JP2004015007A - 有機トランジスタ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタ及び該有機トランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁体で形成された基板1上に、ゲート電極2、ゲート絶縁膜5、ソース電極3、ドレイン電極4、及び有機半導体層6を有し、ソース電極3、有機半導体層6、及びドレイン電極4は、基板1と垂直方向に積層され、有機半導体層6は、ソース電極3及びドレイン電極4の間に配置され、ソース電極3、ドレイン電極4、及び有機半導体層6は、ゲート絶縁膜5に隣接し、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極2に対向する。
【選択図】 図1
【解決手段】絶縁体で形成された基板1上に、ゲート電極2、ゲート絶縁膜5、ソース電極3、ドレイン電極4、及び有機半導体層6を有し、ソース電極3、有機半導体層6、及びドレイン電極4は、基板1と垂直方向に積層され、有機半導体層6は、ソース電極3及びドレイン電極4の間に配置され、ソース電極3、ドレイン電極4、及び有機半導体層6は、ゲート絶縁膜5に隣接し、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極2に対向する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機トランジスタ及び該有機トランジスタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス・ディスプレイは、プラスチック基板上に作製できるため、高画質、軽量、及び省スペースといった点で、最近、大きな注日を集めている。
【0003】
有機TFTは、一般に、基板、ゲー卜電極、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極とソース電極/ドレイン電極とを絶縁するゲート絶縁膜、ソース電極とドレイン電極に挟まれた有機半導体層などで構成される。
【0004】
従来の有機TFTは、図4に示すように、基板1上にゲート電極2を設け、その上にゲート絶縁膜5を形成し、その上にソース電極3とドレイン電極4を互いに離して設け、さらに、ソース電極3、ドレイン電極4、ゲート絶縁膜5上に有機半導体層6を積層して、構成され、ソース電極3とドレイン電極4との間の横方向にチャネルが形成される。
【0005】
有機TFTのソース電極とドレイン電極との間に電圧(ソース−ドレイン間電圧)を印加すると共に、ゲート電極に印加する電圧(ゲート電圧:Vg)を変化させると、ゲート電圧に依存して有機半導体層とゲート絶縁膜との界面における電荷量が変化し、ソース電極とドレイン電極との間における有機半導体層の部分(チャネル)を流れる電流(ソース−ドレイン電流)を変化させることができる。上述の横型有機TFTでは、チャネルは横方向に形成され、ソース−ドレイン電流がソース電極からドレイン電極へ横向きに流れる。このようにして、有機TFTでは、ゲート電圧を制御することにより、ドレイン電極から得られるドレイン電流IDを制御することができる。
【0006】
ここで、有機TFTのゲインgm、即ち、ゲート電圧の変化に対するドレイン電流の変化(dID/dVg)は、ソース−ドレイン電流が流れるチャネルが長方形であるとすると、次式
gm=W/L・ε0ε/d・μ・(Vg−VT) ・・・(1)
のように表される。ただし、Wは、チャネル幅であり、Lは、チャネル長であり、ε0は、真空誘電率であり、εは、絶縁膜の比誘電率であり、dは、ゲート絶縁膜の厚さであり、μは、キャリア移動度であり、VTは、閾値電圧である。式(1)によれば、チャネル幅Wとチャネル長Lの比W/Lが大きいほど、有機TFTのゲインは大きくなり、また、このトランジスタは高速になる。
【0007】
また、有機半導体層のキャリア移動度が大きいほど、有機TFTのゲインも大きくなるため、キャリア移動度の大きい有機半導体層を形成することが望ましい。具体的には、有機半導体層には、π共役系を有する平面型の有機分子を使用する。π共役系を有する平面型の有機分子からなる有機半導体層は、一般にキャリア移動度に関する異方性を有する。π共役系を有する平面型の有機分子が、それらの分子のπ電子軌道が重なり合うように、即ち分子平面が互いに平行であるように、積層するとき、有機半導体層は、それらの分子平面に垂直な方向で高いキャリア移動度を示すことが知られている。従って、π共役系を有する平面型の有機分子の分子平面が、チャネルを形成している面に対して垂直に積層することが好ましい。
【0008】
チャネルが基板と平行な方向に形成される横型トランジスタについては、H.Klauk,D.J.Gundlach,T.N.Jackson:IEEE Electron Dvice Lett.Vol.20 No.6 pp289−291(1999)に、ペンタセン
【0009】
【化1】
からなる有機半導体を使用することによって、0.5cm2/Vs程度のキャリア移動度を得ており、供給電圧−80Vにおいて200kHzの応答で動作したことが報告されている。このように、有機半導体層のキャリア移動度μは、約1cm2/Vs程度と小さいため、動作電圧を下げるためには、より大きなW/Lが必要となる。
【0010】
より大きなW/Lを得るために、チャネル長Lを短くする必要があるが、横型有機TFTに関しては、有機TFTを、ガラスや樹脂の基板を使用して製造する場合、マスクを使用した製造工程における微細化の精度のために、チャネル長Lを短くすることが困難である。特に、基板に樹脂を用いた場合は、有機TFTの製造中に発生する熱により基板が膨張するため、ソース電極とドレイン電極との間の位置関係を制御することは、さらに困難である。加えて、横型有機TFTをディスプレイの駆動素子として用いる場合、画素の大きさに対する駆動用トランジスタの面積の割合が決まっているため、W/Lの値が制限され、容易に大きくすることはできない。
【0011】
また、ゲー卜電極とソース電極又はドレイン電極の互いに対向して重なる部分は、有機トランジスタの負荷容量(以下、寄生容量と呼ぶ)を形成する。このようなゲー卜電極とソース電極又はドレイン電極の互いに対向して重なる部分が大きい場合には、ゲートに加えた入力信号が、この寄生容量を形成している部分を通して出力側の電極に抜けてしまう「突き抜け電圧」が生じる原因となり好ましくない。しかしながら、ゲー卜電極とソース電極又はドレイン電極の互いに対向して重なる部分が全くなく、ゲー卜電極とソース電極又はドレイン電極が離れて配置されている場合には、チャネルを通じてソース−ドレイン電流が流れなくなってしまう。したがって、ゲート電極とソース電極又はドレイン電極の対向して重なる部分はゼロ以上であって、なおかつ極力小さくする必要がある。しかしながら、横型有機TFTにおいては、ゲート電極に対するソース電極又はドレイン電極の横方向における位置決め精度は限界があるため、ゲート電極とソース電極又はドレイン電極の対向して重なる部分を小さく調節することは困難である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述した横型有機TFTにおける問題を解決する手段として、有機TFTのチャネルを、基板と平行な方向、即ち横方向に設けるのではなく、基板と垂直な方向、即ち縦方向に設けることが有望である。このようなチャネルを縦方向に設けた有機TFTは、縦型有機TFTと呼ばれる。縦型有機TFTでは、堆積する膜の厚さが時間に比例するため、縦方向の膜の厚さを、精度良く、数ナノ・メートルの単位で制御することができる(堆積速度:1nm/s以下)。よって、有機半導体層の縦方向の厚さを精度良く調節することができる。このようにして、膜の厚さの制御が容易である縦方向にチャネルを形成することで、チャネル長Lを短くすることができる。また、この場合には、横型有機TFTにおけるゲート電極とソース電極又はドレイン電極との相対的な精密な位置合わせは必要ない。
【0013】
縦型有機TFTの具体例として、工藤一浩、飯塚正明、国吉繁一、田中国昭:信学技報OME98−50(1998−07)は、Static Induc−tion Transistor(SIT)を開示する。図5に示すSITは、ゲート電圧を印加してソース電極及びドレイン電極間に流れる電流を妨げる縦型有機TFTである。このSITは、縦型有機TFTであるが、有機半導体として銅フタロシアニン(CuPc)
【0014】
【化2】
を使用している。このSITのキャリア移動度は10−3cm2/Vs程度と小さく、また、大きな漏れ電流がある、及び電流−電圧特性における飽和特性を示さない等の問題がある。
【0015】
また、Jan Hendrik
【0016】
