JP2004002772A - 感熱性接着剤およびその調製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐ブロッキング性および接着強度に優れ、かつフタル酸エステル系可塑剤などの環境負荷となる製造原料を使用せず、従来のフタル酸ジシクロヘキシルを使用した感熱性ディレード型接着剤に匹敵、もしくはそれ以上の性能を有する感熱性ディレード型の感熱性接着剤を提供すること。
【解決手段】ガラス転移点が−20〜100℃の熱可塑性樹脂の水分散体(a)と、下記一般式(1)で表される化合物(b)と、水性分散媒体(c)とを含有することを特徴とする感熱性接着剤。
【選択図】 なし
【解決手段】ガラス転移点が−20〜100℃の熱可塑性樹脂の水分散体(a)と、下記一般式(1)で表される化合物(b)と、水性分散媒体(c)とを含有することを特徴とする感熱性接着剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱によって粘着性が発現し、加熱源を取り去っても一定時間、粘着性が持続する感熱性ディレード型の接着剤において、耐ブロッキング性、接着強度および粘着持続性に優れ、かつフタル酸エステル系などの環境負荷となる原料を使用しないディレード型の感熱性接着剤およびその調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、感熱性ディレード型接着剤に使用する熱可塑性樹脂は、非活性時の耐ブロッキング性をもたせるために、一般的な接着剤用途の樹脂と比較してガラス転移温度および最低造膜温度が高く、常温では粘着性を示さない。このような樹脂のガラス転移温度および最低造膜温度をさらに低く設定する目的で可塑剤を添加する。これらの可塑剤は、常温では樹脂に可塑性を与えず、加熱によって溶融して樹脂中に溶融して樹脂を軟化させ、樹脂を溶融後は、固化するまで一定時間粘着剤に粘着性を発現および維持する機能を有する。
【0003】
上記の固形可塑剤としては、主に、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジヒドロアビエチル、フタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジメチルなど、好ましくはフタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸エステル系;安息香酸スクロース、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリスリットなどの安息香酸エステル系、八酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホン酸アミドなどのスルホンアミド系などが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記の可塑剤を使用した接着剤は、経時的に徐々に接着剤層からこれらの可塑剤が抜け出し、抜けた可塑剤が、被着体を汚すなど、他に悪影響を及ぼす。特に、感熱性ディレード型の接着剤の樹脂との相溶性や融点などの性能面から好ましく使用されている上記のフタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸系の可塑剤は、最近、環境庁の「外因性内分泌撹乱物質問題に関する研究中間報告書」において、内分泌撹乱性を有すると疑われる物質としてリストアップされ、環境上問題があると指摘されている。上記のフタル酸系の可塑剤を使用した接着剤から可塑剤がブリードアウトして、人体に接触したり、該接着剤を使用した包装体から、食品などの内容物に可塑剤が移行して、体内に侵入する危険性や、使用した包装体を廃棄処分した場合の環境汚染や該接着剤の調製作業、該接着剤を使用する加工作業などの作業環境にも悪影響を及ぼす。
【0005】
一方、前記のフタル酸系以外の固形可塑剤を使用した感熱性ディレード型の接着剤が提案されているが、該接着剤は、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸系可塑剤を使用した感熱性ディレード型の接着剤に比較して、環境に対する負荷は少ないが、可塑能力、接着性、耐ブロッキング性およびタック発現期間持続性(粘着持続性)などの感熱性ディレード型接着剤としての性能の総合評価から、従来のフタル酸ジシクロヘキシルを使用した感熱性ディレード型接着剤に匹敵する十分な性能は得られない。そのために、その代替えの感熱性ディレード型の感熱性接着剤の提供が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐ブロッキング性、接着強度およびタック発現期間持続性に優れ、かつフタル酸エステル系可塑剤などの環境負荷となる製造原料を使用せず、従来のフタル酸ジシクロヘキシルを使用した感熱性ディレード型接着剤に匹敵、もしくはそれ以上の性能を有する感熱性ディレード型の感熱性接着剤およびその調製方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、ガラス転移点が−20℃〜100℃の熱可塑性樹脂の水分散体(a)(以下単に樹脂の水分散体aという)と、下記一般式(1)で表わされる化合物(b)(以下単に化合物bという)と、水性分散媒体(c)(以下単に媒体cという)とを含有することを特徴とする感熱性接着剤を提供する。
(X1〜X5は、メチル基、エチル基などのアルキル基、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基のいずれかを表わす。)
