JP2004002563A - 透明紫外線遮蔽塗膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】300nmの波長を有する紫外光の透過率が0〜1%の範囲であり、しかも、550nmの波長を有する可視光の透過率が90〜100%の範囲である、優れた紫外線遮蔽能と透明性を有する塗膜を提供する。
【解決手段】紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含み、その無機酸化物微粒子の塗膜中の含有量を、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲、好ましくは40〜80重量%の範囲とする。無機酸化物微粒子として、0.001〜0.1μm、好ましくは0.005〜0.05μmの平均粒子径を有する二酸化チタン微粒子などを用いる。
【解決手段】紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含み、その無機酸化物微粒子の塗膜中の含有量を、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲、好ましくは40〜80重量%の範囲とする。無機酸化物微粒子として、0.001〜0.1μm、好ましくは0.005〜0.05μmの平均粒子径を有する二酸化チタン微粒子などを用いる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機酸化物微粒子を紫外線遮蔽材として用い、紫外線遮蔽性、透明性及び耐久性に優れた塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線には皮膚障害、白内障等の人体への生理障害や、食品、及び木材、プラスチックス、紙、繊維等の有機材料、医薬、添加剤等の有機薬剤、それらを含む各種工業製品等の劣化、変褪色といった有害な化学変化を引き起こす作用があり、紫外線から防御するために、様々な方法が用いられている。例えば、車両、建造物等の窓、各種の包装用フィルム等の透明性基材や、木材等の素材自体の色調や風合が重視される基材では、その表面に紫外線遮蔽材を含む透明な被覆層を形成することで、内部または基材を紫外線から保護している。このような被覆層には、優れた紫外線遮蔽能が求められると同時に、優れた透明性が求められる。
【0003】
例えば、紫外線遮蔽材としてサリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の有機紫外線吸収剤を用い、透明な硬化性バインダーに配合した塗料を、基材上に塗布し塗膜化すると、透明紫外線遮蔽塗膜が得られる。しかし、有機紫外線吸収剤はそれ自体が紫外線により分解されたり、塗膜上にブリードしたりするので、経時的に塗膜の紫外線遮蔽能が低下してしまい、また、有機紫外線吸収剤には有毒なものが少なくなく、用途が制限された。一方、真空蒸着、スパッタリング等により、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の紫外線遮蔽性を有する無機酸化物の薄膜を、基材上に形成させる方法は、製造に大掛かりな設備が必要で、製造コストが高いという欠点があった。そこで、前記の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機酸化物の微粒子を、有機紫外線吸収剤に替えて紫外線遮蔽塗料に用いると、耐久性や安全性の高い紫外線遮蔽塗膜が低コストで得られる。ところが、通常、無機酸化物微粒子は、硬化性バインダーより可視光の屈折率が大きく、バインダーとの界面で可視光の強い散乱が生じるので、所望の透明性が得られにくく、透明性と紫外線遮蔽能を同時に満足できる塗膜は得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上に述べた従来技術の問題点を克服し、無機酸化物微粒子を用いても透明性に優れた紫外線遮蔽塗膜を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、これらの問題点を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、無機酸化物微粒子を高濃度に配合した塗膜は、意外にも紫外線遮蔽能が高く、しかも透明性に優れたものになることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含む塗膜において、無機酸化物微粒子を40〜90重量%の範囲で含み、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲であることを特徴とする透明紫外線遮蔽塗膜である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においては、紫外線遮蔽能の指標として300nmの波長を有する紫外光の透過率を測定する。また、透明性の指標として550nmの波長を有する可視光の透過率を測定する。本発明でいう透過率とは、平行透過光と拡散透過光を合わせた全透過光の、入射光に対する割合である。それぞれの透過率を測定した結果、本発明の透明紫外線遮蔽塗膜は、300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲であって、優れた紫外線遮蔽能と透明性とを同時に満足できるものである。本発明の透明紫外線遮蔽塗膜においては、紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含み、その無機酸化物微粒子の塗膜中の含有量が、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲、好ましくは40〜80重量%の範囲である。無機酸化物微粒子を高い濃度で配合することにより、無機酸化物微粒子を用いた従来の塗膜には無い優れた透明性と紫外線遮蔽能とを付与すると共に、耐久性に優れ、安全性が高いという特性も備えている。無機酸化物微粒子の濃度が、前記範囲より少ないと、十分な紫外線遮蔽能が得られず、また、多くなっても更なる効果は得られず、むしろ塗膜強度が低下してしまう。