【外1】
Hong Meng&Zhenan Bao、Nature Vol.413 pp713−715(2001)には、Self−Assembled Monolayer(SAM)を半導体層とした縦型有機トランジスタを開示する。図6に示すように、この縦型有機トランジスタは、基板とゲート電極が一体となって、ゲート電極が基板も兼ねており、基板を兼ねたゲート電極は、高濃度のドーパントを有するシリコンで形成されている。基板を兼ねたゲート電極の表面には、熱酸化法により二酸化ケイ素の絶縁膜が形成され、この絶縁上に金で形成されたソース電極が配置されている。ソース電極の上には、SAMの半導体層、ドレイン電極が順次積層されている。この縦型有機トランジスタは、上述のSITと異なり、電流−電圧特性における飽和特性を示す。しかしながら、この縦型有機TFTは、基板を兼ねたゲート電極とソース電極とが、絶縁層を挟んで、ソース電極の面積分だけ対向して重なり合っている。また、ゲート電極が絶縁膜を挟んでドレイン電極と、ドレイン電極の基板と垂直な面の面積分だけ対向して重なり合っている。よって、この縦型有機TFTは、寄生容量が大きく、突き抜け電圧が発生してしまう。
【0017】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタ及び該有機トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、有機トランジスタにおいて、絶縁体で形成された基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体層を有し、前記ソース電極、前記有機半導体層、及び前記ドレイン電極は、前記基板と垂直方向に積層され、前記有機半導体層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に配置され、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記有機半導体層は、前記ゲート絶縁膜に隣接し、該ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向することを特徴とする。
【0019】
請求項1記載の発明によれば、絶縁体で形成された基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体層を有し、前記ソース電極、前記有機半導体層、及び前記ドレイン電極は、前記基板と垂直方向に積層され、前記有機半導体層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に配置され、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記有機半導体層は、前記ゲート絶縁膜に隣接し、該ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向するので、寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタを提供することができる。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の有機トランジスタにおいて、前記絶縁体は、ガラス又は樹脂であることを特徴とする。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、前記絶縁体は、ガラス又は樹脂であるので、前記絶縁体がガラスである場合には、有機トランジスタをディスプレイなどに使用することができ、前記絶縁体が樹脂である場合には、フレキシブルで割れにくく、軽量な有機トランジスタを形成することができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の有機トランジスタにおいて、前記絶縁体が樹脂である場合であって、前記樹脂に少なくとも水分が侵入することを防止するブロック層は、前記基板に設けられることを特徴とする。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、前記樹脂に少なくとも水分が侵入することを防止するブロック層は、前記基板に設けられるので、ゲート電極を陽極酸化する場合には、ゲート電極と基板の間に水溶液が浸透してゲート電極が基板から剥離することを防止することができる。また、有機トランジスタを空気中に放置したときに、有機半導体層に水蒸気が侵入することを防止して、有機トランジスタの性能を保持することができる。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3いずれか1項記載の有機トランジスタにおいて、前記有機半導体層の前記ゲート絶縁膜に隣接する面は、前記基板に対して斜面であることを特徴とする。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、前記有機半導体層の前記ゲート絶縁膜に隣接する面は、前記基板に対して斜面であるので、有機半導体層を容易に堆積させることができる。また、チャネル長が同じ有機トランジスタにおける素子の厚さを薄くすることができる。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の有機トランジスタにおいて、前記有機半導体層の材料は、ペンタセンであることを特徴とする。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、前記有機半導体層の材料は、ペンタセンであるので、キャリア移動度の高い有機トランジスタを提供することができる。
【0028】
請求項6記載の発明は、有機トランジスタの製造方法において、絶縁体で形成された基板上にゲート電極を形成するステップと、前記ゲート電極の表面を陽極酸化法によって酸化し、ゲート絶縁膜を形成するステップと、前記基板上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第一の電極を形成するステップと、前記第一の電極上に前記ゲート絶縁膜に隣接する有機半導体層を形成するステップと、前記有機半導体層上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第二の電極を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0029】
請求項6記載の発明によれば、絶縁体で形成された基板上にゲート電極を形成するステップと、前記ゲート電極の表面を陽極酸化法によって酸化し、ゲート絶縁膜を形成するステップと、前記基板上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第一の電極を形成するステップと、前記第一の電極上に前記ゲート絶縁膜に隣接する有機半導体層を形成するステップと、前記有機半導体層上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第二の電極を形成するステップと、を含むので、寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタの製造方法を提供することができると共に、ゲート絶縁膜を容易に形成することができる。また、ガラスや樹脂のような耐熱性の低い基板を使用する場合でも、基板を劣化させることなく酸化膜を形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0031】
本発明の有機トランジスタにおける第一の実施形態を図1と共に説明する。図1は、本発明の第一の実施形態における有機トランジスタの構成を示し、(a)は、基板と反対側からみた平面図、(b)は、(a)の線A−A’に沿った断面図である。まず、本発明の第一の実施形態における有機トランジスタの構成について説明する。本発明の第一の実施形態における有機トランジスタは、絶縁体で形成された基板1上に、ゲート電極2、ソース電極3、ドレイン電極4、ゲート絶縁膜5、有機半導体層6、及びゲート電極コンタクト7を構成要素として含む。ソース電極3、有機半導体層6、及びドレイン電極4は、基板1と垂直方向に積層され、有機半導体層6は、ソース電極3及びドレイン電極4の間に配置される。図1では、基板1上にソース電極2が形成されているが、基板1上にドレイン電極を形成し、有機半導体層6上にソース電極2を積層させてもよい。ソース電極3、ドレイン電極4、及び有機半導体層6は、それぞれ基板1と垂直な側面でゲート絶縁膜5に隣接し、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極2に対向する。ゲート電極2の上面におけるゲート絶縁膜5には、コンタクトホールが設けられ、ゲート電極コンタクト7が形成されている。図1においては、有機半導体層6が直方体の形状をしており、有機半導体層6の基板1に垂直な四つの平面のうち一面がゲート絶縁膜5に隣接している。しかしながら、有機半導体層6の少なくとも一部がゲート絶縁膜5に隣接すればよく、例えば、ゲート電極2及びゲート絶縁膜5が凹形状に形成され、有機半導体層6が直方体の形状をしており、有機半導体層6の基板1に垂直な四つの平面のうち三面がゲート絶縁膜5に隣接してもよい。有機半導体層6のゲート絶縁膜5に隣接する部分が多いほど、多くのソース−ドレイン電流を流せるので好ましい。
