JP2004002961A - プラズマcvd法による薄膜形成方法及び薄膜形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】反応室4内に所定のガスを導入し、成膜ドラム8上の基材1と、対向電極9を設置して、反応性ガスをプラズマ化して、基材1上に薄膜12を形成する方法で、基材1をロール2からロール2’に連続で巻上げる方式で、成膜ドラム8と対向電極9の内から選ばれる一つ以上に、プラズマ電源10を供給し、かつその電源周波数が50kHz以下であり、反応室4内の成膜ドラム8と対向電極9の内から選ばれる一つ以上に、磁石13を配置し、かつ基材1を搬送して接触するロール部7、7’をアースから1kΩ以上のインピーダンスを有するようにした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD法による薄膜形成方法に関するもので、特にプラスティックフィルム等の基材上に、シリカ薄膜や金属薄膜を均一に形成することが可能であり、また成膜速度も速く、プラズマCVD装置に用いる周辺回路が複雑ではなく、成膜状態が変化せず、安定したプラズマCVD法による薄膜形成方法及び薄膜形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスティックフィルム等の基材上に、シリカ薄膜や酸化チタン、ITO(インジウム錫酸化物)等の金属薄膜を均一に形成する手段として、真空蒸着法、スパッタリング法、ゲルゾル法等によるウェットコーティング、熱CVD等の方法がある。
真空蒸着法では、薄膜の形成速度は遅くないが、薄膜の均一性の精度が悪く、したがって歩留まりが悪い点が目立つ。また、スパッタリング法では、薄膜の均一性の精度は良好であるが、薄膜の形成速度が非常に遅く、生産性が悪い。さらに、ゲルゾル法等によるウェットコーティングでは、薄膜の均一性の精度が悪いという問題がある。
熱CVD法では、基材の熱エネルギーにより原料ガスを酸化・分解して薄膜を形成する方法であり、基材を高温にする必要があり、よって基材がプラスティックフィルムである場合、プラスティックフィルムの分解、酸化が生じてしまい、プラスティックフィルム基材上に薄膜を均一に形成することができない。
【0003】
これに対して、いわゆるプラズマCVD法を用いて、基材上にシリカ薄膜や金属薄膜を形成することが提案されている。このプラズマCVD法とは、所定のガスが導入された反応室内でプラズマを生成することにより、原子または分子ラジカル種が生成され、固体表面に付着し、多くの場合表面反応により、さらに揮発性分子を放出して固体表面に取り込まれる現象を利用した成膜方法である。
このプラズマCVD法により、プラスティックフィルムや紙、金属箔等の基材に対し、巻取り方式で、連続的に薄膜の形成を行なう試みが盛んになされている。これは、従来のバッチ式と比べ、大量生産が可能となり、格段に生産性が向上するものである。
【0004】
このプラズマCVD法により薄膜形成及び処理を行なう場合、プラズマ粒子の衝撃、特にイオン衝撃を基材上に与えることで、効率的に反応を活性化させて、作製膜の緻密化及び成膜速度・処理速度の向上を図ることが可能となる。そのためには、基材側への負電位印加が有効である。通常負電位の印加方法として、成膜室内で基材に接するドラムに高周波電力を印加して、負電位を付与させている。
従来は電源印加周波数として、13.56MHzが用いられていたが、周波数が高いために、質量の大きいイオンが追従できず、基材へのイオン衝撃エネルギーが低くなるという問題がある。同様に、上記周波数が高いと、低圧力でも放電するため、成膜室以外での異常放電が発生しやすくなり、成膜安定性が低くなるという問題がある。さらに、プラズマを励起するための電気的な設計周辺回路が複雑であり、また伝送路での減衰が大きくなるという問題点もある。
【0005】
また、従来はプラズマCVD法での使用するロールが金属製のため、作製膜が導電性であると、印加電力がフィルム基材を通してロールに流れてしまい、効率的に電力印加ができない。さらに、フィルム基材上を電流が流れることにより、導電膜の絶縁破壊や基材変形が発生する。また、絶縁膜等の長時間による成膜により、成膜室内のプラズマ電位が上昇し、成膜状態が変化して安定しない問題もある。
