JP2004011778A - 捩り振動低減装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】遠心力によるばね部材の撓みを緩和することによって摩擦トルクの増大を少なくし、吸振性能を向上させる。
【解決手段】入力側のホールドプレート13の外周縁部の断面略コ字状のばね受容部17にばね部材14を収容して、同プレート13の外周縁部のばね支持壁18にばね部材14の端部を支持させる。出力側のトルク授受相手部材である伝達プレート16の係止爪20をばね部材14の端部に当接させる。このような捩り振動低減装置5において、係止爪20とばね支持壁18の少なくとも一方のばね当接部の重心点を、ばね部材14の端面の装置回転軸に平行な中心線pよりも回転径方向外側に配置する。ばね部材14の端部に作用する圧縮荷重が回転径方向内側に向かう分力を持ち、その分力が遠心力による力を弱めるように作用して、遠心力によるばね部材14の撓みを緩和する。
【選択図】 図1
【解決手段】入力側のホールドプレート13の外周縁部の断面略コ字状のばね受容部17にばね部材14を収容して、同プレート13の外周縁部のばね支持壁18にばね部材14の端部を支持させる。出力側のトルク授受相手部材である伝達プレート16の係止爪20をばね部材14の端部に当接させる。このような捩り振動低減装置5において、係止爪20とばね支持壁18の少なくとも一方のばね当接部の重心点を、ばね部材14の端面の装置回転軸に平行な中心線pよりも回転径方向外側に配置する。ばね部材14の端部に作用する圧縮荷重が回転径方向内側に向かう分力を持ち、その分力が遠心力による力を弱めるように作用して、遠心力によるばね部材14の撓みを緩和する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、エンジンとトランスミッションの間の動力伝達系等に介装されてその系の捩り振動を低減する捩り振動低減装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の捩り振動低減装置として、特開2001−132818号公報に記載されるようなものがある。
【0003】
この捩り振動低減装置は、トルクコンバータ内のロックアップピストンとタービンの間に介装されて、ロックアップ時における捩り振動を低減するものであり、入力側回転部であるロックアップピストンと、出力側回転部であるタービンとがばね部材を介して回動方向で連結された概略構成となっている。
【0004】
具体的には、ロックアップピストンは、その外周縁部に、径方向に沿って断面略コ字状に屈曲したばね受容部が形成されると共に、そのばね受容部の円周方向の前後位置にばね支持壁を成す保持プレートが取り付けられており、ばね受容部に収容されたばね部材の両端部が保持プレートによって支持されている。そして、トルク授受相手部材であるタービンには軸方向に突出する複数の係止爪が突設され、その係止爪の側端部がばね部材の端面に当接するようになっている。したがって、ロックアップ時には、保持プレートと係止爪によってばね部材を圧縮しつつロックアップピストンからタービンにトルクを伝達し、このときばね部材の弾性によって捩り振動を吸収する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来の捩り振動低減装置は、保持プレートと係止爪のばね当接部の重心点がばね部材の端面の中心に合致するように設定されており、ロックアップピストンの回転速度の増大に伴なってばね部材に作用する遠心力が大きくなると、ばね部材がその遠心力の作用を大きく受けて回転径方向外側に撓み、そのばね部材の外面がばね受容部の外周壁内面に強力に押し付けられることとなる。したがって、この従来の捩り振動低減装置の場合、遠心力の増大によってばね部材とばね受容部の間の摩擦トルクが増大し、この摩擦トルクが吸振性能に悪影響を及ぼすことが問題となっている。
【0006】
そこでこの出願の発明は、遠心力によるばね部材の撓みを緩和することによって摩擦トルクの増大を少なくし、吸振性能に優れた捩り振動低減装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、この出願の発明は、入力側回転部と出力側回転部の一方に設けられる略円板状の部材であって、その外周縁部に、径方向に沿って断面略コ字状に屈曲したばね受容部と、このばね受容部の円周方向の前後位置に配置されたばね支持壁とを有するホールドプレートと、前記ばね支持壁を座面とするように前記ばね受容部内に収容されたばね部材と、入力側回転部と出力側回転部の他方に設けられる部材であって、先端部が前記ばね受容部の開口する側に向かって軸方向に突出して、その側端面を座面として前記ばね部材の端面に当接する係止爪を有するトルク授受相手部材と、を備え、前記ばね支持壁と係止爪でばね部材を圧縮しつつホールドプレートとトルク授受相手部材の間でトルクの伝達を行い、ばね部材の弾性によって捩り振動を吸収する捩り振動低減装置において、前記係止爪とばね支持壁の少なくとも一方のばね当接部の重心点を、前記ばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置するようにした。
【0008】
この発明の場合、係止爪とばね支持壁がばね部材の両端部を押圧するときには、係止爪とばね支持壁のうちの、ばね当接部の重心点がばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置されている側が、ばね部材の端面に回転径方向内側に向かう分力を作用させる。したがって、ばね部材を回転径方向外側に撓み変形させようとする遠心力による力は回転径方向内側に向かう分力によって弱められる。
【0009】
