JP2004010533A - 軟骨生成促進剤及び軟骨損傷由来疾病予防治療剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明はグルクロン酸、その塩またはその前駆体を有効成分とする軟骨生成促進剤、軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療剤およびグルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進剤に関するものである。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体を有効成分として含有する軟骨生成促進剤、軟骨損傷に由来する疾病の予防用または治療剤およびグルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
グルクロン酸は生体内においてグルクロン酸抱合等により、解毒作用を有することが知られており、グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体は医薬品などとして使用されている。しかしながら、これらのものを経口投与することにより、軟骨生成が促進され、例えば軟骨損傷等の修復が促進されることは知られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
軟骨損傷による疾病は関節炎、リュウマチ等数多く知られており、多くの薬も開発され販売されている。しかしながら、効果及び副作用等において個人差等が有るため、充分に満足できるものではない。また、予防的に摂取できる薬剤があるとより好ましい。本発明者らはそのような薬剤を見いだすべく、鋭意検討したした結果、本発明を完成した。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は生体内でグルコース代謝経路において生成されるグルクロン酸は、毒性も少なく、保健飲料などとして飲用されており、また、生体内の多くのグリコサミノグルカン類の構成成分として使用されていることに注目して、研究した結果、グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体を経口投与することにより、軟骨の生成が促進されることを見いだし、本発明を完成した。
【0005】
即ち本発明は
(1)グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体を有効成分として含有する軟骨生成促進剤、
(2)グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体を有効成分として
含有する軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療剤、
(3)グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体を有効成分として含有するグルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進剤、
(4)グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体とグルコサミン塩を有効成分として含有する上記請求項第1項に記載の軟骨生成促進剤または第2項に記載の軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療剤、
に関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明を以下により詳しく説明する。
本発明で使用されるグルクロン酸はフリーの酸であっても、また塩特に薬理学的に許容される塩であっても、更に水溶液中でグルクロン酸を生成するかまたは生体内で直ちにグルクロン酸を生成するグルクロン酸前駆体のいずれであってもよい。グルクロン酸の塩としては薬理学的に許容される塩であれば、特に制限はなく、無機塩基、有機塩基いずれも使用できる。一般的にはナトリウム塩などのアルカリ金属塩が使用され、本発明においてはナトリウム塩等が好ましい。水溶液中でグルクロン酸を生成するかまたは生体内で直接グルクロン酸を生成するグルクロン酸前駆体としてはグルクロノラクトン、グルクロン酸アミドなどが挙げられる。
【0007】
本発明における軟骨生成促進剤、軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療剤、グルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進剤はグルクロン酸(塩または前駆体も含む:以下特に断らない限り同じ)単独でもよいが、通常はグルクロン酸を坦体、賦形剤、助剤(嬌味剤、香料、甘味料、結合剤)等の医薬用又は食品用等に使用される添加剤と共に常法に従って、混合、製剤化してそれぞれ軟骨生成促進用組成物、軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療用組成物、グルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進用組成物として使用される。製剤としては液剤又は固形剤いずれでもよい。例えば錠剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、ゼリー剤等を挙げることができる。坦体又は賦形剤としては、水、糖類等を挙げることができる。これらにおけるグルクロン酸の含量は、特に限定はなく、通常0.2%(質量%:以下同じ)以上、好ましくは1%以上で、最大100%までよい。
これらの製剤化された組成物若しくはグルクロン酸は軟骨生成促進、軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療、グルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進のために、そのまま服用若しくは健康食品等として経口摂取することができる。従って、本発明においては、これらの目的で使用される限り、グルクロン酸単独、賦形剤などを混合して製剤化したもの、また飲食品などと混合したもの何れをも含むものである。 また、他の薬剤と併用してもよく、併用する場合は他の薬剤をグルクロン酸と、更に必要に応じて賦形剤などと共に混合製剤化しても、また、それぞれ単独に製剤化したものを併用してもよい。
