JP2004006881A - 磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気特性と共に耐熱性に優れた,磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分とする混合原料粉末を成型用金型に供給する供給工程と,前記金型内で混合原料粉末を加熱し,少なくとも該熱硬化性樹脂が液状にある状態で磁界を印加して該磁石粉末を配向させ,該磁界の印加により該磁石粉末の配向を維持した状態において加圧して,成形すると共に前記加熱により前記熱硬化性樹脂の架橋反応による熱硬化を進行させた後,磁界印加及び加圧を終了して,加熱された成形用金型より成形品を取り出す成形工程とからなる。前記混合原料粉末は,前記成形工程前に1.0〜4.0ton/cm2の圧力で仮成形し,混合原料粉末中の空気等の気体を脱気する。
【選択図】 図1
【解決手段】磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分とする混合原料粉末を成型用金型に供給する供給工程と,前記金型内で混合原料粉末を加熱し,少なくとも該熱硬化性樹脂が液状にある状態で磁界を印加して該磁石粉末を配向させ,該磁界の印加により該磁石粉末の配向を維持した状態において加圧して,成形すると共に前記加熱により前記熱硬化性樹脂の架橋反応による熱硬化を進行させた後,磁界印加及び加圧を終了して,加熱された成形用金型より成形品を取り出す成形工程とからなる。前記混合原料粉末は,前記成形工程前に1.0〜4.0ton/cm2の圧力で仮成形し,混合原料粉末中の空気等の気体を脱気する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,磁気異方性を有する磁石粉末を用いて,高密度化と高配向化による磁気特性の優れた樹脂結合型磁石を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂結合型磁石は,磁石粉末に有機系樹脂あるいは金属系樹脂とを結合させて製造するために同種類の焼結磁石等に比べて磁気特性は劣っている。しかし,物理的性質が優れるために取扱いが容易であるとともに形状の自由度が高い等の理由から,また磁気特性の優れた磁気異方性を有する磁石粉末の開発とあいまってその利用範囲は急速に拡がっている。
この樹脂結合型磁石の成形方法には,射出成形法,押出成形法および圧縮成形法がある。
射出成形法は一体成形ができ,寸法精度・形状自由度が優れているものの生産性を高めるために磁石粉末の量が60〜65vol%に止まることにより磁気性能の高い樹脂結合型磁石を得ることができない。
押出成形法は,磁石粉末の量は70〜75vol%と射出成形法に比べて多く,磁気特性に優れかつ連続的に製造できる特徴がある。
一方,射出成形法および押出成形法に比べて圧縮成形法は,形状自由度は少ないものの磁石粉末の量を80〜90vol%と最も多くすることにより磁気特性を高性能化できるという特徴を有している。
【0003】
また,近年,積極的に開発がおこなわれている磁気異方性を有する磁石粉末は,従来の等方性の磁石粉末に比べて磁気特性が優れているために樹脂結合型磁石への利用が期待されている。
【0004】
次に,最近の圧縮成形法における高密度化および高配向化に関する技術については,以下の開示がされている。
(1) 特開平1−205403号にて,圧縮成形時に加熱して樹脂の流動性を高めて高密度化,高性能化することを目的として超急冷法でつくられた磁石粉末に熱硬化性樹脂を加え圧縮成形する磁石において,成形時に加熱することを開示している。
【0005】
その加熱の程度は,30℃以上100℃以下の加熱においては,樹脂が硬化する前の流動性が高い状態に保つことができるため高密度化が可能であるが100℃以上の加熱では樹脂硬化が始まっている部分が多くなり成形金型への付着や十分に高密度化しないで硬化してしまった。そして,実施例2から,原子比Nd14Fe76Co5 B5 である超急冷法により得られた粉末を用い,エポキシ樹脂を加えて圧縮成形し,加熱温度が45〜77℃において密度6.7〜7.1g/cm3,磁気特性((BH)max)10.3〜11.2MGOeが得られたことを開示している。
【0006】
当該開示は,原料粉末に希土類磁石粉末を使用し,成形時に加熱することにより密度を7.1g/cm3と高密度化しているにもかかわらず磁気特性((BH)max)は11.2MGOeと低い特性値である。また,成形時の加熱温度は100℃以下としており,耐熱性を要求される樹脂結合型磁石には使用できないという問題がある。
【0007】
(2) 特開平2−116104号にて,優れた磁気特性を得るために磁石粉末の充填率を向上させた樹脂結合型磁石の製造方法の提供を目的として加熱しながら圧縮成形をすること,さらに圧縮成形を熱硬化性樹脂の軟化点以上の温度に加熱しながら行うことにより成形体を製造した後,熱硬化させる樹脂結合型磁石を開示している。
【0008】
この加熱しながら圧縮成形においては,熱硬化性樹脂の変形能を高めるに,圧縮成形の加熱を,使用する熱硬化性樹脂の軟化点から,軟化点+50℃前後の温度の範囲内で行うことが好ましい。こうして圧縮成形により得られた成形体に熱処理を施して熱硬化性樹脂を熱硬化させている。
実施例においては,融点40℃のオルトクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂と希土類磁石粉末を混合した原料粉末を,加熱温度100℃で圧縮成形し,次いでこの成形体を120℃にて熱硬化させた結果,密度は6.1g/cm3,磁気特性((BH)max)は9.0MGOeが得られたことを開示している。
【0009】
当該開示は,発明の効果において,原料粉末に希土類磁石粉末を使用し,成形する際に加熱しながら圧縮成形するため,熱硬化性樹脂の変形能を高め,磁石粉末の充填率を向上させ,また圧縮成形時の加熱を,使用する熱硬化性の樹脂の融点以上の温度で行うと,より密度が高く,磁気特性の優れた樹脂結合型磁石が得られるという。
しかしながら,当該開示は軟化点以上の温度に加熱することによる密度を高くすることにより磁気特性の向上を図ろうとしているにもかかわらず,前記の実施例から明らかなように密度を6.1g/cm3程度と低く磁気特性((BH)max)も9.0MGOeと低い特性値である。
また,当該開示は樹脂結合型磁石を得るための成形体の製造にかかわるものであり,その後の熱硬化処理を必要としている。
【0010】
(3) 特開平4−11702号にて,磁性粉末に対する樹脂の配合量が非常に少なくてすむため,磁気特性と物性の優れた樹脂磁石の製造法の提供を目的として,微粒子化した合成樹脂粉末と磁性粉末とを粉体混合し,得られた粉体混合物を,磁界を印加しながらまたは印加することなく圧縮成形し,加熱することを開示している。
【0011】
具体的には,磁性粉末は通常の大きさで0.1〜500ミクロンを有し,合成樹脂粉末は磁性粉末に対して約10分の1以下の粒径とすることにより,両者の粉末を混合すると磁性粉末の表面に合成樹脂粉末が電気的に均一に吸着する。
加熱は圧縮成形と同時に加熱を行うものとすれば,単一の工程で樹脂磁石成形体を製造することができるという利点がある。また,圧縮成形は,例えば実施例1および2にて15000エルステッド(Oe)の磁界を印加しながら行うことを開示している。
【0012】
そして,実施例1にて,バリウムフェライト磁性粉末とポリメタアクリル酸メチル微粉末(粒径0.05〜0.06ミクロン)からなる粉体混合物を15000エルステッド(Oe)の印可磁界を印可しながら,圧縮成形し,ついで加熱溶融して着磁樹脂磁石を得た。このときの比重は3.40で磁気特性((BH)max)は1.35MGOeであった。
【0013】
実施例3では,ネオジウム系磁性粉末(MQパウダーA)とポリメタアクリル酸メチル微粉末(粒径0.05〜0.06ミクロン)からなる粉体混合物を5000エルステッド(Oe)の印加磁界を印加しながら圧縮成形し,ついで加熱溶融して着磁樹脂磁石を得た。このときの比重は5.49で磁気特性((BH)Max)は7.3MGOeであった。
【0014】
当該開示では,微粉かつ六角板状により配向しやすいバリウムフェライト磁性粉末または長細いことにより配向しやすいネオジウム系磁性粉末(MQパウダーA)を磁性粉末として用い,樹脂粉末とともに印可磁界を印可しながら圧縮成形し,ついで加熱溶融して着磁樹脂磁石を得ている。従って,発明の効果で,「しかも磁性粉末に対する樹脂の配合量が非常に少なくてすむため,得られた樹脂磁石は顕著にすぐれた磁気特性と物性を有している。」と述べているが,実施例からわかるように比重および磁気特性は低いことから工程省略をねらったものと言える。
【0015】
(4) 特開平4−349603号は,成形性に優れたボンド磁石を製造するための複合磁石粉末に関し,圧縮成形時における金型との摩擦抵抗を低減させるとともに金型内面にかじり付きをなくし,また高密度の成形体を得ることを目的として,磁性粉末の表面に潤滑材を内包する熱重合樹脂製マイクロカプセルを被覆してなる複合磁石粉末を開示している。
【0016】
実施例1および2にて,(Pr,Sm)Co磁石粉末からなる本発明複合磁石粉末を24KOeの磁場中で圧縮成形し,この成形体を180℃にて加熱硬化した。この結果,密度6.82〜6.95g/cm3,磁気特性((BH)max)15.0〜15.7MGOeが得られている。
【0017】
当該開示は,高密度の成形体を得るために複雑な工程により磁性粉末の表面に潤滑材を内包する熱重合樹脂製マイクロカプセル化した複合粉末を用いて成形体を製造し,次いで180℃に加熱し硬化処理を行い高密度かつ磁気特性の優れたボンド磁石を得るものである。
しかしながら,磁石粉末と樹脂粉末とからなる原料粉末の製造工程を複雑にした上で,高密度化を達成しているにもかかわらず磁気特性が低いという問題がある。すなわち,高密度化とは高価な磁石粉末を多く使用することであり,その使用量に比例した磁気特性が得られていないことである。いいかえれば,24KOeの磁場中で圧縮成形しているが配向性が低いという問題がある。
また,成形体の密度がこのように高くなると樹脂の含有量が低くなるために,ボンド磁石の強度は成形体の形状により低くなったり,成形体の形状の自由度が低下することがある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,圧縮成形法において従来にない磁気特性の優れた樹脂結合型磁石を得るために,
第1に,磁気異方性を有する磁石粉末を使用すること,
第2に,圧縮成形法にて高密度化した樹脂結合型磁石にすること,すなわち樹脂粉末を少なくしたり,空隙を少なくして磁石粉末を多く含有させることにより緻密化すること,
第3に,一般的に高密度化すると配向率が低下する中で,高配向化した樹脂結合型磁石にすること,磁気異方性を有する磁石粉末は粒塊状のために配向性は低いが,この磁石粉末の磁気方向を100%揃えた理論値まで高めること,また空隙を少なくすること,
からなる課題があった。
また,本発明は磁気特性とともに耐熱性にも優れた磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法を提供しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は,磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分とする混合原料粉末を成型用金型に供給する供給工程と,
前記金型内で混合原料粉末を加熱し,前記熱硬化性樹脂が液状にある状態で磁界を印加して前記磁石粉末を配向させ,該磁界の印加により該磁石粉末の配向を維持した状態において加圧して,成形すると共に前記加熱により前記熱硬化性樹脂の架橋反応による熱硬化を進行させた後,磁界印加及び加圧を終了して,加熱されている成形用金型より成形品を取り出す成形工程とからなり,
かつ前記混合原料粉末は,前記成形工程前に加圧により仮成形して該混合原料粉末中に混入している空気等の気体を脱気し,
また,該仮成形して脱気するに当っては,その加圧力は1.0〜4.0ton/cm2とすることを特徴とする磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法にある(請求項1)。
本発明者らは,圧縮成形法により製造する樹脂結合型磁石の磁気特性をより優れたものとするため,磁気異方性を有する磁石粉末が100%である磁石(例えば,焼結磁石。)により得られる磁気特性に対し,磁石粉末に樹脂粉末を添加することにより減少した磁石粉末(例えば,樹脂粉末を17%添加した場合に83vol%である磁石粉末。)を使用した樹脂結合型磁石において理論的に達成されるべき磁気特性をいかに得るかについて鋭意研究した結果,
【0020】
(1) 熱硬化性樹脂の硬化特性の研究から,樹脂が溶融して液状化状態,好ましくは液状樹脂の粘度が最低値を示す際に,磁界を印加して磁場配向を行うことにより,磁石粉末の粒子の磁気方向を最も揃えることができるため理論的に求められる高い配向率が得られること,
【0021】
(2) また,液状樹脂中で磁場配向下において加圧成形することにより,磁石粉末の粒子は三次元方向の加圧のために磁界の印可で揃えた磁場配向を維持しながら硬化できること,
【0022】
(3) そして磁気方向を揃えるために液状樹脂中で磁石粉末の個々の粒子が回転・移動等の運動を起こして原料粉末から入った空気等の気体あるいは樹脂粉末等の液状化の過程で発生するガス成分等の気体を排出して緻密化が得られること,
【0023】
(4) さらに磁石粉末の粒子を磁気方向に揃える際に磁界の印加方法としてパルス印加が効果あること,樹脂が液状化した後は減圧脱気によりガス成分等の気体が容易に排出できること,
【0024】
(5) 以上の磁場配向と緻密化が成されるのと同期して,さらなる加熱と新たに加圧することにより成形体または熱硬化した樹脂結合型磁石を得ること,
の知見を見い出したのである。
また,加熱温度は120℃以上,好ましくは150℃以上とすることが耐熱性を有する樹脂結合型磁石には必要であり,併せて生産性の向上のためにも必要なことを見出したものである。
【0025】
本発明は,かかる知見にもとづいて完成されたものであって,本発明の圧縮成形法による樹脂結合型磁石の製造方法は,図1に示す原理図により磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分とする原料粉末を,加熱および磁界を制御できる成形用金型に充填して,熱硬化性樹脂粉末が加熱により溶融して液体状になったときから磁界を印加して磁石粉末を配向させ,次いで加圧による圧縮成形を行うことを特徴としている。
【0026】
以下に,本発明の詳細について説明する。
はじめに,磁気特性の優れた樹脂結合型磁石を得るためには,磁気異方性樹脂結合型磁石であることが必要なことから,磁石粉末としては磁気異方性を有する磁石粉末を使用する。
磁気異方性を有する磁石粉末としては,希土類元素R1−Co系磁石粉末,希土類元素R2−Fe−B系磁石粉末,または希土類元素R3−Fe−N系磁石粉末のいずれか1種以上を用いる。
ここで,希土類元素R1およびR3はSmを含む一種類以上の希土類元素からなり,希土類元素R2はNdを含む一種類以上の希土類元素からなる。
【0027】
従って,希土類元素R1−Co系磁石粉末にはSm−Co系磁石粉末,Smの一部をNd,Pr,Y,Ce,Dyからなる合金の一種または二種以上で置換したSm−Co系磁石粉末,Sm−Co−Cu−Fe系においてZr,Hf,Tiからなる一種又は二種以上を添加した磁石粉末などが含まれる。
【0028】
希土類元素R2−Fe−B系磁石粉末には,Nd−Fe−B系磁石粉末,Ndの一部をDy,Pr,Yからなる合金の一種又は二種以上で置換したNd−Fe−B系磁石粉末,Nd−Fe−B−Co系磁石粉末,Nd−Fe−B−Co系においてGa,Zr,Hf,Al,Cu,Mn,Ti,Siからなる合金の一種又は二種以上添加した塑性からなる磁石粉末などが含まれる。
また,これらの磁石粉末には急冷凝固法により製造された磁石粉末を熱間静水圧成形法(HIP法)により成形し,次いで固めた磁石粉末のバルクを塑性加工した後,粉砕して得られた磁気異方性磁石粉末がある。また,水素処理法(HDDR法)により製造された磁気異方性磁石粉末がある。水素処理法で製造された磁石粉末は塊状の粒形からなる形状で一般には配向率は低いとされているが,本発明は特にこの形状を有する磁石粉末の配向率を高めるものである。
【0029】
次に,希土類元素R3−Fe−N系磁石粉末には,Sm−Fe−N系磁石粉末,Sm−Fe−Co−N系磁石粉末およびSm−Fe−V−N系磁石粉末が含まれる。
【0030】
前記の磁気異方性を有する磁石粉末を微粉化したのちに,造粒した磁石粉末として使うこともできる。微粉化された粒子は小さな粒子のために磁界を印可されたときに動きやすく容易に磁場方向に配向しやすい。
【0031】
本発明における熱硬化性樹脂粉末としては,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂などの熱硬化性を有する樹脂粉末があげられる。
樹脂粉末の特性としては,特開平2−116103号における熱硬化性樹脂の軟化点を30〜70℃に限定する必要もなく,70℃以上の軟化点を有する熱硬化性樹脂を用いることができる。耐熱性を要求される磁気異方性樹脂結合型磁石の製造のためには120℃以上の軟化点を有する熱硬化性樹脂が必要となるからである。さらに好ましくは,150℃以上の軟化点を有する熱硬化性樹脂が必要となるからである。
また,本発明で用いる熱硬化性樹脂は常温で固体の粉末状である。加熱および磁界を制御できる金型への原料粉末の給粉量の安定化し,得られる樹脂結合型磁石の密度,磁気特性および寸法等を一定とするためであり,作業における操作性の安定のためからである。
【0032】
また,熱硬化性樹脂粉末への添加剤として必要に応じてステアリン酸亜鉛,ステアリン酸アルミニウム,アルコール系潤滑剤などより選ばれ潤滑剤,さらにチタネート系もしくはシラン系のカップリング剤,4.4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)などの硬化剤や北興化学工業製の商品名TPP−Sなどの硬化促進剤が少量添加される。これらの添加剤を加えることにより,成形のタイミング調節,磁石粉末の粒子に対する溶融した液状樹脂の濡れ性あるいは密着性,成形後における金型からの成形体の離型性などが改善されるからである。
【0033】
磁気異方性を有する磁石粉末を80〜90vol%と熱硬化性樹脂粉末を10〜20vol%とを混練機により均一に混合して,原料粉末を得る。また,必要に応じて,潤滑剤,硬化剤,硬化促進剤,カップリング剤を0.1〜2.0vol%を添加する。
【0034】
さらに,本発明の原料粉末としては,磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分として混合により製造された原料粉末のみでなく,特開平2−27801号,特開平4−349602号,特開平4−349603号などにて開示されているように磁石粉末の表面にあらかじめ熱硬化性樹脂,潤滑剤等を被覆した複合磁石粉末を用いることもできる。
【0035】
次に,高配向化および高密度化について詳細に説明する。
はじめに,本発明の磁気異方性樹脂結合型磁石の製造においては,成形装置としては図2〜図6に示す装置を用いる。図2および図3は縦磁場成形または横磁場成形ができる成形装置において成形用金型が加熱による温度を制御できる機構を有している。
縦磁場成形は,リング状の成形体であってラジアル方向に配向する場合や円柱状の成形体で軸方向への配向する場合に有効である。
また,横磁場成形は立方体,直方体に配向する場合やリングのアキシャル方向(一軸方向)に配向する場合に有効である。
【0036】
また,図4は,加熱による温度を制御とともに減圧脱気ができる成形装置,すなわち樹脂が液状化した後に液体状樹脂中に含まれているガス成分等の気体を排出するために成形用金型内を減圧状態にできる機構を有した成形装置である。図2dはさらに超音波振動をかけられる成形装置であって10KOe以上の静磁場からなる磁界を印加できる成形用金型が用いることができる。図6は加熱による温度を制御でき,10KOe以上の静磁場または10KOe以上のパルス磁場,好ましくは25KOe以上のパルス磁場からなる磁界を印加できる成形用金型からなっている。
【0037】
この成形用金型に原料粉末を充填した後,加熱を開始する。加熱により熱硬化性樹脂粉末が溶融して液体状になったときから,磁界を印加して磁石粉末の粒子の磁気方向を一方向に揃える配向処理を行う。配向処理は,磁石粉末が粘性を有する液体状樹脂中で回転・移動等の挙動がし易いほど印可磁界の強さと印可時間に比例して多くの磁石粉末粒子の磁気方向が一方向に揃うことになる。理論的には,全ての磁石粉末粒子の磁気方向が一方向に揃うことが可能である。
【0038】
液状樹脂中における磁石粉末粒子の磁気方位状態について配向処理前後のモデルを図7〜8に示す。図7は磁界を印加する前の状態を示し,図8は磁界を印加した後の状態を示している。磁場方向は,上下方向からなる圧縮成形の方向とは直角である横磁場からなっている。
液状樹脂中の磁石粉末粒子の磁気方向は,図7〜8から磁界を印加する配向処理によりランダムな磁気方向から一方向に揃っていることがわかる。この図に示すように粒子の磁気方向が理論的に全て一方向に揃っているときに配向率は100%となる。
【0039】
高い配向率を得るためには,第1に圧縮成形において磁界を印加した際に磁気方向が一定方向に揃うように磁石粉末が動きやすくすることである。磁石粉末が液体状樹脂からなる粘性体での挙動が最も自由になるのは,その粘度が最低値を示すときである。この熱硬化性樹脂の粘度(ρ)は,加熱温度(T)と加熱時間(t)の関数で表され,キラトメーター,フローテスターで求められる。従って,最低粘度(ρmin)を示す加熱時間は,それぞれの加熱温度において求められるため,ある加熱温度(Tm)における最低粘度を示す加熱時間(t)は,t∝(Tm,ρmin)で求められる。
【0040】
図9には,エポキシ樹脂からなる熱硬化製樹脂粉末を100℃,120℃,160℃および180℃に加熱したときの液体状樹脂の粘度の経時変化を示す。加熱温度を高くするにしたがって最低粘度(ρmin)を得るための加熱時間は短くなっている。この最低粘度(ρmin)において,磁石粉末の磁気方向が一方向に最も揃え易くなる。
また,この磁石粉末の磁気方向が一方向に最も揃え易くなる最低粘度(ρmin)域において加圧して密度を高めることは,高粘度域における加圧に比較して磁石粉末の粒子への加圧がより三次元的な加圧となって磁石粉末の粒子の磁気方向からの乱れを少なくする。
【0041】
すなわち,熱硬化性樹脂粉末を成形用金型に充填したときから磁界を印可する磁場配向処理を行うことにより,熱硬化性樹脂粉末が軟化し液体状になっていく段階から磁石粉末が回転・移動等の挙動を開始し,最低粘度(ρmin)の値を示すときに理論的に一方向となるように磁場配向処理の時間が必要だからである。そして,最低粘度(ρmin)の値を示す頃から,加圧成形を開始する。加圧による磁石粉末の磁気方向の乱れを抑制し,磁気方向を一方向に維持するために引続き磁界を印加することである。
【0042】
次に高い配向率を得るためには強い磁界の印可が必要である。
本発明では,静磁場による磁界の印加の場合は10KOe以上の静磁場が必要である。10KOe未満では,粘度の高い液状樹脂中では全ての磁石粉末粒子の磁気方向を一方向に揃えることが困難だからである。一方,前記の連続的な磁界の印可とは異なり非連続的に磁界を印加するパルス方式の場合にも10KOe以上の磁場が必要であり,短時間の配向処理の場合には好ましくは25KOe以上の磁界の強度が必要である。
【0043】
さらに,磁石粉末の磁気方向を一方向に揃える配向率を高めるためには,液体状樹脂および磁石粉末に超音波振動を加えることが好ましい。超音波振動としては20kHz〜50kHzの振動数である。20kHz未満では粘度の高い液体状樹脂中の磁石粉末粒子を振動させるには十分でなく50kHzを越えると振幅が小さくなり,磁石粉末を振動させる効率の低下を招くからである。
【0044】
高密度化による磁気特性の向上を図るため,磁界を印加しながら加圧による圧縮成形を行う。この加圧において,成形圧力が大きいほど成形体密度の大きい樹脂結合型磁石が得られるが,金型の寿命は短くなる。本発明では,4.0〜10.0ton/cm2で成形する。好ましくは,6.0〜8.0ton/cm2である。4.0ton/cm2未満の低い成形圧力では成形体密度が小さく,磁気特性の向上が図れない。一方,10.0ton/cm2を超える成形圧力では金型の寿命が急激に低下するからである。
【0045】
また,高密度化のためには圧縮成形の成形圧力を高めるとともに原料粉末から混入される空気等の気体および原料粉末の溶融過程で発生するガス等の気体を脱気することが必要である。脱気方法としては,原料粉末が加熱により溶融する前に低い成形圧力で原料粉末を仮成形して脱気する方法と原料粉末が溶融した後の液体状樹脂から脱気する方法があり,後者の成形装置としては図4に示す装置を用いる。
【0046】
はじめに,原料粉末を仮成形して脱気する方法は,原料粉末を成形用金型に充填したのち成形圧力1.0〜4.0ton/cm2で圧縮することにより原料粉末中の空気等の気体を脱気する。成形圧力が1.0ton/cm2未満では脱気の効果が認められない。一方,成形圧力が4.0ton/cm2を越えると原料粉末が加熱により溶融して液体状樹脂となるときにガス成分等の気体の脱気が困難となる。
【0047】
次に,原料粉末が溶融した後の液体状樹脂から脱気する方法としては,原料粉末の溶融過程で発生する気泡が磁石粉末の粒子表面に付着している場合には,磁石粉末粒子に磁界を印加することにより磁石粉末が液体状樹脂中で回転・移動等の挙動するときに気泡が磁石粉末の粒子表面から離脱する脱気を行うことができる。
【0048】
さらに,磁石粉末の粒子表面に付着している気泡とともに液体状樹脂中は浮遊している気泡は,金型内を減圧することにより液体状樹脂から減圧脱気を行うことが好ましい。
脱気条件としては,10〜500Torrの減圧下で脱気する。10Torrより低いと液体状樹脂中の気体とともに液体状樹脂をも引くからであり,500Torrより高いと減圧による脱気がされないからである。
【0049】
成形体の硬化処理は,磁界を印加しながら加圧による圧縮成形に引き続いて加熱を維持して行う。この場合には,連続的な生産方式を採用でき,最終製品の寸法を制御できる。また,圧縮成形後に金型から取り出して,新たに加熱炉で加熱してもよい。
【0050】
前記磁気異方性樹脂結合型磁石は,最大エネルギー積((BH)max)が次式で表されるYMGOe以上を有することが望ましい。
【0051】
一般に,最大エネルギー積((BH)max)がXMGOeである磁気異方性磁石粉末Aの100%からなる焼結磁石の最大エネルギー積((BH)max)はX100MGOeに対して,磁気異方性磁石粉末AがVvol%からなる樹脂結合型磁石は理論的にはXvMGOeである。
図10に,焼結磁石の最大エネルギー積((BH)max)の領域(X100)を,図11に樹脂結合型磁石の焼結磁石の最大エネルギー積((BH)max)の領域(Xv)を表す。この図から樹脂結合型磁石の焼結磁石の最大エネルギー積((BH)max)は焼結磁石に対して,樹脂が加えられた場合には磁石粉末の体積比の二乗に比例している。
この磁気異方性樹脂結合型磁石は,理論的に得られるXvMGOeの80%以上の最大エネルギー積((BH)max)を有するものである。
【0052】
【数1】
【0053】
ここで,V1は磁気異方性樹脂結合型磁石における磁石粉末の体積比(vol%)を表し,V1=80〜90%の範囲にある。X1は磁気異方性樹脂結合型磁石の原料として使用される磁石粉末の最大エネルギー積((BH)max)を表し,磁気異方性を有する磁石粉末としてX1≧30MGOeを使うことが好ましい。
【0054】
また,前記磁気異方性樹脂結合型磁石は,最大エネルギー積((BH)max)が20.0MGOe以上を有することが望ましい。
【0055】
【作用】
本発明によれば,磁気異方性樹脂結合型磁石の原料粉末を成形するに際して,成形金型を加熱して樹脂が液体状態下で磁界を印可して磁石粉末粒子の磁気方向を揃えるとともに加圧成形するために,磁石粉末の密度を高めるとともに磁石粉末粒子の配向率を向上させることができる。
さらに,液体状樹脂中のガス等の気体を脱気すること又は原料粉末の圧縮成形に先立った予備成形により密度を向上させることができる。そして超音波振動を加えること又はパルス磁界の印加により配向率を向上させることができる。
【0056】
また,高密度化かつ高配向化することにより磁気異方性磁石粉末の有する最大エネルギー積((BH)max)の理論値の80%以上の最大エネルギー積((BH)max)を達成した磁気異方性樹脂結合型磁石を得ることができる。
【0057】
【実施例】
以下,本発明の実施例につき,詳細に説明する。
各実施例において使用する原料粉末の調整について前もって説明する。
原料粉末は,原料粉末用磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを所定の割合で混合して調整する。原料用磁石粉末としては,HDDR処理法により作製したNd−Fe−B系磁石粉末,窒化処理後に機械粉砕法で作製したSm−Fe−N系磁石粉末および粉砕法で作製したSm−Co系磁石粉末の3種類の原料用磁石粉末を使用する。
一方,熱硬化性樹脂粉末は前記の3種類の原料用磁石粉末に対して1種類の熱硬化性樹脂粉末を調整して使用する。
【0058】
はじめに,原料粉末用磁石粉末と混合する熱硬化性樹脂粉末についての調整方法を説明する。
主剤としてエポキシ樹脂粉末(油化シェルエポキシ社製の商品名エピコート1004)の100に対して硬化剤としてジアミノジフェニルメタン(DDMと称す。)(和光純薬工業社製)を5,硬化促進剤として商品名TPP−S(北興化学工業製)を2,内部離型剤として商品名ヘキストS(ヘキストジャパン製)を2.2の配合比で秤量し,加熱混合した後に粉砕して混合樹脂粉末を得た。こうして得られた混合樹脂粉末にカップリング剤を,原料用磁石粉末に対して0.5wt.%のカップリング剤を添加して原料粉末として用いる熱硬化性樹脂粉末を調整した。
以下の各実施例において,この調整した原料粉末を熱硬化性樹脂粉末(A)として使用する。
【0059】
次に,3種類の原料粉末用磁石粉末の作製方法について以下に説明する。
第1に,Nd−Fe−B系磁石粉末は次のとおりである。
Nd−Fe−B系磁石合金を30kgVIMで溶解し,基本組成がNd12.5Fe59.1Co20.5B6.1Ga1.8からなるインゴットを製造した。このインゴットを真空焼鈍炉に装入して真空に排気後Arガスを導入して200Torrの雰囲気にて1100℃に加熱し,40Hrのソーキング加熱を行った。このインゴットを30mm程度の塊に粗砕してHDDR処理に供した。HDDRの処理条件は1.3kg/cm2の加圧した水素ガス雰囲気下で800℃にて3Hrの水素吸蔵処理を行ない,次に3×10−5Torrの真空雰囲気下で800℃にて1Hrの脱水素処理を行なった。その後,急冷して微粉末の集合体(水素崩壊物)を得た。この水素崩壊物を乳鉢で解きほぐして磁石粉末とし,この磁石粉末をn−ヘキサン中でボールミル粉砕を行い,分級して212μm以下の原料粉末用磁石粉末を得た。
【0060】
こうして得られた原料粉末用磁石粉末の磁気特性をVSM振動型磁束計で測定した結果,最大エネルギー積((BH)max)は36.0MGOe,残留磁束密度(Br)は12.8kG,保磁力(iHc)は11.5kOeであった。
以下の各実施例において,前記の製造方法によって作製した基本組成と磁気特性を有する原料粉末用磁石粉末をNd−Fe−B系磁石粉末(P1)として使用する。
【0061】
第2に,Sm−Fe−N系磁石粉末は次のとおりである。
Sm−Fe系磁石合金を30kgVIMで溶解し,組成がSm12.0F88.0からなるインゴットを製造した。このインゴットを30mm程度の塊片に粉砕し,これをアンモニア分解ガス中で450℃にて3Hrの窒化処理を行なった。次いで,Arガス雰囲気中で450℃にて1Hrの拡散処理を行ない,n−ヘキサン中でボールミル粉砕を行い,1〜3μmの原料粉末用磁石粉末を得た。得られた磁石粉末の基本組成は,Sm9.0F77.0N13.6であった。
【0062】
こうして得られた原料粉末用磁石粉末の磁気特性をVSM振動型磁束計で測定した結果,最大エネルギー積((BH)max)は35.0MGOe,残留磁束密度(Br)は13.0kG,保磁力(iHc)は8.8kOeであった。
以下の各実施例において,前記の製造方法によって作製した基本組成と磁気特性を有する原料用磁石粉末をSm−Fe−B系磁石粉末(P2)として使用する。
【0063】
第3に,Sm−Co系磁石粉末は次のとおりである。
Sm−Co系磁石合金を30kgVIMで溶解し,基本組成がSm10.8Co54.4Cu6.2Fe25.9ZR2.7からなるインゴットを製造した。このインゴットをArガス雰囲気下で1180℃にて30Hrソーキング処理を行ない,次いで,Arガス雰囲気下で800℃にて24Hr時効処理を行なった。次に,30mm程度の塊片に粉砕し,これをArガス雰囲気中で機械粉砕により500μm以下にし,次いでn−ヘキサン中でボールミル粉砕を行い,30μm以下の原料粉末用磁石粉末を得た。
【0064】
こうして得られた原料粉末用磁石粉末の磁気特性をVSM振動型磁束計で測定した結果,最大エネルギー積((BH)max)は31.0MGOe,残留磁束密度(Br)は12.0kG,保磁力(iHc)は11.5kOeであった。
以下の各実施例において,前記の製造方法によって作製した基本組成と磁気特性を有する原料用磁石粉末をSm−Co系磁石粉末(P3)として使用する。
【0065】
実施例1.
原料粉末用磁石粉末として,Nd−Fe−B系磁石粉末(P1),Sm−Fe−B系磁石粉末(P2)およびSm−Co系磁石粉末(P3)の3種類を使用する。原料粉末用磁石粉末は83vol%,熱硬化性樹脂粉末(A)は17vol%の配合比でそれぞれ秤量し,混合して原料粉末を調整した。成形装置として,図11bに示す横磁場成形法を用いた。
【0066】
150℃に昇温して保持している成形用金型に原料粉末を給粉した。熱硬化性樹脂粉末(A)が溶融して液体状になり樹脂の粘度が低下した時点から16kOeの磁界の印可を開始した。次に,150℃の加熱において最低粘度が得られる加熱時間の経過後(給粉開始から60秒経過後),加圧を開始した。加圧力は8.0ton/cm2である。こうして加熱温度150℃に維持しながら磁界を印可と加圧成形を同時に行ない,液体状樹脂の架橋反応が進み粘度が増加したときに磁界の印可を終了する。その後,加熱および加圧を終了して成形用金型から樹脂結合型磁石を取り出す。
この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
本実施例および次の比較例1〜2で成形して作製した樹脂結合型磁石の形状と寸法は10×10×7mmの直方体である。
なお,以下の実施例および比較例においても樹脂結合型磁石の形状と寸法は10×10×7mmの直方体である。
【0067】
なお,実施例1に対応する比較例1−1は,成形用金型に原料粉末を給粉し,常温で加圧成形を行なった。加圧力は8.0ton/cm2である。成形時の磁界の印可は16kOeである。次いで,この成形体を150℃にて30分間の硬化処理(キュア処理)を行なった。
【0068】
また,比較例1−2は,70℃に加熱保持した成形用金型に原料粉末を給粉し,8.0ton/cm2の加圧力で加圧成形を行なった。成形時の磁界の印可は16kOeである。次いで,この成形体を150℃にて30分間の硬化処理を行なった。
【0069】
表1に,実施例1および比較例1−1〜1−2で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。また,表1の実施例中のかっこ内の数値は所定の磁気特性を有する異方性磁石粉末を使用したときに得られる樹脂結合型磁石の理論値に対する比率を百分率で求めたものである。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から,本実施例に示すようにNd−Fe−B系樹脂結合型磁石およびSm−Fe−N系樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は約20MGOeの値が得られ,またSm−Co系樹脂結合型磁石は約17MGOeの値が得られており,比較例のいずれに対してもそれぞれ高性能な磁気異方性脂結合型磁石である。
また,いずれの樹脂結合型磁石も理論的に得られる磁気特性の80%を確保しており高配向化による優れた磁気異方性脂結合型磁石である。
なお,比較例は42〜63%にとどまっている。
【0072】
実施例2.
常温の成形用金型に原料粉末を給粉して,3.0ton/cm2にて仮成形を行なった後に,成形用金型を加熱して150℃に昇温して保持した。次いで,実施例1と同じ条件で処理し,成形用金型より樹脂結合型磁石を取り出した。 この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
【0073】
また,比較例2としては,成形用金型に原料粉末を給粉し,3.0ton/cm2にて仮成形を行なった後に,8.0ton/cm2加圧力で加圧成形を行なった。成形時の磁界の印可は16kOeである。次いで,この成形体を150℃にて30分間の硬化処理を行なった。
【0074】
表2に,実施例2および比較例2で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2の結果から,実施例1の結果(表1)に較べて最大エネルギー積((BH)max)で0.2〜0.5MGOeの磁気特性の向上が図られている。一方,比較例2は比較例1−1と同じ磁気特性である。
仮成形を行なうことにより磁石粉末の粒子間のブリッジ形成が抑制されて高密度化が図られているものといえる。特に,微粉末粒子からなるSm−Fe−N系樹脂結合型磁石に磁気特性の向上が大きいからである。
なお,比較例2から成形用金型を実施例のように加熱していない場合にはその効果はないものといえる。
また,いずれの樹脂結合型磁石も理論的に得られる磁気特性の81〜84%と向上しており高配向化による優れた磁気異方性脂結合型磁石である。
なお,比較例は42〜49%であった。
【0077】
実施例3.
本実施例は,実施例1により作製した樹脂結合型磁石を成形用金型から取り出さないで引き続いて150℃に保持した成形用金型内で5分間の硬化処理を行なった。
比較例3としては,樹脂結合型磁石を成形用金型から取り出して新たに150℃にて30分間の硬化処理を行なった。
表3に,実施例3および比較例3で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3の結果から,樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は硬化処理の行なう時期にかかわらずほぼ同等の値が得られており,また樹脂結合型磁石の表面品質(欠け,割れの有無)に影響はない。しかし,加圧成形後に同じ成形用金型で硬化処理(キュア処理)を行なうことにより新たな工程の省略と硬化処理(キュア処理)の時間が30分間から5分間へと大幅に時間の短縮が図れる。
【0080】
実施例4.
本実施例は,図4に示す減圧脱気ができる成形装置を使用する。
150℃に昇温して保持している成形用金型に原料粉末を給粉した。熱硬化性樹脂粉末(A)が溶融して液体状になり樹脂の粘度が低下した時点から液体状樹脂の減圧脱気を開始した。圧力は450Torrの減圧にして油回転ポンプで脱気を行なった。また,16kOeの磁界の印可を開始した。次に,150℃の加熱において最低粘度が得られる加熱時間の経過後(給粉開始から60秒経過後),加圧を開始した。加圧力は8.0ton/cm2である。こうして加熱温度150℃に維持しながら磁界の印加と加圧成形を減圧脱気を同時に行ない,液体状樹脂の架橋反応が進み粘度が増加したときに磁界の印加および減圧脱気を終了する。その後,加熱および加圧を終了して成形用金型から樹脂結合型磁石を取り出す。
この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
表4に,実施例4で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0081】
【表4】
【0082】
表4の結果から,樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は実施例1に示す結果(表1)と比較して,減圧脱気を行なうことにより0.4〜1.0MGOeの磁気特性の向上が図られ,また,いずれの樹脂結合型磁石も理論的に得られる磁気特性の83〜84%をが得られており,実施例1に比較してさらに3%の向上した高密度化と高配向化による優れた磁気異方性脂結合型磁石である。
【0083】
実施例5.
本実施例は,150℃に昇温して保持している成形用金型に原料粉末を給粉した。熱硬化性樹脂粉末(A)が溶融して液体状になり樹脂の粘度が低下した時点から16kOeの磁界の印可を開始した。同時に,20kHzの超音波振動の付与を開始した。次に,150℃の加熱において最低粘度が得られる加熱時間の経過後(給粉開始から60秒経過後),加圧を開始した。加圧力は8.0ton/cm2である。こうして加熱温度150℃に維持しながら磁界の印可と加圧成形を超音波振動下で同時に行ない,液体状樹脂の架橋反応が進み粘度が増加したときに磁界の印可および超音波振動の付与を終了する。その後,加熱および加圧を終了して成形用金型から樹脂結合型磁石を取り出す。
この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
表5に,実施例5で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0084】
【表5】
【0085】
表5の結果から,樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は実施例1に示す結果(表1)と比較して,超音波振動を付与することにより0.7〜1.3MGOeの磁気特性の向上が図られ,また,いずれの樹脂結合型磁石も理論的に得られる磁気特性の84〜86%をが得られており,実施例1に比較してさらに4〜5%も向上した高密度化と高配向化による優れた磁気異方性脂結合型磁石である。
この結果より,実施例1のレベルの最大エネルギー積((BH)max)を得るためには超音波振動を付与することによって加圧力を8.0ton/cm2から6.5ton/cm2程度に低下することができ,成形用金型の寿命向上に寄与できる。
【0086】
実施例6.
本実施例は,磁界の印加をパルス方式による実施例6−1と磁界の印加をパルス方式に加えて所定の磁界を印可する実施例6−2からなる。
実施例6−1は,縦磁場成形ができる成形装置(図2)を用いて,150℃に昇温して保持している成形用金型に原料粉末を給粉した。熱硬化性樹脂粉末(A)が溶融して液体状になり樹脂の粘度が低下した時点から50kOeのパルス磁界の印加を開始した。パルス磁界は0.1秒間印加し,2秒間無印可との繰返しである。次に,150℃の加熱において最低粘度が得られる加熱時間の経過後(給粉開始から60秒経過後),加圧を開始した。加圧力は8.0ton/cm2である。こうして加熱温度150℃に維持しながら磁界の印加と加圧成形を同時に行ない,液体状樹脂の架橋反応が進み粘度が増加したときに磁界の印可を終了する。その後,加熱および加圧を終了して成形用金型から樹脂結合型磁石を取り出す。
この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
【0087】
実施例6−2は,実施例6−1において50kOeのパルス磁界の印可を開始と同時に16kOeの磁界を印加した例である。
【0088】
比較例4は,実施例6−2においてパルス方式の磁界の印加しないで16kOeの磁界を印加した例である。
【0089】
表6に,実施例6−1,実施例6−2および比較例4で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0090】
【表6】
【0091】
表6の結果から,樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は一般的な磁界を印加する方式である比較例4に比べて,パルス方式の磁界の印加による実施例6−1からは0.3〜0.5MGOeの磁気特性の向上が図られ,さらに両者の印可方式の組み合わせである実施例6−2から0.8〜0.9MGOeの磁気特性の向上が図られている。
【0092】
【発明の効果】
本発明により,磁気特性の優れた磁気異方性樹脂結合型磁石を得ることができ,特に磁石粉末V%からなる樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を理論値の80%以上の樹脂結合型磁石を提供することができる。また,最大エネルギー積((BH)max)が20MGOe以上の樹脂結合型磁石を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】金型加熱機構を有し,縦磁場成形できる装置の概念図である。
【図3】金型加熱機構を有し,横磁場成形できる装置の概念図である。
【図4】金型加熱機構を有し,減圧脱気できる横磁場成形装置の概念図である。
【図5】金型加熱機構を有し,減圧脱気とともに超音波振動をかけることのできる横磁場成形装置の概念図である。
【図6】金型加熱機構を有し,パルス方式の磁場および静磁場による成形ができる装置の概念図である。
【図7】磁界を印可する前の加熱した金型内の磁石粉末の粒子の磁気方向を示す図である。
【図8】磁界を印可した後の加熱した金型内の磁石粉末の粒子の磁気方向を示す図である。
【図9】各加熱温度における液状化したエポキシ樹脂の粘度の経時変化の説明図である。
【図10】磁石粉末100%からなる磁石(例えば,焼結磁石)のBH曲線から得られる(BH)maxの説明図である。
【図11】磁石粉末V%,樹脂(100−V)%からなる磁石(例えば,磁石粉末V%の樹脂結合型磁石)のBH曲線から得られる(BH)maxの説明図である。
【符号の説明】
11...加熱装置,
12...電磁石,
13...磁界の印加方向,
14...加圧方向,
15...制御装置,
16...磁石粉末粒子の磁気方向,
17...液体状樹脂,
21...電磁石,
22a...ダイ,
22b...上パンチ,
22c...下パンチ,
22d...加熱装置,
23...加圧装置,
24...油回転ポンプ,
25...超音波振動子,
26...パルス磁場用空心コイル,
31...加熱装置,
32...電磁石,
33...磁界の印加方向,
34...加圧方向,
35a...磁石粉末粒子の磁気方向(磁場配向処理前),
35b...磁石粉末粒子の磁気方向(磁場配向処理後),
36...液体状樹脂,
51a...磁石粉末100%の(BH)max,
52b...磁石粉末V%の(BH)max,
【産業上の利用分野】
本発明は,磁気異方性を有する磁石粉末を用いて,高密度化と高配向化による磁気特性の優れた樹脂結合型磁石を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂結合型磁石は,磁石粉末に有機系樹脂あるいは金属系樹脂とを結合させて製造するために同種類の焼結磁石等に比べて磁気特性は劣っている。しかし,物理的性質が優れるために取扱いが容易であるとともに形状の自由度が高い等の理由から,また磁気特性の優れた磁気異方性を有する磁石粉末の開発とあいまってその利用範囲は急速に拡がっている。
この樹脂結合型磁石の成形方法には,射出成形法,押出成形法および圧縮成形法がある。
射出成形法は一体成形ができ,寸法精度・形状自由度が優れているものの生産性を高めるために磁石粉末の量が60〜65vol%に止まることにより磁気性能の高い樹脂結合型磁石を得ることができない。
押出成形法は,磁石粉末の量は70〜75vol%と射出成形法に比べて多く,磁気特性に優れかつ連続的に製造できる特徴がある。
一方,射出成形法および押出成形法に比べて圧縮成形法は,形状自由度は少ないものの磁石粉末の量を80〜90vol%と最も多くすることにより磁気特性を高性能化できるという特徴を有している。
【0003】
また,近年,積極的に開発がおこなわれている磁気異方性を有する磁石粉末は,従来の等方性の磁石粉末に比べて磁気特性が優れているために樹脂結合型磁石への利用が期待されている。
【0004】
次に,最近の圧縮成形法における高密度化および高配向化に関する技術については,以下の開示がされている。
(1) 特開平1−205403号にて,圧縮成形時に加熱して樹脂の流動性を高めて高密度化,高性能化することを目的として超急冷法でつくられた磁石粉末に熱硬化性樹脂を加え圧縮成形する磁石において,成形時に加熱することを開示している。
【0005】
その加熱の程度は,30℃以上100℃以下の加熱においては,樹脂が硬化する前の流動性が高い状態に保つことができるため高密度化が可能であるが100℃以上の加熱では樹脂硬化が始まっている部分が多くなり成形金型への付着や十分に高密度化しないで硬化してしまった。そして,実施例2から,原子比Nd14Fe76Co5 B5 である超急冷法により得られた粉末を用い,エポキシ樹脂を加えて圧縮成形し,加熱温度が45〜77℃において密度6.7〜7.1g/cm3,磁気特性((BH)max)10.3〜11.2MGOeが得られたことを開示している。
【0006】
当該開示は,原料粉末に希土類磁石粉末を使用し,成形時に加熱することにより密度を7.1g/cm3と高密度化しているにもかかわらず磁気特性((BH)max)は11.2MGOeと低い特性値である。また,成形時の加熱温度は100℃以下としており,耐熱性を要求される樹脂結合型磁石には使用できないという問題がある。
【0007】
(2) 特開平2−116104号にて,優れた磁気特性を得るために磁石粉末の充填率を向上させた樹脂結合型磁石の製造方法の提供を目的として加熱しながら圧縮成形をすること,さらに圧縮成形を熱硬化性樹脂の軟化点以上の温度に加熱しながら行うことにより成形体を製造した後,熱硬化させる樹脂結合型磁石を開示している。
【0008】
この加熱しながら圧縮成形においては,熱硬化性樹脂の変形能を高めるに,圧縮成形の加熱を,使用する熱硬化性樹脂の軟化点から,軟化点+50℃前後の温度の範囲内で行うことが好ましい。こうして圧縮成形により得られた成形体に熱処理を施して熱硬化性樹脂を熱硬化させている。
実施例においては,融点40℃のオルトクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂と希土類磁石粉末を混合した原料粉末を,加熱温度100℃で圧縮成形し,次いでこの成形体を120℃にて熱硬化させた結果,密度は6.1g/cm3,磁気特性((BH)max)は9.0MGOeが得られたことを開示している。
【0009】
当該開示は,発明の効果において,原料粉末に希土類磁石粉末を使用し,成形する際に加熱しながら圧縮成形するため,熱硬化性樹脂の変形能を高め,磁石粉末の充填率を向上させ,また圧縮成形時の加熱を,使用する熱硬化性の樹脂の融点以上の温度で行うと,より密度が高く,磁気特性の優れた樹脂結合型磁石が得られるという。
しかしながら,当該開示は軟化点以上の温度に加熱することによる密度を高くすることにより磁気特性の向上を図ろうとしているにもかかわらず,前記の実施例から明らかなように密度を6.1g/cm3程度と低く磁気特性((BH)max)も9.0MGOeと低い特性値である。
また,当該開示は樹脂結合型磁石を得るための成形体の製造にかかわるものであり,その後の熱硬化処理を必要としている。
【0010】
(3) 特開平4−11702号にて,磁性粉末に対する樹脂の配合量が非常に少なくてすむため,磁気特性と物性の優れた樹脂磁石の製造法の提供を目的として,微粒子化した合成樹脂粉末と磁性粉末とを粉体混合し,得られた粉体混合物を,磁界を印加しながらまたは印加することなく圧縮成形し,加熱することを開示している。
【0011】
具体的には,磁性粉末は通常の大きさで0.1〜500ミクロンを有し,合成樹脂粉末は磁性粉末に対して約10分の1以下の粒径とすることにより,両者の粉末を混合すると磁性粉末の表面に合成樹脂粉末が電気的に均一に吸着する。
加熱は圧縮成形と同時に加熱を行うものとすれば,単一の工程で樹脂磁石成形体を製造することができるという利点がある。また,圧縮成形は,例えば実施例1および2にて15000エルステッド(Oe)の磁界を印加しながら行うことを開示している。
【0012】
そして,実施例1にて,バリウムフェライト磁性粉末とポリメタアクリル酸メチル微粉末(粒径0.05〜0.06ミクロン)からなる粉体混合物を15000エルステッド(Oe)の印可磁界を印可しながら,圧縮成形し,ついで加熱溶融して着磁樹脂磁石を得た。このときの比重は3.40で磁気特性((BH)max)は1.35MGOeであった。
【0013】
実施例3では,ネオジウム系磁性粉末(MQパウダーA)とポリメタアクリル酸メチル微粉末(粒径0.05〜0.06ミクロン)からなる粉体混合物を5000エルステッド(Oe)の印加磁界を印加しながら圧縮成形し,ついで加熱溶融して着磁樹脂磁石を得た。このときの比重は5.49で磁気特性((BH)Max)は7.3MGOeであった。
【0014】
当該開示では,微粉かつ六角板状により配向しやすいバリウムフェライト磁性粉末または長細いことにより配向しやすいネオジウム系磁性粉末(MQパウダーA)を磁性粉末として用い,樹脂粉末とともに印可磁界を印可しながら圧縮成形し,ついで加熱溶融して着磁樹脂磁石を得ている。従って,発明の効果で,「しかも磁性粉末に対する樹脂の配合量が非常に少なくてすむため,得られた樹脂磁石は顕著にすぐれた磁気特性と物性を有している。」と述べているが,実施例からわかるように比重および磁気特性は低いことから工程省略をねらったものと言える。
【0015】
(4) 特開平4−349603号は,成形性に優れたボンド磁石を製造するための複合磁石粉末に関し,圧縮成形時における金型との摩擦抵抗を低減させるとともに金型内面にかじり付きをなくし,また高密度の成形体を得ることを目的として,磁性粉末の表面に潤滑材を内包する熱重合樹脂製マイクロカプセルを被覆してなる複合磁石粉末を開示している。
【0016】
実施例1および2にて,(Pr,Sm)Co磁石粉末からなる本発明複合磁石粉末を24KOeの磁場中で圧縮成形し,この成形体を180℃にて加熱硬化した。この結果,密度6.82〜6.95g/cm3,磁気特性((BH)max)15.0〜15.7MGOeが得られている。
【0017】
当該開示は,高密度の成形体を得るために複雑な工程により磁性粉末の表面に潤滑材を内包する熱重合樹脂製マイクロカプセル化した複合粉末を用いて成形体を製造し,次いで180℃に加熱し硬化処理を行い高密度かつ磁気特性の優れたボンド磁石を得るものである。
しかしながら,磁石粉末と樹脂粉末とからなる原料粉末の製造工程を複雑にした上で,高密度化を達成しているにもかかわらず磁気特性が低いという問題がある。すなわち,高密度化とは高価な磁石粉末を多く使用することであり,その使用量に比例した磁気特性が得られていないことである。いいかえれば,24KOeの磁場中で圧縮成形しているが配向性が低いという問題がある。
また,成形体の密度がこのように高くなると樹脂の含有量が低くなるために,ボンド磁石の強度は成形体の形状により低くなったり,成形体の形状の自由度が低下することがある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,圧縮成形法において従来にない磁気特性の優れた樹脂結合型磁石を得るために,
第1に,磁気異方性を有する磁石粉末を使用すること,
第2に,圧縮成形法にて高密度化した樹脂結合型磁石にすること,すなわち樹脂粉末を少なくしたり,空隙を少なくして磁石粉末を多く含有させることにより緻密化すること,
第3に,一般的に高密度化すると配向率が低下する中で,高配向化した樹脂結合型磁石にすること,磁気異方性を有する磁石粉末は粒塊状のために配向性は低いが,この磁石粉末の磁気方向を100%揃えた理論値まで高めること,また空隙を少なくすること,
からなる課題があった。
また,本発明は磁気特性とともに耐熱性にも優れた磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法を提供しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は,磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分とする混合原料粉末を成型用金型に供給する供給工程と,
前記金型内で混合原料粉末を加熱し,前記熱硬化性樹脂が液状にある状態で磁界を印加して前記磁石粉末を配向させ,該磁界の印加により該磁石粉末の配向を維持した状態において加圧して,成形すると共に前記加熱により前記熱硬化性樹脂の架橋反応による熱硬化を進行させた後,磁界印加及び加圧を終了して,加熱されている成形用金型より成形品を取り出す成形工程とからなり,
かつ前記混合原料粉末は,前記成形工程前に加圧により仮成形して該混合原料粉末中に混入している空気等の気体を脱気し,
また,該仮成形して脱気するに当っては,その加圧力は1.0〜4.0ton/cm2とすることを特徴とする磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法にある(請求項1)。
本発明者らは,圧縮成形法により製造する樹脂結合型磁石の磁気特性をより優れたものとするため,磁気異方性を有する磁石粉末が100%である磁石(例えば,焼結磁石。)により得られる磁気特性に対し,磁石粉末に樹脂粉末を添加することにより減少した磁石粉末(例えば,樹脂粉末を17%添加した場合に83vol%である磁石粉末。)を使用した樹脂結合型磁石において理論的に達成されるべき磁気特性をいかに得るかについて鋭意研究した結果,
【0020】
(1) 熱硬化性樹脂の硬化特性の研究から,樹脂が溶融して液状化状態,好ましくは液状樹脂の粘度が最低値を示す際に,磁界を印加して磁場配向を行うことにより,磁石粉末の粒子の磁気方向を最も揃えることができるため理論的に求められる高い配向率が得られること,
【0021】
(2) また,液状樹脂中で磁場配向下において加圧成形することにより,磁石粉末の粒子は三次元方向の加圧のために磁界の印可で揃えた磁場配向を維持しながら硬化できること,
【0022】
(3) そして磁気方向を揃えるために液状樹脂中で磁石粉末の個々の粒子が回転・移動等の運動を起こして原料粉末から入った空気等の気体あるいは樹脂粉末等の液状化の過程で発生するガス成分等の気体を排出して緻密化が得られること,
【0023】
(4) さらに磁石粉末の粒子を磁気方向に揃える際に磁界の印加方法としてパルス印加が効果あること,樹脂が液状化した後は減圧脱気によりガス成分等の気体が容易に排出できること,
【0024】
(5) 以上の磁場配向と緻密化が成されるのと同期して,さらなる加熱と新たに加圧することにより成形体または熱硬化した樹脂結合型磁石を得ること,
の知見を見い出したのである。
また,加熱温度は120℃以上,好ましくは150℃以上とすることが耐熱性を有する樹脂結合型磁石には必要であり,併せて生産性の向上のためにも必要なことを見出したものである。
【0025】
本発明は,かかる知見にもとづいて完成されたものであって,本発明の圧縮成形法による樹脂結合型磁石の製造方法は,図1に示す原理図により磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分とする原料粉末を,加熱および磁界を制御できる成形用金型に充填して,熱硬化性樹脂粉末が加熱により溶融して液体状になったときから磁界を印加して磁石粉末を配向させ,次いで加圧による圧縮成形を行うことを特徴としている。
【0026】
以下に,本発明の詳細について説明する。
はじめに,磁気特性の優れた樹脂結合型磁石を得るためには,磁気異方性樹脂結合型磁石であることが必要なことから,磁石粉末としては磁気異方性を有する磁石粉末を使用する。
磁気異方性を有する磁石粉末としては,希土類元素R1−Co系磁石粉末,希土類元素R2−Fe−B系磁石粉末,または希土類元素R3−Fe−N系磁石粉末のいずれか1種以上を用いる。
ここで,希土類元素R1およびR3はSmを含む一種類以上の希土類元素からなり,希土類元素R2はNdを含む一種類以上の希土類元素からなる。
【0027】
従って,希土類元素R1−Co系磁石粉末にはSm−Co系磁石粉末,Smの一部をNd,Pr,Y,Ce,Dyからなる合金の一種または二種以上で置換したSm−Co系磁石粉末,Sm−Co−Cu−Fe系においてZr,Hf,Tiからなる一種又は二種以上を添加した磁石粉末などが含まれる。
【0028】
希土類元素R2−Fe−B系磁石粉末には,Nd−Fe−B系磁石粉末,Ndの一部をDy,Pr,Yからなる合金の一種又は二種以上で置換したNd−Fe−B系磁石粉末,Nd−Fe−B−Co系磁石粉末,Nd−Fe−B−Co系においてGa,Zr,Hf,Al,Cu,Mn,Ti,Siからなる合金の一種又は二種以上添加した塑性からなる磁石粉末などが含まれる。
また,これらの磁石粉末には急冷凝固法により製造された磁石粉末を熱間静水圧成形法(HIP法)により成形し,次いで固めた磁石粉末のバルクを塑性加工した後,粉砕して得られた磁気異方性磁石粉末がある。また,水素処理法(HDDR法)により製造された磁気異方性磁石粉末がある。水素処理法で製造された磁石粉末は塊状の粒形からなる形状で一般には配向率は低いとされているが,本発明は特にこの形状を有する磁石粉末の配向率を高めるものである。
【0029】
次に,希土類元素R3−Fe−N系磁石粉末には,Sm−Fe−N系磁石粉末,Sm−Fe−Co−N系磁石粉末およびSm−Fe−V−N系磁石粉末が含まれる。
【0030】
前記の磁気異方性を有する磁石粉末を微粉化したのちに,造粒した磁石粉末として使うこともできる。微粉化された粒子は小さな粒子のために磁界を印可されたときに動きやすく容易に磁場方向に配向しやすい。
【0031】
本発明における熱硬化性樹脂粉末としては,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂などの熱硬化性を有する樹脂粉末があげられる。
樹脂粉末の特性としては,特開平2−116103号における熱硬化性樹脂の軟化点を30〜70℃に限定する必要もなく,70℃以上の軟化点を有する熱硬化性樹脂を用いることができる。耐熱性を要求される磁気異方性樹脂結合型磁石の製造のためには120℃以上の軟化点を有する熱硬化性樹脂が必要となるからである。さらに好ましくは,150℃以上の軟化点を有する熱硬化性樹脂が必要となるからである。
また,本発明で用いる熱硬化性樹脂は常温で固体の粉末状である。加熱および磁界を制御できる金型への原料粉末の給粉量の安定化し,得られる樹脂結合型磁石の密度,磁気特性および寸法等を一定とするためであり,作業における操作性の安定のためからである。
【0032】
また,熱硬化性樹脂粉末への添加剤として必要に応じてステアリン酸亜鉛,ステアリン酸アルミニウム,アルコール系潤滑剤などより選ばれ潤滑剤,さらにチタネート系もしくはシラン系のカップリング剤,4.4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)などの硬化剤や北興化学工業製の商品名TPP−Sなどの硬化促進剤が少量添加される。これらの添加剤を加えることにより,成形のタイミング調節,磁石粉末の粒子に対する溶融した液状樹脂の濡れ性あるいは密着性,成形後における金型からの成形体の離型性などが改善されるからである。
【0033】
磁気異方性を有する磁石粉末を80〜90vol%と熱硬化性樹脂粉末を10〜20vol%とを混練機により均一に混合して,原料粉末を得る。また,必要に応じて,潤滑剤,硬化剤,硬化促進剤,カップリング剤を0.1〜2.0vol%を添加する。
【0034】
さらに,本発明の原料粉末としては,磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分として混合により製造された原料粉末のみでなく,特開平2−27801号,特開平4−349602号,特開平4−349603号などにて開示されているように磁石粉末の表面にあらかじめ熱硬化性樹脂,潤滑剤等を被覆した複合磁石粉末を用いることもできる。
【0035】
次に,高配向化および高密度化について詳細に説明する。
はじめに,本発明の磁気異方性樹脂結合型磁石の製造においては,成形装置としては図2〜図6に示す装置を用いる。図2および図3は縦磁場成形または横磁場成形ができる成形装置において成形用金型が加熱による温度を制御できる機構を有している。
縦磁場成形は,リング状の成形体であってラジアル方向に配向する場合や円柱状の成形体で軸方向への配向する場合に有効である。
また,横磁場成形は立方体,直方体に配向する場合やリングのアキシャル方向(一軸方向)に配向する場合に有効である。
【0036】
また,図4は,加熱による温度を制御とともに減圧脱気ができる成形装置,すなわち樹脂が液状化した後に液体状樹脂中に含まれているガス成分等の気体を排出するために成形用金型内を減圧状態にできる機構を有した成形装置である。図2dはさらに超音波振動をかけられる成形装置であって10KOe以上の静磁場からなる磁界を印加できる成形用金型が用いることができる。図6は加熱による温度を制御でき,10KOe以上の静磁場または10KOe以上のパルス磁場,好ましくは25KOe以上のパルス磁場からなる磁界を印加できる成形用金型からなっている。
【0037】
この成形用金型に原料粉末を充填した後,加熱を開始する。加熱により熱硬化性樹脂粉末が溶融して液体状になったときから,磁界を印加して磁石粉末の粒子の磁気方向を一方向に揃える配向処理を行う。配向処理は,磁石粉末が粘性を有する液体状樹脂中で回転・移動等の挙動がし易いほど印可磁界の強さと印可時間に比例して多くの磁石粉末粒子の磁気方向が一方向に揃うことになる。理論的には,全ての磁石粉末粒子の磁気方向が一方向に揃うことが可能である。
【0038】
液状樹脂中における磁石粉末粒子の磁気方位状態について配向処理前後のモデルを図7〜8に示す。図7は磁界を印加する前の状態を示し,図8は磁界を印加した後の状態を示している。磁場方向は,上下方向からなる圧縮成形の方向とは直角である横磁場からなっている。
液状樹脂中の磁石粉末粒子の磁気方向は,図7〜8から磁界を印加する配向処理によりランダムな磁気方向から一方向に揃っていることがわかる。この図に示すように粒子の磁気方向が理論的に全て一方向に揃っているときに配向率は100%となる。
【0039】
高い配向率を得るためには,第1に圧縮成形において磁界を印加した際に磁気方向が一定方向に揃うように磁石粉末が動きやすくすることである。磁石粉末が液体状樹脂からなる粘性体での挙動が最も自由になるのは,その粘度が最低値を示すときである。この熱硬化性樹脂の粘度(ρ)は,加熱温度(T)と加熱時間(t)の関数で表され,キラトメーター,フローテスターで求められる。従って,最低粘度(ρmin)を示す加熱時間は,それぞれの加熱温度において求められるため,ある加熱温度(Tm)における最低粘度を示す加熱時間(t)は,t∝(Tm,ρmin)で求められる。
【0040】
図9には,エポキシ樹脂からなる熱硬化製樹脂粉末を100℃,120℃,160℃および180℃に加熱したときの液体状樹脂の粘度の経時変化を示す。加熱温度を高くするにしたがって最低粘度(ρmin)を得るための加熱時間は短くなっている。この最低粘度(ρmin)において,磁石粉末の磁気方向が一方向に最も揃え易くなる。
また,この磁石粉末の磁気方向が一方向に最も揃え易くなる最低粘度(ρmin)域において加圧して密度を高めることは,高粘度域における加圧に比較して磁石粉末の粒子への加圧がより三次元的な加圧となって磁石粉末の粒子の磁気方向からの乱れを少なくする。
【0041】
すなわち,熱硬化性樹脂粉末を成形用金型に充填したときから磁界を印可する磁場配向処理を行うことにより,熱硬化性樹脂粉末が軟化し液体状になっていく段階から磁石粉末が回転・移動等の挙動を開始し,最低粘度(ρmin)の値を示すときに理論的に一方向となるように磁場配向処理の時間が必要だからである。そして,最低粘度(ρmin)の値を示す頃から,加圧成形を開始する。加圧による磁石粉末の磁気方向の乱れを抑制し,磁気方向を一方向に維持するために引続き磁界を印加することである。
【0042】
次に高い配向率を得るためには強い磁界の印可が必要である。
本発明では,静磁場による磁界の印加の場合は10KOe以上の静磁場が必要である。10KOe未満では,粘度の高い液状樹脂中では全ての磁石粉末粒子の磁気方向を一方向に揃えることが困難だからである。一方,前記の連続的な磁界の印可とは異なり非連続的に磁界を印加するパルス方式の場合にも10KOe以上の磁場が必要であり,短時間の配向処理の場合には好ましくは25KOe以上の磁界の強度が必要である。
【0043】
さらに,磁石粉末の磁気方向を一方向に揃える配向率を高めるためには,液体状樹脂および磁石粉末に超音波振動を加えることが好ましい。超音波振動としては20kHz〜50kHzの振動数である。20kHz未満では粘度の高い液体状樹脂中の磁石粉末粒子を振動させるには十分でなく50kHzを越えると振幅が小さくなり,磁石粉末を振動させる効率の低下を招くからである。
【0044】
高密度化による磁気特性の向上を図るため,磁界を印加しながら加圧による圧縮成形を行う。この加圧において,成形圧力が大きいほど成形体密度の大きい樹脂結合型磁石が得られるが,金型の寿命は短くなる。本発明では,4.0〜10.0ton/cm2で成形する。好ましくは,6.0〜8.0ton/cm2である。4.0ton/cm2未満の低い成形圧力では成形体密度が小さく,磁気特性の向上が図れない。一方,10.0ton/cm2を超える成形圧力では金型の寿命が急激に低下するからである。
【0045】
また,高密度化のためには圧縮成形の成形圧力を高めるとともに原料粉末から混入される空気等の気体および原料粉末の溶融過程で発生するガス等の気体を脱気することが必要である。脱気方法としては,原料粉末が加熱により溶融する前に低い成形圧力で原料粉末を仮成形して脱気する方法と原料粉末が溶融した後の液体状樹脂から脱気する方法があり,後者の成形装置としては図4に示す装置を用いる。
【0046】
はじめに,原料粉末を仮成形して脱気する方法は,原料粉末を成形用金型に充填したのち成形圧力1.0〜4.0ton/cm2で圧縮することにより原料粉末中の空気等の気体を脱気する。成形圧力が1.0ton/cm2未満では脱気の効果が認められない。一方,成形圧力が4.0ton/cm2を越えると原料粉末が加熱により溶融して液体状樹脂となるときにガス成分等の気体の脱気が困難となる。
【0047】
次に,原料粉末が溶融した後の液体状樹脂から脱気する方法としては,原料粉末の溶融過程で発生する気泡が磁石粉末の粒子表面に付着している場合には,磁石粉末粒子に磁界を印加することにより磁石粉末が液体状樹脂中で回転・移動等の挙動するときに気泡が磁石粉末の粒子表面から離脱する脱気を行うことができる。
【0048】
さらに,磁石粉末の粒子表面に付着している気泡とともに液体状樹脂中は浮遊している気泡は,金型内を減圧することにより液体状樹脂から減圧脱気を行うことが好ましい。
脱気条件としては,10〜500Torrの減圧下で脱気する。10Torrより低いと液体状樹脂中の気体とともに液体状樹脂をも引くからであり,500Torrより高いと減圧による脱気がされないからである。
【0049】
成形体の硬化処理は,磁界を印加しながら加圧による圧縮成形に引き続いて加熱を維持して行う。この場合には,連続的な生産方式を採用でき,最終製品の寸法を制御できる。また,圧縮成形後に金型から取り出して,新たに加熱炉で加熱してもよい。
【0050】
前記磁気異方性樹脂結合型磁石は,最大エネルギー積((BH)max)が次式で表されるYMGOe以上を有することが望ましい。
【0051】
一般に,最大エネルギー積((BH)max)がXMGOeである磁気異方性磁石粉末Aの100%からなる焼結磁石の最大エネルギー積((BH)max)はX100MGOeに対して,磁気異方性磁石粉末AがVvol%からなる樹脂結合型磁石は理論的にはXvMGOeである。
図10に,焼結磁石の最大エネルギー積((BH)max)の領域(X100)を,図11に樹脂結合型磁石の焼結磁石の最大エネルギー積((BH)max)の領域(Xv)を表す。この図から樹脂結合型磁石の焼結磁石の最大エネルギー積((BH)max)は焼結磁石に対して,樹脂が加えられた場合には磁石粉末の体積比の二乗に比例している。
この磁気異方性樹脂結合型磁石は,理論的に得られるXvMGOeの80%以上の最大エネルギー積((BH)max)を有するものである。
【0052】
【数1】
【0053】
ここで,V1は磁気異方性樹脂結合型磁石における磁石粉末の体積比(vol%)を表し,V1=80〜90%の範囲にある。X1は磁気異方性樹脂結合型磁石の原料として使用される磁石粉末の最大エネルギー積((BH)max)を表し,磁気異方性を有する磁石粉末としてX1≧30MGOeを使うことが好ましい。
【0054】
また,前記磁気異方性樹脂結合型磁石は,最大エネルギー積((BH)max)が20.0MGOe以上を有することが望ましい。
【0055】
【作用】
本発明によれば,磁気異方性樹脂結合型磁石の原料粉末を成形するに際して,成形金型を加熱して樹脂が液体状態下で磁界を印可して磁石粉末粒子の磁気方向を揃えるとともに加圧成形するために,磁石粉末の密度を高めるとともに磁石粉末粒子の配向率を向上させることができる。
さらに,液体状樹脂中のガス等の気体を脱気すること又は原料粉末の圧縮成形に先立った予備成形により密度を向上させることができる。そして超音波振動を加えること又はパルス磁界の印加により配向率を向上させることができる。
【0056】
また,高密度化かつ高配向化することにより磁気異方性磁石粉末の有する最大エネルギー積((BH)max)の理論値の80%以上の最大エネルギー積((BH)max)を達成した磁気異方性樹脂結合型磁石を得ることができる。
【0057】
【実施例】
以下,本発明の実施例につき,詳細に説明する。
各実施例において使用する原料粉末の調整について前もって説明する。
原料粉末は,原料粉末用磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを所定の割合で混合して調整する。原料用磁石粉末としては,HDDR処理法により作製したNd−Fe−B系磁石粉末,窒化処理後に機械粉砕法で作製したSm−Fe−N系磁石粉末および粉砕法で作製したSm−Co系磁石粉末の3種類の原料用磁石粉末を使用する。
一方,熱硬化性樹脂粉末は前記の3種類の原料用磁石粉末に対して1種類の熱硬化性樹脂粉末を調整して使用する。
【0058】
はじめに,原料粉末用磁石粉末と混合する熱硬化性樹脂粉末についての調整方法を説明する。
主剤としてエポキシ樹脂粉末(油化シェルエポキシ社製の商品名エピコート1004)の100に対して硬化剤としてジアミノジフェニルメタン(DDMと称す。)(和光純薬工業社製)を5,硬化促進剤として商品名TPP−S(北興化学工業製)を2,内部離型剤として商品名ヘキストS(ヘキストジャパン製)を2.2の配合比で秤量し,加熱混合した後に粉砕して混合樹脂粉末を得た。こうして得られた混合樹脂粉末にカップリング剤を,原料用磁石粉末に対して0.5wt.%のカップリング剤を添加して原料粉末として用いる熱硬化性樹脂粉末を調整した。
以下の各実施例において,この調整した原料粉末を熱硬化性樹脂粉末(A)として使用する。
【0059】
次に,3種類の原料粉末用磁石粉末の作製方法について以下に説明する。
第1に,Nd−Fe−B系磁石粉末は次のとおりである。
Nd−Fe−B系磁石合金を30kgVIMで溶解し,基本組成がNd12.5Fe59.1Co20.5B6.1Ga1.8からなるインゴットを製造した。このインゴットを真空焼鈍炉に装入して真空に排気後Arガスを導入して200Torrの雰囲気にて1100℃に加熱し,40Hrのソーキング加熱を行った。このインゴットを30mm程度の塊に粗砕してHDDR処理に供した。HDDRの処理条件は1.3kg/cm2の加圧した水素ガス雰囲気下で800℃にて3Hrの水素吸蔵処理を行ない,次に3×10−5Torrの真空雰囲気下で800℃にて1Hrの脱水素処理を行なった。その後,急冷して微粉末の集合体(水素崩壊物)を得た。この水素崩壊物を乳鉢で解きほぐして磁石粉末とし,この磁石粉末をn−ヘキサン中でボールミル粉砕を行い,分級して212μm以下の原料粉末用磁石粉末を得た。
【0060】
こうして得られた原料粉末用磁石粉末の磁気特性をVSM振動型磁束計で測定した結果,最大エネルギー積((BH)max)は36.0MGOe,残留磁束密度(Br)は12.8kG,保磁力(iHc)は11.5kOeであった。
以下の各実施例において,前記の製造方法によって作製した基本組成と磁気特性を有する原料粉末用磁石粉末をNd−Fe−B系磁石粉末(P1)として使用する。
【0061】
第2に,Sm−Fe−N系磁石粉末は次のとおりである。
Sm−Fe系磁石合金を30kgVIMで溶解し,組成がSm12.0F88.0からなるインゴットを製造した。このインゴットを30mm程度の塊片に粉砕し,これをアンモニア分解ガス中で450℃にて3Hrの窒化処理を行なった。次いで,Arガス雰囲気中で450℃にて1Hrの拡散処理を行ない,n−ヘキサン中でボールミル粉砕を行い,1〜3μmの原料粉末用磁石粉末を得た。得られた磁石粉末の基本組成は,Sm9.0F77.0N13.6であった。
【0062】
こうして得られた原料粉末用磁石粉末の磁気特性をVSM振動型磁束計で測定した結果,最大エネルギー積((BH)max)は35.0MGOe,残留磁束密度(Br)は13.0kG,保磁力(iHc)は8.8kOeであった。
以下の各実施例において,前記の製造方法によって作製した基本組成と磁気特性を有する原料用磁石粉末をSm−Fe−B系磁石粉末(P2)として使用する。
【0063】
第3に,Sm−Co系磁石粉末は次のとおりである。
Sm−Co系磁石合金を30kgVIMで溶解し,基本組成がSm10.8Co54.4Cu6.2Fe25.9ZR2.7からなるインゴットを製造した。このインゴットをArガス雰囲気下で1180℃にて30Hrソーキング処理を行ない,次いで,Arガス雰囲気下で800℃にて24Hr時効処理を行なった。次に,30mm程度の塊片に粉砕し,これをArガス雰囲気中で機械粉砕により500μm以下にし,次いでn−ヘキサン中でボールミル粉砕を行い,30μm以下の原料粉末用磁石粉末を得た。
【0064】
こうして得られた原料粉末用磁石粉末の磁気特性をVSM振動型磁束計で測定した結果,最大エネルギー積((BH)max)は31.0MGOe,残留磁束密度(Br)は12.0kG,保磁力(iHc)は11.5kOeであった。
以下の各実施例において,前記の製造方法によって作製した基本組成と磁気特性を有する原料用磁石粉末をSm−Co系磁石粉末(P3)として使用する。
【0065】
実施例1.
原料粉末用磁石粉末として,Nd−Fe−B系磁石粉末(P1),Sm−Fe−B系磁石粉末(P2)およびSm−Co系磁石粉末(P3)の3種類を使用する。原料粉末用磁石粉末は83vol%,熱硬化性樹脂粉末(A)は17vol%の配合比でそれぞれ秤量し,混合して原料粉末を調整した。成形装置として,図11bに示す横磁場成形法を用いた。
【0066】
150℃に昇温して保持している成形用金型に原料粉末を給粉した。熱硬化性樹脂粉末(A)が溶融して液体状になり樹脂の粘度が低下した時点から16kOeの磁界の印可を開始した。次に,150℃の加熱において最低粘度が得られる加熱時間の経過後(給粉開始から60秒経過後),加圧を開始した。加圧力は8.0ton/cm2である。こうして加熱温度150℃に維持しながら磁界を印可と加圧成形を同時に行ない,液体状樹脂の架橋反応が進み粘度が増加したときに磁界の印可を終了する。その後,加熱および加圧を終了して成形用金型から樹脂結合型磁石を取り出す。
この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
本実施例および次の比較例1〜2で成形して作製した樹脂結合型磁石の形状と寸法は10×10×7mmの直方体である。
なお,以下の実施例および比較例においても樹脂結合型磁石の形状と寸法は10×10×7mmの直方体である。
【0067】
なお,実施例1に対応する比較例1−1は,成形用金型に原料粉末を給粉し,常温で加圧成形を行なった。加圧力は8.0ton/cm2である。成形時の磁界の印可は16kOeである。次いで,この成形体を150℃にて30分間の硬化処理(キュア処理)を行なった。
【0068】
また,比較例1−2は,70℃に加熱保持した成形用金型に原料粉末を給粉し,8.0ton/cm2の加圧力で加圧成形を行なった。成形時の磁界の印可は16kOeである。次いで,この成形体を150℃にて30分間の硬化処理を行なった。
【0069】
表1に,実施例1および比較例1−1〜1−2で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。また,表1の実施例中のかっこ内の数値は所定の磁気特性を有する異方性磁石粉末を使用したときに得られる樹脂結合型磁石の理論値に対する比率を百分率で求めたものである。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から,本実施例に示すようにNd−Fe−B系樹脂結合型磁石およびSm−Fe−N系樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は約20MGOeの値が得られ,またSm−Co系樹脂結合型磁石は約17MGOeの値が得られており,比較例のいずれに対してもそれぞれ高性能な磁気異方性脂結合型磁石である。
また,いずれの樹脂結合型磁石も理論的に得られる磁気特性の80%を確保しており高配向化による優れた磁気異方性脂結合型磁石である。
なお,比較例は42〜63%にとどまっている。
【0072】
実施例2.
常温の成形用金型に原料粉末を給粉して,3.0ton/cm2にて仮成形を行なった後に,成形用金型を加熱して150℃に昇温して保持した。次いで,実施例1と同じ条件で処理し,成形用金型より樹脂結合型磁石を取り出した。 この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
【0073】
また,比較例2としては,成形用金型に原料粉末を給粉し,3.0ton/cm2にて仮成形を行なった後に,8.0ton/cm2加圧力で加圧成形を行なった。成形時の磁界の印可は16kOeである。次いで,この成形体を150℃にて30分間の硬化処理を行なった。
【0074】
表2に,実施例2および比較例2で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2の結果から,実施例1の結果(表1)に較べて最大エネルギー積((BH)max)で0.2〜0.5MGOeの磁気特性の向上が図られている。一方,比較例2は比較例1−1と同じ磁気特性である。
仮成形を行なうことにより磁石粉末の粒子間のブリッジ形成が抑制されて高密度化が図られているものといえる。特に,微粉末粒子からなるSm−Fe−N系樹脂結合型磁石に磁気特性の向上が大きいからである。
なお,比較例2から成形用金型を実施例のように加熱していない場合にはその効果はないものといえる。
また,いずれの樹脂結合型磁石も理論的に得られる磁気特性の81〜84%と向上しており高配向化による優れた磁気異方性脂結合型磁石である。
なお,比較例は42〜49%であった。
【0077】
実施例3.
本実施例は,実施例1により作製した樹脂結合型磁石を成形用金型から取り出さないで引き続いて150℃に保持した成形用金型内で5分間の硬化処理を行なった。
比較例3としては,樹脂結合型磁石を成形用金型から取り出して新たに150℃にて30分間の硬化処理を行なった。
表3に,実施例3および比較例3で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3の結果から,樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は硬化処理の行なう時期にかかわらずほぼ同等の値が得られており,また樹脂結合型磁石の表面品質(欠け,割れの有無)に影響はない。しかし,加圧成形後に同じ成形用金型で硬化処理(キュア処理)を行なうことにより新たな工程の省略と硬化処理(キュア処理)の時間が30分間から5分間へと大幅に時間の短縮が図れる。
【0080】
実施例4.
本実施例は,図4に示す減圧脱気ができる成形装置を使用する。
150℃に昇温して保持している成形用金型に原料粉末を給粉した。熱硬化性樹脂粉末(A)が溶融して液体状になり樹脂の粘度が低下した時点から液体状樹脂の減圧脱気を開始した。圧力は450Torrの減圧にして油回転ポンプで脱気を行なった。また,16kOeの磁界の印可を開始した。次に,150℃の加熱において最低粘度が得られる加熱時間の経過後(給粉開始から60秒経過後),加圧を開始した。加圧力は8.0ton/cm2である。こうして加熱温度150℃に維持しながら磁界の印加と加圧成形を減圧脱気を同時に行ない,液体状樹脂の架橋反応が進み粘度が増加したときに磁界の印加および減圧脱気を終了する。その後,加熱および加圧を終了して成形用金型から樹脂結合型磁石を取り出す。
この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
表4に,実施例4で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0081】
【表4】
【0082】
表4の結果から,樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は実施例1に示す結果(表1)と比較して,減圧脱気を行なうことにより0.4〜1.0MGOeの磁気特性の向上が図られ,また,いずれの樹脂結合型磁石も理論的に得られる磁気特性の83〜84%をが得られており,実施例1に比較してさらに3%の向上した高密度化と高配向化による優れた磁気異方性脂結合型磁石である。
【0083】
実施例5.
本実施例は,150℃に昇温して保持している成形用金型に原料粉末を給粉した。熱硬化性樹脂粉末(A)が溶融して液体状になり樹脂の粘度が低下した時点から16kOeの磁界の印可を開始した。同時に,20kHzの超音波振動の付与を開始した。次に,150℃の加熱において最低粘度が得られる加熱時間の経過後(給粉開始から60秒経過後),加圧を開始した。加圧力は8.0ton/cm2である。こうして加熱温度150℃に維持しながら磁界の印可と加圧成形を超音波振動下で同時に行ない,液体状樹脂の架橋反応が進み粘度が増加したときに磁界の印可および超音波振動の付与を終了する。その後,加熱および加圧を終了して成形用金型から樹脂結合型磁石を取り出す。
この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
表5に,実施例5で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0084】
【表5】
【0085】
表5の結果から,樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は実施例1に示す結果(表1)と比較して,超音波振動を付与することにより0.7〜1.3MGOeの磁気特性の向上が図られ,また,いずれの樹脂結合型磁石も理論的に得られる磁気特性の84〜86%をが得られており,実施例1に比較してさらに4〜5%も向上した高密度化と高配向化による優れた磁気異方性脂結合型磁石である。
この結果より,実施例1のレベルの最大エネルギー積((BH)max)を得るためには超音波振動を付与することによって加圧力を8.0ton/cm2から6.5ton/cm2程度に低下することができ,成形用金型の寿命向上に寄与できる。
【0086】
実施例6.
本実施例は,磁界の印加をパルス方式による実施例6−1と磁界の印加をパルス方式に加えて所定の磁界を印可する実施例6−2からなる。
実施例6−1は,縦磁場成形ができる成形装置(図2)を用いて,150℃に昇温して保持している成形用金型に原料粉末を給粉した。熱硬化性樹脂粉末(A)が溶融して液体状になり樹脂の粘度が低下した時点から50kOeのパルス磁界の印加を開始した。パルス磁界は0.1秒間印加し,2秒間無印可との繰返しである。次に,150℃の加熱において最低粘度が得られる加熱時間の経過後(給粉開始から60秒経過後),加圧を開始した。加圧力は8.0ton/cm2である。こうして加熱温度150℃に維持しながら磁界の印加と加圧成形を同時に行ない,液体状樹脂の架橋反応が進み粘度が増加したときに磁界の印可を終了する。その後,加熱および加圧を終了して成形用金型から樹脂結合型磁石を取り出す。
この樹脂結合型磁石の硬化処理は150℃にて30分間保持して行なった。
【0087】
実施例6−2は,実施例6−1において50kOeのパルス磁界の印可を開始と同時に16kOeの磁界を印加した例である。
【0088】
比較例4は,実施例6−2においてパルス方式の磁界の印加しないで16kOeの磁界を印加した例である。
【0089】
表6に,実施例6−1,実施例6−2および比較例4で得られた樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を測定した結果を示す。
【0090】
【表6】
【0091】
表6の結果から,樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)は一般的な磁界を印加する方式である比較例4に比べて,パルス方式の磁界の印加による実施例6−1からは0.3〜0.5MGOeの磁気特性の向上が図られ,さらに両者の印可方式の組み合わせである実施例6−2から0.8〜0.9MGOeの磁気特性の向上が図られている。
【0092】
【発明の効果】
本発明により,磁気特性の優れた磁気異方性樹脂結合型磁石を得ることができ,特に磁石粉末V%からなる樹脂結合型磁石の最大エネルギー積((BH)max)を理論値の80%以上の樹脂結合型磁石を提供することができる。また,最大エネルギー積((BH)max)が20MGOe以上の樹脂結合型磁石を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】金型加熱機構を有し,縦磁場成形できる装置の概念図である。
【図3】金型加熱機構を有し,横磁場成形できる装置の概念図である。
【図4】金型加熱機構を有し,減圧脱気できる横磁場成形装置の概念図である。
【図5】金型加熱機構を有し,減圧脱気とともに超音波振動をかけることのできる横磁場成形装置の概念図である。
【図6】金型加熱機構を有し,パルス方式の磁場および静磁場による成形ができる装置の概念図である。
【図7】磁界を印可する前の加熱した金型内の磁石粉末の粒子の磁気方向を示す図である。
【図8】磁界を印可した後の加熱した金型内の磁石粉末の粒子の磁気方向を示す図である。
【図9】各加熱温度における液状化したエポキシ樹脂の粘度の経時変化の説明図である。
【図10】磁石粉末100%からなる磁石(例えば,焼結磁石)のBH曲線から得られる(BH)maxの説明図である。
【図11】磁石粉末V%,樹脂(100−V)%からなる磁石(例えば,磁石粉末V%の樹脂結合型磁石)のBH曲線から得られる(BH)maxの説明図である。
【符号の説明】
11...加熱装置,
12...電磁石,
13...磁界の印加方向,
14...加圧方向,
15...制御装置,
16...磁石粉末粒子の磁気方向,
17...液体状樹脂,
21...電磁石,
22a...ダイ,
22b...上パンチ,
22c...下パンチ,
22d...加熱装置,
23...加圧装置,
24...油回転ポンプ,
25...超音波振動子,
26...パルス磁場用空心コイル,
31...加熱装置,
32...電磁石,
33...磁界の印加方向,
34...加圧方向,
35a...磁石粉末粒子の磁気方向(磁場配向処理前),
35b...磁石粉末粒子の磁気方向(磁場配向処理後),
36...液体状樹脂,
51a...磁石粉末100%の(BH)max,
52b...磁石粉末V%の(BH)max,
Claims (4)
- 磁気異方性を有する磁石粉末と熱硬化性樹脂粉末とを主成分とする混合原料粉末を成型用金型に供給する供給工程と,
前記金型内で混合原料粉末を加熱し,前記熱硬化性樹脂が液状にある状態で磁界を印加して前記磁石粉末を配向させ,該磁界の印加により該磁石粉末の配向を維持した状態において加圧して,成形すると共に前記加熱により前記熱硬化性樹脂の架橋反応による熱硬化を進行させた後,磁界印加及び加圧を終了して,加熱されている成形用金型より成形品を取り出す成形工程とからなり,
かつ前記混合原料粉末は,前記成形工程前に加圧により仮成形して該混合原料粉末中に混入している空気等の気体を脱気し,
また,該仮成形して脱気するに当っては,その加圧力は1.0〜4.0ton/cm2とすることを特徴とする磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法。 - 請求項1において,前記磁界の印加は,前記熱硬化性樹脂が最低粘度の値を示すときに最大の磁界を印加することを特徴とする磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法。
- 請求項1又は2において,前記加圧は,前記熱硬化性樹脂の粘度が最も小さくなった時に開始することを特徴とする磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項において,前記磁気異方性を有する磁石粉末は,希土類元素−Co系磁石粉末,希土類元素−Fe−B系磁石粉末,希土類元素−Fe−N系磁石粉末のいずれか1種以上であることを特徴とする磁気異方性樹脂結合型磁石の製造方法。
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KR20190118114A (ko) * | 2018-04-09 | 2019-10-17 | 도요타지도샤가부시키가이샤 | 희토류 자석의 제조 방법, 및 그에 사용되는 제조 장치 |
-
2003
- 2003-05-23 JP JP2003146329A patent/JP2004006881A/ja active Pending
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