JP2004016021A - 抗体および阻害剤並びにそれを用いた形質転換方法および形質転換キット - Google Patents

抗体および阻害剤並びにそれを用いた形質転換方法および形質転換キット Download PDF

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Abstract

【課題】ウイルス二本鎖RNAによって誘発されるタイプIインターフェロンの産生を阻害することで、特定のウイルスに対する免疫応答を抑制することができる抗体および阻害剤、並びに、ウイルスベクターの感染効率を高めることなく形質転換効率を向上させることができる形質変換方法および形質変換キットを提供する。
【解決手段】抗体は、ヒトトール様受容体3に対する抗体である。また、阻害剤は、二本鎖RNAを認識するトール様受容体を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対し、タイプIインターフェロンの産生を阻害する、トール様受容体と結合する抗体、特にヒトトール様受容体3に対するモノクローナル抗体を含む。また、阻害剤を用いてタイプIインターフェロンの産生を阻害した状態で、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターを上記細胞に感染させることで形質転換を行う。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
二本鎖RNA(リボ核酸)を認識するトール様受容体(Toll−Like Receptor)をその表面上で発現しタイプIインターフェロン(インターフェロンαおよびインターフェロンβ)を産生する細胞に対し、二本鎖RNAによって誘発されるシグナル伝達を遮断して二本鎖RNAに対する免疫応答を抑制するための阻害剤、並びに、それを用いて、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターによる形質転換を行う形質転換方法並びに形質転換キットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウイルスは生命誕生のかなり初期から存在し、生物の進化に寄与するとともに自身も発展進化してきた生命体といわれている。ウイルスにはRNAを遺伝子として持つウイルス(RNAウイルス)が数多く存在し、植物ウイルスの90%はRNAウイルスである.
近年、哺乳動物の細胞に操作を加えた遺伝子を導入する方法(動物細胞の形質転換法)が集中的に研究されている。遺伝子導入法としては、形質転換効率が比較的高いことから、レトロウイルスに代表されるウイルスをベクター(ウイルスベクター)として用いて、動物細胞を形質変換する方法(ウイルス法)が広く行われている。ウイルス法では、ウイルスの遺伝子の一部を、導入しようとする遺伝子や宿主細胞内で機能するプロモータ等で組み換えたウイルスベクター(組み換えウイルス)を作製し、このウイルスベクターを宿主細胞に感染させて、遺伝子を宿主細胞に導入する。これにより、宿主細胞は、外から与えられた遺伝子(外来遺伝子)を取り込んで発現する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ウイルス法では、十分な形質転換効率を得るためには、より感染効率の高いウイルスベクターを用いなければならない。この感染効率は、ウイルスの細胞内侵入効率、ウイルスの該当細胞での複製効率(細胞によっては使えないものもある;トロピズムとも呼ばれる)、ウイルス遺伝子の宿主細胞での発現効率(遺伝子への組込み性、コピー数など)など多数のウイルス−宿主要因によって決まる。この感染効率の向上のためには、細胞種を選ぶ、ベクターを改良する、T抗原などの副因子を加えるなどの工夫がされてきた。しかし、この点は解決されておらず、ウイルスベクターの汎用性を妨げる最大の要因となっている。より感染力の高いウイルスベクターを用いると、遺伝子組み換え体が実験室外に漏れて環境に危害を及ぼす危険性が高まる。
【0004】
そのため、ウイルスベクター自体の感染力を高めることなく、宿主細胞を随時処理して形質転換効率を向上させる手法が望まれている。植物、昆虫、無脊椎、及び脊椎動物の細胞には、広く生体防御機構としてRNAウイルスの感染を抑制する免疫機能が備わっている。そのため、免疫機能を人為的に低下させることができれば、ウイルス法における形質転換効率をさらに向上させることができると考えられる。
【0005】
ところで、近年、植物、昆虫、無脊椎、及び脊椎動物に備わる先天性免疫(innate immunity;基本免疫系)系が、ウイルスの侵入をどう察知し防御するかを解明することが研究課題となっている。脊椎動物以降に現れた獲得免疫系は、抗体産生や、細胞障害性Tリンパ球(CTL)というリンパ球によりウイルス感染細胞を攻撃するしくみを発達させたが、うまく機能するためにはいずれも抗原提示細胞などの先天性免疫系の細胞の助けを必要とする。様々な生物でのゲノムプロジェクトが完成するにつれ、細菌やウイルス感染防御に重要な先天性免疫系の分子群が明らかになりつつある。先天性免疫系によるウイルス感染防御の分子機構はヒトでは長い間不明であったが、最近になってようやく分子論的解明が始まりつつある。
【0006】
ウイルスや細菌に対する初期の免疫応答は、従来、非特異的なものであると考えられてきた。しかし、微生物受容体と呼ばれる一群の受容体が同定されたことにより、マクロファージや樹状細胞などの先天性免疫担当細胞は、受容体を介して外来異物を識別し、サイトカインの放出や副刺激分子の発現を誘導してリンパ球を活性化することが明らかとなった。
【0007】
微生物受容体として種々の微生物構成成分を認識し宿主へ危険シグナルを伝えるトール様受容体もそのような受容体の1つであり、植物から昆虫、哺乳類まで種を超えて広く存在する。トール様受容体は、ショウジョウバエ(Drosophia)において発生と免疫の両者に関与する膜タンパク質(Drosophia Toll)のホモローグ(相同体)である。トール様受容体は、ヒトでは11種類、マウスでは12種類見つかっており、これらは、トール様受容体ファミリーと呼ばれる一群の受容体ファミリーを形成している。トール様受容体は、微生物受容体として近年注目を集めており、種々の微生物構成成分の認識にかかわることが明らかにされてきている。
【0008】
そして、最近、トール様受容体の1種であるトール様受容体3(Toll−like receptor 3;TLR3)が、ウイルスの二本鎖RNAを認識して核因子κB(以下、「NF−κB」と略記する)を活性化することが明らかになった(L.Alexopoulou, A.C.Holt, R.Medzhitov, R.A.Flavell, Nature 413 (2001) 732−738)。すなわち、トール様受容体3が、二本鎖RNAのシグナル受容体であることが見い出された。
【0009】
