幹細胞)の軟骨組織形成への関与が示唆された。尚、コントロールでは、脂肪細胞様に変化した細胞が、薄い膜様組織を形成しているのみであった(図9)。
【0026】
骨髄には様々な間葉系細胞(筋、脂肪、軟骨、骨芽、線維芽細胞など)に分化しうる幹細胞が存在するとされる。外部からの細胞成分の流入が不可能なdiffusion chmaber内で形成された軟骨組織は、Sox9遺伝子を導入された骨髄細胞が軟骨細胞へ分化し、軟骨基質(II型コラーゲンやプロテオグリカンなど)を産生したことを示している。コントロールでは一部脂肪細胞様に変化したものが認められたが、これは骨髄間葉系幹細胞が、移植された脂肪組織内に存在するPPARγ2など脂肪細胞分化誘導因子の影響を受けたものと考えられる。外部環境を考えると、脂肪組織内でも軟骨組織を形成し得たことは、軟骨欠損部へ移植する臨床応用の場合、さらに良好な軟骨形成が期待される。
【0027】
In vivoで形成された軟骨組織では、EGFPの発現は形態が軟骨細胞様細胞に変化している中心部でやや少ない傾向があった。これは細胞分裂によりある程度EGFPの発現が減少していったものと思われた。それとともに、導入された細胞のみが軟骨細胞に分化するのではなく、導入細胞からのSox9タンパクが非導入細胞にもparacrine的に働きかけ、それら細胞をも軟骨分化に導いた可能性も考えられる。
Sox9遺伝子はin vitroにおいて、II型コラーゲンやアグリカンの発現を誘導することが知られているが、軟骨分化にはL−Sox5やSox6などのco−factorの協調作用が必須であるとされてきた。以上の実施例では高密度培養条件下において、Sox9のみを強制発現させることにより、軟骨分化が可能であることが示された。即ち、これまで通説となっていたco−factorの必要性が高密度培養法によって補い得ることが明らかとなった。
【0028】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば骨髄などに含まれる間葉系幹細胞を出発材料として軟骨細胞様細胞・軟骨様組織を得ることが可能となる。本発明によれば、比較的簡便な方法で、かつ効率よく間葉系幹細胞を軟骨へと分化させることができる。加えて、遺伝子導入をリポフェクション等の方法により行えば生体毒性も少なくでき、臨床応用が可能である。
【0030】
培養液へのデキサメタゾンやTGF−βなどの軟骨分化誘導物質の添加により、骨髄細胞をin vitroで軟骨細胞に分化させる実験系はすでに報告されているが、本発明の方法では間葉系幹細胞にSox9を遺伝子導入することにより、培養液中への特別な物質の添加なしで軟骨分化を促進することができる。分化誘導物質の培養液への添加ではその効果は一時的であることから繰り返し添加をする必要があるが、遺伝子導入法では発現したタンパク質の効果の永続性が期待される。また、デキサメタゾンの添加などによる従来の方法では軟骨細胞へと分化した細胞のみを選択することができないが、本発明の方法では抗生剤添加の選択培地の使用などにより遺伝子導入された細胞のみの生存を可能にし、純度の高い軟骨細胞様細胞・軟骨様組織を得ることが出来る。
【0031】
これまでに報告される軟骨分化誘導実験では、特にTGF−βなどを用いた場合、軟骨が肥大化し、さらに骨にまで分化してしまうことが報告されている。Sox9にはPTHrPなどを介して、肥大軟骨細胞(骨組織へ移行する軟骨の最終分化細胞)への分化を抑制する作用があることが知られている。この点においても、TGF−β等を用いる従来技術に比較して本発明での軟骨細胞誘導は関節軟骨組織・細胞を作り出すのに優れた技術であると考えられる。事実、本発明の方法によって得られた軟骨様組織では肥大軟骨のマーカーであるX型コラーゲンの発現は認めず、硝子軟骨組織の機能、形態を維持していた。このことは実際の臨床応用にきわめて有利である。
【0032】
高齢化社会の到来とともに、変形性関節症など軟骨の変性にともなう疼痛、可動域制限などのため、日常生活に支障をきたす症例が激増している。本発明で提供される軟骨細胞様細胞などはこれらの疾患など軟骨の再生が必要とされる各種疾患の治療に利用できる。また、本発明で提供される軟骨細胞様細胞などを利用すれば、既に欧米で広く行われつつあるAutologous chondrocyte transplantationに際してのドナー細胞不足を補うことができる。本発明によって提供される軟骨細胞様細胞などは例えば、変形性関節症を始めとする軟骨組織変性をともなう疾患については骨切り術と併用して用いることもできる。また、スポーツ障害外傷を始めとする軟骨欠損についてはAutologous chondrocyte transplantationのドナー細胞として用いることもできる。さらに、靱帯損傷に合併する軟骨損傷には靱帯再建術時に並行して用いることができる。
