JP2004014649A - セラミックス基板とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来より微小な突起電極の形成が可能な、突起電極を有するセラミックス基板を安価に提供する。
【解決手段】低温焼成セラミックス材料からなる少なくとも1層の第1グリーンシート210, 220, 230、焼結温度が第1グリーンシートより高く、突起電極形成用の貫通孔を形成した第2グリーンシート12、および焼結温度が同様に高い第3グリーンシート11, 13を用意し、第2グリーンシートの貫通孔は空のまま、外側に第3グリーンシートを配して上記グリーンシートを積層し、積層体を加圧しながら焼成して、第1グリーンシートと導体ペーストを焼結させた後、焼結しない第2グリーンシートと第3グリーンシートを除去する。焼成中に、第2グリーンシートの空の貫通孔内に、流動化したセラミックス材料が、その上に形成された電極用導体層を押しながら流入して孔を充填することで、表面が導体層、内部がセラミックスからなる、高さが揃った突起電極50が形成される。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子や電子部品などと接続して電気回路を構成するセラミックス基板、特に突起電極 (バンプ)といった微小突起部を有するセラミックス基板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の高集積化や電子部品の小型化に伴い、半導体素子、半導体パッケージおよび回路基板の外部端子密度は増大傾向にある。このため、端子を格子状にして基板主面に形成し、端子密度を増大させた端子構造・実装構造が盛用されている。例えば、半導体素子であればフリップチップ実装が、半導体パッケージであればBGA(Ball Grid Array)パッケージや、それを小型化したCSP(Chip Scale Pakage)が挙げられる。
【0003】
これらはいずれも、基板回路上に形成された突起電極を介して、外部回路と接続される。突起電極は、基板回路を形成した後に別に形成する必要がある。例えば、BGAでは、基板回路を形成した後、半田ボールを格子状に基板の電極上に配置し、電極に融着させる。この別工程が加わるためコストが高く、また半田ボールの大きさが不揃いであると、接続不良を生ずるという問題があった。
【0004】
これらの問題点を解決するセラミックス基板の製造方法が特開平6−53655号公報に開示されている。この製造方法について、図5を参照しながら説明する。なお、同様の方法は、特開平7−202422号公報にも開示されている。
【0005】
まず、焼結してセラミックス基板となる第1グリーンシート210, 220, 230と、該グリーンシートの焼結温度では焼結しない未焼結シート11, 12, 13を用意する [図5(a)]。これらの未焼結シートは、焼結温度が第1グリーンシートより高い第2グリーンシートである。内側の未焼結シート12には、突起電極 (バンプ)形成用の貫通孔 (ホール)10を、第1グリーンシート210, 220には、ビア形成用の貫通孔215, 225を、それぞれ形成する [図5(b)]。これらの貫通孔に導体ペースト5を充填する [図5(c)]。次に、各グリーンシートに回路形成用導体ペースト層59を形成する [図5(d)]。第1グリーンシートと未焼結シートとを重ね合わせて熱圧着し、得られた積層体を焼成する [図5(e)]。この焼成で、焼結温度が高い未焼結シート11, 12, 13は焼結しないが、第1グリーンシート210, 220, 230と、回路形成用導体ペースト59および貫通孔内の導体ペースト5は焼結し、それらの隣接部材間も接合される。最後に、未焼結シートを除去すると、配線回路59、ビア20、および柱状の突起電極50を有するセラミックス回路基板2が得られる [図5(f)]。未焼結シートは、焼成時にそのグリーンシートからバインダーが消失しているため、ハケで簡単に除去することができる。
【0006】
