詳細な説明
以下は、高密度の生物学的細胞が装入された本発明の手術用縫合糸および多孔性医療用インプラントに関するさまざまな発想、ならびにその態様の、さらに詳細な説明である。上記で取り上げて、以下でさらに詳細に考察しているさまざまな発想は、開示された発想が任意の特定の実行様式には限定されないことから、数多くのやり方のうち任意のもので実行しうることが理解されるべきである。具体的な実行および適用の例は、主として例示を目的として提示される。
1つの態様は、改良された、幹細胞を保有する手術用縫合糸のための方法および用具、特に、縫合糸(例えば、手術用縫合糸)などの医療用インプラント用具に、生物学的細胞(例えば、幹細胞)が、持続可能な培養物またはインビボにおいて達成可能なものを上回る濃度で装入されている方法および用具を提供する。1つの態様においては、手術用縫合糸に、細胞集密状態でインプラントの利用可能な結合表面によって支持されうる細胞の数を上回る数量の細胞が装入される。
本明細書における「医療用具」という用語は、一時的導入を意図した用具(例えば、生体内分解性の縫合糸または組織スカフォールド)、ならびに長期的または永続的な挿入を意図した用具(例えば、人工靭帯または人工腱)の両方を含みうる。1つの態様において、「医療用具」という用語は、疾患、傷害または身体障害(handicap)の診断、予防、モニタリング、治療または軽減を意図した、任意の装置(apparatus)、器具(appliance)、器械(instrument)、道具(implement)、材料、機械、仕掛け(contrivance)、インプラント、インビトロ試薬、または一団の成分(component party)もしくは付属品を含む、他の類似もしくは関連した物品のことを指し得る。この用語はまた、ヒトまたは他の動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことを意図していて、身体において、または身体に対して、薬理学的、免疫学的または代謝的な手段のみによってはその主たる意図した作用を果たさないものの、そのような手段によってその機能が補助されうるような、任意の物品も含みうる。医療用具の例示的な例には、針、カテーテル(例えば、静脈内カテーテル、尿道カテーテルおよび血管カテーテル)、ステント、シャント(例えば、水頭症シャント、透析グラフト)、チューブ(例えば、鼓膜チューブ(myringotomy tube)、鼓膜換気チューブ(tympanostomy tube))、インプラント(例えば、乳房インプラント、眼内レンズ)、補装具および人工臓器、ならびにケーブル、リード線、ワイヤーおよびそれらに付随する電極(例えば、ペースメーカーおよび植込み型除細動器用のリード線、双極性および単極性RF電極、血管ガイドワイヤー)が非限定的に含まれる。また、創傷被覆材、縫合糸、ステープル、吻合用具、脊柱ディスク(vertebral disk)、骨ピン、縫合糸アンカー、止血バリアー(hemostatic barrier)、鉗子、ネジ、プレート、クリップ、血管インプラント、組織接着剤およびシーラント、組織スカフォールド、さまざまな種類の被覆材、骨代用材、靭帯または腱のインプラント用具、腔内用具、血管支持体、ならびに、治療薬、生物活性分子および生物学的細胞または組織などの治療用材料を組み入れることによって利益を得ることができる他の身体接触性用具などの用具も想定している。
本明細書における「縫合糸」という用語は、近位端、遠位端および長軸が備わった、細長い、一般に管状で糸状の医療用具を指し得、ここで長軸方向の長さは他の任意の軸での長さの2倍に等しいかまたはそれを上回り、この用具は長軸方向に沿って柔軟である。いくつかの態様において、縫合糸は組織または医療用補装具を接合させるために用いられる。いくつかの態様において、縫合糸はまた、組織部位への治療用材料の固定化および送達のため、または組織成長のためのスカフォールドとしても使用されうる。
本明細書における縫合糸の文脈において、「構造特性」とは、用具の予想される機能寿命にわたって、早期破壊も、(該用具がその意図された様式で機能するのを阻止する)降伏レベル(level of yield)も伴うことなく、長軸方向、周方向または径方向の引張力に用具が耐えることを可能にする特性のことを指し得る。
本明細書における「多孔性」という用語は、材料のマトリックスにおける機能的に妥当なサイズの空隙または穴、例えば1つの態様の内部成分におけるシースおよび/またはコアにおけるものなどを指し得る。1つの態様において、空隙は孔または間隙のことを指し得る。シースまたはコアの中にある穴、またはそこを通過するかそこから出る通路の文脈において、機能的に妥当なサイズとは、さもなくば移動性を有する、細胞、治療用材料または構築物の他の材料の通過を許容するか、または阻害するサイズのことである。生物学的細胞が関わる1つの態様において、単細胞の通過を許容する機能的に妥当なサイズとは、細胞サイズよりも大きいサイズのことを指し得、それは典型的には5〜50μmの範囲である。1つの目的が流れを阻害することである(およびそれ故に流れの完全な阻止は必要とされない)、もう1つの態様においては、所望の結果を得るために、はるかに直径の大きい穴を使用することが考えられる。これは、任意の間質液(または細胞担体媒質)が流れを遅らせるのに十分な粘性がある場合、流路が比較的長いかもしくは入り組んでいる場合、または流体中に存在する他の材料が流れを妨害するようなサイズもしくは密度である場合に特に有効である。いくつかの態様において、特に編まれたかまたは織られたマトリックス(縫合糸、または本明細書における1つの態様に記載のシースにおいて一般的なように)の場合には、多孔性媒質、例えばシースなどにおける穴(opening)は丸い必要はない‐多くの場合、媒質に加えられる応力の種類に応じて幾何形状が異なりうる;そのような場合、妥当な寸法は、穴の両端間の最小寸法であってよい。孔または間隙は、孔または間隙の内部での生物学的細胞の保持を許容するサイズを有しうる。代替的に(または追加的に)、サイズが、縫合糸の1つの領域または区域から別の領域または区域への細胞の遊走または通過に適していてもよい。
バルク媒質の場合における、例えば生物学的細胞を含む縫合糸のコアなどにおける妥当な多孔性は、治療効果を有するための総量で治療用材料を媒質中に含めるためのサイズの空隙、または生物学的細胞を媒質中に含めることを可能にするのに必要なサイズの空隙のことを指し得る。1つの態様において、縫合糸コアの場合、妥当な空隙には、マルチフィラメントコアにおける繊維間の空間、コアとシースとの間の空間、粒子状物質保有コアである場合は粒子間の空間、またはコア内の実際のバルク材料内の空隙(例えば、スポンジ状材料)が含まれうる。Mygind, T., et al. ("Mesenchymal stem cell ingrowth and differentiation on coralline hydroxyapatite scaffolds," Biomaterials, 28 (6): 1036-1047 (February 2007))は、孔径が100〜500μmの範囲にある場合に、幹細胞の増殖および分化に対して有益であることを指し示している。用途によっては、この範囲外にある孔径を使用してもよい。
医療用用具、特に手術用縫合糸は、広範囲にわたる材料から製造することができる。材料は生分解性および/または生体適合性であってよい。生分解性ポリマーには、ポリエステル類、例えばポリグリコリドおよびポリラクチド、ポリオルトエステル類、ポリ酸無水物類、ポリホスファゼン類、ならびにポリヒドロキシアルカン酸が非限定的に含まれうる。生体適合性ポリマーのより具体的な例には、以下が含まれる:[α]-ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、例えばポリ(L-ラクチド)(PLLA)およびポリグリコリド(PGA)など;ポリ-p-ジオキサノン(PDO);ポリカプロラクトン(PCL);ポリビニルアルコール(PVA);ポリエチレンオキシド(PEO);米国特許第6,333,029号および第6,355,699号に開示されたポリマー;ならびに、医療用インプラント用具の構築に利用される他の任意の生体吸収性および生体適合性ポリマー、コポリマー、またはポリマーもしくはコポリマーの混合物。
材料は天然材料であってよい‐例えばコラーゲンおよび絹など。または、材料は合成材料であってもよい。1つの態様において、これらの生体適合性材料の一部は、用途に応じた任意の適した技術を用いて、生物活性分子(例えば、増殖因子)とコンジュゲートさせてもよい。生分解性材料には、生物活性分子とのコンジュゲーションに適する材料も適していない材料も含まれうる。いくつかの態様において、生物活性分子は、用具材料とのコンジュゲーションも化学結合も必要とせずに、医療用または手術用の用具構築物の構築に組み入れることができる。加えて、新たな生体適合性材料、生体吸収性材料が開発されているので、それらの少なくとも一部も本明細書に記載の態様において有用な材料になる可能性がある。上記の材料は一例として特定したに過ぎず、添付の特許請求の範囲において明示的に求められない限り、いかなる特定の材料にも限定されないことが理解されるべきである。
臨床使用のための骨髄は、標的患者の骨から、シリンジ型用具を用いて抽出された吸引液として入手しうる。多くの場合には、寛骨が供給源として用いられるが、それは一部には、そのサイズが大きく、体表面に近接しているためである。ある種の用途では、骨髄はそのままで用いられるが、多くの場合には、何らかの形の分離技術、例えば遠心分離などが、骨髄の所望の画分を濃縮するために用いられることがある。増殖因子などのサイトカインを含む生物活性分子が、この分離工程の標的となることが多い。幹細胞、始原細胞または他の細胞が所望の標的となることもある。また、関心対象の細胞および分子を、脂肪組織(fat tissue)とも言う脂肪組織(adipose tissue)から、ならびに体内のさまざまな体液から入手することもできる。他の適した組織には筋肉および神経組織が含まれ、生殖過程に関連する組織も特に関心対象である。患者から抽出された材料には、生体適合性が本来備わっていること、コストが低くなる可能性があること、および相乗効果を有する可能性のある幅広い有用な化合物が得られることといった、他の供給源を上回るいくつかの利点がある可能性がある。現行の外科診療では、典型的には、シリンジによる注射によって、活性が所望される区域内に骨髄誘導体が再導入される。多くの場合には、材料をその区域内に保持させるために、コラーゲンスポンジなどの多孔性保持媒質が用いられる。
「細胞」または「生物学的細胞」という用語は、生体において有用な生物学的機能、特に組織構造を形成するための複製を遂行しうる任意の細胞のことを指し得る。生物学的細胞には、意図した宿主生物由来の細胞、またはドナー生物由来のものが含まれうる。生物学的細胞には、組換え手法または遺伝子工学手法による細胞が含まれうる。この用語は、本明細書で用いる場合、幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)、始原細胞および完全に分化した細胞を含みうる。その例には、以下のうち1つまたは複数が含まれる:軟骨細胞;線維軟骨細胞;骨細胞;骨芽細胞;破骨細胞;滑膜細胞;骨髄細胞;間葉系細胞;間質細胞;幹細胞;胚性幹細胞;脂肪組織に由来する前駆細胞;末梢血始原細胞;成体組織から単離された幹細胞;遺伝的に形質転換された細胞;軟骨細胞と他の細胞の組み合わせ;骨細胞と他の細胞の組み合わせ;滑膜細胞と他の細胞の組み合わせ;骨髄細胞と他の細胞の組み合わせ;間葉系細胞と他の細胞の組み合わせ;間質細胞と他の細胞の組み合わせ;幹細胞と他の細胞の組み合わせ;胚性幹細胞と他の細胞の組み合わせ;成体組織から単離された前駆細胞と他の細胞の組み合わせ;末梢血始原細胞と他の細胞の組み合わせ;成体組織から単離された幹細胞と他の細胞の組み合わせ;および、遺伝的に形質転換された細胞と他の細胞の組み合わせ。治療的価値のある他の任意の細胞を、本明細書に記載の生物学的細胞として使用することもできる。
