JP2004010997A - 制振材料と制振性に優れたばね及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制振材料は、Cu−Al−Mn合金であって、該合金の組織は、双晶組織を有し、かつオーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相との2相組織であることを特徴とする。制振材料の製造方法は、主成分としてCu,AlおよびMnを含む原料を調合し、溶解してインゴットを形成するインゴット形成工程と、該インゴットを熱間加工、引続いて冷間加工と焼鈍とを繰返す加工熱処理により所定寸法の粗材を得る粗材形成工程と、該粗材に溶体化処理、焼入れ処理および時効処理を施してオーステナイト(β)相を固定した熱処理材を得る熱処理工程と、該熱処理材に永久ひずみを付与するひずみ付与工程と、からなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状記憶特性及び超弾性に優れたCu−Al−Mn合金からなる制振材料と、それからなる制振性に優れたばねに関する。
【0002】
【従来の技術】
TiNi合金やCu−Sn、Cu−Znなどの銅系合金からなる形状記憶合金は、マルテンサイト変態の逆変態に付随して顕著な形状記憶効果及び超弾性を示すことが知られている。TiNi合金は、生活環境温度近辺で優れた形状記憶性及び超弾性を発揮するので、電子レンジのダンパー、エアコン風向制御部材、炊飯器蒸気調圧弁、建築用の換気口、携帯電話のアンテナ、眼鏡フレーム、ブラジャーのフレームなどの幅広い分野で実用化されている。TiNiは銅系合金に比較して繰返し特性、耐食性など多くの点で優れているが、コストが銅系合金の10倍以上であるという欠点を有する。従って、よりコストの低い形状記憶/超弾性合金が望まれていた。
【0003】
このような状況で、コスト的に有利な銅系形状記憶合金について多くの実用化研究がなされてきた。しかし、Cu−Sn、Cu−Znといった既存の銅系合金には冷間加工性の悪いものが多く、30%以上の冷間加工が不可能であるため、実用化への障害となっていた。このため従来より、冷間加工率や機械的性質の改善のために結晶粒の微細化が盛んに行われてきた。特開平7−62472号公報で本発明者らは、冷間加工性に優れたβ単相構造を有するCu−Al−Mn系形状記憶合金を提案した。
【0004】
さらに、特開2001−20026号公報では、優れた加工性を維持しながら、高い形状記憶特性ならびに超弾性を持つCu−Al−Mn系合金と、この合金からなる線材、板材及びパイプなどの部材、ならびにそれらの製造方法についても提案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、Cu−Al−Mn系合金の有する優れた制振特性については知られていなかった。また、この合金材料からなる制振特性を有するばねについても知られていなかった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、Cu−Al−Mn系合金からなる制振特性に優れた制振材料と、この制振材料からなる優れた制振特性を有する各種のばねを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の制振材料は、Cu−Al−Mn合金であって、該合金の組織は、双晶組織を有し、かつオーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相との2相組織であることを特徴とする。
【0008】
本発明の制振材料のマルテンサイト(M)相の体積分率は、オーステナイト(β)相の体積を100%としたとき50%以下であることが望ましい。
【0009】
本発明の制振材料は、3〜10重量%のAlと、5〜20重量%Mnと、合金全体を100重量%とした場合、合計で0.001〜10重量%のNi,Co,Fe,Ti,V,Cr,Si,Nb,Mo,W,Sn、Sb、Mg、P、Be,Zr,Zn,B,C,Agおよびミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素と、残部がCuおよび不可避不純物とからなるCu−Al−Mn合金からなることが好ましい。