【0032】
次に、本発明の第一の実施形態における有機トランジスタの動作について説明する。例として有機半導体層6がp型半導体である場合について説明する。ソース電極3をゼロ電位、ドレイン電極4をマイナスの電圧(−10V)を印加する。ゲート電極2は、ゲート電極コンタクト7を介して外部のゲート信号発生器に接続される。ゲート信号によってゲート電極2にマイナス電圧を印加すると、プラスの電荷を持つホールが、ソース電極3から注入され、有機半導体層6のゲート絶縁膜5との界面にプラスの電荷が誘起され、チャネルが形成される。この誘起されたプラスの電荷が、ソース電極3及びドレイン電極4の間に働く電界によって、図1(b)の矢印に示すように、ソース−ドレイン電流として、有機半導体層6のゲート絶縁膜5との界面(チャネル)を流れる。即ち、チャネルが基板と垂直方向に形成され、ソース−ドレイン電流は、有機半導体層6のゲート絶縁膜5に沿って縦方向に流れる。
【0033】
次に発明の第一の実施形態における有機トランジスタの製造工程について説明する。石英の基板1上に厚さ600nmのn型にドープしたシリコンをゲート電極2として堆積させた後、熱酸化法によってゲート電極2の表面を酸化してゲート絶縁膜5として厚さ80nmのSiO2層を成膜する。ゲート絶縁膜5の酸化は、1150℃の温度で、2.5l/分で約11.5分間ドライO2をシリコンに送ることによって行われる。ゲート電極2の上面におけるゲート絶縁膜5にさらに厚さ1マイクロmのフィールド酸化膜を堆積させた後、外部からゲート信号を印加するためのコンタクトホールを形成後、ゲート電極コンタクト7をゲート電極2と接続する。ソース電極3として厚さ100nmの金を蒸著し、その上に厚さ400nmの有機半導体を蒸者して有機半導体層6を形成する。半導体として、フタロシアニン金属錯体化合物である銅フタロシアニン(CuPc)を用いる。最後にドレイン電極4として厚さ200nmの金を堆積させる。
【0034】
ゲインに関係するチャネル長とチャネル幅は、それぞれ、図1(b)における有機半導体層の厚さLの300nmであり、図1(a)における幅Wの5マイクロmである。このように、有機半導体層の厚さでチャネル長Lを制御できるため、1マイクロm以下のチャネを容易に形成することができ、ゲインを大きくすることができる。図1に示す縦型有機TFTにおいては、(1)式におけるW/Lは、16.7という大きな値が得られる。
【0035】
ここで、ソース電極3及びドレイン電極4の基板1と垂直な側面は、ゲート絶縁膜5の基板1と垂直な側面と接するか、又は近接する(まとめて「隣接する」ということにする)。ゲート電極2とソース電極3又はドレイン電極4との対向する重なり部分の大きさは、ソース電極3又はドレイン電極4の膜厚であるので、非常に小さい。ゲート電極2とソース電極3との対向する重なり部分の大きさは、ここでは、ソース電極3の厚さ200nmに相当し、横方向にチャネルを形成する場合と比較して非常に小さい値となる。このように、ゲート電極2とソース電極3又はドレイン電極4との間の寄生容量を減少させることができ、本発明の有機トランジスタは、安定な動作をする。
【0036】
次に、本発明の有機トランジスタを、図5に示す従来技術によるSITと比較する。従来の縦型有機トランジスタの一つであるStatic Induction Transistor(SIT)においては、チャネルが、ソース電極及びドレイン電極間に挟まれた有機半導体層全体であるのに対して、本発明の有機トランジスタは、チャネルが有機半導体層のゲート絶縁膜との界面のみにある。SITは、有機半導体層中に網目状に置かれたゲート電極によってソース−ドレイン間電流を制御する。チャネルを太くして多くの電流を流せることがSITの特長であるが、ゲート電極の網目の間隔glを小さくしないと、オフ時の漏れ電流を充分小さくできない。このためSITの性能を向上させるためには、ゲート電極の微細加工が必要となってしまう。このようにSITが3極真空管のような動作をするのに対して、本発明の有機トランジスタは、有機半導体層のゲート絶縁膜との界面だけで電流を制御するため、漏れ電流を小さくするすることができ、SITにおけるゲート電極の微細加工などを要せず、高いゲインを得ることができる。
【0037】
また、ゲート電圧を高くすると流れているソース−ドレイン電流を減少させるSITは、電圧−電流特性において飽和特性(定電流特性)を示さない。これに対して、本発明の有機トランジスタは、ゲート電圧を印加しないときには電流がゼロであり、ゲート電圧を増加させていくに従い多くの電流が流れる。本発明の有機トランジスタは、電圧−電流特性において飽和特性を示すので、制御しやすい。
【0038】
次に、本発明の有機トランジスタを、図6に示す従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタと比較する。従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタは、基板とゲート電極が一体としているため、ゲート電極が絶縁膜を挟んでソース電極の面積分だけ対向して重なり合っている。また、ゲート電極が絶縁膜を挟んでドレイン電極と、ドレイン電極の基板と垂直な面の面積分だけ対向して重なり合っている。よって、従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタは、寄生容量が大きく、突き抜け電圧が発生し、このトランジスタの動作が不安定となる。本発明の有機トランジスタは、ゲート電極とソース電極又はドレイン電極の対向して重なる部分の大きさが、ソース電極の厚さに相当するので小さく、寄生容量が小さい。よって本発明の有機トランジスタでは、突き抜け電圧の発生が少ないため、トランジスタの動作が安定する。
【0039】
次に本発明の有機トランジスタにおける第二の実施形態を説明する。本実施形態の有機トランジスタでは、ゲート絶縁膜を陽極酸化で形成する。本実施形態の有機トランジスタの製造方法を以下に示す。ガラス基板に厚さ500nmのタンタル(Ta)をゲー卜電極としてスパッタリング法により堆積させる。次に、1重量%のホウ酸アンモニウム溶液中で、ゲート電極のTaを陽極として、陰極との間に電流を流して陽極酸化を行う。このとき、次の反応
2Ta+5H2O → Ta2O5十10H+十e−
が起こり、五酸化二タンタル(Ta2O5)のゲート絶縁膜がゲート電極の表面に形成される。電極間に流す電流の値は、最初は一定(0.1〜0.25mA/cm2)とし、電極間の電圧が設定値70Vに達した後は、電流値を制御して70Vの一定電圧を保つ。これは試料の外部と内部とでは化成の進行が異なるため、緻密で絶縁性の良い膜とするためには十分な化成を行う必要があるためである。 電流値が徐々に減少してゆき安定した後、化成を終える。ゲート電極を陽極酸化した後、ゲート電極及びゲート絶縁膜が形成された基板を純水で洗浄し、100℃程度で乾燥させる。ゲート絶縁膜の厚さは、この設定電圧値によって精度よく制御することができ、上記の70Vの電圧では、ゲート絶縁膜の厚さは129nmであった。次にソース電極として金(Au)の薄膜を真空蒸着法によって蒸着した後、有機半導体層を真空蒸着法により形成する。この真空蒸着は、抵抗加熱法で行い、チャンバー内の圧力は、10−5Paで、基板の温度は、室温から100度の間である。有機半導体層の厚さは、300nmである。最後にドレイン電極として金(Au)の薄膜を、金属マスクを用いて、真空蒸者法によって形成する。なお、基板に透明なガラスを用いることで、本発明の有機トランジスタをディスプレイなどに使用することができる。
【0040】
本実施例の有機トランジスタは、図6に示す従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタと異なり、ゲート絶縁膜をゲート電極の陽極酸化で形成する。従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタでは、ゲート絶縁膜をゲート電極の熱酸化により形成している。熱酸化法によりゲート絶縁膜を形成するためには、1000度以上の高温が要求される。本実施例のような陽極酸化法によるゲート絶縁膜の形成は、低温又は室温で実施することができるので、ゲート電極の表面を酸化してゲート絶縁膜を形成することが容易である。またガラスや樹脂のような耐熱性の低い基板を使用する場合でも、陽極酸化法を使用することによって、基板を劣化させることなく基板上の金属薄膜の表面に酸化膜を形成することができる。
