JP2004011555A - タービン型燃料ポンプ - Google Patents

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Masaaki Iijima
飯島 正昭
Junichi Motojima
本島 淳一
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Abstract

【課題】ポンプハウジングを2部材で構成し、内部の燃料通路とインペラとの径方向、軸方向のクリアランスにバラツキが生じるのを抑えると共に、吐出効率等を向上できるようにする。
【解決手段】ポンプハウジング9を外側ハウジング10と内側ハウジング12との2部材で構成する。ポンプハウジング9内には吸込口11から吐出口14に向けインペラ20の外周に沿って延びる燃料通路15を形成する。内側ハウジング12の筒部12Aには径方向内側に突出する環状突出部16を形成し、この環状突出部16によって燃料通路15を奥所側流路17と衝合側流路18に分割する。内側ハウジング12の奥所側に位置する奥所側流路17は、インペラ20の軸線O−Oに対し斜めに傾いた断面U字状の凹溝として形成する。
【選択図】    図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両用エンジンの噴射弁等に向けて燃料を供給するのに好適に用いられるタービン型燃料ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、乗用車等の車両には、エンジンに燃料を供給するための電子制御式燃料噴射装置が搭載され、この燃料噴射装置は、エンジンの燃焼室に向けて燃料を噴射させる噴射弁と、車両の後部側等に設けた燃料タンク内の燃料を前記噴射弁に向けて吐出供給する燃料ポンプ等とにより構成されている。
【0003】
そして、この種の従来技術による燃料ポンプとしては、電動モータを収容する筒状のケーシングと、該ケーシングの一端側に設けられた上カバーと、該上カバーとの間で前記電動モータを支持するように前記ケーシングの他端側に設けられ燃料の吸込口と吐出口との間に環状の燃料通路を有するポンプハウジングと、該ポンプハウジング内に回転可能に設けられ前記電動モータによって回転される間に前記燃料通路内で燃料を圧送する羽根が外周側に列設されたインペラとを備えてなるタービン型燃料ポンプが知られている(例えば、特開昭59−141795号公報等)。
【0004】
この場合、前記ポンプハウジングは、前記ケーシングの外側寄りに位置し前記吸込口が形成された外側ハウジングと、前記ケーシングの内側に位置し前記吐出口が形成された内側ハウジングと、該内側ハウジングと外側ハウジングと間に挟持して設けられ前記インペラを径方向外側から取囲む環状のスペーサリングとにより3部材を用いて構成されている。
【0005】
そして、これらの3部材からなるポンプハウジング内には前記燃料通路が形成され、この燃料通路は、前記インペラの外周側で前記吸込口から吐出口に向けて燃料を流通させるものである。また、前記スペーサリングの内周側には、インペラの外周に向けて径方向内側に突出する環状突出部を設け、この環状突出部によりポンプハウジング内の燃料通路を上,下の2つの流路に分割する構成としている。
【0006】
これにより、ポンプハウジングの燃料通路内を吸込口から吐出口に向けて流れる燃料に澱み等が発生するのを抑え、前記環状突出部によって分割された2つの流路内で燃料を円滑に流通させると共に、燃料の吐出効率を向上できるようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、ポンプハウジングを、外側ハウジング、内側ハウジングおよびスペーサリングの3部材で構成し、該スペーサリングの内周側に環状突出部を設けることにより、燃料の流れを円滑にして吐出効率を向上できるという利点があるものの、下記のような問題が生じている。
【0008】
即ち、この場合のポンプハウジングは、外側ハウジング、内側ハウジングおよびスペーサリングの3部材をそれぞれ別々に成形、加工した後に、3部材を互いに衝合して組立作業を行う必要があり、組立作業に手間がかかるという問題がある。
【0009】
