JP2004010692A - ポリアスパラギン酸架橋体の製造方法およびそれより得られる架橋体 - Google Patents
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Abstract
【課題】生分解性を有し、増粘剤や吸水性樹脂として利用可能であり、また、架橋密度が制御できることにより、吸水率を変化させることができる新規なポリアスパラギン酸架橋体の製造方法を提供する。
【解決手段】アリル基を有するポリこはく酸イミドをラジカル開始剤で架橋し、該架橋体を加水分解するポリアスパラギン酸架橋体の製造方法及びそれより得られる架橋体。
【選択図】 なし
【解決手段】アリル基を有するポリこはく酸イミドをラジカル開始剤で架橋し、該架橋体を加水分解するポリアスパラギン酸架橋体の製造方法及びそれより得られる架橋体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリアスパラギン酸架橋体の製造方法及びそれより得られる架橋体に関する。詳しくは、生分解性を有し、増粘剤や吸水性樹脂として利用可能な、ポリアスパラギン酸から誘導される架橋体の製造方法及びそれより得られる架橋体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
吸水性樹脂としては、従来から、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリアクリル酸ソーダ等が知られている。また、架橋体としては、カルボキシメチルセルロース架橋体、ポリエチレンオキシド部分架橋体、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物及びビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体等が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの樹脂は、いずれも十分な性能を有するものではなく、生分解性あるいは加水分解性が低く、使用後廃棄あるいは放置されると自然環境中に残存し、周辺環境に悪影響を与えるという問題があった。このため、近年、生分解性あるいは加水分解性を有するポリアミノ酸から高吸水性架橋体を得るための研究が行われて来ている。具体的には、例えば、ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸等の酸性アミノ酸樹脂の側鎖をエステル化した樹脂をジアミンで架橋した後、エステル残基をカルボキシル化あるいはその塩に変換することにより吸水性樹脂を生成する技術(特公昭52−224163号公報参照)、ポリこはく酸イミドをジアミンで架橋した後、加水分解することによりポリアスパラギン酸系の吸水性樹脂を生成する技術(特開平7−224163号公報参照)、ポリアスパラギン酸を放射線で架橋する技術(特開平9−202825号公報参照)などが開示されている。
【0004】
一方、ポリ(γ−グルタミン酸)溶液にγ線を照射すること(高分子論文集、第50巻10号、755頁(1993))及びポリ(ε−リジン)にγ線を照射すること(繊維学会誌、第51巻3号、137頁(1995))により生分解性高吸収体を製造する技術も報告されている。
しかしながら、ポリこはく酸イミドをジアミンで架橋した後、加水分解することによりポリアスパラギン酸系の吸水性樹脂を生成する技術(特開平7−224163号公報参照)は、架橋密度の制御が困難な為、吸水率を様々に変化させることが難しいという欠点がある。また、ポリアスパラギン酸を放射線で架橋する技術(特開平9−202825号公報参照)、ポリ(γ−グルタミン酸)溶液にγ線を照射する技術(高分子論文集、第50巻10号、755頁(1993))及びポリ(ε−リジン)にγ線を照射する技術は、工業的には、複雑な操作を必要としたり、工業的な規模での製造が困難であるという問題がある上、原材料費も高く、コスト的にも問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決すべく、生分解性を有するポリアミノ酸類であるポリアスパラギン酸から、架橋密度が制御できることにより、吸水率を変化させることができる新規な高吸水性ポリアスパラギン酸架橋体を、簡便かつ安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、アリル基を有するポリこはく酸イミドをラジカル開始剤で架橋し、該架橋体を加水分解するポリアスパラギン酸架橋体の製造方法及びそれより得られるポリアスパラギン酸架橋体に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の製造方法に使用されるポリこはく酸イミドは、従来公知の方法により製造することができる。具体的には、特公昭48−20638号公報に記載されているように、アスパラギン酸をリン酸等の酸性化合物の存在下、または非存在下で熱縮合させることによって製造することができる。
【0008】
ポリこはく酸イミドの重量平均分子量は、熱縮合の温度、触媒の種類(リン酸、ポリリン酸等)や添加量、反応系内の圧力等によって変わるが、一般に重量平均分子量1000以上であればよく、架橋体が十分な吸水能を発現しようとする場合は、3000以上が好ましく、更に好ましくは5000以上である。該ポリこはく酸イミドは、縮合時に共重合可能なグルタミン酸等の酸性アミノ酸を共重合成分として含んでいても良い。
【0009】
アリル基を有するポリこはく酸イミドは、上記のポリこはく酸イミドと分子中に1個以上のアリル基と1個以上の1級または2級のアミノ基を有する化合物を反応することにより得られる。この内、分子中に1個以上のアリル基と1個以上の1級のアミノ基を有する化合物が好ましい。具体的な化合物としては、アリルアミン、ジアリルアミン、メチルアリルアミン、エチルアリルアミン、n−プロピルアリルアミン、イソプロピルアリルアミン、n−ブチルアリルアミン等が挙げられる。中でもアリルアミンが反応性の面から特に好ましい。
【0010】
ポリこはく酸イミドとアリル基とアミノ基を有する化合物との反応条件は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により製造することができる。