「幹細胞」という用語は、自己再生能力を有しながら、同時に、分化した細胞および組織を形成するさまざまな能力も保持している未分化細胞の包括的な一群のことを指し得る。幹細胞は、全能性、多能性または多分化能であってよい。分化する能力を失った誘導体幹細胞が生じることもあり、これらは「無能性(nullipotent)」幹細胞と称しうる。全能性幹細胞とは、胚外組織(すなわち、胎盤)を含む、無傷の生物において見いだされるすべての細胞および組織を形成する能力を有する細胞のことである。全能性細胞は極めて初期の胚(8細胞)を構成し、無傷の生物を形成する能力を有する。多能性幹細胞とは、無傷の生物において見いだされるすべての組織を形成する能力を有する細胞のことであるが、多能性幹細胞は無傷の生物を形成することはできない。多分化能細胞は、分化した細胞および組織を形成する限定的な能力を有する。1つの態様において、成体幹細胞は多分化能幹細胞であり、ある種の細胞または組織を形成する能力を有し、老化または損傷した細胞/組織を補充する、前駆幹細胞または系列限定幹細胞である。幹細胞のそのほかの説明は、WO 08/007,082号に見ることができる。
本明細書における「始原細胞」という用語は、幹細胞と完全に分化した細胞との間の細胞分化の段階を構成する、単能性または多分化能細胞のことを指し得る。
本明細書における「生物活性分子」という用語は、生物、組織、臓器または細胞においてインビボ、インビトロまたはエクスビボのいずれかで生物活性を示すかまたは誘導するような様式で、生きた組織または系と相互作用する能力を有する任意の分子のことを指し得る。1つの態様における「生物活性分子」という用語は、その前駆体形態にも及ぶ。前駆体タンパク質、例えばBMP前駆体は、それらが細胞内タンパク質分解切断を受けるまでは不活性でありうる。いくつかの態様において、前駆体タンパク質を生物活性分子に含めることもできる。
いくつかの態様において、生物活性分子には、生物学的機能を誘発するかまたは調節するペプチドが含まれうる。本明細書において用いるのに適した生物活性分子の例示的な例には、増殖因子タンパク質、例えばTGFβ、BMP-2、FGFおよびPDGFなどが非限定的に含まれる。
本明細書における「増殖因子」という用語は、細胞周期進行、細胞分化、生殖機能、発生、運動性、接着、ニューロン成長、骨形態形成、創傷治癒、免疫監視および細胞アポトーシスといった、種々の内因性の生物学的過程および細胞過程を制御または調節する、広範囲にわたるクラスの生物活性ポリペプチドのことを指し得る。増殖因子は、標的細胞の表面上の特異的な受容体部位と結合することによって機能しうる。増殖因子には、サイトカイン、ケモカイン、ポリペプチドホルモン、およびそれらの受容体結合性アンタゴニストが非限定的に含まれうる。増殖因子の例には、以下が含まれうる:骨形態形成タンパク質(BMP);トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β);インターロイキン-17;トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α);軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP);細胞密度シグナル伝達因子(CDS);結合組織増殖因子(CTGF);上皮増殖因子(EGF);エリスロポエチン(EPO);線維芽細胞増殖因子(FGF);グリア由来神経栄養因子(GDNF);顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);増殖分化因子(GDF);ミオスタチン(GDF-8);肝細胞増殖因子(HGF);インスリン様増殖因子(IGF);マクロファージ抑制性サイトカイン-1(MIC-1);胎盤増殖因子(PlGF);血小板由来増殖因子(PDGF);血小板濃縮物(PRP);トロンボポエチン(TPO);血管内皮増殖因子(VEGF);アクチビンおよびインヒビン;コアグロゲン;フォリトロピン;ゴナドトロピンおよびルトロピン;ミュラー管抑制物質(MIS)、これは以下とも呼ばれる:抗ミュラー管ホルモン(AMH) ミュラー管抑制因子(MIF)およびミュラー管抑制性ホルモン(MIH);ノーダル(Nodal)およびレフティー(Lefty);ならびにノギン(Noggin)。
体内の有用な生物学的過程を調節する、誘導する、またはそれに関与する分子は、以上に列記したものを含めて、それらの特定の構造または機能に従ってカテゴリー化または分類することができる。例えば、免疫系の細胞によって分泌される免疫調節タンパク質、例えばインターロイキンおよびインターフェロンなどは、サイトカインと称することができる。調節分子の他のカテゴリーには、以下が非限定的に含まれる:モルフォゲン(例えば、組織および臓器の形成および分化を調節または制御する分子);ケモカイン(例えば、炎症部位などでさまざまな細胞によって産生され好中球およびT細胞などの白血球における走化性を刺激する、一群のサイトカインのいずれか);ホルモン(例えば、血液などの体液中を循環して、通常はその発生点から離れた場所にある細胞の活性に対して特異的で、多くの場合は刺激的な効果を生じさせる、生きた細胞の産物);受容体(例えば、刺激薬とそれに対する下流での生理的または薬理学的応答との間の仲介物としての役を果たす、ホルモンおよびリガンドなどの内因性物質ならびにウイルス粒子などの外来性材料の両方を含む特定の化学的実体に対する親和性を有する、細胞表面上または細胞内部に存在する分子);受容体結合性アゴニスト(例えば、細胞上の特定の受容体と合体して、典型的には内因性結合物質(ホルモンなど)によって生じるものと同じ反応または活性を惹起することのできる化学物質;ならびに受容体結合性アンタゴニスト(例えば、別の化学物質(ホルモンなど)の生理的活性を、それに関連した1つまたは複数の受容体と合体してそれを遮断することによって低下させる化学物質)。
また、本明細書における「増殖因子」という用語は、細胞内タンパク質分解切断を受けるまで不活性である増殖因子の前駆体形態、ならびに天然の増殖因子と同じまたは類似の機能の一部またはすべてを与える合成形態および組換え形態を指すこともできる。したがって、1つの態様において、本明細書に記載の分子は、増殖因子の前駆体、類似体および機能的同等物を含みうるが、ただし、結果として生じる分子が、野生型または内因性モイエティーに関連した標的細胞の表面上の特異的な受容体部位と結合することなどによって体内での有用な生物学的過程を調節する機能のいくつかまたはすべてを保持していることを条件とする。
本明細書における「治療薬」という用語は、本明細書で用いる場合、治療能力、より具体的には薬学的活性を有する、任意の分子、化合物または組成物のことを指し得る。特に有用な治療的および/または薬学的活性の例には、抗凝固活性、抗接着活性、抗微生物活性、抗増殖活性および生体模倣活性が非限定的に含まれうる。
本明細書における「抗微生物薬(antimicrobial)」という用語は、細菌性、真菌性またはウイルス性の病原体または毒素の生物学的機能を制限するかまたは妨げる能力を有する、任意の分子を指し得る。抗微生物薬は、抗細菌薬、抗生物質、防腐薬、消毒薬およびそれらの組み合わせを含みうる。
本明細書における「生体模倣薬」という用語は、アミノ酸配列および糖質配列などの分子構造を非限定的に含む表面特性を示す材料を指し得、該特性により、特徴が、特に、分子結合または生物学的認識の特徴が表面に与えられ、これらは一般に、生物学的材料、例えば組織、特に細胞(その表面が想定される)の生物学的特徴と共通しているか、またはそれを有する機能的類似体を提供する。1つの態様における生体模倣薬という用語は、表面が、模倣しようとする生物学的材料のすべての機能または結合様式を再現することを指す。模倣されるそのような構造の例には、病原体結合性タンパク質および免疫認識配列(例えば、グリカンシグネチャー)が含まれる。粒子モイエティーが所望の生体模倣活性を有するか否かは、任意の適した手法を用いてアッセイすることができる。例えば、内因性宿主組織と比較して、提唱された生体模倣物の結合活性をアッセイするために、ELISAなどのイムノアッセイ手法を利用することができる。または、天然組織と比較して、提唱された生体模倣物のリスクを評価し、免疫原性をアッセイするために、Meso Scale Discovery(MSD)(Gaithersburg, Md.)から入手可能な多重ケモカイン・サイトカインアッセイなどの免疫応答アッセイを利用することもできる。
本明細書における「治療用材料」という用語は、以下のいずれかを含む、任意の組成物を指し得る:治療薬、生物活性分子、幹細胞、始原細胞または生物学的細胞。「生物活性溶液」という用語は、生物活性材料を一部に含む液体組成物を指し得る。
本明細書における「組織」という用語は、生体組織を指し得る。1つの態様において、この用語は、生物内で類似の機能を果たす、相互接続した細胞の集まりのことを指す。ヒト、および昆虫を含む下等多細胞生物を含む、すべての動物の体内には、上皮、結合組織、筋肉組織および神経組織を含む4つの基本的な種類の組織が一般に見いだされる。1つの態様において、「組織」という用語は、皮膚、筋肉、神経、血液、骨、軟骨、腱、靭帯、およびそれらで構成されるかまたはそれらを含む臓器を非限定的に含む、生物学的構成要素のことを指し得る。
「骨」という用語は、脊椎動物の内骨格の一部を構成し、身体のさまざまな臓器を動かし、支持し、および防御するように機能し、赤血球および白血球を産生し、かつ、ミネラルを貯蔵する、剛性の器官のことを指し得る。骨を形作る組織の種類の1つは、骨に剛性および蜂巣状の三次元内部構造を与える、鉱化した骨性組織または骨組織である。骨に見られる他の種類の組織には、髄、骨内膜および骨膜、神経、血管および軟骨が含まれる。1つの態様において、軟骨は、関節を構成する骨が動くための滑らかな面を提供しうる、コラーゲン線維および/またはエラスチン線維の密な結合組織である。軟骨は、関節、胸郭、耳、鼻、気管支および椎間板を含む、体内の多くの場所で見られる。軟骨には主に3つの種類がある:弾性軟骨、硝子軟骨および線維軟骨。
例えば「生体組織または細胞から単離された」などにおける、「単離された」という用語は、関心対象の治療用材料の構造および機能を保つ様式で、関心対象の治療用材料を組織または細胞膜から分離する、任意の過程のことを指し得る。「単離された」という用語は、本明細書で用いる場合、例えば、「抽出された」および「採取された」という用語と同義でありうる。天然の供給源から単離、採取または抽出されるほかに、本明細書に記載の態様において用いるのに適した治療用材料が、生物学的供給源「に由来」してもよく、例えば、周知の手法および従来の手法に従って、合成的に生成されるか、または、細菌および他の微生物を含む、遺伝的に操作された植物および動物によって産生されてもよい。1つの態様において、単離は、生物学的供給源からの生物学的材料の精製も含みうる。
本明細書における「粘性材料」は、高い粘性係数もしくは高い実測表面張力のいずれか一方またはその両方を有する、流動性材料または柔軟な材料のことを指し得、ここで粘性力および表面張力の一方または両方は、材料を孔または間質腔の内部に保持し、それによって前記孔または腔を塞ぎ、流体がその中を通って流れるのを防ぐ役割を果たす。
生物学的細胞などの生物活性分子の「固定化」という用語は、イオン結合または共有結合から、吸着または吸収、さらには封じ込め、絡み合いまたは巻き込みを含む単純な物理的捕捉までの範囲にわたる、任意の「捕捉」および「保持」機構のことを指し得る。
縫合糸の構成
本明細書に記載の材料および方法は、医療従事者、より具体的には外科手術チームが、即時使用を必要としうるか、または貯蔵必要条件に制限のある治療用材料、特に採取された幹細胞を利用することを可能にする。材料は、医療処置の意図したレシピエントである患者から抽出することができ(本明細書では自己移植片または自家組織と称する);その例には、幹細胞、始原細胞および他の生物学的細胞、生物活性分子ならびに他の治療用材料が含まれる。幹細胞、始原細胞および他の細胞ならびに生物活性分子は、骨髄、脂肪組織、筋肉組織および神経組織ならびにそれらの組織に付随する任意の流体を含む、その材料が存在する身体の任意の組織に由来しうる。代替的または追加的に、細胞および分子は、同種および異種移植材料、例えば同種移植片、異種移植片(ゼノグラフト(zenograft)とも言う)、組織の合成模倣物、または遺伝的に操作された分子もしくは細胞を含む、他の供給源に由来する材料を一部に含んでもよく、この材料には生物活性分子ならびに幹細胞、始原細胞および他の細胞が含まれうる。または、細胞および本明細書に記載の分子が、自己移植片、同種移植片および異種移植片を含めて、ヒトまたは哺乳動物の生殖器系の産物に由来してもよい。縫合糸が自己移植片である1つの態様において、生物活性材料(例えば、生物学的細胞)は外科手術チームによって抽出されて、本明細書に記載の手術用縫合糸または前駆構築物に導入された後に、患者(または対象)に再導入することができる。1つの態様において、これは単回の外科的処置において行うことができる。
