JP2004014141A - 改質器用蒸発器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】発熱部の外周に金属管が螺旋状に巻かれており、該金属管の鉛直上端部に絞り部が設けられているとともに、該螺旋状の金属管が縦型に設置されて、該金属管の傾斜が螺旋状の全ての位置で鉛直下向きであることを特徴とする改質器用蒸発器、並びに、該改質器用蒸発器の後段に、炭化水素ガスと水蒸気とを反応させて水素を含む改質ガスを製造する、改質器が設置されていることを特徴とする燃料改質システム。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムの一部として好適に用いられる蒸発器に関し、さらに詳しくは、燃料電池システムの改質器前段にて、改質器に供給する原料である水を蒸発させるのに好適な改質器用蒸発器に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池システムにおける改質器では、原料ガスである炭化水素と水から、高温にて改質触媒等の複数の触媒反応プロセスを用いて改質ガスを製造する。製造された改質ガスは、システムの後段に設けられる燃料電池本体に送られる。
しかしながら、従来、この改質器で生成する改質ガスの生成量は変動することが多く、燃料電池システムで安定した発電が困難となる場合があった。これは本システムでは、燃料である改質ガス中の水素に対して反応が進行して発電が行われるので、改質ガス(水素)の生成量・供給量が不安定では、発電を行う電極反応も安定しないからである。
また、改質ガスの生成量が変動している状態では、燃料電池本体のスタックを構成する複数枚の各セル毎に、一定量の水素が均等に分配・供給されない場合がある。そして、この不均一な水素の分配により例えば一部のセルが破壊してしまうと、積層している直列のスタック全体が作用しなくなるような事態も想定された。
【0003】
このように改質器で生成する改質ガスの生成量が変動することは、燃料電池システムにとって大きな悪影響を及ぼすので、極力取り除くことが必要である。
改質器での改質ガス生成量には、その前段に設けられた蒸発器における水蒸気の発生流量が大きく関係する。蒸発器での蒸発においては、液体の水が突沸したりすると、水蒸気が発生して送り出される際の圧力が変動するため、これが直接的に改質ガスの生成量に影響を及ぼしてしまう。
【0004】
蒸発器においては、一般に液体が気化して体積が膨張する際の変動が、蒸発振動として発生して、流量のばらつきが存在しやすいことが知られている。従来用いられる蒸発管やフィンアンドチューブなどの通常の蒸発器は、蒸発振動が大きい。よって、燃料電池システムにおける改質器の前段にて、これらを改質器用の蒸発器として用いると、蒸発器内の水蒸気製造にて蒸発振動が発生していた。この蒸発器における蒸発振動が主原因で、改質器で生成する改質ガスの生成量は変動し、燃料電池本体に供給される燃料の量も不安定になっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
改質器におけるスチームリフォーミングでは、メタン等の炭化水素と水を反応させるが、例えばメタンや都市ガスなどを原料とする場合、この水(Steam)と炭化水素(Hydro−Carbon)のモル比S/Cが適正な値(通常3程度)でないと、反応が安定しない。すなわち、蒸発器の水が蒸発したり蒸発しなかったりすると、時間の経過とともにS/C値は、変動してしまう。例えばS/C値が小さくなると炭化水素の量に対して水の量が少なくなり、後段に設置される改質触媒層において過剰な炭化水素が分解してカーボン(すす)を生成してしまう。触媒層内ですすが発生すると、触媒寿命の低下を招くとともに、系の閉塞などにより運転が維持できない事態に陥る。
【0006】
一方、触媒寿命を低下させるすすの発生が回避できるように、S/C値が3以上を維持できるように、水を過剰に供給する運転も考えられるが、これでは蒸発させる水の量が増大してしまい、エネルギー効率が悪い。