例えば、特開平8−59829号公報等に記載されている方法により製造することができ、具体的には、アミンの付加反応は無触媒で室温でも充分進行するので、所定量のポリこはく酸イミドとアミンとを、そのまま、または溶媒中で混合し、必要に応じて加熱することにより行われる。反応温度は0〜200℃であるが、ポリこはく酸イミドの高分子鎖の分解を避けるために、比較的低い温度、具体的には、0〜80℃、好ましくは20〜50℃で1〜24時間撹拌する。反応溶媒としては、DMF、DMSO、N−メチルピロリドン、スルホランなどの極性溶媒、またはこれらの混合溶媒が使用できる。溶媒量は、ポリこはく酸イミド1重量部に対し、1〜100重量部、好ましくは2〜30重量部である。
【0011】
アリル基とアミノ基を有する化合物の量は、ポリこはく酸イミドのイミド環基1モルに対し、アリル基とアミノ基を有する化合物が0.001〜10等量、好ましくは、0.01〜5等量、更に好ましくは、0.05〜1等量である。
本発明の架橋体の製造方法は、まず、上記した方法等により得られるアリル基を有するポリこはく酸イミドをラジカル開始剤で架橋する。
【0012】
使用されるラジカル開始剤は特に限定されないが、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル開始剤を使用することができる。具体的なラジカル開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、ジ(2−エチルヘキシロキシカルボニル)、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル、2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルヒドロベルオキシド、クメンヒドロペルオキシド及びジクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0013】
架橋反応条件としては、特に限定されないが、アリル基を有するポリこはく酸イミドを溶媒の存在下または非存在下、ラジカル開始剤または、ラジカル開始剤及び硫黄化合物と混合し、ラジカルが発生する条件で反応させればよい。
この内、ラジカル開始剤と硫黄含有化合物を共存させて使用することにより高収率で架橋体を得ることができるので好ましい。硫黄含有化合物としては、特に限定されないが、硫黄原子を1分子中に2個以上含有する化合物が好ましく、例えば、エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ヘキサンジチオール、デカンジチオール及び3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール等が挙げられる。これら硫黄化合物を添加する場合は、ポリこはく酸イミド中のアリル基に対して、50〜100mol%程度用いるのが好ましい。
【0014】
具体的な架橋反応としては、アリル基を有するポリこはく酸イミドをDMF、DMSO、N−メチル−2−ピロリドン及びスルホラン等の極性溶媒に溶解して反応させることが好ましく、反応温度は60℃以上、また、ポリマー濃度50%以上で、常圧でラジカル開始剤をポリこはく酸イミド中のアリル基の5〜10mol%程度加えて反応することが好ましい。
【0015】
本発明の製造方法により得られるポリアスパラギン酸架橋体の架橋密度は、ポリこはく酸イミド中のアリル基の含量やラジカル開始剤や硫黄化合物の量、架橋反応温度等を適宜選択することにより制御することができる。
本発明の製造方法においては、上記により得られた架橋体を加水分解する。加水分解の方法は、通常公知の方法が採用でき、具体的には、J. Am. Chem. Soc. 80, 3361 (1958), J. Org. Chem. 26, 1084 (1961),米国特許第5288783号明細書、及び特開昭60−203636号公報等に記載があるように、中性またはアルカリ性で加水分解を行えばよい。
【0016】
本発明の製造方法により得られる架橋体は、水に不溶で、水中では吸水して膨潤状態を示す。架橋の構造としては、ポリこはく酸イミドに導入されたアリル基がラジカル重合により架橋構造を生成していると推定される。
本発明により得られるポリアスパラギン酸架橋体は、生分解性を有し、その用途は多岐にわたり特に限定的でなく、具体的には、各種高分子エマルジョン、ラテックス等の増粘剤、止水剤、土壌改良剤、園芸用保水剤、又は紙おむつ、生理用品等の使い捨ての衛材、表面処理剤、シール剤等に利用することができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、評価は以下の通り行った。
1.分子量
ポリこはく酸イミドの分子量は、東ソー(株)社製TSKgelGMHHR−M、TSKgelG2000HHRカラムおよび溶離液に10mM臭化リチウムのジメチルホルムアミドを用いたGPCクロマトグラフ(示差屈折計)により得られたポリスチレン換算値である。
【0018】
2.アリル基導入量の定量
アリル基を有するポリこはく酸イミドの1HNMRスペクトルから定量した。ポリこはく酸イミドのイミド環基のメチンプロトンとアリル基のプロトンの積分値より計算により求めた。
3.吸水能
得られたポリアスパラギン酸架橋体0.1gを用いて、ティーバッグ法により、吸水能を求めた。具体的には、400mlの蒸留水の入った500mlビーカーに、ナイロンネット(NBC工業(株)社製、N−255HD、250mesh)で作った袋(深さ20cm×幅10cm)に上記試料を入れて浸し、冷暗所で30分間静置した後、袋ごと取り出し、室温にて15分間吊して水切りしたものを計量した。該重量から架橋体重量(0.1g)及び袋重量を差し引いた値を架橋体重量(0.1g)で割った値を吸水量(g−水/g−ポリマ−)として求めた。
【0019】
合成例1:ポリこはく酸イミドの合成
冷却器、温度計、攪拌器及び水分離器を備えた200mL四つ口フラスコ内に、アスパラギン酸25g、85%リン酸2.5g、メシチレン56g及びスルホラン24gを仕込んだ。次いで、常圧、メシチレンの還流下(162℃)に4.5時間保ち、重縮合を行った。反応中に生じた水はメシチレンの一部とともに系外へ留去せしめた。反応終了後、濾別し、生成物を純水100gで4回、メタノール100gで1回洗浄した。次いで、これを減圧下80℃で24時間乾燥し、黄白色の粉末を得た。このポリこはく酸イミドの重量平均分子量は70,000、ポリマーへの転化率は98%であった。
