JP2004002153A - ガラス光学素子の製造方法 - Google Patents

ガラス光学素子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004002153A
JP2004002153A JP2003047114A JP2003047114A JP2004002153A JP 2004002153 A JP2004002153 A JP 2004002153A JP 2003047114 A JP2003047114 A JP 2003047114A JP 2003047114 A JP2003047114 A JP 2003047114A JP 2004002153 A JP2004002153 A JP 2004002153A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
glass
temperature
dpas
mold
molding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003047114A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4603767B2 (ja
Inventor
Yasuhiro Fujiwara
藤原 康裕
Gakuroku Suu
鄒 学禄
Hiroyuki Sakai
坂井 裕之
Shinichiro Hirota
広田 慎一郎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hoya Corp
Original Assignee
Hoya Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hoya Corp filed Critical Hoya Corp
Priority to JP2003047114A priority Critical patent/JP4603767B2/ja
Publication of JP2004002153A publication Critical patent/JP2004002153A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4603767B2 publication Critical patent/JP4603767B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】型表面に施された離型膜を損傷したり、ガラス素材の表面で発泡や、光学素子表面の放射状のキズを生じることなしに、高屈折率高分散を有するガラスをプレス成形してガラス光学素子を製造できる方法を提供すること。
【解決手段】対向し、かつ成形面に炭素系膜を有する、一対の成形型により、加熱軟化したガラス素材を加圧成形することによってガラス光学素子を製造する方法。Nb、WO、及びTiOの少なくとも一種を含有し、屈折率(nd)が1.65以上、アッベ数(νd)が35以下であり、かつ屈伏点(Ts)が570℃以下であるガラスからなるガラス素材を用い、ガラス粘度で10〜10dPaSに相当する温度に加熱した前記ガラス素材を、ガラス粘度で10〜1012dPaSに相当する温度に加熱した前記成形型により加圧成形する工程(但し、ガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が10dPaS相当の温度の場合、及びガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が1012dPaSに相当する温度の場合を除く)を含む。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形後に研削又は研磨を必要としない超精密非球面レンズ等を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高屈折率、高分散のガラスを用いた光学素子のニーズが非常に高まっている。特に、カメラ、デジタルカメラ用の光学系には、このようなガラス光学素子は、非常に重要な光学部品のひとつである。さらに、高屈折率高分散のガラスを精密プレスで成形して、研削研磨をすることなしに、非球面レンズ等を成形する方法も必要とされていた。そして、例えば、特許文献1(特開平7−10556号公報)には、精密プレスに適した、成形型及びガラス素材それぞれの温度域が記載されている。
【0003】
高屈折率、高分散ガラスとしては、例えば、特許文献2(特開平1−308843号公報)や特許文献3(特開昭62−3103号公報)に記載のガラスが知られている。しかし、上記ガラス成分中には、PbOが相当量含まれている。そのため、環境上好ましくないという問題があり、また、光学部品のプレス成形の際に成形室中で鉛が還元されて、成形型に析出する問題がある。また、上記ガラス子は屈伏点が比較的高いため、成形温度を高くせざるをえない。そのため、成形により型材を劣化させるという問題、及び、成形中にガラス中に結晶が析出するという問題などがあった。
【0004】
また、特許文献4(特開2001−58845号公報)には、屈折率(nd)が1.83以上、アッベ数(νd)が26以下である高屈折率高分散の光学ガラスが開示されている。しかし、このガラスは、プレス成形に適する温度に加熱すると、還元されやすい成分(Nb、WO、TiO)が型表面で反応して、型表面に施された離型膜を損傷したり、ガラス素材の表面で発泡を生じたり、プレス後の素子の表面に放射状のキズが生じたりする問題がある。従って、このガラスも、精密プレスに好適なものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−10556号公報
【特許文献2】特開平1−308843号公報
【特許文献3】特開昭62−3103号公報
【特許文献4】特開2001−58845号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、型表面に施された離型膜を損傷しることがなく、かつガラス素材の表面での発泡や、光学素子表面に放射状のキズを生じることなしに、さらには、成形時のワレを防止しつつ高屈折率及び高分散を有するガラスをプレス成形してガラス光学素子を製造できる方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の通りである。
(1)対向し、かつ成形面に炭素系膜を有する、一対の成形型により、加熱軟化したガラス素材を加圧成形することによってガラス光学素子を製造する方法において、
Nb、WO、及びTiOの少なくとも一種を含有し、屈折率(nd)が1.65以上、アッベ数(νd)が35以下であり、かつ屈伏点(Ts)が570℃以下であるガラスからなるガラス素材を用い、
ガラス粘度で10〜10dPaSに相当する温度に加熱した前記ガラス素材を、ガラス粘度で10〜1012dPaSに相当する温度に加熱した前記成形型により加圧成形する工程(但し、ガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が10dPaS相当の温度の場合、及びガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が1012dPaSに相当する温度の場合を除く)を含むことを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