このとき、前記係止爪のばね当接部の重心点を、前記ばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置し、その係止爪の先端部領域と付根部領域を、ばね部材の端面のうちの、回転径方向に沿う中心線を挟む軸方向前後位置に夫々当接させるようにしても良い。この場合、係止爪の先端部と付根部がばね部材の端部に対して軸方向前後でほぼ均等に押圧することができるため、ばね部材には軸方向の撓み変形が生じにくくなる。
【0010】
さらに、係止爪の付根部側が径方向内側に屈曲されてトルク授受相手部材の本体部に一体化されている場合には、前記係止爪の付根部側のばね当接部を、少なくとも屈曲部よりも径方向内側領域に跨るように設定することが好ましい。このようにすれば、係止爪のばね当接部の一部がトルク授受相手部材の本体部に近接し、ばね部材の反力によって係止爪と本体部の連接部に作用する応力が緩和される。
【0011】
また、前記ホールドプレートのばね支持壁がばね受容部と同側に断面略コ字状に屈曲して形成されると共に、その屈曲部の径方向内側の第1の壁と径方向外側の第2の壁との幅が前記ばね部材の直径よりも狭められて設定され、ばね部材が前記第1の壁と第2の壁の端部に跨って支持される場合には、前記第2の壁のばね当接部を、対向するばね支持壁の第2の壁相互間の間隔が第1壁相互間の間隔よりも大きくなるように、第1の壁のばね当接部に対して円周方向にオフセットさせることが望ましい。このようにした場合には、少なくともばね部材が圧縮され始めたときにばね部材の端部が第1の壁と第2の壁に跨って当接することにより、そのばね部材の端部が径方向外側に開くように傾いて支持されることとなる。したがって、ばね部材の端部は第2の壁に対して径方向内側に滑り落ちにくくなる。
【0012】
また、前記ホールドプレートのばね支持壁がばね受容部と同側に断面略コ字状に屈曲して形成されると共に、その屈曲部の径方向内側の第1の壁と径方向外側の第2の壁との幅が前記ばね部材の直径よりも狭められて設定され、ばね部材が前記第1の壁と第2の壁の端部に跨って支持される場合には、前記第2の壁のばね当接部を、少なくともばね部材のばね線直径の半分に跨るように設定することが好ましい。このようにした場合には、径方向外側の第2の壁がばね部材のばね線の軸心部を確実に押圧することができるため、ばね部材の端部は第2の壁から滑り落ちたり、不規則に変形することがなくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、この出願の発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図3は第1の実施形態を示し、図1は、自動変速機の前端部側に配置されるトルクコンバータのロックアップクラッチ部分の断面図である。図1において、1は、図外のトルクコンバータのポンプと一体化されたコンバータハウジングであり、2は、トルクコンバータのタービンシェル、3は、このタービンシェル2に一体に結合されたタービンハブである。コンバータハウジング1は前端部がエンジンの図外のクランクシャフトに結合され、タービンハブ3は自動変速機の図外の入力軸にスプライン結合されている。このトルクコンバータ自体は周知のものであり、クランクシャフトからコンバータハウジング1に入力されたトルクをポンプ、タービン間の流体の作用により、タービンハブ3側に伝達する基本構成となっている。
【0015】
また、同図において、4は、高速運転時等にコンバータハウジング1とタービンハブ3を直結するロックアップクラッチであり、5は、このロックアップクラッチ4に取り付けられたこの出願の発明にかかる捩り振動低減装置である。
【0016】
ロックアップクラッチ4は、コンバータハウジング1の端部壁の内面に突設されたアウタドラム6と、捩り振動低減装置5を介してタービンハブ3側に連結されたインナドラム7と、アウタドラム6の内周側にスプライン係合された複数の駆動クラッチ板8と、インナドラム7の外周側にスプライン係合された状態で駆動クラッチ板8の間に交互に配置された従動クラッチ板9と、油圧によって進退操作されて駆動クラッチ板8を従動クラッチ板9に適宜圧接させるロックアップピストン10とを備えている。尚、11は、アウタドラム6の前端部内面に設けられて駆動クラッチ板8の軸方向変位を規制するストッパであり、12は、コンバータハウジング1の端部壁の内面に突設されてロックアップピストン10を摺動自在に支持する円筒状の支持壁である。
【0017】
捩り振動低減装置5は、内周縁部が前記インナドラム7にリベット固定された略円板状のホールドプレート13と、このホールドプレート13の外周縁部に保持された複数のばね部材14(コイルスプリング)と、内周縁部がタービンハブ3のフランジ3aにリベット固定される一方で、外周縁部がばね部材14を介してホールドプレート13に回動方向で連結された伝達プレート16(この出願の発明におけるトルク授受相手部材)とを備えている。
【0018】
ホールドプレート13の外周縁部には、図1,図2に示すように径方向に沿って断面略コ字状に屈曲したばね受容部17と、ばね部材14の直径よりも狭い幅に同様に断面略コ字状に屈曲したばね支持壁18とが円周方向に沿って交互になるように複数形成され、さらにこれらの外周側に径方向外側に張り出す強度フランジ19が円環状に連続して形成されている。ばね受容部17はタービンシェル2側に開口し、その開口側から前記ばね部材14が両側のばね支持壁18を座面とするようにして挿入装着されている。尚、この実施形態の場合、ばね受容部17は円周方向長さの長いものと短いものが2種類設けられており、その各ばね受容部17にはばね受容部長さに対応したばね部材14が収容されている。図2においては上部略中央のものが長さの短いばね受容部17(以下、他のもの区別するときには「短受容部」と呼ぶものとする。)となっている。
【0019】