一方、動物細胞の免疫応答では、サイトカインの1種であるタイプIインターフェロン(インターフェロンαおよびインターフェロンβ)が、ウイルス感染防御に重要な役割を果たすことが知られている。そのため、タイプIインターフェロンの産生を阻害することができれば、種々の多様なウイルスに対する免疫機能を低下させることができると考えられる。また、繊維芽細胞をウイルス二本鎖RNA(ウイルスの産生する二本鎖RNA)の合成アナログであるポリイノシン酸−シチジル酸(以下、「ポリ(I:C)」と略記する)で刺激すると、タイプIインターフェロンの転写が誘導されることも知られている。
【0010】
しかしながら、動物細胞が、ウイルス二本鎖RNAをどのように認識し、どのようなシグナル伝達経路を経てタイプIインターフェロンを産生するのかは解明されていなかった。前記の論文では、タイプIインターフェロンの産生に係わるシグナル伝達系がヒトトール様受容体3の下流に存在することは分かっていなかった。
【0011】
本願発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ウイルス二本鎖RNAによって誘発されるタイプIインターフェロンの産生を阻害することで、特定のウイルスに対する免疫応答を抑制することができる阻害剤、並びに、ウイルスベクターの感染効率を高めることなく形質転換効率を向上させることができる形質変換方法および形質変換キットを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、タイプIインターフェロンの産生に係わるシグナル伝達系がTLR3の下流に存在し、このシグナル伝達系がTLR3に対するモノクローナル抗体(mAb)によって遮断できること、すなわち、TLR3に対するモノクローナル抗体が、タイプIインターフェロンの産生を阻害する機能を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る阻害剤は、上記の課題を解決するために、二本鎖RNAを認識するトール様受容体を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対し、二本鎖RNAに対する免疫応答を抑制するための阻害剤であって、上記トール様受容体と結合してタイプIインターフェロンの産生を阻害する抗体、好ましくはヒトトール様受容体3に対するモノクローナル抗体を含むことを特徴としている。
【0014】
上記の阻害剤を用いれば、二本鎖RNAを認識するトール様受容体に抗体を結合させることで、二本鎖RNAとトール様受容体との結合を阻止することができる。これにより、二本鎖RNAに対する免疫応答に係るシグナル伝達経路の下流でタイプIインターフェロンが産生されることを阻害でき、二本鎖RNAによって誘発される免疫応答を抑制することができる。
【0015】
したがって、多様なRNAウイルスに対する免疫応答を抑制することができ、RNAウイルスの感染を増幅することができる。この免疫応答の抑制は、一本鎖RNAウイルスの場合でも、非感染細胞中では観測されないが、遺伝子複製の過程で必ず二本鎖RNAの状態を経るので、一本鎖RNAウイルスの感染を増幅(助長)することもできる。それゆえ、例えば、センダイウイルスやレトロウイルスベクター等のRNAウイルスベクターを用いた形質転換(トランスフェクション)の効率を、ウイルスベクターの感染力を高めることなしに向上させることができる。なお、RNAウイルスには、センダイウイルス等のマイナス鎖RNA(ネガティブスストランドRNA)ウイルス、プラス鎖(ポジティブスストランドRNA)ウイルス、二本鎖RNAウイルスがあるが、これらは、いずれも細胞内で二本鎖RNAを大量に複製するので、上記の阻害剤により、感染が大きく増幅される。
【0016】
また、上記の阻害剤は、シグナル伝達経路の上流側で二本鎖RNAを認識するトール様受容体に抗体を結合させることで免疫応答を抑制するので、RNAウイルス以外の抗原、例えばDNA(デオキシリボ核酸)ウイルスや細菌等に対する免疫機能は維持することができる。
【0017】
また、本発明に係る形質転換方法は、上記の課題を解決するために、二本鎖RNAを認識するトール様受容体を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対し、前記の阻害剤を用いてタイプIインターフェロンの産生を阻害した状態で、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターを上記細胞に感染させることを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係る形質転換キットは、二本鎖RNAを認識するトール様受容体を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対して形質転換を行うための形質転換キットであって、前記の阻害剤と、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターとを含むことを特徴としている。
【0019】
これらによれば、前述したように、阻害剤によって一本鎖RNAウイルスおよび二本鎖RNAウイルスの感染を増幅(助長)することができるので、ウイルスベクターの感染効率を高めることなく、レトロウイルスベクター等のRNAウイルスベクターを用いた形質転換の効率を向上させることができる。
【0020】
なお、本願明細書において、「〜に対する抗体」という表現は、「〜と特異的に結合する抗体」を意味するものとする。
【0021】
【発明の実施の形態】
本願発明者等は、まず、ヒト繊維芽細胞が、その細胞表面でTLR3を選択的に発現し、ウイルス感染時、あるいは二本鎖RNAであるポリ(I:C)による処理時に、タイプIインターフェロン、特にインターフェロンβを産生することを確認した。次に、本願発明者等が、ヒトTLR3のリガンドおよび機能を同定することを目的に、ヒトTLR3に対するモノクローナル抗体を作製したところ、ポリ(I:C)によるインターフェロンβの産生が、ヒトTLR3に対するモノクローナル抗体によって抑制された。したがって、結論的には、ヒトTLR3は、RNAウイルスによって生産された二本鎖RNAのための受容体であることが分かった。
【0022】
以上の研究により、本願発明者等は、「ヒトTLR3に対するモノクローナル抗体が、ヒトTLR3に結合することによって二本鎖RNA依存性のインターフェロンβの産生を妨害でき、二本鎖RNA依存性の細胞応答を部分的に阻害する」という独自の新たな知見を得た。
【0023】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものである。本発明に係る阻害剤は、二本鎖RNAを認識するトール様受容体(特にヒトトール様受容体3)を発現してタイプIインターフェロン(特にインターフェロンβ)を産生する細胞に対し、二本鎖RNAに対する免疫応答(特にウイルス感染に対する免疫応答)を抑制するための阻害剤であって、上記トール様受容体と結合してタイプIインターフェロンの産生を阻害する抗体(特にヒトトール様受容体3に対するモノクローナル抗体)を含むものである。
【0024】
まず、トール様受容体について説明する。
【0025】
哺乳動物のトール様受容体(以下、適宜、「TLR」と略記する)は、様々な微生物の核酸誘導体、代謝産物、および産生物を認識し、NF−κBの活性化および他のシグナル伝達を誘発する。現在までのところ、ヒト由来のTLRファミリーには10種類のTLRが存在することが確認されており、ヒトTLR1〜ヒトTLR10と名付けられている。