【0010】
本発明の制振材料の製造方法は、主成分としてCu,AlおよびMnを含む原料を調合し、溶解してインゴットを形成するインゴット形成工程と、該インゴットを熱間加工、引続いて冷間加工と焼鈍とを繰返す加工熱処理により所定寸法の粗材を得る粗材形成工程と、該粗材に溶体化処理、焼入れ処理および時効処理を施してオーステナイト(β)相を固定した熱処理材を得る熱処理工程と、該熱処理材に永久ひずみを付与するひずみ付与工程と、からなることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記ひずみ付与工程は、ショットピーニング、セッチングまたは圧延加工のいずれかであることが望ましく、前記圧延加工の圧延率は5%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の制振性に優れたばねは、少なくとも一部は制振材料からなる制振性に優れたばねであって、前記制振材料は、Cu−Al−Mn合金であることを特徴とする。 本発明の制振性に優れたばねは、ニットメッシュばね、コイルばね、薄板ばね、クランプばね、ばね座金であることが好ましい。
【0013】
なお、本発明の制振材料の製造方法および制振性に優れたばねに用いるCu−Al−Mn合金は、本発明の制振材料に用いられるCu−Al−Mn合金と同一組成である。
【0014】
【発明の実施の形態】
(Cu−Al−Mn合金の制振特性)
Cu−Al−Mn合金は、双晶組織を持ち、TiNi合金やMn−Cu合金のような双晶型制振合金である。すなわち、形状記憶効果に寄与する熱弾性型マルテンサイト(M)と、母相との間の界面、またはマルテンサイト(M)相中に生じた内部双晶境界、あるいはマルテンサイトのバリアント(兄弟相)相間の界面などの運動に伴う内部摩擦を利用して優れた制振性を発現する合金である。
【0015】
Cu−Al−Mn合金からなる線材と、Cu−Be合金およびSUS304Sの線材との、周波数による損失係数の変化を比較して図1に示す。図1でAはCu−Al−Mn合金、BはCu−Be合金、CはSUS304Sである。また、各合金の棒グラフは、周波数を3段階に変化させた場合の損失係数を示し、周波数は、各合金の左からそれぞれ0.1Hz、1Hz、10Hzである。
【0016】
すなわち、Cu−Al−Mn合金はCu−Be合金やSUS304Sと比較して損失係数が数倍も高く、優れた制振特性を有している。さらにこのCu−Al−Mn合金の減衰能は、周波数にほとんど依存しないことが分る。
【0017】
次に、比較として、図2に各種材料の引張り強度と減衰能との関係を示す。図2は日本金属学会誌(65−7(2001)P607)に記載の引張り強度と減衰能の関係の図にCu−Al−Mn合金の減衰能を併記したものである。
【0018】
図2から分るようにCu−Al−Mn合金は、引張り強度が100〜1000MPaの範囲で他の制振合金と比較して優れた減衰能を有していることが分る。ここで、Cu−Al−Mn合金については、材料の線径や板厚に対する結晶粒径を変化させることで、引張り強度が100〜1000MPaの試料を作成して減衰能との関係を調べた。従って、本発明の制振材料は、目的に応じて材料強度の選択性が高く、また、周波数に対して安定な減衰能を有する優れた制振材料である。
【0019】
本発明の制振材料は、Cu−Al−Mn合金であって、該合金の組織は、オーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相との2相組織であることを特徴とする。また、本発明の制振材料のマルテンサイト(M)相の体積分率は、前記オーステナイト(β)相の体積を100%としたとき50%以下であることが望ましい。
【0020】
Cu−Al−Mn合金は、オーステナイト(β)相単相でも優れた制振性を示すが、僅かな永久ひずみを加えることで制振特性をさらに向上させることができる。つまり、加工により発生するマルテンサイト(M)相がさらに制振性を高める効果を発揮するわけである。
【0021】