ばね受容部17はばね部材14の回転径方向内側と外側を夫々ガイドする内壁17aと外壁17bを有し、内壁17aはホールドプレート13の接線方向に沿うように直線状に形成され、ばね部材14を収容した初期状態においてばね部材14がほぼ直線状に維持されるようになっている。これに対し外壁17bはホールドプレート13の回転軸線を中心する滑らかな円弧形状に形成され、ばね部材14の縮み変形等に伴う同部材14の径方向外側の変位を緩やかに規制するようになっている。
【0020】
また、ばね支持壁18は、径方向内側の第1の壁18aと径方向外側の第2の壁18bを有するが、これらの壁18a,18bは、図3に示すようにばね部材14の端面の装置回転軸(ホールドプレート13の回転軸)に平行な中心線pに対し全体が回転径方向外側に編寄して形成されている。正確には、第1の壁18aは中心線pよりも回転径方向内側に位置されているものの、両壁18a,18bはこれらのばね当接部の重心点が中心線pに対して径方向外側に偏るように配置されている。
【0021】
一方、伝達プレート16はホールドプレート13と同様に全体が略円板状に形成され、その外周縁部には断面略L字状の複数の係止爪20が円周方向に離間して形成されている。各係止爪20の屈曲部先端側は軸方向に沿ってホールドプレート13の各ばね支持壁18の壁18a,18b間の開口に挿入され、その側端面を座面としてばね部材14の端面に当接するようになっている。尚、隣接する係止爪20,20の間隔は、図2に示すように短受容部以外のばね受容部17の長さとほぼ同じに設定され、短受容部以外のばね受容部17では、初期状態おいて各係止爪20がばね部材14の端面に当接するようになっている。
【0022】
各係止爪20は、図3においてクロスハッチを入れて示すように、屈曲部の先端部領域と付根部領域でばね部材14の端面のうちの、径方向に沿う中心線qを挟む軸方向前後位置に当接するが、これらのばね当接部(の重心)はホールドプレート13側のばね支持壁18と同様にばね部材14の端面の中心線pに対し回転径方向外側に編寄して配置されている。尚、この実施形態の場合、ばね部材14の中心線pに対する係止爪20側のばね当接部の編寄量はばね支持壁18側の編寄量よりも大きく、係止爪20のばね当接部は、ばね支持壁18の二つの壁18a,18bの中心よりもさらに回転径方向外側に位置されている。
【0023】
ホールドプレート13と伝達プレート16はこのように回転径方向外側に偏った位置おいてばね部材14の端部に当接しているため、各ばね部材14には、常時回転径方向外側に若干編寄した位置から圧縮荷重が入力される。
【0024】
また、ホールドプレート13のばね受容部17を挟んで対向する一対のばね支持壁18,18は、図2に示すように径方向外側の第2の壁18b,18b相互間の間隔が内側の第1の壁18a,18a相互間の間隔よりも大きく設定されている。したがって、この例の場合、各ばね部材14の端部は初期状態において第2の壁18bから若干離間しており、ホールドプレート13と伝達プレート16の相対回動に伴って圧縮荷重が入力されると、各ばね部材14の端部が若干径方向外側に傾く側に傾斜し、その状態で第2の壁18bに当接することとなる。ただし、ばね部材14を比較的大きな予備圧縮荷重を付与してばね受容部17に収容した場合には、初期状態においてばね部材14の端部は同様に傾いて第2の壁18bに当接する。また、第2の壁18bはばね部材14の回転径方向外側の端部近くで同ばね部材14の端面に当接するが、そのばね部材14に対しては少なくとも同部材14のばね線直径の半分に跨るように設定され、ばね部材14のばね線の中心に常時当接荷重を付与できるようになっている。
【0025】
尚、伝達プレート16の外周縁部のうちの、隣接する係止爪20,20の中間位置には、ホールドプレート13のばね受容部14の開口側前面を覆うようにばね規制片21が延設され、このばね規制片21によってばね部材14の側方の飛び出しを規制するようになっている。また、図1において、22は、伝達プレート16と共にタービンハブ3のフランジ3aにリベット止めされて、ホールドプレート13のセンタリングと軸方向の変位規制を行うリングプレートである。
【0026】
以上の構成において、クランクシャフトの回転によってポンプがコンバータハウジング1と一体に回転すると、そのポンプがタービンを回し、その動力をタービンハブ3からトランスミッションへと伝達する。この状態からクランクシャフトの回転速度等が設定制御条件に達すると、支持壁12に設けられた油孔23からロックアップピストン10の前面に油圧が導入され、その油圧によってロックアップピストン10が後方に押圧される。すると、このピストン10によって駆動クラッチ板8が従動クラッチ板9に押し付けられ、コンバータハウジング1の動力がロックアップクラッチ4と捩り振動低減装置5を介してタービンハブ3に直接伝達される。
【0027】
このとき、捩り振動低減装置5においては、ばね部材14の両端部がホールドプレート13と伝達プレート16のばね支持壁18と係止爪20によって夫々支持され、そのばね部材14が両プレート13,16の捩れに応じて伸縮変形することにより伝達系の捩り振動を吸収する。そして、ホールドプレート13の回転速度が高まり、ばね部材14に働く遠心力が大きくなると、ばね部材14はその遠心力の影響を受け、ばね受容部17の外壁17bに押し付けられようとする。
【0028】
しかし、この捩り振動低減装置5の場合、ばね支持壁18と係止爪20のばね当接部の重心点がばね部材14の端面の中心線pよりも回転径方向外側に配置されているため、ばね支持壁18と係止爪20からばね部材14の端面に作用する押圧力の分力が回転径方向内側に作用し、その分力がばね部材14の遠心力を打ち消すように働いてばね部材14と外壁17bとの接触圧を和らげる。したがって、この装置においては、回転速度の増大によってばね部材14の遠心力が大きくなっても、ばね部材14と外壁17bとの強接触による大きな摩擦トルクの発生を防止することができ、常時安定した吸振性能を発揮することが可能である。
【0029】