この方法によれば、グリーンシート多層積層法によるセラミックス基板の製造において、突起電極50をその製造工程内で同時に形成することができるので、突起電極を有するセラミックス回路基板を従来より低コストで製造することが可能となる。また、突起電極形成用の貫通孔10は同じ高さを有するので、これに導体ペースト5を均一に充填することで、突起電極の高さをそろえることが可能となり、高さの不揃いによる接続不良も解消される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した突起電極つきセラミックス基板の製造方法において、突起電極形成用の貫通孔10への導体ペースト5の充填方法は、スキージを用いたスクリーン印刷によって埋めて行く方法が一般的である。一般に、スクリーン印刷で形成できる突起電極の寸法 (直径)は、量産レベルで100μm、実験室レベルでも50μmが限界であり、これより小さい突起電極はスクリーン印刷では形成できない。
【0008】
また、セラミックス基板は、基板よりはるかに大きいパネル単位で製造される。1枚のパネルの大きさは、通常100 mmから200 mm角である。従って、大きなパネルに無数に形成されている小さな貫通孔の全てに、導体ペーストを均等に充填することは実際には困難である。位置ずれによって導体ペーストが貫通孔からはみ出すと、隣接した電極と短絡する危険性が増す。
【0009】
本発明は、すぐ上に述べた問題点を解消して、微小な突起電極、より一般的には微小突起部を有するセラミックス基板を安価に製造する方法と、こうして得られるセラミックス基板を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、突起電極はその表面だけが導電性であれば目的を達成できることに着目した。即ち、前述した方法では、銀等の導体粉末を主成分とする高価な導体ペーストを貫通孔に充填することにより、全体が導体からなる柱状の突起電極を形成しているが、突起電極の全体を導体とする必要性はない。
【0011】
そこで、前述した方法において、未焼結シートの突起電極形成用の貫通孔に導体ペーストを充填せず、積層体の焼成を加圧下で行ったところ、焼成中に流動化した基板セラミックス材料が貫通孔内に流入して、セラミックスの微小突起部を形成できることを見いだした。その際に、前述した方法と同様に、未焼結シートの貫通孔とグリーンシートとの間に回路形成用の導体ペースト層を存在させると、貫通孔内に流入するセラミックスがこの導体層を内部に押し込んで、表面が導体層で覆われた微小突起部が生成する。こうして、内部はセラミックスで、表面だけが導体層からなる突起電極を持つセラミックス基板を効率よく製造することができる。
【0012】
本発明により、下記工程を含むことを特徴とする、主面に微小突起部を有するセラミックス基板の製造方法が提供される:
(1) セラミックス基板となる少なくとも1層の第1グリーンシートと、焼結温度が第1グリーンシートより高く、かつ1または2以上の孔を設けた第2グリーンシートとを用意する工程、
(2) 第2グリーンシートの孔が第1グリーンシートに面するように第1グリーンシートと第2グリーンシートとが積層された積層体を形成する工程、
(3) 積層体を、その主面に対して概ね垂直方向に加圧しながら、第1グリーンシートが焼結し、第2グリーンシートが焼結しない温度で焼成する工程、及び
(4) 第2グリーンシートを除去して、主面に微小突起部を有するセラミックス基板を得る工程。
【0013】
ここで、「概ね垂直方向」とは、垂直に加圧するのに必要な垂直分力を得ることができれば、加圧自体の方向は垂直から少し傾いていてもよいことを意味している。表面の粗さや、加圧に使われる板等の重さにより、許容される垂直からの傾斜の範囲は変動し、一律に規定できないので、本発明では概ね垂直方向と記している。
【0014】
上記方法の好適態様は次の通りである。
・工程(1)で用意する第2グリーンシートに設けた孔が貫通孔である、
・工程(2)で形成された積層体が、少なくとも第2グリーンシートに接する側の外面に、前記焼成温度では焼結しない材質の第3グリーンシートが積層された積層体である、
・工程(2)で形成された積層体が、その積層方向の外層として、前記焼成温度では焼結しない材質の第3グリーンシートが積層された積層体である、
・工程(1)で用意する第1グリーンシートの少なくとも一部が、その表面に導体形成層を有している、
・工程(2)での積層後に第2グリーンシートと接することになる第1グリーンシートの表面が、第2グリーンシートに設けた孔に対応する位置に導体形成層を有しており、それにより導体層で被覆された微小突起部からなる突起導電部を有するセラミックス基板が製造される、
・突起導電部が突起電極である、および/または
・工程(1)で用意する第1グリーンシートの少なくとも一部が、導体ペーストが充填された1または2以上の貫通孔を有する。
【0015】