【0020】
合成例2:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
スターラーバー、温度計、窒素導入管、蛇管冷却器を取り付けた100mL三口フラスコにオイルバスを設置した。そのフラスコを窒素置換し、DMF45mLを入れ、攪拌下、オイルバスの温度を55℃まで加熱した後、合成例1で得たポリこはく酸イミド5.0gを加え、溶解させた。ポリこはく酸イミドが完全に溶解したことを確認した後、シリンジを用いてアリルアミンを0.771mL添加し、反応温度40℃で6時間反応させた。反応終了後、溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール300mLに注ぎ、沈殿物をガラスフィルターで吸引濾過した後、メタノール300mLで5回洗浄し、乾燥器で3日間常温減圧乾燥させ、黄白色の粉末を得た(ポリマー1)。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は98.2%、アリル基の導入率は10.7%であった。
【0021】
合成例3:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
合成例2のアリルアミンの量を1.542mLに代えた他は、合成例2と同様の操作を行いアリル基を有したポリこはく酸イミドを合成した。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は95.0%、アリル基の導入率は20.3%であった。(ポリマー2)
合成例4:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
合成例2のアリルアミンの量を2.313mLに代えた他は、合成例2と同様の操作を行いアリル基を有したポリこはく酸イミドを合成した。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は91.6%、アリル基の導入率は31.4%であった。(ポリマー3)
合成例5:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
合成例2のアリルアミンの量を3.084mLに代えた他は、合成例2と同様の操作を行いアリル基を有したポリこはく酸イミドを合成した。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は87.6%、アリル基の導入率は39.0%であった。(ポリマー4)
合成例6:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
合成例2のアリルアミンの量を3.885mLに代えた他は、合成2と同様の操作を行いアリル基を有したポリこはく酸イミドを合成した。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は53.5%、アリル基の導入率は50.7%であった。(ポリマー5)
実施例1
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
フッ化水素酸で洗浄した20mLナス型フラスコに、合成例2で得たポリマー1を2.00g入れ、セプタムキャップで蓋をした。直前に蒸留したDMF3mLをシリンジを用いてセプタムキャップに針を刺して注入し、振とう器を用いて溶解した。開始剤としてAIBNを33.8mg加えて液体窒素内で凍結させ、真空下で3分間脱気した。その後、窒素を導入し、アセトンを用いて内容物を完全に液体化し、再び同様の操作を2度繰り返し、最後に窒素を導入した。
【0022】
ウォーターバスを60℃に調節し、96時間反応させた。反応生成物はゲル化していたのでスパーテルである程度砕き、メタノール200mLで再沈殿した。得られたゲルを漏斗で吸引濾過した後、メタノールで数回洗浄し、乾燥器で約3日間減圧乾燥させた。乾燥後50mL三角フラスコにゲル、スターラーバーを入れ、DMFを加え撹拌した。ゲル全体にDMFが浸透(透明になる)するまで放置し、ゲルを漏斗で吸引濾過した後、メタノール200mLで3回洗浄し、乾燥器で常温減圧乾燥させ黄白色の粉末を得た。収率は72.0%であった。
【0023】
〈加水分解〉
5mL三角フラスコにスターラーバーを入れ、1N−NaOH溶液20mLを調製した。架橋反応で得られた黄白色粉末1.5gを加え、ゲル全体にNaOH水溶液が浸透(透明になる)するまで放置し、メタノール400mLで再沈殿した。得られたポリマーを吸引濾過した後、メタノール200mLで3回洗浄し、乾燥器で2日間減圧乾燥させ白色の粉末を得た。収率は72.5%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、0.5g/gであった。
【0024】
実施例2
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例1において、合成例2で得られたポリマー1を合成例3で得られたポリマー2に代えて、また、AIBNの量を67.6mgに代えた他は、実施例1と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は94.5%であった。
【0025】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は85.5%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、7.5g/gであった。
実施例3
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例1において、合成例2で得られたポリマー1を合成例4で得られたポリマー3に代えて、また、AIBNの量を101.4mgに代えた他は、実施例1と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は93.8%であった。
【0026】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は85.0%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、41.4g/gであった。
実施例4