【0006】
このような状況の中で、特許文献1には、高周波バイアスの周波数を50KHz〜900KHzの範囲とし、高周波電源と導電性を有する薄膜の間に、静電容量Cと高周波周波数fの積C・fが0.02(F・Hz)以上になるようなブロッキングコンデンサを介在させ、基体搬送系の高周波絶縁性として基体供給ローラから回転ドラムに至る経路の全てのローラのインピーダンスの合計を少なくとも10kΩ以上、回転ドラムから巻取ローラに至る経路の全てのローラのインピーダンスの合計を少なくとも10kΩ以上とするプラズマCVD装置に関することが記載されている。このプラズマCVD装置は、Co−O膜を蒸着した磁気記録媒体の基材上に、ダイヤモンドライクカーボン膜やSiOx膜を形成するもので、異常放電や基体の帯電による塵埃の付着を防止でき、連続的に成膜が可能な装置である。
ところが、上記の装置では、プラスティックフィルム基材の上にCo−O膜等の導電性薄膜を介したり、また導電性微粉末を混入したプラスティックフィルム基材にダイヤモンドライクカーボン膜やSiOx膜を設けるもので、磁気記録媒体を構成する薄膜を形成することに関する。
【0007】
プラスティックフィルム等の基材上に、シリカ薄膜や金属薄膜を形成する巻取り成膜装置において、搬送・巻取り室のロールや壁に膜が付着すると、フィルム基材にキズが発生したり、付着した膜が剥離してフィルム基材に巻き込まれる等の問題を発生する。本問題の解決のために、一般的には成膜室と搬送・巻取り室との間に隔壁を形成し、搬送・巻取り室では成膜しない構成になっている。しかし、巻取りプラズマCVD装置では、さらに別の問題も発生する。一般的に巻取り成膜装置では、プラスティックフィルム基材の温度制御ができて、かつ成膜範囲が広くなるように(成膜速度が速くなるように)、温度制御した大口径の成膜ドラム上でフィルム基材上に成膜を実施する。成膜ドラムは大口径のため、成膜室、搬送・巻取り室の双方に露出している。低温プラズマCVD装置では、作製膜の反応活性化及び密着性改善のため、この成膜ドラムにも電力を印加することが一般的に広く実施されている。(特許文献2、3等を参照)
しかし、成膜ドラムに電力を印加すると、成膜室及び搬送・巻取り室の双方にプラズマが生成してしまい、搬送・巻取り室の汚染及び成膜室のプラズマの不安定化という問題が発生してしまう。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−298764号公報
【特許文献2】
特願2001−258206号公報
【特許文献3】
特願2001−298360号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、上述の背景のもとでなされたものであり、プラスティックフィルム等の基材上に、シリカ薄膜や酸化チタン、ITO(インジウム錫酸化物)等の金属薄膜を均一に形成することが可能であり、また成膜速度も速く、装置に用いる周辺回路が複雑ではなく、成膜状態が変化せず、安定したプラズマCVD法による薄膜形成方法及び薄膜形成装置を提供することを目的としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、請求項1として、反応室内に所定のガスを導入し、成膜ドラム上の基材と、対向電極を設置して、反応性ガスをプラズマ化して、基材上に薄膜を形成する方法において、基材をロールからロールに連続で巻き上げる方式で、成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、プラズマ電源を供給し、かつその電源周波数が50kHz以下であり、反応室内の成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、磁石を配置し、かつ基材を搬送して接触するロール部をアースから1kΩ以上のインピーダンスを有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2として、反応室内に所定のガスを導入し、成膜ドラム上の基材と、対向電極を設置して、反応性ガスをプラズマ化して、基材上に薄膜を形成する装置において、基材をロールからロールに連続で巻き上げる方式で、成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、プラズマ電源を供給し、かつその電源周波数が50kHz以下であり、反応室内の成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、磁石を配置し、かつ基材を搬送して接触するロール部がアースから1kΩ以上のインピーダンスを有することを特徴とする。