【0008】
透明性が高くなる理由は、おそらくは次のように考えられる。一般的に、光はその波長より小さいものを解像することが、困難であるという性質を有する。無機酸化物微粒子の濃度が本発明のように非常に高い領域では、塗膜中の微粒子が密集して、微粒子間の距離が可視光の波長よりも短くなる。前述のように、無機酸化物微粒子はバインダーとの屈折率の差が大きく、その界面で可視光が強く散乱されるが、本発明の場合、可視光の散乱面が隣接する微粒子間に存在すると、個別に解像できなくなり、このため、可視光は塗膜中を透過し易くなるので、透明性が向上するのではないかと考えられる。一方、無機酸化物微粒子の紫外線遮蔽能は、その紫外線吸収能に大きく依存しており、濃度を高くして紫外線散乱能が低下してもほとんど影響を受けず、むしろ微粒子数が増えることで、紫外線遮蔽能が大きくなると考えられる。
【0009】
従来の塗膜ではその膜厚を薄くすると透明性が改善されるが、紫外線遮蔽能が低下してしまう。しかしながら、本発明の塗膜は、塗膜の膜厚を薄くしても、膜厚を好ましい範囲である0.05〜5μmにしても、透明性が更に高くなると共に、紫外線遮蔽能も十分保持される。すなわち、本発明のより好ましい透明紫外線遮蔽塗膜は、膜厚を0.05〜5μmの範囲にしたときにでも、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲にある。また、無機酸化物微粒子によっては、特定の波長の光を強く屈折するため、その無機酸化物微粒子を配合した塗膜の可視光の透過率が大きくても、塗膜が着色して所謂「曇り」が生じ、見掛け上の透明性が低くなる場合があるが、前記範囲の膜厚にすると、「曇り」の無い塗膜が得られる。例えば、このような特性はヘイズ値で表され、前記範囲の膜厚を有する本発明の塗膜は、0〜10%の範囲のヘイズ値を有する。これは、塗膜に入射した可視光が、無機酸化物粒子と接触する確率が小さくなり、透過し易くなるからではないかと考えられる。膜厚が前記範囲より厚くなると、所望の効果が得られず、前記範囲より薄くなると、塗膜が剥離し易くなるので好ましくない。膜厚のより好ましい範囲は、バインダーの種類によって異なるが、例えば、アクリル系樹脂または塩ビ・酢ビ共重合樹脂であれば0.05〜2.0μmの範囲が好ましい。すなわち、本発明のより好ましい透明紫外線遮蔽塗膜は、紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含み、その無機酸化物微粒子の塗膜中の含有量を、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲、好ましくは40〜80重量%の範囲とすることにより、0.05〜5μmの膜厚としたときに、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲であり、しかも、ヘイズ値が0〜10%の範囲を示す優れた透明紫外線遮蔽塗膜である。
【0010】
本発明で用いる無機酸化物微粒子は、その形状が球状、紡錘状、棒状、針状、樹枝状、不定形等特に制限されない。また、平均粒子径(電子顕微鏡法により測定した一次粒子の50%粒子径)が0.001〜0.1μmの範囲にあると、特に透明性と紫外線遮蔽能とが優れたものとなり、0.005〜0.05μmの範囲が更に好ましい。(無機酸化物微粒子の形状が紡錘状、棒状、針状等の場合は、平均短軸径を平均粒子径とする。)無機酸化物微粒子としては、紫外線遮蔽能を有するものであれば制限は無く、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄等公知のものを用いることができ、これらを単独で用いても良く、または2種以上を混合物としたり、2種以上を複合酸化物とする等組合せて用いても良い。中でも、二酸化チタンは紫外線遮蔽能、透明性、安定性とのバランスに優れているので好ましい。二酸化チタンは含水酸化物や水酸化物でも良く、ルチル型、アナターゼ型等の結晶性のものや不定形であっても良いが、ルチル型二酸化チタンは耐光性に優れ、塗膜の耐久性を高くするので特に好ましい。
【0011】
二酸化チタンの表面には無機化合物が被覆されていても、あるいは、内部に異種の元素が含まれていても良く、これらを組合せて用いることもできる。例えば、酸化アルミニウムまたはその水和物を表面に被覆すると、二酸化チタンと有機系バインダーとの親和性が向上するので好ましく、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムまたはそれらの水和物の被覆は、二酸化チタンの耐候性を向上させるので、窓等の屋外用途に適している。特に、二酸化チタンの表面に酸化アルミニウムまたはその水和物や酸化ケイ素などの屈折率の低い化合物を被覆すると、二酸化チタンの見掛けの屈折率を下げることが期待でき、硬化性バインダーとの屈折率の差を小さくし、その界面で可視光が強く散乱されるのを制御することができるため、好ましい形態である。これらの好ましい被覆量は、TiO2に対し、酸化アルミニウムはAl2O3として、酸化ケイ素はSiO2として、酸化ジルコニウムはZrO2として、いずれも1〜20重量%の範囲であり、これらを1種被覆しても良く、2種以上を混合したり、積層する等組合せて被覆しても良い。あるいは、特願2002−60772号に開示されるコバルトを結晶中に含有するルチル型二酸化チタン微粒子や、特願2002−60773号に開示されるマンガンを結晶中に含有するものも、耐候性に優れているので好ましい。また、これらの二酸化チタン微粒子には、分散性を向上させる目的で、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノシロキサン類、シラン系、チタネート系、アルミニウム系等のカップリング剤類、ステアリン酸等の高級脂肪酸類等の有機化合物を、好ましくは1〜20重量%の範囲で、被覆することもできる。特に、二酸化チタンの表面に酸化アルミニウム、その水和物または酸化ケイ素に加え、前記有機化合物を被覆するのが好ましい形態である。