【0041】
次に本発明の有機トランジスタにおける第三の実施形態を図2と共に説明する。図2は、本発明の第三の実施形態における有機トランジスタの断面図である。本実施形態の有機トランジスタでは、ポリカーボネートなどの樹脂の基板1を使用している。樹脂の基板1を使用することで、フレキシブルで割れにくく、軽量な有機トランジスタを形成することができる。
【0042】
この場合、ゲート電極2の陽極酸化によってゲート絶縁膜5を形成するときに水溶液が樹脂基板1を通じてゲート電極2と基板1の間に浸透する可能性がある。よって、ゲート電極2と基板1の間に水溶液が浸透することを防止するため、二酸化ケイ素(SiO2)のような無機物からなるブロック層8を基板1上に設けている。これにより、ゲート電極2を陽極酸化するときに、ゲート電極2と基板1の間に水溶液が浸透して金属のゲート電極2が基板1から剥離することを防止することができる。また、ブロック層8は、有機トランジスタを空気中に放置したときに、性能が水蒸気(湿気)に影響を受けやすい有機半導体層6に水蒸気が侵入することを防止して、有機トランジスタの性能を保持する。
【0043】
次に本発明の有機トランジスタにおける第四の実施形態を図3と共に説明する。図3は、本発明の第四の実施形態における有機トランジスタの構成を示し、(a)は、基板と反対側からみた平面図、(b)は、(a)の線B−B’に沿った断面図、(c)は、有機分子ペンタセンの配向を示す図である。
【0044】
本発明の有機トランジスタにおける有機半導体の有機分子には、銅フタロシアニンやペンタセンを使用する。銅フタロシアニンは、比較的導電性の低い分子であるが、分子構造が円盤形状である。よって、縦型有機トランジスタでは、分子平面がチャネルを形成する面に対して垂直に積層する、つまり、分子平面が基板に対して平行になる。よって、銅フタロシアニンを有機半導体として使用した場合には、10−3cm2/Vs程度の小さいキャリア移動度を示す。これに対してペンタセンは、比較的導電性が高く、分子構造は細長い楕円形状である。また、ペンタセンは、分子平面が基板に対して垂直になる傾向がある。よって、横型有機トランジスタにおける有機半導体の有機分子としてペンタセンを使用した場合には、ペンタセンは、チャネルの方向に積層するので、キャリア移動度が高くなる(0.5cm2/Vs程度)。しかしながら、チャネルが基板に対して垂直に形成される縦型有機トランジスタにおける有機半導体の有機分子としてペンタセンを使用した場合には、ペンタセンは、チャネルの方向に対して垂直に積層するので、キャリア移動度は小さくなる。
【0045】
そこで、本実施形態の有機トランジスタにおいては、図3(b)に示すように、有機半導体層6側のゲート電極2及びゲート絶縁膜5の壁面を斜面にする。即ち、本実施形態の有機トランジスタにおいては、基板1上にゲート電極2を堆積させた後、ゲート電極2の有機半導体層6側の壁面を斜面に形成する。その後、ゲート電極の表面を酸化して、ゲート絶縁膜5を形成する。さらに、基板1上に、ゲート電極2に対向すると共にゲート絶縁膜5の斜面に隣接して、ソース電極3、有機半導体層6、ドレイン電極4を積層する。なお、図3においては、ゲート絶縁膜5は、有機半導体層6の三方向の側面と隣接しており、ソース−ドレイン電流は、この三方向の側面即ち斜面に沿って流れる。即ちこの有機半導体層6の三方向の斜面にチャネルが形成される。
【0046】
有機半導体層に面するゲート絶縁膜が基板に対して垂直である場合には、そのゲート絶縁膜上に有機半導体の分子を密着させることは困難である。しかしながら、本実施形態のようにゲート電極2及びゲート絶縁膜5に斜面が形成されていると、有機半導体層6を蒸着によって堆積させる際に、有機分子がゲート絶縁膜5の斜面に密着し易いので、有機半導体層6を容易に堆積させることができる。
【0047】
また、チャネル長が有機半導体層6の側面即ち斜面に沿ったソース電極及びドレイン電極間の距離であるので、チャネル長が同じであれば、ゲート電極2及びゲート絶縁膜5の基板1に対する角度が緩やかであるほど、基板1に対して垂直方向の有機半導体層6の厚さが薄くなる。ただし、同時に、基板1に対して水平方向の有機半導体層6の面積は広くなる。よって、有機トランジスタの素子における有機半導体層の面積の占める割合の範囲内で、有機半導体層6側におけるゲート電極2及びゲート絶縁膜5の壁面を斜面とすることで、有機トランジスタの素子の厚さを薄くすることができる。
【0048】
さらに、有機半導体層6側におけるゲート電極2及びゲート絶縁膜5の壁面を斜面とすることで、図3(c)における細長い楕円形状の有機分子ペンタセン6’の配向を制御することができる。図3(c)に示すように、ペンタセン6’は、ソース電極3上で分子平面が基板1に対して垂直になるように配列する。ゲート絶縁膜5の壁面が基板1に対して垂直であるとすると、チャネルを形成する有機半導体層6の側面も基板1に対して垂直になり、ペンタセン6’は、チャネルに対して水平方向に配列し、キャリア移動度が減少する。しかしながら、本実施形態のように、有機半導体層6側のゲート絶縁膜5の壁面が、基板1に対する斜面であるとすれば、ペンタセン6’は、チャネルを形成する斜面に対して水平な方向から傾いて配列する。このため、チャネルの方向が基板に対して垂直である場合と比較して、チャネルを形成する斜面上で複数のペンタセン6’のπ電子軌道の重なりが増加し、有機トランジスタのキャリア移動度を高めることができる。
【0049】
以上、本発明を説明するため実施形態を示してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、あらゆる実施形態の組み合わせや種々の応用ができることは言うまでもない。例えば、本発明の第四の実施形態において、陽極酸化法を用いてゲート絶縁膜を形成したり、基板を樹脂で形成してその基板上にブロック層を設けてもよい。また、本実施形態では、基板上にソース電極を形成するとしたが、基板上にドレイン電極を形成し、有機半導体層を挟んで対向する電極をソース電極としてもよい。即ち、基板側に向ってソース−ドレイン電流を流してもよい。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタ及び該有機トランジスタの製造方法を提供することができる。
【0051】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態における有機トランジスタの構成を示す図であり、(a)は、基板と安泰側からみた平面図、(b)は、(a)の線A−A’に沿った断面図である。
【図2】本発明の第三の実施形態における有機トランジスタの断面図である。
【図3】本発明の第四の実施形態における有機トランジスタの構成を示す図であり、(a)は、基板と反対側からみた平面図、(b)は、(a)の線B−B’に沿った断面図、(c)は、有機分子ペンタセンの配向を示す図である。
【図4】従来の横型有機トランジスタの断面図である。
【図5】従来の縦型有機トランジスタの一つであるSITの図である。
【図6】従来のSAMを有機半導体層とした縦型有機トランジスタの図である。
【符号の説明】
1 基板
2 ゲート電極
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート絶縁膜
6 有機半導体層
6’ 有機分子(ペンタセン)
7 ゲート電極コンタクト
8 ブロック層
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機トランジスタ及び該有機トランジスタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス・ディスプレイは、プラスチック基板上に作製できるため、高画質、軽量、及び省スペースといった点で、最近、大きな注日を集めている。
【0003】
有機TFTは、一般に、基板、ゲー卜電極、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極とソース電極/ドレイン電極とを絶縁するゲート絶縁膜、ソース電極とドレイン電極に挟まれた有機半導体層などで構成される。
【0004】
従来の有機TFTは、図4に示すように、基板1上にゲート電極2を設け、その上にゲート絶縁膜5を形成し、その上にソース電極3とドレイン電極4を互いに離して設け、さらに、ソース電極3、ドレイン電極4、ゲート絶縁膜5上に有機半導体層6を積層して、構成され、ソース電極3とドレイン電極4との間の横方向にチャネルが形成される。
