JP2004002744A - オレフィン系重合体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】オレフィン系重合体は、n−デカン可溶分量が10重量%以下であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が5重量ppb以下である。オレフィン系重合体の製造方法は、流動層反応器を用いて、オレフィンを気相にて(共)重合してオレフィン系重合体を製造する方法であって、上記流動層反応器中に飽和炭化水素を2〜30モル%の濃度で存在させながらオレフィンを(共)重合する重合工程と、得られた(共)重合体を、配位子分解剤に接触させる工程と、配位子分解剤と接触させた上記(共)重合体を加熱する工程からなる配位子除去工程とを有する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン系重合体およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、臭気を発生するような成分、味を変化させるような成分の含有量が少ないオレフィン系重合体およびこのようなオレフィン系重合体を効率よく製造することができるようなオレフィン系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体などのオレフィン系重合体は、各種成形用材料などとして広く利用されている。オレフィン系重合体は、その用途により要求される特性も異なり、例えば食品用途では、微妙な臭いや味が重視されるため、食品の風味を損なわないことが要求される。
【0003】
ところで、オレフィン系重合体の製造を固体状触媒の存在下にオレフィンの重合を気相重合法で行うと、重合体を粒子状で得ることができ、重合後のポリマー析出工程あるいは溶媒分離工程などが不要となる。したがって製造プロセスを簡略化することができ、製造コストを低減できることが知られている。しかしながら、気相重合法で製造されたオレフィン系重合体は、加熱加工する際に臭いを発生することがあり、特に微妙な臭いや味を重視する食品用途では風味などに影響することがあるため、このような用途には使用が制限されることがあった。
【0004】
気相重合法により得られたオレフィン系重合体の臭気、および食品用途に使用された場合の味への影響を低減させる方法としては、例えば特開平10−45824号公報に、メタロセン触媒を用いて得られたオレフィン系重合体を、水蒸気等と接触させて重合体中のシクロペンタジエニル配位子を分解することにより、成形時にオレフィン系重合体から発生する臭気を低減させる方法が記載されている。
【0005】
このような方法により、オレフィン系重合体の臭気をかなり低減することができるが、近年食品用途等ではさらなる臭気の低減が望まれている。
このような状況のもと、本発明者が検討した結果、オレフィン系重合体を気相重合法により製造するに際し、流動層反応器中に飽和脂肪族炭化水素を存在させながら重合反応を行い、かつ得られた重合体を水蒸気等と接触させることにより臭気が大きく低減されることを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち本発明は、臭気を発生するような成分、味を変化させるような成分の含有量が少ないオレフィン系重合体およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るオレフィン系重合体は、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを、メタロセン系触媒の存在下で重合して得られるオレフィン系の(共)重合体であって、n−デカン可溶分量が10重量%以下であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が5重量ppb以下であることを特徴としている。
【0008】
上記オレフィン系重合体は、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
また、上記オレフィン系重合体は、密度が0.930g/cm3以下であることが好ましい。
【0009】
さらに、上記オレフィン系重合体は、流動層反応器を用いて、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィンを気相にて(共)重合することにより得られたものであることが好ましい。さらにまた、上記オレフィン系重合体は、流動層反応器中に炭素原子数2〜10の飽和脂肪族炭化水素を2〜30モル%の濃度で存在させながら、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィンを(共)重合し、次いで得られた(共)重合体を、配位子分解剤に接触させ、次いで配位子分解剤と接触させた上記(共)重合体を加熱することにより得られたものであることが好ましい。
【0010】
本発明に係るオレフィン系重合体の製造方法は、流動層反応器を用いて、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィンを、メタロセン系触媒の存在下、気相にて(共)重合してオレフィン系重合体を製造する方法であって、
上記流動層反応器中に飽和脂肪族炭化水素を2〜30モル%の濃度で存在させながらオレフィンを(共)重合する重合工程と、
得られた(共)重合体を、配位子分解剤に接触させる工程と、配位子分解剤と接触させた上記(共)重合体を加熱する工程からなる配位子除去工程とを
有することを特徴としている。
【0011】
本発明では、上記飽和脂肪族炭化水素を流動層反応器中に気−液二相共存状態で供給することが好ましい。
上記オレフィン系重合体の製造方法により、n−デカン可溶分量が10重量%以下であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が5重量ppb以下であるオレフィン系重合体を製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るオレフィン系重合体およびその製造方法について具体的に説明する。
なお本発明において、「重合」という語は単独重合のみならず共重合を包含した意味で用いられることがあり、また「重合体」という語は単独重合体のみならず、共重合体を包含した意味で用いられることがある。
【0013】
[オレフィン系重合体]
本発明に係るオレフィン系重合体は、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種または2種以上のオレフィンの(共)重合体である。
ここで炭素原子数3〜20のα−オレフィンとして具体的には、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのうちでも、炭素原子数3〜10、特に5〜8のα−オレフィンが好ましく用いられる。
【0014】
これらのエチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれるオレフィンは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、オレフィン系重合体は、好ましくはエチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体、より好ましくはエチレンと、炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体である。
【0015】
本発明に係るオレフィン系重合体が、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも2種以上のモノマーの共重合体である場合に、各構成単位の含有割合は特に限定されないが、例えば共重合体がエチレンと、α−オレフィンとの共重合体である場合には、エチレンから導かれる構成単位を80〜99.6モル%、好ましくは93.8〜98モル%、α−オレフィンから導かれる構成単位を0.4〜20モル%、好ましくは2〜6.2モル%の割合で含有することが望ましい。
【0016】
また本発明では、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位とともに必要に応じてポリエン類などから導かれる構成単位を含有していてもよく、例えばブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類から導かれる構成単位を含有していてもよい。