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記の樹脂の水分散体a、化合物bおよび媒体cから構成される接着剤が、耐ブロッキング性、接着強度およびタック発現期間持続性に優れ、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸系の可塑剤を使用した接着剤に匹敵もしくはそれ以上の性能を有する感熱性ディレード型の接着剤であることを見いだした。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明を主として特徴づける化合物bは、下記の一般式(1)で表わされる化合物である。
(X1〜X5は、メチル基、エチル基などのアルキル基、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基のいずれかを表わす。)
【0010】
上記の化合物bは、安息香酸およびその誘導体と、トリメチロールプロパンとを、エステル化反応触媒を添加して、公知の方法によるエステル化反応によって得られる反応生成物である。該化合物は、単体、もしくはそれらの混合物として使用することができる。該化合物から選ばれる少なくとも1種は、融点が60〜100℃、好ましくは75〜90℃で、可塑能力を有するものが好ましく使用される。なお、上記の反応生成物は、トリエステルを主成分とするが、上記の融点範囲であれば、ジエステルやモノエステルなどが混入していても使用することができる。
【0011】
上記の反応に使用される安息香酸またはその酸誘導体としては、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−エチル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸、2,6−ジメチル安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、2,4,5−トリメチル安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸などが挙げられる。
【0012】
前記の化合物bの融点が、前記上限を越える場合には、得られる接着剤の熱溶融時の熱活性ネルギーの増大や、前記化合物bが溶融している時間が短くなり、樹脂の水分散体aとの相溶性が難しくなり、また、相溶しても直に固まるために、粘着性の発現期間の短縮や接着力の低下が生じる。一方、前記化合物bの融点が上記下限未満の場合には、室温にて上記化合物が融解して、そのために、得られる接着剤にタックが発現してブロキングを起こす危険性がある。
【0013】
特に好ましい、前記の化合物bとしては、例えば、融点が86℃程度のトリメチロールプロパントリベンゾエイトが挙げられる。これらの化合物は、大八化学(株)から「BE33C」の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0014】
また、上記の化合物bは、単体でも使用することができるが、単体に比べて、活性化に必要なエネルギー低減や、得られる接着剤のタック発現期間の延長の目的で、本発明の目的を妨げない範囲において、化合物b以外で、融点が化合物bと同等および/または化合物bの融点より低い融点を有する可塑剤(d)(以下単に可塑剤dという)を配合することができ、好ましくは、化合物bの融点より20℃低い融点を有する可塑剤dが使用される。上記の可塑剤dは、環境に負荷が伴うフタル酸エステル系など以外の環境負荷が少ない可塑剤が使用される。上記の可塑剤dの融点が、化合物bの融点を越える場合には、熱溶融時の活性化に必要なエネルギーの増大や、タック発現期間が短くなる。一方、特に可塑剤dの融点が、化合物bの融点より20℃以上低い場合には、得られる接着剤の塗工物が室温でブロッキングを起こしやすい。
【0015】
上記の可塑剤dとしては、好ましくはヒンダードフェノール系化合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。該ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、融点が76〜79℃のトリエチレングリコール−ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、融点が63℃のチオジエチレンビス[3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]など、およびそれらの混合物が挙げられる。なお、上記の可塑剤dの化合物bへの配合割合は、好ましくは、化合物bと可塑剤dとの混合物の融点が、55℃〜90℃になる範囲である。
【0016】
本発明の接着剤を構成する前記の樹脂の水分散体aは、該樹脂のガラス転移点が−20℃〜100℃、好ましくは0℃±10℃の熱可塑性樹脂の水分散体であるエマルジョン型の樹脂(固形分40〜60重量%の水分散体)である。また、樹脂の水分散体aは、接着剤被膜にした場合に、室温にて粘着性を発現しないものが好ましい。
【0017】
上記の樹脂の水分散体aの該樹脂のガラス転移点が上記上限を越える場合には、粘着性の発現維持時間が極端に短く、また、粘着性を得るための熱活性エネルギーが高くなり、十分な接着性が得られない。一方、ガラス転移点が上記下限未満の場合には、接着剤を塗布した塗工物を巻き取った場合、或いは保管時に、接着剤塗布面と、接着剤が塗布されていない背面(印刷面も含む)が、温度変化や外圧などの要因によってブロッキングする危険性がある。
【0018】
上記の樹脂の水分散体aとしては、公知の熱可塑性樹脂が使用することができるが、好ましくは、例えば、酢酸ビニール系、アクリル系、スチレン系、ゴム系など、具体的には、ポリ酢酸ビニール、ポリメタクリル酸ブチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体など、好ましくはスチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびそれらの混合物が挙げられる。これらの樹脂の水分散体a(エマルジョン)としては、昭和高分子(株)から「ポリゾールTI−3052」、アビシア(株)から「ネオクリルBT−26」、大同化成(株)から「ビニゾール1412S」などの商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0019】