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例1において、合成例2で得られたポリマー1を合成例5で得られたポリマー4に代えて、また、AIBNの量を135.1mgに代えた他は、実施例1と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は98.5%であった。
【0027】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は74.5%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、59.4g/gであった。
実施例5
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例1において、合成例2で得られたポリマー1を合成例6で得られたポリマー5に代えて、また、AIBNの量を168.9mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は91.3%であった。
【0028】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は77.3%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、23.4g/gであった。
実施例6
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
20mLナス型フラスコに合成例2で得られたポリマー1を2.00g入れ、セプタムキャップで蓋をした。直前に蒸留したDMF3mLをシリンジを用いてセプタムキャップに針を刺し注入しポリマーを溶解した。架橋剤としてエタンジチオール0.172mLと、開始剤としてAIBNを33.8mg加えて、液体窒素内で凍結させ、真空下で3分間脱気した。その後、窒素を導入し、アセトンを用いて内容物を完全に液体化し、再び同様の操作を2度繰り返し、最後に窒素を導入した。
【0029】
ウォーターバスを60℃に調節し、3時間反応させた。反応生成物は固化していたのでスパーテルである程度砕き、メタノール200mLで再沈殿した。得られたポリマーを漏斗で吸引濾過した後、メタノールで数回洗浄し、デシケーターで約1日減圧乾燥させた。乾燥後100mL三角フラスコにポリマー、スターラーバーを入れ、過剰のDMFを加え撹拌した。ポリマー全体にDMFが浸透(透明になる)するまで放置し、ゲルを漏斗で吸引濾過した後、メタノール200mLで3回洗浄し、乾燥機で減圧乾燥させ黄白色の粉末を得た。収率は98.9%であった。
【0030】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は100%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、104.4g/gであった。
実施例7
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例6において、合成例2で得られたポリマー1を合成例3で得られたポリマー2に代えて、エタンジチオールの量を0.344mg、また、AIBNの量を67.6mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は100%であった。
【0031】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は100%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、22.4g/gであった。
実施例8
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例6において、合成例2で得られたポリマー1を合成例4で得られたポリマー3に代えて、エタンジチオールの量を0.516mg、また、AIBNの量を101.4mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は98.6%であった。
【0032】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は85.8%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、29.9g/gであった。
実施例9
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例6において、合成例2で得られたポリマー1を合成例5で得られたポリマー4に代えて、エタンジチオールの量を0.688mg、また、AIBNの量を135.1mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は89.3%であった。
【0033】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は100%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、16.7g/gであった。
実施例10
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例6において、合成例2で得られたポリマー1を合成例6で得られたポリマー5に代えて、エタンジチオールの量を0.86mg、また、AIBNの量を168.9mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は85.3%であった。
【0034】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は100%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、5.7g/gであった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の製造方法によると、生分解性を有し、増粘剤や吸水性樹脂として利用可能であり、また、架橋密度が制御できることにより、吸水率を変化させることができる新規なポリアスパラギン酸架橋体を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリアスパラギン酸架橋体の製造方法及びそれより得られる架橋体に関する。詳しくは、生分解性を有し、増粘剤や吸水性樹脂として利用可能な、ポリアスパラギン酸から誘導される架橋体の製造方法及びそれより得られる架橋体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