【0017】
本発明に係るオレフィン系重合体は、n−デカン可溶分量10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。なお、n−デカン可溶分量の下限値は、0重量%であることが好ましいが、実質的には測定限界の0.1重量%である。
n−デカン可溶分量が上記範囲内にあるオレフィン系重合体は、オリゴマー等の低分子量成分の含有量が少ないため、成形時に臭気が発生することが少なく、またオレフィン系重合体を食品用途に使用したときに、微妙な臭いや味を損なうことが少ない。
【0018】
n−デカン可溶分量は、以下のようにして測定される。すなわち、攪拌装置付1リットルのフラスコに、重合体試料3g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール20mg、n−デカン500mlを入れ、145℃の油浴上で加熱溶解させる。重合体試料が溶解した後、約8時間かけて室温まで冷却し、続いて23℃の水浴上で8時間保持する。析出した重合体(n−デカン不溶部)と、溶解ポリマーを含むn−デカン溶液とをG−4(またはG−2)のグラスフィルターで濾過分離する。このようにして得られた溶液を10mmHg、150℃の条件で加熱してn−デカン溶液に溶解していたポリマーを定量になるまで乾燥し、その重量をn−デカン可溶成分量とする。
【0019】
また、本発明に係るに係るオレフィン系重合体は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が5重量ppb以下、好ましくは2重量ppb以下、より好ましくは1重量ppb以下である。なお、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量の下限値は、0重量ppbであることが好ましいが、実質的には測定限界の1重量ppbである。
【0020】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が上記範囲内にあると、成形時に臭気が発生することが少なく、またオレフィン系重合体を食品用途に使用したときに、微妙な臭いや味を損なうことが少ない。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量は、以下のようにして測定される。すなわち、トルエンを用いてシクロペンタジエニル骨格を有する配位子の抽出を行い、検量線法を用いてガスマスにより同定および定量を行う。
【0021】
本発明に係るオレフィン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量が通常1,250〜8,500の範囲にあり、Mw/Mnが通常1.8〜3.5、好ましくは1.9〜2.3の範囲にあり、密度勾配管法で測定した密度が通常0.930g/cm3以下、好ましくは0.880〜0.930g/cm3の範囲にある。
【0022】
上述したような、本発明に係るオレフィン系重合体は、例えば流動層反応器を用いて、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィンを気相にて(共)重合することにより得られる。
より具体的には、後述するように、流動層反応器中に飽和脂肪族炭化水素を存在させながら、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィンを(共)重合し、次いで得られた(共)重合体を、配位子分解剤に接触させ、次いで配位子分解剤と接触させた上記(共)重合体を加熱することにより得られる。
【0023】
[オレフィン系重合体の製造方法]
本発明に係るオレフィン系重合体の製造方法は、流動層反応器中に飽和脂肪族炭化水素を存在させながらオレフィンを(共)重合する重合工程と、
得られた(共)重合体を、配位子分解剤に接触させ、次いで配位子分解剤と接触させた上記(共)重合体を加熱する配位子除去工程とを有する。
【0024】
(重合工程)
重合工程では、流動層反応器内を流通する重合モノマーを含むガス流によって触媒を含む固体粒子が流動状態に保持された流動層において、触媒の存在下に重合モノマーとしてのエチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィン(重合モノマー)とを気相で重合させてオレフィン系重合体を製造するに際して、重合モノマーとともに、気−液混合状態の飽和脂肪族炭化水素とを、流動層反応器の底部から導入して重合反応を行っている。
【0025】
ここで図1を参照しながら重合工程を具体的に説明する。なお、図1は重合工程を示しており、配位子分解工程は省略されている。
重合工程では、流動層反応器11内において、触媒をライン15から供給し、また供給ライン12から供給された重合モノマーおよび飽和脂肪族炭化水素を、反応器下部の供給口9から反応器下部に設けられた多孔板などの分散板17から流動層18へ吹き込み、反応器上部のライン16から排出させることにより反応器内を流通させて、このガス流(流動化ガス)によって固体粒子(固体触媒および生成ポリマー)を流動状態に保持することにより流動層(反応系)18が形成される。
【0026】
このような流動層18において、エチレンおよび炭素原子数3〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合により生成したポリマー粒子は、反応器から抜出ライン10を介して連続的または断続的に抜き出され後述する配位子分解工程に供給される。
一方反応器11からライン16を介して排出されるガスは、未反応重合モノマーおよび飽和脂肪族炭化水素などを含有しており、通常、冷却された後循環ガスとして供給口9を介して反応器11に循環される。
【0027】
上記のように供給口9からは重合モノマーおよび循環ガスからなる流動化ガスが反応器11に導入され、通常該ガスにより流動層18を流動状態に保持することができるような流量で流通されるが、具体的に供給口9から導入されるガス量は、流動層の最小流動化速度をUmfとするとき、約3Umf〜50Umf程度、好ましくは約5Umf〜30Umf程度の流量であることが望ましい。流動層18を機械的に攪拌することもでき、例えばイカリ型攪拌機、スクリュウ型攪拌機、リボン型攪拌機など種々の型式の攪拌機を用いて攪拌することができる。
【0028】
重合工程では、重合を反応条件を変えて2段以上に分けて行うこともできる。次に、図2を参照しながら重合を2段以上で行う場合の重合工程を具体的に説明する。なお、図2は、重合工程のみを示しており、配位子分解工程は省略されている。
重合を2段以上で行う場合、例えば重合を直列に連結された2器の気相流動層反応器を有する多段気相重合装置で行う場合には、重合は以下のように行われる。
【0029】
多段気相重合装置は、例えば図2に示すように、第1の流動層反応器11と第2の流動層反応器21とが直列に連結されている。
すなわち、第1の流動層反応器11には、触媒が供給ライン15より供給されるとともに、ガス状のオレフィン(重合モノマー)および飽和脂肪族炭化水素を含むガス(流動化ガス)が供給ライン12からブロワー13を介して第1の流動層反応器11の底部から供給されるようになっている。この供給された流動化ガスは、第1の流動層反応器11の底部近傍に配設した多孔板などからなる分散板17を通って流動層18へ吹き込まれ、流動層反応器11の上部から排出されることにより流動層反応器11内を通過する。この流動層反応器11内を通過するガスのガス流によって固体粒子(固体触媒および生成ポリマー)は流動状態に保持され流動層18が形成される。
【0030】
そして、生成したポリマー粒子は、連続的または間欠的に抜き出され、固気分離容器31および32にて固気分離される。この際、弁33および34は、適宜開閉制御される。このようにして抜き出されたポリマー粒子は、弁35の作動によって、搬送ライン25に放出され、搬送ライン25を通って第2の流動層反応器21に送られるようになっている。
【0031】
また、流動層18を通過した未反応のガス状のオレフィン、飽和脂肪族炭化水素などは、第1の流動層反応器11の上方部分に設けられた減速領域19において、その流速が低減されて、第1の流動層反応器11の上部に設けられたガス出口を介して、第1の流動層反応器11の外部に排出されるようになっている。