【0026】
TLR蛋白質は、細胞外領域がロイシンリッチリピート(LRR;ロイシンに富んだ配列の部分)ドメインと、カルボキシル末端隣接領域(C−Terminal flanking region;LRRCT)とから構成され、細胞内領域が、細胞質シグナリングドメイン、すなわちインターロイキン1受容体と相同性のあるいわゆるトール/インターロイキン1受容体ドメイン(Toll/IL−1Rドメイン;TIRドメイン)から構成されている(L.A.O’Neil, and C.A.Dinarello, Immunol.Today 21 (2000) 206−209参照)。典型的なLRRは,保存されたアスパラギン残基とロイシン残基を含む24個のアミノ酸からなる繰り返し構造で、細菌、酵母、植物、動物中の種々の蛋白質に含まれ、蛋白−蛋白の相互作用に働くと考えられている。
【0027】
TLRに特異的に結合する病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれるリガンドの種類や、リガンドによって誘発される免疫応答の仕方は、全てが明確に同定されているわけではないが、TLRの種類によって異なる。
【0028】
二本鎖RNAを認識するTLRとしては、ヒトTLR3およびマウスTLR3が確認されている。これらTLR3が二本鎖RNAを認識することは、前述した報文(L.Alexopoulou, A.C.Holt, R.Medzhitov, R.A.Flavell, Nature 413 (2001) 732−738)におけるTLR3ノックアウトマウスを用いた研究および本願発明者等の研究(後述)により確認された。
【0029】
ヒトTLR3は、904個のアミノ酸からなるI型膜蛋白質である。TLR3の細胞外のLRRドメインは、他のTLRに較ベモチーフがよく保存された23個のLRRから構成されている。TLR3の細胞内のTIRドメインは、シグナル伝達に重要とされる保存された領域においてアミノ酸の違いが見られるなど、他のTLRと若干異なっているのが特徴である。TLR3は、第4染色体の長腕q35に位置する。また、ゲノム構造についてみると、他のTLRが1〜2個のエクソンから構成されるのに対し、TLR3の読み枠(オープンリーディングフレーム;ORF)は4個のエクソンでコードされている。また、TLR3のTIRドメインのみ2個のエクソンにわかれている.
本発明に係る細胞としては、ウイルス二本鎖RNAを認識するTLRを発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞であればよいが、ウイルス二本鎖RNAを認識するTLRをその表面上で発現すると共に、二本鎖RNAを認識したときにタイプIインターフェロンを産生する細胞であることが好ましい。
【0030】
本願発明者等の研究によれば、ヒトTLR3は、様々な樹状細胞(DC)サブセットの中で発現される。また、ヒトTLR3は、ヒト腸上皮細胞の中で発現されることが報告されている(M.Muzio, D.Bosisio, N.Polentarutti, G.D’amico,A.Stoppacciro, R.Mancinelli C.van’t Veer, G.Penton−Rol, L.P.Ruco, P.Allavena, A.Mantovani, J.Immunol. 164 (2000) 5998−6004およびE.Cario, D.K.Podolsky, Infect.Immun. 68 (2000) 7010−7017)。このことは、その機能が、先天性免疫系における微生物核産生物に対する応答と密接に関連していることを示唆している。したがって、本発明は、ヒトTLR3を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞、特に、ヒトTLR3をその表面上で発現すると共に、RNAウイルスを認識したときにインターフェロンβを産生する細胞に対して効果的である。このような細胞としては、例えば、ヒト肺繊維芽細胞やヒト包皮繊維芽細胞等のヒト線維芽細胞、ヒト樹状細胞、ヒト腸上皮細胞等が挙げられる。特に、繊維芽細胞は、RNAウイルス感染または二本鎖RNAによる処理の際に、異なる複数のシグナル伝達経路を経てインターフェロンβを産生することが知られており、大きな効果が期待できる。また、マウスTLR3を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞としては、例えば、マウス線維芽細胞等の細胞が挙げられる。
【0031】
なお、ヒト線維芽細胞では単にポリ(I:C)を細胞に加えるだけでインターフェロンβの産生がみられるが、一般的に、マウス胚繊維芽細胞をポリ(I:C)だけで刺激してもインターフェロンβの産生は検知できず、DEAE−デキストランが必須である。このことから、ヒトの繊維芽細胞とマウスの繊維芽細胞との間で、TLR3の発現局在が異なる可能性、また、ポリ(I:C)によるインターフェロンβの産生機構が異なる可能性が示唆される。このことから、マウスTLR3を発現する細胞よりも、ヒトTLR3を細胞表面で発現する細胞の方が、本発明に係る阻害剤によってインターフェロンβの産生を効果的に阻害できると考えられる。
【0032】
次に、TLRと結合する抗体について説明する。
【0033】
本発明に係る抗体は、TLRと結合しうるものであればよく、TLRに対するポリクローナル抗体等でもよいが、TLRに対するモノクローナル抗体、特にヒトTLR3に対するモノクローナル抗体であることが好ましい。これは、性質が均一で供給しやすい、将来的にヒト型抗体に変えうる、ハイブリドーマとして半永久的に保存ができるなどの理由による。これにより、二本鎖RNAによって誘導されるタイプIインターフェロンの産生をより効果的に抑制できる。
【0034】
上記モノクローナル抗体は、次の方法により作製することができる。すなわち、まず、TLR、それらのフラグメントまたはその他の誘導体、あるいはそれらのアナログ、もしくはそれらを発現する細胞を免疫原として用いてマウス脾臓リンパ球を免疫し、免疫したマウス脾臓リンパ球とマウスのミエローマ細胞とを融合させてハイブリドーマを作製する。次いで、このハイブリドーマによりモノクローナル抗体を産生させる。なお、免疫操作、公知の各種方法、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler,G. and Milstein,C., Nature 256,495−497(1975))、トリオーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, Immunology Today 4, 72(1983))およびEBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc.,77−96(1985))などにより行なわれる。
【0035】
なお、本発明に係る阻害剤は、上記抗体以外に、抗体の機能を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。