本明細書に記載の縫合糸は、手術用縫合糸であってよい。本明細書に記載の縫合糸は、隣接組織間の構造的接続を得るために使用することができる。1つの態様は、以下を含む縫合糸を提供する:ある容積の孔または間隙を含み、該容積が結合表面を含む、多孔性内部成分;および、該容積内に分散された第1の数の生物学的細胞。「結合表面」という用語については、以下でさらに説明する。1つの態様において、該容積内の生物学的細胞の第1の数は、縫合糸の結合表面上の、別の方式による(otherwise)集密度100%での生物学的細胞の第2の数に相当する閾値数を上回る。
本縫合糸、特にその内部成分は、生物学的細胞を含有することができる。Speddenらに対する米国特許出願第12/489,557号は、生物学的細胞を含有する手術用縫合糸の記載を提供している。本明細書に記載の縫合糸構造は、前述の出願に記載されているものを含む、任意の種類の構成および成分を有しうる。
縫合糸は、用途に応じて、任意の適した形状および寸法を有しうる。1つの態様において、縫合糸は円筒状(または管状)の形状であってよい。縫合糸は、モノフィラメントまたはマルチフィラメント材料の形態をとることができ、そのようなフィラメントには、ほぼ円筒形の形状、ならびにフィルム状またはテープ状の形状を含む他の断面形状のものが含まれる。縫合糸は、手術用縫合糸、糸状組織スカフォールドまたは前駆構築物の形態をとってもよい。縫合糸は複数の異なる成分を含みうる。例えば、縫合糸が内部成分を有してもよく、それは多孔性であってよい。1つの態様において、多孔性内部成分が、多孔性内部コア;および内部多孔性コアに対して外側にある外部成分をさらに含んでもよい。代替的な成分において、内部成分が多孔性内部コアのみを含み、外部成分を含まなくてもよい。多孔性内部成分の外部成分は、シース、コート、スリーブなどの任意の形態であってよい。1つの態様において、縫合糸は、内部成分の外側にある別の成分を含みうる;そのような成分は、内部成分の外側にある「外側成分」と称しうる。言い換えれば、内部成分が内部コアを覆う外部成分(シース)を有する場合には、外側成分は外部成分に対して外側にあると考えられる。
内部成分が多孔性内部コアおよびコアに対して外側にあるシースの両方を含む1つの態様において、シースおよび内部コアはいくつかの代替的な形態をとることができる。例えば、シースおよびコアは、同じ材料を含んでも(例えば、それから製造されても)よく、または異なる材料を含んでもよい。1つの態様において、これらの2つの成分は複数の材料の混合物を含み、その結果、シースおよびコアの要素は連続しているか、または接続されている。シース成分および/またはコア成分はさまざまな度合いの生分解性を示してもよく、または組織中で比較的不活性であってもよい。以下でさらに説明するように、それらが異なるレベルの疎水性(または親水性)を有してもよい。
1つの態様において、外部シースは、急速吸収性材料と吸収性の低い構造的フィラメント材料とのマトリックスを含みうる。そのような構築物にはいくつかの驚くべき利点がある。例えば、生物学的細胞がコアに存在する場合には、より多孔性の状態に移行する多孔性の低い縫合糸シースが望ましいと考えられる。より多孔性の状態となることにより、細胞を所望のスカフォールド構成に依然として保持しながら、細胞の増殖または生存のために必要な分子が縫合糸の本体内に浸透して細胞に到達することが可能になると考えられる。他方において、急速吸収性材料と構造的フィラメント材料とのマトリックスは、縫合糸を取り扱っている間または組織中に導入される間には比較的滑らかな表面および多孔性の低い表面を示すことができ、続いて縫合糸表面は、ひとたびそれが対象内に植え込まれると、より多孔性の表面に移行することができる。1つの態様において、多孔性の低い表面は、それが組織中に導入される間にはより低い抵抗性を呈することができる。多孔性の低い表面はまた、組織中への導入の前に、望まれない分子または生体物質(biologics)を拾い上げる傾向が少ない外表面でもありうる。縫合糸が組織中に植え込まれた後に生じる、より多孔性の表面は、コア内の分子が縫合糸から外に拡散して、さらなる治療的または抗微生物的な目的を果たすことも助長しうると考えられる。急速吸収性材料は、少なくとも一部には、抗微生物的または治療的な価値のある分子を含み、一方、構造的フィラメント材料は、構築物の構造特性またはスカフォールド特性を維持することができる。
いくつかの驚くべき利点には、急速吸収性材料と構造的フィラメント材料とのマトリックスが、植え込みの間に縫合糸が組織の中を通過する時には比較的滑らかな表面を呈しうることが含まれる。急速吸収性材料が散逸し始めた後に、縫合糸が表面粗さなどの他の表面特性を示してもよい。粗さの増大は、組織中での縫合糸の動きを少なくするため、それ故に縫合糸が組織を「のこぎりのように切る(saw)」または切断する傾向を低下させるため、それ故にさらに組織に瘢痕を残す傾向を低下させるためにも、望ましいと考えられる。さらに、急速吸収性材料と構造的フィラメント材料とのマトリックスは、縫合糸を組織の中に通過させる工程の間に周囲組織と容易には結合しない表面を呈してもよく、かつ次に、急速吸収性材料が散逸を始めた後に、周囲組織と結合する表面特性を有する構造的フィラメントまたは他の材料が露出して、これにより、縫合糸をその場に固定させるという利点をもたらしてもよい。表面は、適切な組織結合特性を有する縫合糸表面上に固定化しうる任意の分子を含みうる‐例えば、レクチンおよびヘパリン化合物。そのような化合物を例えばポリマーの表面上に固定化する、広範囲にわたる手法を使用することができる。
本明細書における手術用縫合糸(または場合によっては前駆構築物)のシースを形成する材料のマトリックスは、2種類の合成ポリマー、合成ポリマーおよび天然材料、または2つの天然材料を含んでよく、それらのいずれかまたはすべてが任意で生分解性であってよい。これらの材料を組み合わせて、織られた、不織性の、またはフィルム状の構築物にするための任意の適した手法を使用することができる。1つの態様において、構造的繊維およびより生分解性の繊維が織り合わされる。もう1つの態様において、構造的繊維およびより生分解性の繊維は2層に織り合わされ、より生分解性の繊維が外表面にくる。もう1つの態様において、構造的繊維が織られ(または不織性構造として設けられ)、続いて生分解性材料が、シース構造内の空隙を満たすため、または大きいスポット(high spot)を少なくするためのコーティングとして適用される。もう1つの態様において、構造的繊維は、柔軟な付加物とともに、または構造的繊維マットから突出している短いスパイク状もしくは毛皮状の繊維とともに織られる(または不織性構造として設けられる)。この態様においては、成形可能な形態からより固形状またはゲル状の形態に移行しうる材料を、付加物または短い繊維が表面上に植えられ、かつ生分解性材料がより固形状またはゲル状の形態に移行するにつれてそこに保たれる様式で、適用する。
また、手術用縫合糸のシースを形成する材料のマトリックスが、織られた、不織性の、またはフィルム型の多孔性構築物を含んでもよく、それがその多孔性マトリックス内部、またはその外表面上、その内表面上もしくはその両方に媒質を含んでもよい。媒質は、ある期間にわたって固定化されるかまたはその中に保持されるのに十分な粘性、表面張力または接着特性を示す、エマルション、懸濁液、液体および/またはゲルであってよい。1つの態様において、期間は、本明細書に記載の縫合糸を、それを必要とする対象の部位に植え込むことを可能にするのに十分であってよい。細胞および/または縫合糸を宿主組織と相互作用させる前に、細胞のある特定の生物学的活性、例えば細胞の複製または分化が縫合糸の境界内で起こることを可能にするように、さらなる固定化の時間を使用することができる。
埋め込まれるかまたは含浸させる媒質は、代替的に、またはさらに、治療的価値を有するある特定の分子を少なくとも一部に含んでもよい。これらの分子には抗微生物薬、鎮痛薬または抗炎症性分子が含まれうるが、基礎をなす表面が、幹細胞などの生物活性材料を含む、治療的価値を有する他の分子または細胞を含んでもよい。表面またはその近くにある抗微生物分子は、縫合糸と一緒に対象に導入される可能性のある細菌またはウイルスに対処する即時的な機能性を与える。基礎をなす表面の中に保持された生物活性分子は、さらに長期間にわたって拡散するか、または他の様式で放出されて、感染が抗微生物薬によって対処された後にも効果を発揮することができる。媒質にはエマルション、懸濁液、液体またはゲルが含まれてよく、それらが生物活性分子を伴って相乗的な治療上の利益をもたらす可能性のある材料を含んでもよい。媒質にはオレイン酸および/またはリノール酸が含まれうる。これらの分子は、骨形態形成タンパク質などの生物活性ペプチドと協調して、抗微生物的な特性および利点をもたらす可能性がある。
1つの態様において、手術用縫合糸は、フィルム、繊維性または多孔性材料を含む、編まれた、織られたまたは不織性の外部シースと、生物学的細胞および/または生物学的活性分子(本明細書では「生物活性材料」と総称する)を含有する多孔性内部コアとを含む、内部成分を含む。縫合糸が任意で、モノフィラメントもしくはマルチフィラメントのポリマー材料、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。外部シースは任意で、多孔性であってもよく、かつ/または、コア内から縫合糸の外側までにある極性液体と宿主組織の流体との両方の縫合糸に沿ったウィッキングを減少させる利点をもたらしうる疎水性材料を少なくとも部分的に備えてもよい。1つの態様は、疎水性(同じく非極性または極性の低い)液体またはゲルが孔に導入された多孔性シースを提供する。この材料は、(i)細胞および治療用材料が縫合糸のコアから縫合糸の外部に早期遊走するのを防ぐ障壁としての役を果たすこと;(ii)取り扱い中に望まれない材料が縫合糸コアに浸入するのを減少させること;ならびに/または(iii)多孔性縫合糸を組織の中を通して引き抜く時に摩擦を弱めること、および縫合糸の取り扱い特性を他の様式で改善することができる。
1つの態様において、縫合糸は、編み上げられたまたは織られた単一の構築物を、内部成分の内部コアとして含みうる。内部コアは任意で、内部成分の中で外部成分によって覆われてもよい。外部成分は障壁材料を含みうる。障壁材料は疎水性液体またはゲルであってもよいが、生分解性固体、粘性フィルム、または十分に高い表面張力を有する材料であってもよい。
もう1つの態様において、手術用縫合糸において、外部成分は、それらの長軸方向に沿った外部成分に対しての内部コアの移動を制約する様式で、内部コア材料またはそれ自身に結合している。この結合は、用途に応じて任意の適した結合によって達成することができ、これには縫合糸の径方向での機械的絡み合い、縫合糸の材料の熱的もしくは化学的結合、またはステープルなどの結合材料を介するものが含まれうる。
もう1つの態様は、内径および外径を有する中空チューブ状構造の形態にある外部シースであって、その長さ方向に沿った複数区間にくびれを有し、そのようなくびれが、縫合糸の内部コア内に保持された材料の長軸方向の遊走または移動を減少させるかまたは防止する箇所で内径を小さくするように構成されているシースを提供する。そのようなくびれは、手術用縫合糸の初期形成の前に形成されてもよく、またはその後に形成されてもよい。1つの態様において、くびれは、関心対象の生物活性材料が内部コアに導入された後に導入される。くびれは、機械的変形(例えば、圧挫(crushing)または捩り(twisting))、熱変形(例えば、融解)、または、追加の材料がある種の外部刺激下で閉塞物を形成する、材料を生物活性材料に加えてコアに導入することを含む、任意の適した手法によって形成させうる。1つの態様においては、縫合糸構築物の中の特定の箇所に圧挫または捩りの作用を付与する機械的用具を用いて、機械的引張力を縫合糸それ自体に付与し、それによって縫合糸の組み立てを可能にするのに必要な力を得ることができる。