本発明によればまた、基板の隆起により形成されたセラミックスの微小突起部と、この微小突起部に密着し、これを被覆する導体層、とから構成される突起電極を有することを特徴とする、セラミックス基板も提供される。
【0016】
本発明において、「突起導電部」とは、突起電極 (バンプ)に加え、配線も含む意味である。以下では、突起導電部を突起電極で代表させて、本発明を説明する。
【0017】
また、本発明において、焼結温度とは、見かけ密度が、その焼結多結晶体の理論最高密度の90%以上になるのに必要な最低の焼成雰囲気温度である。見かけ密度は「アルキメデス法」と一般に呼ばれる方法により測定できる。
【0018】
微小突起部の大きさは特に制限されないが、好ましくは径または最小幅が1mm以下である。本発明によれば、形成可能な微小突起部の最小径は、第2グリーンシートに適用する孔の形成手段およびグリーンシート厚みに依存する。即ち、スクリーン印刷を使用しないため、グリーンシートの孔形成が可能な最小径の微小突起部を形成することができるが、現状では、グリーンシート厚みが50μmの場合で、その最小径は30μm程度である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、再び図1〜図3を参照しながら、本発明の態様について説明する。但し、本発明は以下に説明する態様に制限されるものではない。
【0020】
まず、準備工程において、図1(a)に示すように、焼成後にセラミックス基板となる少なくとも1層の第1グリーンシート (図示例では、210, 220, 230の3層)と、焼結温度が第1グリーンシートより高く、第1グリーンシートを焼結させるための焼成工程で焼結しない、第2グリーンシート12を用意する。第2グリーンシート12は、突起電極形成に用いる。
【0021】
第1グリーンシートは、1000℃以下で焼結する低温焼成セラミックス基板材料から形成したものが好ましい。そのようなセラミックス材料の1例として、比較的多量のガラス成分を含有するガラスセラミックス材料が挙げられるが、これ以外の低温焼成セラミックス材料も使用可能である。
【0022】
突起電極形成用の第2グリーンシートは、第1グリーンシートより焼結温度が300℃以上高いものが好ましく、焼結温度が500℃以上高いものがより好ましい。第2グリーンシートは、突起電極を形成した後に除去されるので、安価な材料が好ましい。好ましい第2グリーンシートは、焼結温度が約1700℃と高く、安価なアルミナのグリーンシートである。第2グリーンシートに形成された孔が貫通孔である場合、形成される微小突起部の高さは第2グリーンシートの厚みと等しくなる。
【0023】
好適態様では、図示例のように、少なくとも1層の第3グリーンシート (図示例では、11, 13の2層)を用意する。この第3グリーンシートは、焼成中に焼結する第1グリーンシートや導体ペーストと、加圧用の押圧板との融着を防止する役割を果たす。第3グリーンシートは、第2グリーンシートと同様、焼結温度が第1グリーンシートより高く、焼成中に焼結しないものである。第3グリーンシートも焼成後に除去されるので、第2グリーンシートと同様、安価なアルミナのグリーンシートを使用することが好ましい。しかし、第2と第3グリーンシートは別の材質のものとすることができ、第3グリーンシートが図示のように2層またはそれ以上の場合、互いに異なる材質のものでもよい。
【0024】
第2グリーンシートに形成された孔が貫通孔である場合には、この貫通孔に対する蓋となるように、第2グリーンシートの上に第3グリーンシートを積層することが好ましい。より好ましくは、第3グリーンシートは、積層体の積層方向 (積層体の主面に垂直の方向)において両側の外層、特に最外層を構成する位置、図示例では11および13に示す位置に配置する。
【0025】
本発明では、前記のように焼成を加圧下に行うため、焼成する積層体の構成が積層方向において非対称であっても、焼成中の反りが防止される。従って、図1(a)に示すように、例えばアルミナシートからなる第2および第3グリーンシートが、図面で上側には2層(11, 12)、下側には1層(13)と非対称の構成となったり、或いは下側の第3グリーンシート(13)を省略した非対称の構成となっても、反りが起こる心配はない。
【0026】
以上の第1、第2および第3グリーンシートは、常法に従って用意することができる。典型的なグリーンシートの作製法は、セラミックス原料粉末に、適当なバインダーおよび場合により他の添加剤 (例、可塑剤)を配合した混合物を、溶剤中で混練して、スラリーまたはペーストを作成し、このスラリーまたはペーストをドクターブレード法によりシート成形し、乾燥して溶剤の大部分を除去することからなる。