【0036】
次に、本発明に係る阻害剤を用いた形質転換について説明する。
【0037】
本発明に係る形質転換方法は、二本鎖RNAを認識するTLR(特にヒトTLR3)を発現してタイプIインターフェロン(特にインターフェロンβ)を産生する細胞(特にヒト繊維芽細胞)に対し、前述した本発明に係る阻害剤を用いてタイプIインターフェロンの産生を阻害した状態で、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターを上記細胞に感染させる方法である。
【0038】
また、本発明に係る形質転換キットは、二本鎖RNAを認識するTLRを発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対して形質転換を行うための形質転換キットであって、前述した本発明に係る阻害剤と、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターとを含むものである。
【0039】
標的となる細胞としては、二本鎖RNAを認識するTLRを発現してタイプIインターフェロンを産生し、かつ、RNAウイルスベクターによって外来遺伝子を導入可能な細胞であれば、特に限定されるものではない。ただし、使用する阻害剤がヒトTLR3に対するモノクローナル抗体を含む場合には、細胞は、ヒトTLR3を発現する細胞であることが好ましく、細胞表面でヒトTLR3を発現する細胞、例えば、ヒト線維芽細胞、ヒト樹状細胞、ヒト腸上皮細胞等であることがさらに好ましい。また、ヒト幹細胞を標的とすれば、有用な形質転換体が得られると考えられる。
【0040】
組み換えRNAウイルスベクターとしては、RNAを遺伝子として持つウイルスベクター(RNAウイルスベクター)に対してウイルス遺伝子に外来遺伝子(目的遺伝子)を挿入したものであればよい。ウイルス遺伝子に外来遺伝子を挿入する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方法を採用することができる。
【0041】
RNAウイルスベクターとしては、遺伝子として一本鎖RNAを持つウイルスベクター(一本鎖RNAウイルスベクター)であってもよく、遺伝子として二本鎖RNAを持つウイルスベクター(二本鎖RNAウイルスベクター)であってもよく、センダイウイルスベクターやレトロウイルスベクター等が挙げられる。これらのうち、本発明は、センダイウイルスベクター等のような二本鎖RNAを大量に産生するウイルスベクターに対して特に効果的である。また、レトロウイルスベクターは、感染性が高く、細胞内に外来遺伝子を高い効率で導入でき、また、外来遺伝子を染色体DNA中に安定に組み込むことができる点で、特に長期にわたる遺伝子発現が望まれる遺伝子治療にとって好ましい遺伝子導入手段である。
【0042】
ウイルスベクターは、遺伝子導入された生物に悪影響を与えないように様々な工夫が施されていることが好ましい。例えば、遺伝子導入に用いられたウイルスベクター自体が細胞内で複製を行い、無制限な感染(遺伝子導入)を繰り返さないよう、ベクター中の複製機能を欠損させてあることが好ましい。このような複製機能を欠損させたウイルスベクターは、一般的には、ウイルス産生細胞(パッケージング細胞)を使用してウイルス粒子に包まれたウイルスベクターを調製する方法で作製できる。
【0043】
本発明に係る形質転換方法において、細胞に対し、前記阻害剤を用いてタイプIインターフェロンの産生を阻害する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、培地上で培養した細胞に対して前記阻害剤を添加すればよい。
【0044】
また、前記阻害剤は、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターを上記細胞に感染させる前に使用することが、タイプIインターフェロンの産生を阻害することができる点でより好ましいが、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターを上記細胞に感染させるときに同時に使用してもよい。同時に使用する場合、例えば、培地上で培養した細胞に対して、前記阻害剤と、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターとを、混合した状態で、あるいは別々に添加すればよい。
【0045】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
〔細胞培養〕
以下の実施例では、ヒト繊維芽細胞として、理化学研究所(茨城県つくば市高野台3−1−1)のRIKEN Cell Bankに寄託されている正常なヒト肺繊維芽細胞MRC−5を用いた。また、このヒト肺繊維芽細胞は、10%の熱失活FCS(Fetal Calf Serum;JRHバイオサイエンス社製)および抗生物質を添加したMEM(Minimum Essential Medium;改良イーグル培地)培地中で培養した。
【0047】
また、以下の実施例で用いたヒト包皮繊維芽細胞FS−4(J.Vilcek, M.Kohase, D.Henriksen−DeStefano, J.Cell.Physiol. 130 (1987) 37−43参照)およびヒト胚腎臓(HEK;Human Embryonic Kidney)293細胞は、10%のFCSおよび抗生物質を添加したMEM培地中で培養したものである。
【0048】
また、以下の実施例で用い    たインターロイキン3(IL−3)依存性のマウス細胞株Ba/F3は、10%のFCSと、5ng/mlのマウスIL−3(インターロイキン3)と、100μMの2−メルカプトエタノール(2−ME)と、抗生物質とを含むRPMI(Roswell Park Memorial Institute)培地中で培養したものである。
【0049】
〔試薬〕
ポリ(I:C)、ポリシチジル酸(ポリ(C))、ポリウリジル酸(ポリ(U))、およびポリデオキシシチジル酸−デオキシシチジル酸(ポリ(dI:dC))は、Amersham Pharamacia Biotech社から購入した。ポリミキシンB(Escherichia coli血清型0111:B4)由来のリポ多糖(LPS)、およびマウスIgG1は、Sigma社から購入した。マイコプラズマリポペプチドMALP−2は、M.Nishiguchi, M.Matsumoto, T.Takao, M.Hoshino, Y.Shimonishi, S.Tsuji, N.A.Begum, O.Takuchi, S.Akira, K.Toyoshima, T.Seya, J.Immunol. 166 (2001) 2610−2616に記載の方法で調製した。なお、マイコプラズマリポペプチドMALP−2は、M161AgのN末端14個のアミノ酸からなるリポペプチドである。
【0050】
これら試薬は、LPSを除いて、細胞の刺激の前にポリミキシンB(10μg/ml)によって37℃で1時間処理した。
【0051】
〔ヒトTLR4に対するモノクローナル抗体〕