また、これらの3部材を組立てるときには、各部材毎の寸法交差や寸法誤差等が相乗されることにより、内部の燃料通路とインペラとの径方向および軸方向のクリアランスにバラツキが生じ易く、各部材の寸法管理を厳しくする必要が生じ、成形、加工時の作業性が悪くなるという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、ポンプハウジングを2部材で構成することにより、部品点数を削減して組立時の作業性を向上できると共に、内部の燃料通路とインペラとの径方向、軸方向のクリアランスにバラツキが生じるのを低減できるようにしたタービン型燃料ポンプを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、ポンプハウジングを、インペラを挟んで軸方向両側から互いに衝合され、内部に燃料通路を形成する2つのハウジング部材により構成し、該各ハウジング部材のうち一方のハウジング部材には、前記燃料通路を形成する周壁から前記インペラの外周に向けて径方向内側に突出する環状突出部を設け、前記燃料通路のうち該環状突出部よりも前記周壁の奥所側に位置する奥所側流路は、前記インペラの軸方向に延びる軸線に対して斜めに傾いた断面形状を有する構成としたことにある。
【0012】
このように構成することにより、ポンプハウジングを2つのハウジング部材を用いて形成でき、部品点数を減らして組立時の作業性を高めることができる。そして、一方のハウジング部材には、その奥所側に斜めに傾いた断面形状を有する奥所側流路を、例えばフライス盤等の加工手段を用いて形成でき、このときに環状突出部も形成することができる。また、ポンプハウジングを2部材で構成するために、内部の燃料通路とインペラとの径方向および軸方向のクリアランスにバラツキが生じるのを容易に抑えることができ、各部材を成形、加工するときの作業者の負担等を軽減することができる。
【0013】
また、請求項2の発明は、奥所側流路の横断面の壁面が構成する輪郭線が、インペラの軸方向に延びる軸線に対して斜めに傾いた軸に関してほぼ軸対称となる横断面形状を有してなる構成としている。これにより、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0014】
また、請求項3の発明は、2つのハウジング部材を、ケーシングを外側から閉塞するように該ケーシングに取付けられ吸込口が形成された外側ハウジングと、前記ケーシングの内側に位置して該外側ハウジングに衝合状態で設けられ吐出口および環状突出部が形成された内側ハウジングとにより構成し、奥所側流路は加工用刃物を前記内側ハウジングの周壁奥所側に対し予め決められた角度だけ斜めに傾けた状態で押付けることにより形成している。
【0015】
これにより、ポンプハウジングを外側ハウジングと内側ハウジングとの2部材で構成でき、内側ハウジングには環状突出部よりも奥所側となる位置に加工用刃物を所定角度だけ斜めに傾けた状態で押付けることにより、燃料通路の一部となる奥所側流路を形成することができる。
【0016】
さらに、請求項4の発明によると、内側ハウジングは、インペラを収容するため外側ハウジングとの衝合面側に開口し外周側が燃料通路の一部となるインペラ収容凹部を有し、奥所側流路は該インペラ収容凹部の奥所側角隅にフライス加工を施すことにより形成してなる構成としている。
【0017】
これにより、内側ハウジングに形成され外側ハウジングとの衝合面側に開口したインペラ収容凹部内に、インペラを収容することができ、該インペラ収容凹部の奥所側角隅にはフライス加工を施すことにより、インペラの軸線に対して斜めに傾いた断面形状の奥所側流路を形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるタービン型燃料ポンプを、添付の図1ないし図6に従って詳細に説明する。
【0019】
図中、1は燃料ポンプの外殻となる筒状のケーシングで、該ケーシング1は、金属製のパイプ材等を用いて形成され、その軸方向両端側は後述の吐出カバー2とポンプハウジング9とにより閉塞されている。
【0020】
2はケーシング1の一端側に設けられた有蓋筒状の吐出カバ−で、該吐出カバー2には、図1に示す如く吐出ポート2A、コネクタ部2Bがそれぞれ上向きに突出して設けられ、吐出カバー2の中心側には下向きに延びる軸受筒2Cが設けられている。
【0021】
3は吐出ポ−ト2A内に設けられた残圧保持用のチェック弁で、該チェック弁3は、後述する電動モータ7の回転時にケーシング1内を流通する燃料により開弁され、この燃料が吐出ポート2Aから外部の燃料配管(図示せず)内に向けて吐出されるのを許す。そして、チェック弁3は、電動モータ7の停止時には閉弁し、前記燃料配管内の燃料がケーシング1内を戻るのを阻止することにより、この燃料配管内を所定の残圧状態に保持するものである。