(2)前記ガラス素材が、P、SiO、及びBの少なくとも1種をさらに含有するガラスからなり、かつNb、WO、及びTiOの含有量の和をC(モル%)としたとき、0<C<35である、(1)に記載の製造方法。
(3)前記ガラス素材の加熱温度が、ガラス粘度で10〜10dPaSに相当する温度である(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記成形型の加熱温度が、ガラス粘度で10〜1011dPaSに相当する温度である(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記ガラス素材が、モル%表示で、
      15〜40%、
SiO      0〜10%、
      0〜20%、
Al      0〜5%、
LiO      5〜30%、
NaO      0〜30%、
ZnO       0〜20%、
BaO       0〜20%、
Nb     2〜30%、
WO        2〜15%、
TiO      0〜15%、
(但し、Nb、WO及びTiOの合計量は10%以上、35%未満)
を含み、上記成分の合計量が95%以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)前記加圧成形が、非酸化性雰囲気において行われることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)前記ガラス素材に炭素系膜が被覆されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下の知見を得るに至った。
高屈折率及び高分散特性を得るために、ガラスにNb、WO、及びTiO等の成分を含有させることが知られている。しかし、これら成分を含有したガラスをプレス成形に用いると、レンズの表面に放射状の傷が現れやすく、また、発泡が発生しやすい。これは、上記成分が還元されやすい性質をもっているため、成形工程中に、型との界面において反応が起こることによるものであると考えられる。さらに、プレス成形したレンズと成形型との離型性を向上させるために、型やガラス素材の表面に炭素系膜を施した場合には、上記成分が、炭素系膜との間で反応し、放射状の傷や発泡を誘発すると考えられる。
成形型の成形面上に炭素系の離型膜を設けることで、安価に、優れた離型性が得られるため、非常に有効である。しかし、この離型膜を有する成形型を用いて上記のような高屈折率かつ高分散のガラス素材を加圧成形すると、高温下では、成形面とガラスの界面で反応が生じ、放射状のキズが発生しやすいことが分かった。
さらに、こうした高屈折率かつ高分散のガラス素材は割れやすく、上記成形面での反応を抑制するためにプレス温度を下げると、さらに成形時に割れを起こし易い。
【0009】
そこで、本発明者らは、上記知見に基づき、加圧成形時の成形型とガラス素材との温度域について検討を重ねた結果、放射状の傷や発泡等の問題なく、精密プレス成形可能なガラス光学素子を製造する条件を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の製造方法は、ガラス粘度で10〜10dPaSに相当する温度に加熱したガラス素材を、ガラス粘度で10〜1012dPaSに相当する温度に加熱した成形型により加圧成形する工程を含むことを特徴とする。但し、ガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が10dPaS相当の温度の場合、及びガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が1012dPaSに相当する温度の場合は、実施例にも示すように本発明の効果が得られないので、除く。
【0010】
尚、本明細書において、特に表記のない限り、ガラス粘度10dPaSは、0.5×10dPaS以上、5×10dPaS未満の範囲を意味するものとする。
【0011】
本発明の製造方法は、加熱軟化した状態のガラス素材を加熱した成形型によって加圧成形するものであるが、ガラス素材を、型の外で所定温度に加熱してから、所定温度に加熱された型内に導入し、直ちに加圧成形を開始することが好ましい。
加圧成形開始時に型温度が、ガラス粘度で1012dPaSに相当する温度未満であると、ガラス素材が充分に延びて成形面が転写される状態に至らないための形状不良(ノビ不良)が生じたり、ガラス素材の変形が追従できずにワレが起きやすい。また、ガラス素材の温度が、ガラス粘度で10dPaSに相当する温度未満であると、上記同様の問題が発生する。一方、型温度が、ガラス粘度で10dPaSに相当する温度を超えると、又はガラス素材の温度が、ガラス粘度で10dPaSに相当する温度を超えると、成形は可能であるが、成形後の光学素子に、放射状のキズが発生するか、又は、発泡が起きて、ガラス素子の面精度の不良や外観不良が発生することがある。この発泡や放射状キズは、本発明において使用されるような高屈折率、高分散のガラス素材に特に起きやすいものであることを、本発明者らは見出した。
【0012】
即ち、本発明においては、ガラス素材に含有される高屈折率・高分散成分に起因して(特に、還元されやすい成分が多いため)成形の際に表面の反応性が高いため、ガラス素材をプレスすると、放射状のキズや発泡が発生しやすい。しかし、ガラス素材及び成形型の温度域を上記のように規定することで、上記のような問題なく、優れたレンズの形状精度、面精度を有するガラス光学素子を得ることができる。
【0013】
上述のように、ガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が10dPaS相当の温度の場合、及びガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が1012dPaSに相当する温度の場合は、本発明の効果が得られない。従って、この点を考慮し、かつ実施例で示した結果も考慮すると、加圧成形工程では、ガラス粘度で10〜10dPaSに相当する温度に加熱したガラス素材を用いることが好ましく、また、ガラス粘度で10〜1011dPaSに相当する温度に加熱した成形型を用いることが好ましい。さらに好ましくは、ガラス粘度で1×10〜1×10dPaSに相当する温度のガラス素材を、ガラス粘度で1×10dPaS以上、1×1010dPaS未満に相当する温度の成形型によって加圧成形すると、成形サイクルタイムが短くなり有利であり、かつ成形時の発泡や放射状のキズの発生を抑えて品質の優れた光学素子が得られる。
【0014】
これらの範囲内の温度で加熱したガラス素材及び/又は成形型を使用すれば、プレス時に所望の肉厚に短時間で到達するために生産性に優れ、かつ放射状の傷がなく品質に優れたガラス光学素子を得ることができる。尚、上記範囲内であれば、成形する光学素子の形状に応じて、ガラス素材及び成形型の温度は適宜選択することができる。例えば、周囲に平面部を有する凸レンズなど、割れやすい形状のときには型温度をさらに高めのガラス粘度で5×10〜1×10dPaSに相当する温度とし、ガラス素材をガラス粘度で1×10〜1×10dPaSに相当する温度とすることができる。また、ガラス素材と成形型の温度差は、10〜70℃程度とすることができる。
【0015】
以下、本発明において使用されるガラス素材について説明する。
本発明において使用されるガラス素材は、屈折率(nd)が1.65以上、アッベ数(νd)が35以下であり、かつ屈伏点(Ts)が570℃以下であるガラスからなる。このガラスは、好ましくは屈折率(nd)が1.68以上、である。ガラスの屈折率(nd)に上限は無いが、実用上、ガラスの屈折率(nd)は、2.0程度以下であり、1.83未満であることが好ましい。