1つの態様において、縫合糸の内部成分の外部成分(例えば、シース)は、少なくとも部分的な流動障壁、ならびに保護上の利点を提供し、縫合糸の取り扱いおよび植え込みの間に細胞および流体媒質をコア内に保持させるのを補助することができる。その結果として、内部コアは、縫合糸における実用のための生物学的細胞および治療剤の十分な固定化がさもなくば得られないような、材料を含みうる。例えば、フィラメントの周りの拘束的流路のために細胞および/または治療薬を絡み合わせるために、マルチフィラメントコアを用いることができる。さらに、粘性液体、発泡体、ゲルおよび/またはエマルションを含む媒質を利用することもできる。
1つの態様においては、細胞、生物活性分子および治療的価値のある他の材料を含有する生分解性粒子を用いて内部縫合糸のコアを形成させ、一方、編み上げられたまたは織られた構造の縫合糸フィラメントを用いて外部シースを形成させることができる。生分解性粒子には、生物活性分子、抗微生物分子または治療上の関心対象である他の分子が埋め込まれるか、または表面に発現されたポリマーまたは天然構築物が含まれうる。粒子は、粒子を縫合糸コアに導入することを促し、それにより、縫合糸が患者に植え込まれる際に大半の粒子がコア内に保持されることを可能にする、任意のサイズおよび幾何構成にあってよい。粒子はそれらの表面上またはマトリックス内に付着した幹細胞または他の生物学的細胞を有してもよく、またはそれらと結合するモイエティーを有してもよい。
もう1つの態様は、縫合糸の内部コア内にある結合性もしくは絡み合い構築物として、または多孔性シース内にある流動妨害構築物としての、ナノワイヤー、ナノファイバーおよび/またはマイクロファイバーを提供する。さらに、そのようなナノワイヤーが、マルチフィラメント縫合糸構造内である度合いの絡み合いを示し、生物学的細胞を保持するという利点を示してもよい。さらに、ナノワイヤーを誘導してヒドロゲルを形成させ、それを縫合糸のコアの一部とすることもできる。
もう1つの態様において、多孔性内部成分は、(a)編まれたかもしくは織られたフィラメントのマルチフィラメントもしくはマトリックスであって、該フィラメント間に配された複数の間隙を含む、マルチフィラメントもしくはマトリックス;または(b)複数の孔を含む多孔性モノフィラメントを含んでよく、ここで生物学的細胞は該複数の孔または間隙の少なくとも一部の中に保持されている。本明細書における孔または間隙は、個別の、または相互接続した孔もしくは間隙、またはその両方の混合物のことを指し得る。
1つの態様において、縫合糸は保有区分および連続するリーダー区分をさらに含むことができ、ここで保有区分は、治療的に有効なレベルの生物学的細胞を含む長さの縫合糸材料を含む。
生物学的細胞を有する縫合糸
本明細書に記載の縫合糸は、生物学的細胞、または前述した生物活性分子の任意のものを含有しうる。1つの態様においては、以下を含む縫合糸が提供される:ある容積の孔または間隙を含み、該容積が結合表面を含む、多孔性内部成分;および、該容積内に分散された第1の数の生物学的細胞。1つの態様において、該容積内の生物学的細胞の第1の数は、内部結合表面上の、別の方式による集密度100%での生物学的細胞の第2の数に相当する閾値数を上回る。
縫合糸、ならびにその構成および成分は、記載された任意のものであってもよい。容積は縫合糸の比容積のことを指し得る。容積は縫合糸の一部分を指してもよく、または縫合糸の全体を指してもよい。部分は、任意の適したやり方で特定および指定することができる。
生物学的細胞は、上記の生物学的細胞の任意のものであってよい。例えば、生物学的細胞には、始原細胞、幹細胞またはそれらの組み合わせが含まれうる。他の細胞も可能である。幹細胞は、例えば、間葉系幹細胞を含む、前述した幹細胞の任意のものであってよい。細胞は、上記のものを含む、任意の適した供給源から入手しうる。
関与する細胞に応じて、細胞は任意の適したサイズまたは幾何形状を有しうる。本明細書に記載の1つの態様において、生物学的細胞は、球状(またはほぼ球状)の形状を有する。「ほぼ球状」の形状とは、ある程度の微量の歪みはあるが、当業者がその形状を球状と判断するのを阻止するほどではない、球状形状のことを指し得る。MSCを含む幹細胞を含むある種の生物学的細胞は、それらが媒質中に懸濁化されると、(ほぼ)球状の形状を呈しうる。媒質は、粘性液体、発泡体、ゲル、エマルションまたはそれらの組み合わせを含む、前述した任意のものであってよい。場合によっては、幹細胞などの生物学的細胞は、それをある特定の期間にわたって培養すると、その形態を変化させる傾向がある。幹細胞の場合には、幹細胞は培養された後に広がり、その結果、それらは表面に対して付着性になる。したがって、1つの態様において、本明細書に記載の媒質中のほぼ球状または球状の生物学的細胞は、そのような変化をまだ経ていないものでありうる。
本明細書における1つの態様における「集密度」とは、細胞培養皿またはフラスコの表面上の細胞の数の尺度のことを指し、付着細胞による皿またはフラスコの表面のカバー率のことを指す。本明細書における細胞の文脈における「付着した」および「付着性」という用語は、1つの態様における表面に対する細胞の生物学的付着のことを指す。1つの態様において、MSCの文脈において、MSCが表面に付着するようになった(すなわち、「付着」細胞になった)後に、MSCはその形態学的構成を、懸濁状態で見いだされる球状(またはほぼ球状)の形状から、表面上でのより平坦化した、または広がった構成へと変化させる傾向がある。したがって、1つの態様における細胞の「集密度100%」とは、(皿の)表面が付着細胞によってほぼ完全に(100%)覆われている(すなわち、細胞が増殖する余地がそれ以上残っていない)ことを指し得、一方、「集密度50%」とは、(皿の)表面のほぼ半分が覆われている(すなわち、細胞が増殖する余地がある)ことを指す。1つの態様において、インプラント縫合糸用具は、(i)細胞結合およびその結果として生じる組織成長を最小限に抑えるように(例えば、組織成長によってインプラントの機能が損なわれる恐れがある場合);(ii)インプラントに対する免疫応答を低下させるように;または(iii)特に隣接組織中への組み入れが望まれるスカフォールドもしくは他のインプラントの場合に、細胞結合を最大限にするように、設計され得る。さもなくば細胞が死滅するかまたは他の毒性作用が起こる可能性があるため、縫合糸に細胞を過剰装入することは好ましくないと一般に考えられている。言い換えれば、通常であれば、細胞数は集密度100%またはそれ未満であることが望まれると考えられる。しかし、本発明者らは、ある特定の細胞については、縫合糸に高密度の細胞を過剰装入することで、驚くべき有益な結果が得られると考えられることを発見した。
本明細書に記載の1つの態様における表面は、「結合表面」のことを指し得、これは1つの態様において、生物学的細胞装入を意図した縫合糸のある区分の長さ方向に沿った表面区域のことを指し得る。表面区域とは、縫合糸の内表面または外表面のことを指し得る。文脈に応じて、結合表面とは、縫合糸の内表面のことを指し得る。もう1つの態様において、結合表面とは、生物学的細胞装入を意図した縫合糸のある区分の長さ方向に沿った内表面および外表面の両方のことを指し得る。
本明細書における内表面とは、細胞が付着できる表面である、内部成分(内部コアおよび外部成分を含む)の間隙または孔の内部表面の総称(の任意の部分)を指し得る。外表面とは、周辺区域に曝露される縫合糸の最外側表面(の任意の部分)のことを指し得る;内部コアを覆うシースを有する縫合糸の場合、外表面とは、この成分に対して外側に他の成分がなければ、縫合糸の最外側表面のことを指し得る。縫合糸のある所与の構成における結合表面は、該表面に対する細胞の結合が惹起されるような様式で細胞の一部分が表面と接触することができるように、生物学的細胞に接近可能であってよく;その結果、適切な培養条件下では、集密化に至る細胞発生が続いて起こる。
結合を阻害することが知られている表面のみを含む縫合糸は、極めてわずかな有効結合区域、またはさらには実質上はゼロである結合区域しか有しないと考えられる。この文脈において、結合を阻害することが知られているかまたはそう考えられている材料を有する縫合糸は、たとえ有効区域が何らかの計算の実際的局面においてゼロと受け取られたとしても、依然として結合表面を有すると判断される。潜在的な結合表面とならない(かつ従って、潜在的な結合表面区域となる区域ではない)と考えられる典型的な表面区域とは、関心対象の生物学的細胞の一部分が当該の表面区域と物理的に接触しうる縫合糸構成が全くないものを指し得る‐例えば、過度に小さいサイズの孔または完全に閉じられた孔の内表面など。例えば、活性炭は分子規模に対しては極めて大きい表面積を有する。しかしながら、生物学的規模では、表面の大半は生物学的細胞が接近するには小さすぎる孔しか含まないため、潜在的な結合表面は有意に小さい。にもかかわらず、この例であってさえ、より大きな外表面であれば、生物学的細胞が接近可能と考えられる区域を提示することは依然として可能である。1つの態様において、結合表面とは、細胞の結合および/または増殖を容易に支持しうる材料の表面のことを指し得る。1つの態様において、インプラントの文脈において、結合表面とは、生物学的細胞の結合および/または生存をある期間にわたって支持する材料の区域のことを指し得る。期間は12時間を上回ってもよく‐例えば、24時間を、36時間を、38時間を上回っても、またはそれ以上であってもよい。1つの態様において、結合表面とは、結合を促進するかまたは阻害しうる表面コーティングを含む、インプラントの表面構造材料のことを指し得る。
1つの態様において、内部コアおよび/または外部成分は、細胞または治療用分子の潜在的な結合部位または結合形成(bonding)部位となる、1つまたは複数の表面分子またはフィルムを含む。これらの分子は、これらの成分の任意の箇所、例えばその結合表面などに存在してよい。結合または結合形成は、化学的コンジュゲーション、吸収および/もしくは疎水性相互作用、または細胞もしくは分子が基質材料と結合形成するための他の機構によって生じうる。1つの態様において、生物学的細胞、特に幹細胞は、ある特定の材料と、とりわけポリマー(プラスチックとも言う)と結合する。また、タンパク質でコートされたポリマーも、細胞の結合および増殖を促進する性質を有することを一部の理由として、使用することができる。
1つの態様において、集密時点での細胞密度は、少なくとも部分的に、結合表面での材料の結合性に依存しうる。本明細書における「結合」という用語は、構造の表面に対する細胞の化学的結合、物理的結合またはそれらの組み合わせのことを指し得る。1つの態様において、結合は、細胞がどのようにして表面上に保持されているかを記述するために用いることができる。結合とは、イオン結合、共有結合、吸着、吸収、封じ込め、絡み合いもしくは巻き込み、またはそれらの組み合わせのことを指し得る。ワックスでコートされた絹(外部成分として)を縫合糸が含む1つの態様において、集密度100%にある細胞は極めて少ない。しかし、ワックスでコートされていない絹を縫合糸が含むもう1つの態様において、細胞の数は約2000〜3000個/cm2に近い。
結合表面上の集密度100%の細胞の数は、このように、ある所与の容積において縫合糸に生物学的細胞が過剰装入されているか否かを指し示す閾値の指標としての役を果たす。関与する細胞および縫合糸の材料(および結合表面の性質)に応じて、閾値数はさまざまであってよく、任意の数であってよい。例えば、閾値数は約100〜約10,000個/cm2‐例えば、約200〜約9,000、約500〜約8,000、約600〜約7,000、約800〜約6,000、約1,000〜約4,000、約2000〜約3000、約2200〜約2,600個/cm2であってよい。
孔および/または間隙を含むある所与の容積において、縫合糸に生物学的細胞を過剰装入する必要はない。いくつかの態様において、細胞の数は、該細胞が結合表面で(ある所与の容積において)集密度100%未満でありうるようなものである。例えば、細胞の数は、細胞が約90%と等しいかまたはそれ未満にある‐例えば、約95%、約90%、約85%、約80%、約70%、約60%、約50%と等しいかそれ未満、またはそれ未満にあるものであってよい。