この第1の流動層反応器11から排出された未反応のガス状のオレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素などは、循環ライン16を通って熱交換器(冷却装置)14で冷却されて、供給ライン12と合流し、ブロワー13により再び第1の流動層反応器11内の流動層18内に連続的に供給されるようになっている。熱交換器14では、通常循環ガスが当該ガスの露点近傍の温度まで冷却される。露点は、液状凝縮物がガス中に生成しはじめる温度である。循環ガスを露点以下の温度に冷却し、流動層18内に供給すると、液状凝縮物の蒸発潜熱により反応熱を除去することができ、流動層18内の除熱効率を向上させることができる。なお循環ガスを第1の流動層反応器11に循環させる際には、循環ガスの一部を循環ライン16の任意の場所からからパージしてもよい。
【0032】
一方、第2の流動層反応器21には、第1の流動層反応器11より、抜き出しライン30から、固気分離容器31および32を介して抜き出されたポリマー粒子が、搬送ライン25を介して送られる。搬送ライン25は、供給ライン22から分岐しており、他端は第2の流動層反応器21の上方に接続されており、供給ライン22から送られるオレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素を含むガスを、遠心式ブロワー41などの昇圧手段により昇圧するとともに、第1の流動層反応器11から抜き出されたポリマー粒子をこのガスに随伴させて搬送して、第2の流動層反応器21に導入するようになっている。また新たなガス状オレフィン(重合モノマー)および飽和脂肪族炭化水素が、供給ライン22からブロワー23を介して、搬送ライン25によって第2の流動層反応器21に供給されるとともに、流動化ガスとして第2の流動層反応器21の底部から供給されるようになっている。なお、第2の流動層反応器21には、通常新たな固体触媒は供給されないが、必要に応じて新たな固体触媒を流動層反応器の任意の場所、例えば搬送ライン25を介して供給してもよい。
【0033】
この第2の流動層反応器21の底部から供給された流動化ガスは、第2の流動層反応器21の底部近傍に配設した多孔板などからなる分散板27を通って流動層28へ吹き込まれ、流動層反応器21の上部から排出されることにより流動層反応器21内を通過する。この流動層反応器21内を通過するガスのガス流によって固体粒子(上記ポリマー粒子および生成ポリマー)は流動状態に保持され流動層28が形成される。このとき、流動層28内で共重合反応が行われる。
【0034】
そして、第2の流動層反応器21において得られたポリマー粒子は、抜出ライン40より連続的または断続的に抜き出され後述する配位子分解工程に供給される。
また、流動層28を通過した未反応のガス状のオレフィン、飽和脂肪族炭化水素などは、第2の流動層反応器21の上方部分に設けられた減速領域29において、その流速が低減されて、第2の流動層反応器21の上部に設けられたガス出口を介して、第2の流動層反応器21の外部に排出されるようになっている。
【0035】
この第2の流動層反応器21から排出された未反応のガスの状オレフィン、飽和脂肪族炭化水素などは、循環ライン26を通って熱交換器(冷却装置)24で冷却されて、供給ライン22と合流し、ブロワー23により再び第2の流動層反応器21内の流動層28内に連続的に供給されるようになっている。熱交換器24では、通常循環ガスが当該ガスの露点近傍の温度まで冷却される。循環ガスを露点以下の温度に冷却し、流動層28内に供給すると、液状凝縮物の蒸発潜熱により反応熱を除去することができ、流動層28内の除熱効率を向上させることができる。なお循環ガスを第2の流動層反応器21に循環させる際には、循環ガスの一部を循環ライン26の任意の場所からからパージしてもよい。
【0036】
上述したように第1の流動層反応器11では、流動化ガスは流動層18を流動状態に保持することができるような流量で流通されており、第2の流動層反応器21では、流動化ガスは流動層28を流動状態に保持することができるような流量で流通されている。
具体的には、供給ライン12および22から反応器底部より導入される流動化ガスのガス量は、流動層の最小流動化速度をUmfとするとき、約3Umf〜50Umf程度、好ましくは約5Umf〜30Umf程度の流量であることが望ましい。なお流動層を機械的に攪拌することもでき、例えばイカリ型攪拌機、スクリュウ型攪拌機、リボン型攪拌機など種々の型式の攪拌機を用いて攪拌することができる。
【0037】
以上2器の流動層反応器、すなわち第1の流動層反応器11と第2の流動層反応器21とを直列に連結した多段気相重合装置について説明したが、3器以上の流動層反応器を有する多段気相重合装置であっても同様に構成することができる。
本発明では、上記のように流動状態に保持された流動層において、反応器内に供給された重合モノマーすなわちエチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを重合させている。
【0038】
また本発明では、上記オレフィンとともに必要に応じてポリエン類などを共重合させてもよく、例えばブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類を共重合させることができる。
重合工程において、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる2種以上のモノマーを共重合する場合の各モノマーの供給量は特に限定されないが、例えばエチレンと、炭素原子数2〜20のα−オレフィンとを共重合する場合は、通常エチレン1モルに対してα−オレフィン0.015〜0.15モル、好ましくは0.02〜0.08モルの量で供給される。
【0039】
本発明では、反応器底部から、重合モノマーとともに、気−液混合状態の飽和脂肪族炭化水素を導入して上記重合反応を行っている。このような飽和脂肪族炭化水素としては、具体的に例えばエタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、2,2−ジメチルプロパン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2,2,3−トリメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、4−メチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタンなどの炭素原子数2〜10飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。これらのなかでも、炭素原子数3〜8のものが好ましい。
【0040】
本発明では、2種以上の飽和脂肪族炭化水素を使用し、少なくとも1種の飽和脂肪族炭化水素を気−液混合状態で重合器に導入し、他の飽和脂肪族炭化水素をガス状で重合器に導入してもよい。この場合、ガス状で反応器に導入される飽和脂肪族炭化水素としては、エタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、i−ペンタン、n−ペンタン、ヘキサン等が好ましく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ここでガス状の飽和脂肪族炭化水素とは、飽和脂肪族炭化水素が実質的に全てガス相として存在するものであり、具体的には全飽和脂肪族炭化水素100%中の99%以上がガス相として存在するものすなわちvapor fractionが0.99以上であるものをいう。このガス相の存在割合は、Chem.Eng.Sci.,27,1197(1972)に示されたSoave−Redlich−Kwongの方法による気液平衡定数Kiから求めることができる。
【0042】
また気−液混合状態で反応器に導入される飽和脂肪族炭化水素は、ガス状で反応器に導入される飽和脂肪族炭化水素よりも沸点が高く、熱交換器などで冷却されたときに凝縮しやすいものが選ばれる。飽和脂肪族炭化水素としては、例えばi−ペンタン、n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどが好ましく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明では、気−液混合状態で導入される飽和脂肪族炭化水素と、ガス状で導入される飽和脂肪族炭化水素を併用する際に、特にエタンおよびi−ペンタンを組み合わせて、またはエタンおよびヘキサンを組み合わせて用いることが好ましい。