上記ガラスは、好ましくはアッベ数(νd)が33以下、さらに好ましくは32以下である。ガラスのアッベ数(νd)に下限は無いが、実用上、ガラスのアッベ数(νd)は、20程度以上である。屈伏点(Ts)の好ましい範囲については後述する。
【0016】
本発明において使用されるガラス素材は、リン酸塩系、ケイ酸塩系、ホウ酸塩系、及びそれらの混合系ガラスであることができ、高屈折率・高分散の成分として、Nb、WO、及びTiOの少なくとも一種を含有する。Nb、WO、及びTiOの含有量の和をC(モル%)としたとき、0<C<35、であることが好ましく、0<C<32であることがより好ましい。Cが35モル%未満であれば、ガラス中で特に還元されやすい成分であるNb、W、Tiが、プレス可能な温度範囲において還元されて、ガラスが着色してしまうおそれがなく、また、離型性の向上のため、成形型やガラス素材の表面に炭素系膜を被覆した場合でも、膜とガラス素材表面とが反応して光学素子にダメージを与えにくくなる。
【0017】
上記ガラス素材の屈伏点(Ts)は、570℃以下である。特に、高屈折率・高分散成分としてWOを含有する場合には、WOの含有量をCw(モル%)とすると、Ts≦570℃であって、かつTs+7C≦610であり、WOは2〜15モル%とすることが好ましく、前記関係を満たすとともにTs+6C≦590とすることがより好ましい。屈伏点温度が570℃を超えるガラス素材の場合、プレス温度が比較的高いため、プレスの際にレンズ表面に発泡や放射状の傷やブツなどの欠陥が残ってしまい、品質の良いレンズは得られない。従って、屈伏点温度が570℃以下のガラス素材を用いる必要がある。屈伏点温度は、より好ましくは550℃以下、さらに好ましくは540℃以下である。また、Ts+7C>610では、このガラス中で特に還元されやすい成分であるWが、プレス可能な温度範囲においてプレス用金型の表面で反応し、成形される光学素子にダメージを与えやすくなる傾向がある。そのため、Ts+7C≦610とすることが好ましい。より好ましくは、前記関係を満たすとともにTs+6C≦590とすることである。また、WO含有量が2モル%未満となると、WOが少なすぎて屈伏点温度Ts>570℃となる可能性が高まり、かつガラスの安定性も悪化する。そのためTs+7C≦610を保ちながら、WOの含有量を2%以上にすることがより好ましい。しかし、一方、WO含有量が15モル%を超える場合、WOが多すぎてガラスが着色してしまう恐れがあるため、Ts+7C≦610を保ちながら、WOの含有量を15%以下に抑えることが好ましい。上記範囲においてより好ましくはTs+6C≦590で、かつWOの含有量が2〜12%の範囲である。さらに好ましくは、Ts+6C≦580である。
【0018】
具体的には、上記ガラス素材は、モル%表示で、
      15〜40%、
SiO      0〜10%、
      0〜20%、
Al     0〜5%、
LiO      5〜30%、
NaO      0〜30%、
ZnO       0〜20%、
BaO       0〜20%、
Nb     2〜30%、
WO       2〜15%、
TiO      0〜15%、
(但し、Nb、WO及びTiOの合計量は10%以上、35%未満)
を含み、上記成分の合計量が95%以上であることが好ましい。上記各成分の役割を以下に説明する。尚、各成分の含有量は、特記しない限りモル%にて表示する。
【0019】
は、上記ガラス素材に、必須成分として含まれることが好ましい。Pは、ガラスの網目構造の形成物であり、ガラスに製造可能な安定性を持たせるための成分である。しかし、Pの含有量は40%を超えると、ガラスのガラス転移温度や屈伏点温度の上昇、屈折率の低下、及びアッべ数の上昇を招くのに対し、15%未満では、ガラスの失透傾向が強くなりガラスが不安定となるので、Pの含有量は15−40%の範囲とする。より好ましくは17−37%の範囲である。
【0020】
は、上記ガラス素材に必須成分として含まれることが好ましく、ガラスの溶融性の向上やガラスの均質化に非常に有効な成分である。それと同時に、少量のBを導入することで、ガラス内部にあるOHの結合性を変えることができ、プレス時のガラスの発泡を抑制するために非常に有効な成分である。しかし、Bは20%より多く導入すると、高屈折率を保つために多量のNbを導入したガラスが非常に不安定となるので、その導入量は20%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは1−15%の範囲である。
【0021】
SiOは、Pと同様にガラスの網目構造の形成物として働き、ガラスの耐久性や安定性の向上、ガラスの液相温度における粘性向上に寄与する成分であり、上記ガラス素材に必須成分として含まれることが好ましい。しかし、WOとNbなどの高屈折率成分を多く含有させたガラスには10%より多くのSiOを導入すると、(1)ガラスが結晶化しやすくなる、(2)屈折率も大きくダウンする、(3)ガラスが溶けにくくなる、(4)屈伏点温度や液相温度が高くなるため、その導入量は10%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは8%以下である。
【0022】
Nbは、PbOを使用せずにガラスに高屈折率・高分散などの特性を持たせるために欠かせない、非常に重要な働きをする成分である。しかし、その導入量が30%を超えると、ガラスの転移温度や屈伏点温度が高くなり、安定性も悪化し、高温溶解性も悪くなるばかりでなく、精密プレス時にガラスが発泡や着色を起こしやすくなる。一方、その導入量が2%未満となると、ガラスの屈折率が低下し、分散も小さくなるので、Nbの含有量は2−30%の範囲が適当である。好ましくは5−25%の範囲である。
【0023】
WOは、上記ガラス素材において重要な成分であり、PbOを使用することなしに低融点で、しかも高屈折率・高分散特性をガラスに与えることのできる、最も有効な成分である。WOはアルカリ金属酸化物と同様にガラスの転移温度や屈伏点温度を下げる働きを示し、また、屈折率を上げる効果もある。しかし、あまりにも多くのWOを導入すると、例えばその導入量が15%を超えると、ガラスが着色しやすくなるばかりか、ガラスの高温粘性も低くなるので、精密プレス用ガラスプリフォームの作成が難しくなる。それに対し、2%未満ではガラスの転移温度や屈伏点温度が高くなり、精密プレス時にガラスが発泡しやすくなる。そこで、その含有量は2−15%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは2−12%の範囲である。
【0024】
TiOはガラスの屈折率を高め、失透安定性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が15%を超えると、ガラスの失透安定性は急激に悪化し、屈伏点温度も液相温度も急上昇し、精密プレス時にガラスが着色しやすくなるので、その導入量は15%以下に制限される。好ましくは12%以下である。
なお、Nb、WO、TiOの合計量が35%以上になると、高屈折率・高分散の特性は得られるが、溶解したガラスが着色し、失透安定性も悪化する。その合計量が10%以上であれば、所期の目的とする屈折率及び分散などの光学特性が得やすくなる。そこで、Nb、WO、及びTiOの合計量は10%以上、35%未満の範囲とする。Nb、WO、及びTiOの合計量は、好ましくは15%以上、35%未満、より好ましくは16〜33%、さらに好ましくは16〜32%の範囲である。