請求項3として、請求項1または2に記載する反応室の圧力をp0、搬送・巻取り室の圧力をp1とした時に、p0>10p1であることを特徴とする。
【0012】
上記のように、成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、加えるプラズマ電源の周波数を50kHz以下とすることにより、プラズマ粒子の衝撃におけるイオン衝撃エネルギーが増加して、基材の表面反応が活性化し、成膜速度が向上する。さらに、上記の低周波数下において、低圧力での放電が発生しにくくなるために、反応室(成膜室)以外での異常放電が防止できる。ところが成膜室での放電もしにくくなるために、成膜室内の成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、磁石を設置して、放電しやすくした。これは、その磁石による磁場によりプラズマ中の電子が補足され、プラズマ密度が増加するためである。また、基材が搬送されて接触する金属ロールへの電力漏れを防止するために、金属ロールとアース間におけるインピーダンスを1kΩ以上に設定した。これにより、基材やプラズマCVD薄膜が導電性を有する場合でも、基材とアース間のインピーダンスがプラズマのインピーダンスよりも大きいために、プラズマ電源の電力が速やかにプラズマに投入されて、成膜状態が変化せず、安定したものとなる。
さらに、成膜室及び搬送・巻取り室の圧力を制御して、常に搬送・巻取り室ではプラズマが発生せず、成膜室側でのみプラズマが発生する条件を作り出したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプラズマCVD法による薄膜形成方法の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明のプラズマCVD法による薄膜形成方法を実施させるプラズマCVD装置の一構成例の概略図を図1に示す。
プラズマCVD装置は、連続したウエッブ状のプラスティックフィルム基材1が搬送・巻取り室14の基材巻き出し部2より巻き出されて、真空容器3中のプラズマCVDの反応室4に導入される。この真空容器3は搬送・巻取り室14と反応室4とが隔壁15によって、仕切られている。この真空容器3の全体は、真空ポンプ5により排気される。また、同時に反応室4には、原料ガス導入口6より規定流量の原料ガスと、窒素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素等の活性なキャリヤガスと、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の不活性なキャリヤガスが供給され、反応室4の内部は、常に一定圧力のこれらのガスで満たされている。上記の活性ガス、不活性ガスは、原料ガスとの反応における活性、不活性のことである。
【0014】
基材巻き出し部2より巻き出され、反応室4に導入されたプラスティックフィルム基材1は、反転ロール7を経て、成膜ドラム8に巻き付き、成膜ドラム8の回転と同期しながら反転ロール7’の方向に送られて、連続して巻き上げられていく。この時、成膜ドラム8は、温度コントロールが可能であり、この時、プラスティックフィルム基材1の表面温度と成膜ドラム8の表面温度はほぼ等しい。したがって、プラズマCVD時に原料ガスが堆積するプラスティックフィルム基材1の表面温度、すなわちプラズマCVDの成膜温度を任意にコントロールできる。この例においては、プラズマCVD装置により薄膜12をプラスティックフィルム基材1上に成膜する場合の成膜温度を、その時の成膜ドラム8の表面温度により表示する。
【0015】