ヒトTLR4に対するモノクローナル抗体HTA125は、東京大学医化学研究所の三宅健介教授から供与して頂いたものである(作製法については、R.Shimazu, S.Akashi, H.Ogata, Y.Nagai, K.Fukudome, K.Miyake, M.Kimoto, J.Exp.Med. 189 (1999) 1777−1782参照)。
【0052】
〔ヒトTLRをコードする相補DNA発現ベクター〕
ヒトTLR1、ヒトTLR2、およびヒトTLR3をコードする相補DNA発現ベクター(pEFBOS発現ベクター)は、以下の方法で作製した。まず、ヒト単球を、組み換えヒトGM−CSF(顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子)の存在下で培養し、相補DNA(cDNA)ライブラリーを得た。次いで、得られたcDNAライブラリーからPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法によってヒトTLR1、ヒトTLR2、およびヒトTLR3を生成し、プラスミドpEFBOS中でクローニングして、3種のcDNA発現ベクター、すなわちヒトTLR1をコードするpEFBOS発現ベクター(ヒトTLR1発現ベクター)、ヒトTLR2をコードするpEFBOS発現ベクター(ヒトTLR2発現ベクター)、およびヒトTLR3をコードするpEFBOS発現ベクター(ヒトTLR3発現ベクター)を得た。なお、プラスミドpEFBOSは、大阪大学の長田重一教授から供与して頂いたものである。ヒトTLR4発現ベクターは、東京大学医化学研究所の三宅健介教授から供与して頂いたものである(R.Shimazu, S.Akashi, H.Ogata, Y.Nagai, K.Fukudome, K.Miyake, M.Kimoto, J.Exp.Med. 189 (1999) 1777−1782参照)。これらのプラスミドは、Plasmid Maxiキット(Qiagen社製)により調製した。
【0053】
〔安定トランスフェクタント〕
マウス細胞Ba/F3を、ヒトTLR2またはヒトTLR3をコードするpEFBOS発現ベクターと、pSV2neoプラスミド(理化学研究所のRIKEN GenBankに登録済み)とで、エレクトロポレーション法によりトランスフェクション(形質導入)し、ヒトTLR2が導入されたトランスフェクタント(形質導入体)とヒトTLR3が導入されたトランスフェクタントとを得た。これらのトランスフェクタントについてG418を用いて10日間かけて選別を行い、ヒトTLR2を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3(安定トランスフェクタント)、およびヒトTLR3を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3(安定トランスフェクタント)を得た。各TLRの発現は、各TLRのカルボキシル末端(COOH末端)に付けた標識抗原決定基(エピトープ)に対する細胞内染色によって確認した。
【0054】
〔実施例1〕
TLR3の蛋白レベルでの発現や局在を調べてリガンドを同定することを目的に、本発明に係る阻害剤としての、ヒトTLR3に対するモノクローナル抗体を作製した。
【0055】
すなわち、まず、BALB/cマウスを、標識(蛍光標識)付けしたヒトTLR3を安定的に発現するBa/F3細胞で免疫化した後、BALB/cマウスの脾臓細胞をNS−1ミエローマ細胞と融合し、抗体産生ハイブリドーマを得た。この抗体産生ハイブリドーマに対し、免疫化に用いたのと同じTLR3トランスフェクタントの細胞表面染色によって選別を行い、TLR3に対するモノクローナル抗体を確立した。このモノクローナル抗体をTLR3.7と名付けた。モノクローナル抗体TLR3.7は、免疫グロブリンサブクラスがIgGであり、L鎖のタイプがκ鎖であった。
【0056】
また、対照として、モノクローナル抗体TLR3.7の作製方法と同様の方法で、TLR2に対するモノクローナル抗体を作製した。このモノクローナル抗体をTLR2.45と名付けた。モノクローナル抗体TLR2.45は、免疫グロブリンサブクラスがIgGであり、L鎖のタイプがκ鎖であった。
【0057】
次に、モノクローナル抗体TLR3.7がヒトTLR3を認識することを、ハイブリドーマの上清中で2つの評価基準を用いて確認した。
【0058】
第1の評価として、モノクローナル抗体TLR3.7をフローサイトメトリーによってスクリーニングした。
【0059】
フローサイトメトリーは、以下のようにして行った。標識(蛍光標識)を付けたヒトTLR2およびヒトTLR3を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3を、TLRに対するモノクローナル抗体(1μg)およびヒトIgG(10μg)と共に、FACS(蛍光活性化セルソーター)バッファ内で、4℃、30分間インキュベートした。また、上記FACSバッファは、0.5%のBSA(Bovine Serum Albumin)および0.1%のアジ化ナトリウムを含むDPBS(Dulbecco’s Phosphoric acid Buffer Solution)である。次いで、上記細胞を、インキュベートに用いたのと同じFACSバッファで2回洗浄した後、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)でラベルした二次抗体(American Qualex社製)を添加し、さらに4℃で30分間インキュベートした。その後、上記細胞を、フローサイトメータ(Becton Dickinson社製の”FACS Calibur”)を用いて分析した。
【0060】
フローサイトメトリーの結果を図1に示す。図1(b)および(c)の黒部分は、それぞれ、標識を付けたヒトTLR2およびヒトTLR3を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3を、抗TLR3モノクローナル抗体(TLR3.7)とFITCでラベルした二次抗体(American Qualex社製)とで染色した結果である。また、図1(c)の白部分は、同基準のコントロール抗体でラベルした結果である。また、図1(a)は、コントロールとしてマウス細胞Ba/F3(図中では「BAF3」と記す)を、抗TLR3モノクローナル抗体とFITCでラベルした二次抗体とで染色した結果である。
【0061】
モノクローナル抗体TLR3.7は、図1(b)に示すように、標識を付けたヒトTLR3を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3(図中では「BAF3/TLR3−Flag」と記す)の蛍光ピークをシフトさせた。したがって、モノクローナル抗体TLR3.7は、ヒトTLR3を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3と反応することが分かった。
【0062】