【0027】
第2グリーンシート12には、図1(b)に示すように、突起電極を形成するための孔10を設けておく。この孔は、もちろん基板に形成すべき電極位置に対応させる。孔の形状は、円柱状が普通であるが、角柱状でもよい。本発明において必須ではないが、図示のように、セラミックス基板となる第1グリーンシートの少なくとも一部にも、上下間の導通用のビアを形成するための貫通孔215, 225を形成する。これらの孔は、径が約50μm以上であれば、機械的な打ち抜きにより形成できる。
【0028】
本発明では、突起電極の形成に導体ペーストのスクリーン印刷を利用しないため、第2グリーンシートに形成する孔の最小径は50μmより小さくてもよい。そのような微小サイズの孔は、レーザー加工、またはグリーンシートに感光性を付与して露光・エッチングを行う方法により形成できる。
【0029】
突起電極形成のために第2グリーンシートに形成する孔は、図示のように貫通孔であることが好ましい。しかし、第3グリーンシート11を使用せずに、第2グリーンシート12を、図示のグリーンシート11と12を合体させた厚みのものとすることができ、その場合には、シート12に相当する厚みの部分だけに孔を形成する。この場合の孔は、合体した第2グリーンシート (11+12)を貫通しない。従って、必ずしも貫通孔でなくてもよい。
【0030】
第1グリーンシートにビア形成用の貫通孔215, 225を設けた場合、図2(a)に示すように、これらの貫通孔には導体ペースト5を、スクリーン印刷法等により充填しておく。しかし、本発明では、第2グリーンシートに形成した、突起電極形成用の孔10には、導体ペーストを充填せず、空のままとしておく。
【0031】
導体ペースト5は、第1グリーンシートの焼成中に焼結するものを使用する。好ましいのは、銀系 (例、Ag、Ag−Pd等)または銅系 (例、Cu)の導体粉末をバインダーと混合してペースト状にしたものである。
【0032】
本発明において必ずしも必須ではないが、図2(b)に示すように、セラミックス基板になる第1グリーンシート210, 220, 230には、最後に、基板に必要な配線回路を形成するための所定パターンの導体形成層 59を、例えば、導体ペーストのスクリーン印刷により形成しておく。
【0033】
但し、本発明に係る方法によって、表面が導体層で被覆さた微小突起物からなる突起電極を形成する場合には、積層後に第2グリーンシート12と接することになる第1グリーンシート210の表面には、第2グリーンシート12に設けた孔10に対応する位置に導体形成層59を形成しておく。この導体形成層59の大きさは、焼成後にセラミックスの微小突起部を覆うことができる大きさとする。即ち、加圧焼成時にはXY面内の収縮がないので、少なくとも孔10の直径より大きくすればよい。
【0034】
次に、第1グリーンシート210, 220, 230、第2グリーンシート12、および使用すれば第3グリーンシート11, 13を積層して、図3(a)に示す積層体を形成する。この積層は、各グリーンシートを所定の配置で、位置合わせを行いつつ重ね合わせ、バインダーが軟化または溶融する温度に加圧下で加熱保持し、グリーンシートを熱圧着させることにより行われる。
【0035】
図示のように、この積層体において、第2グリーンシートに設けた貫通孔は空のままである。これらの貫通孔は、第3グリーンシート11で蓋をされ、その下側には最上層の第1グリーンシート210の表面に形成された導体形成層が位置する。従来のセラミックス基板であれば、焼成後に、この導体層は平面状の電極パッドとして機能し、その上に突起電極、半田ボール等が接合される。しかし、本発明では、後で説明するように、この導体層が突起電極の表面を構成する。
【0036】
次に、この積層体を焼成する。焼成は、第1グリーンシートと導体ペーストは焼結するが、第2グリーンシートと第3グリーンシートは焼結しない温度で行う。低温焼成セラミックス基板の場合、1000℃以下の焼成温度が好ましい。この焼成前に、脱脂、即ち、バインダーや可塑剤等の有機成分の除去のための予備加熱を行うのが普通である。
【0037】
本発明では、この焼成を、積層体の主面に概ね垂直方向に加圧しながら行う。この加圧は、図3(a)に示すように、積層体の両側の主面を、適当なセラミックスまたは耐火金属製の押圧板101, 102を介して直接押圧し、積層体を上下方向から加圧することにより実施できる。
【0038】
焼成中、第1グリーンシートのセラミックス (即ち、基板を構成するセラミックス)は、焼結温度付近では、ある程度の流動性を有する状態になっている。焼成を上記のように加圧下で行うと、第2グリーンシートに設けた空の貫通孔10の中に、隣接する第1グリーンシート (図示例では210)の流動化したセラミックス材料が孔の奥まで流入して、この貫通孔10を充填する。貫通孔10と基板との間に導体層59が存在していても、この導体層は薄くて変形し易いため、セラミックスの流入圧力に抗することはできず、流入したセラミックスに押されて孔10内に移動し、孔内でセラミックスに密着してセラミックを覆う。
【0039】
その結果、焼成前は空であった第2グリーンシートの貫通孔10の中に、焼成後には、表面が導体層で覆われたセラミックスからなる微小突起部が存在する。この微小突起部は、表面が導体層で覆われているため、突起電極として十分に機能する。この微小突起部の内部セラミックス部分は、基板の流動化したセラミックス材料を加圧下で局部的に強制的に隆起させて形成したものである。
【0040】
第2グリーンシート12の孔10が貫通孔であっても、第3グリーンシート11が蓋の役割を果たす。そのため、本発明の方法では、第2グリーンシートに形成された孔と同じ高さの突起電極、即ち、高さが揃った突起電極、を形成することができる。
【0041】
このような結果を得るのに必要な焼成時の加圧力は、セラミックス材料や焼成条件等にも依存するが、3〜15 kgf/cm(3〜15×10Pa)程度であろう。加圧力が小さすぎるとセラミックスの流動効果が小さく、大きすぎるとグリーンシートが変形する恐れがある。焼成中の加圧は、反りや、主面と同方向の収縮を抑制するという別の利点もある。
【0042】
但し、第2グリーンシートの厚みが大きすぎると、加圧焼成により孔の奥まで完全にセラミックスを流入させるのに、過大な圧力が必要になる。また、孔内で形成される突起の高さが高くなりすぎて、加圧焼成時に導体が途中で切れてしまう恐れがある。以上の点から、孔の高さはその径と同程度以下とすることが好ましい。従って、第2グリーンシートの孔が貫通孔である場合、このシートの厚みは、シートに形成する貫通孔の径と同程度またはそれ以下とすることが好ましい。ちなみに、孔直径が50μm程度なら、少なくとも突起の高さが50μmぐらいまでは、焼成時に導体が切れることはないものと推察される。
【0043】
焼成により、第1グリーンシートと導体ペーストが焼結し、各第1グリーンシートはセラミックス基板のセラミックス層となり、第1グリーンシートの貫通孔に充填された導体ペーストはビアとなり、各第1グリーンシートの表面の配線回路用の導体形成層は導体層となる。また、焼結したセラミックス層、ビア、配線回路導体層の間は、焼結により接合される。
【0044】
一方、第2グリーンシートと第3グリーンシートは、焼成により焼結しないが、これらのグリーンシート中のバインダーや他の有機成分は熱分解により消失する。焼成の初期段階 (脱脂加熱を行う場合には脱脂中)において、各グリーンシートや導体ペーストから有機成分の熱分解により多量のガスが発生するので、それを効率よく炉外に除去する必要があるが、第2グリーンシートおよび第3グリーンシートは、焼成中に有機成分が除去されて気孔率が増大するので、発生したガスの除去を促進する。
【0045】
最後に、焼成中に焼結しなかったグリーンシート、即ち、第2グリーンシート12と、使用した場合には第3グリーンシート11, 13を除去する。これらのグリーンシートは、焼成中にバインダーが消失し、セラミックス粉末間の結合が失われているため、ハケで払うことにより簡単に除去できる。第2グリーンシートの孔10内に形成された微小突起部は焼結し、かつ基板と一体化しているため、除去されずに基板上に残る。ハケで除去しきれなかったセラミックス粉末は、超音波洗浄等の適当な洗浄法により除去することができる。
【0046】
こうして、図3(b)に示した回路基板2が得られる。この回路基板は、第1グリーンシートの焼結により形成されたセラミックス層21, 22, 23から構成され、セラミック層にはビア20と配線回路59を有し、片面の主面には突起電極50を有する。この突起電極50は、表面が導体層59で被覆されたセラミックスの微小突起部からなる。
【0047】
なお、導体層59を存在させずに、セラミックスのみからなる微小突起部を形成してもよい。従来は、径が30μmといった微小なセラミックスの突起部を、高さを揃えて所定配列でセラミックス基板に安価に形成する方法はなかった。
【0048】
本発明の方法は、半導体素子をパッケージ化するためのセラミックス回路基板(例、フリップチップ回路基板)、および半導体パッケージを実装するためのセラミックス回路基板のいずれにも、突起電極を形成するために適用することができる。
【0049】
【実施例】
(実施例1)
図1〜図3に示すように、本発明に従ってセラミックス基板を製造した。
【0050】
質量%でCaO−Al−SiO−B系ガラス60%とアルミナ40%との混合物よりなる低温焼成セラミックス基板材料 (焼結温度は900℃)の粉末に、溶剤、バインダー、および可塑剤を加え、混錬して、スラリーを作成する。次いで、常法のドクターブレード法を用いて、上記スラリーから厚み0.3 mmのグリーンシートを作成し、その3層を第1グリーンシート210, 220, 230として使用する。
【0051】
別に、アルミナ粉末 (焼結温度は1700℃)をバインダーと混合し、ペースト状にする。このペーストから常法のドクターブレード法を用いて、厚み0.1 mmのグリーンシートを作成し、その3層を、第2グリーンシート12および第3グリーンシート11, 13として使用する [以上、図1(a)]。
【0052】
これらのグリーンシートのうち、図1(b)に示すごとく、2層の第1グリーンシート210, 220と、突起電極形成用の第2グリーンシート12には、それぞれ円筒形の貫通孔215, 225および貫通孔10を形成する。これらの貫通孔の直径はいずれも300μm (0.3 mm)である。次いで、図2(a)に示すごとく、第1グリーンシートの貫通孔215, 225だけに導体ペースト5をスクリーン印刷法により充填する。使用した導体ペーストは、銀系導体 (焼結温度910℃)とバインダーとを混合してペースト状にしたものである。
【0053】
その後、図2(b)に示すごとく、第1グリーンシート210, 220, 230の上に配線パターン59を導体ペーストを用いてスクリーン印刷法により形成する。
次に、積層工程において、図3(a)に示すごとく、下から順に、第3グリーンシート13、基板形成用の第1グリーンシート230, 220, 210、突起電極形成用の第2グリーンシート12、突起電極の蓋の役目もする第3グリーンシート11を、位置合わせを行いつつ重ねてから、熱圧着して、積層体を得る。熱圧着の条件は、温度100℃、積層体の押圧力5×10Paであり、20秒間行う。
【0054】
次に、焼成工程において、第1グリーンシートと導体ペーストが焼結する、設定温度900℃、保持時間20分の条件で上記積層体を焼成する。この時同時に、図3(a)に示すように、上記積層体を上下から押圧用のアルミナ板101, 102で挟んで、7×10Paの力で、主面に概ね垂直方向に加圧する。こうして、第1グリーンシート230, 220, 210が焼結し、23, 22, 21の3層からなる多層セラミックス基板が形成され、第1グリーンシートの貫通孔内の導体ペーストも焼結してビア20が形成される。一方、焼成前は空孔であった第2グリーンシート12内の貫通孔10には、この中に配線パターン59を押しながらセラミックスが焼成中に流入することにより形成された突起電極が存在し、この突起電極は、表面が導体層で覆われ、内部がセラミックスの微小突起部からなる。
【0055】
次に、除去工程において、焼成中に焼結しない第2グリーンシートと第3グリーンシートを、ハケで払って除去する。さらに、セラミックス基板を超音波洗浄して、基板上に残存するアルミナ粉末を除去する。こうして、図3(b)に示した、主面に突起電極を有するセラミックス回路基板2が得られる。
【0056】
図4に、こうして製造されたセラミックス基板の突起電極部分の断面の電子顕微鏡による拡大写真を示す。セラミックスの隆起部の表面が導体層で被覆された微小突起部が形成されていることがわかる。この微小突起部 (突起電極)の高さは約0.1 mmであり、第2グリーンシートの厚みに等しい。この突起電極は表面が実質的に平坦である。従って、上記方法で、第2グリーンシートの孔の奥まで導体層を押しながらセラミックスが流入したことがわかる。つまり、この方法で、高さが揃った突起電極を形成することが可能となる。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、突起電極形成用のグリーンシートに設けた貫通孔に導体ペーストを充填せずに突起電極を有するセラミックス基板を形成することができる。従って、突起電極の径を、グリーンシートに形成可能な孔の最小寸法まで小さくすることができ、スクリーン印刷では実質上不可能であった微小径の突起電極の形成が可能となる。
【0058】
また、形成された突起電極は、表面のみが導体層であるため、高価な導体ペーストの使用量が少なくてすみ、さらに上記の導体ペーストの充填がなくなるという工程上の簡略化もあって、突起電極を有するセラミックス基板を安価に製造することができる。
【0059】
さらに、形成された突起電極は高さが揃っており、導体ペーストの充填により形成された突起電極に見られることのある、高さの不揃いによる接続不良の問題がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a), (b)は本発明の1態様に係る製造方法における工程の一部を模式的に示す説明図である。
【図2】図2(a), (b)は、上記方法における上記工程の続きを模式的に示す説明図である。
【図3】図3(a), (b)は、上記方法における後続工程を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の方法により製造されたセラミックス基板の突起電極部分を拡大して示す断面写真である。
【図5】図5(a)〜(f)は従来法による突起電極つきセラミックス基板の製造工程を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
2:多層セラミックス回路基板、5:導体ペースト、10, 215, 225:貫通孔、11, 13:第3グリーンシート (未焼結シート)、12:第2グリーンシート (未焼結シート)、20:ビア、59:配線パターン、101, 102:押圧板、210, 220, 230:
第1グリーンシート

Claims (9)

  1. 下記工程を含むことを特徴とする、主面に微小突起部を有するセラミックス基板の製造方法:
    (1) セラミックス基板となる少なくとも1層の第1グリーンシートと、焼結温度が第1グリーンシートより高く、かつ1または2以上の孔を設けた第2グリーンシートとを用意する工程、
    (2) 第2グリーンシートの孔が第1グリーンシートに面するように第1グリーンシートと第2グリーンシートとが積層された積層体を形成する工程、
    (3) 積層体を、その主面に対して概ね垂直方向に加圧しながら、第1グリーンシートが焼結し、第2グリーンシートが焼結しない温度で焼成する工程、及び
    (4) 第2グリーンシートを除去して、主面に微小突起部を有するセラミックス基板を得る工程。
  2. 工程(1)で用意する第2グリーンシートに設けた孔が貫通孔である、請求項1記載のセラミックス基板の製造方法。
  3. 工程(2)で形成された積層体が、少なくとも第2グリーンシートに接する側の外面に、前記焼成温度では焼結しない材質の第3グリーンシートが積層された積層体である、請求項2記載のセラミックス基板の製造方法。
  4. 工程(2)で形成された積層体が、その積層方向の外層として、前記焼成温度では焼結しない材質の第3グリーンシートが積層された積層体である、請求項1または2記載のセラミックス基板の製造方法。
  5. 工程(1)で用意する第1グリーンシートの少なくとも一部が、その表面に導体形成層を有している請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス基板の製造方法。
  6. 工程(2)での積層後に第2グリーンシートと接することになる第1グリーンシートの表面が、第2グリーンシートに設けた孔に対応する位置に導体形成層を有しており、それにより導体層で被覆された微小突起部からなる突起導電部を有するセラミックス基板が製造される、請求項5記載のセラミックス基板の製造方法。
  7. 突起導電部が突起電極である、請求項6記載のセラミックス基板の製造方法。
  8. 工程(1)で用意する第1グリーンシートの少なくとも一部が、導体ペーストが充填された1または2以上の貫通孔を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のセラミックス基板の製造方法。
  9. 基板の隆起により形成されたセラミックスの微小突起部と、この微小突起部に密着し、これを被覆する導体層、とから構成される突起電極を有することを特徴とする、セラミックス基板。
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