いくつかの態様において、本明細書に記載の縫合糸には、MSCなどの幹細胞などの生物学的細胞が過剰装入されている。1つの態様において、縫合糸は、集密度100%を達成すると考えられる細胞の閾値数の少なくとも約2倍を上回る‐例えば、少なくとも4倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍またはそれ以上の、第1の数(の生物学的細胞)を含有する。1つの態様において、第1の数は、約2倍〜約1000倍の間‐例えば、約4倍〜約800倍の間、約10倍〜約600倍の間、約20倍〜約600倍の間、40倍〜約400倍の間、約60〜約200倍の間、約80倍〜約100倍の間であってよい。
生物学的細胞の数はさまざまなやり方で表すことができる。例えば、数を、縫合糸の寸法によって標準化されたものとして提示してもよい。寸法は、長さ、幅、直径などを含む任意の寸法であってよい。1つの態様において、数は縫合糸の長さ当たりで決定され、これは、縫合糸の直径当たり約100万個を上回る‐例えば、約200万、250万、300万、350万、400万、450万、500万、550万、600万、650万、700万、750万、800万、850万、900万、950万、1000万個を上回る、またはそれ以上の細胞である。より多くの、または少ない数の細胞も可能である。言い換えれば、数は数式N/L>100万(細胞個数)/Dによって表すことができ、式中、N、L、Dはそれぞれ、細胞数、縫合糸の長さ、直径を表す実数である。
種々のレベルの疎水性を有する縫合糸
本明細書に記載の縫合糸は、縫合糸の異なる成分内に種々のレベルの疎水性を有しうる。1つの態様は、以下を含む縫合糸を提供する:孔または間隙を含む多孔性内部成分;および、複数の孔または間隙の中に分散された第1の数の生物学的細胞。ここで、縫合糸は複数のレベルの疎水性を有する複数の部分を有する。縫合糸は、上記のような構成の任意のものを有しうる。
1つの態様において、疎水性を親水性に置き換えて記述することもできるが、これは、低い疎水性が高い親水性のことを指し得、逆も又然りであるためである。種々のレベルの疎水性は、さまざまなやり方で縫合糸に存在させることができる。例えば、縫合糸が長さ方向に複数の区分で構成され、これらの区分が種々のレベルの疎水性を有してもよい。例えば、縫合糸の疎水性区分を2つの親水性区分の間に挟んでもよく、逆も又然りである。または、縫合糸は、疎水性区分と親水性区分が交互になった区分を含んでもよい。
疎水性のレベルが、縫合糸の成分間で変動してもよい。内部成分が多孔性内部コアおよび外部シースを含む1つの態様において、内部多孔性コアの少なくとも一部分は親水性であり、シースの少なくとも一部分は疎水性である。この部分は、用途に応じて任意のサイズであってよい。1つの態様においては、内部多孔性コア全体が親水性であり、シース全体が疎水性である。コアおよびシースの疎水性が、上記のように逆であってもよい。1つの態様において、多孔性内部成分は、複数のフィラメントの編み上げられた構造を含み、フィラメントの少なくとも一部は親水性であって、フィラメントの少なくとも一部は疎水性である。1つの態様において、縫合糸はシースおよびコアを含み、シースは疎水性材料を含み、コアは少なくとも一部に親水性材料を含む。
1つの態様は、親水性(結合)表面が縫合糸の孔の中で露出する、多孔性手術用縫合糸を提供する。1つの態様において、これらの表面との親水性相互作用は、幹細胞または他の始原細胞などの生物学的細胞を含む極性液体媒質であってよい。1つの態様において、縫合糸には生物学的細胞が過剰装入される‐すなわち、これらの細胞は、縫合糸のある所与の容積の孔の中に、その所与の容積における結合表面上の集密度100%での同等な細胞の装入を上回る総数で存在する。
1つの態様では、生物学的細胞(例えば、幹細胞または他の始原細胞)が多数装入された手術用縫合糸の編み上げられた構築物において、該構築物は親水性の繊維および疎水性の繊維の両方を含みうる。この構成は、縫合糸に、親水性相互作用によって細胞を孔の中に保持している編まれたフィラメントを与えながら、縫合糸に、疎水性縫合糸材料に典型的な特徴である強化された引張強さを与えるために、使用することができる。
1つの態様では、内部孔の親水性特性を、疎水性材料フィラメントに対する(編み組みの前または後のいずれかの)コーティングとしての、または、(例えばナノワイヤー、粒子またはヒドロゲルによる)絡み合いもしくは封じ込めによって編み組み構造の中に保持される親水性要素の導入を通じた、親水性材料の導入によっても達成しうる。
1つの態様では、縫合糸はその長さ方向に沿って複数の異なる区分を含むことができ、ここである特定の区分は材料で構成されるか疎水性になるように処理され、他の区分は少なくとも一部は親水性である。さらに、親水性区分は、隣接する疎水性区分よりも、幹細胞および/または始原細胞を含む生物学的細胞をより高い濃度で含んでもよい。1つの態様において、縫合糸の全長のうちリーダーおよび/または後端区分は疎水性であってよく、全長のうち中央区分は親水性であってよい。この構成は、生物活性細胞を、組織中に配置されると考えられる縫合糸の中央部分(中央区分とも言う)に濃縮させるために使用することができ、一方、リーダーおよび/または後端区分は、糸結びのために、または縫合時の取り扱いを容易にするために使用することができる。
さらに、1つの態様において、縫合糸の全長のうちリーダーおよび/または後端区分は、縫合糸の性能を強度、糸結びおよびほつれ耐性の点で強化する追加の特性を有しうるが、ここでそのような特性は全長のうち中央区分に必ずしも一般的ではない。具体的には、リーダー区分および後端区分は、縫合糸が切断された時にほつれる傾向を小さくするために、ある種の縫合糸に典型的な熱処理に適合する構造を有しうる。
ある特定の用途においては、縫合糸が組織境界を通過する時にそれに沿ってウィッキングが起こる可能性を最小限に抑えること、または減らすことが望ましい。1つの態様において、ウィッキングは、流体の表面張力により、液体が親水性材料の長さ方向に沿って液体含量の多い領域からより乾燥した区域に引き込まれる時に起こる。ウィッキングは、皮膚などの組織境界を貫通する縫合糸修復において問題となる恐れがあり、親水性縫合糸は縫合糸貫通箇所での創傷の滲出をもたらしうる。1つの態様では、細胞が装入された親水性領域が、縫合糸の長さ方向に沿って疎水性特性と親水性特性が交互に生じる区画を含みうる、縫合糸を提供する。例えば、親水性区画には、生物活性細胞をより多く装入することができ、かつ、当該の組織境界を横断するウィッキング能力が低下するように、任意の所与の親水性区画の長さを制限することができる。この場合には、ウィッキング能力は、単一の親水性区画の組織境界の両側にある親水性流動区域によって確立される。
もう1つの態様においては、ウィッキング能力を制限するために、親水性区分を、当該の組織境界の厚さよりも長くないように設計することができる。例えば、ヒト皮膚(少なくともある場合には)は約2mm厚であり、それ故に、縫合糸の2つの疎水性区画間の親水性区画が約2mm長を上回らない(例えば、1mm、0.5mmまたはより短い)ならば、組織間での水力学的架橋能力は大きく低下すると考えられる。関与する組織および縫合糸によっては、同様に他の寸法を用いてもよい。1つの態様においては、サイズ4-0の手術用縫合糸は直径が最大で約2mmであり、それ故に、縫合糸の活性部分において直径2mm×長さ2mmという一連の親水性区画を使用することができる。1つの態様において、間に入る疎水性区画は、親水性区画間の水力学的漏出を最小限に抑える(またはさらには阻止する)のに十分な長さであるだけでよい。これは少なくとも一部には、疎水性区画の安定性および疎水性区画の製造能力に依存する。
1つの態様において、隣接する親水性区画と疎水性区画との違いは、基本的な縫合糸構築物が形成された(例えば、編まれた)後に生み出される。基礎をなす構築物が親水性であるか疎水性であるかに応じて、特定の区画をコーティングまたは処理して、それぞれ疎水性特性または親水性特性を付与することができる。例えば、縫合糸の親水性区分を、ある特定の区画をワックスまたは他の疎水性材料でコーティングすることによって、複数の区画に分割することができる。もう1つの態様において、親水性特性または疎水性特性を誘導するためのこれらの処理には、縫合糸の中のどの区画が生物活性細胞を含有しうるかまたは含有するように製造されうるかの指標を提供するための可視的指標、例えば濃淡または色調が含まれうる。さらに、1つの態様は、生物活性細胞を含有する媒質が、どの区画が生物活性細胞を含有しうるか、またはさらには縫合糸に生物活性細胞が装入されたかを同定するのを補助する、色素または他の指標を含んでもよいことを提供する。
植え込み
いくつかの態様においては、本明細書に記載の縫合糸を用いる方法が提供される。その使用は、それを必要とする対象への植え込みを伴いうる。1つの態様において、記載される縫合糸は、縫合糸に細胞を装入した後のある期間にわたって細胞活性を一時的に低下させるかまたは妨害するための方法を利用して使用することができる。この期間は、用途に応じて任意の長さであってよい。例えば、期間は少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約14時間、またはそれ以上であってよい。
本明細書に記載の1つの態様は、縫合糸を、それを必要とする対象に植え込む方法を提供する。本方法は以下を含む:縫合糸を、第1の数の生物学的細胞が該孔または間隙の該容積内に分散されるよう、ある濃度の該生物学的細胞を含む媒質に曝露する段階;および縫合糸を対象に植え込む段階。縫合糸は本明細書に記載の縫合糸の任意のものであってよい。媒質は本明細書に記載の媒質の任意のものであってよい。
本明細書に記載の植え込みの方法における曝露の段階は、関与する細胞、材料などに応じて、任意の適した時間にわたって実行することができる。細胞が少なくともほぼ球状の構成を有する1つの態様において、曝露の段階は、生物学的細胞の少なくとも一部がそれらの形態を変化させる見込みがないと考えられ、それ故に少なくともほぼ球状の構成を保持すると考えられるように、十分に迅速に実行される。1つの態様において、この時間は、生物学的細胞の少なくとも実質的にすべて、例えば完全にすべてが、少なくともほぼ球状の形状を保持するような時間である。
いかなる特定の理論にも拘束されないが、縫合糸には生物学的細胞(1つの態様においてはMSCなどの幹細胞)が過剰装入されるため、縫合糸は、さもなくばそれほど多くの細胞が装入されない縫合糸よりも多い数の細胞を組織部位に送達しうると考えられる。これらの細胞は組織修復(再生を含む)を促進させることができ、それ故にそのような細胞が多数あることは組織修復を改善する可能性がある。そのようなアプローチは、過剰に装入されると生物学的な系が不全を起こすという自然な傾向のために、細胞培養において達成されうるよりも高い細胞濃度は避けるべきであるという、従来の考えとは食い違う;この傾向は以前に特に間葉系幹細胞の場合に示され、これは、濃度が高すぎる場合、集団においてアポトーシス(プログラム細胞死とも言う)を誘発する。この新たなアプローチは、本明細書において本発明者らによって初めて報告されたものである。
本明細書に記載の幹細胞保有縫合糸には、付着していない(球状)形態にある、密に濃縮されたMSCが装入される。細胞が球状である場合には、それらを狭い空間内に極めて緻密に詰め込むことが可能である;MSCが付着性である場合には、球状形態にある場合よりもはるかに大きい表面積を有する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、その大きな表面積のため、付着していない(球状)MSCよりもずっと少ない付着性MSCしか縫合糸に存在できず、これは、そのような高密度では付着性MSCが縫合糸に取り付くための余地が物理的に十分でないためである(図1参照)。縫合糸に極めて多数の密に濃縮されたMSCを装入して、そのような細胞を縫合糸上で培養しようと試みると、MSCは広がって付着し始める。不可避的に、MSCのいくつかは空間不足のために死滅するか、または縫合糸からインビトロ環境へと押し出され、したがって修復部位には到達できない。