【0033】
以下、次の事項を開示する。
11.以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後の細胞を回収するステップ。
12.以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
間葉系幹細胞源より間葉系幹細胞を分離し、培養するステップ、
培養後の間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後の細胞を回収するステップ。
13.前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、11.又は12.に記載の軟骨細胞様細胞の作製方法。
14.Sox9遺伝子の導入がウイルスベクターを用いない遺伝子導入法によって行われることを特徴とする、11.〜13.のいずれかに記載の軟骨細胞様細胞の作製方法。
15.11.〜14.のいずれかの作製方法によって作製された軟骨細胞様細胞を含む、ことを特徴とする軟骨組織形成用組成物。
16.以下のステップを含む、軟骨組織形成用組成物の作製方法、
間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後の細胞を高密度状態にするステップ。
17.以下のステップを含む、軟骨組織形成用組成物の作製方法、
間葉系幹細胞源より間葉系幹細胞を分離し、培養するステップ、
培養後の間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後の細胞を高密度状態にするステップ。
18.前記高密度状態が、細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、ことを特徴とする16.又は17.のいずれかに記載の軟骨組織形成用組成物の作製方法。
19.Sox9遺伝子の導入がウイルスベクターを用いない遺伝子導入法によって行われることを特徴とする、16.〜18.のいずれかに記載の軟骨組織形成用組成物の作製方法。
【0034】
21.以下のステップを含む、軟骨様組織の作製方法、
a) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
b) 培養後、形成された組織塊を回収するステップ。
22.前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、21.に記載の軟骨様組織の作製方法。
23.前記ステップa)が以下のステップを含む、21.又は22.に記載の軟骨様組織の作製方法。
a1) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態に懸濁した細胞懸濁液を調製するステップ、
a2) 前記細胞懸濁液を、その中の細胞の一部が培養容器表面に付着するまで培養容器内で静置するステップ、及び
a3) 前記培養容器内に培養液を追加した後、間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ。
24.以下のステップを含む、軟骨様組織の作製方法、
間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後、形成された組織塊を回収するステップ。
25.以下のステップを含む、軟骨様組織の作製方法、
間葉系幹細胞源より間葉系幹細胞を分離し、培養するステップ、
培養後の間葉系幹細胞にSox9遺伝子を導入するステップ、
Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
培養後、形成された組織塊を回収するステップ。
26.前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、24.又は25.に記載の軟骨様組織の作製方法。
27.Sox9遺伝子の導入がウイルスベクターを用いない遺伝子導入法によって行われることを特徴とする、24.〜26.のいずれかに記載の軟骨様組織の作製方法。
【0035】
30.請求項4若しくは5に記載の軟骨細胞様細胞、又は請求項1〜3若しくは11.〜14.のいずれかの方法によって作製された軟骨細胞様細胞を軟骨組織欠損部に移植する、ことを特徴とする軟骨組織再生方法。
31.請求項6に記載の軟骨様組織、又は21.〜27.のいずれかの方法によって作製された軟骨様組織を軟骨組織欠損部に移植する、ことを特徴とする軟骨組織再生方法。
32.請求項7〜9のいずれかに記載の軟骨組織形成用組成物、又は請求項10、請求項11、若しくは16.〜19.のいずれかの方法によって作製された軟骨組織形成用組成物を軟骨組織欠損部に移植する、ことを特徴とする軟骨組織再生方法。