【0012】
本発明で用いることのできる硬化性バインダーは、透明性が高いものであれば、焼付硬化型、常温硬化型、紫外線硬化型、あるいは、有機溶剤溶解型、水溶解型やエマルジョン型等特に制限は無く、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、塩ビ・酢ビ共重合体樹脂、変成シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の有機系バインダーや、アルキルシリケート、アルキルチタネート等の無機バインダーが挙げられる。また、本発明では無機酸化物微粒子、硬化性バインダー以外にも、例えば、HALS等の光安定剤、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、硬化触媒等の硬化助剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の界面活性剤等の、各種の添加剤が含まれていても良い。
【0013】
本発明の塗膜を得るには、先ず、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとに、必要に応じて水、有機溶剤等の溶媒を加え、サンドミル、ディスパー、ペイントコンディショナー、ペイントシェーカー、ボールミル等の分散機を用いて塗料化する。前記の光安定剤、酸化防止剤、硬化助剤、界面活性剤等の各種添加剤は、分散時に加えても、分散後に加えても良い。次いで、得られた塗料を、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、静電塗装等の公知の方法により、所定の膜厚になるように基材上に塗布した後、硬化性バインダーの性質に応じ、加熱、自然乾燥、UV照射等の方法により硬化させる。無機酸化物微粒子の濃度が前記範囲内にあっても、例えば、70重量%以上のように著しく高い領域では、塗膜を前記の好ましい膜厚にしても、塗膜に曇りが生じ、ヘイズ値が低下することがある。おそらくは、塗膜表面に無機酸化物微粒子が突出して塗膜の平滑性を損ね、可視光を拡散させるのではないかと考えられる。このような場合は、本発明の塗膜上に、更にクリアー塗料を塗布し、塗膜を形成させれば、ヘイズ値が改善される。クリアー塗料には前記の透明な硬化性バインダーを用いることができ、基材表面に塗布する塗料に含まれるものと、同種であっても異種であっても良い。すなわち、本発明のより好ましい透明紫外線遮蔽塗膜は、紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含む層上にクリアー層を形成した塗膜であって、無機酸化物微粒子を、無機酸化物微粒子とクリアー層を除く下層の硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲、好ましくは40〜80重量%の範囲とすることにより、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲を示す優れた透明紫外線遮蔽塗膜である。しかも、0.05〜5μmの膜厚としたときに、ヘイズ値が0〜10%の範囲を示す優れた透明紫外線遮蔽塗膜とすることもでき、より好ましい形態である。
【0014】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
実施例1〜3
無機酸化物微粒子として、酸化アルミニウム水和物で被覆された平均粒子径0.04μmの略球状二酸化チタン微粒子(TTO−55(B):石原産業製)を用い、処方1にて容量70cm3のガラス製ベッセルにし込み、ペイントシェーカーにて3時間分散させた後、処方2、3、4にて塗料化して、それぞれ濃度が46、62、75重量%の塗料(いずれも固形分体積濃度は10%)とした。これらの塗料を、#3ワイヤーバーコーターにて、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、100℃で20分間乾燥させ、膜厚0.7μmの本発明の塗膜を得た。それぞれを実施例1〜3(試料A〜C)とする。
【0016】
(処方1)
無機酸化物微粒子 4.2 g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 2.24g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 16.1 g
0.4mmφ チタニアビーズ 50 g
【0017】
(処方2)
処方1の分散液 22.54g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 5.66g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 1.65g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 21.2 g
【0018】
(処方3)
処方1の分散液 22.54g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 1.87g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 0.86g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 7.0 g
【0019】
(処方4)
処方1の分散液 22.54g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 0.47g
【0020】
実施例4〜6