反応器から排出されるガスの組成(すなわち実質的に流動層反応系のガス組成)は、飽和脂肪族炭化水素の炭素原子数、重合温度、流動化ガスの流速などによっても異なるが、該ガス中の飽和脂肪族炭化水素の濃度が、通常2〜30モル%、好ましく5〜20モル%程度であることが望ましい。
【0044】
また気−液混合状態で導入される飽和脂肪族炭化水素と、ガス状で導入される飽和脂肪族炭化水素を併用する場合には、該排出ガス中の濃度(ガス状で導入される飽和脂肪族炭化水素)/(気−液混合状態で導入される飽和脂肪族炭化水素)が60〜100重量%であることが望ましい。
飽和脂肪族炭化水素は、上述したように通常重合モノマーとともに供給ラインから反応器底部の供給口を介して反応器に導入されるが、反応器の任意の同一場所からあるいはそれぞれ別々の場所から補給してもよい。
【0045】
流動層において、飽和脂肪族炭化水素の共存下に行われるエチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合は、重合されるオレフィンの種類および割合、飽和脂肪族炭化水素の割合、流動層の流動状態などによっても異なるが、通常重合圧力は0.1〜10MPa、好ましくは0.2〜4MPaの条件下、重合温度は通常20〜130℃、好ましくは50〜120℃、より好ましくは70〜110℃で行われることが望ましい。
【0046】
上記共重合は、必要に応じて水素などの分子量調節剤の存在下に行うこともでき、反応器の任意の場所から供給することができる。
上記のような飽和脂肪族炭化水素は非重合性の炭化水素であり、一旦反応器に供給されると重合により消費されることがなく、通常、排出ラインから未反応重合モノマーとともに抜き出され、流動化ガスとして反応器に循環される。
【0047】
具体的にこの排出ガスは飽和脂肪族炭化水素を合計で0.8〜80モル%の量で含有していてもよいが、飽和脂肪族炭化水素の炭素原子数によっても異なる。反応器から排出されたガスは、通常熱交換器に導かれて冷却され、重合熱が除去された後、循環ガスとして供給口から反応器に循環される。この際熱交換器で冷却された飽和脂肪族炭化水素は気−液混合状態で反応系に循環される。このように排出ガスを反応器に循環させる際には、排出ガスの一部をパージしてもよい。
【0048】
本発明では、得られるオレフィン系重合体の分子量は、重合温度などの重合条件を変更することにより調節することもできるし、水素(分子量調節剤)の使用量を制御することにより調節することもできる。
上記のようにガス状飽和脂肪族炭化水素と、気−液混合状態の飽和脂肪族炭化水素とを反応器に導入して、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを重合させており、生成ポリマー中の低分子量成分が飽和脂肪族炭化水素により除去され、n−デカン可溶成分の極めて少ない重合体を得ることができる。また気−液混合状態で導入される飽和脂肪族炭化水素の蒸発潜熱によって流動層の重合熱を除熱することができる。
【0049】
本発明では、上記のような重合を、チーグラー型チタン触媒、フィリップ型酸化クロム触媒、メタロセン系触媒などのエチレン重合用触媒として公知の触媒を広く用いて行うことができるが、前記した性状を満たすオレフィン系重合体は、メタロセン系触媒を用いる場合において得られる。具体的に本発明において好ましく用いられるメタロセン系触媒は、例えば
(A)周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物、
および
(B)(B−1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(B−2)有機アルミニウム化合物、および
(B−3)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物か
ら選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいる。
【0050】
((A)メタロセン化合物)
周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物(A)は、具体的に、次式(i)で示される。
MLx …(i)
(式中、MはZr、Ti、Hf、V、Nb、TaおよびCrから選ばれる遷移金属であり、Lは遷移金属に配位する配位子であり、少なくとも1個のLはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基またはSO3R基(ここでRはハロゲンなどの置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8の炭化水素基)であり、xは遷移金属の原子価である。)
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基などのアルキル置換シクロペンタジエニル基あるいはインデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などを例示することができる。これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0051】
これらの中では、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子として、具体的にハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、炭素数1〜12の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、アリーロキシ基としては、フェノキシ基などが挙げられ、SO3R基としては、p−トルエンスルホナト基、メタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基などが挙げられる。
【0052】
上記一般式で表される化合物がシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0053】
このようなシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含むメタロセン化合物は、たとえば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記式(ii)で示される。
R2 kR3 lR4 mR5 nM …(ii)
(式中、Mは上記遷移金属であり、R2はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、R3、R4およびR5はシクロペンタジエニル骨格を有する基または上記したような他の基であり、kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。)
本発明ではこの式R2 kR3 lR4 mR5 nMにおいて、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも2個、例えばR2およびR3が、シクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であるメタロセン化合物が好ましく用いられる。これらのシクロペンタジエニル骨格を有する基は、アルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基または置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0054】
上記のようなメタロセン化合物としては、具体的にMがジルコニウムであるとき、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナート)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナート)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナート)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0055】
なお上記例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2−および1,3−置換体を含み、三置換体は1,2,3−および1,2,4−置換体を含む。またプロピル、ブチルなどのアルキル基は、n−、i−、sec−、tert−などの異性体を含む。
