JP2004148684A - インクジェットヘッド及びそれを用いたインクジェットプリンタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上面に多数の発熱抵抗体をN(Nは120以上の自然数)dpiの密度で配列してなるヘッド基板と、該ヘッド基板に対して所定の間隙を形成するように配設される天板とを具備するインクジェットヘッドにおいて、前記各発熱抵抗体の抵抗値を全発熱抵抗体の平均抵抗値Aに対して±3.0%の範囲内に設定し、且つ前記多数の発熱抵抗体を、式D=[N/60]より算出されるD個の発熱抵抗体を一単位とした複数のブロックに区分するとともに、これら各ブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値を、隣接するブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値との差が全発熱抵抗体の平均抵抗値Aに対して0.2%の範囲内に収まるように設定した。
【選択図】図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録紙にインク滴を所定パターンに付着させて画像を形成するインクジェットヘッド及びインクジェットプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、記録紙にインク滴を所定パターンに付着させて画像を形成するものとしてインクジェットヘッドが用いられている。
【0003】
インクジェットヘッドの記録方式には、インク滴を記録紙に向けて吐出させるのに発熱抵抗体の発する熱エネルギーを利用するものや圧電素子の変形を利用するもの、更には電磁波の照射に伴って発生する熱を利用するもの等があり、これらの中でも発熱抵抗体の熱エネルギーを利用するサーマルタイプのものは、発熱抵抗体のパターニングが容易である上に、小さな面積の発熱抵抗体であっても、比較的大きな熱エネルギーを発生させることが出来ることから、高密度記録に適したものとして注目されている。
【0004】
かかる従来のインクジェットヘッドは、図6に示す如く、単結晶シリコンから成るベースプレート22の上面に、直線状に配列された多数の発熱抵抗体23と、該発熱抵抗体23に電気的に接続される給電配線24とを被着してなるヘッド基板21上に、前記発熱抵抗体23と1対1に対応する多数のインク吐出孔28を有する天板27を間に所定の間隙を形成するように配設するとともに、該間隙にインク29を充填した構造のものが知られており、記録紙を天板27の外表面に沿って搬送しながら、多数の発熱抵抗体23を外部からの画像データに基づいて個々に選択的に発熱させ、発熱抵抗体23上のインク29中に気泡Aを発生させるとともに、該発生した気泡Aの圧力でもって発熱抵抗体23上のインク29をインク吐出孔28側へ押し上げ、これをインク滴iとしてインク吐出孔28より外部に向けて吐出させて記録紙に付着させることにより所定の画像が記録される。
【0005】
尚、前記発熱抵抗体23は、従来周知の薄膜形成技術、具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィー技術、エッチング技術等を採用することにより所定パターンに形成される。
【0006】
また、前記各発熱抵抗体23は、その抵抗値が個々にばらついており、かかる抵抗値が記録紙に形成される画像の濃度むらの原因となることから、抵抗値のばらつきをできるだけ小さくすべく、従来周知のパルストリミング法を採用し、発熱抵抗体23の抵抗値を調整して各発熱抵抗体23の抵抗値をできるだけ揃えるようにしているが、これら全ての発熱抵抗体23の抵抗値を等しく揃えることは実質的に不可能である上に、全ての発熱抵抗体23の抵抗値を極めて高精度に揃えようとすると多くの時間を要し、インクジェットヘッドの生産性を大幅に低下させることから、例えば全発熱抵抗体23の平均抵抗値Aに対して各発熱抵抗体の抵抗値が±3.0%程度の範囲内に揃えるようにするのが一般的である。
【特許文献1】