TTO−55(B)に替えて、酸化アルミニウム水和物で被覆された平均粒子径0.02μmの略球状二酸化チタン微粒子(TTO−51(A):石原産業製)を用い、#5ワイヤーバーコーターにて膜厚を1.2μmとした以外は実施例1〜3と同様にして、本発明の塗膜を得た。それぞれを実施例4〜6(試料D〜F)とする。
【0021】
実施例7〜9
TTO−51(A)に替えて、酸化アルミニウム水和物及びステアリン酸で被覆された、平均短軸径0.01μm、平均長軸径0.5μmの紡錘状二酸化チタン微粒子(TTO−V−3:石原産業製)を用いた以外は実施例4〜6と同様にして、本発明の塗膜を得た。それぞれを実施例7〜9(試料G〜I)とする。
【0022】
実施例10〜12
実施例7〜9の塗膜上に、アクリル系樹脂(アクリディック47−712:大日本インキ化学工業製)/ブチル化メラミン系樹脂(スーパーベッカミンL117:大日本インキ化学工業製)=8/2(重量比)をクリアー塗料(固形分体積濃度25%)として、#5ワイヤーバーコーターで塗布した後、100℃で20分間乾燥させ、本発明の塗膜を得た。それぞれを実施例10〜12(試料J〜L)とする。
【0023】
実施例13
無機酸化物微粒子として平均短軸径0.01μm、平均長軸径0.03μmの紡錘状二酸化チタン(a)を用いた。この紡錘状二酸化チタン微粒子(a)の結晶中にはTiO2に対しCoOとして1重量%のコバルト、SiO2として5重量%のケイ素、Al2O3として5重量%のアルミニウムを含み、表面にはTiO2に対し、Al2O3として5重量%の酸化アルミニウム水和物、5重量%のアミノプロピルトリメトキシシランが被覆されている。上記(a)を、処方5にて容量70cm3のガラス製ベッセルにし込み、ペイントシェーカーにて3時間分散させ、濃度が46、62、75重量%の塗料(固形分体積濃度は10%)とした。これらの塗料を、#5ワイヤーバーコーターにて、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、100℃で30分間乾燥させ、膜厚1.2μmの本発明の塗膜を得た。これを実施例13(試料M)とする。
【0024】
(処方5)
無機酸化物微粒子 4.2 g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 4.11g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 0.86g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 23.1 g
0.4mmφ チタニアビーズ 50 g
【0025】
実施例14
無機酸化物微粒子として、酸化アルミニウム水和物で被覆された平均粒子径0.02μmの略球状二酸化チタン微粒子(TTO−51(A):石原産業製)にヘキシルトリメトキシシラン(HTMtS)5重量%被覆処理したものを用い、処方6にて容量70cm3のガラス製ベッセルにし込み、ペイントシェーカーにて3時間分散させ、濃度が62重量%の塗料(固形分体積濃度は10%)とした。この塗料を、#5ワイヤーバーコーターにて、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、100℃で30分間乾燥させ、膜厚1.2μmの本発明の塗膜を得た。これを実施例14(試料N)とする。
【0026】
(処方6)
無機酸化物微粒子 4.2 g
塩ビ・酢ビ共重合樹脂ワニス:MR−110(日本ゼオン製) [トルエン/シクロヘキサノン(重量比1/1)溶液、不揮発分20%] 12.9 g
トルエン/シクロヘキサノン(重量比1/1) 15.3 g
0.4mmφ チタニアビーズ 50 g
【0027】
比較例1〜3
実施例1〜3、実施例4〜6、実施例7〜9において、処方7にて塗料化し、塗料の濃度を29重量%とした以外は同様にして塗膜を得た。それぞれを比較例1(試料O)、比較例2(試料P)、比較例3(試料Q)とする。
【0028】
(処方7)
処方1の分散液 11.3 g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 7.1 g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 1.7 g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 26.6 g
【0029】
比較例4
比較例3の塗膜上に、実施例10〜12と同様にしてクリアー塗料を塗布し、塗膜化したものを比較例4(試料R)とする。
【0030】
比較例5
実施例14において、処方8にて塗料化し、塗料の濃度を29重量%とした以外は同様にして塗膜を得た。これを比較例5(試料S)とする。
【0031】
(処方8)
無機酸化物微粒子 2.1 g
塩ビ・酢ビ共重合樹脂ワニス:MR−110(日本ゼオン製) [トルエン/シクロヘキサノン(重量比1/1)溶液、不揮発分20%] 25.7 g
トルエン/シクロヘキサノン(重量比1/1) 19.0 g
0.4mmφ チタニアビーズ 50 g
【0032】
評価1
実施例1〜14及び比較例1〜5で得られた塗膜(試料A〜R)の、300nm及び550nmの波長を有する光の透過率(T300、T550)を、積分球を装着した分光光度計(UV−2200A型:島津製作所製)にて、ヘイズをヘイズメーター(300A型:日本電色工業製)にて測定した。結果を表1に示す。なお、試料A〜Rは、優れた耐久性と安全性を有することを確認した。また、無機酸化物微粒子として酸化亜鉛、酸化セリウムを用いた場合でも効果を確認した。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明の塗膜は、紫外線遮蔽能と透明性に優れており、本発明を表面に形成されたガラス、プラスチックス等の透明性基材は、透明性基材本来の機能を損なうことなく、内容物を紫外線から効果的に保護することができる。