また、上記の樹脂の水分散体aと、前記の化合物b、または化合物bと可塑剤dとの混合物の配合割合は、a/(bまたはb+d)=2〜6/4〜8(固形分重量比)である。上記の配合割合が上記上限を超える場合には、得られる接着剤の造膜性および接着強度が低下する。一方、配合割合が上記下限未満の場合には、得られる接着剤の粘着力が低下する。
【0020】
本発明にて使用する媒体cは、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤を5〜10重量%含有する水溶液である。該媒体cは、樹脂の水分散体aと化合物bおよび可塑剤dとの均一分散性をよくし、熱溶融時の化合物bおよび可塑剤dと樹脂の水分散体aの樹脂との相溶性をよくする目的で、また、得られる接着剤の均一な塗布性と造膜性を得るために、あるいは添加剤として使用される粘着付与剤などの混合分散性をよくする目的で使用される。
【0021】
上記の界面活性剤としては公知のものが使用することができ、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのノニオン系またはアルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩などのアニオン系の界面活性剤が挙げられる。媒体cは、上記の界面活性剤を水道水、イオン交換水、純水などの水に均一に分散したものである。上記の界面活性剤は、サンノプコ(株)から、SN−ディスパーサント5045の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0022】
また、上記の媒体cに分散する前記の化合物b、または化合物bと可塑剤dとの混合物の配合割合は、bまたはb+d/c=40〜65/60〜35(重量比)、好ましくはbまたはb+d/c=50〜55/50〜45(重量比)である。上記の配合割合が、上記上限を越える場合には、粘度が上昇して流動性がわるくなり、bおよびdの分散度が低下する。一方、配合割合が、上記下限未満の場合には、得られる接着剤の接着力が低下する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、得られる接着剤に、さらに粘着付与剤を添加することができる。該粘着付与剤は、粘着力の補強および初期粘着強度の補強の目的で、必要に応じて添加される。上記の粘着付与剤としては、公知のものを使用することができるが、好ましくは、例えば、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンなどの天然ロジン、ロジンエステル、ロジン重合体、水添ロジンなどのロジン誘導体、脂肪族あるいは芳香族系の石油樹脂および共重合石油樹脂およびスチレン系樹脂、およびそれらの混合物の水分散体が挙げられる。これらの粘着付与剤は、固形分30〜60重量%の水分散体として提供されるものを使用する。これらの粘着剤は、荒川化学(株)から粘着付与剤「SE50」の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0024】
上記の粘着付与剤の配合割合は、前記の樹脂の水分散体a100重量部に対して30〜100重量部、好ましくは40〜80重量部である。粘着付与剤の配合割合が、上記上限を越える場合には、得られる接着剤の造膜性および耐ブロッキング性が低下する。一方、粘着付与剤の配合割合が、上記下限未満の場合には、目的とする粘着力の補強および初期粘着強度の補強の向上効果が得られない。
【0025】
本発明の接着剤は、他に、本発明の目的を妨げない範囲において、充填剤、分散剤、増粘剤などの添加剤を添加してもよく、それらの添加剤としては、例えば、酸化チタン、タルク、シリカ系、ベントナイト系などの無機質、シリコン系分散剤、天然ワックス、合成ワックスなどのワックス類などの有機質が挙げられる。本発明の接着剤は、前記の成分をよく均一に混練し、固形分45〜65重量%の水性エマルジョンまたは水性分散液として提供される。
【0026】
本発明の接着剤は、下記の調製方法(1)および(2)によって調製することができるが、各成分を安定した分散状態にするには調製方法(1)が好ましい。上記の調製方法(1)は、次の工程1および工程2からなる。すなわち、前記の化合物b、あるいは化合物bおよび可塑剤dを媒体cに均一に分散する工程1と、工程1から得られる分散液と樹脂の水分散体aとを均一に分散する工程2からなる。また、調製方法(2)は、媒体cに樹脂の水分散体aと、化合物bあるいは化合物bおよび可塑剤dとを同時に均一に分散する工程からなる。上記の調製方法(1)は、調製方法(2)に比較して、特に、化合物bを樹脂の水分散体aに安定して分散することができるため、得られる接着剤の接着強度、タック発現期間および塗膜性が均一に安定して得られる。
【0027】
本発明の接着剤を使用した塗工物は、コート紙、上質紙などの紙類、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムなどの基材の片面にグラビアコート、ロールコート、バーコートなどの通常の塗布方法にて、15〜25g/m2の塗工量で塗布し、40℃の雰囲気下にて乾燥して得られる。また、該塗工物を使用しての接着は、まず、塗工物を100〜120℃の雰囲気中を5〜10秒間通過させて、ディレードタック性を発現させ、金属、ガラス、および各種プラスチックの成形品、カートン類などにラベル類として貼り付ける。上記の得られる接着剤のディレードタック性の発現は、好ましくはタック発現期間として常温にて24時間〜36時間である。タック発現期間が上記上限を超える場合、接着剤の凝固時間が長過ぎて、接着固定に時間がかかり過ぎる。一方タック発現期間が、上記下限未満の場合には、接着作業性および十分な接着性が得られない。