【0007】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、燃料である改質ガスの生成量が安定して、燃料電池を安定して運転できるように、水蒸気製造にて蒸発振動の発生を効果的に防止できる蒸発器を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、金属製の螺旋状蒸発管の鉛直上端部に絞り部を設けるとともに、蒸発管を縦型に設置して傾斜が螺旋状の全ての位置で鉛直下向きとすること等によって、かかる問題点が解決されることを見い出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、発熱部の外周に金属管が螺旋状に巻かれており、該金属管の鉛直上端部に絞り部が設けられているとともに、該螺旋状により形成される円筒が縦型に設置されて、該金属管の傾斜が螺旋状の全ての位置で鉛直下向きであることを特徴とする改質器用蒸発器を提供するものである。金属管(蒸発管)は、通常、発熱部を円筒状に囲う輻射伝熱管の外周に螺旋状に巻かれている。また金属管は、円管または楕円管であることが好ましく、該管の流路内周の長さが25mm以上であるのが好適である。ここで「螺旋状」とは、ある中心軸に対して略同距離にて、連続して旋回する線によって形成される円筒状の形状をいう。また、管の流路内周の長さとは、円管流路、楕円流路あるいは矩形流路などを有する管における内面周囲の長さを意味しており、いずれも25mm以上、具体的には円管流路であれば内周である円の直径が8mm以上であることが好ましい。また、本発明は、上記いずれかの改質器用蒸発器の後段に、炭化水素ガスと水蒸気とを反応させて水素を含む改質ガスを製造する、改質器が設置されていることを特徴とする燃料改質システムを提供するものである。ここで、改質器用蒸発器と改質器の間に、例えば、炭化水素ガスと水蒸気を混合するミキサーが備えられている態様が挙げられる。炭化水素ガスとしては、都市ガスなどが挙げられる。
【0009】
本発明の改質器用蒸発器によれば、改質器へ送る原料である水蒸気の製造において、蒸発振動の発生を効果的に防止して、安定した水蒸気供給が可能となる。これにより本発明の蒸発器を用いれば、改質器における燃料電池本体の燃料である改質ガスの生成量が安定して、燃料電池を安定して運転できる。そして、燃料電池システムに用いた場合には、燃料電池本体の各セル毎に、均等に改質ガスが分配・供給されるような改質ガスの生成が改質器にて可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の装置は、燃料電池のシステムにおいて、改質器の前段で用いられる改質器用蒸発器である。燃料電池システムでは通常、原料であるメタン等の炭化水素および水から水素を含む改質ガスを生成し、この水素を燃料電池本体に送り、酸素と反応して発電させる。改質器は、燃料電池の前段で電池本体に必要な燃料を生成する装置であり、具体的にはNiやRu等を含む改質触媒を用いて、例えばメタンやH2Oを、水素、一酸化炭素、二酸化炭素および水蒸気を含むガスに変換した後、さらに複数の触媒を用いて、一酸化炭素を除去する。本発明の蒸発器は、この改質器に供給される水蒸気を安定して製造するための装置である。
【0011】
本発明の改質器用蒸発器は、発熱部の外周に金属管が螺旋状に巻かれており、金属管の鉛直上端部には絞り部が設けられている。螺旋状の金属管は縦型に設置されて、金属管の傾斜が螺旋状の全ての位置で鉛直下向きである。
図1に、本発明の蒸発器の一例を断面図で示す。発熱部にはバーナ4が設けられている。このバーナ4を円筒状に囲う輻射伝熱管3の外周に、螺旋状に金属管(蒸発管2)が巻かれている。螺旋状に巻かれる蒸発管2は、その中心部にあるバーナ4に対して略同距離にて、連続して旋回して円筒状の空間を形成している。中心のバーナ4からの距離(円筒の半径)は、通常25〜50mmの範囲である。螺旋管の巻き数は蒸発に必要な熱エネルギーによって算出される伝熱面積を満足するように決定される。内側からの輻射熱が効率よく管に伝わるように,巻きピッチは最大でも管径より小さくする必要がある。
【0012】
本発明では、バーナ4等の燃焼による発熱部の高い熱エネルギーが直接、水を通した蒸発管2外面に当たることによって、蒸発管2内の水が気化する態様でもよいし、本実施の形態のように、輻射伝熱管3を介して輻射熱が蒸発管2に伝熱されて、蒸発管2内の水が気化する態様であってもよい。図1のように、輻射伝熱管3を介する態様によれば、バーナ4による火炎からの局所加熱を防止し、蒸発管2への熱流束を平均化することができる。これによって、蒸発管2の局所加熱を防ぎ、ベーパーロック(蒸気閉塞)などを効果的に回避する利点がある。
円筒状の輻射伝熱管3を用いる場合、通常、この輻射伝熱管3の外周面に沿って蒸発管2を螺旋状に巻く構成とする。輻射伝熱管3と蒸発管2は接している必要はない。円筒状の輻射伝熱管3の直径は、通常20〜30mmの範囲である。