また、木材等に本発明を適用すると、基材の有する色調、風合等を損ねることなく、劣化を防ぐことができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機酸化物微粒子を紫外線遮蔽材として用い、紫外線遮蔽性、透明性及び耐久性に優れた塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線には皮膚障害、白内障等の人体への生理障害や、食品、及び木材、プラスチックス、紙、繊維等の有機材料、医薬、添加剤等の有機薬剤、それらを含む各種工業製品等の劣化、変褪色といった有害な化学変化を引き起こす作用があり、紫外線から防御するために、様々な方法が用いられている。例えば、車両、建造物等の窓、各種の包装用フィルム等の透明性基材や、木材等の素材自体の色調や風合が重視される基材では、その表面に紫外線遮蔽材を含む透明な被覆層を形成することで、内部または基材を紫外線から保護している。このような被覆層には、優れた紫外線遮蔽能が求められると同時に、優れた透明性が求められる。
【0003】
例えば、紫外線遮蔽材としてサリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の有機紫外線吸収剤を用い、透明な硬化性バインダーに配合した塗料を、基材上に塗布し塗膜化すると、透明紫外線遮蔽塗膜が得られる。しかし、有機紫外線吸収剤はそれ自体が紫外線により分解されたり、塗膜上にブリードしたりするので、経時的に塗膜の紫外線遮蔽能が低下してしまい、また、有機紫外線吸収剤には有毒なものが少なくなく、用途が制限された。一方、真空蒸着、スパッタリング等により、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の紫外線遮蔽性を有する無機酸化物の薄膜を、基材上に形成させる方法は、製造に大掛かりな設備が必要で、製造コストが高いという欠点があった。そこで、前記の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機酸化物の微粒子を、有機紫外線吸収剤に替えて紫外線遮蔽塗料に用いると、耐久性や安全性の高い紫外線遮蔽塗膜が低コストで得られる。ところが、通常、無機酸化物微粒子は、硬化性バインダーより可視光の屈折率が大きく、バインダーとの界面で可視光の強い散乱が生じるので、所望の透明性が得られにくく、透明性と紫外線遮蔽能を同時に満足できる塗膜は得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上に述べた従来技術の問題点を克服し、無機酸化物微粒子を用いても透明性に優れた紫外線遮蔽塗膜を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、これらの問題点を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、無機酸化物微粒子を高濃度に配合した塗膜は、意外にも紫外線遮蔽能が高く、しかも透明性に優れたものになることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含む塗膜において、無機酸化物微粒子を40〜90重量%の範囲で含み、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲であることを特徴とする透明紫外線遮蔽塗膜である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においては、紫外線遮蔽能の指標として300nmの波長を有する紫外光の透過率を測定する。また、透明性の指標として550nmの波長を有する可視光の透過率を測定する。本発明でいう透過率とは、平行透過光と拡散透過光を合わせた全透過光の、入射光に対する割合である。それぞれの透過率を測定した結果、本発明の透明紫外線遮蔽塗膜は、300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲であって、優れた紫外線遮蔽能と透明性とを同時に満足できるものである。本発明の透明紫外線遮蔽塗膜においては、紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含み、その無機酸化物微粒子の塗膜中の含有量が、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲、好ましくは40〜80重量%の範囲である。無機酸化物微粒子を高い濃度で配合することにより、無機酸化物微粒子を用いた従来の塗膜には無い優れた透明性と紫外線遮蔽能とを付与すると共に、耐久性に優れ、安全性が高いという特性も備えている。無機酸化物微粒子の濃度が、前記範囲より少ないと、十分な紫外線遮蔽能が得られず、また、多くなっても更なる効果は得られず、むしろ塗膜強度が低下してしまう。
【0008】
透明性が高くなる理由は、おそらくは次のように考えられる。一般的に、光はその波長より小さいものを解像することが、困難であるという性質を有する。無機酸化物微粒子の濃度が本発明のように非常に高い領域では、塗膜中の微粒子が密集して、微粒子間の距離が可視光の波長よりも短くなる。前述のように、無機酸化物微粒子はバインダーとの屈折率の差が大きく、その界面で可視光が強く散乱されるが、本発明の場合、可視光の散乱面が隣接する微粒子間に存在すると、個別に解像できなくなり、このため、可視光は塗膜中を透過し易くなるので、透明性が向上するのではないかと考えられる。一方、無機酸化物微粒子の紫外線遮蔽能は、その紫外線吸収能に大きく依存しており、濃度を高くして紫外線散乱能が低下してもほとんど影響を受けず、むしろ微粒子数が増えることで、紫外線遮蔽能が大きくなると考えられる。
【0009】