【0025】
BaOはガラスの屈折率を高め、失透安定性を向上させ、液相温度を低下させるために必要不可欠の成分である。特に多量のWOを導入する場合、BaOを導入することによってガラスの着色を押さえ、失透安定性を高める効果が大きい。しかし、BaOを20%を超えて多く導入すると、ガラスが熱的に不安定となるばかりでなく、屈伏点温度も高くなるため、BaOの導入量は20%以下にすることが好ましい。より好ましくは0−18%の範囲である。
【0026】
ZnOはガラスの屈折率や分散を高めるために導入された成分で、少量のZnOの導入でガラスの転移温度や屈伏点温度または液相温度を低める効果もある。しかし、多量に導入すると、ガラスの失透安定性が著しく悪化し、液相温度も逆に高くなる恐れがあるため、その導入量を20%以下にすることが好ましい。より好ましくは18%以下である。
【0027】
LiO、NaO、及びKOなどのアルカリ金属酸化物は、いずれもガラスの耐失透性を良くし、屈伏点温度や液相温度を低下させ、ガラスの高温溶融性をよくするために導入される成分である。そのため、LiOを5%以上導入することが好ましい。しかし、LiOとNaOをそれぞれ30%を超えて導入すると、或いはLiO、NaO、及びKOの合計量を45%を超えて導入すると、ガラスの安定性が悪くなるばかりでなく、目的とする高屈折率・高分散特性が得にくくなるので、LiOとNaOの導入量はそれぞれ30%以下とすることが好ましい。またKOの導入量は15%以下にすることが好ましい。より好ましくは、LiOは5−25%、NaOは3−25%、KOは0−8%の範囲とする。LiO、NaO、及びKOの合計量は45%以下とすることが好ましい。
【0028】
任意成分であるAlは適量を添加することによりガラスの液相温度における粘性の向上やガラスの耐久性の改善に非常に効果がある。しかし、5%を超えてAlを導入すると、ガラスが溶けにくくなるとともに、屈伏点温度や液相温度も高くなるので、その導入量を5%以下にすることが好ましい。好ましくは4%以下である。
【0029】
AsとSbはガラスの清澄剤として有効である。しかし、いずれも1%を超えて添加すると、精密プレス時にガラスが発泡しやすくなるので、その導入量は1%以下とすることが好ましい。さらに、La、Y、Gd、ZrO、Ta、CaO、MgO、及びCsOなどの成分も本発明の目的を損なわない程度であれば5%までの導入は可能である。しかし、良質なガラス光学素子を得る目的からは上記成分を導入しない方が好ましい。また、Biはガラスを着色させる傾向があるので、導入しないことが好ましく、導入する場合でも、ガラス全成分の重量に対して4%以下に抑えることが好ましい。
【0030】
本発明において使用されるガラス素材は、Ge、Te、Pbを実質的に含まないことが好ましい。これら成分は、成形工程で還元されやすい成分であり、また、TeやPbは、環境上の問題から排除すべきものである。
【0031】
本発明において使用されるガラス素材の原料としては、PについてはHPO、メタリン酸塩、五酸化二燐など、BについてはHBO、Bなどを用い、他の成分については炭酸塩、硝酸塩、酸化物などを適宜に用いることが可能である。本発明では、これらの原料を所定の割合に秤取し、混合して調合原料とし、これを1000〜1250℃に加熱した溶解炉に投入し、溶解・清澄・攪拌し、均質化してから鋳型に鋳込み徐冷することにより、精密プレスに好適なガラス素材を得ることができる。具体的には、ノズルにより一定流量で流下するガラス融液を所定重量、ガラス素材成形型上に受けて、ガラス素材に成形することが好ましい。なお、ガラス素材はガラス素材成形型上で風圧を加えて浮上させながら成形することがより好ましい。このガラス素材は、屈折率(nd)が1.65以上であり、かつアッベ数(νd)が35以下である高屈折率・高分散のガラス素材である。
このように、上記ガラス素材は、成形面に炭素系膜を有する成形型により精密プレス成形するために用いられるガラス素材(精密プレス成形用プリフォーム)に好適である。
【0032】
本発明では、上記ガラス素材を、ガラス粘度で10〜10dPaSに相当する温度に加熱し、対向する一対の成形型により加圧成形することによってガラス光学素子を製造する。この際、成形型は、ガラス粘度で10〜1012dPaSに相当する温度に加熱される。但し、上述のように、ガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が10dPaS相当の温度の場合、及びガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が1012dPaSに相当する温度の場合は、除かれる。精密プレスの方法及び装置は、公知のものを用いることができ、条件はガラスの組成及び物性などを考慮して適宜に選択できる。
【0033】
本発明の成形方法には、例えば、図1に示すような成形型1を用いることができる。図1中、成形型1は上型2、下型3、スリーブ4、上母型5、6、下母型7、8、上型の下降止めリング9とバネ10で構成されている。成形型の上型、下型、スリーブとしては、例えば、炭化ケイ素、ケイ素、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化アルミニウムや炭化チタンのサーメットや、これらの表面にダイヤモンド、耐熱金属、貴金属合金、炭化物、窒化物、硼化物、酸化物などのセラミックスなどを被覆したものを使用することができる。特に、炭化ケイ素焼結体上にCVD法により炭化ケイ素膜を形成して、仕上がり形状に加工した後、炭素系膜を形成することが好ましい。本発明の炭素系膜は、主成分として炭素を含有する膜であり、非晶質及び/又は結晶質のグラファイト及び/又はダイヤモンドの単一成分層又は混合層からなる炭素膜であることが好ましい。その理由は、成形型温度を比較的高温にして成形しても、融着が起こらないこと及び、離型性がよいため比較的高温で容易に離型できることによる。上下の母型およびリングは例えば、金属製であり、またバネはセラミックス製であることができる。さらに、成形型1は、高周波コイルを配置したプレス装置(不図示)内に取り付けられており、誘導加熱によって加熱され成形が行われる。被成形ガラス素材は図示しないアーム上で加熱された後、高周波コイルの誘導加熱によって所望の温度に加熱された下型3上に供給される。その後、下型が上昇もしくは上型が下降する事によって被成形ガラス素材を上下型間にてプレスし成形を行うことができる。
【0034】
上記の炭素系膜は、スパッタリング法、プラズマCVD法、CVD法、イオンプレーティング法等の手段で成膜されるものであることができる。スパッタリング法で成膜する場合には、基盤温度250〜600℃、RFパワー密度5〜15W/cm、スパッタリング時真空度5×10−4〜5×10−1torrの範囲でスパッタガスとしてArの如き不活性ガスを、スパッタターゲットとしてグラファイトを用いてスパッタリングすることが好ましい。マイクロ波プラズマCVD法により成膜する場合には、基盤温度650〜1000℃、マイクロ波電力200W〜1kW、ガス圧力10−2〜600torrの条件下に、原料ガスとしてメタンガスと水素ガスを用いて成膜することが好ましい。イオンプレーティング法により形成する場合には、基盤温度を200〜450℃とし、ベンゼンガスをイオン化することが好ましい。これらの炭素系膜は、C−H結合を有するものを含む。
【0035】
特に、イオンプレーティング法によるi−カーボン膜上にスパッタリング法による膜を積層すると、離型性、成形面の耐久性の面で好ましい。成形面の炭素系膜の膜厚は、5〜200nmの範囲であることができる。