【0022】
4は吐出カバー2の軸受筒2C内に嵌合して設けられた軸受としてのブッシュで、該ブッシュ4は、後述の回転軸6をポンプハウジング9側のブッシュ5と共に回転可能に支持するものである。
【0023】
5はブッシュ4との間で回転軸6を回転可能に支持するためポンプハウジング9側に設けられた他の軸受としてのブッシュで、該ブッシュ5は、後述する内側ハウジング12の段付穴12E内に嵌合固着され、その内周側には回転軸6が摺動可能に挿嵌されている。
【0024】
6は吐出カバー2とポンプハウジング9との間にブッシュ4,5を介して軸支された回転軸で、該回転軸6は、ケーシング1内を図2に示す軸線O−Oに沿って軸方向に伸長し、後述する電動モータ7の回転子7B等をケーシング1内で回転可能に支持するものである。
【0025】
ここで、回転軸6の一端(上端)側は、図1に示すように吐出カバー2の軸受筒2C内に挿入され、軸受筒2C内のブッシュ4により回転可能に支持されている。また、回転軸6の下端側は、ブッシュ5を介してポンプハウジング9内へと突出し、この突出端側には図3に示す如く後述のインペラ20に廻止め状態で嵌合する面取り部6Aが形成されている。
【0026】
7はケーシング1内に収容された電動モータで、該電動モータ7は、吐出カバー2とポンプハウジング9との間に位置してケーシング1内に嵌合して設けられ永久磁石からなる固定子(図示せず)を支持した筒状のヨーク7Aと、該ヨーク7Aの内側に隙間をもって挿入され、回転軸6に一体回転するように取付けられた回転子7Bおよびコンミテ−タ7Cと、該コンミテータ7Cに摺接する一対のブラシ(図示せず)等とにより構成されている。
【0027】
そして、電動モータ7は、吐出カバー2のコネクタ部2Bに外部から通電すると、前記ブラシ、コンミテータ7Cを介して回転子7Bに電流が供給されることより、該回転子7Bが回転軸6と一体に回転し、これによって後述のインペラ20を回転駆動するものである。
【0028】
8は電動モータ7のヨーク7Aと回転子7Bとの間に形成された燃料の通路部で、該通路部8は、後述するポンプハウジング9の吐出口14からケーシング1内に吐出された燃料を、ヨーク7Aと回転子7Bとの隙間を介して吐出カバー2側へと流通させるものである。
【0029】
9はケーシング1の他端(下端)側に設けられたポンプハウジングで、該ポンプハウジング9は、後述の外側ハウジング10と内側ハウジング12とからなる2つのハウジング部材を上,下方向で衝合することにより構成され、ポンプハウジング9内には後述のインペラ20が回転可能に設けられている。
【0030】
10はポンプハウジング9のハウジング部材を構成する外側ハウジングで、該外側ハウジング10は、図1、図2に示すようにケーシング1の下端側にカシメ等の手段を用いて嵌合状態で取付けられ、ケーシング1を外側から閉塞するものである。そして、外側ハウジング10は、アルミニウム等の金属材料によりアルミダイキャスト等の手段を用いて成形され、燃料の吸込口11が一体形成されている。
【0031】
また、外側ハウジング10には、その中心側に円形状の凹窪部10Aが形成され、インペラ20の外周側となる位置には、図2に示す軸線O−Oを中心として周方向に延びる断面略半円形の円弧溝10Bが形成されている。そして、該円弧溝10Bは、後述する内側ハウジング12の周壁溝12Dと共に後述の衝合側流路18を形成し、図3に示す角度θの範囲にわたって周方向に延びるものである。
【0032】
12は外側ハウジング10と共にポンプハウジング9を構成するハウジング部材としての内側ハウジングで、該内側ハウジング12は、外側ハウジング10と同様にアルミダイキャスト等の手段を用いて成形され、外側ハウジング10に衝合した状態でケーシング1内に嵌合して取付けられるものである。
【0033】
そして、内側ハウジング12は、図2ないし図6に示す如く筒状の周壁となる筒部12Aと、該筒部12Aを上側から覆う蓋部12Bとにより扁平な有蓋筒状体として形成され、筒部12Aの内周側は、外側ハウジング10との衝合面12C側に開口する円形状のインペラ収容凹部13となっている。
【0034】
また、内側ハウジング12の筒部12Aには、後述する環状突出部16の下側に位置して円弧状の周壁溝12Dが形成され、該周壁溝12Dは、外側ハウジング10の円弧溝10Bと共に下側の衝合側流路18を形成するものである。