従来の塗膜ではその膜厚を薄くすると透明性が改善されるが、紫外線遮蔽能が低下してしまう。しかしながら、本発明の塗膜は、塗膜の膜厚を薄くしても、膜厚を好ましい範囲である0.05〜5μmにしても、透明性が更に高くなると共に、紫外線遮蔽能も十分保持される。すなわち、本発明のより好ましい透明紫外線遮蔽塗膜は、膜厚を0.05〜5μmの範囲にしたときにでも、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲にある。また、無機酸化物微粒子によっては、特定の波長の光を強く屈折するため、その無機酸化物微粒子を配合した塗膜の可視光の透過率が大きくても、塗膜が着色して所謂「曇り」が生じ、見掛け上の透明性が低くなる場合があるが、前記範囲の膜厚にすると、「曇り」の無い塗膜が得られる。例えば、このような特性はヘイズ値で表され、前記範囲の膜厚を有する本発明の塗膜は、0〜10%の範囲のヘイズ値を有する。これは、塗膜に入射した可視光が、無機酸化物粒子と接触する確率が小さくなり、透過し易くなるからではないかと考えられる。膜厚が前記範囲より厚くなると、所望の効果が得られず、前記範囲より薄くなると、塗膜が剥離し易くなるので好ましくない。膜厚のより好ましい範囲は、バインダーの種類によって異なるが、例えば、アクリル系樹脂または塩ビ・酢ビ共重合樹脂であれば0.05〜2.0μmの範囲が好ましい。すなわち、本発明のより好ましい透明紫外線遮蔽塗膜は、紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含み、その無機酸化物微粒子の塗膜中の含有量を、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲、好ましくは40〜80重量%の範囲とすることにより、0.05〜5μmの膜厚としたときに、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲であり、しかも、ヘイズ値が0〜10%の範囲を示す優れた透明紫外線遮蔽塗膜である。
【0010】
本発明で用いる無機酸化物微粒子は、その形状が球状、紡錘状、棒状、針状、樹枝状、不定形等特に制限されない。また、平均粒子径(電子顕微鏡法により測定した一次粒子の50%粒子径)が0.001〜0.1μmの範囲にあると、特に透明性と紫外線遮蔽能とが優れたものとなり、0.005〜0.05μmの範囲が更に好ましい。(無機酸化物微粒子の形状が紡錘状、棒状、針状等の場合は、平均短軸径を平均粒子径とする。)無機酸化物微粒子としては、紫外線遮蔽能を有するものであれば制限は無く、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄等公知のものを用いることができ、これらを単独で用いても良く、または2種以上を混合物としたり、2種以上を複合酸化物とする等組合せて用いても良い。中でも、二酸化チタンは紫外線遮蔽能、透明性、安定性とのバランスに優れているので好ましい。二酸化チタンは含水酸化物や水酸化物でも良く、ルチル型、アナターゼ型等の結晶性のものや不定形であっても良いが、ルチル型二酸化チタンは耐光性に優れ、塗膜の耐久性を高くするので特に好ましい。
【0011】
二酸化チタンの表面には無機化合物が被覆されていても、あるいは、内部に異種の元素が含まれていても良く、これらを組合せて用いることもできる。例えば、酸化アルミニウムまたはその水和物を表面に被覆すると、二酸化チタンと有機系バインダーとの親和性が向上するので好ましく、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムまたはそれらの水和物の被覆は、二酸化チタンの耐候性を向上させるので、窓等の屋外用途に適している。特に、二酸化チタンの表面に酸化アルミニウムまたはその水和物や酸化ケイ素などの屈折率の低い化合物を被覆すると、二酸化チタンの見掛けの屈折率を下げることが期待でき、硬化性バインダーとの屈折率の差を小さくし、その界面で可視光が強く散乱されるのを制御することができるため、好ましい形態である。これらの好ましい被覆量は、TiO2に対し、酸化アルミニウムはAl2O3として、酸化ケイ素はSiO2として、酸化ジルコニウムはZrO2として、いずれも1〜20重量%の範囲であり、これらを1種被覆しても良く、2種以上を混合したり、積層する等組合せて被覆しても良い。あるいは、特願2002−60772号に開示されるコバルトを結晶中に含有するルチル型二酸化チタン微粒子や、特願2002−60773号に開示されるマンガンを結晶中に含有するものも、耐候性に優れているので好ましい。また、これらの二酸化チタン微粒子には、分散性を向上させる目的で、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノシロキサン類、シラン系、チタネート系、アルミニウム系等のカップリング剤類、ステアリン酸等の高級脂肪酸類等の有機化合物を、好ましくは1〜20重量%の範囲で、被覆することもできる。特に、二酸化チタンの表面に酸化アルミニウム、その水和物または酸化ケイ素に加え、前記有機化合物を被覆するのが好ましい形態である。
【0012】
本発明で用いることのできる硬化性バインダーは、透明性が高いものであれば、焼付硬化型、常温硬化型、紫外線硬化型、あるいは、有機溶剤溶解型、水溶解型やエマルジョン型等特に制限は無く、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、塩ビ・酢ビ共重合体樹脂、変成シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の有機系バインダーや、アルキルシリケート、アルキルチタネート等の無機バインダーが挙げられる。また、本発明では無機酸化物微粒子、硬化性バインダー以外にも、例えば、HALS等の光安定剤、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、硬化触媒等の硬化助剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の界面活性剤等の、各種の添加剤が含まれていても良い。
【0013】