他方において、高密度幹細胞装入方法を用いる場合には、MSCは、縫合糸の内部コアの中の孔または間隙を占有し、または多層縫合糸構築物では層間の任意の空間を占有することができる。1つの態様において、縫合糸に細胞を装入した直後に、縫合糸を患者対象における修復の部位に導入する。ひとたび植え込まれると、MSCの少なくともいくつかは、縫合糸の間隙から出て周囲の病的組織へと遊走しうる(図2参照)。植え込まれたMSCは分化して、組織治癒および宿主細胞の動員を補助するサイトカインを分泌することができる。細胞を縫合糸に装入した後比較的短期間で縫合糸を植え込むことにより、該細胞が縫合糸から出て遊走を始めることができる環境(例えば、対象の標的組織)に縫合糸を植え込む前に、細胞密度に基づくアポトーシスを減少させること(またはさらに最小限にすること)ができる。
他の態様においては、植え込みよりもずっと前に縫合糸に細胞を装入しうるが、望ましくない細胞密度に基づくアポトーシスを未然に防ぐ目的で、生物学的(例えば、細胞)活性を低下させるための段階を講じてもよい。これらの段階には、低温環境への導入(例えば、凍結)、化学処理またはそれらの組み合わせが含まれる。
キット
1つの態様は、縫合糸材料とともに用いるための包装されたキットに、1つまたは複数の手術用縫合針または類似の用具を含めることを提供する。針は組織の貫通および縫合糸材料を組織を通して引っ張ることを容易にし、それ故に、縫合糸材料を針に通す、または他の方法で縫合糸材料を針に取り付ける必要が軽減されるように、包装容器の中にある時に縫合糸材料と一体化していてもよく、縫合糸材料に取り付けられてもよい。1つの態様において、針の鋭い先端部に尖端保護具‐例えば、尖端が容易に貫通できない一つの材料が設けられてもよい。または、包装容器の取り扱いまたは開封の際の刺創の可能性を小さくするように、針を包装容器の中に取り付けてもよい。
包装されたキットは、当業者により予想されうるように、縫合糸材料をもつれさせることなく逐次的な様式で小出しにすることを可能にする任意の構成にある縫合糸材料を含みうる。そのような小出しシステムは、縫合糸材料、ひも、ワイヤー、デンタルフロスおよびテープ、糸および類似の材料を小出しするために従来より用いられているものに類似していてもよい。1つの態様において、包装容器は、1人の患者において、または1つの創傷において用いるのに適した、ある長さの縫合糸材料を含みうる。または、包装容器は、縫合糸材料を、複数の個別の長さで、または個別の長さに分離されうる連続した長さで含んでもよい。
本明細書に記載のキットおよび包装容器は、予定される患者、例えば、幹細胞、関心対象の他の生物細胞、および/または治療的価値のある分子(生物活性材料)を含むと推定された者から抽出された材料を媒質‐例えば、液体溶液および/または生物活性溶液の一部として導入しうる、滅菌した包装容器の中または外にある区域を含んでもよい。この包装容器のデザインは、縫合糸材料が包装容器の中にある時に、または使用のために包装容器から抜き取られる時に、この溶液と物理的に接触させるためのものである。1つの態様では、前記生物活性溶液と縫合糸材料との接触区域が、包装容器中の別個のまたは切り離された区画、例えば滅菌区画などの形をとり得、これは、媒質が、(包装容器中に存在したままで)または縫合糸材料が包装容器から抜き取られる時に、溶液と縫合糸材料との接触を最大限にするよう構成された区画内に、皮下針または類似の分配用具を介して導入されるのを許容するように、設計されている。そのような構成は、溶液が包装容器に導入された時に縫合糸材料が溶液とすぐに接触するように、縫合糸材料を含有する拡張可能な区画の形をとってもよい。そのような配置はまた、導入された溶液を保持し、縫合糸が包装容器から引き抜かれた時に通過しなければならない、管状または他の形状の幾何区分を含んでもよい。この構成を用いて、縫合糸材料が包装容器の該区域を通過することによってかき乱されることのない非生産的ポケット(unproductive pocket)内に、生物活性分子を含有する液体が存在する可能性を最小限に抑えることができる。生物活性分子を含有する液体と縫合糸材料を接触させるために、さらに複雑な機構を使用することもできる。
1つの態様は、滅菌した包装容器の中に含められた手術用縫合糸または前駆構築物が縫合糸材料のリーダー区分を含みうることを提供する。リーダー区分とは、生物活性材料を含むことは意図されないが、生物活性材料を含む縫合糸材料の残りと連続している、ある長さの縫合糸材料のことである。リーダー区分は、縫合糸材料および生物活性分子溶液とがある区画外の領域と接触している該区画から延びていてもよく、リーダー区分は、接触して手またはツールでつかむことができ、かつ、該接触区画から、縫合糸の生物活性分子でコーティングされた区分を抜き取るように引っ張ることができる。
さらに、創傷修復において縫合糸のより効果的な終端を提供するように、リーダー区分を任意で、例えば、改善した結節保持特性を示す材料を用いて、処理してもよい。縫合糸の後端(または遠位端)は縫合糸の生物活性材料区画の反対側に存在してもよく、後端はリーダー区分とほぼ同じ特性を有する。縫合糸材料のリーダー区分、任意で、後端部分は、(a)視覚識別子、例えば、色、濃淡の度合い、質感、およびパターンの違い、ならびに/または(b)1つもしくは複数の物理的特性、例えば、生物活性材料の濃度、結節保持特性、および取り扱い性の違いによって区別することができる。したがって縫合糸材料は、縫合糸材料が連続した鎖を形成するように、大量の縫合糸材料が保管されている区画から、例えば、該大量の縫合糸材料が保管されている同じ区画でもそうでなくてもよい、生物活性材料を添加することができる区画を通って、任意で針または他のこのような用具が包装されていてもよくかつ使用時に使用者によって包装容器が都合よく開封されうる包装容器のリーダー区画にまで、包装容器中で配置されていてもよい。結果として、1つの態様において、包装容器は、リーダー区画に接触するいくつかの手段によって開封され、この接触は、縫合糸リーダー材料または手術針を露出するために、リーダー区画にある包装を切り取って、または引き裂いて開封することであってよい。
手術用縫合糸は分配シリンジ(皮下注射用とも言う)針、チューブまたは他の類似の用具の内部と水力学的接続されており、それが続いて、生物活性材料を含有しうるか、または1つの態様においてはキット内の、生物活性材料が導入される包装容器区画と接続されている、リザーバーと結び付いている。1つの態様において、生物活性材料は、縫合糸の内部コアに直接注入することができる。もう1つの態様においては、多孔性縫合糸の外部を通して内部へと材料の流れを誘導することによって、生物活性材料を、縫合糸の内部コア内の孔および間隙に導入することもできる。その結果として、縫合糸の内部孔または間隙の中への生物活性材料の流れは、縫合糸の長軸方向に沿った流体の流れによって、縫合糸の半径方向に沿って内向きに、またはその両方によって誘導することができる。
1つの態様において、縫合糸に導入しようとする高濃度の幹細胞は、細胞を遠心機で高濃度に‐例えば、ペレット形成点まで濃縮することによって入手しうる。余分な流体を除去し、任意で、異なる媒質または既知の容積の同じ媒質を再導入して、濃縮された細胞を撹拌して、それらを所望の濃度でより均質な様式で分配する。
非限定的な実施例
実施例1:
ヒトMSCを、骨髄吸引液から従来の手法を用いて入手した。MSCを続いて、5% CO2入りのインキュベーター内で37℃で1週間かけて、組織培養フラスコ上で集密度90%まで増殖させた。MSCを3mL PBSですすぎ洗いし、続いて余分なPBSを培養フラスコから吸引した。1.5mLのトリプシン-EDTAを組織培養フラスコ内のMSCに添加し、フラスコを37℃で5分間インキュベートした。続いて、トリプシン-EDTAを3mLの間葉系幹細胞基礎培地で中和した。この溶液を15mLコニカルチューブに移して、遠心機により2500rpmで10分間遠心沈降させた。上清を吸引除去し、続いて細胞を保有するペレットを1mL間葉系幹細胞基礎培地中に再懸濁させた。続いて血球計算器を用いてMSCを計数した。続いて、ほぼ200万個のMSCを含む溶液媒質を遠心機により2500rpmで10分間遠心沈降させて、上清を吸引除去し、細胞を保有するペレットを15μLの間葉系幹細胞基礎培地中に再懸濁させて、縫合糸への装入のための媒質を得た。
縫合糸は、20デニール絹糸を18ゲージPTFEコア上に81 PPIで2層編みで編み上げることによって形成させた。編み上げられた絹糸をコア材料から取り出した。長さ20cmのこの材料を、長さ15cmの同じ材料の中心に引き入れて、縫合糸サイズNo.2のシース・コア絹縫合糸を形成させた。この縫合糸構築物のリーダー区分および後端区分を医療用グレードワックスで処理して、コートされていない絹縫合糸の2.54cmの区分を中心部に残した。縫合糸を4cm区分の18ゲージPTFEチューブの中に引き入れた;続いてチューブを、縫合糸のコートされていない絹糸部分を覆うように配置した。15μLのMSC保有溶液をPTFEチューブ内に注入して、コートされていない絹縫合糸の区分の内部を飽和させ、その後PTFEチューブを縫合糸から取り除いた。残留性MSC保有媒質はチューブ内に観察されなかった。縫合糸の生物活性細胞を保有する区分を、続いて、実際の生細胞装入(すなわち、細胞含量)を決定するために試験した。140万個の細胞が、2.54cm区分の縫合糸の中に含有されることが見いだされた。
実施例2:
細胞装入を媒質中に100万個とし、縫合糸における実際の保持が平均770,000個であったことを除き、No.2幹細胞保有縫合糸を実施例1に記載された通りに構築した。続いて縫合糸を、適切な実験プロトコールの下で実験用ラットの後四半部の腱に切開を加えた3mmギャップを修復させるために用いた。後四半部の第2の腱における3mmギャップは、陰性対照として、MSCを有しない縫合糸を用いて修復させた。第28日に、修復された腱を比較した。MSCを装入した縫合糸によって修復された腱は、より強固で秩序立った組織(瘢痕がより少ない組織)を生じたことが見いだされた。具体的に、実施例2について以下により詳細に説明する:
ラットアキレス腱修復モデルにおける腱治癒特性に寄与するNo.2幹細胞保有縫合糸の有効性を評価するために動物試験を行った。
本試験に用いたヒトMSCは、施設内審査委員会(Institutional Review Board)の承認を得た上で、1人のヒトドナーの骨髄吸引液から入手した。閉鎖針付きの3mm外套針を用いて、踵骨、脛骨近位端および/または腸骨稜のいずれかから骨髄を吸引した。凝固を阻止するために、骨髄吸引液(「BMA」)をクエン酸塩ベースの抗凝固薬(13〜17% v/v)と混合した。55±14mLの抗凝固処理BMAを各患者から収集した。BMAを、MarrowStim(商標)Concentration System(Biomet Biologies, LLC, Warsaw, IN)で加工処理した。1400×gでの15分間の遠心分離の後に、3〜6mLの吸引液細胞濃縮液(「ACC」)を、MSCの単離、培養および増量のために研究室に移した。
試料を加工処理して、赤血球を除去し、単核細胞を単離した。この加工処理は、単核細胞の単離用の密度勾配媒質であるFicoll-Paque(商標)PLUS(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を用いて実現した。この新鮮な骨髄吸引液を、ヒト間葉系幹細胞用の2%ウシ胎仔血清(「FBS」)(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を加えたリン酸緩衝食塩水(「PBS」) pH 7.4(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で1:1比に希釈した。希釈した骨髄吸引液を、続いて、50mLコニカルチューブ内のFicoll-Paque(商標)PLUS密度勾配媒質の一番上に層状に重ねて、遠心機のブレーキをオフにして400×gで30分間、室温で遠心分離を行った。血漿-Ficoll境界面にあるMSC単核細胞を含有する層を続いて取り出し、単核細胞を2% FBSを含むPSBで1回洗浄した後に、新たなT-75cm2組織培養フラスコ内に4000個/cm2の密度でプレーティングした。単離したMSCは、MesenCult(登録商標)Mesenchymal Stem Cell Stimulatory Supplements(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を加えたMesenCult(登録商標)MSC Basal Medium(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)中で培養した。5% CO2を含む空気の入った湿度95%超の37℃加湿インキュベーター内で細胞を14日間、またはそれらが集密度60〜80%に達するまで増量させて、その時点で、付着性細胞単層を、0.25%トリプシン-EDTA(GIBCO(登録商標)Invitrogen, カタログ番号15050-057)を用いて細胞培養フラスコから剥離させた。剥離されたMSCを500×gで10分間遠心分離し、計数した上で、新たなT-75cm2組織培養フラスコに4000個/cm2の密度で再びプレーティングした。
