JP2004001461A - 吸湿・吸水性構造体及び高吸湿性複合材料 - Google Patents

吸湿・吸水性構造体及び高吸湿性複合材料 Download PDF

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Nobuyuki Numata
沼田 長之
Makoto Tsuge
柘植 誠
Naotake Amako
尼子 直武
Koichi Ikegami
池上 幸一
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Abstract

【課題】摩擦、衝撃等により基材から脱落しにくい高吸湿性樹脂層を形成した高吸湿性複合材料に関する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和し、これをポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合してなり、溶液中の固形分の吸湿率が相対湿度90%にて8重量%以上である(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の(メタ)アクリル酸塩系樹脂を、熱反応性架橋剤で架橋することにより、基材の表面に高吸湿吸水性樹脂層を形成してなり、且つ前記高吸湿吸水性樹脂層の重量が、前記基材の重量に対して3〜200重量%である高吸湿吸水性複合材料に関する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿・吸水性構造体及び高吸湿性複合材料に関する。更に詳しくは、本発明は、持続性に優れた新規吸湿・吸水構造体、及び衛材、医療材料、農業園芸用、建築材料、電線被覆材、電子部品、家電部品、機械部品、食品包装材等包装資材、家庭用雑品、衣料資材等吸湿性能を要求する分野に好適に用いられる高吸湿性複合材料の製造に使用される(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を用いた高吸湿性複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
断熱・保温素材は、防寒衣料、雨具、冬季のスポーツ衣料、水着・ウェットスーツ地、テント地、寒冷場所での作業衣料、寝具及び壁紙等のインテリア品、屋根の断熱材、保冷庫の断熱材、靴の中張、並びに自動車や列車の壁材等の多岐の用途に必要とされる。断熱・保温素材については、これまで多くの提案がなされている。例えば、細い繊度の合成繊維や天然繊維の織物、織物不織布、及び詰め綿構造物等の繊維構造物の他、多孔質ポリウレタン、多孔質ポリプロピレン、及びは多孔質ポリエチレン等のスポンジ構造体等の多孔質材料よりなるものが一般的に最も多く使われている。しかし、断熱・保温性を高めるには、どうしても断熱・保温素材が厚くならざるを得ず、衣料用途ではダウン(羽毛)衣料に代表されるように非常に嵩張り、運動性や収納性が低い。また、壁材や車両や収納庫の断熱材には厚くなりすぎて使用できない場合も多い。
【0003】
積極的に保温性を生み出す機能を有する材料を併用して、より薄い素材で同等以上の効果を持たせる提案もなされている。例えば、下記特許文献1及び2等では、遠赤外線放射セラミックを繊維に織り込む方法が提案されている。また、下記特許文献3〜5等には、遠赤外線放射セラミックを繊維構造体にコーティングする方法が提案されている。しかし、遠赤外線放射セラミックを使用する方法は、セラミック粒子の大きさに限界があり、また、繊維に織り込む場合は繊維の糸切れが生じやすくなり、強度や伸度等の物性や表面平滑性が低下する等の物性面や品質面の低下がある。また、遠赤外線放射セラミックをコーティングする場合も、セラミック粒子の直径より薄いコーティングでは、繊維表面の凹凸が顕著で風合いや磨耗性に劣る。一方、平面を平滑にするためにはコーティング層を厚くする必要があり、重量が大きくなったり、コストが高くなり、実用上の制限がある。
【0004】
下記特許文献6〜14等は、親水性や吸水性を有する天然繊維や合成繊維又は微粒子を含む繊維構造体に関するもので、吸湿時の水の凝縮熱による発熱を保温に利用するものである。しかし、吸湿・吸水時に発熱するものの、吸湿より繊維構造体の熱伝導度が大きくなり、保温効果というよりむしろ冷感やひいては体温の低下につながる。これは、綿の肌着を着て汗をかいたときに感じる冷感やべとついた不快感で理解できる。これは、吸水・吸湿は確かに生じるものの吸湿量や吸水量が小さいことと吸収した水分が移動せずにその場に留まるためによるものである。従って、これまで充分な保温・断熱性を有する繊維構造体、多孔体、又はその他の構造体は開発されていないのが現状である。
【0005】
また、従来、高吸水樹脂に関しては、基材の表面に高吸水性樹脂層を備えた高吸水性複合材料が提案されている。高吸水性樹脂層は、例えば、パール状、粉末状等の高吸水性樹脂を基材の表面に付着させて固定化するようにして形成されるが、パール状、粉末状等の高吸水性樹脂は、基材の表面へ均一かつ安定に固定化することが困難である。下記特許文献15及び16等には、(メタ)アクリル酸塩等からなるモノマーを基材に施し、基材中で重合させて高吸水性樹脂層を形成する方法が提案されている。しかし、これらの方法では、基材への均一、安定な固定化は可能となるものの、得られる高吸水性複合材料へのモノマーの残存、又は製造コストが嵩む小さなロットへの対応等の問題が充分には解消されないものであった。
【0006】
一方、下記特許文献17には、前記問題点を解決するために、(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和し、この中和されたモノマー成分をポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合してなる(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液があげられている。しかし、(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の固形物について吸湿性への言及は全くなく、また、(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を基材に塗布した高い吸湿性を有する複合材料については記載されていない。しかも、吸湿後の耐久性能、特に摩擦強力が高く、且つ繰り返し吸湿性能の劣化の少ない材料には従来記載されていない。吸水性は水分子が複数集合して形成したクラスターを捕獲するかどうかの特性であるのに対し、吸湿性は1つの水分子を捕獲するかどうかの特性である。同じ水分子を対象にするものであるが、対象の大きさは大きく異なるので、その特性は必ずしも相関するものではない。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−105107号公報
【特許文献2】
特開平7−331584号公報
【特許文献3】
特開昭60−162641号公報
【特許文献4】
特開昭63−35887号公報
【特許文献5】
特開平1−183574号公報
【特許文献6】
特開平9−158040号公報
【特許文献7】
特開平9−119050号公報
【特許文献8】
特開平11−247069号公報
【特許文献9】
特開平11−279943号公報
【特許文献10】
特開平11−279953号公報
【特許文献11】
特開2000−129574号公報
【特許文献12】
特開2000−199180号公報
【特許文献13】
特開2000−290828号公報
【特許文献14】
特開2001−49579号公報
【特許文献15】
特開昭60−149609号公報
【特許文献16】
特公平7−119262号公報
【特許文献17】
特開平10−287714号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、充分な断熱性・保温性を有し、且つ、持続性のある発熱効果を有する構造体を提供することを目的とする。
また、本発明は、摩擦、衝撃等により基材から脱落しにくく、且つ繰り返し使用可能な高吸湿性樹脂層を形成することができる(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を付与した糸状束、不織布、織物、編物等、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、SBR等ラバー等の粉体の圧縮・加圧溶融体並びにこれらの樹脂加工品の高吸湿性複合材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和し、中和された前記モノマー成分をポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合して得られ、溶液中の固形分の吸湿率が相対湿度90%にて8重量%以上である(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の(メタ)アクリル酸塩系樹脂を、熱反応性架橋剤で架橋することにより、基材の表面に高吸湿性樹脂層を形成してなり、且つ前記高吸湿性樹脂層の重量が、前記基材の重量に対して3〜200重量%である高吸湿性複合材料に関する。