成膜ドラム8と、プラスティックフィルム基材1を介して、対向する位置に、対向電極9を設置し、その対向電極9と成膜ドラム8との間には、プラズマ電源10により高周波電力が印加される。このとき、電源の周波数は、50kHz以下であり、実用的には50Hz程度が下限である。そして、電極9と成膜ドラム8の間に高周波電力を印加することにより、この両電極の周辺にプラズマ11が発生する。この放電によるプラズマ発生において、電源周波数が50kHz以下と周波数が一般的電源より低いことにより、低圧力での放電が発生しにくくなるため、反応室4内の対向電極9に磁石13を設置して、放電しやすくした。この磁石13の種類は、特に限定されず、例えば、フェライト磁石や希土類磁石等のいずれであっても良い。また永久磁石に限らず、電磁石を用いることも可能である。
図1では、対向電極側にプラズマ電源を供給したが、これに限らず、成膜ドラムのみにプラズマ電源を供給したり、あるいは成膜ドラムと対向電極の両方にプラズマ電源を供給させることも可能である。また、図1では、対向電極側に磁石を取り付けたが、これに限らず、成膜ドラムのみに磁石を取り付けたり、あるいは成膜ドラムと対向電極の両方に磁石を取り付けることも可能である。
【0016】
また、プラスティックフィルム基材1が搬送されて接触する金属ロール(図1では7、7’、2、2’、8)はアースとのインピーダンスを1kΩ以上に設定しておいた。それは、プラズマ発生におけるプラスティックフィルム基材1からアースへの電力漏れを防止して、プラズマ電源による電力が効率的に無駄無く、使われるようにするためである。そして、このプラズマ11中で原料ガスと活性ガスが反応し、原子または分子ラジカル種が生成されて、成膜ドラム8に巻き付いたプラスティックフィルム1上に堆積して、薄膜12が形成される。その後、その薄膜12が表面に形成されたプラスティックフィルム1は、反転ロール7’を経て、搬送・巻取り室14の基材巻き取り部2’で連続的に巻き取られる。
【0017】
上記のように、本発明においては、プラズマ11により原料ガスと活性ガスが化学反応して生成した原子または分子ラジカル種が、成膜ドラム8により適切な温度に冷却されたプラスティックフィルム1上に堆積して、薄膜を形成するので、プラスティックフィルム1が高温にさらされ、伸び、変形、カール等することなく、薄膜12の形成が可能である。さらに、本発明のプラズマCVD法においては、材料ガス流量・圧力、放電条件、プラスティックフィルム1の送りスピートのコントロールにより、形成される薄膜12の膜厚や、屈折率等を広範囲でコントロールしうるため、材料を変更することなく、所望の光学特性の膜を得ることができる。
【0018】
本発明においては、成膜ドラムは、温度コントロールが可能なので、プラズマCVD時に薄膜を形成するプラスティックフィルムの表面温度、すなわちプラズマCVDの成膜温度を任意にコントロールできる。この成膜温度は、−30〜150℃程度の温度で行なう。この温度が−30℃より低くなると、形成される薄膜の均一性が低下するので好ましくない。また、成膜温度が150℃を超えると、本発明で使用可能な基材のプラスティックフィルムの熱変形温度より高くなってしまい、成膜時の伸び、変形、カール等の問題を生じ好ましくない。
【0019】
一般的に、圧力が約1Torr(133Pa)以下では、高圧力の方がプラズマは生成しやすい(プラズマと成膜の基礎、日刊工業新聞社、小沼光晴、1986年発行を参照)。放電のしやすさは、放電開始電圧の低さで把握でき、放電開始電圧は圧力×電極間距離の関数として表される。よって、成膜室の圧力及び電極間距離をp0及びd0、搬送・巻取り室の圧力及び電極間距離をp1及びd1とした時に、p0d0>>p1d1の関係であれば、安定して成膜室のみでプラズマが生成する。電極間距離は電極が2つある場合は、2電極の間の距離であり、電極が1つの場合は電極(成膜ドラム)−アース間距離で表されるが、真空薄膜装置では装置壁全体がアースであるため、電極間距離を定義することは困難である。一般的には、成膜室及び搬送・巻取り室で電極(成膜ドラム)−アース間距離に大きな差がないため、d0≒d1として、考える。よって、p0>>p1であれば、成膜室のみで安定放電する。実際の実験の検討結果からp0>10p1であれば、成膜室のみで安定放電することを確認した。