一方、モノクローナル抗体TLR3.7は、図1(c)に示すように、標識を付けたヒトTLR2を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3(図中では「BAF3/TLR3−Flag」と記す)の蛍光ピークを変化させなかった。したがって、モノクローナル抗体TLR3.7は、ヒトTLR2を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3と反応しないことが分かった。
【0063】
したがって、モノクローナル抗体TLR3.7は、トランスフェクション実験において、TLR3に対する特異性を示し、TLR2を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3とは反応しないことが分かった。
【0064】
第2の評価として、モノクローナル抗体を、標識を付けたヒトTLR3を発現するマウス細胞Ba/F3の溶解物を用いた免疫沈降法によって選別した。すなわち、以下のようにしてトランスフェクタント中でヒトTLR3の免疫沈降を行い、標識を付けたTLR3の発現を、抗フラグ抗体で判定した。まず、標識を付けたヒトTLR2を安定的に発現するマウス細胞Ba/F3を、リーシスバッファ(Promega社製)で溶解した。次いで、TLR3を、抗フラグモノクローナル抗体(M2;図中では「anti−Flag M2」と記す)または抗TLR3モノクローナル抗体(TLR3.7)で免疫沈降し、還元条件下でSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を施し、次いで、抗フラグモノクローナル抗体により免疫ブロット(ウエスタンブロット)した。また、免疫沈降には負のコントロールとして抗TLR2モノクローナル抗体(TLR2.45)を用いた。図2における矢印は、116kDaの分子量を持つTLR3を示している。免疫ブロットの結果を図2に示す。その結果、免疫沈降法による分析でも、モノクローナル抗体TLR3.7の特異性が確認された。
【0065】
なお、本願発明者等は、多くの試みの後、ようやく116kDaのTLR3蛋白質を認識する、ヒトTLR3に対するモノクローナル抗体を確立することができた。これは、ヒトTLR3が、図1に示すようにマウスBa/F3細胞上における発現レベルが低く、スクリーニングが困難であったためである。
【0066】
次に、各種TLRに対するモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリー(流動細胞計測法)によって、TLR3陽性である(細胞表面でTLR3を発現する)ヒト細胞/細胞株を探索した。
【0067】
フローサイトメトリーは、以下のようにして行った。正常ヒト肺繊維芽細胞MRC−5、および正常ヒト包皮繊維芽細胞FS−4を、TLRに対するモノクローナル抗体(1μg)およびヒトIgG(10μg)と共に、FACS(蛍光活性化セルソーター)バッファ内で、4℃、30分間インキュベートした。また、上記FACSバッファは、0.5%のBSA(Bovine Serum Albumin)および0.1%のアジ化ナトリウムを含むDPBS(Dulbecco’s Phosphoric acid Buffer Solution)である。
【0068】
次いで、上記細胞を、インキュベートに用いたのと同じFACSバッファで2回洗浄した後、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)でラベルした二次抗体(American Qualex社製)を添加し、さらに4℃で30分間インキュベートした。その後、上記細胞を、フローサイトメータ(Becton Dickinson社製の”FACS Calibur”)を用いて分析した。結果を図3に示す。図3(a)は、ヒトTLR2に対するモノクローナル抗体TLR2.45を用いたフローサイトメトリーにより細胞MRC−5およびFS−4中におけるTLR2の発現を分析した結果である。図3(b)は、ヒトTLR3に対するモノクローナル抗体TLR3.7を用いたフローサイトメトリーにより細胞MRC−5およびFS−4中におけるTLR3の発現を分析した結果である。図3(b)は、ヒトTLR4に対するモノクローナル抗体HTA125を用いたフローサイトメトリーにより細胞MRC−5およびFS−4中におけるTLR4の発現を分析した結果である。
【0069】
図3(b)のフローサイトメトリーの結果、TLR3が、ヒト肺繊維芽細胞MRC−5およびヒト包皮繊維芽細胞FS−4において、細胞表面に存在していることが分かった。したがって、TLR3は、繊維芽細胞において細胞表面及び細胞内部に発現することが分かった(この知見は、この研究で初めて得られた独自の知見である)。
【0070】
一方、図3(a)および(b)に示すように、TLR2もTLR4も、ヒト肺繊維芽細胞MRC−5およびヒト包皮繊維芽細胞FS−4においては、細胞表面上で検出されなかった。ただし、これら細胞株は、RT−PCR(逆転写PCR)によってTLR1、TLR2、TLR3、TLR5、およびTLR6のmRNA(メッセンジャーRNA)の発現が確認された。しかしながら、これらTLRの発現は、フローサイトメトリーでは殆ど検出されなかった。
【0071】
ヒト繊維芽細胞は、その表面上でTLR3を自然に発現し、ウイルス感染あるいは二本鎖RNAの合成アナログであるポリ(I:C)刺激によりインターフェロンβを産生する。このことから、二本鎖RNA認識によるインターフェロンβ産生の阻害実験として、ヒト繊維芽細胞においてポリ(I:C)刺激によるインターフェロンβの産生が抗TLR3モノクローナル抗体によって阻害されるか否かを調べる実験を行った。
【0072】
すなわち、まず、24ウェルプレート(7.5×10cells/wells)内に入れたヒト肺繊維芽細胞MRC−5を、20μg/mlの抗TLR2モノクローナル抗体(TLR2.45;図中では「抗TLR2 mAb」と記す)または抗TLR3モノクローナル抗体(TLR3.7;図中では「抗TLR3 mAb」と記す)で、37℃、1時間、前処理した後、ポリミキシンB処理したポリ(I:C)(5μg/mlまたは10μg/ml)で24時間刺激した。培養液の上清中におけるインターフェロンβの濃度を、ELISA(酵素結合免疫吸着定量法)測定装置(TFB Inc.製)で測定した。測定結果を図4に示す。
【0073】
図4から明らかように、抗TLR3モノクローナル抗体によるヒト肺繊維芽細胞MRC−5の前処理は、明らかに、ポリ(I:C)によるインターフェロンβ産生を阻害した。一方、抗TLR2モノクローナル抗体によるヒト肺繊維芽細胞MRC−5の処理では、インターフェロンβ産生の誘導の抑制は起こらなかった。これは、細胞表面で発現するTLR3が二本鎖RNAの認識に関与し、インターフェロンβ産生を引き起こす下流へのシグナル伝達を誘発することを示している。このモノクローナル抗体は、結果としてTLR3の機能低下を引き起こす。この結果は、別のアプローチによる前の報告(L.Alexopoulou, A.C.Holt, R.Medzhitov, R.A.Flavell, Nature 413 (2001) 732−738)と整合している。さらに、この結果は、ポリ(I:C)依存性のインターフェロンβ誘導が、抗TLR3モノクローナル抗体によって直接遮断されている可能性を示すものである。
【0074】