MSCは、MesenCult(登録商標)Mesenchymal Stem Cell Stimulatory Supplementsを加えたMesenCult(登録商標)MSC Basal Medium中で増量させ、5% CO2を含む空気の入った湿度95%超の37℃の組織培養インキュベーター内に保った。培地を3日毎に交換し、MSCが集密度60〜80%に達した時点で、それらを0.25%トリプシン-EDTAを用いて細胞培養フラスコから剥離させ、500×gで10分間遠心分離し、計数した。15μLに濃縮した1×106個の第2継代間葉系幹細胞を、幹細胞縫合糸1インチ当たりに含浸させたところ、縫合糸1インチ当たりで平均770,000個のMSCが保持され、修復部位に送達された。
この試験では、3種類の異なる縫合糸修復について検討した‐縫合糸のみを用いた修復(縫合糸のみ)、縫合糸を用いた修復+修復された腱の周囲への1×106個の幹細胞の注射(縫合糸+SC注射)、または1×106個の幹細胞を含浸させた縫合糸を用いた修復(SC縫合糸)。用いた縫合糸はすべて、20デニール絹糸を18ゲージPTFEコア上に81 PPIで2層編みで編み上げることによって構築した。編み上げられた絹糸をコア材料から取り出した。長さ20cmのこの材料を、長さ15cmの同じ材料の中心に引き入れて、縫合糸サイズNo.2のシース・コア絹縫合糸を形成させた。この縫合糸構築物のリーダー区分および後端区分を医療用グレードワックスで処理して、コートされていない絹縫合糸の2.54cmの区分を中心部に残した。縫合糸を4cm区分の18ゲージPTFEチューブの中に引き入れた;続いてチューブを、縫合糸のコートされていない絹糸部分を覆うように配置した。幹細胞縫合糸修復タイプについては、1×106個のMSC(上記の通り)を含む15μLの媒質をPTFEチューブ内に注入して、コートされていない絹縫合糸の区分の内部を飽和させた。PTFEチューブを縫合糸から取り除いた。残留性MSC保有媒質はチューブ内に観察されなかった。縫合糸のみ、および縫合糸+幹細胞注射による修復タイプについては、動物に用いる直前にPTFEチューブを縫合糸から取り除いた;コートされていない絹縫合糸の区分には何ら変更を加えなかった。
処置を始める前に、各後肢をランダム化して、3種類の修復のうち1つを受けるようにした。平均体重370g(326〜600の範囲)成体雄性Sprague-Dawleyラット54匹に対して、切開の前に、ネンブタール(ペントバルビタール)の腹腔内注射によって麻酔を施した;続いて両側後肢を剃毛し、アルコールおよびクロルヘキシジンによるこすり洗いを交互に3回ずつ行って準備した。アキレス腱に沿って長軸方向の後方正中切開を加えてアキレス腱を露出させた。ひとたび同定および単離した上で、筋腱移行部の3mm遠位側でアキレス腱を横切した。引き続いて2回目の横切を1回目のものから3mm遠位側で行い、腱の3mm区分の除去を生じさせた。アキレス腱の端部を、8針で結節3つによる適切な縫合糸修復タイプを用いて緩く近づけた。結節を結紮する前に、3mmギャップが保たれるように、腱の端部の間に幅3mmの器具を置いた。ラットのすべてで創傷を潅注洗浄し、4-0モノフィラメント縫合糸で表皮下様式により皮膚を閉鎖した。
修復から14日後および28日後に、組織学的および生体力学的試験を行った。生体力学的強度(破損するまでの負荷)を、試験時の修復に関する主要結果とし、組織学的分析を副次的結果とした。ラット腱の治癒に関する以前の報告による生体力学データに基づく経験的な検出力分析により、90%の信頼性を第一種過誤5%で成立させるために、投与群当たり・期間当たりに必要なのは腱12件であると決定された。投与群当たり・期間当たりにさらに6件の腱を組織学的評価のために用いた。組織学的結果および生体力学的結果はすべて、平均および標準偏差によって表した。委員会による認可を受けた病理医(Board Certified Pathologist)は審査者1人であったことから、スライド20枚を無作為に選び出し、盲検下でのグレード判定を2回行った。評価者内信頼性に関するCohenのKappa値を算出した。各時点での生体力学的データを3つの投与群間で、Tukey事後分析を伴う一元配置ANOVAを用いて分析した。また、各投与群からの生体力学的データも、(測定の)時点の関数として両側t検定を用いて比較した。3つの投与群間での各時点での組織学的順序データは、Bonferonni事後補正を伴うKruskal-Wallis検定を用いて分析した。各時点間の各投与群からの組織学的データは、カイ二乗分析を用いて比較した。Bonferonni補正では有意性がp<0.016であったことを除き、統計学的有意性はp<0.05に設定した。統計分析は、JMP 9.0.0統計用ソフトウエア(SAS Institute, Inc., Cary, North Carolina)を用いて行った。
生体力学的結果および組織学的結果は図3に示されている。図3により、多数のMSCを装入した縫合糸によって修復された腱は、より強固で秩序立った組織(瘢痕がより少ない組織)を生じたことが実証された。第14日に、幹細胞縫合糸を用いて修復された腱は、他の修復タイプのいずれよりも統計学的に健康であり、より天然に近い腱を示した。第28日に、幹細胞を有する縫合糸を用いて修復された腱は、縫合糸のみの縫合よりも統計学的に健康であり、より天然に近い腱を示した(表1)。表1に示されたグレード分けスキームは、Rosenbaum et al, Histologic Stages of Healing Correlate with Restoration of Tensile Strength in a Model of Experimental Tendon Repair, HSSJ (2010) 6: 164-170に提示されたものと一致している。すなわち、表1における値は、0が健常な腱を表し、3が罹患した腱を表すという尺度で表されている。生体力学的結果により、いずれの時点でも、幹細胞縫合糸修復方法によって修復された腱は、他の修復タイプのいずれかを用いて修復された腱よりも統計学的に有意に高いピーク応力を有したことが明らかになった(表2)。
(表1)各腱修復タイプに関する平均生体力学的グレード
実施例3:
上記の態様の1つにおける高密度装入手法を用いて構築したNo.2幹細胞保有縫合糸がMSCを外科的修復部位に送達する有効性を調べるために、インビトロ試験を実施した。この試験では、No.2幹細胞保有縫合糸に装入したMSCに関する3つの異なる幹細胞培養時点について検討した:(1)1cm当たり平均33,333個のMSCを装入し、縫合糸上で幹細胞を3日間培養した、長さ30cmのNo.2幹細胞保有縫合糸;(2)1cm当たり平均55,555個のMSCを装入し、縫合糸上で幹細胞を5日間培養した長さ18cmのNo.2幹細胞保有縫合糸;(3)1cm当たり平均535,871個のMSCを装入し、外科的修復部位に直ちに用いた高密度幹細胞保有縫合糸である、長さ18cmのNo.2幹細胞保有縫合糸。
No.2幹細胞保有縫合糸は、上記のものと同じプロトコールを用いて構築した。試験に用いたヒトMSCは、施設内審査委員会の承認を得た上で、実施例2に記載した手法を用いて、1人のヒトドナーの骨髄吸引液から入手した。単離したMSCは、MesenCult(登録商標)Mesenchymal Stem Cell Stimulatory Supplements(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を加えたMesenCult(登録商標)MSC Basal Medium(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)中で培養した。5% CO2を含む空気の入った湿度95%超の37℃加湿インキュベーター内で細胞を14日間、またはそれらが集密度60〜80%に達するまで増量させて、その時点で、付着性細胞単層を、0.25%トリプシン-EDTA(GIBCO(登録商標)Invitrogen, カタログ番号15050-057)を用いて細胞培養フラスコから剥離させた。剥離されたMSCを500×gで10分間遠心分離し、計数した上で、新たなT-75cm2組織培養フラスコに4000個/cm2の密度で再びプレーティングした。
MSCは、MesenCult(登録商標)Mesenchymal Stem Cell Stimulatory Supplementsを加えたMesenCult(登録商標)MSC Basal Medium中で増量させ、5% CO2を含む空気の入った湿度95%超の37℃の組織培養インキュベーター内に保ち、培地を3日毎に交換し、MSCが集密度60〜80%に達した時点で、それらを0.25%トリプシン-EDTAを用いて細胞培養フラスコから剥離させ、500×gで10分間遠心分離し、計数した。
3日間の培養時点で、1×106個の第2継代MSCを60μLの間葉系幹細胞基礎培地中に濃縮して、縫合糸への装入のための媒質を得た。2μL中の33,333個のMSCを幹細胞縫合糸1インチ当たりに含浸させた。続いて、幹細胞を含浸させた縫合糸を、MesenCult(登録商標)Mesenchymal Stem Cell Stimulatory Supplements(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を加えたMesenCult(登録商標)Mesenchymal Stem Cell Basal Medium(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を入れた無菌100mm組織培養皿に入れた。MSCを、5% CO2を含む空気の入った湿度95%超の37℃の加湿インキュベーター内にて、縫合糸上で3日間培養した。第3日に、幹細胞を含浸させた縫合糸をインキュベーターから取り出して、外科手術用となるように組み立てた。500μL PBSで満たした2mLプラスチック製eppendorfチューブを、外科的修復部位を刺激するために用いた。幹細胞保有縫合糸の全長をeppendorfチューブに入れ、PBSに引き渡された幹細胞の数および縫合糸上に残った数を、生細胞を検査するための発光を用いて決定した。外科的状況において、幹細胞保有縫合糸を外科手術用に組み立てて、続いて直ちに手術部位に植え込めると考えられることから、これは実行可能なモデルとみなされた。縫合糸上の生きている幹細胞は、修復部位にある周囲組織に送達されるか、または縫合糸上に残るかのいずれかであると考えられる。
5日間の培養時点で、1×106個の第2継代MSCを25μLの間葉系幹細胞基礎培地中に濃縮して、縫合糸への装入のための媒質を得た。平均1.39μL中の55,555個のMSCを幹細胞縫合糸1インチ当たりに含浸させた。続いて、幹細胞を含浸させた縫合糸を、MesenCult(登録商標)Mesenchymal Stem Cell Stimulatory Supplements(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を加えたMesenCult(登録商標)Mesenchymal Stem Cell Basal Medium(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を入れた無菌100mm組織培養皿に入れた。MSCを、5% CO2を含む空気の入った湿度95%超の37℃の加湿インキュベーター内にて、縫合糸上で5日間培養した。第5日に、幹細胞を含浸させた縫合糸をインキュベーターから取り出して、外科手術用となるように組み立てた。500μL PBSで満たした2mLプラスチック製eppendorfチューブを、外科的修復部位を刺激するために用いた。幹細胞保有縫合糸の全長をeppendorfチューブに入れ、PBSに引き渡された幹細胞の数および縫合糸上に残った数を、生細胞を検査するための発光を用いて決定した。