【0020】
本発明のプラズマCVD法による薄膜形成方法により、形成する薄膜としては、酸化シリコン層、フッ化マグネシウム層、酸フッ化ケイ素層、酸化アルミニウム等の、可視光域で透明性を有し、波長λ=550nmにおける屈折率が1.4〜1.80程度となるような酸化物薄膜が挙げられる。特に、酸化シリコン層を用いることが好ましい。酸化シリコン層は、その屈折率を1.4〜1.80とすることが比較的容易であり、プラズマCVD法による条件で、耐湿性、耐熱性に優れ、屈折率の安定した薄膜を生産性良く、形成できるからである。
酸化シリコン層の組成は、単純にSiOxである必要はなく、炭素を含有する酸化シリコン層(SiOxCy)であっても良い。このように、酸化シリコン層に炭素を含有させることにより、屈折率を所望の範囲に調整することがさらに容易にできる。
【0021】
また、本発明のプラズマCVD法による薄膜形成方法により、形成する薄膜として、可視光域で透明性を有し、その屈折率を1.80以上(λ=550nm)である金属酸化物薄膜が挙げられる。具体的には、酸化チタン、ITO(インジウム/スズ酸化物)層、Y2O3層、In2O3層、Si3N4層、SnO2層、ZrO2層、HfO2層、Sb2O3層、Ta2O5層、ZnO層、WO3層等を挙げることができ、この中でも特に酸化チタンまたは高抵抗を示すITO層を用いることが好ましい。
【0022】
尚、図1で示した装置は、基材上に薄膜を形成するための反応室は一つしか設置されていないが、これに限定されず、一つのプラズマCVD装置に2つ以上の複数の反応室を設けて、成膜ドラムを共有し、対向電極は各反応室毎に設置して、また各反応室内にそれぞれ所定のガスを導入し、各反応室において、成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、プラズマ電源を供給し、かつその電源周波数が50kHz以下であり、反応室内の成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、磁石を配置しておくことも可能である。尚、この場合、夫々の反応室は隔離壁で隔離されることで形成される。このような一つのプラズマCVD装置に2つ以上の複数の反応室を設ければ、このプラズマCVD装置により、同一基材上に2層以上の複層を形成することができ、各種の機能性を有した積層体を形成することが可能となる。
また、本発明においては、上述した図1に示すような装置で複数回、基材を処理することにより、基材上に薄膜を複数層で積層させた積層体を形成するようにしてもよい。
本発明のプラズマCVD法による薄膜形成方法により、基材上に可視光域で透明性を有し、屈折率の異なる層を2層、3層のように複数積層させて、反射防止フィルム等の各種光学的部材に利用することができる。
【0023】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。
(実施例1)
基材のプラスティックフィルムである厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、予め導電性ITO膜を100nmの厚さで形成しておき、以下の条件で、プラズマCVD法を用いて、シリカ層を25nmの膜厚で形成した。
プラズマCVD装置の基材を搬送して接触する金属ロールを絶縁性のゴムロールに変更し、反応室内の成膜ドラムに供給するプラズマ電源の周波数を40kHzとした。また反応室内の対向電極に磁気回路を取り付けた。その電極表面での磁束密度は約300[ガウス]であった。上記ゴムロールのアースからのインピーダンスは1MΩ以上であった。その他のプラズマCVD法によるシリカ薄膜作成条件は以下の通りである。
【0024】
電力 1kW
導入ガス TEOS(テトラエトキシシラン)、酸素、アルゴン
成膜圧力 6Pa
【0025】
以上の条件でポリエチレンテレフタレートフィルム上にITO膜を介して形成したシリカ薄膜の屈折率等の測定結果を以下に示す。
屈折率(λ=550nm) 1.47
成膜速度 200m・nm/min
緻密で透明なシリカ薄膜が高い成膜速度で、得られた。また、プラズマ状態も安定していた。
【0026】
<シリカ薄膜測定に使用した装置>