投与方法は特に限定されず、経口、注射、経腸その他経皮等いずれの方法でも可能であるが、経口摂取が好ましい。
【0008】
グルクロン酸を飲食品に配合して本発明における軟骨生成促進剤、軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療剤、グルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進剤等として摂取するする場合は、適当に飲食物と混合して摂取すれば良い。グルクロン酸を混合しうる飲食物は特に限定されず、牛乳、乳酸飲料などの乳飲料、その他のドリンク剤等の飲料やハム、ソーセージ、菓子類、その他の加工食品等の食物などを挙げることができる。
これらの飲食品中におけるグルクロン酸の含量は特に限定されないが通常食品全体に対して0.1%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上であり、上限は特に無いが味覚等の点から通常10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは4% 以下である。
本発明の用途でのグルクロン酸の投与量は通常成人当たり1日0.3g以上、より好ましくは0.5g以上 更に好ましくは1g以上で、上限は毒性もほとんどないので特に制限はないが、通常20g以下、好ましくは10g以下、更に好ましくは5g以下程度である。
【0009】
本発明において、グルクロン酸を軟骨生成促進剤、軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療剤として使用するとき、関節炎治療剤などとして知られているグルコサミン(塩)と併用するのは好ましい。併用するときのグルコサミン(塩)の製剤中の配合量、投与量は上記グルクロン酸の場合と略同じである。併用するグルコサミン塩としては薬理学的に許容されるものであれば特に制限はなく、無機酸塩、有機酸塩いずれも使用できる。一般的には硫酸塩もしくは塩酸塩等の無機塩、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸塩が使用され、本発明においては塩酸塩、クエン酸塩等が好ましい。
【0010】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、具体的に説明する。
実施例1
供試ウサギとして、白色ウサギ(体重約2.0kg)の雌6羽(各群3羽)を用いた。入手後1週間環境に慣らせ、その後、メデトミジン0.1mg/kgを皮下注射し、ケタラール25mg/kgを筋肉内注射した。このような注射麻酔下の供試ウサギの左側膝関節部を剃毛、消毒後、膝関節外側からアプローチし、関節包をあけて、膝蓋骨を内側に移動させることによって膝関節部を完全に露出した。そして、Tamai et al.の実験(Carbohydr−Polym. 48, 369−378, 2002)を参考に内側滑車陵、滑車溝の上・下の計3ヶ所に直径2mm、深さ4mmの孔をマイクロエンジンによるドリルによってあけた。その後、よく洗浄し、関節包を3−0PDS(polydioxanone)を用いて縫合した。また、皮下組織と皮膚は一緒に縫合した。術後はアチパメゾール0.5mg/kgを筋肉内注射し、トラネキサム酸10mg/kgを静脈内注射し、また術後1週間創面の消毒およびオキシテトラサイクリン(テラマイシン)10mg/kgを一日2回希釈し皮下に注射した。
【0011】
手術日からグルクロン酸投与群のウサギには毎日グルクロノラクトン1gを溶かした水(100ミリリットル)を最初自然摂取させ、その後は水を自由摂取させた。これを3週間続けた。また、コントロール群には、水のみを与えた。この間グルクロン酸投与群に副作用等の兆候を示すものは全く見あたらなかった。
3週間の投与期間終了後にグルクロン酸投与群・コントロール群それぞれの供試ウサギを安楽死させ、手術部を露出させ、(1)肉眼による治癒程度の観察を行なった。その後、左右大腿骨を筋肉と共に採取し、該大腿骨を10%バッファーホルマリン(Buffer formalin)によって固定し、左右の外側広筋及び大腿二頭筋を採材した。それらについて、それぞれの筋肉重量の測定を行い、(2)非手術側の筋肉重量に対する手術側の筋肉重量の割合を求めた。また左大腿骨については脱灰した後、修復部位、正常関節軟骨及び成長帯の組織標本を取り、ヘマトキシリン・エオジン重染色(H.E染色)、サフラニンO染色及びアルシアンブルー染色を実施して、顕微鏡観察と画像解析を実施した。
【0012】
以下にそれらの方法および結果を記載する。
(1)肉眼による治癒程度の観察
採材した左側大腿骨の手術部を肉眼でよく観察した。3週間後の治癒程度を見ると、D−グルクロン酸投与群では良好に治癒しているものが多く、コントロールでは治癒していないものが多く見受けられた。損傷の治癒程度を損傷の部位ごとに点数化して、表1に示した。
点数化は損傷部位ごとに、下記の基準で行った。
治癒率50%以下 0点
治癒率50〜60% 1点
治癒率60〜80% 2点
治癒率80〜100% 3点
【0013】
表 1 肉眼による治癒程度
部位 D−グルクロン酸投与群 コントロール群
内側滑車稜 3 2.5
滑車溝(上) 2.8 1.7
滑車溝(下) 2.7 2.3
合計 8.5 6.5
【0014】
この成績について、有意差検定(Mann−Whitney’s U test)を実施したところ損傷部位間では有意差は認められなかったものの、総合点では5%の確率で有意にグルクロン酸投与群が関節軟骨の治癒を促進する成績となった。
【0015】
(2)後肢筋肉の重量比較
上記で採材した左右の外側広筋及び大腿二頭筋のそれぞれについて、筋肉重量の測定を行い、非手術側の筋肉重量に対する手術側の筋肉重量の割合を求めた。その結果を表2に示した。
【0016】
表 2 後肢筋肉重量割合(手術側/非手術側)(3週間後)
部位 D−グルクロン酸投与群 コントロール群
外側広筋 95.9% 94 %
大腿二頭筋 98.6% 96.8%
【0017】
有意差検定の結果、コントロール群は明らかにグルクロン酸投与群と比較して筋肉の萎縮が発生していることが明らかとなった。このことから、グルコサミン投与群においては軟骨の修復が早められた結果、痛みが少なく運動量が多くなった結果筋肉の萎縮が少なくなったと考えられる。
【0018】
(3)組織学的観察
組織学的観察は軟骨修復部位、正常軟骨および成長帯が含まれる組織標本を作製し、ヘマトキシリン・エオジン重染色(H.E染色)、サフラニンO染色及びアルシアンブルー染色を実施し、それらの着色により行った。また、サフラニンO染色及びアルシアンブルー染色については、正常間接軟骨及び成長帯の組織片についても実施し、それらについても組織学的観察を行った。
組織学的観察のための標本は次のようにして作成した。
【0019】
採取した左側大腿骨を10%バッファーホルマリン(Buffer formalin)によって固定化し、次いで筋肉部を採材した後、組織片の厚さを5 mmにした(これ以上厚いと脱灰液の浸透性が悪く、脱灰に要する時間が長くなるので、それだけ組織障害が強くなる)。
次に5%ギ酸液によって1日振とう下のもとに脱灰を行う。脱灰終了後は、脱灰液を中和するために5%硫酸ナトリウム液に1日入れる。その後10時間くらい水洗した後脱水する。脱灰の完了した組織片を修復部位が縦断面になるように切り出しを行った。その後定法通りパラフィン包埋を実施し、ミクロトームによって5 mmに薄切した。この組織片をヘマトキシリン・エオジン重染色(H.E染色)、サフラニンO染色及びアルシアンブルー染色を行い、組織学的観察のための標本とした。サフラニンO染色標本及びアルシアンブルー染色標本は画像解析を実施し、修復部位、正常軟骨及び成長帯の200倍画像をPhotograb ab−300 version1.0(マッキントッシュ ソフトウエアー、Adobe System, 東京)を用いてデジタル化し、画素数として20,000ピクセルを無作為に6ヶ所設定し、その中の目的とする色調の占めるピクセル数を測定した。求めた数値は統計処理(t−検定)を実施した。
【0020】
(a)H.E染色観察結果
上記で染色された組織学的観察のための標本を肉眼で観察した結果、コントロールにおける修復部分は結合組織によって修復されているのに対して、グルクロン酸投与群においては軟骨様細胞により修復されていた。
この結果はグルクロン酸投与群においては軟骨の生成が促進されていることを示している。
【0021】
(b)アルシアンブルー染色観察結果
アルシアンブルー染色上記で染色された組織学的観察のための標本を肉眼で観察した結果、グルクロン酸投与群においては修復物質がブルーに染色されていた。アルシアンブルー染色はグルコサミノグルカン特異染色であることから、グルクロン酸投与群においては修復部位にグルコサミノグルカンが多く含まれいるがわかる。一方コントロール群においてはほとんど染色されていなかった。
アルシアンブルー染色画像を上記方法で画像解析した結果を、表3に示す。
【0022】
(c)サフラニンO染色観察結果
サフラニンO染色された組織学的観察のための標本を肉眼で観察した結果、グルクロン酸投与群においては修復物質が染色されていた。サフラニンO染色はプロテオグルカン特異染色であることから、グルクロン酸投与群においては修復部位にプロテオグルカンが多く含まれいるがわかる。一方コントロール群においてはほとんど染色されていなかった。
サフラニンO染色画像を上記方法で画像解析した結果を、表3に示す。
【0023】
【0024】
上記サフラニンO染色およびアルシアンブルー染色の画像解析の結果によればグルクロン酸投与群においてはコントロール群(対照)に比較して有意に高い値を示し、グルコサミノグルカンおよびプロテオグルカンが有意に多く存在していることがわかった。
【0025】
以上の(1)肉眼による治癒程度観察結果、(2)後肢筋肉の重量比較結果および(3)組織学的観察結果から、グルクロン酸投与群においては、軟骨組織におけるグルコサミノグルカンおよびプロテオグルカンの生成が促進され、軟骨組織の修復が促進されたものと考えられる。
【0026】
【発明の効果】
本発明で使用するグルクロン酸は毒性、副作用等もなく、かつ優れた軟骨生成促進作用、グルコサミノグルカンおよびプロテオグルカンの生成促進作用を有していることから、軟骨損傷に由来する疾病、例えば関節炎、リュウマチなどの予防または治療剤等として、また、軟骨生成促進剤として、更には、軟骨のグルコサミノグルカンおよびプロテオグルカンの生成が促進されることから、グルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進剤として有用である。
Claims (4)
- グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体を有効成分として含有する軟骨生成促進剤。
- グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体を有効成分とする軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療剤。
- グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体を有効成分として含有するグルコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進剤。
- グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体とグルコサミン塩を有効成分として含有する上記請求項第1項に記載の軟骨生成促進剤または第2項に記載の軟骨損傷に由来する疾病の予防または治療剤。
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