また上記のようなジルコニウムメタロセン化合物において、ジルコニウムを、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルまたはクロムに置き換えた化合物を挙げることもできる。
【0056】
本発明では、メタロセン化合物(A)として、少なくとも2個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有するジルコニウムメタロセン化合物が好ましく用いられる。
これらメタロセン化合物(A)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
((B−1)有機アルミニウムオキシ化合物)
(B−1)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のベンゼン可溶性のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−276807号公報で開示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0058】
なおこのアルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収されたアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解して用いてもよい。
アルミノキサンを製造する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、有機アルミニウム化合物(B−2)として後述するようなものが挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0059】
これらのうち、トリアルキルアルミニウムおよびトリシクロアルキルアルミニウムが特に好ましい。
またベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性あるいは難溶性である。
【0060】
このような有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼンに対する溶解性は、100ミリグラム原子のAlに相当する該有機アルミニウムオキシ化合物を100mlのベンゼンに懸濁した後、攪拌下60℃で6時間混合した後、ジャケット付G−5ガラス製フィルターを用い、60℃で熱時濾過を行い、フィルター上に分離された固体部を60℃のベンゼン50mlを用いて4回洗浄した後の全濾液中に存在するAl原子の存在量(xミリモル)を測定することにより求められる(x%)。
【0061】
有機アルミニウムオキシ化合物(B−1)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
((B−2)有機アルミニウム化合物)
有機アルミニウム化合物(B−2)は、例えば下記一般式(iii)で示される。
R1 nAlX3−n …(iii)
(式(iii)中、R1は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。)
上記一般式(iii)において、R1は炭素数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0062】
このような有機アルミニウム化合物(B−2)としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどを挙げることができる。
【0063】
また有機アルミニウム化合物(B−2)として、下記一般式(iv)で示される化合物を用いることもできる。
R1 nAlY3−n …(iv)
(式(iv)中、R1は上記と同様であり、Yは−OR2基、−OSiR3 3基、−OAlR4 2基、−NR5 2基、−SiR6 3基または−N(R7)AlR8 2基であり、nは1〜2であり、R2、R3、R4およびR8はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R5は水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、R6 およびR7 はメチル基、エチル基などである。)
【0064】
これらのうちでは、トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
有機アルミニウム化合物(B−2)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
((B−3)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物)
メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US−547718号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物およびカルボラン化合物を挙げることができる。
【0065】
ルイス酸としては、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、MgCl2、Al2O3、SiO2−Al2O3 などが挙げられる。
イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリn−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0066】
カルボラン化合物としては、ドデカボラン、1−カルバウンデカボラン、ビスn−ブチルアンモニウム(1−カルベドデカ)ボレート、トリn−ブチルアンモニウム(7,8−ジカルバウンデカ)ボレート、トリn−ブチルアンモニウム(トリデカハイドライド−7−カルバウンデカ)ボレートなどが挙げられる。
これらは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0067】
本発明では、共触媒成分(B)として、上記のような成分(B−1)、(B−2)および(B−3)から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられ、これらを適宜組み合わせて用いることもできる。これらのうちでも共触媒成分(B)として少なくとも(B−1)または(B−3)を用いることが望ましい。
本発明では、上記のようなメタロセン触媒成分および共触媒成分を含む触媒を用いることが好ましいが、通常これら触媒成分を粒子状担体化合物と接触させて、担体担持型触媒(固体触媒)として用いることが好ましい。
【0068】
担体化合物としては、粒径10〜300μm、好ましくは20〜200μmの顆粒状ないしは微粒子状固体が用いられる。この担体の比表面積は通常50〜1000m2/gであり、細孔容積は0.3〜2.5cm3/gであることが望ましい。
このような担体としては、多孔質無機酸化物が好ましく用いられ、具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2などまたはこれらの混合物、例えばSiO2−MgO、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2−Cr2O3、SiO2−TiO2−MgOなどが用いられる。これらの中では、SiO2および/またはAl2O3を主成分とするものが好ましい。
【0069】
上記無機酸化物には少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分が含有されていてもよい。
また担体として有機化合物を用いることもでき、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数2〜14のオレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体もしくは共重合体を用いることができる。
【0070】
担体と上記各成分の接触は、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜120℃の温度で、1分〜50時間、好ましくは10分〜25時間行うことが望ましい。
上記のようにして調製される固体触媒は、担体1g当たり、メタロセン化合物(A)が遷移金属原子として5×10−6〜5×10−4グラム原子、好ましくは10−5〜2×10−4グラム原子の量で、成分(B)は、担体1g当たりアルミニウム原子またはホウ素原子として10−3〜5×10−2グラム原子、好ましくは2×10−3〜2×10−2グラム原子の量で担持されていることが望ましい。