吸水性樹脂としては、従来から、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリアクリル酸ソーダ等が知られている。また、架橋体としては、カルボキシメチルセルロース架橋体、ポリエチレンオキシド部分架橋体、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物及びビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体等が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの樹脂は、いずれも十分な性能を有するものではなく、生分解性あるいは加水分解性が低く、使用後廃棄あるいは放置されると自然環境中に残存し、周辺環境に悪影響を与えるという問題があった。このため、近年、生分解性あるいは加水分解性を有するポリアミノ酸から高吸水性架橋体を得るための研究が行われて来ている。具体的には、例えば、ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸等の酸性アミノ酸樹脂の側鎖をエステル化した樹脂をジアミンで架橋した後、エステル残基をカルボキシル化あるいはその塩に変換することにより吸水性樹脂を生成する技術(特公昭52−224163号公報参照)、ポリこはく酸イミドをジアミンで架橋した後、加水分解することによりポリアスパラギン酸系の吸水性樹脂を生成する技術(特開平7−224163号公報参照)、ポリアスパラギン酸を放射線で架橋する技術(特開平9−202825号公報参照)などが開示されている。
【0004】
一方、ポリ(γ−グルタミン酸)溶液にγ線を照射すること(高分子論文集、第50巻10号、755頁(1993))及びポリ(ε−リジン)にγ線を照射すること(繊維学会誌、第51巻3号、137頁(1995))により生分解性高吸収体を製造する技術も報告されている。
しかしながら、ポリこはく酸イミドをジアミンで架橋した後、加水分解することによりポリアスパラギン酸系の吸水性樹脂を生成する技術(特開平7−224163号公報参照)は、架橋密度の制御が困難な為、吸水率を様々に変化させることが難しいという欠点がある。また、ポリアスパラギン酸を放射線で架橋する技術(特開平9−202825号公報参照)、ポリ(γ−グルタミン酸)溶液にγ線を照射する技術(高分子論文集、第50巻10号、755頁(1993))及びポリ(ε−リジン)にγ線を照射する技術は、工業的には、複雑な操作を必要としたり、工業的な規模での製造が困難であるという問題がある上、原材料費も高く、コスト的にも問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決すべく、生分解性を有するポリアミノ酸類であるポリアスパラギン酸から、架橋密度が制御できることにより、吸水率を変化させることができる新規な高吸水性ポリアスパラギン酸架橋体を、簡便かつ安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、アリル基を有するポリこはく酸イミドをラジカル開始剤で架橋し、該架橋体を加水分解するポリアスパラギン酸架橋体の製造方法及びそれより得られるポリアスパラギン酸架橋体に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の製造方法に使用されるポリこはく酸イミドは、従来公知の方法により製造することができる。具体的には、特公昭48−20638号公報に記載されているように、アスパラギン酸をリン酸等の酸性化合物の存在下、または非存在下で熱縮合させることによって製造することができる。
【0008】
ポリこはく酸イミドの重量平均分子量は、熱縮合の温度、触媒の種類(リン酸、ポリリン酸等)や添加量、反応系内の圧力等によって変わるが、一般に重量平均分子量1000以上であればよく、架橋体が十分な吸水能を発現しようとする場合は、3000以上が好ましく、更に好ましくは5000以上である。該ポリこはく酸イミドは、縮合時に共重合可能なグルタミン酸等の酸性アミノ酸を共重合成分として含んでいても良い。
【0009】
アリル基を有するポリこはく酸イミドは、上記のポリこはく酸イミドと分子中に1個以上のアリル基と1個以上の1級または2級のアミノ基を有する化合物を反応することにより得られる。この内、分子中に1個以上のアリル基と1個以上の1級のアミノ基を有する化合物が好ましい。具体的な化合物としては、アリルアミン、ジアリルアミン、メチルアリルアミン、エチルアリルアミン、n−プロピルアリルアミン、イソプロピルアリルアミン、n−ブチルアリルアミン等が挙げられる。中でもアリルアミンが反応性の面から特に好ましい。
【0010】
ポリこはく酸イミドとアリル基とアミノ基を有する化合物との反応条件は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により製造することができる。
例えば、特開平8−59829号公報等に記載されている方法により製造することができ、具体的には、アミンの付加反応は無触媒で室温でも充分進行するので、所定量のポリこはく酸イミドとアミンとを、そのまま、または溶媒中で混合し、必要に応じて加熱することにより行われる。反応温度は0〜200℃であるが、ポリこはく酸イミドの高分子鎖の分解を避けるために、比較的低い温度、具体的には、0〜80℃、好ましくは20〜50℃で1〜24時間撹拌する。反応溶媒としては、DMF、DMSO、N−メチルピロリドン、スルホランなどの極性溶媒、またはこれらの混合溶媒が使用できる。溶媒量は、ポリこはく酸イミド1重量部に対し、1〜100重量部、好ましくは2〜30重量部である。
【0011】
アリル基とアミノ基を有する化合物の量は、ポリこはく酸イミドのイミド環基1モルに対し、アリル基とアミノ基を有する化合物が0.001〜10等量、好ましくは、0.01〜5等量、更に好ましくは、0.05〜1等量である。
本発明の架橋体の製造方法は、まず、上記した方法等により得られるアリル基を有するポリこはく酸イミドをラジカル開始剤で架橋する。