本発明の高屈折率・高分散光学ガラスからなるガラス素材は、例えば、直径2−20mm程度の球状物や楕円型球状物であることができる。球状物や楕円型球状物の大きさ、重量は、最終製品の大きさを考慮して適宜に決定される。
【0036】
一方、加圧成形に用いるガラス素材の表面にも炭素系膜を設けることが好ましい。これは、加圧成形の際に成形面との滑り性を良くし、さらに離型性を向上させるために有効である。ガラス素材に設けられる炭素系膜は、例えばアセチレン、エチレン、ブタン、エタン等の炭化水素ガスの熱分解によって形成することができ、例えば 圧力10〜200Torr、熱分解温度250〜600℃の条件を適用することができる。この炭素系膜もまたC−H結合を有するものを含む。
【0037】
また、ガラス素材表面の炭素系膜は、真空蒸着法によって形成することもできる。真空蒸着による場合は、公知の蒸着装置を用いて、真空雰囲気中で、炭素材料を電子ビーム、直接通電もしくはアークにより加熱し、材料から蒸発および昇華により発生する炭素蒸気を基材の上に輸送し凝縮・析出させることにより炭素薄膜を形成する。例えば、直接通電の場合、断面積0.1cm程度の炭素材料に100V−50A程度の電気を通電し、炭素材料を通電加熱することができる。基材加熱温度は室温〜400℃程度が好ましい。ただし、基材のガラス転移温度(Tg)が450℃以下の場合、基材加熱の上限温度はTg−50℃とすることが好適である。放射状キズの生じやすい組成の場合には、真空蒸着法を用いることが好ましい。
ガラス素材表面の炭素系膜は、0.5〜5nmの膜厚であることができる。
【0038】
本発明では、成形型に施した離型膜を保護する目的で、非酸化雰囲気下で加圧成形が行われることが好ましい。非酸化性雰囲気として、アルゴン、窒素等の不活性ガス、水素等の還元性ガス又はその混合ガスを使用することができ、窒素ガスや、窒素に少量の水素を混合したものが好ましく用いられる。
【0039】
以下に、図1の成形装置を用いた場合の本発明の製造方法の工程につき、説明する。
(a)加熱工程
上型2と下型3を、それぞれ例えば高周波誘導コイルなどの加熱手段(不 図示)により、所定温度に加熱する。
(b)供給工程
加熱された上下型間に、所定温度に加熱され、搬送されたガラス素材が供 給され、下型上に配置される。
(c)加圧成形工程
ガラス素材が加熱軟化した状態で、下型を上昇させてガラス素材を上下型 で加圧し、上下型の成形面を転写することによって、所定面形状をもった ガラス光学素子を成形する。
(d)冷却・離型工程
上下型を所定温度まで冷却し、下型を下降させることで上下型を離間し、
その後、ガラス光学素子を離型する。
(e)取り出し工程
ガラス成形体を取り出す。
上記(a)〜(e)工程を繰り返すことにより、連続的に光学素子を製造する。
【0040】
(a)加熱工程では、予め設定した上下型の設定温度になるように、上下型を加熱手段により加熱する。加熱工程において加熱される上下型の温度設定値は、上下型とも同一でもよく、温度差を設けてもよい。例えば、成形する光学素子の形状や径によって、上型よりも下型を高温にしたり、上型より下型を低温にすることができる。その場合、上下型の温度はいずれも、本発明の温度範囲内とする。上下型に温度差をつける場合には、2〜15℃の範囲が好ましい。
【0041】
先立って行われたサイクルの(e)取り出し工程が行われた上下型は、Tg付近の温度に冷却されている。そのため、上下型は、次のサイクルの成形に適した設定温度に加熱する。
【0042】
(b)ガラス素材の供給工程は、予め適切な重量の所定形状に予備成形されたガラス素材を加熱して、成形に適した粘度まで軟化したものを供給する。型より高温のガラス素材を型に導入するこの方法は、成形サイクルタイムが短く非常に有利である。
【0043】
軟化したガラス素材を搬送して下型上に配置するときには、ガラス素材が搬送部材に接触して、表面に欠陥が起きると、成形される光学素子の面形状に影響するため、軟化したガラス素材を気体に浮上させた状態で搬送し、下型上にガラス素材を落下させる治具を用いることができる。
【0044】
(c)加圧成形工程では、ガラス素材が供給された後直ちに、すなわち上下型とガラス素材がそれぞれ所定の温度範囲にあるとき、下型を移動させて、ガラス素材を加圧する。加圧のための下型のストロークは予め、成形する光学素子の肉厚から設定された値であり、この後の冷却工程においてガラスが熱収縮する分を見込んで定めた量とすることができる。加圧成形の速度は、3〜600mm/minであることが好ましく、径が15mm以上のレンズ場合には、3〜80mm/minが好ましい。加圧のスケジュールは、成形する光学素子の形状や大きさに応じて任意に設定することができ、初期加圧の後、荷重を開放したのち、二次加圧を行うなどの、複数回の加圧を用いても良い。
【0045】
(d)冷却・離型工程では、加圧を維持したまま、又は加圧を減じた状態で、成形された光学素子と成形型の密着を保ち、所定温度になるまで冷却したのち、離型する。冷却は、上記のように熱収縮分を見込んで定めた肉厚まで加圧成形した後に開始することが、ワレ防止のために有効である。また、ワレや放射キズの発生を防止するため、冷却速度は、冷却開始から離型までの平均値として、50〜200℃/minとすることができる。冷却開始時の冷却速度は、平均の冷却速度より小さい方が、ワレ防止の観点から好ましく、離型温度に近づくに従って冷却速度を上げることが好ましい。離型温度は、ガラスの粘度でTg付近以下とすることができるが、Tg−30℃以下とすることが好ましい。
【0046】
(e)取り出し工程では、吸着部材を備えた取り出しアーム等(不図示)により、自動取り出しを行う。
【0047】
本発明でプレス成形される光学素子の形状には、特に制限はなく、本発明の製造方法は、両凸レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ、両凹レンズ等の成形に適する。光学素子の大きさに関しても特に制限はないが、直径2mm程度から35mm程度が好ましい。2mm以下ではガラス素材が冷えやすくなり、ワレ易くなるためであり、35mm以上では成形に時間を要するとともに、良好な面を得るのが著しく困難となるためである。光学素子の形状は球面、非球面あるいはこれらの組み合わせであることができる。
【0048】
ガラス素材と成形型の加熱、プレス成形および冷却を含めた成形所要時間(サイクルタイム)は、光学素子の大きさおよび形状によって異なるが、60秒から300秒程度が好ましい。60秒未満で成形を行うには温度を高めに設定するとともに冷却を早める必要があり、放射キズが出やすく、ワレも発生しやすくなる場合が有る。一方、300秒を超えると、生産効率が低下する傾向がある。
【0049】
プレス時の加圧は、成形する光学素子の肉厚、面形状をもとに適宜設定する。比較的成形が容易な凸レンズの場合には50〜250kg/cm程度の荷重で成形を行うことが適当である。一方、成形の難しい光学素子の場合には、まず50〜250Kg/cm程度の荷重で所定の肉厚までプレスし、その後20〜150Kg/cmの荷重で再加圧を行う事が、十分な面精度を得るために好ましい。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに説明する。
実施例1