【0005】
有機TFTのソース電極とドレイン電極との間に電圧(ソース−ドレイン間電圧)を印加すると共に、ゲート電極に印加する電圧(ゲート電圧:Vg)を変化させると、ゲート電圧に依存して有機半導体層とゲート絶縁膜との界面における電荷量が変化し、ソース電極とドレイン電極との間における有機半導体層の部分(チャネル)を流れる電流(ソース−ドレイン電流)を変化させることができる。上述の横型有機TFTでは、チャネルは横方向に形成され、ソース−ドレイン電流がソース電極からドレイン電極へ横向きに流れる。このようにして、有機TFTでは、ゲート電圧を制御することにより、ドレイン電極から得られるドレイン電流IDを制御することができる。
【0006】
ここで、有機TFTのゲインgm、即ち、ゲート電圧の変化に対するドレイン電流の変化(dID/dVg)は、ソース−ドレイン電流が流れるチャネルが長方形であるとすると、次式
gm=W/L・ε0ε/d・μ・(Vg−VT) ・・・(1)
のように表される。ただし、Wは、チャネル幅であり、Lは、チャネル長であり、ε0は、真空誘電率であり、εは、絶縁膜の比誘電率であり、dは、ゲート絶縁膜の厚さであり、μは、キャリア移動度であり、VTは、閾値電圧である。式(1)によれば、チャネル幅Wとチャネル長Lの比W/Lが大きいほど、有機TFTのゲインは大きくなり、また、このトランジスタは高速になる。
【0007】
また、有機半導体層のキャリア移動度が大きいほど、有機TFTのゲインも大きくなるため、キャリア移動度の大きい有機半導体層を形成することが望ましい。具体的には、有機半導体層には、π共役系を有する平面型の有機分子を使用する。π共役系を有する平面型の有機分子からなる有機半導体層は、一般にキャリア移動度に関する異方性を有する。π共役系を有する平面型の有機分子が、それらの分子のπ電子軌道が重なり合うように、即ち分子平面が互いに平行であるように、積層するとき、有機半導体層は、それらの分子平面に垂直な方向で高いキャリア移動度を示すことが知られている。従って、π共役系を有する平面型の有機分子の分子平面が、チャネルを形成している面に対して垂直に積層することが好ましい。
【0008】
チャネルが基板と平行な方向に形成される横型トランジスタについては、H.Klauk,D.J.Gundlach,T.N.Jackson:IEEE Electron Dvice Lett.Vol.20 No.6 pp289−291(1999)に、ペンタセン
【0009】
【化1】
からなる有機半導体を使用することによって、0.5cm2/Vs程度のキャリア移動度を得ており、供給電圧−80Vにおいて200kHzの応答で動作したことが報告されている。このように、有機半導体層のキャリア移動度μは、約1cm2/Vs程度と小さいため、動作電圧を下げるためには、より大きなW/Lが必要となる。
【0010】
より大きなW/Lを得るために、チャネル長Lを短くする必要があるが、横型有機TFTに関しては、有機TFTを、ガラスや樹脂の基板を使用して製造する場合、マスクを使用した製造工程における微細化の精度のために、チャネル長Lを短くすることが困難である。特に、基板に樹脂を用いた場合は、有機TFTの製造中に発生する熱により基板が膨張するため、ソース電極とドレイン電極との間の位置関係を制御することは、さらに困難である。加えて、横型有機TFTをディスプレイの駆動素子として用いる場合、画素の大きさに対する駆動用トランジスタの面積の割合が決まっているため、W/Lの値が制限され、容易に大きくすることはできない。
【0011】
また、ゲー卜電極とソース電極又はドレイン電極の互いに対向して重なる部分は、有機トランジスタの負荷容量(以下、寄生容量と呼ぶ)を形成する。このようなゲー卜電極とソース電極又はドレイン電極の互いに対向して重なる部分が大きい場合には、ゲートに加えた入力信号が、この寄生容量を形成している部分を通して出力側の電極に抜けてしまう「突き抜け電圧」が生じる原因となり好ましくない。しかしながら、ゲー卜電極とソース電極又はドレイン電極の互いに対向して重なる部分が全くなく、ゲー卜電極とソース電極又はドレイン電極が離れて配置されている場合には、チャネルを通じてソース−ドレイン電流が流れなくなってしまう。したがって、ゲート電極とソース電極又はドレイン電極の対向して重なる部分はゼロ以上であって、なおかつ極力小さくする必要がある。しかしながら、横型有機TFTにおいては、ゲート電極に対するソース電極又はドレイン電極の横方向における位置決め精度は限界があるため、ゲート電極とソース電極又はドレイン電極の対向して重なる部分を小さく調節することは困難である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述した横型有機TFTにおける問題を解決する手段として、有機TFTのチャネルを、基板と平行な方向、即ち横方向に設けるのではなく、基板と垂直な方向、即ち縦方向に設けることが有望である。このようなチャネルを縦方向に設けた有機TFTは、縦型有機TFTと呼ばれる。縦型有機TFTでは、堆積する膜の厚さが時間に比例するため、縦方向の膜の厚さを、精度良く、数ナノ・メートルの単位で制御することができる(堆積速度:1nm/s以下)。よって、有機半導体層の縦方向の厚さを精度良く調節することができる。このようにして、膜の厚さの制御が容易である縦方向にチャネルを形成することで、チャネル長Lを短くすることができる。また、この場合には、横型有機TFTにおけるゲート電極とソース電極又はドレイン電極との相対的な精密な位置合わせは必要ない。
【0013】
縦型有機TFTの具体例として、工藤一浩、飯塚正明、国吉繁一、田中国昭:信学技報OME98−50(1998−07)は、Static Induc−tion Transistor(SIT)を開示する。図5に示すSITは、ゲート電圧を印加してソース電極及びドレイン電極間に流れる電流を妨げる縦型有機TFTである。このSITは、縦型有機TFTであるが、有機半導体として銅フタロシアニン(CuPc)
【0014】
【化2】
を使用している。このSITのキャリア移動度は10−3cm2/Vs程度と小さく、また、大きな漏れ電流がある、及び電流−電圧特性における飽和特性を示さない等の問題がある。
【0015】
また、Jan Hendrik
【0016】
【外1】
Hong Meng&Zhenan Bao、Nature Vol.413 pp713−715(2001)には、Self−Assembled Monolayer(SAM)を半導体層とした縦型有機トランジスタを開示する。図6に示すように、この縦型有機トランジスタは、基板とゲート電極が一体となって、ゲート電極が基板も兼ねており、基板を兼ねたゲート電極は、高濃度のドーパントを有するシリコンで形成されている。基板を兼ねたゲート電極の表面には、熱酸化法により二酸化ケイ素の絶縁膜が形成され、この絶縁上に金で形成されたソース電極が配置されている。ソース電極の上には、SAMの半導体層、ドレイン電極が順次積層されている。この縦型有機トランジスタは、上述のSITと異なり、電流−電圧特性における飽和特性を示す。しかしながら、この縦型有機TFTは、基板を兼ねたゲート電極とソース電極とが、絶縁層を挟んで、ソース電極の面積分だけ対向して重なり合っている。また、ゲート電極が絶縁膜を挟んでドレイン電極と、ドレイン電極の基板と垂直な面の面積分だけ対向して重なり合っている。よって、この縦型有機TFTは、寄生容量が大きく、突き抜け電圧が発生してしまう。
【0017】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタ及び該有機トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、有機トランジスタにおいて、絶縁体で形成された基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体層を有し、前記ソース電極、前記有機半導体層、及び前記ドレイン電極は、前記基板と垂直方向に積層され、前記有機半導体層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に配置され、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記有機半導体層は、前記ゲート絶縁膜に隣接し、該ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向することを特徴とする。
【0019】