【0071】
さらに本発明では、上記のような固体触媒をそのままで重合に用いることができるが、この固体触媒にオレフィンを予備重合させて予備重合触媒を形成してから用いることもできる。
本発明では、固体触媒または予備重合触媒は、遷移金属/リットル(重合容積)で、通常10−8〜10−3グラム原子/リットルさらには10−7〜10−4グラム原子/リットルとなる量で用いられることが望ましい。
【0072】
また予備重合触媒を用いるときには成分(B)を用いても用いなくてもよいが、重合系中の遷移金属に対する成分(B)中のアルミニウムまたはホウ素の原子比(AlまたはB/遷移金属)で、5〜300、好ましくは10〜200、さらに好ましくは15〜150となる量で必要に応じて用いることができる。
上記のようにして得られるオレフィン系重合体の密度(ASTM D 150 E)は、好ましくは0.865〜0.930g/cm3、より好ましくは0.880〜0.930g/cm3である。
【0073】
オレフィン系重合体が、エチレン・α−オレフィン共重合体である場合には、エチレンから導かれる構成単位を87.0〜97.6モル%、好ましくは90.0〜96.8モル%の量で、炭素原子数3〜10のα−オレフィンから導かれる構成単位を13.0〜2.4モル%、好ましく10.0〜3.2モル%の量で含有していることが望ましい。
【0074】
なおオレフィン系重合体は、ポリエン類などから導かれる単位を10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下の量で含んでいてもよい。
(配位子除去工程)
上記のような重合工程において抜出ライン(10、40)から抜き出されたポリマー粒子((共)重合体)は、配位子除去工程に送られ、配位子除去工程においてポリマー粒子中の配位子が除去される。
【0075】
配位子除去工程は、▲1▼上記のような重合工程で得られた(共)重合体と、配位子分解剤とを接触させて(共)重合体中の配位子を分解する工程(配位子分解工程)と、▲2▼配位子分解剤と接触させた前記(共)重合体を加熱して、分解された配位子を(共)重合体から除去する工程(分解配位子除去工程)とを含んでいる。
【0076】
(配位子分解剤)
配位子分解工程で用いられる配位子分解剤としては、水、酸素、アルコール、アルキレンオキサイド、パーオキサイドなどが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどのモノアルコール、エチレングリコールなどのジアルコールなどの炭素原子数10以下のアルコール;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのアルキレンオキサイド;プロピレンパーオキサイド、ブテンパーオキサイドなどのパーオキサイドなどが挙げられる。
【0077】
これらのなかでは、水または炭素原子数5以下のアルコールが好ましく、特に水が好ましい。
(共)重合体と配位子分解剤とを接触させる方法としては、例えば(共)重合体と配位子分解剤を含有する気体流とを接触させる方法がある。この場合、例えば容器内に配位子分解剤を含有する気体を導入しながら該容器内を(共)重合体のパウダーを通過させることが行われる。
【0078】
配位子分解剤と接触させる際の(共)重合体のパウダーの平均粒径は、通常50〜5,000μm、好ましくは80〜3,000μm、より好ましくは100〜2,000μmの範囲にある。
配位子分解剤を含有する気体としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスが挙げられる。配位子分解剤含有気体中には、通常配位子分解剤の蒸気が含まれる。配位子分解剤含有気体における配位子分解剤の含有割合は、通常0.1重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%、特に好ましくは1重量%〜10重量%の範囲である。
【0079】
配位子分解剤含有気体の空塔速度は、通常0.01〜20cm/秒、好ましくは0.1〜10cm/秒、特に好ましくは0.5〜5cm/秒の範囲である。なお、空塔速度は、(共)重合体と配位子分解剤とを接触させる際に用いられる装置における気体排出口での配位子分解剤含有気体の温度および圧力、ならびに該装置の断面積をもとに算出される。
【0080】
(共)重合体と配位子分解剤とを接触させる際の温度は、(共)重合体の結晶化度が40%以上である場合には、通常(共)重合体の結晶化温度以上、かつ(共)重合体の分解温度未満であり、具体的には100〜300℃、好ましくは100〜280℃の範囲である。(共)重合体の結晶化度が40%未満である場合には、(共)重合体の融点−15℃以上、かつ(共)重合体の分解温度未満であり、具体的には85〜300℃、好ましくは90〜280℃の範囲である。
【0081】
なお、(共)重合体の結晶化度(Xc )は、以下の方法により測定される。すなわち、(共)重合体を190℃で7分間予熱した後、9.8MPaで2分間加圧し、その後20℃、9.8MPaの条件で冷却して、5mm厚のプレスシートを作製する。前記プレスシートから切り出した約5mgの試験片(試料)をアルミパンに挿入する。パーキンエルマー社製DSC−IIを用いて、昇温速度10℃/分で室温から150℃まで測定を行い吸熱曲線を得る。別途、秤量したインジウムの吸熱曲線面積を用い、試料の吸熱曲線を溶融熱量に換算する。試料の吸熱曲線の35℃の点と、吸熱ピークが完全に出なくなった点を結びベースラインとする。100%のポリエチレン結晶の溶融熱量(260(J/g))で、測定により得られた溶融熱量(A(J/g))を割った値(Xc =A/260)を結晶化度とする。
【0082】
(共)重合体と配位子分解剤とを接触させる際の圧力は、通常0.0001〜0.6MPa、好ましくは0.001〜0.35MPa、特に好ましくは0.01〜0.25MPaの範囲である。接触時間(滞留時間)は、通常1分〜3時間、好ましくは2分〜2時間、特に好ましくは5分〜1時間である。
上記のように(共)重合体と配位子分解剤とを接触させることにより、配位子を分解することができ、高沸点であった配位子を低沸点の化合物とすることができる。また、配位子の種類によっては、分解することによって無臭化されることもある。
【0083】
次に、配位子分解剤と接触させた(共)重合体を加熱して、(共)重合体中の分解された配位子を除去する。配位子分解剤と接触させた(共)重合体を加熱して分解された配位子を除去する方法としては、例えば以下のような方法がある。
(1)ロータリードライヤー、ベルトドライヤー、フラッシュドライヤー、スプレードライヤー、パドルドライヤーなどの乾燥機を用い、不活性ガス流通下に(共)重合体を加熱する方法。
(2)一軸または二軸押出機を用い、(共)重合体を加熱・溶融する方法。
【0084】
(2)の方法を採用する場合には、加熱溶融した(共)重合体をペレット化し、さらに、下記(2−1)〜(2−3)のいずれかの工程を行ってもよい。
(2−1)前記ペレットを熱水と接触させる工程
(2−2)前記ペレットを水蒸気と接触させる工程
(2−3)前記ペレットを0.001〜0.098MPaの圧力下で加熱する工程
前記(1)の方法を実施するに際して、(共)重合体の加熱温度は、(共)重合体の結晶化度が40%以上である場合には、通常(共)重合体の結晶化温度以上、かつ(共)重合体の分解温度未満、または(共)重合体の結晶化温度以上、かつ(共)重合体の融点以下であり、具体的には100〜300℃、好ましくは100〜280℃の範囲である。
【0085】
(共)重合体の結晶化度が40%未満である場合には、(共)重合体の融点−15℃以上、かつ(共)重合体の分解温度未満、または(共)重合体の融点−15℃以上、かつ(共)重合体の融点以下であり、具体的には85〜300℃、好ましくは90〜280℃の範囲である。
圧力は、通常0.0001〜0.6MPa、好ましくは0.001〜0.35MPa、特に好ましくは0.01〜0.25MPaの範囲である。加熱時間(滞留時間)は、通常1分〜3時間、好ましくは2分〜2時間、特に好ましくは5分〜1時間である。
【0086】
不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられる。乾燥機中の気体流速は、通常0.01〜20cm/秒、好ましくは0.1〜10cm/秒、特に好ましくは0.5〜5cm/秒の範囲である。
前記(2)の方法を実施するに際して、(共)重合体の加熱温度は、前記(1)の方法と同様である。本発明では、分解配位子除去工程において(共)重合体の融点以上、かつ分解温度未満の温度で加熱する場合には、(共)重合体に剪断力を加えながら加熱することが好ましく、(共)重合体に剪断力を加える方法としては、パドルドライヤー、一軸または二軸押出機などを用いる方法がある。
【0087】
本発明では、前記(2)の方法を採用する場合には、加熱溶融した(共)重合体をペレット化し、さらに、下記(2−1)〜(2−3)のいずれかの工程を行ってもよい。
(2−1)の工程を行うに際して用いることのできる装置としては、向流抽出塔、攪拌装置を有する貯槽、多段横型抽出槽などがあり、(2−2)および(2−3)の工程を行うに際して用いることのできる装置としては、サイロ、ホッパーなどがある。
【0088】
前記(2−1)の工程を行うに際して、熱水の温度は35〜200℃、好ましくは40〜180℃、特に好ましくは45〜150℃の範囲であり、接触時間は1〜900分、好ましくは5〜600分、特に好ましくは10〜360分の範囲である。
(2−2)の工程は、前記配位子分解工程と同様にして水蒸気含有気体と(共)重合体とを接触させる。水蒸気を含有する気体としては、前記と同様の不活性ガス、空気などが挙げられる。
【0089】
(共)重合体と水蒸気含有気体とを接触させる際の温度は、(共)重合体の結晶化度が40%以上である場合には、通常(共)重合体の結晶化温度以上、かつ(共)重合体の分解温度未満、または(共)重合体の結晶化温度以上、かつ前記(共)重合体の融点以下であり、具体的には100〜300℃、好ましくは100〜280℃の範囲である。
【0090】
(共)重合体の結晶化度が40%未満である場合には、(共)重合体の融点−15℃以上、かつ(共)重合体の分解温度未満、または(共)重合体の融点−15℃以上、かつ(共)重合体の融点以下であり、具体的には85〜300℃、好ましくは90〜280℃の範囲である。
圧力は、通常0.0001〜0.6MPa、好ましくは0.001〜0.35MPa、特に好ましくは0.01〜0.25MPaの範囲である。水蒸気含有気体における水蒸気の含有割合は、通常0.1重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%、特に好ましくは1重量%〜10重量%の範囲である。
【0091】
水蒸気含有気体の空塔速度は、通常0.01〜20cm/秒、好ましくは0.1〜10cm/秒、特に好ましくは0.5〜5cm/秒の範囲である。接触時間(滞留時間)は、通常0.5〜30時間、好ましくは1〜24時間、特に好ましくは2〜20時間である。
前記(2−3)の工程を行うに際して、圧力は0.001〜0.100MPa、好ましくは0.007〜0.098MPa、特に好ましくは0.01〜0.07MPaの範囲であり、温度は35〜200℃、好ましくは40〜180℃、特に好ましくは45〜150℃である。また、加熱時間は、0.5〜30時間、好ましくは1〜24時間、特に好ましくは2〜20時間である。
【0092】
前記(2−1)〜(2−3)の工程を行う場合の(共)重合体ペレットの平均粒径は、通常1〜30mm、好ましくは3〜20mm、より好ましくは5〜15mmの範囲にあることが望ましい。
(共)重合体の配位子除去工程は、より具体的には、例えば図3または図4に示すような工程により行うことができる。図3に、配位子除去工程の一例を表す説明図を示し、図4に、配位子除去工程の他の例を表す説明図を示す。なお図中51で示されるサイロにおいて配位子分解工程が行われ、図中52で示される押出機、54で示されるサイロ、57で示される乾燥機において分解配位子除去工程が行われる。
【0093】
以下、配位分解剤として水(水蒸気)を用いた例について説明する。図3に示す工程では、(共)重合体のパウダーは、パウダー供給管61からサイロ51に連続的に供給される。サイロ51では、下部に配設されたガス供給管62から水蒸気を含む不活性ガスがサイロ51に供給される。これにより(共)重合体のパウダーと水蒸気とが接触し、(共)重合体に含まれる配位子が分解される。サイロ51に供給された水蒸気を含む不活性ガスは、ガス排出管64からサイロ51外へ排出される。
【0094】
水蒸気と接触した(共)重合体のパウダーは、パウダー排出管63からサイロ51外へ排出され、次に押出機52へ供給される。押出機52で加熱溶融された(共)重合体は水で冷却され、ペレット化される。これにより(共)重合体に含まれる分解された配位子の一部が除去される。得られた(共)重合体のペレットは水とともにライン65を通り脱水機53に供給され、脱水された(共)重合体のペレットは、ペレット供給管67を通りサイロ54に供給される。脱水機53で分離された水は循環ライン66を通り冷却水として再利用される。なお、図中55は貯水タンク、56はポンプである。
【0095】
サイロ54では、下部に配設されたガス供給管68から水蒸気を含む不活性ガスがサイロ54に供給される。これにより(共)重合体のペレットと水蒸気とが接触し、(共)重合体に含まれる分解された配位子がさらに除去される。サイロ54に供給された水蒸気を含む不活性ガスは、ガス排出管70からサイロ54外へ排出される。分解された配位子が除去された(共)重合体のペレットは、ペレット排出管69から排出される。
【0096】
図4に示す工程では、図3に示す工程と同様に、(共)重合体のパウダーと、水蒸気を含む不活性ガスとがサイロ51内において接触し、(共)重合体に含まれる配位子が分解される。水蒸気と接触した(共)重合体のパウダーは、パウダー排出管63からサイロ51外へ排出され、次に乾燥機57へ供給される。なお、図4では乾燥機57はベルトドライヤーであるがこれに限定されない。
【0097】
乾燥機57では、ガス供給管71から加熱された不活性ガスが供給され、(共)重合体のパウダーは、加熱されるとともに不活性ガスと接触する。これにより(共)重合体に含まれる分解された配位子が除去される。乾燥機57に供給された不活性ガスは、ガス排出管72から排出される。
分解された配位子が除去された(共)重合体のパウダーは、ライン73を通り解砕機58に供給され、解砕された後排出管74から排出される。
【0098】
配位子除去工程では、重合工程で得られた(共)重合体から、(共)重合体中に残留するシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を分解し、除去しているので、成形時に臭気の発生が少ないポリオレフィンを得ることができる。
【0099】
【発明の効果】
本発明のオレフィン系重合体は、臭気を発生するような成分、味を変化させるような成分である、オリゴマー等の低分子量成分およびシクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が少ないため、食品用途に使用したときに、臭気を発生するような成分、味を変化させるような成分の含有量が少ないため、食品の風味を損なうことが少ない。
【0100】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、臭気を発生するような成分、味を変化させるような成分である、オリゴマー等の低分子量成分およびシクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が少ないオレフィン系重合体を、低コストかつ生産性よく製造することができる。
【0101】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0102】
〔実施例1〕
(固体触媒成分の調製)
250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO2)10kgを、154リットルのトルエンに懸濁した後、0℃まで冷却した。この懸濁液に、メチルアルミノオキサンのトルエン溶液(Al=1.52モル/リットル)50.5リットルを1時間かけて懸濁液の温度を0〜5℃に保持しながら滴下し、引続き0℃で30分間保持した後、1.5時間かけて95℃まで昇温して95℃で4時間保持した。
【0103】
その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体触媒成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエン100リットルで再懸濁して全量160リットルとした。