【0010】
更に、本発明は、(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分をポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合し、前記溶液中の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和して得られ、溶液中の固形分の吸湿率が相対湿度90%にて8重量%以上である(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の(メタ)アクリル酸塩系樹脂を、熱反応性架橋剤で架橋することにより、基材の表面に高吸湿性樹脂層を形成してなり、且つ前記高吸湿性樹脂層の重量が、前記基材の重量に対して3〜200重量%である高吸湿性複合材料に関する。
【0011】
本発明の高吸湿性複合材料では、前記基材が繊維布帛又は粉体の圧縮・加熱溶融体であることが好ましい。
また、本発明の高吸湿性複合材料では、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂中のカルボキシル基の10〜95%化学当量が前記塩基性化合物で中和されていることが好ましい。
更に、本発明の高吸湿性複合材料では、前記ポリビニルアルコールが、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂を架橋するための前記熱反応性架橋剤、及び/又は前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂のカルボキシル基と反応可能な官能基を有することが好ましい。この場合前記ポリビニルアルコールの官能基が、カルボキシル基又はアセトアセチル基であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、(A)相対湿度90%にて8重量%以上の吸湿率を有する構造体、(B)前記構造体(A)と対向し、且つ、前記構造体(A)の吸湿率の70%以下の吸湿率を有する構造体、及び(C)前記構造体(A)及び前記構造体(B)に挟まれ、自重の5倍以上の吸水率を有する樹脂で表面加工された構造体で構成される吸湿・吸水性構造体に関する。
【0013】
本発明の吸湿・吸水性構造体では、前記構造体(A)が、本発明の高吸湿性複合材料を含む構造体であることが好ましい。
また、本発明の吸湿・吸水性構造体では、前記構造体(A)が、相対湿度65%にて吸湿率が6.5重量%以上の天然繊維、合成繊維又はこれらの組み合わせを含む構造体であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(1)高吸湿性複合材料
本発明の高吸湿性複合材料において、前記(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸と、該(メタ)アクリル酸に共重合可能な他のモノマーと、を含有して構成される。前記(メタ)アクリル酸に共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、及びブチル(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐又は脂環式アルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール又はその誘導体のモノ(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、N−置換マレイミド類、ビニルピロリドン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルエーテル類、イタコン酸、並びにクロトン酸等が挙げられる。これらは単独で、又は組み合わせて用いることができる。前記(メタ)アクリル酸に共重合可能な他のモノマーは、モノマー成分中で50モル%以下、好ましくは30モル%以下、更には20モル%以下であることが好ましい。50モル以下とすると、後述する高吸湿性樹脂層の吸湿性が不足する傾向を抑制できるので好ましい。
【0015】
前記塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属水酸化物塩(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等)等のアルカリ金属塩に代表される無機塩基性化合物、又はモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の有機塩基性化合物を用いることができる。
【0016】
前記ポリビニルアルコール(PVA)としては、汎用のものでよく、部分ケン化物と完全ケン化物のいずれであってもよい。また、その重合度は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中での分散性と、(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の粘度が良好となるように、200〜3000のものを用いるのが好ましい。重合度が200より小さい場合は得られる(メタ)アクリル酸系樹脂の強度および柔軟性が不十分となる傾向がある。3000以下とすると、得られる(メタ)アクリル酸系樹脂溶液の粘度が高くなり過ぎることを抑制し、基材への樹脂加工(例えば、(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の塗布)が困難になることを防止できるので好ましい。更に、重合度が500〜2000のものを用いると、(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の安定性が特に優良になり、加えて(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の粘度も基材に塗布させるのに最適なものとなる傾向がある。
【0017】
また、前記ポリビニルアルコールは、(メタ)アクリル酸塩系樹脂を架橋するための熱反応性架橋剤と反応可能な官能基及び(メタ)アクリル酸塩系樹脂のカルボキシル基と反応可能な官能基の一方又は両方を分子内に有するものであることが好ましい。前記熱反応性架橋剤又は前記カルボキシル基と反応可能な官能基としては、カルボキシル基、アセトアセチル基等を例示することができる。特に、アセトアセチル基は、後述のグリシジル基を有する熱反応性架橋剤と反応する官能基であり、好ましい。このように、ポリビニルアルコールが分子内に、(メタ)アクリル酸樹脂のカルボキシル基、熱反応性架橋剤と反応可能な官能基を有していると、加熱架橋して高吸湿性樹脂層を形成した際に、直接又は熱反応性架橋剤を介して(メタ)アクリル酸系樹脂とポリビニルアルコールを架橋させることができ、形成される高吸湿性樹脂層の平均分子量を増大させることができる。従って、加熱架橋後の高吸湿性樹脂層の強度、柔軟性を特に良好なものとすることができる。また、前記のような官能基を持たないポリビニルアルコールを用いた場合には、吸湿時に(メタ)アクリル酸系樹脂やポリビニルアルコールの溶出が起こる場合があるが、前記のような官能基を有している場合には、吸湿時の(メタ)アクリル酸系樹脂やポリビニルアルコールの溶出の発生を解消できるという効果がある。
【0018】
前記(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分の重合に使用する溶媒は、作業環境や自然環境への配慮から、水単独又は水と水溶性有機溶剤の混媒であることが好ましい。但し、水溶性有機溶剤は、モノマー中のカルボキシル基に対して、及びポリビニルアルコールが反応可能な官能基を有する場合には、当該官能基に対しても不活性でなければならない。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、及び2−プロパノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、並びにジアルキルグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは単独で又は混合して用いることができる。
【0019】
前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を調製するにあたっては、まず、溶媒に前記モノマー成分及び前記塩基性化合物を含有させることにより、前記モノマー成分中の一部のカルボキシル基を、前記塩基性化合物で中和(部分中和)する。この際、前記モノマー成分中のカルボキシル基の10〜95%化学当量が中和されるように、前記モノマー成分と前記塩基性化合物の含有量を設定する。更に好ましい中和度は、40〜80%化学当量である。この中和度が10%化学当量以上であると、後述する高吸湿性樹脂層の吸湿性が不充分となることを抑制できるので好ましい。また、中和度が95%化学当量以下であると、架橋に寄与するカルボキシル基の量が少なくなることにより、吸湿時にベタつき感が出たり、高吸湿性樹脂層から(メタ)アクリル酸塩系樹脂及びポリビニルアルコールが溶出することを抑制できるので好ましい。
【0020】
次に、前記溶液に前記ポリビニルアルコールを含有させる。前記ポリビニルアルコールの含有量は、前記モノマー成分に対して0.1〜20重量%に設定するのが好ましい。さらに0.1〜10重量%に設定するのが好ましい。含有量が0.1重量%以上とすると、後述する高吸湿性樹脂層の強度及び柔軟性が不充分となることを抑制できるので好ましい。また、含有量が20重量%以下であると、高吸湿性樹脂層の吸湿性能の低下を抑制できるので好ましい。
【0021】
そして、前記溶液に重合開始剤を含有させてモノマー成分を重合して(メタ)アクリル酸塩系樹脂を生成することによって、ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸塩系樹脂が混在する(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を調製する。前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂の平均分子量は8000〜400000であることが好ましい。前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂の平均分子量が8000以上であると、高吸湿性樹脂層の吸湿性能やゲル強度が不足することを抑制できるので好ましい。また、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂の平均分子量が400000以下であると、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の粘度が高くなり過ぎて基材への樹脂加工(例えば、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の塗布)が困難になることを抑制できるので好ましい。
【0022】
また、重合方法は、一般的な重合方法、例えば、通常の溶液重合法のような方法でよく、また、還流下での重合、窒素気流中での重合等を問わない。更に、開始剤としては、過硫酸アンモニウム等過硫酸塩が一般的であるが、特にこれに限定されない。また、レドックス系によってもよい。溶媒の使用量は、前記モノマー成分と前記ポリビニルアルコールの合計量100重量部に対して50〜400重量部にするのが好ましく、特に重合率を高く保ち、均一な重合状態を得るためには、100〜300重量部に設定するのが更に好ましい。
【0023】
このようにして得られた前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて8重量%以上であることが必要である。前記吸湿率が、相対湿度90%にて8重量%未満であると、基材に加工して得られる高吸湿複合材料の吸湿量が不十分となる。前記吸湿率は、10重量%以上であることがさらに好ましい。前記吸湿率は、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を絶乾させたときの固形分を、相対湿度90%の雰囲気中に24時間放置させた後の固形分重量から求めることができる。尚、この吸湿率は、例えば、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂のカルボキシル基を中和して塩とすること等により、適宜調節することができる。
【0024】
また、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液は、(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分をポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合し、前記溶液中の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和して得られる(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液でもよい。このような(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を調製するにあたっては、まず、溶媒に前記モノマー成分と前記ポリビニルアルコールを含有させることが好ましい。前記モノマー成分と前記ポリビニルアルコールの含有量は前記同様である。次に、この溶液に重合開始剤を添加して、前記モノマー成分を重合することにより、(メタ)アクリル酸系樹脂を生成する。重合開始剤、平均分子量及び重合方法は前記と同様である。そして、この溶液に前記塩基性化合物を含有し、(メタ)アクリル酸系樹脂の一部のカルボキシル基を中和することによって、ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸塩系樹脂が混在する(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を調製することができる。カルボキシル基の中和度は前記と同様である。このようにして得られた(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の固形分の吸湿率は、前記と同様である。
【0025】
このように、(メタ)アクリル酸を含むモノマー成分をポリビニルアルコール存在下の溶液中で重合して、(メタ)アクリル酸塩系樹脂を生成することによって、ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸塩系樹脂が均一に、しかも安定に混合された(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を得ることができる。そして、(メタ)アクリル酸塩系樹脂の水溶液とポリビニルアルコールの水溶液とを単に機械的に混合した場合のように、混合液の二層分離、塗布斑あるいは最終的に形成される高吸湿性樹脂層の強度の不充分や性能の不安定等の問題が生じないようにすることができる。
【0026】
次に、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を用いた本発明の高吸湿性複合材料を説明する。
まず、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液に、前記熱反応性架橋剤を含有して処理液を調製する。前記熱反応性架橋剤は、アクリル酸塩系樹脂の水性液中の樹脂成分等に存在する官能基と反応可能な官能基を、分子内に少なくとも2個以上有するものであって、例えば、ポリオールポリグリシジルエーテル等の水溶性エポキシ化合物類、エチレンジアミン等の水溶性アミン類、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトール等の水溶性多価アルコール類等があげられる。特にポリオールポリグリシジルエーテル等が良好な混合性及び加熱架橋性を有するので好適である。
【0027】
前記熱反応性架橋剤の含有量は、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の官能基の化学当量によっても異なるが、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の固形分(前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂と前記ポリビニルアルコール)に対して0.01〜25.0重量%であることが好ましい。前記熱反応性架橋剤の含有量が0.01重量%以上であると、加熱架橋後の高吸湿性樹脂層の強度が充分となるので好ましい。また、前記熱反応性架橋剤の含有量が25.0重量%以下であると、加熱架橋後の高吸湿性樹脂層の吸湿性能の低下を抑制することができるので好ましい。尚、前記処理液には、架橋触媒、防腐剤、消泡剤、潤滑成分、浸透剤、平滑剤等を必要に応じて含有させることができる。
【0028】
次に、この処理液を基材に担持させる。基材としては、例えば、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、綿等の天然繊維等の糸状束、不織布、織物、編物などの繊維布帛、ウェブ、紙、木材、パルプ糸条、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなど、粉体の圧縮・過熱溶融体等を用いることができる。
【0029】
また、これらの基材に担持させる方法としては、塗布や含浸等を採用することができる。塗布方法は特に限定しないが、例えば、基材が不織布、織物のようなシート状のものであれば、シルク印刷、パッド印刷等各種印刷法、ロールコート法、スプレー法、カーテンコート法、パディング法、ラミネート法、ディピング法等の塗布方法が好適に用いられる。これらの方法は、目的や使用する材料、設備により適宜最適な方法を採用すればよい。前記処理液の塗布量は、処理液の濃度、加工方法、要求される性能、コスト等によって適宜調整されるが、5〜2000g/mが好ましい。処理液の塗布量が5g/m未満の場合は、吸湿性能が不充分となる傾向がある。また、処理液の塗布量が2000g/mを超える場合は、基材と接していない高吸湿性樹脂層の割合が増し、高吸湿性樹脂層の脱落を招く傾向がある。
【0030】
前記高吸湿性樹脂層の重量は、基材重量に対して3〜200重量%、好ましくは5〜150重量%、より好ましくは7〜100重量%、更に好ましくは7〜50重量%、特に好ましくは7〜30重量%である。3重量%より低い場合は、得られる複合材料の吸湿性能が不十分となり、製品としての価値が低くなる傾向がある。200重量%を超えると、高吸湿性樹脂層の脱落を招く恐れがあり、また、コスト高となる傾向がある。
【0031】
そして、前記処理液を担持させた基材に加熱処理を施す等により、(メタ)アクリル酸塩系樹脂及びポリビニルアルコールを架橋させることによって、基材の表面に(メタ)アクリル酸塩系樹脂及びポリビニルアルコールからなる高吸湿性樹脂層が形成された本発明の高吸湿性複合材料を製造することができる。加熱方法は特に限定されず一般的な方法でよい。尚、上記加熱処理は、高吸湿性樹脂層の乾燥工程と併せて行なってもよい。
【0032】
本発明の高吸湿性複合材料は、ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸塩系樹脂を含有して高吸湿性樹脂層を形成するので、(メタ)アクリル酸塩系樹脂のみの高吸湿性樹脂層よりも強度、柔軟性を高くすることができる。また、ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸塩系樹脂を架橋させることによって、高吸湿性樹脂層の強度、柔軟性をさらに高くして安定させることができる。
【0033】
本発明の高吸湿性複合材料は、前記高吸湿性複合材料の吸湿率が相対湿度90%にて、高吸湿性複合材料重量に対して5〜200重量%であることが好ましい。吸湿率が高吸湿性複合材料に対して5重量%以上であると、高吸湿性複合材料としての機能がより好適に発揮できるので好ましい。また、吸湿率が200重量%以下であると、樹脂間の空隙率が多く、結果として樹脂層の表面積が大きくなって吸湿放湿速度が大きくなるので好ましい。
【0034】
また、本発明の高吸湿性複合材料は、当該複合材料の飽和吸湿率の90%に達するまでの時間が30分以内であることが好ましい。ここで、飽和吸湿率の90%に達するまでの時間とは、前記高吸湿性複合材料を相対湿度40%の環境下に24時間放置し、次に、前記高吸湿性複合材料を相対湿度90%の環境下に移したとき、高吸湿性複合材料の吸湿率が、その飽和吸湿率の90%に達するまでの時間をいう。この時間が30分を超えると、周囲の環境湿度に影響され、この複合材料が持つ吸湿、放湿特性を生かすことができなくなり、用途により吸湿性能を満足できない場合が出てくる。尚、飽和吸湿率とは、前記高吸湿性複合材料を、相対湿度90%の環境下に24時間放置したときの吸湿率をいう。
【0035】
また、本発明の高吸湿性複合材料は、相対湿度90%から相対湿度40%の環境下に移したときに、吸湿率が相対湿度40%における当該複合材料の飽和吸湿率になる時間が30分以内であることが好ましい。相対湿度40%における飽和吸湿率になる時間が30分を超えると、その複合材料の使用用途によっては吸湿要求性能を満たすことができなくなる。ここで、相対湿度40%における飽和吸湿率とは、前記高吸湿性複合材料を相対湿度40%の環境下に24時間放置したときの吸湿率をいう。
【0036】
更に、本発明の高吸湿性複合材料は、相対湿度90%における吸湿及び相対湿度40%における放湿を100回繰り返した後、相対湿度90%における前記高吸湿性複合材料の吸湿率が、初期の相対湿度90%における吸湿率の90%以上であることが好ましい。この値が90%よりも小さいと、樹脂劣化の可能性があり、長期に亘り使用することができないこともある。ここで、相対湿度90%における吸湿及び相対湿度40%における放湿を100回繰り返す評価方法について説明する。当該評価方法は、前記高吸湿性複合材料を相対湿度90%の環境下に24時間放置し、次に相対湿度40%の環境下に移し24時間放置するという操作を1回として、この操作を100回繰り返す評価方法をいう。
【0037】
(2)吸湿・吸水性構造体
本発明は、(A)相対湿度90%にて8重量%以上の吸湿率を有する構造体、(B)前記構造体(A)と対向し、且つ、前記構造体(A)の吸湿率の70%以下の吸湿率を有する構造体、及び(C)前記構造体(A)及び前記構造体(B)に挟まれ、自重の5倍以上の吸水率を有する樹脂で表面加工された構造体で構成されることを特徴とする吸湿・吸水性構造体に関する。
【0038】
前記構造体(A)は、使用時に人体又は水分放出体に面する構造体であって、相対湿度90%、25℃の雰囲気の下で8重量%以上の吸湿率を有する。該吸湿率は10重量%以上であることが好ましく、12重量%以上であることがより好ましい。前記吸湿率が8重量%未満の場合は、人体又は他の水分放出体から発生する水分・湿度を充分に早く吸収・吸湿することができない。
【0039】
前記構造体(A)を構成する材料としては、前記各種織物、編物、スパンボンド、湿式若しくは乾式不織布等の繊維材料又は多孔体が好ましい。特に、吸湿性・透湿性、吸湿速度、吸水速度及び通水性に優れた材料、レーヨン繊維、表面に凹溝を有する合成繊維、繊維内部に多孔を有する天然繊維、合成繊維をフィラメント、ステープル、又はチョプド繊維として用いることが好ましい。また、本発明の高吸湿性複合材料は、前記のように、相対湿度90%、25℃の雰囲気の下で8重量%以上の吸湿率を有することから、本発明の高吸湿性複合材料を、前記構造体(A)を構成する材料として用いてもよい。
【0040】
更に、前記構造体(A)は、相対湿度65%にて吸湿率が6.5重量%以上の天然繊維、合成繊維、又はこれらの組合せを含むことができる。吸湿率が6.5重量%以上であると、人体又は水分放出体から発生する水分、湿度を素早く吸収することができるので好ましい。前記繊維としては、綿、ウール、シルク、アルパカ、ミンク等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン・ポリプロピレン、ポリエチレン、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアミド等の合成繊維が挙げられる。これらのうち、吸湿速度、吸水拡散性の点で、綿、レーヨン、又は全芳香族ポリアミドが好ましい。
【0041】
前記構造体(A)の密度及び空孔率は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜選択することができる。密度としては0.05〜0.50g/cmが好ましく、0.10〜0.40g/cmがより好ましい。空孔率としては、50〜95%が好ましく、60〜90%がより好ましい。密度及び空孔率が上記範囲である場合、水分・湿気の透湿性・拡散がより充分となる傾向があるので好ましい。
【0042】
前記構造体(B)は、前記構造体(A)と対向する構造体であって、前記構造体から外部に水分・湿度を放出・放散する。前記構造体(B)の吸湿率は、相対湿度90%、25℃の雰囲気のもとで、前記構造体(A)の吸湿率の70%以下である。好ましくは65%以下の吸湿率、更に好ましくは60%以下の吸湿率、より好ましくは50%以下の吸湿率を有する。吸湿率が70%を超える場合、構造体からの水分の放出・放湿が充分に行なわれず、持続的な吸湿・放湿の機能が発現しない。
【0043】
前記構造体(B)を構成する材料としては、各種織物、編物、スパンボンド、湿式若しくは乾式不織布等の繊維材料又は多孔体が好ましい。また、前記の性能を好ましく発現するために、表面に凹凸の構造を有する天然繊維や合成繊維を有することが好ましい。特に、吸湿性・透湿性、吸湿速度、吸水速度及び通水性に優れた材料、レーヨン繊維、表面に凹溝を有する合成繊維、繊維内部に多孔を有する天然繊維・合成繊維をフィラメント、ステープル、又はチョプド繊維として用いることが好ましい。
【0044】
前記構造体(B)の密度及び空孔率は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜選択することができる。密度としては0.05〜0.50g/cmが好ましく、0.10〜0.40g/cmがより好ましい。空孔率としては、50〜95%が好ましく、60〜90%がより好ましい。密度及び空孔率が上記範囲である場合、水分、湿気の蒸散がより充分となる傾向があるので好ましい。
【0045】
本発明の構造体(C)は、前記構造体(A)と前記構造体(B)に挟まれた中間部分に存在し、前記構造体(A)で吸湿又は吸水した水分を蓄積し、それを前記構造体(B)へ移行させて前記構造体(B)より放湿、放水させるために、自重の5倍以上の吸水率を有する樹脂で表面加工される。吸水率は、好ましくは自重の7倍以上、より好ましくは自重の10倍以上である。前記吸水性樹脂の吸水率が自重の5倍よりも低いと、前記構造体(A)の表層に結露等の濡れが発生し、その発熱効果は実感できない。
【0046】
前記樹脂加工に用いる吸水性樹脂としては、例えば、アクリル酸又はそのアルカリ金属塩、メタアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、マレイン酸又はそのアルカリ金属塩、イタコン酸又はそのアルカリ金属塩、クロトン酸又はそのアルカリ金属塩、フマル酸又はそのアルカリ金属塩、メサコン酸又はそのアルカリ金属塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩、アクリルアミド、メタアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセリルモノメタクリレート、グリセリルモノアクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−メチレンビス−α−エチルアクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド等の水溶性モノマーからなる重合体が挙げられる。なかでも、その反応速度、架橋密度調整、製造方法が経済的であること等の点でメタアクリル酸塩、アクリル酸塩が好ましい。さらに、本発明の吸水・吸湿性を阻害しない範囲で共重合可能な他のモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブチレン、ジイソブチレン、メチルビニルエーテル、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル等のα−オレフィン、ビニル化合物、ビニリデン化合物等との共重合物も使用することができる。このような吸水性樹脂として具体的には、例えば、特開平10−287714号公報記載の(メタ)アクリル酸塩系樹脂が挙げられる。
【0047】
また、前記吸水性樹脂として、シルクフィブロイン又はその変性物、澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ザンサンガム、ポリビニルアルコール、ポリビエルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変生物、カゼイン酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、デンプン−ビニルスルホン酸グラフト共重合体等のグラフト化デンプン系樹脂、セルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、架橋カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂、架橋ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂、架橋ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル系重合体ケン化物、ポリエチレングリコールジ(メタ)アタリレート架橋体等のアクリル系樹脂、架橋ポリエチレンオキシド系等の天然高分子、合成高分子又は半合成高分子などを用いてもよい。
【0048】
前記吸水性樹脂は、架橋構造を導入して安定した固定化、安定した性能又は使用時の安定性を付与することが好ましい。架橋構造の導入としては、分子中に付加重合可能な二重結合を有するモノマー、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等を前記吸水性樹脂と併用する方法、澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルローズ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ザンサンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変生物、カゼイン酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、デンプン−ビニルスルホン酸グラフト共重合体などのグラフト化デンプン系樹脂、セルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、架橋カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂など親水性樹脂の溶液中で他の親水性モノマー、例えば、前記水溶性モノマーを重合させ、複数の高分子がお互いに入り組んだ構造(所謂IPN(inter penetrated network)を有する樹脂も吸水性や樹脂の安定性の点で好ましい。
【0049】
更に、吸水性を有する樹脂の活性水素と、M(OR)(M;Si,Ca,Ba,Al,Fe,Ga,Sb,In,La,Li,Mg,Mo,Nb,Pb,V,W,Zn,Zrなどの金属残基、R;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等の単価水素残基、n,m;MとORとの結合を満足する整数)等との有機無機ハイブリッド化合物を使用することも、親水性と物理的・化学的強度、耐熱性を改善する点で好ましい。
【0050】
これらの吸水性樹脂中には、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機微粒子、シルクパウダー、セルローズパウダー、でんぷん粒子等の天然物のパウダー、又はポリスチレン、ポリアミド、アクリル樹脂、並びに他の合成高分子の微粒子などを含有するが、吸水性、吸湿性、透湿・透水性、風合い等の改善ができる点で好ましい。
【0051】
前記構造体(C)は、繊維構造体、発泡性樹脂構造体、及びこれらの張り合わせ構造体、又はこれらの組合せであることが好ましい。前記繊維構造体としては、各種織物、編物、スパンボンド、湿式若しくは乾式不織布等の繊維構造体、これらの樹脂加工品が挙げられる。発泡性樹脂構造体としては、発泡性の樹脂(ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)、粉体の圧縮・過熱融着体、又はまたはそれら多孔体の樹脂加工品等が挙げられる。これらは単独でも複合して使用されてもよい。例えば、2枚以上の張り合わせ体等が好ましく使用される。前記構造体の形状は、コートの裏地、壁紙、靴の中敷、テント地、家屋や保冷庫の断熱材等に使用される平板状、寝具の中綿、枕の中身等に使用される立体状、球状、紐状、ロープ状、網・ネット状も目的に応じて選択可能である。前記繊維構造体では、長繊維、短繊維、及びこれらの併用が可能であり、材質としては、天然繊維、合成繊維、又はこれらの併用が可能である。
【0052】
前記構造体(C)として繊維構造体を使用する場合には、構成する繊維として、綿、ウール、シルク、アルパカ、ミンク等の天然繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアミド、炭素繊維、硝子繊維、ロックウール等の合成繊維を用いることできる。繊維の太さ(繊度)や繊維の長さはそれぞれ目的や用途、製造方法によって適宜選択することができる。
【0053】
前記構造体(C)の密度及び空孔率は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜選択することができる。前記構造体(C)の密度は通常0.01〜0.7g/cm、好ましくは0.01〜0.6g/cm、より好ましくは0.05〜0.5g/cmである。また、前記構造体(C)の空孔率は通常30〜99%、好ましくは40〜99%、より好ましくは50〜95%である。密度及び空孔率が上記範囲である場合、充分な持続的発熱・保温性が発現されるので好ましい。
【0054】
次に、前記構造体(C)に前記吸水性樹脂を加工する方法を説明する。
前記構造体(C)に前記吸水性樹脂を加工する加工量は特に限定されず、用途や目的に応じて選定できる。例えば、本発明の構造体が繊維構造体の場合は、通常、繊維構造体重量に対して、前記吸水性樹脂の固形分として3〜50重量%加工することが好ましい。3重量%よりも少ないと吸湿効果が少なく、前記構造体(A)が前記構造体(B)より温度アップがし難い傾向がある。50重量%を超えると、風合いが堅くなり、この構造体の実用性を損なう傾向がある。また、本発明の構造体が空隙を有する構造体の場合は、通常、繊維構造体重量に対して前記吸水性樹脂の固形分として3〜30重量%加工することが好ましい。3重量%よりも少ないと、吸湿性能が低く、その発熱効果は1℃以下となる傾向がある。30重量%を超えると、空隙率が小さくなり、吸湿速度の低下によりその発熱効果は小さくなる傾向がある。
【0055】
樹脂加工方法は、従来より繊維構造体や空隙を有する構造体に採用されてきた樹脂加工方法を採用できる。例えば、前記樹脂溶液中に浸漬し、その後マングルローラーで絞り(ディプ)・乾燥するディプ法、樹脂溶液をドクターローラーで一定の厚さにコーティングするコーティング法、樹脂膜を貼り付けるラミネート法等を採用することができる。これらの方法は、目的や使用する材料、設備・方法により適宜最適な方法を採用すれば良い。
【0056】
本発明の吸湿・吸水性構造体は、前記構造体(A)、前記構造体(B)、及び前記構造体(A)と前記構造体(B)に挟まれた中間部である前記構造体(C)よりなる。前記構造体(A)、前記構造体(B)、及び前記構造体(C)を接合する方法としてはl公知の方法を用いることができる。例えば、ドライラミネート法、湿式ラミネート法、ウェルダラミネート法等が挙げられる。中でも、風合い等の点で、ドライラミネート法が好ましい。また、本発明の吸湿・吸水性構造体は、前記構造体(A)及び前記構造体(B)と、前記構造体(C)との結合面が連続した構造を持たせるようにすることが好ましい。
【0057】
本発明の吸湿・吸水性構造体の前記構造体(A)、前記構造体(B)、及び前記構造体(C)の構成は、目的、仕様、要求物性等により適宜決定する。例えば、コートのライナーや靴の中敷等のように非常に薄く、且つ軽量のものであれば、前記構造体(A)又は前記構造体(B)は1mm以下の厚さが好ましく、前記構造体(C)は2mm以下の厚さが好ましい。一方、家屋の吸湿・断熱保温材であれば、前記構造体(A)又は前記構造体(B)は1〜10mmの厚さが好ましく、前記構造体(C)は1〜50mmの厚さが好ましい。
【0058】
本発明の吸湿・吸水性構造体が、従来の吸湿・発熱材料と異なる優れた点は、持続的な吸湿・放湿機能により、持続的な保温機能を有することである。即ち、本発明の吸湿・吸水性構造体において、前記構造体(A)を相対湿度95%の雰囲気に接触させ、前記構造体(B)を相対湿度50%の雰囲気に接触させた場合、前記構造体(A)の温度(Ta)が、前記構造体(B)の温度(Tb)より1℃以上高くなる。好ましくは1.5℃以上、より好ましくは2℃以上高くなる。高くなる温度が1℃未満の場合は、発熱効果を体感することが困難となる。また本発明の吸湿・吸水性構造体では、1℃以上高くなる時間が30分以上好ましくは45分以上持続する。1℃以上高くなる時間が30分未満の場合は、外気との断熱を完全にしない限り、その発熱効果を実感できない。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。尚、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0060】
(1)高吸湿性複合材料について
実施例1
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、水189g、2−プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045g、ゴーセファイマーZ−200(日本合成化学工業株式会社製の平均重合度1000、ケン化度95モル%のアセトアセチル基変性PVA)の10%水溶液45gを仕込み撹拌を行い、次いで、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。その後、昇温を行い、重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液260gで除々に中和した。これを冷却し、アクリル酸塩樹脂水溶液Aを得た。アクリル酸塩樹脂溶液Aの固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて110重量%であった。また、アクリル酸塩樹脂溶液A中のカルボキシル基の65%化学当量が水酸化ナトリウムで中和されていた。
【0061】
このアクリル酸塩樹脂水溶液Aを7.5重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸塩樹脂水溶液Aの樹脂相当分に対し5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液を調製した。この処理液をポリエステル不織布(目付量200g/m)に塗装用拡散スプレーを使用し、塗出圧25kgf/cmで噴霧した。これを160℃で、7分間熱乾燥及び熱架橋して、高吸湿性樹脂の付着量が65g/mの高吸湿シートである高吸湿性複合材料を得た。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は32.5重量%であった。
【0062】
実施例2
実施例1のアクリル酸塩樹脂水溶液Aを15重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸塩樹脂水溶液Aの樹脂相当分に対し5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液を調製した。この処理液を経糸、緯糸共に150デニール/48フィラメントのポリエステル加工糸の織物80g/mにロールコーティングし、150℃で8分間熱乾燥及び熱架橋して、高吸湿性樹脂の付着量が15g/mの高吸湿シートである高吸湿性複合材料を得た。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は19重量%であった。
【0063】
実施例3
実施例1のアクリル酸塩樹脂水溶液Aを20重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸樹脂水溶液Aの樹脂相当分に対して、5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液を調製した。耐水性感光性乳剤にて製版したスクリーン型(70メッシュポリエステル紗)を使用し、ポリエステルスパンボンド不織布(目付量50g/m)上に、この処理液を水玉状(直径5mm)に印捺した後、温度150℃で5分間熱乾燥及び熱架橋して、高吸湿性樹脂の付着量が5g/mの高吸湿シートである高吸湿性複合材料を得た。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は10重量%であった。
【0064】
実施例4
実施例1で得たアクリル酸塩水溶液Aを5重量%濃度に調整し、厚み5mm目付50g/mのウレタン樹脂製スポンジに浸漬後、マングルにて絞り、熱架橋後、高吸湿ウレタン樹脂製品を得た。このウレタン複合材料の高吸湿性樹脂の付着量が8g/mの高吸湿樹脂付着ウレタン複合材料を得た。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は16重量%であった。
【0065】
実施例5
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、アクリル酸108gを仕込み、これと15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液260gを攪拌して冷却下で徐々に中和した。この後、2−プロパノール27g、過硫酸アンモニウム0.045g、ゴーセファイマーZ−200(日本合成化学工業株式会社製の平均重合度1000、ケン化度95モル%のアセトアセチル基変性PVA)の10%水溶液45gを仕込み撹拌を行い、次いで、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。その後、昇温を行い、重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、これを冷却し、アクリル酸塩樹脂水溶液Bを得た。アクリル酸塩樹脂水溶液Bの固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて105重量%であった。また、アクリル酸塩樹脂水溶液B中のカルボキシル基の65モル%化学当量が水酸化ナトリウムで中和されていた。
【0066】
このアクリル酸塩樹脂水溶液Bを7.5重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸塩樹脂水溶液Bの樹脂相当分に対し5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Bの処理液を調製した。そして、実施例1において、アクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液の代わりに、前記アクリル酸塩樹脂水溶液Bの処理液を使用した以外は、実施例1と同処方、同操作にて処理して、高吸湿シートである高吸湿性複合材料を得た。高吸湿性樹脂の付着量は62g/mであった。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は31重量%であった。
【0067】
実施例6
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、水189g、2−プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045g、ゴーセノールGH−17(日本合成化学工業株式会社製の平均重合度1700、ケン化度90モル%のPVA)の10%水溶液45gを仕込み撹拌を行い、ついで窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。その後、昇温を行い重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液240gで徐々に中和した。これを冷却し、アクリル酸塩樹脂水溶液Cを得た。アクリル酸塩樹脂水溶液Cの固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて75重量%であった。また、アクリル酸塩樹脂水溶液C中のカルボキシル基の60モル%化学当量が水酸化ナトリウムで中和されていた。
【0068】
このアクリル酸塩樹脂水溶液Cを7.5重量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)をアクリル酸塩樹脂水溶液Cの樹脂相当分に対し5%添加し、充分に撹拌してアクリル酸塩樹脂水溶液Cの処理液を調製した。そして、実施例1において、アクリル酸塩樹脂水溶液Aの処理液の代わりに、前記アクリル酸塩樹脂水溶液Cの処理液を使用した以外は、実施例1と同処方、同操作にて処理して、高吸湿シートを得た。高吸湿性樹脂の付着量は55g/mであった。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は27.5重量%であった。
【0069】
比較例1
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、水229.5g、2−プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045gを仕込み撹拌を行い、ついで窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。そののち、昇温を行い、重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液260gで除々に中和した。これを冷却し、アクリル樹脂水溶液Dを得た。アクリル酸塩樹脂水溶液Dの固形分の吸湿率は、相対湿度90%にて65重量%であった。また、アクリル酸塩樹脂水溶液D中のカルボキシル基の65モル%化学当量が水酸化ナトリウムで中和されていた。
【0070】
実施例1において、アクリル酸塩樹脂水溶液Aの代わりに、アクリル樹脂水溶液Dを使用した以外は、実施例1と同処方、同操作にて処理して、高吸湿シートを得た。しかし、シート巻き取り時に巻き取りロールとの摩擦により樹脂が脱落し、高吸湿性樹脂の付着量は50g/mにまで減少した。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は25重量%であった。
【0071】
比較例2
実施例1において、アクリル酸塩樹脂水溶液Aの濃度を1.0重量%濃度に調整した以外は、実施例1と同様にして高吸湿シートを得た。高吸湿性樹脂の付着量は2g/mであった。基材重量に対する高吸湿性樹脂層は1重量%であった。
【0072】
また、前記実施例1〜6及び比較例1〜2について、高吸湿性樹脂層の基材への固定化の程度を評価するために、湿度97%の雰囲気下にて、充分に吸湿させた。その後、高吸湿性複合材料を乾燥精秤を行い、摩擦剥離をJIS−L−1096法 B法による試験方法を用いて、下記式により吸湿時の樹脂脱落率を算出した。
樹脂脱落(樹脂溶出)率(%)=〔吸湿前重量(g)−吸湿乾燥後重量(g)〕/〔高吸湿性樹脂層の重量(g)〕
【0073】
更に、実施例1〜6及び比較例1〜2について、吸湿後の表面状態を手触にて測定し、下記の三段階評価を行なった。
○:べとつきがなく、ドライ感であった。
△:ほとんどべとつきがなかった。
×:べとつきが強くゲル状があった。
【0074】
更に、実施例1〜6及び比較例1〜2について、吸湿能を測定した。吸湿率の測定方法は、高吸湿性複合材料1mを、相対湿度40%の環境下で24時間放置し、精秤する(吸湿前重量)。次に、前記高吸湿性複合材料1mを、相対湿度90%の環境下に移し24時間放置した後、精秤する(吸湿後重量)ことにより行った。そして、下記式により、高吸湿性複合材料1m当たりの吸湿量、吸湿率を算出した。
高吸湿性複合材料1m当たりの吸湿量(g)=B−A
吸湿率(%)=(B−A)×100/A
A;吸湿前重量(g)  B;吸湿後重量(g)
【0075】
また、前記高吸湿性複合材料を相対湿度90%から相対湿度40%の環境下に移したときに、吸湿率が相対湿度40%における当該複合材料の飽和吸湿率になる時間を測定した。更に、前期高吸湿性複合材料を相対湿度90%における吸湿及び相対湿度40%における放湿を100回繰り返した後、初期の相対湿度90%における吸湿率(a%)、100回後の相対湿度90%における吸湿率(b%)を測定した。
【0076】
表1に上記各試験結果を示す。
【0077】
【表1】
Figure 2004001461
【0078】
表1から明らかなように、実施例1〜6は比較例1よりも樹脂脱落率が低く、基材の表面に高吸湿性樹脂層が強固に形成されていた。また、表1から明らかなように、実施例1〜6は比較例1〜2に比べて吸湿率が高く、吸湿性能に優れていることがわかった。
【0079】
(2)吸湿・吸水性構造体について
実施例7
吸水性樹脂の製造
攪拌機、環流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を付設した容量1リットルの5つ口丸底フラスコに、水189g、2−プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045g、ゴーセファイマーZ−200(平均重合度1000、ケン化度95モル%のアセトアセチル基変性PVA、日本合成化学工業株式会社製)の10%水溶液45gを仕込み攪拌し、次いで、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。その後、昇温して重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液200gで徐々に中和した。これを冷却し、アクリル酸塩樹脂水溶液とした。
【0080】
次に、このアクリル酸塩樹脂水溶液を7.5重量%濃度に調整し、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを前記アクリル酸塩樹脂水溶液の樹脂相当分に対し5%添加し、充分に攪拌して吸水性樹脂の加工液を調製した。前記吸水性樹脂は、自重の10倍の吸水率を有していた。尚、前記吸水性樹脂の吸水率は、前記吸水性樹脂の自重及び飽和するまで吸水性樹脂に水を吸収させた後の重量から求めた。
【0081】
構造体(A)の製造