この実施形態の場合、ばね支持壁18と係止爪20の両方のばね当接部の重心点をばね部材14の端面の中心線pよりも径方向外側に配置したが、いずれか片側の重心点のみを径方向外側に配置するようにしてもある程度の効果を得ることができる。ただし、この実施形態のようにばね部材14の端面に1枚板で接触する係止爪20側を径方向外側に配置するようにした場合には、係止爪20の比較的少ないオフセット量によってばね部材14の端面に回転径方向内側の分力を容易に、かつ確実に作用させることができる。
【0030】
また、この実施形態の装置5においては、係止爪20の先端部領域と付根部領域をばね部材14の中心線qを挟む軸方向前後位置にほぼ均等に接触させているため、ばね部材14の軸方向の撓み変形を少なくし、軸方向前後の接触摩擦も小さくすることができる。
【0031】
さらに、この装置5においては、ばね支持壁18の径方向外側の第2の壁18b,18bの間隔を径方向内側の第1の壁18a,18aの間隔よりも大きく設定しているため、ホールドプレート13と伝達プレート16の相対回動に伴ってばね部材14が圧縮されたときにばね支持壁18側の端部が径方向外側に開くように傾斜し、ばね部材14の端部が第2の壁18bから滑り落ちるのを確実に防止することができる。また、この装置5は、第2の壁18bのばね当接部が少なくともばね部材14のばね線直径の半分に跨るように設定されていることから、ばね部材14のばね線の中心を第2の壁18bによって常時確実に押圧することができ、その結果、第2の壁18bからのばね部材14の端部の滑り落ちやばね部材14の端部の不規則な変形を防止できるという利点もある。
【0032】
つづいて、図4,図5に示す第2の実施形態について説明する。尚、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、第1の実施形態と重複する部分については説明を省略するものとする。
【0033】
この実施形態の捩り振動低減装置105は、第1の実施形態と同様にトルクコンバータ内のロックアップクラッチ部分に適用したものであり、伝達プレート116の係止爪120の構造を除いて全て第1の実施形態のものと同様の構成とされている。
【0034】
係止爪120は伝達プレート116の外周縁部に断面略L字状に屈曲されているが、この係止爪120のばね当接部は屈曲部120aから軸方向に延出する領域だけでなく、図5においてクロスハッチを入れて示すように屈曲部120aから径方向内側に延出する領域に一部跨るように設定されている。この例の場合、図5に示すように係止爪120のばね当接部の一部がばね部材14の端面の中心線pよりも回転径方向内側に位置されることとなるが、ばね当接部全体の重心点は中心線pよりも回転径方向外側に位置されている。
【0035】
この実施形態の場合、第1の実施形態と基本構成が同様であるためやはり同様の効果を得ることができるが、上述のように係止爪120のばね当接部の一部が径方向内側に延出する領域に跨って設定されているため、係止爪120の延出基部に作用する応力を緩和できる、というさらなる利点がある。即ち、係止爪120は、ばね部材14の反力の一部を屈曲部120aよりも径方向内側で受けることができるため、ばね部材14の反力によって係止爪120の延出基部に生じるモーメントを小さくし、延出基部に作用する負荷を軽減することができる。したがって、この装置によれば、伝達プレート116の変形や劣化を防止し、安定した装置性能を長期に亙って維持することができる。
【0036】
尚、この出願の発明の実施形態は以上で説明したものに限るものではなく、例えば、ばね部材を保持するホールドプレートを出力側に配置し、係止爪を有するトルク授受相手部材を入力側に配置することも可能であり、また、捩り振動低減装置の適用部位もトルクコンバータ内に限らず、トルクコンバータの外部やトルクコンバータを採用しない車両の他の動力伝達部であっても良い。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、この出願の発明は、係止爪側とばね支持壁側の少なくとも一方のばね当接部の重心点を、ばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置したため、ばね部材の端面に回転径方向内側に向かう分力を作用させることができ、その結果、その分力によってばね部材に作用する遠心力による力を弱め、遠心力によるばね部材の撓みを緩和することができる。したがって、この出願の発明によれば、ばね部材が遠心力によってばね受容部の壁に強力に押し付けられて大きな摩擦トルクを発生する不具合を無くし、装置の吸振性能を確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の第1の実施形態を示す縦断面図。
【図2】同実施形態を示す図1の矢印A方向から見た部分破断正面図。
【図3】同実施形態を示す要部の拡大断面図。
【図4】この出願の発明の第2の実施形態を示す図2に対応の部分破断正面図。
【図5】同実施形態を示す要部の拡大断面図。
【符号の説明】
5…捩り振動低減装置
13…ホールドプレート
14…ばね部材
16…伝達プレート(トルク授受相手部材)
17…ばね受容部
18…ばね支持壁
18a…第1の壁
18b…第2の壁
20…係止爪
p…中心線
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、エンジンとトランスミッションの間の動力伝達系等に介装されてその系の捩り振動を低減する捩り振動低減装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の捩り振動低減装置として、特開2001−132818号公報に記載されるようなものがある。
【0003】
この捩り振動低減装置は、トルクコンバータ内のロックアップピストンとタービンの間に介装されて、ロックアップ時における捩り振動を低減するものであり、入力側回転部であるロックアップピストンと、出力側回転部であるタービンとがばね部材を介して回動方向で連結された概略構成となっている。