Cu−Al−Mn合金からなる板材の圧延率に対する制振特性を図3に示した。すなわち、熱間圧延、冷間圧延等の加工工程を経て所定の形状とした後、溶体化処理、焼入れ処理によって組織をオーステナイト(β)相単相とした後、圧延率を変えて冷間圧延し、オーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相との2相組織とした板材である。
【0022】
制振特性は、圧延率(%)による対数減衰率(δ)の変化で示した。ここで圧延率(%)は、(t0−t1)/t0×100(%)で表され、t0:圧延前の板厚、t1:圧延後の板厚である。対数減衰率(δ)は、材料の減衰能を示すパラメータでtanδの値が高いほど制振特性は優れていることを表す。
【0023】
圧延率が0%の場合にはオーステナイト(β)相単相であり、tanδが0.185と良好な減衰能を有している。このオーステナイト(β)相単相の材料に圧延加工を加えると圧延率の増加に伴って減衰能は向上し、圧延率が5%では、tanδは0.21まで増加した。しかし、圧延率が7%では、tanδは0.11となり圧延加工を施さないオーステナイト(β)相単相よりも大きく減衰能が低下することが分った。また、圧延率(%)に対するマルテンサイト(M)相の体積分率(%)(オーステナイト(β)相の体積を100%としたときのマルテンサイト(M)相の体積割合)の変化は、図4に示すように圧延率の増加に伴いマルテンサイト(M)相の体積分率(%)もほぼ直線的に増加する。したがって、圧延率が5%よりも大きくなるとマルテンサイト(M)相の体積分率(%)が50%を越え、オーステナイト(β)相との境界が減少する。このために減衰能が低下するものと考えられる。つまり、図3と図4から、圧延加工によって減衰能が向上するのは圧延率が0〜5%の範囲であり、これはオーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相との2相組織において、マルテンサイト(M)相の体積分率が0〜50%の範囲であることを示している。
【0024】
なお、マルテンサイト(M)相の体積分率(%)マルテンサイト(M)相の体積分率は、各圧延率で圧延した試料の表面を研磨して、X線回折によりオーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相のピーク比から求めた。
【0025】
制振材料の金属組織を図5に示す。図5はCu−Al−Mn合金を直径1mmの線材としたときの断面金属組織である。a)は熱処理後のひずみを与えていないオーステナイト(β)相単相組織であり、結晶粒径が80〜300μmの再結晶組織となっている。b)はa)の状態の線材に約2%の引張りひずみを付与したときの組織である。白い針状部分はマルテンサイト(M)相で、黒い部分は母相のオーステナイト(β)相であり、2相組織となっている。
(制振材料)
本発明の制振材料は、3〜10重量%のAlと、5〜20重量%Mnと、残部がCuおよび不可避不純物とからなる組成を有し、さらに、Ni,Co,Fe,Ti,V,Cr,Si,Nb,Mo,W,Sn、Sb、Mg、P、Be,Zr,Zn,B,C,Agおよびミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を合金全体を100重量%として、合計で0.001〜10重量%含有するCu−Al−Mn合金からなることが好ましい。
【0026】
ここで、Alの含有量を3〜10重量%としたのは、3重量%未満ではオーステナイト(β)相を形成することができず、また10重量%を越えると極めて脆くなるためである。
【0027】
また、Mnの含有量を5〜20重量%としたのは、5重量%未満では満足な加工性が得られず、かつオーステナイト(β)相単相の領域を形成することができなくなり、20重量%を越えて含有すると、組織内部に転位が導入されやすくなるため形状記憶特性が著しく低下してしまうと同時に、マルテンサイト変態温度が低下してしまうからである。
【0028】