【0012】
使用されるラジカル開始剤は特に限定されないが、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル開始剤を使用することができる。具体的なラジカル開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、ジ(2−エチルヘキシロキシカルボニル)、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル、2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルヒドロベルオキシド、クメンヒドロペルオキシド及びジクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0013】
架橋反応条件としては、特に限定されないが、アリル基を有するポリこはく酸イミドを溶媒の存在下または非存在下、ラジカル開始剤または、ラジカル開始剤及び硫黄化合物と混合し、ラジカルが発生する条件で反応させればよい。
この内、ラジカル開始剤と硫黄含有化合物を共存させて使用することにより高収率で架橋体を得ることができるので好ましい。硫黄含有化合物としては、特に限定されないが、硫黄原子を1分子中に2個以上含有する化合物が好ましく、例えば、エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ヘキサンジチオール、デカンジチオール及び3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール等が挙げられる。これら硫黄化合物を添加する場合は、ポリこはく酸イミド中のアリル基に対して、50〜100mol%程度用いるのが好ましい。
【0014】
具体的な架橋反応としては、アリル基を有するポリこはく酸イミドをDMF、DMSO、N−メチル−2−ピロリドン及びスルホラン等の極性溶媒に溶解して反応させることが好ましく、反応温度は60℃以上、また、ポリマー濃度50%以上で、常圧でラジカル開始剤をポリこはく酸イミド中のアリル基の5〜10mol%程度加えて反応することが好ましい。
【0015】
本発明の製造方法により得られるポリアスパラギン酸架橋体の架橋密度は、ポリこはく酸イミド中のアリル基の含量やラジカル開始剤や硫黄化合物の量、架橋反応温度等を適宜選択することにより制御することができる。
本発明の製造方法においては、上記により得られた架橋体を加水分解する。加水分解の方法は、通常公知の方法が採用でき、具体的には、J. Am. Chem. Soc. 80, 3361 (1958), J. Org. Chem. 26, 1084 (1961),米国特許第5288783号明細書、及び特開昭60−203636号公報等に記載があるように、中性またはアルカリ性で加水分解を行えばよい。
【0016】
本発明の製造方法により得られる架橋体は、水に不溶で、水中では吸水して膨潤状態を示す。架橋の構造としては、ポリこはく酸イミドに導入されたアリル基がラジカル重合により架橋構造を生成していると推定される。
本発明により得られるポリアスパラギン酸架橋体は、生分解性を有し、その用途は多岐にわたり特に限定的でなく、具体的には、各種高分子エマルジョン、ラテックス等の増粘剤、止水剤、土壌改良剤、園芸用保水剤、又は紙おむつ、生理用品等の使い捨ての衛材、表面処理剤、シール剤等に利用することができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、評価は以下の通り行った。
1.分子量
ポリこはく酸イミドの分子量は、東ソー(株)社製TSKgelGMHHR−M、TSKgelG2000HHRカラムおよび溶離液に10mM臭化リチウムのジメチルホルムアミドを用いたGPCクロマトグラフ(示差屈折計)により得られたポリスチレン換算値である。
【0018】
2.アリル基導入量の定量
アリル基を有するポリこはく酸イミドの1HNMRスペクトルから定量した。ポリこはく酸イミドのイミド環基のメチンプロトンとアリル基のプロトンの積分値より計算により求めた。
3.吸水能
得られたポリアスパラギン酸架橋体0.1gを用いて、ティーバッグ法により、吸水能を求めた。具体的には、400mlの蒸留水の入った500mlビーカーに、ナイロンネット(NBC工業(株)社製、N−255HD、250mesh)で作った袋(深さ20cm×幅10cm)に上記試料を入れて浸し、冷暗所で30分間静置した後、袋ごと取り出し、室温にて15分間吊して水切りしたものを計量した。該重量から架橋体重量(0.1g)及び袋重量を差し引いた値を架橋体重量(0.1g)で割った値を吸水量(g−水/g−ポリマ−)として求めた。
【0019】
合成例1:ポリこはく酸イミドの合成
冷却器、温度計、攪拌器及び水分離器を備えた200mL四つ口フラスコ内に、アスパラギン酸25g、85%リン酸2.5g、メシチレン56g及びスルホラン24gを仕込んだ。次いで、常圧、メシチレンの還流下(162℃)に4.5時間保ち、重縮合を行った。反応中に生じた水はメシチレンの一部とともに系外へ留去せしめた。反応終了後、濾別し、生成物を純水100gで4回、メタノール100gで1回洗浄した。次いで、これを減圧下80℃で24時間乾燥し、黄白色の粉末を得た。このポリこはく酸イミドの重量平均分子量は70,000、ポリマーへの転化率は98%であった。
【0020】
合成例2:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
スターラーバー、温度計、窒素導入管、蛇管冷却器を取り付けた100mL三口フラスコにオイルバスを設置した。そのフラスコを窒素置換し、DMF45mLを入れ、攪拌下、オイルバスの温度を55℃まで加熱した後、合成例1で得たポリこはく酸イミド5.0gを加え、溶解させた。ポリこはく酸イミドが完全に溶解したことを確認した後、シリンジを用いてアリルアミンを0.771mL添加し、反応温度40℃で6時間反応させた。反応終了後、溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール300mLに注ぎ、沈殿物をガラスフィルターで吸引濾過した後、メタノール300mLで5回洗浄し、乾燥器で3日間常温減圧乾燥させ、黄白色の粉末を得た(ポリマー1)。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は98.2%、アリル基の導入率は10.7%であった。