以上の結果から、直接的な結合であるか間接的な結合であるかにかかわらずTLR3と二本鎖RNAとが相互に結び付く、細胞外のTLR3による二本鎖RNAの特異的な認識は、タイプIインターフェロンの誘導に不可欠であることが分かる。また、TLR3に付けられたモノクローナル抗体によって、この細胞外のTLR3による二本鎖RNAの特異的な認識が妨害され、その結果としてタイプIインターフェロンの産生が阻害されることが分かる。
【0075】
したがって、TLR3に対するモノクローナル抗体は、宿主細胞に起こり得る二本鎖RNA−TLR3認識に係わる別経路を介したウイルス依存性の細胞応答を抑制する阻害剤としての機能を果たすことができることが分かる。
【0076】
〔ポリ(I:C)による機能増幅の検証〕
繊維芽細胞は、ウイルス感染、あるいは二本鎖RNAの合成アナログであるポリ(I:C)による刺激の下で、インターフェロンβを産生する。それゆえ、二本鎖RNAの認識時にTLRの果たし得る役割を調査するために、まず、ヒト繊維芽細胞が、ポリ(I:C)による刺激の下でインターフェロンβを産生することを確認した。具体的には、ヒト肺繊維芽細胞MRC−5(細胞数7.5×10)を、0〜20μg/mlまでの各種濃度のポリI:Cで4時間または24時間刺激した。また、ヒト包皮繊維芽細胞FS−4(細胞数7.5×10)を、0〜20μg/mlまでの各種濃度のポリI:Cで4時間刺激した。インターフェロンβの産生量を測定した結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
Figure 2004016021
【0078】
表1から明らかなように、ポリ(I:C)によるヒト肺繊維芽細胞MRC−5およびヒト包皮繊維芽細胞FS−4の刺激は、インターフェロンβの分泌を誘導した。
【0079】
エピセリウム細胞では、ポリ(I:C)が、ウイルスの二本鎖RNAに類似した役割を果たし、ウイルス感染に対する宿主の防衛に重要なインターフェロンβ、およびサイトカインの分泌に続いて起こるNF−κBの活性化を誘導することが知られている。
【0080】
そこで、次に、種々のTLRを発現するヒト細胞株を用いて、二本鎖RNAの認識によってNF−κBおよびインターフェロンβプロモータが活性化される免疫応答機構において、TLR3がどのように関与しているかを調べる研究の一環として、機能増幅の研究を行った。すなわち、種々のヒトTLRを発現するベクターを用いてトランスフェクションされたヒト胚腎臓(HEK)293細胞を用いて、NF−κBまたはインターフェロンβとを用いたレポータ遺伝子アッセイにより、ポリ(I:C)によって免疫機能が増幅されるかを検証した。
【0081】
レポータ遺伝子アッセイは、以下のようにして行った。まず、HEK293細胞(1×10cells/wells)を、6ウェルプレート内で、リポフェクトアミン(Lipofectamine) 2000試薬(Gibco,BRL製;遺伝子導入用カチオン性脂質)を、ヒトTLR1発現ベクター、ヒトTLR2発現ベクター、ヒトTLR3発現ベクター、ヒトTLR4発現ベクター(これら4種は0.5μgまたは1μg)、および空ベクターの何れかと、レポータ遺伝子とによって、過渡的にトランスフェクトした。
【0082】
レポータ遺伝子としては、ルシフェラーゼ(luciferase)を連結したNF−κBレポータ遺伝子(Stratagene社製、0.5μg)、あるいはp−125 lucレポータプラスミド(0.5μg)を用いた。p−125 lucレポータプラスミドは、東京大学大学院医学系研究科の谷口維紹教授から供与して頂いたものである(T.Taniguchi, K.Ogasawara, A.Takaoka, N.Tanaka, Annu.Rev.Immunol.19 (2001) 623−655参照)。p−125 lucレポータプラスミドは、「ピッカジーン(Picagene)」ルシフェラーゼレポータプラスミド(東洋インキ株式会社製)内に挿入されたヒトインターフェロンβプロモータ領域(−125から+19)を含有している。したがって、p−125 lucレポータプラスミドは、インターフェロンβレポータ遺伝子として使用できる。
【0083】
トランスフェクトされたDNAの総量は、空のベクターを添加することによって一定に保った。また、プラスミドpCMVβ(Clontech社製,0.025μg)を内部コントロールとして使用した。
【0084】
トランスフェクションから24時間後に、細胞を収穫し、24ウェルプレート(2×10cells/ml)上に接種し、培地のみ、ポリミキシンB由来のリポ多糖(LPS;濃度100ng/ml)、ポリミキシンB処理したマイコプラズマリポペプチドMALP−2(濃度100nM)、またはポリミキシンB処理したポリ(I:C)(濃度50μg/ml)で、6時間刺激した。
【0085】
この細胞を、リーシスバッファ(Promega社製)で溶解し、ルシフェラーゼ活性およびβーガラクトシダーゼ活性を製造メーカーの取扱説明書にしたがって測定し、NF−κBおよびインターフェロンβプロモータの活性化度を評価した。
【0086】
レポータ遺伝子としてNF−κBレポータ遺伝子を用いた場合の測定結果を図5に、レポータ遺伝子としてインターフェロンβレポータ遺伝子を用いた場合の測定結果を図6にそれぞれ示す。図5および図6のデータは、相対的な刺激の平均値を表す。
【0087】
ヒトTLR3によってトランスフェクトされたHEK293細胞は、図5に示すように、ポリ(I:C)に応答してNF−κBを活性化した。一方、他のヒトTLR(ヒトTLR1、ヒトTLR2、およびヒトTLR4)によってトランスフェクトされたHEK293細胞では、図5に示すように、ポリ(I:C)に応答してNF−κBを活性化することはなかった。ただし、ヒトTLR2発現細胞は、図5に示すように、コントロールリガンドであるマイコプラズマリポペプチドMALP−2に対して応答した。
【0088】
また、ヒトTLR3を発現する細胞は、図6に示すように、ポリ(I:C)に対して著しく応答し、インターフェロンβプロモータを活性化した。したがって、ポリ(I:C)は、TLR3を介してNF−κBおよびインターフェロンβプロモータの両方の活性化を誘導した。対照的に、ヒトTLR2やヒトTLR4を発現する細胞は、図6に示すように、LPS、マイコプラズマリポペプチドMALP−2、およびポリ(I:C)のいずれにも応答せず、インターフェロンβプロモータを活性化させなかった。
【0089】
次に、ポリ(I:C)のTLR3に対する特異性を調べた。
【0090】
まず、前述したのと同様のHEK293細胞に対するレポータ遺伝子によるトランスフェクションを、ヒトTLR3発現ベクター(0.5μgまたは1μg)または空ベクターを用いて行った。トランスフェクションから24時間後に、細胞を収穫し、24ウェルプレート(2×10cells/ml)上に接種し、培地のみ、ポリ(I:C)(濃度50μg/ml)、ポリ(U)、ポリ(C)、またはポリ(dI:dC)(濃度50μg/ml)で、6時間刺激した。
【0091】
この細胞を、リーシスバッファ(Promega社製)で溶解し、ルシフェラーゼ活性およびβーガラクトシダーゼ活性を製造メーカーの取扱説明書にしたがって測定し、NF−κBおよびインターフェロンβプロモータの活性化度を評価した。