請求項1記載の発明によれば、絶縁体で形成された基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体層を有し、前記ソース電極、前記有機半導体層、及び前記ドレイン電極は、前記基板と垂直方向に積層され、前記有機半導体層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に配置され、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記有機半導体層は、前記ゲート絶縁膜に隣接し、該ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向するので、寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタを提供することができる。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の有機トランジスタにおいて、前記絶縁体は、ガラス又は樹脂であることを特徴とする。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、前記絶縁体は、ガラス又は樹脂であるので、前記絶縁体がガラスである場合には、有機トランジスタをディスプレイなどに使用することができ、前記絶縁体が樹脂である場合には、フレキシブルで割れにくく、軽量な有機トランジスタを形成することができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の有機トランジスタにおいて、前記絶縁体が樹脂である場合であって、前記樹脂に少なくとも水分が侵入することを防止するブロック層は、前記基板に設けられることを特徴とする。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、前記樹脂に少なくとも水分が侵入することを防止するブロック層は、前記基板に設けられるので、ゲート電極を陽極酸化する場合には、ゲート電極と基板の間に水溶液が浸透してゲート電極が基板から剥離することを防止することができる。また、有機トランジスタを空気中に放置したときに、有機半導体層に水蒸気が侵入することを防止して、有機トランジスタの性能を保持することができる。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3いずれか1項記載の有機トランジスタにおいて、前記有機半導体層の前記ゲート絶縁膜に隣接する面は、前記基板に対して斜面であることを特徴とする。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、前記有機半導体層の前記ゲート絶縁膜に隣接する面は、前記基板に対して斜面であるので、有機半導体層を容易に堆積させることができる。また、チャネル長が同じ有機トランジスタにおける素子の厚さを薄くすることができる。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の有機トランジスタにおいて、前記有機半導体層の材料は、ペンタセンであることを特徴とする。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、前記有機半導体層の材料は、ペンタセンであるので、キャリア移動度の高い有機トランジスタを提供することができる。
【0028】
請求項6記載の発明は、有機トランジスタの製造方法において、絶縁体で形成された基板上にゲート電極を形成するステップと、前記ゲート電極の表面を陽極酸化法によって酸化し、ゲート絶縁膜を形成するステップと、前記基板上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第一の電極を形成するステップと、前記第一の電極上に前記ゲート絶縁膜に隣接する有機半導体層を形成するステップと、前記有機半導体層上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第二の電極を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0029】
請求項6記載の発明によれば、絶縁体で形成された基板上にゲート電極を形成するステップと、前記ゲート電極の表面を陽極酸化法によって酸化し、ゲート絶縁膜を形成するステップと、前記基板上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第一の電極を形成するステップと、前記第一の電極上に前記ゲート絶縁膜に隣接する有機半導体層を形成するステップと、前記有機半導体層上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第二の電極を形成するステップと、を含むので、寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタの製造方法を提供することができると共に、ゲート絶縁膜を容易に形成することができる。また、ガラスや樹脂のような耐熱性の低い基板を使用する場合でも、基板を劣化させることなく酸化膜を形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0031】
本発明の有機トランジスタにおける第一の実施形態を図1と共に説明する。図1は、本発明の第一の実施形態における有機トランジスタの構成を示し、(a)は、基板と反対側からみた平面図、(b)は、(a)の線A−A’に沿った断面図である。まず、本発明の第一の実施形態における有機トランジスタの構成について説明する。本発明の第一の実施形態における有機トランジスタは、絶縁体で形成された基板1上に、ゲート電極2、ソース電極3、ドレイン電極4、ゲート絶縁膜5、有機半導体層6、及びゲート電極コンタクト7を構成要素として含む。ソース電極3、有機半導体層6、及びドレイン電極4は、基板1と垂直方向に積層され、有機半導体層6は、ソース電極3及びドレイン電極4の間に配置される。図1では、基板1上にソース電極2が形成されているが、基板1上にドレイン電極を形成し、有機半導体層6上にソース電極2を積層させてもよい。ソース電極3、ドレイン電極4、及び有機半導体層6は、それぞれ基板1と垂直な側面でゲート絶縁膜5に隣接し、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極2に対向する。ゲート電極2の上面におけるゲート絶縁膜5には、コンタクトホールが設けられ、ゲート電極コンタクト7が形成されている。図1においては、有機半導体層6が直方体の形状をしており、有機半導体層6の基板1に垂直な四つの平面のうち一面がゲート絶縁膜5に隣接している。しかしながら、有機半導体層6の少なくとも一部がゲート絶縁膜5に隣接すればよく、例えば、ゲート電極2及びゲート絶縁膜5が凹形状に形成され、有機半導体層6が直方体の形状をしており、有機半導体層6の基板1に垂直な四つの平面のうち三面がゲート絶縁膜5に隣接してもよい。有機半導体層6のゲート絶縁膜5に隣接する部分が多いほど、多くのソース−ドレイン電流を流せるので好ましい。
【0032】
次に、本発明の第一の実施形態における有機トランジスタの動作について説明する。例として有機半導体層6がp型半導体である場合について説明する。ソース電極3をゼロ電位、ドレイン電極4をマイナスの電圧(−10V)を印加する。ゲート電極2は、ゲート電極コンタクト7を介して外部のゲート信号発生器に接続される。ゲート信号によってゲート電極2にマイナス電圧を印加すると、プラスの電荷を持つホールが、ソース電極3から注入され、有機半導体層6のゲート絶縁膜5との界面にプラスの電荷が誘起され、チャネルが形成される。この誘起されたプラスの電荷が、ソース電極3及びドレイン電極4の間に働く電界によって、図1(b)の矢印に示すように、ソース−ドレイン電流として、有機半導体層6のゲート絶縁膜5との界面(チャネル)を流れる。即ち、チャネルが基板と垂直方向に形成され、ソース−ドレイン電流は、有機半導体層6のゲート絶縁膜5に沿って縦方向に流れる。
【0033】
次に発明の第一の実施形態における有機トランジスタの製造工程について説明する。石英の基板1上に厚さ600nmのn型にドープしたシリコンをゲート電極2として堆積させた後、熱酸化法によってゲート電極2の表面を酸化してゲート絶縁膜5として厚さ80nmのSiO2層を成膜する。ゲート絶縁膜5の酸化は、1150℃の温度で、2.5l/分で約11.5分間ドライO2をシリコンに送ることによって行われる。ゲート電極2の上面におけるゲート絶縁膜5にさらに厚さ1マイクロmのフィールド酸化膜を堆積させた後、外部からゲート信号を印加するためのコンタクトホールを形成後、ゲート電極コンタクト7をゲート電極2と接続する。ソース電極3として厚さ100nmの金を蒸著し、その上に厚さ400nmの有機半導体を蒸者して有機半導体層6を形成する。半導体として、フタロシアニン金属錯体化合物である銅フタロシアニン(CuPc)を用いる。最後にドレイン電極4として厚さ200nmの金を堆積させる。