【0036】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は完全長Sox9 cDNAを組み込んだEGFP発現vectorを制限酵素EcoRIでカットして得られたDNA断片を電気泳導した結果(染色したゲル)を示す図である。1.5kbp付近に Sox9遺伝子のバンドが認められる。
【図2】図2は完全長Sox9 cDNAを組み込んだEGFP発現vector(ベクター)の構成を模式的に示す図である。
【図3】図3はSox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度培養した結果得られた組織塊のアルシアンブルー染色像である。中央部円形状に染色されているのが観察される。
【図4】図4はSox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度培養した結果得られた組織塊におけるEGFPの発現を蛍光顕微鏡で観察したイメージ図である。組織塊の全体に亘ってEGFPの発現が認められる。
【図5】図5はSox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度状態としてヌードマウスに移植した場合の移植4週後の状態を示す図であり、取り出された組織塊が示される。
【図6】図6はSox9遺伝子を導入した間葉系幹細胞を高密度状態としてヌードマウスに移植した場合の効果を示す図であり、移植4週後に取り出した組織塊のアルシアンブルー染色像である。
【図7】図7は同じく移植4週後に取り出した組織塊をII型コラーゲンに特異的な抗体で免疫染色した結果を示す図である。
【図8】図8は同じく移植4週後に取り出した組織塊におけるEGFPの発現を調べた結果を示す図である。
【図9】図9はコントロール(Sox9遺伝子を導入していない間葉系幹細胞を移植した例)の移植4週後における移植部のアルシアンブルー染色像である。
Claims (11)
- 以下のステップを含む、軟骨細胞様細胞の作製方法、
a) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態かつ間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
b) 培養後の細胞を回収するステップ。 - 前記高密度状態が、培養開始時の細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、請求項1に記載の軟骨細胞様細胞の作製方法。
- 前記ステップa)が以下のステップを含む、請求項1又は2に記載の軟骨細胞様細胞の作製方法、
a1) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態に懸濁した細胞懸濁液を調製するステップ、
a2) 前記細胞懸濁液を、その中の細胞の一部が培養容器表面に付着するまで培養容器内で静置するステップ、及び
a3) 前記培養容器内に培養液を追加した後、間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ。 - 以下の特徴を有する軟骨細胞様細胞、
(1) Sox9遺伝子が外来的に導入された間葉系幹細胞に由来する、
(2) II型コラーゲン及びプロテオグリカンを産生する。 - 以下の特徴を有する軟骨細胞様細胞、
(1) Sox9遺伝子が外来的に導入された間葉系幹細胞に由来する、
(2) II型コラーゲン及びプロテオグリカンを産生する、
(3) X型コラーゲンを産生しない。 - 請求項4又は5の軟骨細胞様細胞によって形成された軟骨様組織。
- 請求項1〜3のいずれかの方法によって作製された軟骨細胞様細胞、又は請求項4若しくは5に記載の軟骨細胞様細胞を含む、ことを特徴とする軟骨組織形成用組成物。
- Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を高密度状態で含有する、ことを特徴とする軟骨組織形成用組成物。
- 前記間葉系幹細胞の密度が1×107個/cm3以上である、ことを特徴とする請求項8に記載の軟骨組織形成用組成物。
- 以下のステップを含む、軟骨組織形成用組成物の作製方法、
A) Sox9遺伝子が導入された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞が増殖可能な条件で培養するステップ、及び
B) 培養後の細胞を高密度状態にするステップ。 - 前記高密度状態が、細胞密度が1×107個/cm3以上の状態である、ことを特徴とする請求項10に記載の軟骨組織形成用組成物の作製方法。
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