【0028】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
実施例1
下記の各成分をよく撹拌分散混合し、本発明の接着剤を調製した。
・樹脂の水分散体a 35.00部
・化合物b 27.50部
・媒体c 22.50部
・粘着付与剤 15.00部
なお、上記成分は下記の通りである。
【0029】
(樹脂の水分散体a)
スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(昭和高分子(株)製、ボリゾールTI−3052、固形分50%水分散体)15.0部とスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(アビシア(株)製、ネオクリルBT−26、固形分40%水分散体)20.0部との混合物。
(化合物b)
トリメチロールプロパントリベンゾエイト
(媒体c)
アニオン系界面活性剤(サンノプコ(株)製、SN−ディスパーサント5045)5〜10%水溶液
(粘着付与剤)
ロジン誘導体(荒川化学(株)製、SE50、固形分50%水分散体)
【0030】
実施例2
実施例1における樹脂の水分散体aとして、下記の樹脂の水分散体aを使用した以外は実施例1と同様にして本発明の接着剤を調製した。
(樹脂の水分散体a)
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(大同化成(株)製、ビニゾール1412S、固形分50%水分散体)15.0部とスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(アビシア(株)製、ネオクリルBT−26、固形分40%水分散体)20.0部との混合物。
【0031】
実施例3
実施例2において、化合物bの配合量を17.50部に、また、粘着付与剤の配合量を20.00部に代えて、さらに可塑剤dとして下記の成分を配合する以外は、実施例2と同様にして本発明の接着剤を調製した。
・樹脂の水分散体a 35.00部
・化合物b 17.50部
・媒体c 22.50部
・可塑剤d 10.00部
・粘着付与剤 20.00部
なお、上記の可塑剤dの成分は下記の通りである。
(可塑剤d)
トリエチレングリコール−ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
【0032】
比較例1
実施例1における化合物bに代えて、フタル酸ジシクロヘキシルを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例の接着剤を調製した。
【0033】
比較例2
実施例2における化合物bに代えて、フタル酸ジシクロヘキシルを使用した以外は、実施例2と同様にして比較例の接着剤を調製した。
【0034】
上記で得られた各々の接着剤をコート紙の裏面に20g/m2の塗工量で、塗布し、40℃で2分間乾燥し、塗工物とした。各塗工物について耐ブロッキング性、接着強度およびタック発現期間に関して下記の測定方法により評価した。評価結果を表1に示す。
(耐ブロッキング性)
各塗工物の塗工面に、予めコート紙にグラビア印刷した印刷物の印刷面を重ね、3Kg/cm2の荷重をかけて40℃で12時間放置した。放置後、双方のコート紙を塗工物と印刷部の重ね部分から剥離して、その剥離状態を下記の基準で判定した。
<評価点>
5:剥離に抵抗がない。
4:剥離時に若干音がして、剥離に少し抵抗がある。
3:剥離時に連続的な音がして、剥離抵抗が大きい。
2:一部紙剥けが認められる。
1:完全に接着しており、剥離しない。
【0035】
(接着強度(剥離強度))
各塗工物を120℃のオーブン中で15秒間加熱後、直ちにガラス板に貼り付けた。2時間放置後、180度剥離試験(JIS K−6848)を行い、剥離強度を測定した。
【0036】
(タック発現期間)
各塗工物を100℃のオーブン中で10秒間加熱後、塗工物をオーブンから取り出し、常温下にて放置し、塗工物の接着面の指触タックが消失するまでの時間を測定した。
【0037】
上記表中の−*は、紙剥けして測定不可の状態を示す。
【0038】
【発明の効果】
本発明の接着剤は、高性能の耐ブロッキング性および接着強度を有し、また、熱活性化に必要なエネルギーの低減と、タック発現期間の延長ができ、かつ接着剤の原料として、フタル酸エステル系の可塑剤を使用しないなど、環境に対する負荷を少なくすることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱によって粘着性が発現し、加熱源を取り去っても一定時間、粘着性が持続する感熱性ディレード型の接着剤において、耐ブロッキング性、接着強度および粘着持続性に優れ、かつフタル酸エステル系などの環境負荷となる原料を使用しないディレード型の感熱性接着剤およびその調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、感熱性ディレード型接着剤に使用する熱可塑性樹脂は、非活性時の耐ブロッキング性をもたせるために、一般的な接着剤用途の樹脂と比較してガラス転移温度および最低造膜温度が高く、常温では粘着性を示さない。このような樹脂のガラス転移温度および最低造膜温度をさらに低く設定する目的で可塑剤を添加する。これらの可塑剤は、常温では樹脂に可塑性を与えず、加熱によって溶融して樹脂中に溶融して樹脂を軟化させ、樹脂を溶融後は、固化するまで一定時間粘着剤に粘着性を発現および維持する機能を有する。
【0003】
上記の固形可塑剤としては、主に、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジヒドロアビエチル、フタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジメチルなど、好ましくはフタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸エステル系;安息香酸スクロース、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリスリットなどの安息香酸エステル系、八酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホン酸アミドなどのスルホンアミド系などが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記の可塑剤を使用した接着剤は、経時的に徐々に接着剤層からこれらの可塑剤が抜け出し、抜けた可塑剤が、被着体を汚すなど、他に悪影響を及ぼす。特に、感熱性ディレード型の接着剤の樹脂との相溶性や融点などの性能面から好ましく使用されている上記のフタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸系の可塑剤は、最近、環境庁の「外因性内分泌撹乱物質問題に関する研究中間報告書」において、内分泌撹乱性を有すると疑われる物質としてリストアップされ、環境上問題があると指摘されている。上記のフタル酸系の可塑剤を使用した接着剤から可塑剤がブリードアウトして、人体に接触したり、該接着剤を使用した包装体から、食品などの内容物に可塑剤が移行して、体内に侵入する危険性や、使用した包装体を廃棄処分した場合の環境汚染や該接着剤の調製作業、該接着剤を使用する加工作業などの作業環境にも悪影響を及ぼす。
【0005】
一方、前記のフタル酸系以外の固形可塑剤を使用した感熱性ディレード型の接着剤が提案されているが、該接着剤は、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸系可塑剤を使用した感熱性ディレード型の接着剤に比較して、環境に対する負荷は少ないが、可塑能力、接着性、耐ブロッキング性およびタック発現期間持続性(粘着持続性)などの感熱性ディレード型接着剤としての性能の総合評価から、従来のフタル酸ジシクロヘキシルを使用した感熱性ディレード型接着剤に匹敵する十分な性能は得られない。そのために、その代替えの感熱性ディレード型の感熱性接着剤の提供が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐ブロッキング性、接着強度およびタック発現期間持続性に優れ、かつフタル酸エステル系可塑剤などの環境負荷となる製造原料を使用せず、従来のフタル酸ジシクロヘキシルを使用した感熱性ディレード型接着剤に匹敵、もしくはそれ以上の性能を有する感熱性ディレード型の感熱性接着剤およびその調製方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、ガラス転移点が−20℃〜100℃の熱可塑性樹脂の水分散体(a)(以下単に樹脂の水分散体aという)と、下記一般式(1)で表わされる化合物(b)(以下単に化合物bという)と、水性分散媒体(c)(以下単に媒体cという)とを含有することを特徴とする感熱性接着剤を提供する。
(X1〜X5は、メチル基、エチル基などのアルキル基、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基のいずれかを表わす。)
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記の樹脂の水分散体a、化合物bおよび媒体cから構成される接着剤が、耐ブロッキング性、接着強度およびタック発現期間持続性に優れ、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸系の可塑剤を使用した接着剤に匹敵もしくはそれ以上の性能を有する感熱性ディレード型の接着剤であることを見いだした。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明を主として特徴づける化合物bは、下記の一般式(1)で表わされる化合物である。
(X1〜X5は、メチル基、エチル基などのアルキル基、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基のいずれかを表わす。)
【0010】
上記の化合物bは、安息香酸およびその誘導体と、トリメチロールプロパンとを、エステル化反応触媒を添加して、公知の方法によるエステル化反応によって得られる反応生成物である。該化合物は、単体、もしくはそれらの混合物として使用することができる。該化合物から選ばれる少なくとも1種は、融点が60〜100℃、好ましくは75〜90℃で、可塑能力を有するものが好ましく使用される。なお、上記の反応生成物は、トリエステルを主成分とするが、上記の融点範囲であれば、ジエステルやモノエステルなどが混入していても使用することができる。
【0011】
上記の反応に使用される安息香酸またはその酸誘導体としては、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−エチル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸、2,6−ジメチル安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、2,4,5−トリメチル安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸などが挙げられる。
【0012】
前記の化合物bの融点が、前記上限を越える場合には、得られる接着剤の熱溶融時の熱活性ネルギーの増大や、前記化合物bが溶融している時間が短くなり、樹脂の水分散体aとの相溶性が難しくなり、また、相溶しても直に固まるために、粘着性の発現期間の短縮や接着力の低下が生じる。一方、前記化合物bの融点が上記下限未満の場合には、室温にて上記化合物が融解して、そのために、得られる接着剤にタックが発現してブロキングを起こす危険性がある。
【0013】
特に好ましい、前記の化合物bとしては、例えば、融点が86℃程度のトリメチロールプロパントリベンゾエイトが挙げられる。これらの化合物は、大八化学(株)から「BE33C」の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0014】
また、上記の化合物bは、単体でも使用することができるが、単体に比べて、活性化に必要なエネルギー低減や、得られる接着剤のタック発現期間の延長の目的で、本発明の目的を妨げない範囲において、化合物b以外で、融点が化合物bと同等および/または化合物bの融点より低い融点を有する可塑剤(d)(以下単に可塑剤dという)を配合することができ、好ましくは、化合物bの融点より20℃低い融点を有する可塑剤dが使用される。上記の可塑剤dは、環境に負荷が伴うフタル酸エステル系など以外の環境負荷が少ない可塑剤が使用される。上記の可塑剤dの融点が、化合物bの融点を越える場合には、熱溶融時の活性化に必要なエネルギーの増大や、タック発現期間が短くなる。一方、特に可塑剤dの融点が、化合物bの融点より20℃以上低い場合には、得られる接着剤の塗工物が室温でブロッキングを起こしやすい。
【0015】
上記の可塑剤dとしては、好ましくはヒンダードフェノール系化合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。該ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、融点が76〜79℃のトリエチレングリコール−ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、融点が63℃のチオジエチレンビス[3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]など、およびそれらの混合物が挙げられる。なお、上記の可塑剤dの化合物bへの配合割合は、好ましくは、化合物bと可塑剤dとの混合物の融点が、55℃〜90℃になる範囲である。
【0016】
本発明の接着剤を構成する前記の樹脂の水分散体aは、該樹脂のガラス転移点が−20℃〜100℃、好ましくは0℃±10℃の熱可塑性樹脂の水分散体であるエマルジョン型の樹脂(固形分40〜60重量%の水分散体)である。また、樹脂の水分散体aは、接着剤被膜にした場合に、室温にて粘着性を発現しないものが好ましい。
【0017】
上記の樹脂の水分散体aの該樹脂のガラス転移点が上記上限を越える場合には、粘着性の発現維持時間が極端に短く、また、粘着性を得るための熱活性エネルギーが高くなり、十分な接着性が得られない。一方、ガラス転移点が上記下限未満の場合には、接着剤を塗布した塗工物を巻き取った場合、或いは保管時に、接着剤塗布面と、接着剤が塗布されていない背面(印刷面も含む)が、温度変化や外圧などの要因によってブロッキングする危険性がある。
【0018】
上記の樹脂の水分散体aとしては、公知の熱可塑性樹脂が使用することができるが、好ましくは、例えば、酢酸ビニール系、アクリル系、スチレン系、ゴム系など、具体的には、ポリ酢酸ビニール、ポリメタクリル酸ブチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体など、好ましくはスチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびそれらの混合物が挙げられる。これらの樹脂の水分散体a(エマルジョン)としては、昭和高分子(株)から「ポリゾールTI−3052」、アビシア(株)から「ネオクリルBT−26」、大同化成(株)から「ビニゾール1412S」などの商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0019】
また、上記の樹脂の水分散体aと、前記の化合物b、または化合物bと可塑剤dとの混合物の配合割合は、a/(bまたはb+d)=2〜6/4〜8(固形分重量比)である。上記の配合割合が上記上限を超える場合には、得られる接着剤の造膜性および接着強度が低下する。一方、配合割合が上記下限未満の場合には、得られる接着剤の粘着力が低下する。
【0020】
本発明にて使用する媒体cは、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤を5〜10重量%含有する水溶液である。該媒体cは、樹脂の水分散体aと化合物bおよび可塑剤dとの均一分散性をよくし、熱溶融時の化合物bおよび可塑剤dと樹脂の水分散体aの樹脂との相溶性をよくする目的で、また、得られる接着剤の均一な塗布性と造膜性を得るために、あるいは添加剤として使用される粘着付与剤などの混合分散性をよくする目的で使用される。
【0021】
上記の界面活性剤としては公知のものが使用することができ、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのノニオン系またはアルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩などのアニオン系の界面活性剤が挙げられる。媒体cは、上記の界面活性剤を水道水、イオン交換水、純水などの水に均一に分散したものである。上記の界面活性剤は、サンノプコ(株)から、SN−ディスパーサント5045の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0022】
また、上記の媒体cに分散する前記の化合物b、または化合物bと可塑剤dとの混合物の配合割合は、bまたはb+d/c=40〜65/60〜35(重量比)、好ましくはbまたはb+d/c=50〜55/50〜45(重量比)である。上記の配合割合が、上記上限を越える場合には、粘度が上昇して流動性がわるくなり、bおよびdの分散度が低下する。一方、配合割合が、上記下限未満の場合には、得られる接着剤の接着力が低下する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、得られる接着剤に、さらに粘着付与剤を添加することができる。該粘着付与剤は、粘着力の補強および初期粘着強度の補強の目的で、必要に応じて添加される。上記の粘着付与剤としては、公知のものを使用することができるが、好ましくは、例えば、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンなどの天然ロジン、ロジンエステル、ロジン重合体、水添ロジンなどのロジン誘導体、脂肪族あるいは芳香族系の石油樹脂および共重合石油樹脂およびスチレン系樹脂、およびそれらの混合物の水分散体が挙げられる。これらの粘着付与剤は、固形分30〜60重量%の水分散体として提供されるものを使用する。これらの粘着剤は、荒川化学(株)から粘着付与剤「SE50」の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0024】
上記の粘着付与剤の配合割合は、前記の樹脂の水分散体a100重量部に対して30〜100重量部、好ましくは40〜80重量部である。粘着付与剤の配合割合が、上記上限を越える場合には、得られる接着剤の造膜性および耐ブロッキング性が低下する。一方、粘着付与剤の配合割合が、上記下限未満の場合には、目的とする粘着力の補強および初期粘着強度の補強の向上効果が得られない。
【0025】
本発明の接着剤は、他に、本発明の目的を妨げない範囲において、充填剤、分散剤、増粘剤などの添加剤を添加してもよく、それらの添加剤としては、例えば、酸化チタン、タルク、シリカ系、ベントナイト系などの無機質、シリコン系分散剤、天然ワックス、合成ワックスなどのワックス類などの有機質が挙げられる。本発明の接着剤は、前記の成分をよく均一に混練し、固形分45〜65重量%の水性エマルジョンまたは水性分散液として提供される。
【0026】
本発明の接着剤は、下記の調製方法(1)および(2)によって調製することができるが、各成分を安定した分散状態にするには調製方法(1)が好ましい。上記の調製方法(1)は、次の工程1および工程2からなる。すなわち、前記の化合物b、あるいは化合物bおよび可塑剤dを媒体cに均一に分散する工程1と、工程1から得られる分散液と樹脂の水分散体aとを均一に分散する工程2からなる。また、調製方法(2)は、媒体cに樹脂の水分散体aと、化合物bあるいは化合物bおよび可塑剤dとを同時に均一に分散する工程からなる。上記の調製方法(1)は、調製方法(2)に比較して、特に、化合物bを樹脂の水分散体aに安定して分散することができるため、得られる接着剤の接着強度、タック発現期間および塗膜性が均一に安定して得られる。
【0027】
本発明の接着剤を使用した塗工物は、コート紙、上質紙などの紙類、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムなどの基材の片面にグラビアコート、ロールコート、バーコートなどの通常の塗布方法にて、15〜25g/m2の塗工量で塗布し、40℃の雰囲気下にて乾燥して得られる。また、該塗工物を使用しての接着は、まず、塗工物を100〜120℃の雰囲気中を5〜10秒間通過させて、ディレードタック性を発現させ、金属、ガラス、および各種プラスチックの成形品、カートン類などにラベル類として貼り付ける。上記の得られる接着剤のディレードタック性の発現は、好ましくはタック発現期間として常温にて24時間〜36時間である。タック発現期間が上記上限を超える場合、接着剤の凝固時間が長過ぎて、接着固定に時間がかかり過ぎる。一方タック発現期間が、上記下限未満の場合には、接着作業性および十分な接着性が得られない。
【0028】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
実施例1
下記の各成分をよく撹拌分散混合し、本発明の接着剤を調製した。
・樹脂の水分散体a 35.00部
・化合物b 27.50部
・媒体c 22.50部
・粘着付与剤 15.00部
なお、上記成分は下記の通りである。
【0029】
(樹脂の水分散体a)
スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(昭和高分子(株)製、ボリゾールTI−3052、固形分50%水分散体)15.0部とスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(アビシア(株)製、ネオクリルBT−26、固形分40%水分散体)20.0部との混合物。
(化合物b)
トリメチロールプロパントリベンゾエイト
(媒体c)
アニオン系界面活性剤(サンノプコ(株)製、SN−ディスパーサント5045)5〜10%水溶液
(粘着付与剤)
ロジン誘導体(荒川化学(株)製、SE50、固形分50%水分散体)
【0030】
実施例2
実施例1における樹脂の水分散体aとして、下記の樹脂の水分散体aを使用した以外は実施例1と同様にして本発明の接着剤を調製した。
(樹脂の水分散体a)
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(大同化成(株)製、ビニゾール1412S、固形分50%水分散体)15.0部とスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(アビシア(株)製、ネオクリルBT−26、固形分40%水分散体)20.0部との混合物。
【0031】
実施例3
実施例2において、化合物bの配合量を17.50部に、また、粘着付与剤の配合量を20.00部に代えて、さらに可塑剤dとして下記の成分を配合する以外は、実施例2と同様にして本発明の接着剤を調製した。
・樹脂の水分散体a 35.00部
・化合物b 17.50部
・媒体c 22.50部
・可塑剤d 10.00部
・粘着付与剤 20.00部
なお、上記の可塑剤dの成分は下記の通りである。
(可塑剤d)
トリエチレングリコール−ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
【0032】
比較例1
実施例1における化合物bに代えて、フタル酸ジシクロヘキシルを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例の接着剤を調製した。
【0033】
比較例2
実施例2における化合物bに代えて、フタル酸ジシクロヘキシルを使用した以外は、実施例2と同様にして比較例の接着剤を調製した。
【0034】
上記で得られた各々の接着剤をコート紙の裏面に20g/m2の塗工量で、塗布し、40℃で2分間乾燥し、塗工物とした。各塗工物について耐ブロッキング性、接着強度およびタック発現期間に関して下記の測定方法により評価した。評価結果を表1に示す。
(耐ブロッキング性)
各塗工物の塗工面に、予めコート紙にグラビア印刷した印刷物の印刷面を重ね、3Kg/cm2の荷重をかけて40℃で12時間放置した。放置後、双方のコート紙を塗工物と印刷部の重ね部分から剥離して、その剥離状態を下記の基準で判定した。
<評価点>
5:剥離に抵抗がない。
4:剥離時に若干音がして、剥離に少し抵抗がある。
3:剥離時に連続的な音がして、剥離抵抗が大きい。
2:一部紙剥けが認められる。
1:完全に接着しており、剥離しない。
【0035】
(接着強度(剥離強度))
各塗工物を120℃のオーブン中で15秒間加熱後、直ちにガラス板に貼り付けた。2時間放置後、180度剥離試験(JIS K−6848)を行い、剥離強度を測定した。
【0036】
(タック発現期間)
各塗工物を100℃のオーブン中で10秒間加熱後、塗工物をオーブンから取り出し、常温下にて放置し、塗工物の接着面の指触タックが消失するまでの時間を測定した。
【0037】
上記表中の−*は、紙剥けして測定不可の状態を示す。
【0038】
【発明の効果】
本発明の接着剤は、高性能の耐ブロッキング性および接着強度を有し、また、熱活性化に必要なエネルギーの低減と、タック発現期間の延長ができ、かつ接着剤の原料として、フタル酸エステル系の可塑剤を使用しないなど、環境に対する負荷を少なくすることができる。
Claims (15)
- さらに、化合物(b)以外で、融点が化合物(b)の融点と同等および/または化合物(b)の融点より低い融点を有する可塑剤(d)を含有する請求項1に記載の感熱性接着剤。
- 熱可塑性樹脂の水分散体(a)と、化合物(b)または化合物(b)と可塑剤(d)との混合物の配合割合がa/(bまたはb+d)=2〜6/4〜8(固形分重量比)である請求項1または2に記載の感熱性接着剤。
- 化合物(b)または化合物(b)と可塑剤(d)との混合物と水性分散媒体(c)の配合割合が、(bまたはb+d)/c=40〜65/60〜35(重量比)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱性接着剤。
- 熱可塑性樹脂の水分散体(a)が、エマルジョン型熱可塑性樹脂である請求項1または3に記載の感熱性接着剤。
- 熱可塑性樹脂の水分散体(a)が、ポリ酢酸ビニール、ポリメタクリル酸ブチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−塩化ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1、3および5のいずれか1項に記載の感熱性接着剤。
- 化合物(b)の融点が、60〜100℃である請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱性接着剤。
- 化合物(b)が、トリメチロールプロパントリベゾエイトである求項1〜4および7のいずれか1項に記載の感熱性接着剤。
- 水性分散媒体(c)が、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤を5〜10重量%含有する水溶液である請求項1または4に記載の感熱性接着剤。
- 可塑剤(d)が、ヒンダードフェノール系化合物である請求項2〜4のいずれか1項に記載の感熱性接着剤。
- さらに粘着付与剤を含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の感熱性接着剤。
- 粘着付与剤が、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンなどの天然ロジン、ロジンエステル、ロジン重合体、水添ロジンなどのロジン誘導体、脂肪族あるいは芳香族系の石油樹脂および共重合石油樹脂、スチレン系樹脂、およびそれらの混合物の水分散体である請求項11に記載の感熱性接着剤。
- 固形分が、45〜65重量%である請求項1〜12のいずれか1項に記載の感熱性接着剤。
- タック発現期間が、常温にて24時間〜36時間である請求項1〜13のいずれか1項に記載の感熱性接着剤。
- 化合物(b)あるいは化合物(b)および可塑剤(d)を水性分散媒体(c)に均一に分散する工程1と、工程1から得られる分散液と熱可塑性樹脂の水分散体(a)とを均一に混練分散する工程2からなることを特徴とする感熱性接着剤の調製方法。
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JP2009122648A (ja) * | 2007-10-26 | 2009-06-04 | Fuji Seal International Inc | 感熱ラベルおよびラベル付き容器 |
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-
2003
- 2003-03-28 JP JP2003091061A patent/JP2004002772A/ja active Pending
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