外科的修復部位で直ちに用いた高密度装入幹細胞保有縫合糸については、平均1,444,444個の第2継代MSCを12.7μLの間葉系幹細胞基礎培地中に濃縮して、縫合糸への装入のための媒質を得た。0.7μL中の平均535,871個のMSCを、極めて密に装入した幹細胞縫合糸1インチ当たりに含浸させた。幹細胞を含浸させた縫合糸を、外科手術用となるように直ちに組み立てた。500μL PBSで満たした2mLプラスチック製eppendorfチューブを、外科的修復部位を刺激するために用いた。幹細胞保有縫合糸の全長をeppendorfチューブに入れ、PBSに引き渡された幹細胞の数および縫合糸上に残った数を、生細胞を検査するための発光を用いて決定した。
縫合糸上の生細胞の数は、Cell Titer Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて決定した。500μLのCell-Titer Gloを、幹細胞保有縫合糸および500μLのPBSを含む各eppendorfチューブに入れた。eppendorfチューブの内容物を遮光し、2分間混合した上で、室温で10分間インキュベートした。10分間のインキュベーション後に、縫合糸上および刺激した修復部位の生細胞の数を発光を用いて決定した。発光は、発光モジュール付きのGloMax Multi Jr(Promega)を用いて記録した。
結果は図4に示されている。図4に示されている通り、外科的修復部位で直ちに用いた高密度装入幹細胞保有縫合糸では、縫合糸1cm当たり平均354,411個のMSCが外科的修復の部位に送達された。MSCを培養した幹細胞保有縫合糸については、幹細胞を縫合糸上で3日間培養した場合には縫合糸1cm当たり平均502個のMSCが外科的修復の部位に送達され、幹細胞を縫合糸上で5日間培養した場合には縫合糸1cm当たり平均1,161個のMSCが外科的修復の部位に送達された。このデータを、3つの幹細胞保有縫合糸群間で、Tukey事後分析を伴う一元配置ANOVAを用いて分析した。統計分析により、高密度幹細胞装入方法を用いた場合には、MSCを縫合糸上で3日間または5日間直接培養した場合よりも有意に多くのMSCが修復の部位に送達されたことが明らかになった。
MSCを縫合糸に装入した場合には、それらはその付着していない(球状)形態で媒質溶液中にあった。3日間および5日間の培養時点で、1cm当たり33,333個および55,555個のMSCを縫合糸に装入し、続いてそれらのMSCを縫合糸上でそれぞれ72時間および120時間、直接培養した。縫合糸上でMSCを培養することにより、それらが縫合糸繊維に付着し、増殖を行うことが可能になった。MSCがその付着性形態をとった場合には、それらは伸長して広がることが見いだされた。上記の通り、かつ本明細書における結果に基づけば、対象の組織に最終的に送達される細胞の数は、MSCを過剰装入した縫合糸におけるよりも少ない。
結語
特許、特許出願、物品、書籍、論文およびウェブページを非限定的に含む、本出願に引用された文献および類似の材料はすべて、そのような文献および類似の材料の形式にかかわらず、その全体が参照により明示的に組み入れられる。定義された用語、用語の使用法、記載された手法などを非限定的に含む、組み入れられた文献および類似の材料のうち1つまたは複数が本出願と異なるかまたは食い違う場合には、本出願が優先する。
本教示をさまざまな態様および実施例とともに説明してきたが、本教示はそのようなそのような態様にも実施例にも限定されないものとする。むしろ、本教示はさまざまな代替物、改変物および同等物も含むが、そのことは当業者には理解されるであろう。
さまざまな本発明の態様を本明細書中で説明および例示してきたが、当業者は、本明細書に記載された機能を果たすため、ならびに/または結果および/もしくは利点の1つもしくは複数を得るための、種々の他の手段および/または構造を容易に思い付くと考えられ、そのような変形物および/または改変物のそれぞれは、本明細書に記載の発明の態様の範囲内にあると判断される。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されたすべてのパラメーター、寸法、材料および構成は例示的であることを意図しており、実際のパラメーター、寸法、材料および/または構成は、本発明の教示が用いられる具体的な1つまたは複数の用途によって決まることを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載された具体的な本発明の態様についての多くの同等物を認識しているか、または定型的な範囲を超えない実験を用いて確かめることができるであろう。したがって、前記の諸態様は例として提示されているに過ぎないこと、および、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、本発明の態様を具体的に説明および請求されたのとは異なる様式で実施しうることが理解されるべきである。本開示の発明の諸態様は、本明細書に記載されたそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に向けられる。加えて、2つまたはそれ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせも、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない場合には、本開示の発明の範囲内に含められる。
また、本明細書に記載された技術は、少なくとも1つの実施例を提示した方法として具体化することができる。本方法の一部として行われる行為は、任意の適したやり方で順序づけることができる。したがって、行為が例示されたのとは異なる順序で行われる態様を構築してもよく、それは、例示的な態様において逐次的な行為として示されていたとしても、いくつかの行為を同時に行うことを含みうる。
本明細書で定義されて使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み入れられる文書中の定義、および/または定義された用語の通常の意味よりも優先されることが理解されるべきである。
「1つの」および「ある」という不定冠詞は、本明細書および添付の特許請求の範囲において本明細書で用いられる場合、それに反することが明らかに指示されていない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されるべきである。本明細書で引用した範囲はいずれも包括的である。
本明細書の全体を通じて用いられる「実質的に」および「約」という用語は、わずかな変動を記述および説明するために用いられる。例えば、それらは、±5%よりも小さいかまたはそれと等しいこと、例えば±2%よりも小さいかまたはそれと等しいこと、例えば±1%よりも小さいかまたはそれと等しいこと、例えば±0.5%よりも小さいかまたはそれと等しいこと、例えば±0.2%よりも小さいかまたはそれと等しいこと、例えば±0.1%よりも小さいかまたはそれと等しいこと、例えば±0.05%よりも小さいかまたはそれと等しいことなどを指し得る。
「および/または」という語句は、本明細書および添付の特許請求の範囲において本明細書で用いられる場合、そのように等位接続される要素、すなわち、いくつかの場合では連言的に存在し、他の場合では選言的に存在する要素の「一方または両方」を意味すると理解すべきである。「および/または」とともに列記される複数の要素は、同じように、すなわち、そのように等位接続される要素の「1つまたは複数」と解釈すべきである。任意で、「および/または」節により具体的に特定される要素以外の他の要素が、その具体的に特定される要素に関連するものであれ関連しないものであれ、存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの非限定的用語とともに用いられる場合、1つの態様ではAのみ(B以外の要素を任意で含む)、別の態様ではBのみ(A以外の要素を任意で含む)、さらに別の態様ではAとBとの両方(他の要素を任意で含む)を指す、などでありうる。
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、「または」は、上記定義の「および/または」と同一の意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、ある数またはリストの要素および任意でさらなる列記されない項目の少なくとも1つを含むだけでなく2つ以上も含むと解釈すべきである。明らかにそれに反する指示を行う用語、例えば「1つのみ」もしくは「まさに1つ」、または添付の特許請求の範囲において使用される「からなる」のみが、ある数またはリストの要素のうちまさに1つの要素の包含を意味する。一般に、本明細書において使用する「または」という用語は、「いずれか」、「1つ」、「1つのみ」または「まさに1つ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち「一方または他方だが両方ではない」)のみを示すと解釈するものとする。添付の特許請求の範囲において使用される「から本質的になる」は、特許法の分野において使用されるその通常の意味を有するものとする。
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる、1つまたは複数の要素のリストに関する語句「少なくとも1つの」は、要素のリスト内の任意の1つまたは複数の要素より選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列記されるすべての要素のうちの少なくとも1つであることを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解すべきである。また、この定義によって、語句「少なくとも1つ」が意味する要素のリスト内で具体的に同定される要素以外の要素が、その具体的に同定される要素に関連するものであれ関連しないものであれ、存在してもよいことになる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの態様では、2つ以上のAを任意で含む少なくとも1つのAであって、Bが存在しないこと(B以外の要素を任意で含む)、別の態様では、2つ以上のBを任意で含む少なくとも1つのBであって、Aが存在しないこと(A以外の要素を任意で含む)、さらに別の態様では、2つ以上のAを任意で含む少なくとも1つのA、および2つ以上のBを任意で含む少なくとも1つのB(他の要素を任意で含む)、などを意味しうる。
添付の特許請求の範囲および上記明細書において、「含む」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「構成される」などのすべての移行句は、非限定的である、すなわち、「含むがそれに限定されない」ことを意味すると理解すべきである。米国特許庁特許審査便覧第2111.03節に記載のように、移行句「からなる」および「から本質的になる」のみを、それぞれ限定的または半限定的な移行句とする。
添付の特許請求の範囲は、その効果について特筆されていない限り、記載された順序または要素を限定するものとは読み取るべきではない。添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって形態および細部にさまざまな変更が加えられうることが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲およびその同等物の趣旨および範囲内にある、すべての態様が請求される。