屈折率測定 エリプソメーター
型番 UVISELTM メーカー JOBIN YVON
【0027】
(実施例2)
実施例1のプラズマCVD法によるシリカ薄膜作成条件において、基材としてプラスティックフィルムである厚さ75μmの未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し、成膜室、搬送・巻取り室の各圧力を、各室−ポンプ間のバルブ開度を調整して、プラズマCVD法によるシリカ薄膜作成条件を以下の条件にした以外は、実施例1と同様にしてプラズマCVD法を用いて、シリカ層を形成した。
【0028】
電力 1kW
導入ガス TEOS(テトラエトキシシラン)、酸素、アルゴン
成膜圧力 6Pa
搬送・巻取り室圧力 0.5Pa
【0029】
(実施例3)
実施例1で使用した別の同様な巻取りCVD装置で放電安定性の確認を行った。電源周波数は40kHzとして、▲1▼電極のみ、▲2▼電極−成膜ドラムの両方、▲3▼成膜ドラムのみの3方式で成膜室、搬送・巻取り室の各圧力での放電安定性を確認した。導入ガスは、アルゴン、酸素の2種類で実施した。下記の表1に示すように、全ての条件でp0>10p1を満たしているため、成膜室のみで安定したプラズマ生成が行われている。
【0030】
【表1】
【0031】
(比較例1)
成膜ドラムに供給するプラズマ電源の周波数だけ13.56MHzに変更した以外は、上記の実施例1のプラズマCVD法によるシリカ薄膜作成条件と同様にした。
以上の条件でポリエチレンテレフタレートフィルム上にITO膜を介して形成したシリカ薄膜の屈折率等の測定結果を以下に示す。
屈折率(λ=550nm) 1.44
成膜速度 45m・nm/min
得られたシリカ薄膜は膜における緻密性が低く、さらに成膜速度も低い。
【0032】
(比較例2)
成膜ドラムに供給するプラズマ電源の周波数だけ100kHzに変更した以外は、上記の実施例1のプラズマCVD法によるシリカ薄膜作成条件と同様にした。
以上の条件でポリエチレンテレフタレートフィルム上にITO膜を介して形成したシリカ薄膜の屈折率等の測定結果を以下に示す。
屈折率(λ=550nm) 1.45
成膜速度 100m・nm/min
得られたシリカ薄膜は膜における緻密性、成膜速度の点で、比較例1よりも改善されているが、実施例1と比較すると、屈折率が低いことから膜緻密が低いと考えられ、成膜速度も遅い。
【0033】
(比較例3)
反応室内の対向電極に取り付けてあった磁気回路を取り外した以外は、上記の実施例1のプラズマCVD法によるシリカ薄膜作成条件と同様にした。この場合、反応室において、プラズマが生成せず、シリカ薄膜の成膜が不可能であった。
【0034】
(比較例4)
プラズマCVD装置の基材を搬送して接触するロールを金属ロールのままにして(ゴムロールに変更せずに)、上記金属ロールのアースからのインピーダンスは0Ωであった。それ以外は、上記の実施例1のプラズマCVD法によるシリカ薄膜作成条件と同様にした。この場合、ITO導電膜の絶縁破壊や基材変形が発生した。また、放電が弱くかつ安定せず成膜することが困難であった。
【0035】
(比較例5)
上記の実施例2のプラズマCVD法によるシリカ薄膜作成条件において、搬送・巻取り室圧力を0.5Paから1Paに変更した以外は、実施例2と同様にして、プラズマCVD法を用いて、シリカ層を形成した。
その際、搬送・巻取り室でプラズマが発生し、成膜室内のプラズマは不安定と成った。また成膜サンプルについても、場所によって膜厚、屈折率が安定しなかった。
【0036】
【発明の効果】
本発明のプラズマCVD法による薄膜形成方法あるいは薄膜形成装置は、反応室内に所定のガスを導入し、成膜ドラム上の基材と、対向電極を設置して、反応性ガスをプラズマ化して、基材上に薄膜を形成する方法において、基材をロールからロールに連続で巻き上げる方式で、成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、プラズマ電源を供給し、かつその電源周波数が50kHz以下であり、反応室内の成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、磁石を配置し、かつ基材を搬送して接触するロール部をアースから1kΩ以上のインピーダンスを有するようにした。これにより、成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、加えるプラズマ電源の周波数を50kHz以下とすることにより、プラズマ粒子の衝撃におけるイオン衝撃エネルギーが増加して、基材の表面反応が活性化し、成膜速度が向上する。