【0035】
一方、内側ハウジング12の蓋部12Bには、その中心側にブッシュ5が嵌合して固着される段付穴12Eが形成され、外周側には図2中に二点鎖線で示す吐出口14が上,下に延びるように穿設されている。
【0036】
15はインペラ収容凹部13の外周側に位置してポンプハウジング9内に形成された環状の燃料通路で、該燃料通路15は、図3に示す如く軸心Oを中心として周方向に略C字状に延び、後述の環状突出部16により上,下に2分割された奥所側流路17と衝合側流路18とを含んで構成されるものである。
【0037】
そして、燃料通路15は、その始端側が吸込口11に連通し、終端側は吐出口14に連通している。また、燃料通路15の始端側は、図3に示す如く内側ハウジング12の筒部12Aおよび蓋部12Bを部分的に切欠くように形成された吸込通路部15Aとなり、該吸込通路部15Aは、吸込口11から吸込まれる燃料を燃料通路15内に円滑に導くものである。
【0038】
16は内側ハウジング12の筒部12Aに設けられた環状突出部で、該環状突出部16は、図2に示すように内側ハウジング12の筒部12Aからインペラ20の外周に向けて径方向内側へと山形状に突出し、燃料通路15をインペラ20の軸方向で上,下2つの奥所側流路17,衝合側流路18に分割するものである。
【0039】
ここで、上側の奥所側流路17は、内側ハウジング12の筒部12Aと蓋部12Bとの間に位置する奥所側角隅に後述のフライス加工を施すことにより、図6に示す如く軸線O−Oに対し角度α(例えば、α=25〜65度の範囲)だけ斜めに傾いた断面U字状の凹溝として形成されている。即ち、奥所側流路17の横断面の壁面が構成する輪郭線が、インペラ20の軸方向に延びる軸線O−Oに対して角度αだけ斜めに傾いた軸Lに関してほぼ軸対称となる横断面形状を有している。また、下側の衝合側流路18は、外側ハウジング10の円弧溝10Bと内側ハウジング12の周壁溝12Dとにより形成されている。
【0040】
そして、環状突出部16は、これらの流路17,18と共に図3に示す角度θ(例えば、θ=250〜270度)の範囲にわたってインペラ20の周方向に延び、燃料通路15内を吸込口11から吐出口14に向けて流れる燃料に澱み等が発生するのを抑えるものである。
【0041】
19は内側ハウジング12の筒部12A側に設けられたシール隔壁で、該シール隔壁19は、図3に示す如く内側ハウジング12の筒部12Aからインペラ20の外周に近接する位置まで突出する円弧状凸部として形成されている。そして、シール隔壁19は、吸込口11と吐出口14との間でインペラ20の外周側をシールし、吸込口11から吸込んだ燃料が燃料通路15に沿って流れるのを補償するものである。
【0042】
20はポンプハウジング9のインペラ収容凹部13内に回転可能に設けられたインペラで、該インペラ20は、例えば強化プラスチック材料によって略円板状に形成され、その外周側には多数の羽根20A,20A,…が列設されている。
【0043】
そして、インペラ20の外周側には、各羽根20A間に上,下の円弧状凹部20B,20Bがそれぞれ設けられ、これらの円弧状凹部20Bは、ポンプハウジング9内の流路17,18にほぼ対応する曲率をもって形成されている。また、インペラ20の中心側には、図3に示す如く回転軸6用の嵌合穴20Cと、該嵌合穴20Cの外側に位置する例えば3個の透孔20D,20D,…とが穿設されている。
【0044】
ここで、インペラ20は、インペラ収容凹部13内で外側ハウジング10の上面と内側ハウジング12の蓋部12B下面との間に上,下面がフローティングシールされ、この状態で回転軸6と一体に電動モータ7により回転駆動されるものである。また、インペラ20の各透孔20Dは、外側ハウジング10の凹窪部10Aと内側ハウジング12の段付穴12E側との間で燃料圧力等を均一化する機能を有している。
【0045】
なお、21は外側ハウジング10の凹窪部10Aの底部側に設けられたスラスト受けで、該スラスト受け21は、回転軸6に作用するスラスト荷重を下側から支承し、回転軸6を回転可能に支持するものである。
【0046】
本実施の形態によるタービン型燃料ポンプは上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0047】
まず、吐出カバー2のコネクタ部2Bを通じて外部から給電を行うと、電動モータ7の回転子7Bに駆動電流が供給されることにより、回転子7Bが回転軸6と一体に回転し、ポンプハウジング9内でインペラ20を回転駆動する。そして、インペラ20の回転により、燃料タンク(図示せず)内の燃料が吸込口11から燃料通路15へと吸込まれ、この燃料はインペラ20の各羽根20Aにより燃料通路15に沿って圧送されつつ、吐出口14からケーシング1内に吐出される。
【0048】
このように、ケーシング1内に流れた燃料は、該ケーシング1内を電動モータ7の通路部8等を介して吐出カバー2側に向け流通し、吐出ポ−ト2A内のチェック弁3を開弁させつつ、この吐出ポート2Aから外部の燃料配管を介してエンジン本体側の噴射弁(いずれも図示せず)側へと吐出供給されるものである。
【0049】
この場合、ポンプハウジング9内の燃料通路15は、環状突出部16により上,下の奥所側流路17,衝合側流路18に2分割されているので、燃料通路15内を吸込口11から吐出口14に向けて流れる燃料に澱み等が発生するのを抑えることができ、それぞれの奥所側流路17、衝合側流路18内での燃料の流れを円滑にできると共に、燃料の吐出効率を向上することができる。
【0050】
しかし、環状突出部16は内側ハウジング12の筒部12Aから径方向内向きに突出し、その奥所側には上側の奥所側流路17を形成する構成であるため、内側ハウジング12をアルミダイキャスト等の鋳造手段を用いて成形するときに、成型用の金型(図示せず)を上,下に型抜きしようとしても、奥所側流路17に対応する箇所は、環状突出部16が邪魔になって型抜きができないことになる。
【0051】
一方、外側ハウジング10については、凹窪部10A、円弧溝10Bおよび吸込口11が形成されているだけであるから、外側ハウジング10をアルミダイキャスト等の鋳造手段を用いて成形するときに、成型用の金型(図示せず)を上,下に型抜きすることは容易である。
【0052】
これに対し、前述した従来技術(例えば、特開昭59−141795号公報)では、ポンプハウジングを外側ハウジング、内側ハウジングおよび環状のスペーサリングからなる3部材により構成し、スペーサリングの内周側に環状突出部を設けることにより、これらの3部材をアルミダイキャスト等の手段で成形できるようにしている。
【0053】
しかし、この従来技術の場合は、ポンプハウジングを3部材で構成しているため、組立作業に手間がかかる上に、これらの3部材を組立てるときに、各部材毎の寸法交差や寸法誤差等が相乗されることにより、インペラの径方向および軸方向のクリアランスにバラツキが生じる等の問題が起きている。
【0054】
そこで、本実施の形態にあっては、内側ハウジング12の成形、加工作業を下記のように2段階で行うことにより、ポンプハウジング9を外側ハウジング10と内側ハウジング12との2部材から構成し、内側ハウジング12の筒部12Aには径方向内向きに突出する環状突出部16を形成でき、その奥所側には上側の奥所側流路17を形成できるようにしている。
【0055】
即ち、内側ハウジング12をアルミダイキャスト等の鋳造手段を用いて成形する内側ハウジング12の成形工程で、図5に示す如く内側ハウジング12には、筒部12A、蓋部12B、衝合面12C、周壁溝12D、段付穴12Eおよびインペラ収容凹部13等を形成し、図5中に二点鎖線で示す奥所側流路17は後加工(フライス加工)とすることにより、成型用の金型(図示せず)を上,下に容易に型抜きすることができる。
【0056】
次に、図6に示す内側ハウジング12の流路形成工程では、フライス盤(図示せず)の加工用刃物22を軸線O−Oに対して予め決められた角度α(例えば、α=25〜65度の範囲内)だけ斜めに傾けた状態で、内側ハウジング12の筒部12Aと蓋部12Bとの間の奥所側角隅に加工用刃物22の先端部を押付けてフライス加工を行うことにより、上側の奥所側流路17を斜めに傾いた断面U字状の凹溝として形成する。
【0057】
この場合、加工用刃物22は先端側が略半球形状をなし、図6中に示す矢示A方向に回転(自転)しつつ、軸Lに沿って矢示B方向へと押付けるように徐々に送り込まれる。また、このときには内側ハウジング12または加工用刃物22のいずれか一方を、図6中の軸線O−Oの周囲で矢示C方向に回転させることにより、図3に示す角度θの範囲にわたって環状突出部16と共に奥所側流路17を形成する。
【0058】
このように、内側ハウジング12の製造工程を、アルミダイキャスト等による成形工程と、その後のフライス加工による流路形成工程との2段階の工程で行うことにより、ポンプハウジング9を外側ハウジング10と内側ハウジング12との2部材により構成でき、内側ハウジング12の筒部12Aには径方向内向きに突出する環状突出部16を形成できると共に、その奥所側には上側の奥所側流路17を形成することができる。
【0059】
従って、本実施の形態によれば、ポンプハウジング9を2部材で構成することにより、従来技術に比較して部品点数を削減することができ、組立時の作業性を確実に向上できると共に、ポンプハウジング9内での燃料の流れを円滑化でき、燃料の吐出効率を高めることができる。
【0060】
また、外側ハウジング10と内側ハウジング12との2部材からなるポンプハウジング9は、内部の燃料通路15とインペラ20との径方向、軸方向のクリアランスにバラツキが生じるのを低減でき、各部材毎の成形、加工作業を容易に行うことができる。
【0061】
なお、前記実施の形態では、内側ハウジング12の奥所側にフライス加工を施すことにより、奥所側流路17を形成するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、他の加工手段を用いて斜めに傾いた断面U字状の奥所側流路17を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるタービン型燃料ポンプを示す縦断面図である。
【図2】図1中のポンプハウジング等を拡大して示す要部断面図である。
【図3】内側ハウジングおよびインペラを図2中の矢示 III−III方向からみた断面図である。
【図4】外側ハウジング、内側ハウジングおよびインペラを分解状態で示す断面図である。
【図5】内側ハウジングを成形した状態を示す断面図である。
【図6】成形後の内側ハウジングに対し奥所側流路をフライス加工している状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 吐出カバー
6 回転軸
7 電動モータ
9 ポンプハウジング
10 外側ハウジング(ハウジング部材)
11 吸込口
12 内側ハウジング(ハウジング部材)
12A 筒部(周壁)
12B 蓋部
13 インペラ収容凹部
14 吐出口
15 燃料通路
16 環状突出部
17 奥所側流路
18 衝合側流路
20 インペラ
20A 羽根
22 加工用刃物

Claims (4)

  1. 電動モータを収容する筒状のケーシングと、該ケーシングに設けられ燃料の吸込口と吐出口との間に環状の燃料通路を有するポンプハウジングと、該ポンプハウジング内に回転可能に設けられ前記電動モータによって回転される間に前記燃料通路内で燃料を圧送する羽根が外周側に列設されたインペラとを備えてなるタービン型燃料ポンプにおいて、
    前記ポンプハウジングは、前記インペラを挟んで軸方向両側から互いに衝合され、内部に前記燃料通路を形成する2つのハウジング部材により構成し、
    該各ハウジング部材のうち一方のハウジング部材には、前記燃料通路を形成する周壁から前記インペラの外周に向けて径方向内側に突出する環状突出部を設け、
    前記燃料通路のうち該環状突出部よりも前記周壁の奥所側に位置する奥所側流路は、前記インペラの軸方向に延びる軸線に対して斜めに傾いた断面形状を有する構成としたことを特徴とするタービン型燃料ポンプ。
  2. 前記奥所側流路の横断面の壁面が構成する輪郭線が、前記インペラの軸方向に延びる軸線に対して斜めに傾いた軸に関してほぼ軸対称となる横断面形状を有してなる請求項1に記載のタービン型燃料ポンプ。
  3. 前記2つのハウジング部材は、前記ケーシングを外側から閉塞するように該ケーシングに取付けられ前記吸込口が形成された外側ハウジングと、前記ケーシングの内側に位置して該外側ハウジングに衝合状態で設けられ前記吐出口および環状突出部が形成された内側ハウジングとにより構成し、前記奥所側流路は加工用刃物を前記内側ハウジングの周壁奥所側に対し予め決められた角度だけ斜めに傾けた状態で押付けることにより形成してなる請求項1または2に記載のタービン型燃料ポンプ。
  4. 前記内側ハウジングは、前記インペラを収容するため前記外側ハウジングとの衝合面側に開口し外周側が前記燃料通路の一部となるインペラ収容凹部を有し、前記奥所側流路は該インペラ収容凹部の奥所側角隅にフライス加工を施すことにより形成してなる請求項3に記載のタービン型燃料ポンプ。
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