【0021】
合成例3:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
合成例2のアリルアミンの量を1.542mLに代えた他は、合成例2と同様の操作を行いアリル基を有したポリこはく酸イミドを合成した。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は95.0%、アリル基の導入率は20.3%であった。(ポリマー2)
合成例4:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
合成例2のアリルアミンの量を2.313mLに代えた他は、合成例2と同様の操作を行いアリル基を有したポリこはく酸イミドを合成した。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は91.6%、アリル基の導入率は31.4%であった。(ポリマー3)
合成例5:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
合成例2のアリルアミンの量を3.084mLに代えた他は、合成例2と同様の操作を行いアリル基を有したポリこはく酸イミドを合成した。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は87.6%、アリル基の導入率は39.0%であった。(ポリマー4)
合成例6:アリル基を有したポリこはく酸イミドの合成
合成例2のアリルアミンの量を3.885mLに代えた他は、合成2と同様の操作を行いアリル基を有したポリこはく酸イミドを合成した。このアリル基を有したポリこはく酸イミドの収率は53.5%、アリル基の導入率は50.7%であった。(ポリマー5)
実施例1
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
フッ化水素酸で洗浄した20mLナス型フラスコに、合成例2で得たポリマー1を2.00g入れ、セプタムキャップで蓋をした。直前に蒸留したDMF3mLをシリンジを用いてセプタムキャップに針を刺して注入し、振とう器を用いて溶解した。開始剤としてAIBNを33.8mg加えて液体窒素内で凍結させ、真空下で3分間脱気した。その後、窒素を導入し、アセトンを用いて内容物を完全に液体化し、再び同様の操作を2度繰り返し、最後に窒素を導入した。
【0022】
ウォーターバスを60℃に調節し、96時間反応させた。反応生成物はゲル化していたのでスパーテルである程度砕き、メタノール200mLで再沈殿した。得られたゲルを漏斗で吸引濾過した後、メタノールで数回洗浄し、乾燥器で約3日間減圧乾燥させた。乾燥後50mL三角フラスコにゲル、スターラーバーを入れ、DMFを加え撹拌した。ゲル全体にDMFが浸透(透明になる)するまで放置し、ゲルを漏斗で吸引濾過した後、メタノール200mLで3回洗浄し、乾燥器で常温減圧乾燥させ黄白色の粉末を得た。収率は72.0%であった。
【0023】
〈加水分解〉
5mL三角フラスコにスターラーバーを入れ、1N−NaOH溶液20mLを調製した。架橋反応で得られた黄白色粉末1.5gを加え、ゲル全体にNaOH水溶液が浸透(透明になる)するまで放置し、メタノール400mLで再沈殿した。得られたポリマーを吸引濾過した後、メタノール200mLで3回洗浄し、乾燥器で2日間減圧乾燥させ白色の粉末を得た。収率は72.5%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、0.5g/gであった。
【0024】
実施例2
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例1において、合成例2で得られたポリマー1を合成例3で得られたポリマー2に代えて、また、AIBNの量を67.6mgに代えた他は、実施例1と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は94.5%であった。
【0025】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は85.5%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、7.5g/gであった。
実施例3
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例1において、合成例2で得られたポリマー1を合成例4で得られたポリマー3に代えて、また、AIBNの量を101.4mgに代えた他は、実施例1と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は93.8%であった。
【0026】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は85.0%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、41.4g/gであった。
実施例4
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例1において、合成例2で得られたポリマー1を合成例5で得られたポリマー4に代えて、また、AIBNの量を135.1mgに代えた他は、実施例1と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は98.5%であった。
【0027】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は74.5%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、59.4g/gであった。
実施例5
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例1において、合成例2で得られたポリマー1を合成例6で得られたポリマー5に代えて、また、AIBNの量を168.9mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は91.3%であった。