【0037】
さらに、上記の低周波数下において、低圧力での放電が発生しにくくなるために、反応室(成膜室)以外での異常放電が防止できる。ところが成膜室での放電もしにくくなるために、成膜室内の成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、磁石を設置して、放電しやすくした。また、基材が搬送されて接触する金属ロールへの電力漏れを防止するために、金属ロールとアース間におけるインピーダンスを1kΩ以上に設定した。これにより、基材やプラズマCVD薄膜が導電性を有する場合でも、一般的なプラズマ条件よりもインピーダンスが大きいために、プラズマ電源の電力が速やかにプラズマに投入されて、成膜状態が変化せず、安定したものとなる。
また、本発明では、プラズマCVD法における薄膜形成方法あるいは薄膜形成装置は、反応室の圧力をp0、搬送・巻取り室の圧力をp1とした時に、p0>10p1であるように成膜室及び搬送・巻取り室の圧力を制御して、常に搬送・巻取り室ではプラズマが発生せず、成膜室側でのみプラズマが発生するように、より安定して実現するようにできた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラズマCVD法による薄膜形成方法を実施させるプラズマCVD装置の一構成例の概略図である。
【符号の説明】
1 基材
2 基材巻き出し部
2’ 基材巻き取り部
3 真空容器
4 反応室
5 真空ポンプ
6 原料ガス導入口
7 反転ロール
7’ 反転ロール
8 成膜ドラム
9 対向電極
10 プラズマ電源
11 プラズマ
12 薄膜
13 磁石
14 搬送・巻取り室
Claims (3)
- 反応室内に所定のガスを導入し、成膜ドラム上の基材と、対向電極を設置して、反応性ガスをプラズマ化して、基材上に薄膜を形成する方法において、基材をロールからロールに連続で巻き上げる方式で、成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、プラズマ電源を供給し、かつその電源周波数が50kHz以下であり、反応室内の成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、磁石を配置し、かつ基材を搬送して接触するロール部をアースから1kΩ以上のインピーダンスを有することを特徴とするプラズマCVD法による薄膜形成方法。
- 反応室内に所定のガスを導入し、成膜ドラム上の基材と、対向電極を設置して、反応性ガスをプラズマ化して、基材上に薄膜を形成する装置において、基材をロールからロールに連続で巻き上げる方式で、成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、プラズマ電源を供給し、かつその電源周波数が50kHz以下であり、反応室内の成膜ドラムと対向電極の内から選ばれる一つ以上に、磁石を配置し、かつ基材を搬送して接触するロール部がアースから1kΩ以上のインピーダンスを有することを特徴とするプラズマCVD法による薄膜形成装置。
- 反応室の圧力をp0、搬送・巻取り室の圧力をp1とした時に、p0>10p1であることを特徴とする請求項1または2に記載するプラズマCVD法による薄膜形成方法及び薄膜形成装置。
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JP2011058069A (ja) * | 2009-09-11 | 2011-03-24 | Fujifilm Corp | 成膜方法 |
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2002
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