【0034】
ゲインに関係するチャネル長とチャネル幅は、それぞれ、図1(b)における有機半導体層の厚さLの300nmであり、図1(a)における幅Wの5マイクロmである。このように、有機半導体層の厚さでチャネル長Lを制御できるため、1マイクロm以下のチャネを容易に形成することができ、ゲインを大きくすることができる。図1に示す縦型有機TFTにおいては、(1)式におけるW/Lは、16.7という大きな値が得られる。
【0035】
ここで、ソース電極3及びドレイン電極4の基板1と垂直な側面は、ゲート絶縁膜5の基板1と垂直な側面と接するか、又は近接する(まとめて「隣接する」ということにする)。ゲート電極2とソース電極3又はドレイン電極4との対向する重なり部分の大きさは、ソース電極3又はドレイン電極4の膜厚であるので、非常に小さい。ゲート電極2とソース電極3との対向する重なり部分の大きさは、ここでは、ソース電極3の厚さ200nmに相当し、横方向にチャネルを形成する場合と比較して非常に小さい値となる。このように、ゲート電極2とソース電極3又はドレイン電極4との間の寄生容量を減少させることができ、本発明の有機トランジスタは、安定な動作をする。
【0036】
次に、本発明の有機トランジスタを、図5に示す従来技術によるSITと比較する。従来の縦型有機トランジスタの一つであるStatic Induction Transistor(SIT)においては、チャネルが、ソース電極及びドレイン電極間に挟まれた有機半導体層全体であるのに対して、本発明の有機トランジスタは、チャネルが有機半導体層のゲート絶縁膜との界面のみにある。SITは、有機半導体層中に網目状に置かれたゲート電極によってソース−ドレイン間電流を制御する。チャネルを太くして多くの電流を流せることがSITの特長であるが、ゲート電極の網目の間隔glを小さくしないと、オフ時の漏れ電流を充分小さくできない。このためSITの性能を向上させるためには、ゲート電極の微細加工が必要となってしまう。このようにSITが3極真空管のような動作をするのに対して、本発明の有機トランジスタは、有機半導体層のゲート絶縁膜との界面だけで電流を制御するため、漏れ電流を小さくするすることができ、SITにおけるゲート電極の微細加工などを要せず、高いゲインを得ることができる。
【0037】
また、ゲート電圧を高くすると流れているソース−ドレイン電流を減少させるSITは、電圧−電流特性において飽和特性(定電流特性)を示さない。これに対して、本発明の有機トランジスタは、ゲート電圧を印加しないときには電流がゼロであり、ゲート電圧を増加させていくに従い多くの電流が流れる。本発明の有機トランジスタは、電圧−電流特性において飽和特性を示すので、制御しやすい。
【0038】
次に、本発明の有機トランジスタを、図6に示す従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタと比較する。従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタは、基板とゲート電極が一体としているため、ゲート電極が絶縁膜を挟んでソース電極の面積分だけ対向して重なり合っている。また、ゲート電極が絶縁膜を挟んでドレイン電極と、ドレイン電極の基板と垂直な面の面積分だけ対向して重なり合っている。よって、従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタは、寄生容量が大きく、突き抜け電圧が発生し、このトランジスタの動作が不安定となる。本発明の有機トランジスタは、ゲート電極とソース電極又はドレイン電極の対向して重なる部分の大きさが、ソース電極の厚さに相当するので小さく、寄生容量が小さい。よって本発明の有機トランジスタでは、突き抜け電圧の発生が少ないため、トランジスタの動作が安定する。
【0039】
次に本発明の有機トランジスタにおける第二の実施形態を説明する。本実施形態の有機トランジスタでは、ゲート絶縁膜を陽極酸化で形成する。本実施形態の有機トランジスタの製造方法を以下に示す。ガラス基板に厚さ500nmのタンタル(Ta)をゲー卜電極としてスパッタリング法により堆積させる。次に、1重量%のホウ酸アンモニウム溶液中で、ゲート電極のTaを陽極として、陰極との間に電流を流して陽極酸化を行う。このとき、次の反応
2Ta+5H2O → Ta2O5十10H+十e−
が起こり、五酸化二タンタル(Ta2O5)のゲート絶縁膜がゲート電極の表面に形成される。電極間に流す電流の値は、最初は一定(0.1〜0.25mA/cm2)とし、電極間の電圧が設定値70Vに達した後は、電流値を制御して70Vの一定電圧を保つ。これは試料の外部と内部とでは化成の進行が異なるため、緻密で絶縁性の良い膜とするためには十分な化成を行う必要があるためである。 電流値が徐々に減少してゆき安定した後、化成を終える。ゲート電極を陽極酸化した後、ゲート電極及びゲート絶縁膜が形成された基板を純水で洗浄し、100℃程度で乾燥させる。ゲート絶縁膜の厚さは、この設定電圧値によって精度よく制御することができ、上記の70Vの電圧では、ゲート絶縁膜の厚さは129nmであった。次にソース電極として金(Au)の薄膜を真空蒸着法によって蒸着した後、有機半導体層を真空蒸着法により形成する。この真空蒸着は、抵抗加熱法で行い、チャンバー内の圧力は、10−5Paで、基板の温度は、室温から100度の間である。有機半導体層の厚さは、300nmである。最後にドレイン電極として金(Au)の薄膜を、金属マスクを用いて、真空蒸者法によって形成する。なお、基板に透明なガラスを用いることで、本発明の有機トランジスタをディスプレイなどに使用することができる。
【0040】
本実施例の有機トランジスタは、図6に示す従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタと異なり、ゲート絶縁膜をゲート電極の陽極酸化で形成する。従来のSAMを有機半導体層とする縦型有機トランジスタでは、ゲート絶縁膜をゲート電極の熱酸化により形成している。熱酸化法によりゲート絶縁膜を形成するためには、1000度以上の高温が要求される。本実施例のような陽極酸化法によるゲート絶縁膜の形成は、低温又は室温で実施することができるので、ゲート電極の表面を酸化してゲート絶縁膜を形成することが容易である。またガラスや樹脂のような耐熱性の低い基板を使用する場合でも、陽極酸化法を使用することによって、基板を劣化させることなく基板上の金属薄膜の表面に酸化膜を形成することができる。
【0041】
次に本発明の有機トランジスタにおける第三の実施形態を図2と共に説明する。図2は、本発明の第三の実施形態における有機トランジスタの断面図である。本実施形態の有機トランジスタでは、ポリカーボネートなどの樹脂の基板1を使用している。樹脂の基板1を使用することで、フレキシブルで割れにくく、軽量な有機トランジスタを形成することができる。
【0042】
この場合、ゲート電極2の陽極酸化によってゲート絶縁膜5を形成するときに水溶液が樹脂基板1を通じてゲート電極2と基板1の間に浸透する可能性がある。よって、ゲート電極2と基板1の間に水溶液が浸透することを防止するため、二酸化ケイ素(SiO2)のような無機物からなるブロック層8を基板1上に設けている。これにより、ゲート電極2を陽極酸化するときに、ゲート電極2と基板1の間に水溶液が浸透して金属のゲート電極2が基板1から剥離することを防止することができる。また、ブロック層8は、有機トランジスタを空気中に放置したときに、性能が水蒸気(湿気)に影響を受けやすい有機半導体層6に水蒸気が侵入することを防止して、有機トランジスタの性能を保持する。
【0043】
次に本発明の有機トランジスタにおける第四の実施形態を図3と共に説明する。図3は、本発明の第四の実施形態における有機トランジスタの構成を示し、(a)は、基板と反対側からみた平面図、(b)は、(a)の線B−B’に沿った断面図、(c)は、有機分子ペンタセンの配向を示す図である。
【0044】
本発明の有機トランジスタにおける有機半導体の有機分子には、銅フタロシアニンやペンタセンを使用する。銅フタロシアニンは、比較的導電性の低い分子であるが、分子構造が円盤形状である。よって、縦型有機トランジスタでは、分子平面がチャネルを形成する面に対して垂直に積層する、つまり、分子平面が基板に対して平行になる。よって、銅フタロシアニンを有機半導体として使用した場合には、10−3cm2/Vs程度の小さいキャリア移動度を示す。これに対してペンタセンは、比較的導電性が高く、分子構造は細長い楕円形状である。また、ペンタセンは、分子平面が基板に対して垂直になる傾向がある。よって、横型有機トランジスタにおける有機半導体の有機分子としてペンタセンを使用した場合には、ペンタセンは、チャネルの方向に積層するので、キャリア移動度が高くなる(0.5cm2/Vs程度)。しかしながら、チャネルが基板に対して垂直に形成される縦型有機トランジスタにおける有機半導体の有機分子としてペンタセンを使用した場合には、ペンタセンは、チャネルの方向に対して垂直に積層するので、キャリア移動度は小さくなる。
【0045】
そこで、本実施形態の有機トランジスタにおいては、図3(b)に示すように、有機半導体層6側のゲート電極2及びゲート絶縁膜5の壁面を斜面にする。即ち、本実施形態の有機トランジスタにおいては、基板1上にゲート電極2を堆積させた後、ゲート電極2の有機半導体層6側の壁面を斜面に形成する。その後、ゲート電極の表面を酸化して、ゲート絶縁膜5を形成する。さらに、基板1上に、ゲート電極2に対向すると共にゲート絶縁膜5の斜面に隣接して、ソース電極3、有機半導体層6、ドレイン電極4を積層する。なお、図3においては、ゲート絶縁膜5は、有機半導体層6の三方向の側面と隣接しており、ソース−ドレイン電流は、この三方向の側面即ち斜面に沿って流れる。即ちこの有機半導体層6の三方向の斜面にチャネルが形成される。
【0046】
有機半導体層に面するゲート絶縁膜が基板に対して垂直である場合には、そのゲート絶縁膜上に有機半導体の分子を密着させることは困難である。しかしながら、本実施形態のようにゲート電極2及びゲート絶縁膜5に斜面が形成されていると、有機半導体層6を蒸着によって堆積させる際に、有機分子がゲート絶縁膜5の斜面に密着し易いので、有機半導体層6を容易に堆積させることができる。
【0047】
また、チャネル長が有機半導体層6の側面即ち斜面に沿ったソース電極及びドレイン電極間の距離であるので、チャネル長が同じであれば、ゲート電極2及びゲート絶縁膜5の基板1に対する角度が緩やかであるほど、基板1に対して垂直方向の有機半導体層6の厚さが薄くなる。ただし、同時に、基板1に対して水平方向の有機半導体層6の面積は広くなる。よって、有機トランジスタの素子における有機半導体層の面積の占める割合の範囲内で、有機半導体層6側におけるゲート電極2及びゲート絶縁膜5の壁面を斜面とすることで、有機トランジスタの素子の厚さを薄くすることができる。
【0048】
さらに、有機半導体層6側におけるゲート電極2及びゲート絶縁膜5の壁面を斜面とすることで、図3(c)における細長い楕円形状の有機分子ペンタセン6’の配向を制御することができる。図3(c)に示すように、ペンタセン6’は、ソース電極3上で分子平面が基板1に対して垂直になるように配列する。ゲート絶縁膜5の壁面が基板1に対して垂直であるとすると、チャネルを形成する有機半導体層6の側面も基板1に対して垂直になり、ペンタセン6’は、チャネルに対して水平方向に配列し、キャリア移動度が減少する。しかしながら、本実施形態のように、有機半導体層6側のゲート絶縁膜5の壁面が、基板1に対する斜面であるとすれば、ペンタセン6’は、チャネルを形成する斜面に対して水平な方向から傾いて配列する。このため、チャネルの方向が基板に対して垂直である場合と比較して、チャネルを形成する斜面上で複数のペンタセン6’のπ電子軌道の重なりが増加し、有機トランジスタのキャリア移動度を高めることができる。
【0049】
以上、本発明を説明するため実施形態を示してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、あらゆる実施形態の組み合わせや種々の応用ができることは言うまでもない。例えば、本発明の第四の実施形態において、陽極酸化法を用いてゲート絶縁膜を形成したり、基板を樹脂で形成してその基板上にブロック層を設けてもよい。また、本実施形態では、基板上にソース電極を形成するとしたが、基板上にドレイン電極を形成し、有機半導体層を挟んで対向する電極をソース電極としてもよい。即ち、基板側に向ってソース−ドレイン電流を流してもよい。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、寄生容量が小さく、短いチャネル長を精度良く形成でき、電流−電圧特性において飽和特性を示す有機トランジスタ及び該有機トランジスタの製造方法を提供することができる。
【0051】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態における有機トランジスタの構成を示す図であり、(a)は、基板と安泰側からみた平面図、(b)は、(a)の線A−A’に沿った断面図である。
【図2】本発明の第三の実施形態における有機トランジスタの断面図である。
【図3】本発明の第四の実施形態における有機トランジスタの構成を示す図であり、(a)は、基板と反対側からみた平面図、(b)は、(a)の線B−B’に沿った断面図、(c)は、有機分子ペンタセンの配向を示す図である。
【図4】従来の横型有機トランジスタの断面図である。
【図5】従来の縦型有機トランジスタの一つであるSITの図である。
【図6】従来のSAMを有機半導体層とした縦型有機トランジスタの図である。
【符号の説明】
1 基板
2 ゲート電極
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート絶縁膜
6 有機半導体層
6’ 有機分子(ペンタセン)
7 ゲート電極コンタクト
8 ブロック層
Claims (6)
- 絶縁体で形成された基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体層を有し、
前記ソース電極、前記有機半導体層、及び前記ドレイン電極は、前記基板と垂直方向に積層され、
前記有機半導体層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に配置され、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記有機半導体層は、前記ゲート絶縁膜に隣接し、該ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向することを特徴とする有機トランジスタ。 - 前記基板は、ガラス又は樹脂であることを特徴とする請求項1記載の有機トランジスタ。
- 前記基板が樹脂である場合であって、
前記樹脂に少なくとも水分が侵入することを防止するブロック層は、前記基板に設けられることを特徴とする請求項2記載の有機トランジスタ。 - 前記有機半導体層の前記ゲート絶縁膜に隣接する面は、前記基板に対して斜面であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の有機トランジスタ。
- 前記有機半導体層の材料は、ペンタセンであることを特徴とする請求項4記載の有機トランジスタ。
- 絶縁体で形成された基板上にゲート電極を形成するステップと、
前記ゲート電極の表面を陽極酸化法によって酸化し、ゲート絶縁膜を形成するステップと、
前記基板上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第一の電極を形成するステップと、前記第一の電極上に前記ゲート絶縁膜に隣接する有機半導体層を形成するステップと、
前記有機半導体層上に前記ゲート絶縁膜に隣接する第二の電極を形成するステップと、を含むことを特徴とする有機トランジスタの製造方法。
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---|---|---|---|
JP2002170235A JP2004015007A (ja) | 2002-06-11 | 2002-06-11 | 有機トランジスタ及びその製造方法 |
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Cited By (3)
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JP2005167164A (ja) * | 2003-12-05 | 2005-06-23 | Mitsui Chemicals Inc | トランジスタ及びその作製方法 |
JP2006100618A (ja) * | 2004-09-30 | 2006-04-13 | Sony Corp | 半導体装置及びその製造方法 |
WO2010016331A1 (ja) | 2008-08-05 | 2010-02-11 | 東レ株式会社 | デバイスの製造方法 |
-
2002
- 2002-06-11 JP JP2002170235A patent/JP2004015007A/ja active Pending
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