得られた懸濁液に、ビス(1,3−n−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr=25.7ミリモル/リットル)22.0リットルを80℃で30分かけて滴下し、さらに80℃に2時間保持した。その後上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄することにより、シリカ1g当たり、3.2mgのジルコニウムを含有する固体触媒成分を得た。
【0104】
(固体触媒成分の予備重合)
充分に窒素置換した350リットルの反応器に、上記固体触媒成分7.0kgを装入し、ヘキサンを装入して全容積285リットルのヘキサン懸濁液とした。系内を10℃まで冷却した後、エチレンを流量8Nm3/hrで5分間、固体触媒成分のヘキサン懸濁液中に吹き込んだ。この間、系内の温度は10〜15℃に保持した。
【0105】
エチレンの供給を一旦停止した後、トリイソブチルアルミニウムを2.4モルおよび1−ヘキセン1.2kgを供給し、系内を密封系にした後、エチレンの供給を再開し、流量8Nm3/hrで15分間供給した後、流量を2Nm3/hrに下げて、系内の圧力を0.8kg/cm2−Gにした。この間に系内温度は35℃まで上昇した。
【0106】
その後、系内の温度を32〜35℃にコントロールしながら、エチレンを4Nm3/hrの流量で3.5時間供給した。この間、系内の圧力は0.7〜0.8kg/cm2−Gに保持した。次いで、系内を窒素置換し、上澄み液を除去した後、ヘキサンで2回洗浄した。予備重合後の上澄み液は無色透明であった。
上記のようにして固体触媒成分1g当たり3gの予備重合体を含む予備重合触媒を得た。この予備重合触媒(予備重合体)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.1dl/gであり、1−ヘキセン単位含量は4.8重量%であった。予備重合触媒の形状は良好であり、嵩密度は0.4g/cm3であった。
【0107】
(気相重合)
図1に示すような連続式流動床反応器を用いて気相重合を行った。
すなわち、上記のようにして得られた予備重合触媒を54g/hrの量で連続的に供給して、イソペンタンの存在下にエチレンと1−ヘキセンを連続的に重合させ、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を得た。
【0108】
重合条件は、重合温度70℃、重合圧力1.7MPa−G(ゲージ圧)、エチレン分圧1.1MPa、空塔速度0.80m/s、反応器の減速領域におけるガス(TOPガス)中のイソペンタン濃度5モル%の条件で行った。この重合が行われている間、該TOPガスの平均分子量は31.4g/モルであり、密度が20.7kg/m3であった。また、該TOPガスの露点は40.1℃であり、熱交換器の循環ガス出口側の温度が62.3℃であり、該循環ガス出口側の凝縮液比率が0重量%であった。
【0109】
なお、上記TOPガスは、エチレン、窒素、水素、1−ヘキセン、イソペンタンの混合物である。
上記のようにして得られたLLDPEは、密度(ASTMD1505)が903kg/m3であり、MFR(ASTMD1238)が3.8g/10分であった。
【0110】
(配位子分解工程)
水蒸気含有窒素ガスを導入し、圧力を0.5kPa−G、温度を80℃としたサイロに前記LLDPEのパウダーを滞留時間5分で通過させた。
このときの水とポリエチレンパウダー(PE)との重量比(水/PE)は、0.001であり、窒素ガス(N2)とポリエチレンパウダー(PE)との比(N2(N−m3)/PE(kg))は、0.004であった。
【0111】
(分解配位子除去工程)
前記配位子分解工程を経たLLDPEパウダーを、2軸押出機を用いて出口温度205℃でペレット化した。その後、水蒸気含有空気を導入し、圧力0.5kPa−G、温度80℃にしたサイロに、前記配位子分解工程を経たLLDPEパウダーを、滞留時間6時間で通過させた。
【0112】
このとき水蒸気(水)とポリエチレンペレット(PE)との重量比(水/PE)は、0.09であり、空気(Air)とポリエチレンペレット(PE)との比(Air(N−m3)/PE(kg))は、0.14であった。
(評価)
上記のように処理した後のLLDPEについて、配位子残留量、n−デカン可溶分量および臭いを評価した。結果を表1に示す。
【0113】
なお、上記処理した後のLLDPEの臭いの評価は以下のように行った。
◎:評価者3名のいずれも臭いを感じなかった。
○:評価者3名中に臭いを感じる者が1名いた。但し、強い臭いは感じな
かった。
△:評価者3名中に臭いを感じる者が2、3名いた。但し、強い臭いは感じ
なかった。
【0114】
×:評価者3名全員が強い臭いを感じた。
【0115】
〔実施例2〜4および比較例1〜6〕
実施例1において、重合器TOPガス中のイソペンタン濃度、重合器TOPガス中の平均分子量、重合器ガスの密度、熱交換器循環ガス出側でのガス温度等を、表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてLLDPEを得た。
【0116】
得られたLLDPEの配位子残留量、n−デカン可溶分量および臭いを実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】重合工程を単段で行う場合を示す説明図である。
【図2】重合工程を2段で行う場合を示す説明図である。
【図3】配位子除去工程の一例を表す説明図である。
【図4】配位子除去工程の他の例を表す説明図である。
【符号の説明】
10、40 … 抜出ライン
11、21 … 流動層反応器
12、22 … 供給ライン
18、28 … 流動層
51、54 … サイロ
52 … 押出機
57 … 乾燥器
Claims (7)
- エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種を、メタロセン系触媒の存在下で重合して得られるオレフィン系の(共)重合体であって、n−デカン可溶分量が10重量%以下であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が5重量ppb以下であることを特徴とするオレフィン系重合体。
- エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン系重合体。
- 密度が0.930g/cm3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のオレフィン系重合体。
- 流動層反応器を用いて、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィンを気相にて(共)重合することにより得られたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体。
- 流動層反応器中に炭素原子数2〜10の飽和脂肪族炭化水素を2〜30モル%の濃度で存在させながら、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィンを(共)重合し、次いで得られた(共)重合体を、配位子分解剤に接触させ、次いで配位子分解剤と接触させた上記(共)重合体を加熱することにより得られたものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体。
- 流動層反応器を用いて、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィンを、メタロセン系触媒の存在下、気相にて(共)重合してオレフィン系重合体を製造する方法であって、
上記流動層反応器中に飽和脂肪族炭化水素を2〜30モル%の濃度で存在させながらオレフィンを(共)重合する重合工程と、
得られた(共)重合体を、配位子分解剤に接触させ、次いで配位子分解剤と接触させた上記(共)重合体を加熱する配位子除去工程とを
有することを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。 - 請求項6に記載のオレフィン系重合体の製造方法により、n−デカン可溶分量が10重量%以下であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の含有量が5重量ppb以下であるオレフィン系重合体を製造することを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。
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