構造体(A)を構成する材料として、レーヨン繊維からなる編物(目付け50g/m)を用いた。構造体(A)の大きさは30cm×30cm×厚さ0.2mmであった。構造体(A)の密度は0.25g/cm、空孔率は80%、相対湿度90%にて吸湿率は12重量%であった。
【0082】
構造体(B)の製造
構造体(B)を構成する材料として、ポリエステル繊維からなる織物(目付け120g/m)を用いた。構造体(B)の大きさは、30cm×30cm×厚さ0.5mmであった。構造体(B)の密度は0.25g/cm、空孔率は80%、相対湿度90%にて吸湿率は0.5重量%であった。
【0083】
構造体(C)の製造
構造体(C)を構成する材料として、ポリエステル繊維からなる不織布(目付け120g/m)を用いた。構造体(C)の大きさは、30cm×30cm×厚さ2.5mmであった。構造体(C)を前記吸水性樹脂の加工液中に浸漬し、その後マングルローラーで絞り、乾燥させた。前記吸水性樹脂は、固形分として構造体(C)に対して30重量%加工した。構造体(C)の密度は0.05g/cm、空孔率は80%であった。
【0084】
次に、構造体(C)を構造体(A)と構造体(B)の間に挟さみ、30cm×30cm×厚さ3.5mmの構造体を造り、ドライラミネート加工法によって構造体間を固定し、本発明の構造体を得た。
【0085】
実施例8
構造体(C)を構成する材料として、空隙を有する構造体であるポリウレタン発泡体(目付け0.03g/m)を用いた。前記吸水性樹脂を、固形分として構造体(C)に対して15重量%加工した以外は、実施例7と同様にして本発明の構造体を得た。構造体(C)の大きさは30cm×30cm×厚さ10mmであった。構造体(C)の密度は0.04g/cm、空孔率は85%であった。
【0086】
実施例9
構造体(A)を構成する材料として、相対湿度65%にて12重量%の吸湿率を有するレーヨン繊維を構造体(A)の重量に対して65重量%、及び相対湿度65%にて3重量%の吸湿率を有するポリアミド繊維を35重量%含む構造体(A)(目付け100g/m)を用いた以外は実施例7と同様にして本発明の構造体を得た。構造体(A)の密度は0.20g/cm、空孔率は85%、相対湿度90%にて吸湿率は8.8重量%であった。
【0087】
比較例3〜5
構造体(C)として、前記吸水性樹脂を加工しなかった以外は実施例7〜9と同様にして構造体を得た。
【0088】
評価方法
実施例7〜9で得られた本発明の構造体、比較例3〜5で得られた構造体について、次の評価を行なった。
構造体(A)及び構造体(B)に温度計を設置し、30℃で、この構造体全体を相対湿度60%の雰囲気で24時間放置した。次に、前記構造体の構造体(A)を相対湿度95%の雰囲気に接触させ、構造体(B)を相対湿度50%の相対湿度の雰囲気に接触させ、1分後に構造体(A)の温度(Ta)及び構造体(B)の温度(Tb)を漏定した(表1および表2中に0分で示す)。この測定を行なった時間から30分後、45分後に温度を測定した。実施例7〜9については測定結果を表2に、比較例3〜5については測定結果を表3に示す。
【0089】
【表2】
Figure 2004001461
【0090】
【表3】
Figure 2004001461
【0091】
【発明の効果】
(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和し、この中和されたモノマー成分をポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合してなる(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液、又は(メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分をポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合し、前記溶液中の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和してなる(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液に、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加し、充分に撹拌して処理液を調製した。この(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液の固形分の吸湿率が、相対湿度90%にて8重量%以上である高吸湿性複合材料用(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液により、摩擦、衝撃等により基材から脱落しにくく、繰り返し使用できる高吸湿性樹脂層を形成することができる(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を提供できる。また、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液を付与した繊維布帛、粉体の圧縮・加熱溶融体およびこれらの加工品の高吸湿性複合材料を提供できる。
【0092】
また、本発明の吸湿・吸水性構造体は、防寒衣料、雨具、冬季のスポーツ衣料、水着・ウェットスーツ地、テント地、寒冷場所での作業衣料、寝具、壁紙等のインテリア品、屋根の断熱材、保冷庫の断熱材、靴の中張、自動車や列車の壁材等多岐にわたる吸湿、断熱、保温の必要とされる用途に、従来の単なる断熱・保温効果でなく、持続性に優れた吸湿性・保温発熱性という積極的でかつ持続性に優れた効果を初めて付与できたものであり、従来の用途は勿論、あるいは従来用いられていない新規な用途にも優れた材料である。

Claims (9)

  1. (メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和し、中和された前記モノマー成分をポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合して得られ、溶液中の固形分の吸湿率が相対湿度90%にて8重量%以上である(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の(メタ)アクリル酸塩系樹脂を、熱反応性架橋剤で架橋することにより、基材の表面に高吸湿性樹脂層を形成してなり、且つ前記高吸湿性樹脂層の重量が、前記基材の重量に対して3〜200重量%であることを特徴とする高吸湿性複合材料。
  2. (メタ)アクリル酸を含有するモノマー成分をポリビニルアルコールの存在下溶液中で重合し、前記溶液中の一部のカルボキシル基を塩基性化合物で中和して得られ、溶液中の固形分の吸湿率が相対湿度90%にて8重量%以上である(メタ)アクリル酸塩系樹脂溶液中の(メタ)アクリル酸塩系樹脂を、熱反応性架橋剤で架橋することにより、基材の表面に高吸湿性樹脂層を形成してなり、且つ前記高吸湿性樹脂層の重量が、前記基材の重量に対して3〜200重量%であることを特徴とする高吸湿性複合材料。
  3. 前記基材が繊維布帛又は粉体の圧縮・加熱溶融体である請求項1又は2記載の高吸湿性複合材料。
  4. 前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂中のカルボキシル基の10〜95%化学当量が前記塩基性化合物で中和されている請求項1乃至3のいずれかに記載の高吸湿性複合材料。
  5. 前記ポリビニルアルコールが、前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂を架橋するための前記熱反応性架橋剤、及び/又は前記(メタ)アクリル酸塩系樹脂のカルボキシル基と反応可能な官能基を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の高吸湿性複合材料。
  6. 前記ポリビニルアルコールの官能基が、カルボキシル基又はアセトアセチル基である請求項5記載の高吸湿性複合材料。
  7. (A)相対湿度90%にて8重量%以上の吸湿率を有する構造体、(B)前記構造体(A)と対向し、且つ、前記構造体(A)の吸湿率の70%以下の吸湿率を有する構造体、及び(C)前記構造体(A)及び前記構造体(B)に挟まれ、自重の5倍以上の吸水率を有する樹脂で表面加工された構造体で構成されることを特徴とする吸湿・吸水性構造体。
  8. 前記構造体(A)が、請求項1乃至6のいずれかに記載の高吸湿性複合材料を含む構造体である請求項7記載の吸湿・吸水性構造体。
  9. 前記構造体(A)が、相対湿度65%にて吸湿率が6.5重量%以上の天然繊維、合成繊維又はこれらの組み合わせを含む構造体である請求項7又は8記載の吸湿・吸水性構造体。
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