【0013】
本発明の蒸発器では、水の入口側(液入り口側)で液の流れの途中に、ニードル弁やオリフィスなどの絞り弁5が設置されている。これによって、蒸発管2を流れる液水の供給量が安定化する。蒸発管2の後流では、液が蒸発して体積が一気に増大するので、前方に進もうとする圧力と、後方に押し戻そうとする圧力が発生する。よって、絞り弁5を設けることによって、弁5から先の水の量を常に安定させておくことができる。
蒸発管2への水の流量としては、通常1.0〜20g/分の流量で送液する。この流量であれば、1kW級の燃料電池システムの改質器の原料として十分な水蒸気を供給できる。
また、蒸発器2の前段には、必要に応じて、水供給装置(図示せず)が備えられており、常時一定の水圧(例えば0.3〜0.5MPa)で水を供給する。
【0014】
本発明では、蒸発管2は円管または楕円管であり、管の流路内周の長さが25mm以上であることが好ましい。具体的には、例えば円管流路であれば内周である円の直径(管径)が8mm以上であることが好ましい。螺旋状の蒸発管2のチューブの内径は、液水の流れが滞留しないように大きい径にすることが好ましく、例えば流量1.0〜20g/分であれば管径8mm以上とすることで液水滞留を効果的に防止できる。図3に示すように、管径が細いと水が管壁の表面張力によって全周に亘って移動することとなり、また、液の流れが連続せずに途中で途切れてしまう。先頭を進行する水は、常に先頭に位置して後流から押されるが、途切れが生じると水供給圧が一定に伝達されなくなり、不規則に進行してしまう。その点、管径を一定以上に大きくすると、管の円周内において、下部に液の流れる層が形成され、上部にガスの流れる層が形成されるので、液が自重で安定して流れる。これによって、蒸発管内で液の状態で滞留することを回避できる。
一方、流量1.0〜20g/分の場合、管の流路内周が長すぎると水に熱エネルギーを与えて水蒸気へと気化させる効率が低下してしまい好ましくない。また、管径が16mmを越えると螺旋状を形成することが困難となり、装置も大型化してしまうので好ましくない。
【0015】
本発明の蒸発器においては、蒸発管2内を流れる水もしくは水蒸気が重力に対して、下降流となるようにする。上昇流にすると突沸が起こりやすくなり、流路断面をほとんど満たすような気泡が生じ、水の質量流量が間欠的に変動するスラグ流が発生しやすくなるため、下降流としてスラグ流発生を抑え振動を防止するものである。
また、管を細長い楕円形にすることによれば、蒸発管2内の液層と気層とが2層になりやすくなり、一層安定した下降流が形成できる。具体的には、楕円の長い方の径を約5〜12mm、短い方の径を約2〜5mmとすることができる。
例えば、上記楕円形の管を用いた楕円流路の場合や矩形流路の場合には、鉛直方向に管が縦長になるように配置する。このように配置することによって、軽い水蒸気が管内上部を流通し、液体が管内下部を流通し、2層に分離して流れやすくなる。
【0016】
図2に、本発明の燃料改質システムの模式図を示す。上述した改質器用蒸発器1の後段に、炭化水素ガスと水蒸気とを反応させて、水素を含む改質ガスを製造する改質器22が設置されている。改質器用蒸発器1と改質器22の間には、炭化水素ガスと水蒸気を混合するミキサー21が備えられている。
【0017】
一般に燃料電池システムでは、炭化水素を原料に水素を製造する場合、リフォーマ(改質器)を用いる。改質器では、原料ガスである炭化水素と水から、効率的に改質ガスを製造する。ここで改質器に送られる原料はガス状態であり、原料の1つである水は通常液体なので、改質器22に作用させる前段にて、蒸発器を用いて熱エネルギーを供給して気化させて水蒸気としてから、改質器に供給する。通常、改質器の前段では、ミキサー21において都市ガスなどの炭化水素と水蒸気を混合する工程が行われる。十分ミキシングが行われた混合ガスは改質器に導入されて、水素を含む改質ガスに変換される。
改質器では、まず改質触媒によってスチームリフォーミング反応が行われる。この反応は吸熱反応なので、バーナで熱エネルギーを与える必要がある。改質器では、水と都市ガスを反応(スチームリフォーミング)させて改質ガスを得るが、該反応のみでは水素と同時に一酸化炭素も含まれており、一酸化炭素濃度を低下させるために、一酸化炭素の変成触媒や選択酸化触媒などを経てから燃料電池本体(PEFC)へ送られる。
【0018】