直径11mm 中心肉厚1.2mmの凹メニスカスレンズを成形した例を示す。P:24%、B:4%、LiO:20%、NaO:13%、KO:1%、BaO:4%、ZnO:2%、TiO:5%、Nb:20%、WO:7%を含む組成のガラス(Tg:478℃ Ts:527℃)を直径10mm、体積420mmの偏平な球形状に成形し、プレス用ガラス素材(プリフォーム)とした。得られたプリフォームの屈折率(nd)は1.828、アッベ数(νd)は23.8であった。このプリフォーム表面には、アセチレンの熱分解法によって成形した炭素膜(膜厚:2nm)を施してある。このプリフォームを、粘度が10〜1010dPaSとなる種々の温度で加熱した後、ガラスの粘度として10〜1013dPaSに相当する種々の温度に加熱した下型に供給し、すぐに下型を上昇させる事により下型と同一温度に加熱した上型との間でプリフォームをプレスした。上下型の表面には、スパッタにより形成した炭素系離型膜(膜厚:40nm)を形成してあるものを用い、すべての工程は、窒素ガスを流しながら非酸化雰囲気中で行った。プレス時の初期圧力は100〜150kg/cmとし、その後、良好な面精度を得るために圧力を50〜90kg/cmに低下させ、温度が430℃になった時点で離型し、レンズを取り出した。
【0051】
図2に、プリフォーム供給時のプリフォームと型の温度およびそれぞれの温度に相当するガラスの粘度と、プレス成形して得られたレンズの評価結果をまとめて示す。
型温度および/またはプリフォーム温度が低い場合にはプレスによる変形が遅いため、所望の肉厚に到達するまでの時間が長くなる傾向が見られ、さらには十分な変形が生じずノビ不良となったり、無理な変形によりワレが発生した。一方、型温度及び/又はプリフォーム温度が高い場合には、プレスによる変形は早いが、高温になるにしたがってレンズ中心部を中心として放射状に伸びる窪み状欠陥(放射状キズ)が発生し、さらに高温領域では発泡が生じた。
【0052】
これらの結果から、良好なレンズを得るためにはプリフォームの加熱温度をその粘度が10〜10dPaSとなる範囲とし、これをガラスの粘度として10〜1011dPaSに相当する温度に加熱した下型に供給してプレス成形を行う事により良好なレンズを得る事が出きる事が確かめられた。
また、この条件よりプリフォーム温度を粘度として10倍(10dPaS)もしくは型温度をガラスの粘度に換算して10倍(1012dPaS)とした条件では、プレスによる変形がやや困難とはなるが、問題は生じなかった。逆に、先の条件よりプリフォーム温度を粘度として1/10倍(10dPaS)もしくは型温度をガラスの粘度に換算して1/10倍(10dPaS)とした条件では、放射キズがごくわずかに発生するが、製品として使用するには問題なかった。
【0053】
実施例2
直径14mm 中心肉厚2.5mmの凸メニスカスレンズを成形した例を示す。P:28%、B:5%、LiO:10%、NaO:29%、ZnO:5%、TiO:5%、Nb:9%、WO:9%を含む組成のガラス(Tg:446℃、Ts:488℃)を直径11mm、体積450mmの偏平な球形状に成形しプリフォームとした。得られたプリフォームの屈折率(nd)は1.689、アッベ数(νd)は31.4であった。これを粘度が10〜1010dPaSとなる温度の範囲で加熱した後、ガラスの粘度として10〜1013dPaSに相当する温度に加熱した下型に供給し、すぐに下型を上昇させる事により上下型間でプリフォームをプレスした。プレス時の圧力は100〜150kg/cmとした。プリフォームの炭素膜、成形型、成形室雰囲気などは、実施例1と同様にした。
【0054】
図3にプリフォームと型の温度およびそれぞれの温度に相当するガラスの粘度と、プレス成形して得られたレンズの評価結果をまとめて示す。
型温度および/またはプリフォーム温度が低い場合にはプレスによる変形が遅いため、所望の肉厚に到達するまでの時間が長くなる傾向が見られ、さらには十分な変形が生じずノビ不良となったり、無理な変形によりワレが発生した。一方、型温度およびまたはプリフォーム温度が高い場合には、プレスによる変形は早いが、高温になるにしたがってレンズ中心部を中心として放射状に伸びる窪み状欠陥(放射状キズ)が発生し、さらに高温領域では発泡が生じた。
【0055】
これらの結果から、良好なレンズを得るためにはプリフォームの加熱温度をその粘度が10〜10dPaSとなる範囲とし、これをガラスの粘度として10〜1011dPaSに相当する温度に加熱した下型に供給してプレス成形を行う事により良好なレンズを得る事が出きる事が確かめられた。
また、この条件よりプリフォーム温度を粘度として10倍(10dPaS)もしくは型温度をガラスの粘度に換算して10倍(1012dPaS)とした条件では、プレスによる変形がやや困難とはなるが、問題は生じなかった。
逆に、先の条件よりプリフォーム温度を粘度として1/10倍(10dPaS)もしくは型温度をガラスの粘度に換算して1/10倍(10dPaS)とした条件では、放射キズがごくわずかに発生するが、製品として使用するには問題なかった。
【0056】
実施例3〜13
本発明の範囲に属する11種類の組成のガラスに関して、実施例1及び2と同様のプレス成形テストを行った。その結果、Tsが高くなるに従って、また、Cが大きくなるに従って、高温域での放射キズが発生しやすくなる傾向は見られたものの、実施例1及び2と同様のガラス粘度範囲においては、ワレ、ノビ不良、放射キズ、発泡が発生せず、良好なレンズを得ることができた(表1及び2)。
【0057】
実施例14〜15
本発明の範囲に属するSiOを含む2類の組成のガラスを用いてプレス成形テストを行ったところ、実施例1〜13と同様に、良好なレンズを得ることができた(表1及び2)。
【0058】
比較例1〜3
本発明の範囲外となる3種類の組成のガラスに関して、実施例1及び2と同様の条件でプレス成形テストを行った。その結果、ワレ、ノビ不良、又は放射キズが発生し、良好なレンズが得られるガラス粘度範囲は狭く、安定な生産が困難であった(表1及び2)。
【0059】
尚、屈折率(nd)、アッべ数(νd)、屈伏点温度(Ts)、転移温度(Tg)及び液相温度(L.T.)は次のように測定した。
(1)屈折率(nd)及びアッべ数(νd)
徐冷降温速度を−30℃/hにして得られたプリフォームについて測定した。
(2)屈伏点温度(Ts)及び転移温度(Tg)
理学電機株式会社の熱機械分析装置により昇温速度を4℃/分にして測定した。
(3)液相温度(L.T.)
400−1150℃の温度勾配のついた失透試験炉に1時間保持し、倍率80倍の顕微鏡により結晶の有無を観察し、液相温度を測定した。
【0060】
【表1】
Figure 2004002153
【0061】
【表2】
Figure 2004002153
【0062】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、高屈折率及び高分散を示すガラス光学素子を、環境問題を生じる成分や、成形型に有害な成分を含むガラス素材を使用することなく得ることができる。更に、本発明の製造方法によれば、成形型に劣化や損傷を与えずに、プレス成形が可能であり、また、成形に際して、ノビ不良やワレを起こさず、かつ放射状のキズや発泡が起きずに、高精度のガラス光学素子を得ることができる。これは、成形後に研削、研磨を行わない精密プレス成形において、特に重要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】精密プレス成形に用いるプレス装置の概略図。
【図2】実施例1における、プリフォーム供給時のプリフォームと型の温度およびそれぞれの温度に相当するガラスの粘度と、プレス成形して得られたレンズの評価結果。
【図3】実施例2における、プリフォーム供給時のプリフォームと型の温度およびそれぞれの温度に相当するガラスの粘度と、プレス成形して得られたレンズの評価結果。