さらに、Ni,Co,Fe,Ti,V,Cr,Si,Nb,Mo,W,Sn、Sb、Mg、P、Be,Zr,Zn,B,C,Agおよびミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を合金全体を100重量%として、合計で0.001〜10重量%含有するとしたのは、0.001重量%未満では結晶粒微細化の効果がなく、10重量%を越えて含有させるとマルテンサイト変態温度を低下させてしまうからである。
【0029】
本発明の制振材料の製造方法は、主成分としてCu,AlおよびMnを含む原料を調合し、溶解してインゴットを形成するインゴット形成工程と、該インゴットを熱間加工、引続いて冷間加工と焼鈍とを繰返す加工熱処理により所定寸法の粗材を得る粗材形成工程と、該粗材に溶体化処理、焼入れ処理および時効処理を施してオーステナイト(β)相を固定した熱処理材を得る熱処理工程と、該熱処理材に永久ひずみを付与するひずみ付与工程と、からなることを特徴とする。
【0030】
インゴット形成工程、粗材形成工程には特に制約はなく、通常のCu−Al−Mn合金からなる線材、板材、あるいはパイプといった形状記憶部材の製造方法によることができる。
【0031】
加工後の溶体化処理温度は、500℃以上の温度で行い、溶体化処理後の冷却速度は200℃/sec以上であることが望ましい。これは材料の組織をオーステナイト(β)相にするための処理であり、より好ましくは800〜950℃で、230〜1000℃/secである。
【0032】
焼入れ処理後の時効処理は、オーステナイト(β)相を安定化させる規則化処理であり、0〜200℃の恒温槽中で10秒以上保持するとが好ましい。この処理を施さないとオーステナイト(β)相の規則度は完全ではなく、形状記憶特性が不安定であり、室温で放置しておくとマルテンサイト変態温度が変化する場合がある。この最終処理が200℃以上では、α相の析出が起り形状記憶特性が著しく劣化してしまう。
【0033】
ひずみ付与工程は前記の規則処理を施した材料に永久ひずみを与える工程である。ひずみ付与の方法は、ショットピーニング、セッチングまたは圧延加工によって付与することができる。
【0034】
通常、ショットピーニングは、小さな金属球あるいはカットワイヤを高速度でばねの表面に打付けて、ばね表面に圧縮の残留応力を発生させてばねの疲れ強さを向上させる処理方法であり、必要に応じて施される処理である。本発明のショットピーニングは、粒径が100μm以上のショットを用い、ショット速度30〜80m/secで行うことが適当である。ショットピーニングがあまり弱くては、ひずみ付与の効果が認められない。また、強すぎてもかえって減衰能を低下させてしまい好ましくない。
【0035】
一般的にセッチングは、ばね製造の終りの方の工程で、使用荷重以上の荷重を使用時と同一方向に加える操作をいう。セッチングの際の荷重は一般に降伏荷重より大きな荷重であり、材料は加工硬化によって耐力が上昇し、靜荷重で使用されるばねでは、その使用限界荷重を上げることが出来る。また、繰返し荷重を受けるばねの疲れ破壊やへたり発生の防止にも有効な処理方法である。本発明のセッチングの方法では、ばねの降伏点応力よりも100〜200%大きな応力を加えて永久ひずみを付与する。100%未満ではひずみ付与の効果が認められず、200%より大き場合にはかえって制振性は減少してしまうので好ましくない。
【0036】
永久ひずみを圧延加工で付与する場合には、図3で示したように圧延率は0〜5%以下の範囲であることが望ましい。
(ニットメッシュばね)
本発明になる制振材料の制振用のマウントへの適用例として、ニットメッシュばねを例示することができる。
【0037】
ニットメッシュばねは、細い金属糸または金属線をメリヤス状などに編成し、波付加工やプレス加工したもので、触媒装置のセラミックス担体の保持や、振動を吸収する防振緩衝材として使用するものである。図6に本発明のニットメッシュばねの一例を示す。このニットメッシュばねは、直径が0.22mmのCu−Al−Mn合金からなる線材をメリヤス状に編成して、内径17.5mm×外径27mm×厚さ9mmで、圧縮ひずみが10〜20%の範囲のばね定数が1.4MPaであるニットメッシュばねとしたものである。
【0038】