【0004】
具体的には、ロックアップピストンは、その外周縁部に、径方向に沿って断面略コ字状に屈曲したばね受容部が形成されると共に、そのばね受容部の円周方向の前後位置にばね支持壁を成す保持プレートが取り付けられており、ばね受容部に収容されたばね部材の両端部が保持プレートによって支持されている。そして、トルク授受相手部材であるタービンには軸方向に突出する複数の係止爪が突設され、その係止爪の側端部がばね部材の端面に当接するようになっている。したがって、ロックアップ時には、保持プレートと係止爪によってばね部材を圧縮しつつロックアップピストンからタービンにトルクを伝達し、このときばね部材の弾性によって捩り振動を吸収する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来の捩り振動低減装置は、保持プレートと係止爪のばね当接部の重心点がばね部材の端面の中心に合致するように設定されており、ロックアップピストンの回転速度の増大に伴なってばね部材に作用する遠心力が大きくなると、ばね部材がその遠心力の作用を大きく受けて回転径方向外側に撓み、そのばね部材の外面がばね受容部の外周壁内面に強力に押し付けられることとなる。したがって、この従来の捩り振動低減装置の場合、遠心力の増大によってばね部材とばね受容部の間の摩擦トルクが増大し、この摩擦トルクが吸振性能に悪影響を及ぼすことが問題となっている。
【0006】
そこでこの出願の発明は、遠心力によるばね部材の撓みを緩和することによって摩擦トルクの増大を少なくし、吸振性能に優れた捩り振動低減装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、この出願の発明は、入力側回転部と出力側回転部の一方に設けられる略円板状の部材であって、その外周縁部に、径方向に沿って断面略コ字状に屈曲したばね受容部と、このばね受容部の円周方向の前後位置に配置されたばね支持壁とを有するホールドプレートと、前記ばね支持壁を座面とするように前記ばね受容部内に収容されたばね部材と、入力側回転部と出力側回転部の他方に設けられる部材であって、先端部が前記ばね受容部の開口する側に向かって軸方向に突出して、その側端面を座面として前記ばね部材の端面に当接する係止爪を有するトルク授受相手部材と、を備え、前記ばね支持壁と係止爪でばね部材を圧縮しつつホールドプレートとトルク授受相手部材の間でトルクの伝達を行い、ばね部材の弾性によって捩り振動を吸収する捩り振動低減装置において、前記係止爪とばね支持壁の少なくとも一方のばね当接部の重心点を、前記ばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置するようにした。
【0008】
この発明の場合、係止爪とばね支持壁がばね部材の両端部を押圧するときには、係止爪とばね支持壁のうちの、ばね当接部の重心点がばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置されている側が、ばね部材の端面に回転径方向内側に向かう分力を作用させる。したがって、ばね部材を回転径方向外側に撓み変形させようとする遠心力による力は回転径方向内側に向かう分力によって弱められる。
【0009】
このとき、前記係止爪のばね当接部の重心点を、前記ばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置し、その係止爪の先端部領域と付根部領域を、ばね部材の端面のうちの、回転径方向に沿う中心線を挟む軸方向前後位置に夫々当接させるようにしても良い。この場合、係止爪の先端部と付根部がばね部材の端部に対して軸方向前後でほぼ均等に押圧することができるため、ばね部材には軸方向の撓み変形が生じにくくなる。
【0010】
さらに、係止爪の付根部側が径方向内側に屈曲されてトルク授受相手部材の本体部に一体化されている場合には、前記係止爪の付根部側のばね当接部を、少なくとも屈曲部よりも径方向内側領域に跨るように設定することが好ましい。このようにすれば、係止爪のばね当接部の一部がトルク授受相手部材の本体部に近接し、ばね部材の反力によって係止爪と本体部の連接部に作用する応力が緩和される。
【0011】
また、前記ホールドプレートのばね支持壁がばね受容部と同側に断面略コ字状に屈曲して形成されると共に、その屈曲部の径方向内側の第1の壁と径方向外側の第2の壁との幅が前記ばね部材の直径よりも狭められて設定され、ばね部材が前記第1の壁と第2の壁の端部に跨って支持される場合には、前記第2の壁のばね当接部を、対向するばね支持壁の第2の壁相互間の間隔が第1壁相互間の間隔よりも大きくなるように、第1の壁のばね当接部に対して円周方向にオフセットさせることが望ましい。このようにした場合には、少なくともばね部材が圧縮され始めたときにばね部材の端部が第1の壁と第2の壁に跨って当接することにより、そのばね部材の端部が径方向外側に開くように傾いて支持されることとなる。したがって、ばね部材の端部は第2の壁に対して径方向内側に滑り落ちにくくなる。
【0012】