本発明の塗膜を得るには、先ず、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとに、必要に応じて水、有機溶剤等の溶媒を加え、サンドミル、ディスパー、ペイントコンディショナー、ペイントシェーカー、ボールミル等の分散機を用いて塗料化する。前記の光安定剤、酸化防止剤、硬化助剤、界面活性剤等の各種添加剤は、分散時に加えても、分散後に加えても良い。次いで、得られた塗料を、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、静電塗装等の公知の方法により、所定の膜厚になるように基材上に塗布した後、硬化性バインダーの性質に応じ、加熱、自然乾燥、UV照射等の方法により硬化させる。無機酸化物微粒子の濃度が前記範囲内にあっても、例えば、70重量%以上のように著しく高い領域では、塗膜を前記の好ましい膜厚にしても、塗膜に曇りが生じ、ヘイズ値が低下することがある。おそらくは、塗膜表面に無機酸化物微粒子が突出して塗膜の平滑性を損ね、可視光を拡散させるのではないかと考えられる。このような場合は、本発明の塗膜上に、更にクリアー塗料を塗布し、塗膜を形成させれば、ヘイズ値が改善される。クリアー塗料には前記の透明な硬化性バインダーを用いることができ、基材表面に塗布する塗料に含まれるものと、同種であっても異種であっても良い。すなわち、本発明のより好ましい透明紫外線遮蔽塗膜は、紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含む層上にクリアー層を形成した塗膜であって、無機酸化物微粒子を、無機酸化物微粒子とクリアー層を除く下層の硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲、好ましくは40〜80重量%の範囲とすることにより、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲を示す優れた透明紫外線遮蔽塗膜である。しかも、0.05〜5μmの膜厚としたときに、ヘイズ値が0〜10%の範囲を示す優れた透明紫外線遮蔽塗膜とすることもでき、より好ましい形態である。
【0014】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
実施例1〜3
無機酸化物微粒子として、酸化アルミニウム水和物で被覆された平均粒子径0.04μmの略球状二酸化チタン微粒子(TTO−55(B):石原産業製)を用い、処方1にて容量70cm3のガラス製ベッセルにし込み、ペイントシェーカーにて3時間分散させた後、処方2、3、4にて塗料化して、それぞれ濃度が46、62、75重量%の塗料(いずれも固形分体積濃度は10%)とした。これらの塗料を、#3ワイヤーバーコーターにて、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、100℃で20分間乾燥させ、膜厚0.7μmの本発明の塗膜を得た。それぞれを実施例1〜3(試料A〜C)とする。
【0016】
(処方1)
無機酸化物微粒子 4.2 g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 2.24g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 16.1 g
0.4mmφ チタニアビーズ 50 g
【0017】
(処方2)
処方1の分散液 22.54g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 5.66g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 1.65g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 21.2 g
【0018】
(処方3)
処方1の分散液 22.54g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 1.87g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 0.86g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 7.0 g
【0019】
(処方4)
処方1の分散液 22.54g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 0.47g
【0020】
実施例4〜6
TTO−55(B)に替えて、酸化アルミニウム水和物で被覆された平均粒子径0.02μmの略球状二酸化チタン微粒子(TTO−51(A):石原産業製)を用い、#5ワイヤーバーコーターにて膜厚を1.2μmとした以外は実施例1〜3と同様にして、本発明の塗膜を得た。それぞれを実施例4〜6(試料D〜F)とする。
【0021】
実施例7〜9
TTO−51(A)に替えて、酸化アルミニウム水和物及びステアリン酸で被覆された、平均短軸径0.01μm、平均長軸径0.5μmの紡錘状二酸化チタン微粒子(TTO−V−3:石原産業製)を用いた以外は実施例4〜6と同様にして、本発明の塗膜を得た。それぞれを実施例7〜9(試料G〜I)とする。
【0022】
実施例10〜12
実施例7〜9の塗膜上に、アクリル系樹脂(アクリディック47−712:大日本インキ化学工業製)/ブチル化メラミン系樹脂(スーパーベッカミンL117:大日本インキ化学工業製)=8/2(重量比)をクリアー塗料(固形分体積濃度25%)として、#5ワイヤーバーコーターで塗布した後、100℃で20分間乾燥させ、本発明の塗膜を得た。それぞれを実施例10〜12(試料J〜L)とする。
【0023】
実施例13