【0028】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は77.3%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、23.4g/gであった。
実施例6
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
20mLナス型フラスコに合成例2で得られたポリマー1を2.00g入れ、セプタムキャップで蓋をした。直前に蒸留したDMF3mLをシリンジを用いてセプタムキャップに針を刺し注入しポリマーを溶解した。架橋剤としてエタンジチオール0.172mLと、開始剤としてAIBNを33.8mg加えて、液体窒素内で凍結させ、真空下で3分間脱気した。その後、窒素を導入し、アセトンを用いて内容物を完全に液体化し、再び同様の操作を2度繰り返し、最後に窒素を導入した。
【0029】
ウォーターバスを60℃に調節し、3時間反応させた。反応生成物は固化していたのでスパーテルである程度砕き、メタノール200mLで再沈殿した。得られたポリマーを漏斗で吸引濾過した後、メタノールで数回洗浄し、デシケーターで約1日減圧乾燥させた。乾燥後100mL三角フラスコにポリマー、スターラーバーを入れ、過剰のDMFを加え撹拌した。ポリマー全体にDMFが浸透(透明になる)するまで放置し、ゲルを漏斗で吸引濾過した後、メタノール200mLで3回洗浄し、乾燥機で減圧乾燥させ黄白色の粉末を得た。収率は98.9%であった。
【0030】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は100%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、104.4g/gであった。
実施例7
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例6において、合成例2で得られたポリマー1を合成例3で得られたポリマー2に代えて、エタンジチオールの量を0.344mg、また、AIBNの量を67.6mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は100%であった。
【0031】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は100%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、22.4g/gであった。
実施例8
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例6において、合成例2で得られたポリマー1を合成例4で得られたポリマー3に代えて、エタンジチオールの量を0.516mg、また、AIBNの量を101.4mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は98.6%であった。
【0032】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は85.8%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、29.9g/gであった。
実施例9
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例6において、合成例2で得られたポリマー1を合成例5で得られたポリマー4に代えて、エタンジチオールの量を0.688mg、また、AIBNの量を135.1mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は89.3%であった。
【0033】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は100%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、16.7g/gであった。
実施例10
〈アリル基を有したポリこはく酸イミドの架橋反応〉
実施例6において、合成例2で得られたポリマー1を合成例6で得られたポリマー5に代えて、エタンジチオールの量を0.86mg、また、AIBNの量を168.9mgに代えた他は、実施例6と同様の操作を行い、黄白色の粉末を得た。収率は85.3%であった。
【0034】
〈加水分解〉
架橋反応で得られた黄白色粉末を実施例1と同様の操作を行い、白色の粉末を得た。収率は100%であった。得られた白色粉末の吸水能を測定したところ、5.7g/gであった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の製造方法によると、生分解性を有し、増粘剤や吸水性樹脂として利用可能であり、また、架橋密度が制御できることにより、吸水率を変化させることができる新規なポリアスパラギン酸架橋体を提供することができる。
Claims (4)
- アリル基を有するポリこはく酸イミドをラジカル開始剤で架橋し、該架橋体を加水分解することを特徴とするポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
- アリル基を有するポリこはく酸イミドがポリこはく酸イミドとアリルアミンとを反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1に記載のポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
- ラジカル開始剤で架橋する際に、硫黄化合物を共存させることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法により得られるポリアスパラギン酸架橋体。
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JP2005344061A (ja) * | 2004-06-04 | 2005-12-15 | Mitsui Chemicals Inc | 増粘、起泡増泡作用を有するポリアミノ酸誘導体組成物 |
WO2021149785A1 (ja) * | 2020-01-24 | 2021-07-29 | Jsr株式会社 | 組成物、ハイドロゲル及び重合体、並びにハイドロゲルの使用 |
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