また、前記ホールドプレートのばね支持壁がばね受容部と同側に断面略コ字状に屈曲して形成されると共に、その屈曲部の径方向内側の第1の壁と径方向外側の第2の壁との幅が前記ばね部材の直径よりも狭められて設定され、ばね部材が前記第1の壁と第2の壁の端部に跨って支持される場合には、前記第2の壁のばね当接部を、少なくともばね部材のばね線直径の半分に跨るように設定することが好ましい。このようにした場合には、径方向外側の第2の壁がばね部材のばね線の軸心部を確実に押圧することができるため、ばね部材の端部は第2の壁から滑り落ちたり、不規則に変形することがなくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、この出願の発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図3は第1の実施形態を示し、図1は、自動変速機の前端部側に配置されるトルクコンバータのロックアップクラッチ部分の断面図である。図1において、1は、図外のトルクコンバータのポンプと一体化されたコンバータハウジングであり、2は、トルクコンバータのタービンシェル、3は、このタービンシェル2に一体に結合されたタービンハブである。コンバータハウジング1は前端部がエンジンの図外のクランクシャフトに結合され、タービンハブ3は自動変速機の図外の入力軸にスプライン結合されている。このトルクコンバータ自体は周知のものであり、クランクシャフトからコンバータハウジング1に入力されたトルクをポンプ、タービン間の流体の作用により、タービンハブ3側に伝達する基本構成となっている。
【0015】
また、同図において、4は、高速運転時等にコンバータハウジング1とタービンハブ3を直結するロックアップクラッチであり、5は、このロックアップクラッチ4に取り付けられたこの出願の発明にかかる捩り振動低減装置である。
【0016】
ロックアップクラッチ4は、コンバータハウジング1の端部壁の内面に突設されたアウタドラム6と、捩り振動低減装置5を介してタービンハブ3側に連結されたインナドラム7と、アウタドラム6の内周側にスプライン係合された複数の駆動クラッチ板8と、インナドラム7の外周側にスプライン係合された状態で駆動クラッチ板8の間に交互に配置された従動クラッチ板9と、油圧によって進退操作されて駆動クラッチ板8を従動クラッチ板9に適宜圧接させるロックアップピストン10とを備えている。尚、11は、アウタドラム6の前端部内面に設けられて駆動クラッチ板8の軸方向変位を規制するストッパであり、12は、コンバータハウジング1の端部壁の内面に突設されてロックアップピストン10を摺動自在に支持する円筒状の支持壁である。
【0017】
捩り振動低減装置5は、内周縁部が前記インナドラム7にリベット固定された略円板状のホールドプレート13と、このホールドプレート13の外周縁部に保持された複数のばね部材14(コイルスプリング)と、内周縁部がタービンハブ3のフランジ3aにリベット固定される一方で、外周縁部がばね部材14を介してホールドプレート13に回動方向で連結された伝達プレート16(この出願の発明におけるトルク授受相手部材)とを備えている。
【0018】
ホールドプレート13の外周縁部には、図1,図2に示すように径方向に沿って断面略コ字状に屈曲したばね受容部17と、ばね部材14の直径よりも狭い幅に同様に断面略コ字状に屈曲したばね支持壁18とが円周方向に沿って交互になるように複数形成され、さらにこれらの外周側に径方向外側に張り出す強度フランジ19が円環状に連続して形成されている。ばね受容部17はタービンシェル2側に開口し、その開口側から前記ばね部材14が両側のばね支持壁18を座面とするようにして挿入装着されている。尚、この実施形態の場合、ばね受容部17は円周方向長さの長いものと短いものが2種類設けられており、その各ばね受容部17にはばね受容部長さに対応したばね部材14が収容されている。図2においては上部略中央のものが長さの短いばね受容部17(以下、他のもの区別するときには「短受容部」と呼ぶものとする。)となっている。
【0019】
ばね受容部17はばね部材14の回転径方向内側と外側を夫々ガイドする内壁17aと外壁17bを有し、内壁17aはホールドプレート13の接線方向に沿うように直線状に形成され、ばね部材14を収容した初期状態においてばね部材14がほぼ直線状に維持されるようになっている。これに対し外壁17bはホールドプレート13の回転軸線を中心する滑らかな円弧形状に形成され、ばね部材14の縮み変形等に伴う同部材14の径方向外側の変位を緩やかに規制するようになっている。
【0020】
また、ばね支持壁18は、径方向内側の第1の壁18aと径方向外側の第2の壁18bを有するが、これらの壁18a,18bは、図3に示すようにばね部材14の端面の装置回転軸(ホールドプレート13の回転軸)に平行な中心線pに対し全体が回転径方向外側に編寄して形成されている。正確には、第1の壁18aは中心線pよりも回転径方向内側に位置されているものの、両壁18a,18bはこれらのばね当接部の重心点が中心線pに対して径方向外側に偏るように配置されている。
【0021】
一方、伝達プレート16はホールドプレート13と同様に全体が略円板状に形成され、その外周縁部には断面略L字状の複数の係止爪20が円周方向に離間して形成されている。各係止爪20の屈曲部先端側は軸方向に沿ってホールドプレート13の各ばね支持壁18の壁18a,18b間の開口に挿入され、その側端面を座面としてばね部材14の端面に当接するようになっている。尚、隣接する係止爪20,20の間隔は、図2に示すように短受容部以外のばね受容部17の長さとほぼ同じに設定され、短受容部以外のばね受容部17では、初期状態おいて各係止爪20がばね部材14の端面に当接するようになっている。
【0022】
各係止爪20は、図3においてクロスハッチを入れて示すように、屈曲部の先端部領域と付根部領域でばね部材14の端面のうちの、径方向に沿う中心線qを挟む軸方向前後位置に当接するが、これらのばね当接部(の重心)はホールドプレート13側のばね支持壁18と同様にばね部材14の端面の中心線pに対し回転径方向外側に編寄して配置されている。尚、この実施形態の場合、ばね部材14の中心線pに対する係止爪20側のばね当接部の編寄量はばね支持壁18側の編寄量よりも大きく、係止爪20のばね当接部は、ばね支持壁18の二つの壁18a,18bの中心よりもさらに回転径方向外側に位置されている。
【0023】
ホールドプレート13と伝達プレート16はこのように回転径方向外側に偏った位置おいてばね部材14の端部に当接しているため、各ばね部材14には、常時回転径方向外側に若干編寄した位置から圧縮荷重が入力される。