無機酸化物微粒子として平均短軸径0.01μm、平均長軸径0.03μmの紡錘状二酸化チタン(a)を用いた。この紡錘状二酸化チタン微粒子(a)の結晶中にはTiO2に対しCoOとして1重量%のコバルト、SiO2として5重量%のケイ素、Al2O3として5重量%のアルミニウムを含み、表面にはTiO2に対し、Al2O3として5重量%の酸化アルミニウム水和物、5重量%のアミノプロピルトリメトキシシランが被覆されている。上記(a)を、処方5にて容量70cm3のガラス製ベッセルにし込み、ペイントシェーカーにて3時間分散させ、濃度が46、62、75重量%の塗料(固形分体積濃度は10%)とした。これらの塗料を、#5ワイヤーバーコーターにて、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、100℃で30分間乾燥させ、膜厚1.2μmの本発明の塗膜を得た。これを実施例13(試料M)とする。
【0024】
(処方5)
無機酸化物微粒子 4.2 g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 4.11g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 0.86g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 23.1 g
0.4mmφ チタニアビーズ 50 g
【0025】
実施例14
無機酸化物微粒子として、酸化アルミニウム水和物で被覆された平均粒子径0.02μmの略球状二酸化チタン微粒子(TTO−51(A):石原産業製)にヘキシルトリメトキシシラン(HTMtS)5重量%被覆処理したものを用い、処方6にて容量70cm3のガラス製ベッセルにし込み、ペイントシェーカーにて3時間分散させ、濃度が62重量%の塗料(固形分体積濃度は10%)とした。この塗料を、#5ワイヤーバーコーターにて、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、100℃で30分間乾燥させ、膜厚1.2μmの本発明の塗膜を得た。これを実施例14(試料N)とする。
【0026】
(処方6)
無機酸化物微粒子 4.2 g
塩ビ・酢ビ共重合樹脂ワニス:MR−110(日本ゼオン製) [トルエン/シクロヘキサノン(重量比1/1)溶液、不揮発分20%] 12.9 g
トルエン/シクロヘキサノン(重量比1/1) 15.3 g
0.4mmφ チタニアビーズ 50 g
【0027】
比較例1〜3
実施例1〜3、実施例4〜6、実施例7〜9において、処方7にて塗料化し、塗料の濃度を29重量%とした以外は同様にして塗膜を得た。それぞれを比較例1(試料O)、比較例2(試料P)、比較例3(試料Q)とする。
【0028】
(処方7)
処方1の分散液 11.3 g
アクリル系樹脂:アクリディック47−712(大日本インキ化学工業製)
[不揮発分50%] 7.1 g
ブチル化メラミン系樹脂:スーパーベッカミンL117(大日本インキ化学工業製)[不揮発分60%] 1.7 g
トルエン/酢酸ブチル混合溶剤(重量比1/1) 26.6 g
【0029】
比較例4
比較例3の塗膜上に、実施例10〜12と同様にしてクリアー塗料を塗布し、塗膜化したものを比較例4(試料R)とする。
【0030】
比較例5
実施例14において、処方8にて塗料化し、塗料の濃度を29重量%とした以外は同様にして塗膜を得た。これを比較例5(試料S)とする。
【0031】
(処方8)
無機酸化物微粒子 2.1 g
塩ビ・酢ビ共重合樹脂ワニス:MR−110(日本ゼオン製) [トルエン/シクロヘキサノン(重量比1/1)溶液、不揮発分20%] 25.7 g
トルエン/シクロヘキサノン(重量比1/1) 19.0 g
0.4mmφ チタニアビーズ 50 g
【0032】
評価1
実施例1〜14及び比較例1〜5で得られた塗膜(試料A〜R)の、300nm及び550nmの波長を有する光の透過率(T300、T550)を、積分球を装着した分光光度計(UV−2200A型:島津製作所製)にて、ヘイズをヘイズメーター(300A型:日本電色工業製)にて測定した。結果を表1に示す。なお、試料A〜Rは、優れた耐久性と安全性を有することを確認した。また、無機酸化物微粒子として酸化亜鉛、酸化セリウムを用いた場合でも効果を確認した。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明の塗膜は、紫外線遮蔽能と透明性に優れており、本発明を表面に形成されたガラス、プラスチックス等の透明性基材は、透明性基材本来の機能を損なうことなく、内容物を紫外線から効果的に保護することができる。また、木材等に本発明を適用すると、基材の有する色調、風合等を損ねることなく、劣化を防ぐことができる。
Claims (6)
- 紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含む塗膜において、無機酸化物微粒子を40〜90重量%の範囲で含み、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲であることを特徴とする透明紫外線遮蔽塗膜。
- 膜厚が0.05〜5μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の透明紫外線遮蔽塗膜。
- ヘイズ値が0〜10%の範囲にあることを特徴とする請求項2記載の透明紫外線遮蔽塗膜。
- 無機酸化物微粒子が0.001〜0.1μmの範囲の平均粒子径を有することを特徴とする請求項1記載の透明紫外線遮蔽塗膜。
- 無機酸化物微粒子が二酸化チタン微粒子であることを特徴とする請求項1記載の透明紫外線遮蔽塗膜。
- 紫外線遮蔽材としての無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとを含む層上にクリアー層を形成した塗膜において、無機酸化物微粒子を、無機酸化物微粒子と硬化性バインダーとの合量に対して40〜90重量%の範囲で含み、その塗膜の300nmの波長を有する光の透過率が0〜1%の範囲であり、かつ、550nmの波長を有する光の透過率が90〜100%の範囲であることを特徴とする透明紫外線遮蔽塗膜。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20071218 |