特開平3−34767号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、人間の視覚は、図5に示す如く、解像度、すなわち発熱抵抗体23の配列密度が小さくなるにつれて識別できる階調数が多くなる特性を有している。例えば、発熱抵抗体23の配列密度が500dpiの場合、記録紙に形成される画像の各ドットについて2階調、300dpiの場合、各ドットについて10階調しかそれぞれ識別することができないが、発熱抵抗体23の配列密度が60dpiの場合、各ドットについて200階調まで識別できるようになる。すなわち、人間の視覚は、密度が小さなドットで形成された画像について色の濃淡に敏感になり、一方、密度が大きなドットで形成された画像について色の濃淡に鈍感になる特性を有しており、発熱抵抗体23を高密度に配列すればするほど、発熱抵抗体23の抵抗値を高精度に揃える必要性が低いとも考えられる。
【0008】
しかしながら、細かいドットで形成された画像であっても、複数のドット単位を1つの塊としてみると、人間の視覚は色の濃淡に対して敏感になる傾向にあり、例えば発熱抵抗体23の配列密度が300dpiのインクジェットヘッドを用いて画像を記録した場合、人間の目は記録画像を1ドット毎にみると10階調しか識別できないものの、連続する複数のドット単位で見るとより多くの階調数を識別できる。従って、各発熱抵抗体の抵抗値をただ単に平均抵抗値Aに対して±3.0%以内に調整しただけでは結局不十分であり、記録紙に高階調の画像を記録すると、依然として画像の濃度むらが認識され、不鮮明な画像となってしまう欠点を有していた。
【0009】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、記録紙に濃度むらの少ない鮮明な画像を形成することが可能な生産性の高いインクジェットヘッド並びにインクジェットプリンタを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェットヘッドは、上面に多数の発熱抵抗体をN(Nは120以上の自然数)dpiの密度で配列してなるヘッド基板と、該ヘッド基板に対して所定の間隙を形成するように配設される天板とを具備し、前記間隙内に充填されたインクを発熱抵抗体の熱エネルギーによってインク吐出孔より吐出させて記録紙に画像を形成するインクジェットヘッドにおいて、前記各発熱抵抗体の抵抗値を全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して±3.0%の範囲内に設定し、且つ前記多数の発熱抵抗体を、式D=[N/60]より算出されるD個の発熱抵抗体を一単位とした複数のブロックに区分するとともに、これら各ブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値を、隣接するブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値との差が全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して0.2%の範囲内に収まるように設定したことを特徴とするものである。
【0011】
また本発明のインクジェットヘッドは、前記発熱抵抗体の抵抗値がパルストリミング法により調整されていることを特徴とするものである。
【0012】
そして本発明のインクジェットプリンタは、上述したインクジェットヘッドと、前記インク吐出孔上に記録紙を搬送する搬送手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、前記各発熱抵抗体の抵抗値を全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して±3.0%の範囲内に設定し、且つ前記多数の発熱抵抗体を、式D=[N/60]より算出されるD個の発熱抵抗体を一単位とした複数のブロックに区分するとともに、これら各ブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値を、隣接するブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値との差が全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して0.2%の範囲内に収まるように設定したことから、人間の視覚特性に応じた発熱抵抗体の抵抗値調整がなされることとなり、高階調記録を行う場合であっても、濃度むらの少ない鮮明な画像を記録することが可能な高性能のインクジェットヘッド並びにインクジェットプリンタを得ることができる。
【0014】
しかもこの場合、隣接するブロック同士の発熱抵抗体の平均抵抗値差を小さくすることにより画像の濃度むらを少なくしたことから、全ての発熱抵抗体を均一に揃えることなく鮮明な画像を記録可能なインクジェットヘッドやインクジェットプリンタが得られるようになり、これらの生産性を大幅に向上させることができる。
【0015】
また本発明によれば、各インクジェットヘッドに設けられている発熱抵抗体の抵抗値調整をパルストリミング法にて行うことにより、発熱抵抗体の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッド及びインクジェットプリンタの生産性を高く維持することも可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る調整方法によって得られたインクジェットヘッドの分解斜視図、図2は図1のインクジェットヘッドの断面図であり、同図に示すインクジェットヘッドは大略的にヘッド基板1と天板7とで構成され、両部材間にはインク9が充填されている。
【0017】
前記ヘッド基板1は、矩形状をなすように形成されたベースプレート2の上面に、直線状に配列した複数個の発熱抵抗体3と、該発熱抵抗体3に電気的に接続される給電配線4とを被着・形成し、これらを保護膜6で被覆した構造を有している。
【0018】
前記ベースプレート2は、単結晶シリコン等の半導体材料、或いは、グレーズドアルミナセラミックス等の電気絶縁性材料によって形成されており、その上面で発熱抵抗体3や給電配線4,保護膜6等を支持するための支持母材として機能する。
【0019】
このようなベースプレート2は、例えば単結晶シリコンから成る場合、従来周知のチョコラルスキー法(引き上げ法)等を採用することによって単結晶シリコンのインゴット(塊)を形成し、これを所定厚みにスライスした上、外形加工することによって製作される。尚、この場合、ベースプレート2の表面には酸化シリコン(SiO2)等の電気絶縁性材料から成る絶縁膜(図示せず)が例えば1μm〜3μmの厚みに設けられ、このような絶縁膜によってベースプレート2を形成する単結晶シリコンを発熱抵抗体3等から電気的に絶縁している。
【0020】
また前記ベースプレート2の上面に設けられている多数(本実施形態においては1200個)の発熱抵抗体3は、例えば300dpi(dot per inch)の密度で主走査方向に直線状に配列されている。
【0021】
前記多数の発熱抵抗体3は、その各々がTaNやTaSiO,TaSiNO,TiSiO,TiSiCO,NbSiO等の電気抵抗材料から成る抵抗薄膜により形成されているため、給電配線4等を介して電源電力が供給されると、ジュール発熱を起こし、インク9中で気泡Aを発生させるのに必要な所定の熱エネルギーを発生する。
【0022】
そして本形態において最も重要なことは、前記多数の発熱抵抗体3を、その各々の抵抗値が全発熱抵抗体3の平均抵抗値Aに対して±3.0%の範囲内となるように設定し、且つ、これらの発熱抵抗体3を、下記式▲1▼より算出されるD個の発熱抵抗体を一単位とした複数のブロックに区分するとともに、各ブロック内に存在する発熱抵抗体3の平均抵抗値を、隣接するブロックの平均抵抗値との差が全発熱抵抗体3の平均抵抗値Aに対して±0.2%の範囲内となるように設定したことである。
D=[N/60]・・・・・▲1▼
尚、上記式▲1▼は、図5に示した解像度と人間の視覚が識別できる識別階調数との関係を示すグラフを近似することにより求めたものであり、“Dは発熱抵抗体の配列密度Nを60で除して得られた値の小数点以下を切り捨てることで得られる整数である”ということを意味している。上記式より求められるD個の連続する発熱抵抗体を1つのブロックとして多数の発熱抵抗体を複数のブロックに区分すると、このブロックが約60dpiの密度で配列されることとなり、ブロック内の発熱抵抗体で形成されたドットを一つの塊として人間が見ると200階調まで識別できることから、かかるブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値をブロック同士でバラツキが小さくなるようにすることが重要である。本実施形態においては、発熱抵抗体3の数が1200個で発熱抵抗体3の配列密度Nが300であることから、D=5であり、それ故、多数の発熱抵抗体3が5個の連続する発熱抵抗体3から成る240個のブロックに区分され、隣接するブロック同士の平均抵抗値を全発熱抵抗体3の平均抵抗値Aに対して0.2%の範囲内と、ブロック間の抵抗値バラツキを非常に小さく設定している。
【0023】
このように、各発熱抵抗体3の抵抗値を全発熱抵抗体3の平均抵抗値Aに対して±3.0%以内に設定し、且つ、先に述べた各ブロック内に存在する発熱抵抗体3の平均抵抗値を、隣接するブロックの平均抵抗値との差が全発熱抵抗体3の平均抵抗値Aに対して±0.2%の範囲内となるように設定したことから、人間の視覚が200階調まで識別できる単位で高精度に抵抗値調整がなされることとなり、高階調記録を行う場合であっても、濃度むらの少ない鮮明な画像を記録することが可能な高性能のインクジェットヘッド並びにインクジェットプリンタを得ることができる。
【0024】
しかもこの場合、隣接するブロック同士の発熱抵抗体3の平均抵抗値差を小さくすることにより画像の濃度むらを少なくしたことから、全ての発熱抵抗体3を均一に揃えることなく鮮明な画像を記録可能なインクジェットヘッドやインクジェットプリンタが得られるようになり、これらの生産性を大幅に向上させることができる。
【0025】
一方、前記発熱抵抗体3に接続されている給電配線4は、先に述べた発熱抵抗体3に電源電力を印加するためのものであり、その一端は後述するインク9の充填領域外まで導出され、該導出部で図示しないドライバーIC等の端子に接続されている。
【0026】
また前記給電配線4は、各々の途中で、インク9の充填領域外に、給電配線4の線幅よりも大きな円形状もしくは四角形状のトリミング用パッド5を有しており、これらのパッド5を発熱抵抗体3の配列方向と平行な方向(主走査方向)に一列状に配列させている。
【0027】
前記パッド5は、従来周知のパルストリミング法にて発熱抵抗体3の抵抗値を調整する際、トリミングパルスを印加するプロービング装置の探針(プローブ)を接触させるためのもので、インクジェットヘッドを組み立てた後であってもトリミング作業を簡単に行うことができるように、天板7のエッジよりも外側に位置させてある。
【0028】
尚、前記発熱抵抗体3及び給電配線4は、従来周知の薄膜形成技術、例えば、スパッタリング、フォトリソグラフィー、エッチング技術等によって行なわれる。具体的には、まずTaSiO等の抵抗材料とアルミニウム等の金属材料を従来周知のスパッタリングによりベースプレート2の上面に順次被着させることによって抵抗薄膜及び金属薄膜から成る積層体を形成し、これを従来周知のフォトリソグラフィー及びエッチング技術にて微細加工することにより発熱抵抗体3及び給電配線4が所定形状にパターニングされ、インクジェットヘッドの組み立て工程が完了した後で、各発熱抵抗体3の抵抗値を後述する調整方法によって調整する。
【0029】
また前記給電配線4のパッド5は、給電配線4の所定箇所に従来周知の無電解めっき法等によってニッケルめっきや金めっき等を施すことにより、例えば2μm〜5μmの厚みに被着・形成される。
【0030】
そして前記発熱抵抗体3や給電配線4等を被覆する保護膜6は、インク9中に含まれているアルカリイオンや水分等が発熱抵抗体3や給電配線4に接触してこれらを腐食したり、或いは、インク9中に含まれている染料の固まり等が発熱抵抗体3の表面に付着するのを有効に防止するためのものであり、例えばSiO2(酸化珪素)やSiON,Si3N4(窒化珪素)等の無機質材料によって例えば0.2μm〜2.0μmの厚みに形成される。
【0031】
この保護膜6は、前記パッド5が露出するように、その端部をパッド5よりも発熱抵抗体3側に位置させてあり、従来周知のスパッタリングや真空蒸着法,プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等を採用し、発熱抵抗体3や給電配線4等の表面に前述の無機質材料を所定厚みに被着させることによって形成される。
【0032】
一方、上述したヘッド基板1上には、間に所定の間隙を形成するようにして天板7が配設される。
【0033】
前記天板7は、ヘッド基板1との間隙に充填されるインク9から成るインク流路を塞ぐためのものであり、発熱抵抗体3と1対1に対応する複数個のインク吐出孔8を有し、その外形は副走査方向の寸法がヘッド基板1よりも小型となるように、具体的には、天板7の一端がパッド5の位置よりも発熱抵抗体3側に位置するように配置されている。
【0034】
かかる天板7は、インク吐出孔8が対応する発熱抵抗体3の真上に位置するように位置決めされており、インクジェットヘッドの記録動作時、インク吐出孔8よりインク滴iを記録紙に向けて吐出するようになっている。
【0035】
尚、前記天板7は、モリブデン等から成る金属製の板体、アルミナセラミックス等から成るセラミック製の板体、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂製の板体、或いは、上記の材料を組み合わせることによって形成され、例えばモリブデンから成る場合、モリブデンのインゴット(塊)を従来周知の金属加工法により板状に成形するとともに、該板体の所定箇所に従来周知のレーザー加工、或いはフォトエッチング技術等を採用して孔明けを行い、直径10μm〜100μm程度のインク吐出孔8を多数、穿設することによって製作され、得られた天板7を図示しないスペーサ等を介してヘッド基板1上に載置・接着させることにより天板7がヘッド基板1上の所定位置に固定される。
【0036】
そして前記ヘッド基板1と天板7との間隙に充填されるインク9としては、例えば水性染料インク等が好適に使用され、その粘度は、例えば0.3mPa・s〜3.0mPa・s(25℃)に調整される。
【0037】
このようなインク9は、図示しないインクタンクからヘッド基板1−天板7間の間隙に供給されるようになっており、前述した発熱抵抗体3からの熱エネルギーによってインク9中に気泡Aが発生すると、該気泡発生時の圧力によってインク9の一部がインク吐出孔8よりインク滴iとなって外部に吐出され、これらのインク滴iを天板7の外表面に沿って搬送される記録紙の表面に付着させることにより所定の画像が形成される。
【0038】
次に上述したインクジェットヘッドを用いて構成されたインクジェットプリンタについて図3を用いて詳細に説明する。図3は、上述したインクジェットヘッドを用いて構成されたインクジェットプリンタの概略図であり、同図に示すインクジェットプリンタは、筐体内に、上述したインクジェットヘッドIJと、該インクジェットヘッド上に記録紙を搬送する搬送手段TRとを配置させた構造を有している。
【0039】
前記搬送手段TRは、SUS等の金属材料により形成された円柱状を成す軸心に、ブタジエンゴムやシリコーンゴム等の弾性材をロール状に巻きつけて構成される複数の搬送ローラを具備し、これら複数の搬送ローラを、インクジェットヘッドに対して記録紙の搬送方向上流側と下流側に、それぞれ回転可能な状態で配設させており、上述したインクジェットヘッドIJのインク吐出孔8上に記録紙を安定的に搬送する作用を為している。
【0040】
次に、上述した発熱抵抗体の抵抗値を調整する方法について、従来周知のパルストリミング法を用いる場合を例に説明する。
まずインクジェットヘッドを準備する。
(2)次に、各発熱抵抗体3の抵抗値をプロービング装置の探針(プローブ)等を用いて個々に測定し、全発熱抵抗体3の平均抵抗値A及び上述した各ブロック内の発熱抵抗体3の平均抵抗値を算出するとともに、各発熱抵抗体3の抵抗値及び隣接するブロック同士の発熱抵抗体の平均抵抗値差を、全発熱抵抗体3の平均抵抗値Aに対して、それぞれ±3.0%、0.2%の範囲内となるように発熱抵抗体3の抵抗値をパルストリミング法を用いて調整する。
【0041】
尚、かかるパルストリミング法では、発熱抵抗体3の抵抗値を下降させる場合は、発熱抵抗体3に対しパルス幅(通電時間)が比較的短く、振幅(電圧値)が比較的大きなトリミングパルスを発熱抵抗体に印加し、発熱抵抗体3を形成する抵抗材料を結晶化せしめ、発熱抵抗体3をアニールすることによって抵抗値を下降させ、また一方、発熱抵抗体3の抵抗値を上昇させる場合は、発熱抵抗体3に対しパルス幅が比較的長く、振幅が比較的小さなトリミングパルスを発熱抵抗体3に印加し、発熱抵抗体3を形成する抵抗材料が大気中の酸素や発熱抵抗体3上に配される保護膜6中の酸素等と結合し、表面に薄い酸化膜を形成することによって抵抗値を上昇させる。このようにして全ての発熱抵抗体の抵抗値をトリミングすることで、発熱抵抗体の抵抗値を所定の範囲内に設定できる。
【0042】
以上のようなパルストリミング法にて抵抗値調整を行う場合、発熱抵抗体3の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッドの生産性を高く維持することもできる。
【0043】
またこの場合、前記発熱抵抗体3をTaSiO系抵抗材料により形成し、且つTa含有率を50原子%〜60原子%に設定しておけば、発熱抵抗体3の抵抗値を従来周知のパルストリミング法にて調整する際、トリミングパルスを印加したときの抵抗値変動量が適度な大きさとなり、パルストリミング法によってより細かな抵抗値調整がし易くなるという利点がある。
【0044】
ここで、発熱抵抗体3内のTa含有率が60原子%よりも大きいと、トリミングパルスを印加したときの発熱抵抗体3の抵抗値変動が大きくなって細かな抵抗値調整が困難になる傾向があり、一方、発熱抵抗体3内のTa含有率が50原子%よりも小さいと、トリミングパルスを印加したときの発熱抵抗体3の抵抗値変動が小さいため、発熱抵抗体3の抵抗値を大きく変化させる場合に、抵抗値調整に長時間を要してしまう。従って、発熱抵抗体3を形成する抵抗材料中のTa含有率を50原子%〜60原子%に設定しておくことが好ましい。
【0045】
(実験例)
次に本発明の作用効果を実験例に基づいて説明する。
まずTaSiO系の抵抗材料からなる発熱抵抗体を300dpiの密度で1200個、直線状に配列させるとともに、各発熱抵抗体の抵抗値、並びに隣接するブロック同士の発熱抵抗体の平均抵抗値差を全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して種々の範囲内で変動させたインクジェットヘッドサンプルを24個作成し、かかるNo.1〜No.24のインクジェットヘッドサンプルを用いて記録紙に暗灰色のベタパターンの画像を、その記録濃度(OD)が0.6〜0.8(マクベス社製光学反射濃度計にて測定)になるように記録して濃度むらの有無を調べた。尚、発熱抵抗体のサイズは主走査方向の幅×副走査方向の幅が29μm×29μmのものを用い、厚みを全て0.10μmに揃えた。
【0046】
そして、これらの実験結果を表1に示す。
【0047】
表1の実験結果によれば、各発熱抵抗体の抵抗値を平均抵抗値に対して±3.0%の範囲を超えて変動させたNo.1〜No.10のサンプルでは、各発熱抵抗体の抵抗値のばらつきに起因した濃度むらが確認された。また、各発熱抵抗体の抵抗値は平均抵抗値に対して±3.0%の範囲内に収まっているものの、隣接するブロック同士の発熱抵抗体の平均抵抗値差が全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して0.2%の範囲を超えているNo.15,17,18のサンプルでも記録紙に形成された画像に濃度むらが確認された。
【0048】
一方、各発熱抵抗体の抵抗値は平均抵抗値に対して±3.0%の範囲内に、隣接するブロック同士の発熱抵抗体の平均抵抗値差が全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して0.2%の範囲内にそれぞれ収まっているNo.11〜No.14,No.16,No.19〜No.23のサンプルは濃度むらの少ない鮮明な画像が得られた。
【0049】
特に、各発熱抵抗体の抵抗値は平均抵抗値に対して±1.5%の範囲内で、且つ、隣接するブロック同士の発熱抵抗体の平均抵抗値差が全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して0.1%の範囲内に収まっているNo.22,No.23のサンプルについては特に鮮明な画像が得られており、例えば、写真印刷等、濃淡を極めて高精度に表現する必要のある場合においても濃度むらの少ない鮮明な画像を極めて良好に形成することができる。従って、各発熱抵抗体の抵抗値は平均抵抗値に対して±1.5%の範囲内で、且つ、隣接するブロック同士の発熱抵抗体の平均抵抗値差が全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して0.1%の範囲内に設定しておくことが好ましいことがわかる。
【0050】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0051】
例えば上述の実施形態において、ヘッド基板1と天板7の間に隣接する発熱抵抗体3を隔てるための隔壁部材を介在させたり、或いは、このような隔壁部材を天板7と一体的に形成するようにしても構わない。
【0052】
また上述の実施形態においては、天板7のインク吐出孔8を対応する発熱抵抗体3の真上に位置させるようにしたが、これに代えて、インク吐出孔を発熱抵抗体の真上よりずらして配置させたり、或いは、インク滴をヘッド基板のエッジより吐出させるエッジシュータタイプのインクジェットヘッドに本発明を適用しても良い。
【0053】
更に上述の実施形態においては、トリミング用のパッド5を主走査方向に一列状に配置させるようにしたが、これに代えて、トリミング用のパッド5を主走査方向に千鳥状に配列させるようにしても良く、この場合、隣接するパッド間のスペースに余裕ができ、隣合う給電配線、パッド間の短絡を有効に防止することができる利点もある。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、前記各発熱抵抗体の抵抗値を全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して±3.0%の範囲内に設定し、且つ前記多数の発熱抵抗体を、式D=[N/60]より算出されるD個の発熱抵抗体を一単位とした複数のブロックに区分するとともに、これら各ブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値を、隣接するブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値との差が全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して0.2%の範囲内に収まるように設定したことから、人間の視覚特性に応じた発熱抵抗体の抵抗値調整がなされることとなり、高階調記録を行う場合であっても、濃度むらの少ない鮮明な画像を記録することが可能な高性能のインクジェットヘッド並びにインクジェットプリンタを得ることができる。
【0055】
しかもこの場合、隣接するブロック同士の発熱抵抗体の平均抵抗値差を小さくすることにより画像の濃度むらを少なくしたことから、全ての発熱抵抗体を均一に揃えることなく鮮明な画像を記録可能なインクジェットヘッドやインクジェットプリンタが得られるようになり、これらの生産性を大幅に向上させることができる。
【0056】
また本発明によれば、各インクジェットヘッドに設けられている発熱抵抗体の抵抗値調整をパルストリミング法にて行うことにより、発熱抵抗体の抵抗値を精度良く、且つ簡単に調整することができ、これによってインクジェットヘッド及びインクジェットプリンタの生産性を高く維持することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの断面図である。
【図3】図1のインクジェットヘッドに用いられるヘッド基板の平面図である。
【図4】図1のインクジェットヘッドを用いて構成されたインクジェットプリンタの概略図である。
【図5】階調数(発熱抵抗体の配列密度)と人間の視覚の識別階調数との関係を示すグラフである。
【図6】従来のインクジェットヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・ヘッド基板
2・・・ベースプレート
3・・・発熱抵抗体
4・・・給電配線
5・・・パッド
6・・・保護膜
7・・・天板
8・・・インク吐出孔
9・・・インク
A・・・気泡
i・・・インク滴
IJ・・・インクジェットヘッド
TR・・・搬送手段
Claims (3)
- 上面に多数の発熱抵抗体をN(Nは120以上の自然数)dpiの密度で配列してなるヘッド基板と、該ヘッド基板に対して所定の間隙を形成するように配設される天板とを具備し、前記間隙内に充填されるインクを発熱抵抗体の熱エネルギーによってインク吐出孔より吐出させて記録紙に画像を形成するインクジェットヘッドにおいて、
前記各発熱抵抗体の抵抗値を全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して±3.0%の範囲内に設定し、且つ前記多数の発熱抵抗体を、式D=[N/60]より算出されるD個の発熱抵抗体を一単位とした複数のブロックに区分するとともに、これら各ブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値を、隣接するブロック内に存在する発熱抵抗体の平均抵抗値との差が全発熱抵抗体の平均抵抗値に対して0.2%の範囲内に収まるように設定したことを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記発熱抵抗体の抵抗値がパルストリミング法により調整されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1または請求項2に記載のインクジェットヘッドと、前記インク吐出孔上に記録紙を搬送する搬送手段とを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
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