Claims (7)

  1. 対向し、かつ成形面に炭素系膜を有する、一対の成形型により、加熱軟化したガラス素材を加圧成形することによってガラス光学素子を製造する方法において、
    Nb、WO、及びTiOの少なくとも一種を含有し、屈折率(nd)が1.65以上、アッベ数(νd)が35以下であり、かつ屈伏点(Ts)が570℃以下であるガラスからなるガラス素材を用い、
    ガラス粘度で10〜10dPaSに相当する温度に加熱した前記ガラス素材を、ガラス粘度で10〜1012dPaSに相当する温度に加熱した前記成形型により加圧成形する工程(但し、ガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が10dPaS相当の温度の場合、及びガラス素材が10dPaSに相当する温度で、かつ成形型が1012dPaSに相当する温度の場合を除く)を含むことを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
  2. 前記ガラス素材が、P、SiO、及びBの少なくとも1種をさらに含有するガラスからなり、かつNb、WO、及びTiOの含有量の和をC(モル%)としたとき、0<C<35である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ガラス素材の加熱温度が、ガラス粘度で10〜10dPaSに相当する温度である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記成形型の加熱温度が、ガラス粘度で10〜1011dPaSに相当する温度である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記ガラス素材が、モル%表示で、
          15〜40%、
    SiO      0〜10%、
          0〜20%、
    Al     0〜5%、
    LiO      5〜30%、
    NaO      0〜30%、
    ZnO       0〜20%、
    BaO       0〜20%、
    Nb     2〜30%、
    WO       2〜15%、
    TiO      0〜15%、
    (但し、Nb、WO及びTiOの合計量は10%以上、35%未満)
    を含み、上記成分の合計量が95%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記加圧成形が、非酸化性雰囲気において行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記ガラス素材に炭素系膜が被覆されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
JP2003047114A 2002-03-14 2003-02-25 ガラス光学素子の製造方法 Expired - Fee Related JP4603767B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003047114A JP4603767B2 (ja) 2002-03-14 2003-02-25 ガラス光学素子の製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002070781 2002-03-14
JP2002092666 2002-03-28
JP2003047114A JP4603767B2 (ja) 2002-03-14 2003-02-25 ガラス光学素子の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004002153A true JP2004002153A (ja) 2004-01-08
JP4603767B2 JP4603767B2 (ja) 2010-12-22