以下、本発明に係る蒸発器について、添付図面を参照しながら、その具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
外径φ10mm(内径φ8mm)のSUS製管2を、高さ200mm、直径60mmの円筒状の輻射伝熱管3の外周面に沿って螺旋状に巻き、その内側にバーナ4を設置した。本実施例では、バーナ4による管2への加熱が局所的にならないように、円筒状の輻射伝熱管3を間に挟み、加熱された伝熱管による輻射加熱として、突沸などが起こり難くした。
水の入口側であって、水供給装置と螺旋状金属管2の間の金属管鉛直上端部には、絞り弁5としてニードル弁を設置した。これにより下流の圧力変動の影響を受けずに、水供給量を安定させて、蒸気発生量が安定化できる。絞り弁5としては、例えばオリフィスなども用いることができるが、絞りの度合いを調整できる絞り弁が好ましい。
【0020】
絞り弁の下部では、図4のように、蒸発管2は必ず水が下降するような螺旋巻きとし、連続20回巻きとした。液は重力によって鉛直下方向に流下しながら蒸発していくため、途中に水溜まりが生じると蒸発が安定して起こらず、不安定の原因となるためである。また、管径が細く一定以下の場合には、水の表面張力により液塊が蒸発管2の断面を全て覆い、かつ、液塊が分断されて、先頭の液塊がしばらく停留する現象が生じやすくなる。これも得られる水蒸気の蒸発振動を発生する要因となってしまう。
可視化試験などの種々の試験を実施した結果、水の流量が1.0〜20g/分の範囲では、管径をφ8mm以上とすることで、上記蒸発振動の発生要因となる現象を起こり難くなることが分かった。
【0021】
また、図4の拡大図のように、蒸発管2の断面を楕円管にする実験を行った。楕円の長い方の径を約10mm、短い方の径を約3mmとした。このような蒸発管2とすることで、液層とガス層が断面状で2層に分離し、液塊停留がさらに一層起こりにくくなることが分かった。
【0022】
【発明の効果】
本発明の改質器用蒸発器によれば、改質器へ送る原料である水蒸気の製造において、蒸発振動の発生を効果的に防止して、安定した水蒸気供給が可能となる。これにより本発明の蒸発器を用いれば、改質器における燃料電池本体の燃料である改質ガスの生成量が安定して、燃料電池を安定して運転できる。また、本発明の燃料改質システムでは、改質器でのスチームリフォーミングでS/Cを約3程度に維持して反応を安定させ、改質触媒にすすが蓄積・閉塞させて触媒寿命が低下するなどの悪影響を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蒸発器の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の燃料改質システムの一例を模式的に表す構成図である。
【図3】流量に対して管径が細い場合に、円管を流れる水の流れをモデル化した図である。
【図4】実施例1で行った金属管(蒸発管)の螺旋構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 蒸発器
2 金属管(蒸発管)
3 輻射伝熱管
4 バーナ
5 絞り弁
11 液相
12 気相
21 ミキサー
22 改質器
Claims (5)
- 発熱部の外周に金属管が螺旋状に巻かれており、該金属管の鉛直上端部に絞り部が設けられているとともに、該螺旋状により形成される円筒が縦型に設置されて、該金属管の傾斜が螺旋状の全ての位置で鉛直下向きであることを特徴とする改質器用蒸発器。
- 前記金属管が、発熱部を円筒状に囲う輻射伝熱管の外周に螺旋状に巻かれていることを特徴とする請求項1記載の改質器用蒸発器。
- 前記金属管が、円管または楕円管であり、該管の流路内周の長さが25mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の改質器用蒸発器。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の改質器用蒸発器の後段に、炭化水素ガスと水蒸気とを反応させて水素を含む改質ガスを製造する、改質器が設置されていることを特徴とする燃料改質システム。
- 前記改質器用蒸発器と改質器の間に、炭化水素ガスと水蒸気を混合するミキサーが備えられていることを特徴とする請求項4記載の燃料改質システム。
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