【0092】
レポータ遺伝子としてNF−κBレポータ遺伝子を用いた場合の測定結果を図7に、レポータ遺伝子としてインターフェロンβレポータ遺伝子を用いた場合の測定結果を図8にそれぞれ示す。図7および図8のデータは、3つの個別の実験の最小値から計算した標準偏差による畳み込み演算を行った数値で表している。
【0093】
TLR3を介したNF−κBおよびインターフェロンβプロモータの活性化は、図7および図8に示すように、ポリ(I:C)によってのみ誘導され、一本鎖RNAのポリ(U)およびポリ(C)のいずれによっても、また、二本鎖DNAのポリ(dI:dC)によっても誘導されなかった。
【0094】
以上のように、TLR3は、二本鎖RNAを認識して、ポリ(I:C)刺激によるNF−κBおよびインターフェロンβプロモータの活性化を媒介した一方、TLR3を介したシグナル伝達は、一本鎖RNAおよび二本鎖DNAの何れによっても誘発されなかった。
【0095】
したがって、TLR3は、二本鎖RNAの極めて特異的な構造的特徴、例えば、β−D−リボース内の2’炭素に結合した水酸基の有無を認識することで、ウイルスに固有の二本鎖RNAを選択的に認識し、シグナルを伝達すると考えられる。
【0096】
このようにして、本願発明者等の研究により、TLR3が、二本鎖RNAを認識してNF−κBおよびインターフェロンβプロモータを活性化し、インターフェロンβの産生を促進することが明らかとなった。それゆえ、TLR3を介したシグナル伝達を何らかの方法で促進することによって、インターフェロンβの産生を促進し、ウイルス感染を抑制できることが期待される。また、このシグナル伝達を促進する薬剤を探索することにより、新規なウイルス感染抑制剤の創製が期待できる。多くの難治性疾患がウイルスによって媒介されるので、ウイルス感染を抑制することで多くの難治性疾患の治療が期待できる。
【0097】
【発明の効果】
本発明に係る阻害剤は、以上のように、トール様受容体と結合してタイプIインターフェロンの産生を阻害する抗体に対するモノクローナル抗体を含む構成である。
【0098】
これにより、二本鎖RNAに対する免疫応答に係るシグナル伝達経路の下流でタイプIインターフェロンが産生されることを阻害でき、二本鎖RNAによって誘発される免疫応答を抑制することができる。したがって、二本鎖RNAウイルスの感染を増幅することができると共に、遺伝子複製の過程で二本鎖RNAの状態を経る一本鎖RNAウイルスの感染を増幅することができる。それゆえ、例えば、レトロウイルスベクター等のRNAウイルスベクターを用いた形質転換の効率を、ウイルスベクターの感染力を高めることなしに向上させることができる。また、上記構成では、選択的な免疫応答の抑制ができるので、RNAウイルス以外の抗原、例えばDNA(デオキシリボ核酸)ウイルスや細菌等に対する免疫機能を維持することができる。
【0099】
また、本発明に係る形質転換方法は、以上のように、二本鎖RNAを認識するトール様受容体を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対し、請求項1または2に記載の阻害剤を用いてタイプIインターフェロンの産生を阻害した状態で、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターを上記細胞に感染させる方法である。また、本発明に係る形質転換キットは、前記の阻害剤と、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターとを含む構成である。
【0100】
これらによれば、阻害剤によって一本鎖RNAウイルスおよび二本鎖RNAウイルスの感染を増幅(助長)することができるので、ウイルスベクターの感染効率を高めることなく、レトロウイルスベクター等のRNAウイルスベクターを用いた形質転換の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マウス細胞を用いた、TLR3に対するモノクローナル抗体のフローサイトメトリー分析結果を示すグラフであり、(a)はコントロールとしてのマウス細胞の場合、(b)はTLR2を発現するマウス細胞の場合、(c)はTLR3を発現するマウス細胞の場合である。
【図2】TLR3を、抗フラグモノクローナル抗体、抗TLR2モノクローナル抗体、または抗TLR3モノクローナル抗体で免疫沈降した後、免疫ブロットした結果を示す図である。
【図3】2種類のヒト繊維芽細胞を用いた、各種TLRに対するモノクローナル抗体のフローサイトメトリー分析結果を示すグラフであり、(a)はヒトTLR2に対するモノクローナル抗体を用いた場合、(b)はヒトTLR3に対するモノクローナル抗体を用いた場合、(c)はヒトTLR4に対するモノクローナル抗体を用いた場合を示す。
【図4】ヒト肺繊維芽細胞を抗TLR2モノクローナル抗体または抗TLR3モノクローナル抗体で前処理した後、ポリ(I:C)で刺激したときのインターフェロンβの濃度を測定した結果を示すグラフである。
【図5】各種のTLRを介在してポリ(I:C)刺激によるNF−κBの活性化が起こるか否かを分析した結果を表すグラフである。
【図6】各種のTLRを介在してポリ(I:C)刺激によるインターフェロンβプロモータの活性化が起こるか否かを分析した結果を表すグラフである。
【図7】ポリ(I:C)、一本鎖RNA、および二本鎖DNAのそれぞれによって、TLR3を介したNF−κBの活性化が起こるか否かを分析した結果を表すグラフである。
【図8】ポリ(I:C)、一本鎖RNA、および二本鎖DNAのそれぞれによって、TLR3を介したインターフェロンβプロモータの活性化が起こるか否かを分析した結果を表すグラフである。

Claims (4)

  1. 二本鎖RNAを認識するトール様受容体を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対し、二本鎖RNAに対する免疫応答を抑制するための阻害剤であって、
    上記トール様受容体と結合してタイプIインターフェロンの産生を阻害する抗体を含むことを特徴とする阻害剤。
  2. 上記抗体は、ヒトトール様受容体3に対するモノクローナル抗体であることを特徴とする阻害剤。
  3. 二本鎖RNAを認識するトール様受容体を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対し、請求項1または2に記載の阻害剤を用いてタイプIインターフェロンの産生を阻害した状態で、目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターを上記細胞に感染させることを特徴とする形質転換方法。
  4. 二本鎖RNAを認識するトール様受容体を発現してタイプIインターフェロンを産生する細胞に対して形質転換を行うための形質転換キットであって、
    請求項1または2に記載の阻害剤と、
    目的遺伝子を挿入した組み換えRNAウイルスベクターとを含むことを特徴とする形質転換キット。
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