JP2004003906A - 埋設ラインの位置及び深さ測定方法 - Google Patents

埋設ラインの位置及び深さ測定方法 Download PDF

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増田 敏一
Shinji Goto
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Abstract

【課題】埋設管や埋設線等の埋設ラインの深さを精度良く推定する。
【解決手段】埋設管10の深さAと基準信号Iの電流値を変化させて、上下コイル22、24の信号出力値と埋設深さ及び基準信号電流値の関係を予め求めておき、該関係を用いて、上下コイル22、24の信号出力値から埋設ラインの深さAを求める。
【選択図】   図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、埋設ラインの位置及び深さ測定方法に係り、特に、ガス管や送油管等の埋設管や埋設線等の埋設ラインの位置や深さを非接触で精度良く検知することが可能な、埋設ラインの深さや位置の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス管や送油管等の埋設管や、埋設線等の埋設ラインの位置を正確に把握することは、埋設ラインの維持管理上、重要な要素である。
【0003】
従来、埋設ライン位置を把握するには、埋設位置を示した図面に依ったり、あるいは、ロケータと呼ばれる機器に依っている。
【0004】
ロケータは、埋設ラインに矩形波を印加し、周囲に生成する磁場を地表面で計測することによって、その磁束の強弱により、埋設ライン位置を推定するものである。
【0005】
又、特開平3−152411には、図1に示す如く、埋設管10に、ターミナルリード線12を介して信号発生手段14より交流電流を印加する一方、地表面18上を移動可能な台車20に一対のコイル22、24を上下に配置して、コイル22、24に流れる誘導電流の強さが、埋設管10に流した基準電流Iの電流値に比例し、埋設管10とコイル22、24との距離R、R+Dに反比例する性質を利用して、処理手段26で、埋設管10の埋設深さ(R−r)及び基準電流Iの電流値を計算すること(以下、近似計算法と称する)が記載されている。
【0006】
即ち、図1に示したような構成において、下部コイル22から埋設管10の中心線までの距離をRとし、埋設管10を無限長の直線導体と仮定すると、該直線導体に流れる信号電流(基準電流)Iによって、下部コイル22の位置に生じる磁界の強さHdは、次式で表わされる。
【0007】
Hd=I/2πR    …(1)
【0008】
又、下部コイル22から距離Dだけ離れた上部コイル24の位置に生じる磁界の強さHuは、次式で表わされる。
【0009】
Hu=I/2π(R+D)   …(2)
【0010】
この(1)式と(2)式から、信号電流Iと距離Rを求めると、次の(3)式と(4)式で表わすことができる。
【0011】
I=2πDHu・Hd/(Hd−Hu)   …(3)
R=D/{(Hd/Hu)−1}      …(4)
【0012】
一方、埋設管10に流れる信号電流Iによって生じる磁界によって、下部コイル22に発生する電圧Vdと、上部コイル24に発生する電圧Vuは、それぞれ磁界の強さHd、Huに比例する。従って、信号電流Iと距離Rは、電圧Vd、Vuの関数となる。
【0013】
そこで、下部コイル22と上部コイル24に生じる電圧Vd、Vuにより埋設管10に流れる信号電流Iと距離Rを表わす、次のような実験式を求めることができる。
【0014】
I=2πD(aVd・bVu)/(aVd−bVu)   …(5)
R=D/{((cVd/Vu)+d)−1}      …(6)
【0015】
ここで、a〜dは、各部の透磁率や下部コイル22と上部コイル24の形状等により定まる定数であり、実験により決定される。
【0016】
従って、この(5)式と(6)式を2元の連立方程式として解くことで、埋設管10に流れる信号電流Iで生じる磁場により、下部コイル22と上部コイル24に発生する電圧Vd、Vuを利用して、信号電流Iと埋設管10の深さを同時に測定することができる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者のロケータの場合、矩形波は周知のように多くの高調波成分を含み、且つ、他のコイルに誘導起電力を発生させるのは磁束の変化時のみである。そのため、受信コイル側に伝達されるエネルギは小さくなる。又、信号の選択性においても十分とは言えず、外部雑音の影響を受け易い等の問題点を有していた。
【0018】
一方、後者の近似計算法においては、2個のコイル22、24の特性が信号電流値や距離Rの変化に対して不変であると仮定して近似計算しているため、計算の精度を確保するためには、コイル22、24の検出系の特性が、一定でなければならない。しかしながら、実際には、コイルの特性がそれぞれ異っているだけでなく、検出系には、コイルの他に共振系であるコンデンサやインダクタが含まれているため、これらの特性を全て一定に保つのは至難の業である。又、上部コイル24と下部コイル22の出力比が小さくなると、誤差が極端に大きくなる。更に、近似計算法では、どのような場合でも一応の答えが得られるため、ノイズ等が大きい場合、本来は計測不能であるかどうかの判断ができないという問題点を有していた。
【0019】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、実測した基準のデータから埋設深さを精度良く推定可能とすることを第1の課題とする。
【0020】
本発明は、又、埋設ラインの直上位置を正確に知ることを第2の課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、埋設ラインに交流の基準信号を送信した時に、地上に所定の間隔で向きを揃えて上下に配設した複数のコイルに流れる電流を検出して、埋設ラインの深さを測定する際に、前記埋設ラインの深さと基準信号の電流値を変化させて、上下コイルの信号出力値と埋設深さ及び基準信号電流値の関係を予め求めておき、該関係を用いて、上下コイルの信号出力値から埋設ラインの深さを求めるようにして、前記第1の課題を解決したものである。
【0022】
本発明は、又、前記の測定方法において、埋設ラインに交流の基準信号を送信する一方、前記コイルの少なくとも1つを埋設ライン上部付近で移動及び回転させ、該コイルに誘起される信号出力が最大になる位置として埋設ライン直上位置を求めるようにして、前記第2の課題を解決したものである。
【0023】
本発明は、又、前記の測定方法において、正弦波交流電流を埋設ラインに印加して、前記交流電流の周波数を共振周波数とするコイルとキャパシタからなる共振系を構成し、該共振系に発生する誘導起電力を増幅して全波整流を行い平滑化して直流成分を得る検出回路を構成するようにしたものである。
【0024】
又、前記の測定方法において、正弦波交流電流を埋設ラインに印加して、前記交流電流の周波数を共振周波数とするコイルとキャパシタからなる共振系を構成し、該共振系に発生する誘導起電力から直交検波によって直流成分を得る検出回路を構成するようにしたものである。
【0025】
本発明は、又、前記共振系と検出回路を2セット用意し、共振系は長方形の相向う2辺に相当する位置に中心を揃えて配置し、一方を下方として地表面に対して鉛直面内に保持して、埋設ライン直上位置を求め、信号出力を計測して、埋没深さを求めるようにしたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下図面に参照して、本発明の実施形態を詳細な説明する。
【0027】
本発明を実施する装置の全体構成を図2に示す。図2で、コイル22、24は、各々地表面18と平行な平面上で、上下に向きをそろえて配置する。即ち、コイル22、24は、一方を下方として、地表面18に対して鉛直面内に保持して配置される。
【0028】
埋設管10にアンプ32を介して発信器30から交流電流Iを流すと、埋設管10の周囲に磁場が発生する。磁場は埋設管10に垂直で、磁力線は埋設管10の周りに同心円上に発生している。
【0029】
コイル22、24の軸心を磁力線が通過する量に応じてコイルに起電力が発生するので、この磁力線の向きにコイルの軸線が一致したとき(即ち、コイル軸が埋設管10と垂直なとき)が最も起電力が大きくなる。
【0030】
また、磁場の強さは、前述のように、埋没管10からの距離に反比例する。よって、埋設管10の直上が最も埋設管に近く、コイル起電力が最大となる点が埋設管の直上となる。
【0031】
なお、上記は2本のコイル22、24のどちらでも成立する。よって、埋設管の直上位置の調査は、上コイルと下コイルのどちらで実施してもよい。
【0032】
本実施形態では、更に、実際にパイプ等を各種の埋没深さに埋めて、前記直上位置で、図2に示す如く、埋設管10に基準信号Iを送信する一方、所定間隔Dで互いのコイル軸の向きを揃えて上下に配置された前記一対のコイル22、24を用いて、埋設管10の深さA及び基準信号Iの電流値を変化させて、上下コイル22、24の信号出力値と深さ、電流値の関係データを採取し、このデータより、表1に示す如く、上下コイル出力から埋設深さAと電流値を算出するテーブルや、あるいは回帰式を予め作成して、パソコン46に記憶しておく。
【0033】
【表1】
Figure 2004003906
【0034】
そして、測定すべき埋設管10に交流の基準信号Iを送信する一方、埋設管10の直上で前記一対のコイル22、24の信号出力を、検出回路42、44を用いて計測し、パソコン46により前記テーブル又は回帰式を用いて、埋設深さAと電流値を求める。
【0035】
具体的には、発信器30により正弦波交流電流を発生させ、アンプ32により増幅して埋設管10に印加する。
【0036】
ここで例えば図3に示す如く、前記正弦波交流電流の周波数を共振周波数とするコイルLと、いわゆるコンデンサであるキャパシタCからなる共振系50を構成し、図4に示す如く、該共振系50に発生する誘導起電力から帯域通過フィルタ(BPF)52によって不要成分を取り除いた後、必要に応じ増幅器54で増幅した後、全波整流回路56で全波整流を行ない、平滑回路58によって直流成分を得る検出回路42、44を構成する。図において、60はA/D変換器である。
【0037】
このように、コイルLとキャパシタCからなる共振系50を構成することにより、特定周波数域の磁場変動に対して大きな電流を流すことが可能となる。
【0038】
具体的な測定装置としては、図5に示す如く、移動可能な台車20上に前記共振系と検出回路を2セット(下共振系50L+検出回路42)(上共振系50U+検出回路44)用意し、共振系50L、50Uは、図5中に破線で仮想して示すような長方形の相向かう2辺に相当する位置に中心を揃えて配置し、一方50Lを下方として地表面に対して鉛直面内に保持し、前記検出回路42、44はパソコン46と接続する。
【0039】
このような測定装置を用い、好ましくは埋設管10の直上部を移動させて、磁場を測定すればよい。埋設管10の直上位置を求めるには、埋設管10の上部付近で測定装置(台車20)を回転させ、コイル22、24を地表面18に対して鉛直面内に保持したまま回転させる。このとき、コイル22または24の出力信号を監視し、出力が最大となる角度を発見する。
【0040】
次いで、前記の角度の延長線上にコイルを移動させ、出力が最大になる位置を探す。この位置が埋設管10の直上である。1つのコイルに着目して模式化した、上記直上位置の求め方を図6に示す。
【0041】
こうして、埋設管10の直上位置で、予め各種の埋設深さAと電流値に対する下方と上方のコイル22、24の出力データ、即ち共振系50L、50Uの出力データを採取して、下方と上方のコイル出力の計測値から埋設深さと電流値を算出するテーブルや回帰式を作成しておく。
【0042】
即ち、(1)パイプ10に交流電流Iを流し、上記各コイル22、24について、パイプとコイルの距離R、R+Dを変化させて、コイル出力データを採取する。
【0043】
(2)交流電流Iを変化させて、同様にコイル出力データを採取する。
【0044】
(3)このデータより、上下コイル出力から、埋設深さAと電流値を算出するテーブル又は回帰式を作成する。
【0045】
以上を事前に実施し、実探査における埋設深さと電流値の算出に、次のように使用する。
【0046】
即ち、実際に計測したい埋設位置や電流値を知りたい埋設管に、前記の正弦波交流電流を印加する。
【0047】
前記共振系と検出回路2セット(50L+42)(50U+44)を使用し、前記と同様に埋設管直上を求め、この位置で下方と上方のコイル出力を計測し、前記テーブル又は回帰式により、検出回路42、44と接続したパソコン46によって、埋設深さと電流値を算出して、例えばグラフ表示する。
【0048】
埋設ラインに沿って測定した時の測定距離と深さ測定結果の一例を図7に示す。図7においては、近似計算法による測定値と本発明による測定値を実測値と比較している。
【0049】
なお、埋設管に流す電流値Iも同時に求まるが、この電流値は、埋設管の塗覆装が健全で電流の漏洩が無ければ一定値となるはずであり、電流値が変化する場所で塗覆装損傷による漏洩電流があることも同時に知ることができる。
【0050】
前記実施形態においては、検出回路42、44が、全波整流を行い平滑化して直流成分を得ていたが、例えば、図8に示す変形例の如く、直交検波器62によって直流成分を得るようにしても良い。図において、54、55はローパスフィルタ(LPF)、60、61はA/D変換器である。