【0024】
また、ホールドプレート13のばね受容部17を挟んで対向する一対のばね支持壁18,18は、図2に示すように径方向外側の第2の壁18b,18b相互間の間隔が内側の第1の壁18a,18a相互間の間隔よりも大きく設定されている。したがって、この例の場合、各ばね部材14の端部は初期状態において第2の壁18bから若干離間しており、ホールドプレート13と伝達プレート16の相対回動に伴って圧縮荷重が入力されると、各ばね部材14の端部が若干径方向外側に傾く側に傾斜し、その状態で第2の壁18bに当接することとなる。ただし、ばね部材14を比較的大きな予備圧縮荷重を付与してばね受容部17に収容した場合には、初期状態においてばね部材14の端部は同様に傾いて第2の壁18bに当接する。また、第2の壁18bはばね部材14の回転径方向外側の端部近くで同ばね部材14の端面に当接するが、そのばね部材14に対しては少なくとも同部材14のばね線直径の半分に跨るように設定され、ばね部材14のばね線の中心に常時当接荷重を付与できるようになっている。
【0025】
尚、伝達プレート16の外周縁部のうちの、隣接する係止爪20,20の中間位置には、ホールドプレート13のばね受容部14の開口側前面を覆うようにばね規制片21が延設され、このばね規制片21によってばね部材14の側方の飛び出しを規制するようになっている。また、図1において、22は、伝達プレート16と共にタービンハブ3のフランジ3aにリベット止めされて、ホールドプレート13のセンタリングと軸方向の変位規制を行うリングプレートである。
【0026】
以上の構成において、クランクシャフトの回転によってポンプがコンバータハウジング1と一体に回転すると、そのポンプがタービンを回し、その動力をタービンハブ3からトランスミッションへと伝達する。この状態からクランクシャフトの回転速度等が設定制御条件に達すると、支持壁12に設けられた油孔23からロックアップピストン10の前面に油圧が導入され、その油圧によってロックアップピストン10が後方に押圧される。すると、このピストン10によって駆動クラッチ板8が従動クラッチ板9に押し付けられ、コンバータハウジング1の動力がロックアップクラッチ4と捩り振動低減装置5を介してタービンハブ3に直接伝達される。
【0027】
このとき、捩り振動低減装置5においては、ばね部材14の両端部がホールドプレート13と伝達プレート16のばね支持壁18と係止爪20によって夫々支持され、そのばね部材14が両プレート13,16の捩れに応じて伸縮変形することにより伝達系の捩り振動を吸収する。そして、ホールドプレート13の回転速度が高まり、ばね部材14に働く遠心力が大きくなると、ばね部材14はその遠心力の影響を受け、ばね受容部17の外壁17bに押し付けられようとする。
【0028】
しかし、この捩り振動低減装置5の場合、ばね支持壁18と係止爪20のばね当接部の重心点がばね部材14の端面の中心線pよりも回転径方向外側に配置されているため、ばね支持壁18と係止爪20からばね部材14の端面に作用する押圧力の分力が回転径方向内側に作用し、その分力がばね部材14の遠心力を打ち消すように働いてばね部材14と外壁17bとの接触圧を和らげる。したがって、この装置においては、回転速度の増大によってばね部材14の遠心力が大きくなっても、ばね部材14と外壁17bとの強接触による大きな摩擦トルクの発生を防止することができ、常時安定した吸振性能を発揮することが可能である。
【0029】
この実施形態の場合、ばね支持壁18と係止爪20の両方のばね当接部の重心点をばね部材14の端面の中心線pよりも径方向外側に配置したが、いずれか片側の重心点のみを径方向外側に配置するようにしてもある程度の効果を得ることができる。ただし、この実施形態のようにばね部材14の端面に1枚板で接触する係止爪20側を径方向外側に配置するようにした場合には、係止爪20の比較的少ないオフセット量によってばね部材14の端面に回転径方向内側の分力を容易に、かつ確実に作用させることができる。
【0030】
また、この実施形態の装置5においては、係止爪20の先端部領域と付根部領域をばね部材14の中心線qを挟む軸方向前後位置にほぼ均等に接触させているため、ばね部材14の軸方向の撓み変形を少なくし、軸方向前後の接触摩擦も小さくすることができる。
【0031】
さらに、この装置5においては、ばね支持壁18の径方向外側の第2の壁18b,18bの間隔を径方向内側の第1の壁18a,18aの間隔よりも大きく設定しているため、ホールドプレート13と伝達プレート16の相対回動に伴ってばね部材14が圧縮されたときにばね支持壁18側の端部が径方向外側に開くように傾斜し、ばね部材14の端部が第2の壁18bから滑り落ちるのを確実に防止することができる。また、この装置5は、第2の壁18bのばね当接部が少なくともばね部材14のばね線直径の半分に跨るように設定されていることから、ばね部材14のばね線の中心を第2の壁18bによって常時確実に押圧することができ、その結果、第2の壁18bからのばね部材14の端部の滑り落ちやばね部材14の端部の不規則な変形を防止できるという利点もある。
【0032】
つづいて、図4,図5に示す第2の実施形態について説明する。尚、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、第1の実施形態と重複する部分については説明を省略するものとする。
【0033】
この実施形態の捩り振動低減装置105は、第1の実施形態と同様にトルクコンバータ内のロックアップクラッチ部分に適用したものであり、伝達プレート116の係止爪120の構造を除いて全て第1の実施形態のものと同様の構成とされている。
【0034】
係止爪120は伝達プレート116の外周縁部に断面略L字状に屈曲されているが、この係止爪120のばね当接部は屈曲部120aから軸方向に延出する領域だけでなく、図5においてクロスハッチを入れて示すように屈曲部120aから径方向内側に延出する領域に一部跨るように設定されている。この例の場合、図5に示すように係止爪120のばね当接部の一部がばね部材14の端面の中心線pよりも回転径方向内側に位置されることとなるが、ばね当接部全体の重心点は中心線pよりも回転径方向外側に位置されている。
【0035】
この実施形態の場合、第1の実施形態と基本構成が同様であるためやはり同様の効果を得ることができるが、上述のように係止爪120のばね当接部の一部が径方向内側に延出する領域に跨って設定されているため、係止爪120の延出基部に作用する応力を緩和できる、というさらなる利点がある。即ち、係止爪120は、ばね部材14の反力の一部を屈曲部120aよりも径方向内側で受けることができるため、ばね部材14の反力によって係止爪120の延出基部に生じるモーメントを小さくし、延出基部に作用する負荷を軽減することができる。したがって、この装置によれば、伝達プレート116の変形や劣化を防止し、安定した装置性能を長期に亙って維持することができる。
【0036】
尚、この出願の発明の実施形態は以上で説明したものに限るものではなく、例えば、ばね部材を保持するホールドプレートを出力側に配置し、係止爪を有するトルク授受相手部材を入力側に配置することも可能であり、また、捩り振動低減装置の適用部位もトルクコンバータ内に限らず、トルクコンバータの外部やトルクコンバータを採用しない車両の他の動力伝達部であっても良い。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、この出願の発明は、係止爪側とばね支持壁側の少なくとも一方のばね当接部の重心点を、ばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置したため、ばね部材の端面に回転径方向内側に向かう分力を作用させることができ、その結果、その分力によってばね部材に作用する遠心力による力を弱め、遠心力によるばね部材の撓みを緩和することができる。したがって、この出願の発明によれば、ばね部材が遠心力によってばね受容部の壁に強力に押し付けられて大きな摩擦トルクを発生する不具合を無くし、装置の吸振性能を確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の第1の実施形態を示す縦断面図。
【図2】同実施形態を示す図1の矢印A方向から見た部分破断正面図。
【図3】同実施形態を示す要部の拡大断面図。
【図4】この出願の発明の第2の実施形態を示す図2に対応の部分破断正面図。
【図5】同実施形態を示す要部の拡大断面図。
【符号の説明】
5…捩り振動低減装置
13…ホールドプレート
14…ばね部材
16…伝達プレート(トルク授受相手部材)
17…ばね受容部
18…ばね支持壁
18a…第1の壁
18b…第2の壁
20…係止爪
p…中心線
Claims (5)
- 入力側回転部と出力側回転部の一方に設けられる略円板状の部材であって、その外周縁部に、径方向に沿って断面略コ字状に屈曲したばね受容部と、このばね受容部の円周方向の前後位置に配置されたばね支持壁とを有するホールドプレートと、
前記ばね支持壁を座面とするように前記ばね受容部内に収容されたばね部材と、
入力側回転部と出力側回転部の他方に設けられる部材であって、先端部が前記ばね受容部の開口する側に向かって軸方向に突出して、その側端面を座面として前記ばね部材の端面に当接する係止爪を有するトルク授受相手部材と、を備え、
前記ばね支持壁と係止爪でばね部材を圧縮しつつホールドプレートとトルク授受相手部材の間でトルクの伝達を行い、ばね部材の弾性によって捩り振動を吸収する捩り振動低減装置において、
前記係止爪とばね支持壁の少なくとも一方のばね当接部の重心点を、前記ばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置したことを特徴とする捩り振動低減装置。 - 前記係止爪のばね当接部の重心点を、前記ばね部材の端面の装置回転軸に平行な中心線よりも回転径方向外側に配置し、その係止爪の先端部領域と付根部領域を、ばね部材の端面のうちの、回転径方向に沿う中心線を挟む軸方向前後位置に夫々当接させたことを特徴とする請求項1に記載の捩り振動低減装置。
- 前記係止爪の付根部側が径方向内側に屈曲されてトルク授受相手部材の本体部に一体化されている請求項2に記載の捩り振動低減装置であって、
前記係止爪の付根部側のばね当接部を、少なくとも屈曲部よりも径方向内側領域に跨るように設定したことを特徴とする捩り振動低減装置。 - 前記ホールドプレートのばね支持壁がばね受容部と同側に断面略コ字状に屈曲して形成されると共に、その屈曲部の径方向内側の第1の壁と径方向外側の第2の壁との幅が前記ばね部材の直径よりも狭められて設定され、ばね部材が前記第1の壁と第2の壁の端部に跨って支持される請求項1〜3のいずれかに記載の捩り振動低減装置であって、
前記第2の壁のばね当接部を、対向するばね支持壁の第2の壁相互間の間隔が第1壁相互間の間隔よりも大きくなるように、第1の壁のばね当接部に対して円周方向にオフセットさせたことを特徴とする捩り振動低減装置。 - 前記ホールドプレートのばね支持壁がばね受容部と同側に断面略コ字状に屈曲して形成されると共に、その屈曲部の径方向内側の第1の壁と径方向外側の第2の壁との幅が前記ばね部材の直径よりも狭められて設定され、ばね部材が前記第1の壁と第2の壁の端部に跨って支持される請求項1〜4のいずれかに記載の捩り振動低減装置であって、
前記第2の壁のばね当接部を、少なくともばね部材のばね線直径の半分に跨るように設定したことを特徴とする捩り振動低減装置。
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Effective date: 20071218 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |