JP2004003096A - 耐水性不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】低目付化しても耐水性能及び引張強度を低下させることなく、ポリプロピレン不織布を提供する。
【解決手段】MFRが20以上で繊度が0.7〜1.5dtexのポリプロピレンスパンボンド(SB)不織布と繊径が1〜5μmのメルトブロー不織布とからなり、MB不織布層がSB不織布層により挟み込まれた積層構造体であり、部分的熱圧着で一体化してなるMB不織布層の目付が1g/m以上総目付の33%以下で、総目付が8g/m2 以上であり、5%モジュラス指数が下記の式(1)に示す範囲を満足する耐水性に優れかつ柔らかさを併せ持った耐水性不織布。
5%モジュラス指数≧0.41  ・・・(1)
但し、5%モジュラス指数=5%モジュラス(N/3cm)/目付(g/m2 
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐水性能が要求され、また同時に柔らかさと強度等も要求される分野、例えば衛生材料の表面素材、特に使い捨ておむつのサイドギャザー等において有用なポリプロピレン不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、衛生材料のサイド部における表面材、特に使い捨ておむつのサイドギャザーには、ポリプロピレンスパンボンド(以下、「SB」と言う。)不織布やメルトブロー不織布層がポリプロピレンスパンボンド不織布層により挟み込まれた積層構造体(以下、「SMS」と言う。)不織布が用いられてきた。しかしながら、SB不織布単体では耐水性能が悪く、尿洩れを防止する上で、低目付化が難しく、経済性の面でも好ましくなかった。また、従来のSMS不織布では、耐水性能は向上するが、低目付化による強力の低下や、ごわつき感があるため肌に触れた際の感触があまり良くないという問題があった。
【0003】
従来の方法では、ポリプロピレンスパンボンド不織布をサイドギャザー用途に提供する場合、高耐水性を得るには、積層体の高目付化やMB不織布層の目付のみを大きくしたり、繊度を細くする方法があったが、積層体の高目付化は、経済性に劣ってしまい、厚みも増すためオムツ構造をコンパクト化しにくく、廃棄量の増大にも繋がり環境面でも好ましくなかった。
また、MB不織布層の目付のみを大きくしたり、繊度を細くする方法での低目付化はMB不織布層における耐水性能の向上は見られるが、SB不織布層との積層構造体にした場合では十分な性能を得ることが出来なかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、防水性に優れかつ柔らかさや引張強度も高い不織布を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究をした結果、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、MFRが20以上で繊度が0.7〜1.5dtexのポリプロピレンスパンボンド(SB)不織布と繊径が1〜5μmのメルトブロー(MB)不織布とからなり、MB不織布層がSB不織布層により挟み込まれた積層構造体であり、部分的熱圧着で一体化してなるMB不織布層の目付が1g/m以上総目付の33%以下で、総目付が8g/m2 以上であり、5%モジュラス指数が下記式(1)に示す範囲を満足させる防水性に優れかつ柔らかさを併せ持った
耐水性不織布である。
5%モジュラス指数≧0.41 ・・・(1)
但し、5%モジュラス指数=5%モジュラス(N/3cm)/目付(g/m2 
【0006】
以下、本発明に関して詳述する。
本発明に使用されるポリプロピレンは、一般的なチーグラナッタ触媒により合成されるポリマーでもよいし、メタロセンに代表されるシングルサイト活性触媒により合成されたポリマーであっても良い。また、ポリプロピレン中にポリエチレンを添加したポリマーや他の添加剤を添加したポリマーでも良い。
本発明のスパンボンド不織布を構成するポリプロピレン繊維のMFRは、20以上である。MFR20未満では、細い繊度の繊維を得る場合、紡糸することが困難となる。また、70以上でも安定した紡糸は可能だが繊維の引張り強度等の物性値が低下してしまうため実用的でない。一般に繊度が1.5dtexを下回るような細い糸のスパンボンド不織布を製造するためには、特開平10−292256号公報に開示されているような紡糸方法が用いられている。しかし、この特許文献中で開示された技術では繊度的には限界に近く、強度や柔らかさ、原料の単一化、生産性を考えると、特願2001−276951に開示のスパンボンド法が、最も本発明に適している。
また、本発明のメルトブロー不織布を構成するポリプロピレン繊維のMFRは500以上1300未満である。500未満では細い繊度を得るのが困難となりまた、1300以上になると紡糸性が悪くなるため好ましくない。
【0007】
本発明の積層体不織布の構成は、繊度が0.7〜1.5dtexであるSB不織布層の上からMB不織布層を積層し、更にはその上から同様に繊度が0.7〜1.5dtexのSB不織布層を積層させ、部分的熱圧着で一体化させることが最も好ましく、少なくともSBの片層の繊度が0.7〜1.5dtexでも良い。MB不織布層がSB不織布層に覆われていれば、構造体として例えば、MB不織布層を2層にしたり、SB不織布層を2層重ねる等の多層化としても良い。SB不織布層の繊径を細くすることで、分散性を良くし繊維開孔径を小さくできるため、MB不織布層を重ねる際にSB不織布層へのMB不織布の突き抜け(Shooting Effect)を防止できる。SB不織布層へのMB不織布の突き抜けは、熱圧着する際に、ピンホールや穴空きの原因となり、耐水性能を低下させる要因となるため好ましくない。
【0008】
MB不織布の繊径を細くするには、ホール当たり吐出量を少なくする必要があり生産性の低下に繋がる。また、ホットエアー量を増加させねばならず、フライ(糸切れ)の発生など紡糸が不安定となる。逆にMB不織布の繊径が太くなれば、繊維開孔径も増加し耐水性能の低下に繋がるため、MB不織布の繊径範囲としては1〜5μmであり、3μm以下が好ましい。総目付の範囲は8g/m2 以上あれば良いが、10〜50g/m2 の範囲がより好ましい。MB不織布層の目付は目付が1g/m以上総目付の33%以下である。MB不織布層の割合を増やせば、MB不織布層自体の耐水性能は向上するが、SB不織布層の目付の低下から5%モジュラス値や強力値が低下するためMB不織布層の形態保持効果が低くなり好ましくない。また、MB不織布層の割合を低くすれば、耐水性能の向上があまり望めず生産性の低下にも繋がるため好ましくない。
本発明は、以上のような積層体を構成することにより防水性に優れかつ柔らかさや引張強度も高い不織布を得ることに成功した。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて更に説明する。
尚、各特性の評価方法は下記の通りである。
(1)繊度(dtex:フィラメント10000 m長の重量をグラム数で表示)
生産された不織布の両端10cmを除き、CD方向に5等分して1cm角の試験片をサンプリングし、顕微鏡で繊維の直径を各50点ずつ測定し、ポリプロピレンの繊維密度を0.91g/cm3 として、その平均値から繊度を算出した(小数点第2位を四捨五入)。
測定には、キーエンス社製の高倍率マイクロスコープVH−8000を用いた。
【0010】
(2)MFR(メルトフローレート)
JIS−K−7210「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」の表1の条件14、試験温度230℃、試験荷重21.18Nに準じて測定を行いMFRを求めた。
(3)耐水圧(mb又は100Pa)
生産された不織布の両端10cmを除き、CD方向に5等分、MD方向に3等分して計15点に関して20cm角の試験片をサンプリングし、JIS−L−1092に準じて測定を実施し、その平均値から耐水圧を算出した。
【0011】
(4)毛羽性
生産された不織布の両端10cmを除き、CD方向に5等分してCD、MD方向に25mm×300mmの試験片を採取し、日本学術振興会型の堅牢度試験機を用いて、摩擦子の荷重が200g、摩擦子側には摩擦係数が適当と考えられるリンレイクロス−重梱包用No.314布粘着テープを使用し、50回動作させて以下の基準で毛羽性を等級付け、表裏の平均値により毛羽等級を決定した(小数点第2位で四捨五入)。
1.0級:試験片が破損するほど繊維が剥ぎ取られている。
2.0級:試験片が薄くなるほど甚だしく繊維が剥ぎ取られている。
2.5級:毛玉が大きくはっきり見られ、複数箇所で繊維が浮き上がり始めている。
3.0級:はっきりした毛玉が出来始め、又は小さな毛玉が複数見られる。
3.5級:一箇所に小さな毛玉が出来始める程度に毛羽立っている。
4.0級:毛羽立ちがない。
【0012】
(5)5%モジュラス、5%モジュラス指数
生産された不織布の両端10cmを除き、CD方向に5等分、MD方向に3等分して計15点に関してCD、MD方向に3cm×20cmの試験片をサンプリングし、低速伸張試験型の引張試験機に把握長10cmで取付け、引張速度30cm/分で試験片が破断するまで荷重を加える。試験片の5%伸張時の強さの平均値をMD、CD方向で求めた(小数点第2位を四捨五入)。
また、5%モジュラス指数は次の式で求めることが出来る。
5%モジュラス指数=5%モジュラス[N/3cm]/総目付[g/m2 
【0013】
(6)引張強度
生産された不織布の両端10cmを除き、CD方向に5等分、MD方向に3等分して計15点に関してCD、MD方向に3cm×20cmの試験片をサンプリングし、低速伸張試験型の引張試験機に把握長10cmで取付け、引張速度30cm/分で試験片が破断するまで荷重を加える。試験片の最大荷重時の強さの平均値をMD、CD方向で求めた(小数点第2位を四捨五入)。
(7)表面特性
生産された不織布を用いて測定者5人に対し、柔らかさ、ぬめり感、ざらつき感の3項目に関して3段階でランク付け(数値大で良好)を実施し、それぞれの合計ポイントにて評価を実施した(ランク付けは、それぞれの同一目付に対して評価を実施)。
【0014】
【実施例1〜20、比較例1〜14】
MB不織布層の繊度を1.8μm、目付を1g/m2 とし、SMS構造体の
総目付が13g/m2 におけるSB不織布層の繊度を0.9dtex(実施例1)、1.2dtex(実施例2)、1.5dtex(実施例3)、1.7dtex(比較例1)、2.8dtex(比較例2)、また総目付が17g/mにおけるSB不織布層の繊度を0.9dtex(実施例4)、1.2dtex(実施例5)、1.5dtex(実施例6)、1.7dtex(比較例3)、2.8dtex(比較例4)と変化させた。
同様にMB不織布層の目付を2g/mとし、SMS構造体の総目付が10g/mにおけるSB不織布層の繊度を1.2dtex(実施例7)、また総目付が13g/m2 におけるSB不織布層の繊度を0.9dtex(実施例8)、1.2dtex(実施例9)、1.5dtex(実施例10)、1.7dtex(比較例5)、2.8dtex(比較例6)、また総目付が17g/mにおけるSB不織布層の繊度を0.9dtex(実施例11)、1.2dtex(実施例12)、1.5dtex(実施例13)、1.7dtex(比較例7)、2.8dtex(比較例8)、また総目付が40g/mにおけるSB不織布層の繊度を0.9dtex(実施例14)、1.2dtex(実施例15)、1.7dtex(比較例9)、2.8dtex(比較例10)と変化させた。
同様に、MB不織布層の目付を4g/mとし、SMS構造体の総目付が17g/mにおけるSB不織布層の繊度を0.9dtex(実施例16)、1.2dtex(実施例17)、1.5dtex(実施例18)、1.7dtex(比較例11)、2.8dtex(比較例12)、また総目付が50g/mにおけるSB不織布層の繊度を0.9dtex(実施例19)、1.2dtex(実施例20)、1.7dtex(比較例13)、2.8dtex(比較例14)と変化させ、それぞれの毛羽等級が4.0級になるよう圧着温度を調整し採取した布により、強力値、耐水圧及び表面特性を評価した結果を表1、2、3に示す。
【0015】
【表1】
Figure 2004003096
【0016】
【表2】
Figure 2004003096
【0017】
【表3】
Figure 2004003096
【0018】
繊度を細くしたSMS構造体は、繊度を太くしたSMS構造体に比べて圧着特性が良いため、低温圧着が可能となり、表面特性項目のぬめり感に関してはあまり差が見られなかったが、柔らかさとざらつき感に関しては共に数値は向上し、効果は明らかであった。また、5%モジュラス指数が高くなり、MB不織布層の形態保持効果が良くなることや、SB不織布層の繊径を細くすることで繊維密度が大きくなり地合も良くなるため、Shooting Effectの影響も受けにくく、特に低目付け領域での耐水性能に関して数値は向上し効果は明らかであった。
【0019】
【実施例21、22、23、比較例15】
実施例8と同様の方法でMB不織布層の繊径を1.0μm(実施例21)、1.8μm(実施例22)、2.8μm(実施例23)、6.0μm(比較例15)と変化させ、それぞれの毛羽等級が4.0級になるように圧着温度を調整し採取した布により、強力値、耐水圧及び表面特性を評価した結果を表4に示す。
MB繊度が5.0μmを超えても5%モジュラス指数及び柔らかさやざらつき感の特性は殆ど変化しないが、耐水圧値に関しては極端に低下してしまう。
【0020】
【表4】
Figure 2004003096
【0021】
【実施例24、25、比較例16】
実施例2と同様の方法でMB不織布層の目付を1g/m(実施例24)、2g/m(実施例25)、4g/m(実施例26)、6g/m(比較例16)と変化させ、それぞれの毛羽等級が4.0級になるように圧着温度を調整し採取した布により、強力値、耐水圧値及び表面特性を評価した結果を表5に示す。
MBの目付が6g/mにおいても、柔らかさやざらつき感を維持することは出来るが、SB層の割合が低下するため、5%モジュラス指数及び強力値及び、耐水圧値も低下してしまう。
【0022】
【表5】
Figure 2004003096
【0023】
【発明の効果】
本発明のポリプロピレン不織布は、従来の不織布(SMS)に比べ耐水性が良く、引張強度も大きくまた、柔らかさにも優れており、厚みも薄くなるといった諸特性をバランスよく確保しているため、使い捨てオムツの表面材料、特にサイドギャザーをはじめとして各種用途に好適にかつ経済的に使用でき、また軽量化できることで産廃の削減にもなり環境面においても有用である。

Claims (1)

  1. MFRが20以上で繊度が0.7〜1.5dtexのポリプロピレンスパンボンド不織布と繊径が1〜5μmのメルトブロー不織布とからなり、メルトブロー不織布層がポリプロピレンスパンボンド不織布層により挟み込まれた積層構造体であり、部分的熱圧着で一体化してなるメルトブロー不織布層の目付が1g/m以上総目付の33%以下で、総目付が8g/m2 以上であり、5%モジュラス指数が下記の式(1)に示す範囲を満足する耐水性に優れ、かつ柔らかさを併せ持った耐水性不織布。
    5%モジュラス指数≧0.41  ・・・(1)
    但し、5%モジュラス指数=5%モジュラス(N/3cm)/目付(g/m2 
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