【0051】
なお、ここで直交検波器62は、共振系50のコイル出力を2つに分岐し、その一方は基準信号に周波数と位相を合わせた参照信号(REF信号)をかけ算回路を通じて掛け合わせ、更にLPF54を通じて検波出力E1を得、他方は、90°位相器によりREF信号の位相を90°ずらした信号と掛け合わせ、更にLPF55を通じて検波出力E2の得るものであり、これにより交流出力を直流出力E1、E2に変換できる。なお、出力の絶対値は、E1+E2の平方根である。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、実際に埋設ラインを埋めて計測した結果を基に深さ推定を行なうため、2つのコイル出力の特性を一定に保つ必要がない。よって、従来の近似計算法に比べて誤差を小さくできる。近似計算法と本発明との埋設深さ測定結果を図9に比較して示す。
【0053】
又、実際の出力によって演算を行なうので、只ある条件のときにある状態になるという一時性さえ保証されていればよく、測定系の特性を揃える必要がない。従って、システム全体のコストダウンに大きく貢献できる。
【0054】
更に、上下のコイル出力が実際に有り得る数値の組合せから外れた場合、エラーとして検出することもできる。この場合は、測定条件を所定のものとして、再測定すればよい。いずれにしても、誤った数値をそのまま採用することはない。
【0055】
又、直上位置で埋没深さと電流値を求めることにより、正確な値が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】特開平3−152411に記載された埋設管の信号電流及び埋設深さ検出装置の原理を説明するための構成図
【図2】本発明を実施するための装置の全体構成図
【図3】前記装置の共振系を示す回路図
【図4】同じく検出回路の構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施形態の台車部分を示す拡大図
【図6】同じく埋設管の直上位置を探す方法を説明するための図
【図7】本発明の実施形態による深さ測定結果を近似計算法による測定結果と比較して示す線図
【図8】検出回路の変形例の構成を示すブロック図
【図9】近似計算法と本発明による埋設深さ測定結果を比較して示す線図
【符号の説明】
10…埋設管
18…地表面
20…台車
22、24…コイル
30…発信器
32…アンプ
42、44…検出回路
46…パソコン
50、50L、50U…共振系

Claims (5)

  1. 埋設ラインに交流の基準信号を送信した時に、地上に所定の間隔で向きを揃えて上下に配設した複数のコイルに流れる電流を検出して、埋設ラインの深さを測定する際に、
    前記埋設ラインの深さと基準信号の電流値を変化させて、上下コイルの信号出力値と埋設深さ及び基準信号電流値の関係を予め求めておき、
    該関係を用いて、上下コイルの信号出力値から埋設ラインの深さを求めることを特徴とする埋設ラインの深さ測定方法。
  2. 請求項1に記載の測定方法において、埋設ラインに交流の基準信号を送信する一方、前記コイルの少なくとも1つを埋設ライン上部付近で移動及び回転させ、該コイルに誘起される信号出力が最大になる位置として埋設ライン直上位置を求めることを特徴とする埋設ラインの位置測定方法。
  3. 請求項1又は2に記載の測定方法において、正弦波交流電流を埋設ラインに印加して、前記交流電流の周波数を共振周波数とするコイルとキャパシタからなる共振系を構成し、該共振系に発生する誘導起電力について全波整流を行い平滑化して直流成分を得る検出回路を構成することを特徴とする埋設ラインの位置及び深さ測定方法。
  4. 請求項1又は2に記載の測定方法において、正弦波交流電流を埋設ラインに印加して、前記交流電流の周波数を共振周波数とするコイルとキャパシタからなる共振系を構成し、該共振系に発生する誘導起電力から直交検波によって直流成分を得る検出回路を構成することを特徴とする埋設ラインの位置及び深さ測定方法。
  5. 前記共振系と検出回路を2セット用意し、共振系は長方形の相向う2辺に相当する位置に中心を揃えて配置し、一方を下方として地表面に対して鉛直面内に保持して、埋設ライン直上位置を求め、信号出力を計測して、埋設深さを求めることを特徴とする請求項3又は4に記載の埋設ラインの位置及び深さ測定方法。
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