JP2004001345A - インクジェットヘッド及びそれを用いたインクジェットプリンタ - Google Patents
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Abstract
【課題】簡素な構成ならびに制御機構でインクの吐出量、吐出速度を均一化し、良好な印画を形成することができる高性能のインクジェットヘッド及びそれを用いたインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】主走査方向に配列した多数の発熱抵抗体を有するヘッド基板上に、間に所定の間隙を形成するようにして天板を配設させるとともに、前記間隙を主走査方向に一列状に配される複数個の区画に区分し、該区画毎に表面張力の異なるインクを充填してなり、前記発熱抵抗体を選択的に発熱させてインクをインク吐出孔より吐出させることによって記録紙に印画を形成するインクジェットヘッドにおいて、前記区画内に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値を、区画内に充填されているインクの表面張力に応じて設定する。
【選択図】図2
【解決手段】主走査方向に配列した多数の発熱抵抗体を有するヘッド基板上に、間に所定の間隙を形成するようにして天板を配設させるとともに、前記間隙を主走査方向に一列状に配される複数個の区画に区分し、該区画毎に表面張力の異なるインクを充填してなり、前記発熱抵抗体を選択的に発熱させてインクをインク吐出孔より吐出させることによって記録紙に印画を形成するインクジェットヘッドにおいて、前記区画内に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値を、区画内に充填されているインクの表面張力に応じて設定する。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録紙にインク滴を所定パターンに付着させて画像等を形成するインクジェットヘッド及びそれを用いたインクジェットプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、記録紙に画像を形成するための記録デバイスとしてインクジェットヘッドが幅広く用いられている。
【0003】
インクジェットヘッドの記録方式には、インク滴を記録紙に向けて吐出させるのに発熱抵抗体の発する熱エネルギーを利用するものや圧電素子の変形を利用するもの,更には電磁波の照射に伴って発生する熱を利用するもの等があり、これらの中でも発熱抵抗体の熱エネルギーを利用するサーマルジェットタイプのものは、発熱抵抗体のパターニングが容易である上に、小さな面積の発熱抵抗体であっても比較的大きな熱エネルギーを発生させることができることから、高密度記録への対応に適したものとして注目されている。
【0004】
かかるサーマルジェットタイプのインクジェットヘッドとしては、例えば図5に示す如く、ベースプレート22の上面に多数の発熱抵抗体23を主走査方向に被着・配列したヘッド基板21と、複数個のインク吐出孔25を有した天板24とを間に所定の間隔を形成するようにして配設させた上、この両者間に形成される間隙にインク26を充填した構造のものが知られており、多数の発熱抵抗体23を外部からの画像データに基づき個々に選択的にジュール発熱させ、これらの熱エネルギーによってインク26中に気泡を発生させるとともに、該気泡の発生に伴う圧力でもってインク26の一部をインク吐出孔25より記録紙に向けて吐出させ、記録紙に所定の印画を形成することによってインクジェットヘッドとして機能する。
【0005】
また近時、種類の異なる複数のインクを用いて1個のインクジェットヘッドを構成することが検討されており、この場合、ヘッド基板21−天板24間に形成される間隙は主走査方向に一列状に配置された複数の区画に区分され、各区画内に上述のインクがそれぞれ充填される。例えば、カラー印画用のインクジェットヘッドを構成する場合は、上記間隙を3以上の区画に区分し、個々の区画内に、マゼンタ、シアン、イエロー等の異なるカラーインクが充填されることとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、種類の異なる複数のインク26を用いて1個のインクジェットヘッドを構成した場合、熱に対するインク26の特性がそれぞれ異なっていることから、全ての発熱抵抗体23を同じ条件で発熱させると、インク26の吐出速度が区画毎に相違し、特に表面張力の低いインク26が充填されている区画ほど、インク26の吐出速度が遅くなって良好な印画を形成することが不可となる欠点を有していた。
【0007】
そこで上記欠点を解消するために、発熱抵抗体23への印加電力をインク26の特性に応じて調整することによりインク26の吐出速度を均一化することが考えられる。
【0008】
しかしながら、発熱抵抗体23への印加電力をインク26の特性に応じて調整する場合、発熱抵抗体23への印加電力を区画毎に調整するための特殊な電源回路等が別途必要となるため、インクジェットヘッドやインクジェットプリンタの構成ならびに制御機構が複雑化し、これによってインクジェットヘッド、インクジェットプリンタのコストアップを招く欠点が誘発される。
【0009】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、簡素な構成ならびに制御機構でインクの吐出速度を均一化し、良好な印画を形成することができる高性能のインクジェットヘッド及びそれを用いたインクジェットプリンタを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェットヘッドは、主走査方向に配列した多数の発熱抵抗体を有するヘッド基板上に、間に所定の間隙を形成するようにして天板を配設せしめ、前記間隙を主走査方向に一列状に配される複数個の区画に区分するとともに、これらの区画内にインクを充填してなり、前記発熱抵抗体を選択的に発熱させてインクをインク吐出孔より吐出させることによって記録紙に印画を形成するインクジェットヘッドにおいて、前記間隙に充填されるインクの表面張力が区画毎に異なっており、且つ区画の内側に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値が、対応する区画内に充填されているインクの表面張力が小さいほど低い値に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明のインクジェットヘッドは、前記発熱抵抗体はパルストリミング法にて抵抗値調整されていることを特徴とするものである。
【0012】
更に本発明のインクジェットヘッドは、前記発熱抵抗体がTaSiO系抵抗材料により形成されており、且つTa含有率が50原子%〜60原子%に設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
そして本発明のインクジェットプリンタは、上述したインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッド上に記録紙を搬送する搬送手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、ヘッド基板−天板間の間隙を複数の区画に区分するとともに、該区画内に表面張力の異なる複数のインクをそれぞれ充填したインクジェットヘッドであって、各区画の内側に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値を該区画に充填されるインクの表面張力に応じて個々に設定することにより、全ての区画に充填されているインクの吐出速度を略一定に揃え、良好な印画を形成することができる。しかもこの場合、発熱抵抗体への印加電力を調整する必要はなく、印加電力調整用の特殊な電源回路等は一切不要であることから、インクジェットヘッドやインクジェットプリンタの構成ならびに制御機構は簡素に維持され、製品としてのインクジェットヘッド、インクジェットプリンタを安価になすことができるようになる。
【0015】
また本発明によれば、発熱抵抗体の抵抗値調整をパルストリミング法にて行うことにより、発熱抵抗体の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッドやインクジェットプリンタの生産性を高く維持することも可能である。
【0016】
更に本発明によれば、前記発熱抵抗体をTaSiO系抵抗材料により形成するとともに、そのTa含有率を50原子%〜60原子%に設定することにより、発熱抵抗体の電気抵抗値を従来周知のパルストリミング法にて調整する際、トリミングパルスを印加したときの抵抗値変動量が適度な大きさとなり、パルストリミング法によってより細かな抵抗値調整がし易くなるという利点がある。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図、図2は図1のインクジェットヘッドを天板側から見た平面図であり同図に示すインクジェットヘッドは、大略的にヘッド基板1と天板6とで構成され、この両者間には表面張力の異なる3種類のインク8が充填されている。
【0018】
前記ヘッド基板1は、ベースプレート2の上面に多数の発熱抵抗体3、一対の給電配線4、保護膜5等を所定パターンに被着させた構造を有している。
【0019】
前記ベースプレート2は、単結晶シリコン等によって矩形状をなすように形成されており、その上面で多数の発熱抵抗体3や一対の給電配線4等を支持するための支持母材として機能する。
【0020】
このようなベースプレート2は、単結晶シリコンからなる場合、従来周知のチョコラルスキー法(引き上げ法)等によって形成した単結晶シリコンのインゴット(塊)を、所定厚みにスライスすることにより製作される。尚、この場合、ベースプレート2の表面には、ベースプレート2を後述する発熱抵抗体3等と電気的に絶縁する目的で、酸化シリコン(SiO2)から成る絶縁膜が従来周知の熱酸化法等によって1μm〜3μmの厚みに形成される。
【0021】
また、前記ベースプレート2の上面に設けられている多数の発熱抵抗体3は、ベースプレート2の長手方向(主走査方向)に例えば600dpi(dot per inch)の密度で直線状に配列されており、各々がTaNやTaSiO,TaSiNO,TiSiO,TiSiCO,NbSiO等の抵抗材料から成る抵抗薄膜により形成されている。
【0022】
前記発熱抵抗体3は、それ自体が電気抵抗材料から成っているため、給電配線4等を介して電源電力が印加されるとジュール発熱を起こし、インク8中に気泡Aを発生させるのに必要な所定の温度(200℃〜400℃)となる。
【0023】
また、これらの発熱抵抗体3は、主走査方向に一列状に配置された3つの発熱抵抗体群に区分されており、その電気抵抗値は各発熱抵抗体群毎に略一定(±1.2%以内)に揃えられ、発熱抵抗体群毎の平均抵抗値は後述するインク8の表面張力に応じた値に設定されている。
【0024】
尚、前記発熱抵抗体3や給電配線4は、従来周知の薄膜形成技術を採用することによって形成される。例えば、上述の抵抗材料とアルミニウム等の金属材料とを従来周知のスパッタリング法によりベースプレート2の上面に順次被着させ、得られた抵抗薄膜ならびに金属薄膜を従来周知のフォトリソグラフィー及びエッチング技術にて所定パターンに微細加工することによって発熱抵抗体3及び給電配線4が形成される。
【0025】
そして前記発熱抵抗体3や給電配線4の上面には窒化珪素等から成る保護膜5が被着され、この保護膜5によって発熱抵抗体3や給電配線4がインク8の接触による腐食等から保護されている。
【0026】
また一方、前記天板6は、上述したヘッド基板1上に、間に所定の間隙を形成するようにして配設される。
【0027】
前記天板6は、ヘッド基板1上の発熱抵抗体3と1対1に対応する多数のインク吐出孔7を有しており、これらのインク吐出孔7が対応する発熱抵抗体3の真上に位置するようにしてヘッド基板1に対し取着・固定されている。
【0028】
また前記インク吐出孔7は、各々の直径が10μm〜100μmの大きさに設定されており、インクジェットヘッドの記録動作時、発熱抵抗体3の発熱に伴いインク8中に気泡Aが発生すると、気泡Aの発生に伴う圧力でもってインク8の一部をインク吐出孔7より記録紙に向けて吐出するようになっている。
【0029】
このような天板6は、モリブデン等の金属やアルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは感光性樹脂から成り、例えばモリブデンから成る場合、モリブデンのインゴット(塊)を従来周知の金属加工法によって所定厚みの板体と成し、得られた板体に従来周知のレーザー加工によってインク吐出孔7を厚み方向に穿設することにより製作され、得られた天板6をヘッド基板1上に図示しないスペーサを介して載置することでヘッド基板1に対し固定される。
【0030】
そして、ヘッド基板1−天板6間に形成される間隙は、主走査方向に一列状に配された3つの区画、即ち、前述した発熱抵抗体群に対応した3つの区画A,B,Cに区分され、各区画A,B,Cには3種類のカラーインク8がそれぞれ充填される。
【0031】
このようなカラーインク8としては、例えばマゼンタ、シアン、イエローの3種類のインクが用いられ、その表面張力は例えばマゼンタインクが25.4dyne/cm、シアンインクが24.6dyne/cm、イエローインクが23.8dyne/cmとなっている。
【0032】
前記発熱抵抗体群の平均抵抗値は、前述した如く、これらインク8の表面張力に応じて、具体的にはインク8の表面張力が小さいものほど低い値に設定されており、マゼンタインクが充填される区画Aの内側に配される発熱抵抗体群は330Ωに、シアンインクが充填される区画Bの内側に配される発熱抵抗体群は300Ωに、またイエローインクが充填される区画Cの内側に配される発熱抵抗体群は270Ωに設定される。
【0033】
このように、ヘッド基板1−天板6間に設けられている各区画の内側に位置する発熱抵抗体5の平均抵抗値を、対応する区画に充填されているインク8の表面張力に応じて個々に設定することにより、全ての区画A,B,Cより吐出されるインク8の吐出速度を略一定に揃えることができ、記録紙に良好な印画を形成することが可能となる。
【0034】
しかもこの場合、発熱抵抗体3の電気抵抗値そのものを調整することでインク8の吐出速度を略等しく揃えることができるため、補正データ等を用いて印加電力を調整するような場合に比し、補正データ格納用のメモリや複雑な補正回路、専用の電源回路等が不要となり、インクジェットヘッドの構成が簡素に維持され、製品としてのインクジェットヘッドを安価になすことができる利点もある。
【0035】
尚、このようなインク8としては、例えば顔料タイプの水性インクや水性染料インク等が使用され、該インク8は図示しないインクタンクからヘッド基板1−天板6間に供給され、発熱抵抗体3の発熱に伴う熱エネルギーによってインク8中に気泡Aが発生すると、気泡の発生に伴う圧力でもってインク8の一部がインク吐出孔7より外部に吐出され、これを天板6の外表面に沿って搬送される記録紙に付着させることによって所定の画像が記録される。
【0036】
次に上述したインクジェットヘッドを用いて構成されたインクジェットプリンタについて図3を用いて詳細に説明する。図3は、上述したインクジェットヘッドを用いて構成されたインクジェットプリンタの概略図であり、同図に示すインクジェットプリンタは、筐体内に、上述したインクジェットヘッドIJと、該インクジェットヘッド上に記録紙を搬送する搬送手段TRとを配置させた構造を有している。
【0037】
前記搬送手段TRは、SUS等の金属材料により形成された円柱状を成す軸心に、ブタジエンゴムやシリコーンゴム等の弾性材をロール状に巻きつけて構成される複数の搬送ローラを具備し、これら複数の搬送ローラを、インクジェットヘッドに対して記録紙の搬送方向上流側と下流側に、それぞれ回転可能な状態で配設させており、上述したインクジェットヘッドIJのインク吐出孔7上に記録紙を安定的に搬送する作用を為している。
【0038】
次に上述したインクジェットヘッドの発熱抵抗体3の抵抗値を調整する方法について、従来周知のパルストリミング法を用いる場合を例に説明する。
(1)まず、上面に多数の発熱抵抗体3を有したヘッド基板1を準備し、各区画に充填されるインク8の表面張力をそれぞれ測定する。
【0039】
インク8の表面張力は、従来周知の滴下法、毛細管上昇法、吊環法等によって測定され、本実施形態におけるインク8の表面張力は、25℃の条件下において、前述した従来周知の滴下法を採用することによって測定される。
【0040】
(2)次に、インク8の表面張力に対応した平均抵抗値を、インク表面張力と平均抵抗値の関係を示す換算テーブル(図4参照)より求める。
この換算テーブルは、様々な表面張力のインク8を充填したインクジェットヘッドを用いて実際にインク8を吐出させることによって得たデータに基づくもので、この図3によれば、インク8の表面張力が23.8dyne/cmの場合、発熱抵抗体3の平均抵抗値(目標抵抗値)は270Ωに、またインク8の表面張力が24.6dyne/cmの場合、目標抵抗値は300Ωに設定される。
【0041】
(3)次に、ヘッド基板1上に形成した発熱抵抗体3の電気抵抗値をプローバー等を用いて個々に測定するとともに、該測定値と(2)の工程で得た目標抵抗値との差に相当する抵抗値補正幅を求め、しかる後、個々の発熱抵抗体3に所定のトリミングパルスを印加してパルストリミングを行う。
【0042】
かかるパルストリミング法では、抵抗値補正幅に対応するトリミングパルスを発熱抵抗体3に印加して発熱抵抗体3の電気抵抗値を下降もしくは上昇させることによって発熱抵抗体3の電気抵抗値が調整され、例えば、発熱抵抗体3の抵抗値を下降させる場合は、発熱抵抗体3に対しパルス幅(通電時間)が比較的短く、振幅(電圧値)が比較的大きなトリミングパルスが用いられ、このようなトリミングパルスを発熱抵抗体3に印加することで抵抗材料を結晶化させ、発熱抵抗体3をアニールすることによって抵抗値の下降現象が起こる。
【0043】
また、発熱抵抗体3の抵抗値を上昇させる場合は、発熱抵抗体3に対しパルス幅が比較的長く、振幅が比較的小さなトリミングパルスが用いられ、このようなトリミングパルスを発熱抵抗体3に印加することで発熱抵抗体3を形成する抵抗材料が大気中の酸素や発熱抵抗体3上に配される保護膜5中の酸素等と結合し、表面に薄い酸化膜を形成することによって抵抗値の上昇現象が起こる。
【0044】
そして、上述のトリミング作業を行なった後、トリミングを行なった発熱抵抗体3の抵抗値を再度測定し、その測定値が目標抵抗値に対して十分に近づいていない場合は、抵抗値が許容範囲に入るまで上述のトリミング作業を繰り返し行う。
【0045】
尚、このようなトリミング作業では、抵抗値調整を、抵抗値の下降もしくは上昇のいずれかのみで行なっても良いし、抵抗値の下降、上昇の双方で行うようにしても良く、例えば、抵抗値の下降のみで発熱抵抗体3の抵抗値調整を行う場合は、当初の抵抗値が全て目標抵抗値に対し十分に高く設定されるように抵抗薄膜の抵抗材料、膜厚等を選択する。
【0046】
以上のようなパルストリミング法にて抵抗値調整を行う場合、発熱抵抗体3の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッドの生産性を高く維持することもできる。
【0047】
またこの場合、発熱抵抗体3をTaSiO系抵抗材料により形成し、且つTa含有率を50原子%〜60原子%に設定しておけば、発熱抵抗体3の電気抵抗値を従来周知のパルストリミング法にて調整する際、トリミングパルスを印加したときの抵抗値変動量が適度な大きさになり、パルストリミング法によってより細かな抵抗値調整がし易くなるという利点がある。
【0048】
ここで、発熱抵抗体3内のTa含有率が60原子%よりも大きいと、トリミングパルスを印加したときの発熱抵抗体3の抵抗値変動が大きくなって細かな抵抗値調整が困難になる傾向があり、一方、発熱抵抗体3内のTa含有率が50原子%よりも小さいと、トリミングパルスを印加したときの発熱抵抗体3の抵抗値変動が小さいため、発熱抵抗体3の電気抵抗値を大きく変化させる場合に、抵抗値調整に長時間を要してしまう。従って、発熱抵抗体3を形成する抵抗材料中のTa含有率を50原子%〜60原子%に設定しておくことが好ましい。
【0049】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0050】
例えば上述の実施形態においては、ヘッド基板1−天板6間の間隙を3つの区画に区分し、これらの区画にマゼンタ、シアン、イエローの3種類のインク8をそれぞれ充填してインクジェットヘッドを構成するようにしたが、更に区画数を増やしてブラック、フォトマゼンタ、フォトシアン、フォトイエロー等のインク8も吐出させるように構成しても構わない。
【0051】
また上述の実施形態においては、インク吐出孔7を天板6に設けるようにしたが、これに代えて、インク滴をヘッド基板3のエッジより吐出させるエッジシュータータイプのインクジェットヘッドに本発明を適用するにあたり、インク吐出孔を天板には設けず、ヘッド基板の一端側でヘッド基板と天板との間にインク吐出孔を設けても構わない。
【0052】
更に上述の実施形態において、ヘッド基板1上に、発熱抵抗体3の発熱を制御するためのドライバーICを搭載しても良いことは言うまでもない。
【0053】
また更に上述の実施形態において、前記保護膜を、酸素を含む無機質材料により形成するとともに、該保護膜中の酸素含有量を2.0質量%〜10.0質量%に設定しておけば、所定のトリミングパルスを印加したときの抵抗値の上昇度合いが適度な大きさになり、より細かな抵抗値調整が可能になるという利点もある。
【0054】
ここで、保護膜中の酸素含有量が2.0質量%よりも小さいと、抵抗値の上昇度合いが小さすぎて、抵抗値調整に長時間を要する不都合があり、一方、酸素含有量が10.0質量%よりも大きいと、保護膜中にクラック等が発生したり、あるいは保護膜の密着強度が低下する傾向がある。従って、保護膜中の酸素含有量を2.0質量%〜10.0質量%に設定しておくことが好ましい。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、ヘッド基板−天板間の間隙を複数の区画に区分するとともに、該区画内に表面張力の異なる複数のインクをそれぞれ充填したインクジェットヘッドであって、各区画の内側に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値を該区画に充填されるインクの表面張力に応じて個々に設定することにより、全ての区画に充填されているインクの吐出速度を略一定に揃え、良好な印画を形成することができる。しかもこの場合、発熱抵抗体への印加電力を調整する必要はなく、印加電力調整用の特殊な電源回路等は一切不要であることから、インクジェットヘッドやインクジェットプリンタの構成ならびに制御機構は簡素に維持され、製品としてのインクジェットヘッド、インクジェットプリンタを安価になすことができるようになる。
【0056】
また本発明によれば、発熱抵抗体の抵抗値調整をパルストリミング法にて行うことにより、発熱抵抗体の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッドやインクジェットプリンタの生産性を高く維持することも可能である。
【0057】
更に本発明によれば、前記発熱抵抗体をTaSiO系抵抗材料により形成するとともに、そのTa含有率を50原子%〜60原子%に設定することにより、発熱抵抗体の電気抵抗値を従来周知のパルストリミング法にて調整する際、トリミングパルスを印加したときの抵抗値変動量が適度な大きさとなり、パルストリミング法によってより細かな抵抗値調整がし易くなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドを天板6側から見た平面図である。
【図3】図1のインクジェットヘッドを用いて構成したインクジェットプリンタの概略図である。
【図4】インクの表面張力と目標抵抗値との関係を示す線図である。
【図5】従来のインクジェットヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・ヘッド基板
2・・・ベースプレート
3・・・発熱抵抗体
4・・・給電配線
5・・・保護膜
6・・・天板
7・・・インク吐出孔
8・・・インク
A,B,C・・・区画
IJ・・・インクジェットヘッド
TR・・・搬送手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録紙にインク滴を所定パターンに付着させて画像等を形成するインクジェットヘッド及びそれを用いたインクジェットプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、記録紙に画像を形成するための記録デバイスとしてインクジェットヘッドが幅広く用いられている。
【0003】
インクジェットヘッドの記録方式には、インク滴を記録紙に向けて吐出させるのに発熱抵抗体の発する熱エネルギーを利用するものや圧電素子の変形を利用するもの,更には電磁波の照射に伴って発生する熱を利用するもの等があり、これらの中でも発熱抵抗体の熱エネルギーを利用するサーマルジェットタイプのものは、発熱抵抗体のパターニングが容易である上に、小さな面積の発熱抵抗体であっても比較的大きな熱エネルギーを発生させることができることから、高密度記録への対応に適したものとして注目されている。
【0004】
かかるサーマルジェットタイプのインクジェットヘッドとしては、例えば図5に示す如く、ベースプレート22の上面に多数の発熱抵抗体23を主走査方向に被着・配列したヘッド基板21と、複数個のインク吐出孔25を有した天板24とを間に所定の間隔を形成するようにして配設させた上、この両者間に形成される間隙にインク26を充填した構造のものが知られており、多数の発熱抵抗体23を外部からの画像データに基づき個々に選択的にジュール発熱させ、これらの熱エネルギーによってインク26中に気泡を発生させるとともに、該気泡の発生に伴う圧力でもってインク26の一部をインク吐出孔25より記録紙に向けて吐出させ、記録紙に所定の印画を形成することによってインクジェットヘッドとして機能する。
【0005】
また近時、種類の異なる複数のインクを用いて1個のインクジェットヘッドを構成することが検討されており、この場合、ヘッド基板21−天板24間に形成される間隙は主走査方向に一列状に配置された複数の区画に区分され、各区画内に上述のインクがそれぞれ充填される。例えば、カラー印画用のインクジェットヘッドを構成する場合は、上記間隙を3以上の区画に区分し、個々の区画内に、マゼンタ、シアン、イエロー等の異なるカラーインクが充填されることとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、種類の異なる複数のインク26を用いて1個のインクジェットヘッドを構成した場合、熱に対するインク26の特性がそれぞれ異なっていることから、全ての発熱抵抗体23を同じ条件で発熱させると、インク26の吐出速度が区画毎に相違し、特に表面張力の低いインク26が充填されている区画ほど、インク26の吐出速度が遅くなって良好な印画を形成することが不可となる欠点を有していた。
【0007】
そこで上記欠点を解消するために、発熱抵抗体23への印加電力をインク26の特性に応じて調整することによりインク26の吐出速度を均一化することが考えられる。
【0008】
しかしながら、発熱抵抗体23への印加電力をインク26の特性に応じて調整する場合、発熱抵抗体23への印加電力を区画毎に調整するための特殊な電源回路等が別途必要となるため、インクジェットヘッドやインクジェットプリンタの構成ならびに制御機構が複雑化し、これによってインクジェットヘッド、インクジェットプリンタのコストアップを招く欠点が誘発される。
【0009】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、簡素な構成ならびに制御機構でインクの吐出速度を均一化し、良好な印画を形成することができる高性能のインクジェットヘッド及びそれを用いたインクジェットプリンタを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェットヘッドは、主走査方向に配列した多数の発熱抵抗体を有するヘッド基板上に、間に所定の間隙を形成するようにして天板を配設せしめ、前記間隙を主走査方向に一列状に配される複数個の区画に区分するとともに、これらの区画内にインクを充填してなり、前記発熱抵抗体を選択的に発熱させてインクをインク吐出孔より吐出させることによって記録紙に印画を形成するインクジェットヘッドにおいて、前記間隙に充填されるインクの表面張力が区画毎に異なっており、且つ区画の内側に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値が、対応する区画内に充填されているインクの表面張力が小さいほど低い値に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明のインクジェットヘッドは、前記発熱抵抗体はパルストリミング法にて抵抗値調整されていることを特徴とするものである。
【0012】
更に本発明のインクジェットヘッドは、前記発熱抵抗体がTaSiO系抵抗材料により形成されており、且つTa含有率が50原子%〜60原子%に設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
そして本発明のインクジェットプリンタは、上述したインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッド上に記録紙を搬送する搬送手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、ヘッド基板−天板間の間隙を複数の区画に区分するとともに、該区画内に表面張力の異なる複数のインクをそれぞれ充填したインクジェットヘッドであって、各区画の内側に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値を該区画に充填されるインクの表面張力に応じて個々に設定することにより、全ての区画に充填されているインクの吐出速度を略一定に揃え、良好な印画を形成することができる。しかもこの場合、発熱抵抗体への印加電力を調整する必要はなく、印加電力調整用の特殊な電源回路等は一切不要であることから、インクジェットヘッドやインクジェットプリンタの構成ならびに制御機構は簡素に維持され、製品としてのインクジェットヘッド、インクジェットプリンタを安価になすことができるようになる。
【0015】
また本発明によれば、発熱抵抗体の抵抗値調整をパルストリミング法にて行うことにより、発熱抵抗体の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッドやインクジェットプリンタの生産性を高く維持することも可能である。
【0016】
更に本発明によれば、前記発熱抵抗体をTaSiO系抵抗材料により形成するとともに、そのTa含有率を50原子%〜60原子%に設定することにより、発熱抵抗体の電気抵抗値を従来周知のパルストリミング法にて調整する際、トリミングパルスを印加したときの抵抗値変動量が適度な大きさとなり、パルストリミング法によってより細かな抵抗値調整がし易くなるという利点がある。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図、図2は図1のインクジェットヘッドを天板側から見た平面図であり同図に示すインクジェットヘッドは、大略的にヘッド基板1と天板6とで構成され、この両者間には表面張力の異なる3種類のインク8が充填されている。
【0018】
前記ヘッド基板1は、ベースプレート2の上面に多数の発熱抵抗体3、一対の給電配線4、保護膜5等を所定パターンに被着させた構造を有している。
【0019】
前記ベースプレート2は、単結晶シリコン等によって矩形状をなすように形成されており、その上面で多数の発熱抵抗体3や一対の給電配線4等を支持するための支持母材として機能する。
【0020】
このようなベースプレート2は、単結晶シリコンからなる場合、従来周知のチョコラルスキー法(引き上げ法)等によって形成した単結晶シリコンのインゴット(塊)を、所定厚みにスライスすることにより製作される。尚、この場合、ベースプレート2の表面には、ベースプレート2を後述する発熱抵抗体3等と電気的に絶縁する目的で、酸化シリコン(SiO2)から成る絶縁膜が従来周知の熱酸化法等によって1μm〜3μmの厚みに形成される。
【0021】
また、前記ベースプレート2の上面に設けられている多数の発熱抵抗体3は、ベースプレート2の長手方向(主走査方向)に例えば600dpi(dot per inch)の密度で直線状に配列されており、各々がTaNやTaSiO,TaSiNO,TiSiO,TiSiCO,NbSiO等の抵抗材料から成る抵抗薄膜により形成されている。
【0022】
前記発熱抵抗体3は、それ自体が電気抵抗材料から成っているため、給電配線4等を介して電源電力が印加されるとジュール発熱を起こし、インク8中に気泡Aを発生させるのに必要な所定の温度(200℃〜400℃)となる。
【0023】
また、これらの発熱抵抗体3は、主走査方向に一列状に配置された3つの発熱抵抗体群に区分されており、その電気抵抗値は各発熱抵抗体群毎に略一定(±1.2%以内)に揃えられ、発熱抵抗体群毎の平均抵抗値は後述するインク8の表面張力に応じた値に設定されている。
【0024】
尚、前記発熱抵抗体3や給電配線4は、従来周知の薄膜形成技術を採用することによって形成される。例えば、上述の抵抗材料とアルミニウム等の金属材料とを従来周知のスパッタリング法によりベースプレート2の上面に順次被着させ、得られた抵抗薄膜ならびに金属薄膜を従来周知のフォトリソグラフィー及びエッチング技術にて所定パターンに微細加工することによって発熱抵抗体3及び給電配線4が形成される。
【0025】
そして前記発熱抵抗体3や給電配線4の上面には窒化珪素等から成る保護膜5が被着され、この保護膜5によって発熱抵抗体3や給電配線4がインク8の接触による腐食等から保護されている。
【0026】
また一方、前記天板6は、上述したヘッド基板1上に、間に所定の間隙を形成するようにして配設される。
【0027】
前記天板6は、ヘッド基板1上の発熱抵抗体3と1対1に対応する多数のインク吐出孔7を有しており、これらのインク吐出孔7が対応する発熱抵抗体3の真上に位置するようにしてヘッド基板1に対し取着・固定されている。
【0028】
また前記インク吐出孔7は、各々の直径が10μm〜100μmの大きさに設定されており、インクジェットヘッドの記録動作時、発熱抵抗体3の発熱に伴いインク8中に気泡Aが発生すると、気泡Aの発生に伴う圧力でもってインク8の一部をインク吐出孔7より記録紙に向けて吐出するようになっている。
【0029】
このような天板6は、モリブデン等の金属やアルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは感光性樹脂から成り、例えばモリブデンから成る場合、モリブデンのインゴット(塊)を従来周知の金属加工法によって所定厚みの板体と成し、得られた板体に従来周知のレーザー加工によってインク吐出孔7を厚み方向に穿設することにより製作され、得られた天板6をヘッド基板1上に図示しないスペーサを介して載置することでヘッド基板1に対し固定される。
【0030】
そして、ヘッド基板1−天板6間に形成される間隙は、主走査方向に一列状に配された3つの区画、即ち、前述した発熱抵抗体群に対応した3つの区画A,B,Cに区分され、各区画A,B,Cには3種類のカラーインク8がそれぞれ充填される。
【0031】
このようなカラーインク8としては、例えばマゼンタ、シアン、イエローの3種類のインクが用いられ、その表面張力は例えばマゼンタインクが25.4dyne/cm、シアンインクが24.6dyne/cm、イエローインクが23.8dyne/cmとなっている。
【0032】
前記発熱抵抗体群の平均抵抗値は、前述した如く、これらインク8の表面張力に応じて、具体的にはインク8の表面張力が小さいものほど低い値に設定されており、マゼンタインクが充填される区画Aの内側に配される発熱抵抗体群は330Ωに、シアンインクが充填される区画Bの内側に配される発熱抵抗体群は300Ωに、またイエローインクが充填される区画Cの内側に配される発熱抵抗体群は270Ωに設定される。
【0033】
このように、ヘッド基板1−天板6間に設けられている各区画の内側に位置する発熱抵抗体5の平均抵抗値を、対応する区画に充填されているインク8の表面張力に応じて個々に設定することにより、全ての区画A,B,Cより吐出されるインク8の吐出速度を略一定に揃えることができ、記録紙に良好な印画を形成することが可能となる。
【0034】
しかもこの場合、発熱抵抗体3の電気抵抗値そのものを調整することでインク8の吐出速度を略等しく揃えることができるため、補正データ等を用いて印加電力を調整するような場合に比し、補正データ格納用のメモリや複雑な補正回路、専用の電源回路等が不要となり、インクジェットヘッドの構成が簡素に維持され、製品としてのインクジェットヘッドを安価になすことができる利点もある。
【0035】
尚、このようなインク8としては、例えば顔料タイプの水性インクや水性染料インク等が使用され、該インク8は図示しないインクタンクからヘッド基板1−天板6間に供給され、発熱抵抗体3の発熱に伴う熱エネルギーによってインク8中に気泡Aが発生すると、気泡の発生に伴う圧力でもってインク8の一部がインク吐出孔7より外部に吐出され、これを天板6の外表面に沿って搬送される記録紙に付着させることによって所定の画像が記録される。
【0036】
次に上述したインクジェットヘッドを用いて構成されたインクジェットプリンタについて図3を用いて詳細に説明する。図3は、上述したインクジェットヘッドを用いて構成されたインクジェットプリンタの概略図であり、同図に示すインクジェットプリンタは、筐体内に、上述したインクジェットヘッドIJと、該インクジェットヘッド上に記録紙を搬送する搬送手段TRとを配置させた構造を有している。
【0037】
前記搬送手段TRは、SUS等の金属材料により形成された円柱状を成す軸心に、ブタジエンゴムやシリコーンゴム等の弾性材をロール状に巻きつけて構成される複数の搬送ローラを具備し、これら複数の搬送ローラを、インクジェットヘッドに対して記録紙の搬送方向上流側と下流側に、それぞれ回転可能な状態で配設させており、上述したインクジェットヘッドIJのインク吐出孔7上に記録紙を安定的に搬送する作用を為している。
【0038】
次に上述したインクジェットヘッドの発熱抵抗体3の抵抗値を調整する方法について、従来周知のパルストリミング法を用いる場合を例に説明する。
(1)まず、上面に多数の発熱抵抗体3を有したヘッド基板1を準備し、各区画に充填されるインク8の表面張力をそれぞれ測定する。
【0039】
インク8の表面張力は、従来周知の滴下法、毛細管上昇法、吊環法等によって測定され、本実施形態におけるインク8の表面張力は、25℃の条件下において、前述した従来周知の滴下法を採用することによって測定される。
【0040】
(2)次に、インク8の表面張力に対応した平均抵抗値を、インク表面張力と平均抵抗値の関係を示す換算テーブル(図4参照)より求める。
この換算テーブルは、様々な表面張力のインク8を充填したインクジェットヘッドを用いて実際にインク8を吐出させることによって得たデータに基づくもので、この図3によれば、インク8の表面張力が23.8dyne/cmの場合、発熱抵抗体3の平均抵抗値(目標抵抗値)は270Ωに、またインク8の表面張力が24.6dyne/cmの場合、目標抵抗値は300Ωに設定される。
【0041】
(3)次に、ヘッド基板1上に形成した発熱抵抗体3の電気抵抗値をプローバー等を用いて個々に測定するとともに、該測定値と(2)の工程で得た目標抵抗値との差に相当する抵抗値補正幅を求め、しかる後、個々の発熱抵抗体3に所定のトリミングパルスを印加してパルストリミングを行う。
【0042】
かかるパルストリミング法では、抵抗値補正幅に対応するトリミングパルスを発熱抵抗体3に印加して発熱抵抗体3の電気抵抗値を下降もしくは上昇させることによって発熱抵抗体3の電気抵抗値が調整され、例えば、発熱抵抗体3の抵抗値を下降させる場合は、発熱抵抗体3に対しパルス幅(通電時間)が比較的短く、振幅(電圧値)が比較的大きなトリミングパルスが用いられ、このようなトリミングパルスを発熱抵抗体3に印加することで抵抗材料を結晶化させ、発熱抵抗体3をアニールすることによって抵抗値の下降現象が起こる。
【0043】
また、発熱抵抗体3の抵抗値を上昇させる場合は、発熱抵抗体3に対しパルス幅が比較的長く、振幅が比較的小さなトリミングパルスが用いられ、このようなトリミングパルスを発熱抵抗体3に印加することで発熱抵抗体3を形成する抵抗材料が大気中の酸素や発熱抵抗体3上に配される保護膜5中の酸素等と結合し、表面に薄い酸化膜を形成することによって抵抗値の上昇現象が起こる。
【0044】
そして、上述のトリミング作業を行なった後、トリミングを行なった発熱抵抗体3の抵抗値を再度測定し、その測定値が目標抵抗値に対して十分に近づいていない場合は、抵抗値が許容範囲に入るまで上述のトリミング作業を繰り返し行う。
【0045】
尚、このようなトリミング作業では、抵抗値調整を、抵抗値の下降もしくは上昇のいずれかのみで行なっても良いし、抵抗値の下降、上昇の双方で行うようにしても良く、例えば、抵抗値の下降のみで発熱抵抗体3の抵抗値調整を行う場合は、当初の抵抗値が全て目標抵抗値に対し十分に高く設定されるように抵抗薄膜の抵抗材料、膜厚等を選択する。
【0046】
以上のようなパルストリミング法にて抵抗値調整を行う場合、発熱抵抗体3の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッドの生産性を高く維持することもできる。
【0047】
またこの場合、発熱抵抗体3をTaSiO系抵抗材料により形成し、且つTa含有率を50原子%〜60原子%に設定しておけば、発熱抵抗体3の電気抵抗値を従来周知のパルストリミング法にて調整する際、トリミングパルスを印加したときの抵抗値変動量が適度な大きさになり、パルストリミング法によってより細かな抵抗値調整がし易くなるという利点がある。
【0048】
ここで、発熱抵抗体3内のTa含有率が60原子%よりも大きいと、トリミングパルスを印加したときの発熱抵抗体3の抵抗値変動が大きくなって細かな抵抗値調整が困難になる傾向があり、一方、発熱抵抗体3内のTa含有率が50原子%よりも小さいと、トリミングパルスを印加したときの発熱抵抗体3の抵抗値変動が小さいため、発熱抵抗体3の電気抵抗値を大きく変化させる場合に、抵抗値調整に長時間を要してしまう。従って、発熱抵抗体3を形成する抵抗材料中のTa含有率を50原子%〜60原子%に設定しておくことが好ましい。
【0049】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0050】
例えば上述の実施形態においては、ヘッド基板1−天板6間の間隙を3つの区画に区分し、これらの区画にマゼンタ、シアン、イエローの3種類のインク8をそれぞれ充填してインクジェットヘッドを構成するようにしたが、更に区画数を増やしてブラック、フォトマゼンタ、フォトシアン、フォトイエロー等のインク8も吐出させるように構成しても構わない。
【0051】
また上述の実施形態においては、インク吐出孔7を天板6に設けるようにしたが、これに代えて、インク滴をヘッド基板3のエッジより吐出させるエッジシュータータイプのインクジェットヘッドに本発明を適用するにあたり、インク吐出孔を天板には設けず、ヘッド基板の一端側でヘッド基板と天板との間にインク吐出孔を設けても構わない。
【0052】
更に上述の実施形態において、ヘッド基板1上に、発熱抵抗体3の発熱を制御するためのドライバーICを搭載しても良いことは言うまでもない。
【0053】
また更に上述の実施形態において、前記保護膜を、酸素を含む無機質材料により形成するとともに、該保護膜中の酸素含有量を2.0質量%〜10.0質量%に設定しておけば、所定のトリミングパルスを印加したときの抵抗値の上昇度合いが適度な大きさになり、より細かな抵抗値調整が可能になるという利点もある。
【0054】
ここで、保護膜中の酸素含有量が2.0質量%よりも小さいと、抵抗値の上昇度合いが小さすぎて、抵抗値調整に長時間を要する不都合があり、一方、酸素含有量が10.0質量%よりも大きいと、保護膜中にクラック等が発生したり、あるいは保護膜の密着強度が低下する傾向がある。従って、保護膜中の酸素含有量を2.0質量%〜10.0質量%に設定しておくことが好ましい。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、ヘッド基板−天板間の間隙を複数の区画に区分するとともに、該区画内に表面張力の異なる複数のインクをそれぞれ充填したインクジェットヘッドであって、各区画の内側に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値を該区画に充填されるインクの表面張力に応じて個々に設定することにより、全ての区画に充填されているインクの吐出速度を略一定に揃え、良好な印画を形成することができる。しかもこの場合、発熱抵抗体への印加電力を調整する必要はなく、印加電力調整用の特殊な電源回路等は一切不要であることから、インクジェットヘッドやインクジェットプリンタの構成ならびに制御機構は簡素に維持され、製品としてのインクジェットヘッド、インクジェットプリンタを安価になすことができるようになる。
【0056】
また本発明によれば、発熱抵抗体の抵抗値調整をパルストリミング法にて行うことにより、発熱抵抗体の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッドやインクジェットプリンタの生産性を高く維持することも可能である。
【0057】
更に本発明によれば、前記発熱抵抗体をTaSiO系抵抗材料により形成するとともに、そのTa含有率を50原子%〜60原子%に設定することにより、発熱抵抗体の電気抵抗値を従来周知のパルストリミング法にて調整する際、トリミングパルスを印加したときの抵抗値変動量が適度な大きさとなり、パルストリミング法によってより細かな抵抗値調整がし易くなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドを天板6側から見た平面図である。
【図3】図1のインクジェットヘッドを用いて構成したインクジェットプリンタの概略図である。
【図4】インクの表面張力と目標抵抗値との関係を示す線図である。
【図5】従来のインクジェットヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・ヘッド基板
2・・・ベースプレート
3・・・発熱抵抗体
4・・・給電配線
5・・・保護膜
6・・・天板
7・・・インク吐出孔
8・・・インク
A,B,C・・・区画
IJ・・・インクジェットヘッド
TR・・・搬送手段
Claims (4)
- 主走査方向に配列した多数の発熱抵抗体を有するヘッド基板上に、間に所定の間隙を形成するようにして天板を配設せしめ、前記間隙を主走査方向に一列状に配される複数個の区画に区分するとともに、これらの区画内にインクを充填してなり、前記発熱抵抗体を選択的に発熱させてインクをインク吐出孔より吐出させることによって記録紙に印画を形成するインクジェットヘッドにおいて、
前記間隙に充填されるインクの表面張力が区画毎に異なっており、且つ区画の内側に位置する発熱抵抗体の平均抵抗値が、対応する区画内に充填されているインクの表面張力が小さいほど低い値に設定されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記発熱抵抗体はパルストリミング法にて抵抗値調整されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記発熱抵抗体がTaSiO系抵抗材料により形成されており、且つTa含有率が50原子%〜60原子%に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
- 前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッド上に記録紙を搬送する搬送手段とを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
Priority Applications (1)
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JP2002222214A JP2004001345A (ja) | 2002-03-27 | 2002-07-30 | インクジェットヘッド及びそれを用いたインクジェットプリンタ |
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Cited By (1)
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JP2011077336A (ja) * | 2009-09-30 | 2011-04-14 | Omron Corp | レーザ加工装置、および、レーザ加工方法 |
-
2002
- 2002-07-30 JP JP2002222214A patent/JP2004001345A/ja active Pending
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