本発明の制振材料からなるニットメッシュばねとSUS304S製のニットメッシュばねとの振動特性を比較して図7に示す。なお、本発明材料とSUS304Sで作製したニットメッシュばねは、ばね定数、形状が同一のものである。
【0039】
図7は、横軸に周波数(Hz)をとり、周波数による応答伝達率の変化を示した。太線1は本発明の、細線2はSUS304S製のニットメッシュばねの周波数による応答伝達率の変化を示す。ここで、応答伝達率とは、ニットメッシュばねに与えた振動に対するニットメッシュばね自体の振動の比であり、値が小さいほど減衰能は優れている。
【0040】
図7より、周波数がイの1〜1.2kHzの範囲と、ロの1.9〜2.4kHzの範囲では、本発明のニットメッシュばねは、SUS304S製のニットメッシュばねに比べて応答伝達率が小さく、優れた減衰能を示している。
【0041】
また、SUS304S製ニットメッシュばねの共振点の一つである1.7kHz付近の応答伝達率のピークは、本発明のニットメッシュばねにすることにより、1.5kHz付近へシフトすることができる。さらに、応答伝達率の値も20から4へと約1/5に低下し、減衰能が向上することが分った。
【0042】
ここで、SUS304S製やインコネル製のニットメッシュばねは、例えば自動車排気系の触媒コンバータ保持などの高温部へ適用することが可能であるが、本発明のニットメッシュばねについては使用できる上限温度は約130℃であるため、それ以上の高温部での使用は困難である。本発明のニットメッシュばねは、−273〜130℃の範囲で使用すると優れた制振特性を発揮することができる。 本発明のニットメッシュばねは、構造自体が細線を編んで形成されているので、細線同士の摩擦による優れた制振性を示し、ゴムの中でも特に減衰能の優れたブチルゴムと同程度の制振性能を有している。このため、本発明のニットメッシュばねでは、さらにブチルゴムより減衰性能が優れ、許容応力もゴムより大きくとることができる。
【0043】
本発明のニットメッシュばねは、図7のイおよびロといった高周波数域で特に制振性能が優れている。このため、例えば、自動車の車室内こもり音の源となる振動を絶縁するために、車室内の振動部位のマウントとして本発明のニットメッシュばねを好適に使用することができる。つまり、通常、自動車においてはデファレンシャルやトランスミッションの歯車の噛合い強制力が懸架系に伝達して車内こもり音として高周波で発音するためである。
(コイルばね、薄板ばね、クランプばね、ばね座金)
本発明の制振材料からなるコイルばねの一例を図8に示す。図8の左側は、圧縮ばねで右側は引張りばねである。本発明のコイルばねは、直径1mmの線材からなり、圧縮ばねは、ばね定数が16.7GPaで、寸法は(外径)7×(自由長)26mmである。 また、引張りばねは、ばね定数が20GPaで、寸法は(外径)8.5×(フックを含まない自由長)30mmである。
【0044】
これらのばねは、線径、コイル径あるいは巻数などを変えてばね定数を変更することで、比較的容易に減衰させたい周波数域の設定が行えるため、自動車車室内では、例えば、カーオーディオのマウントなどに利用することでビビリ音なども解消可能となる。
【0045】
また、薄板ばねは、その形状から例えば、ディスクブレーキのパッドライナーや、基板のマウントおよび座金などに利用することでビビリなどの振動を解消することができる。
【0046】
さらに、クランプばねは、例えば、自動車のコントロールケーブルなどのクランプや配線のクランプなどに使用することで振動を抑制できるといった効果を発揮することができる。
【0047】
ばね座金は弛みどめ防止として、ボルト締めやネジ締めの際に使用されるものである。本発明の制振材料からなるばね座金は、例えば、モータ固定ねじ部や、プレス機など振動が問題となる機器のねじ部に使用して振動の伝達を解消するのに好適である。
【0048】
【発明の効果】
本発明の制振材料は、形状記憶特性を有するCu−Al−Mn合金からなり、双晶組織を有し、かつ、オーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相との2相組織であるので、優れた制振性を発揮する。
【0049】
本発明の制振材料からなるニットメッシュばね、コイルばね、薄板ばね等の制振性に優れたばねは、例えば、自動車の車室内こもり音の発生を防止する防振緩衝材として、また、カーオーディオのマウントなどに利用することでビビリ音の解消などに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cu−Al−Mn合金(A)、Cu−Be合金(B)、SUS304S(C)の周波数に対する損失係数の変化を示す図である。
【図2】各種材料の引張り強さと減衰能との関係を示す図である。
【図3】Cu−Al−Mn合金板の圧延率に対する対数減衰率(δ)の変化を圧延率とtanδとの関係で示した図である。
【図4】Cu−Al−Mn合金板の圧延率に対するマルテンサイト体積分率の変化を示す図である。
【図5】本発明の制振材料の断面金属組織を示す図である。
a)は、ひずみを与えていないオーステナイト(β)相単相組織である。
b)は、2%引張りひずみを与えたオーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相との2相組織である。
【図6】本発明のニットメッシュばねの一例を示す図である。
【図7】本発明のCu−Al−Mn合金線と、SUS304S線とで作製したニットメッシュばねの周波数に対する応答伝達率の変化を比較して示した図である。
【図8】本発明のコイルばねの一例を示す図である。
Claims (15)
- Cu−Al−Mn合金であって、該合金の組織は、双晶組織を有し、かつオーステナイト(β)相とマルテンサイト(M)相との2相組織であることを特徴とする制振材料。
- 前記マルテンサイト(M)相の体積分率は、前記オーステナイト(β)相の体積を100%としたとき50%以下である請求項1に記載の制振材料。
- 前記合金は、3〜10重量%のAlと、5〜20重量%Mnと、合金全体を100重量%とした場合、合計で0.001〜10重量%のNi,Co,Fe,Ti,V,Cr,Si,Nb,Mo,W,Sn、Sb、Mg、P、Be,Zr,Zn,B,C,Agおよびミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素と、残部がCuおよび不可避不純物とからなる請求項1に記載の制振材料。
- 主成分としてCu,AlおよびMnを含む原料を調合し、溶解してインゴットを形成するインゴット形成工程と、
該インゴットを熱間加工、引続いて冷間加工と焼鈍とを繰返す加工熱処理により所定寸法の粗材を得る粗材形成工程と、
該粗材に溶体化処理、焼入れ処理および時効処理を施してオーステナイト(β)相を固定した熱処理材を得る熱処理工程と、
該熱処理材に永久ひずみを付与するひずみ付与工程と、
からなることを特徴とする制振材料の製造方法。 - 前記ひずみ付与工程は、ショットピーニング、セッチングまたは圧延加工のいずれかである請求項4に記載の制振材料の製造方法。
- 前記ショットピーニングは、直径100μm以上のショットを
速度30〜80m/secで行う工程である請求項4または5に記載の制振材料の製造方法。 - 前記セッチングは、前記熱処理材の降伏応力よりも100〜200%大きい応力を加えて永久ひずみを付与する工程である請求項4または5に記載の制振材料の製造方法。
- 前記圧延加工の圧延率は、0〜5%である請求項4または5に記載の制振材料の製造方法。
- 少なくとも一部は制振材料からなる制振性に優れたばねであって、
前記制振材料は、Cu−Al−Mn合金であることを特徴とする制振性に優れたばね。 - 前記ばねは、ニットメッシュばねである請求項9に記載の制振性に優れたばね。
- 前記ニットメッシュばねは、メリヤス状に編成した構造である請求項10に記載の制振性に優れたばね。
- 前記ばねは、コイルばねである請求項9に記載の制振性に優れたばね。
- 前記ばねは、薄板ばねである請求項9に記載の制振性に優れたばね。
- 前記ばねは、クランプばねである請求項9に記載の制振性に優れたばね。
- 前記ばねは、ばね座金である請求項9に記載の制振性に優れたばね。
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