Family

ID=30449128

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003047114A Expired - Fee Related JP4603767B2 (ja) 2002-03-14 2003-02-25 ガラス光学素子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4603767B2 (ja)

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005330152A (ja) * 2004-05-20 2005-12-02 Konica Minolta Opto Inc 光学素子の成形方法及び光学素子
CN100348523C (zh) * 2004-02-10 2007-11-14 Hoya株式会社 玻璃光学元件的制造方法
WO2009099230A1 (ja) 2008-02-08 2009-08-13 Nihon Yamamura Glass Co., Ltd. 光学ガラス
JP2010161200A (ja) * 2009-01-08 2010-07-22 Sony Corp 固体撮像素子
US7930901B2 (en) 2004-03-15 2011-04-26 Hoya Corporation Optical glass, precision press-molding preform, optical element and processes for production of these
KR101147589B1 (ko) 2004-03-01 2012-05-21 호야 가부시키가이샤 정밀 프레스 성형용 프리폼의 제조 방법 및 광학 소자의 제조 방법
JP2013253001A (ja) * 2012-06-07 2013-12-19 Canon Inc 光学素子の製造方法
JP2015067522A (ja) * 2013-09-30 2015-04-13 Hoya株式会社 光学ガラス、光学ガラスブランク、プレス成型用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法
CN104860531A (zh) * 2014-02-26 2015-08-26 株式会社小原 光学玻璃、透镜预成型体及光学元件
JP2015164885A (ja) * 2014-03-03 2015-09-17 株式会社オハラ 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2015182897A (ja) * 2014-03-20 2015-10-22 株式会社オハラ 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2015182898A (ja) * 2014-03-20 2015-10-22 株式会社オハラ 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2016074581A (ja) * 2014-10-07 2016-05-12 株式会社オハラ 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2019001697A (ja) * 2017-06-16 2019-01-10 株式会社オハラ 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100348523C (zh) * 2004-02-10 2007-11-14 Hoya株式会社 玻璃光学元件的制造方法
KR101147589B1 (ko) 2004-03-01 2012-05-21 호야 가부시키가이샤 정밀 프레스 성형용 프리폼의 제조 방법 및 광학 소자의 제조 방법
US7930901B2 (en) 2004-03-15 2011-04-26 Hoya Corporation Optical glass, precision press-molding preform, optical element and processes for production of these
JP2005330152A (ja) * 2004-05-20 2005-12-02 Konica Minolta Opto Inc 光学素子の成形方法及び光学素子
WO2009099230A1 (ja) 2008-02-08 2009-08-13 Nihon Yamamura Glass Co., Ltd. 光学ガラス
US8704934B2 (en) 2009-01-08 2014-04-22 Sony Corporation Solid-state imaging device having pixels arranged in a honeycomb structure
JP2010161200A (ja) * 2009-01-08 2010-07-22 Sony Corp 固体撮像素子
JP2013253001A (ja) * 2012-06-07 2013-12-19 Canon Inc 光学素子の製造方法
JP2015067522A (ja) * 2013-09-30 2015-04-13 Hoya株式会社 光学ガラス、光学ガラスブランク、プレス成型用ガラス素材、光学素子、およびそれらの製造方法
CN104860531A (zh) * 2014-02-26 2015-08-26 株式会社小原 光学玻璃、透镜预成型体及光学元件
JP2015164885A (ja) * 2014-03-03 2015-09-17 株式会社オハラ 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2015182897A (ja) * 2014-03-20 2015-10-22 株式会社オハラ 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2015182898A (ja) * 2014-03-20 2015-10-22 株式会社オハラ 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2016074581A (ja) * 2014-10-07 2016-05-12 株式会社オハラ 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2019001697A (ja) * 2017-06-16 2019-01-10 株式会社オハラ 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP4603767B2 (ja) 2010-12-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101347944B1 (ko) 프레스 성형용 유리 소재, 상기 유리 소재를 이용한 유리 광학 소자의 제조 방법, 및 유리 광학 소자
KR101348051B1 (ko) 프레스 성형용 유리 소재, 상기 유리 소재를 이용한 유리 광학 소자의 제조 방법, 및 유리 광학 소자
JP4508987B2 (ja) 光学ガラス、精密プレス成形用プリフォームとその製造方法および光学素子とその製造方法
US7491667B2 (en) Optical glass, precision press-molding preform, process for producing the preform, optical element and process for producing the optical element
US7140205B2 (en) Method of manufacturing glass optical elements
US7560405B2 (en) Optical glass for precision press molding, preform for precision press molding, and process for the production thereof
US8826695B2 (en) Method for manufacturing optical glass element
KR100714746B1 (ko) 광학소자의 양산 방법
JP4334523B2 (ja) 光学ガラス、精密プレス成形用プリフォームとその製造方法および光学素子とその製造方法
US20080167172A1 (en) Optical glass, precision press-molding preform, process for production thereof, optical element and process for the production thereof
JP4603767B2 (ja) ガラス光学素子の製造方法
JP5364568B2 (ja) プレス成形用ガラス素材、プレス成形用ガラス素材の製造方法、および光学素子の製造方法
JP5081385B2 (ja) ガラス光学レンズの製造方法
JP4255292B2 (ja) 光学素子成形用ガラス素材および光学素子の製造方法
JP2005067999A (ja) ガラスモールドレンズの製造方法
JP2005097102A (ja) 精密プレス成形用ガラスプリフォーム、光学素子およよびそれらの製造方法
JP5318000B2 (ja) 光学ガラス、精密プレス成形用プリフォームとその製造方法および光学素子とその製造方法
JP4256190B2 (ja) ガラス光学素子の製造方法
JP2019151524A (ja) 光学ガラス、精密プレス成形用プリフォーム、及び光学素子

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060215

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060222

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060421

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20070612

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070809

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071011

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20071017

A912 Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912

Effective date: 20071116

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101004

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131008

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4603767

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees