JP2003506411A - タンパク質重合阻害剤および使用方法 - Google Patents

タンパク質重合阻害剤および使用方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、タンパク質の重合および超分子タンパク質複合体の構築に必要なタンパク質−タンパク質相互作用を調節するペプチドの発見に関する。さらに詳しくは、ヒト疾患に関する研究およびヒト疾患の治療または予防において使用される、修飾されたカルボキシル末端を有する種々の小ペプチドを含む生物工学的手段および薬剤を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 [発明の分野] 本発明は、タンパク質の重合および超分子タンパク質複合体の構築に必要なタ
ンパク質−タンパク質相互作用を調節するペプチドの発見に関する。さらに詳し
くは、ヒト疾患に関する研究およびヒト疾患の治療または予防において使用され
る、修飾されたカルボキシル末端を有する種々の小ペプチドを含む生物工学的手
段および薬剤を開示する。
【0002】 [発明の背景] 転写複合体、細菌毒素、タンパク質フィラメントおよびタンパク質集束体、な
らびにウイルスタンパク質外殻のような超分子構造は、「サブユニット」とよば
れる、多くの分子からなる非共有結合による集合体によって形成される。サブユ
ニット間のタンパク質−タンパク質相互作用は、これらの複合体を安定化し、構
造の完全性をもたらす。この方法は進化の上で好ましい。なぜなら、より小さな
サブユニットから大きな構造を構築すれば、最少量の遺伝情報から非常に多岐に
わたる複合体集団を生成できる。また、サブユニットどうしは比較的エネルギー
の低い多重結合を介して会合しているので、このような構造体の集合や解離は容
易に制御できる。さらに、サブユニットが集合する途中で、正常に形成されなか
ったサブユニットを除外する修正機構が働きうるので、構造体合成の際の誤りを
より容易に回避できるからである。(Alberts et al., Molecular Biology of t
he Cell(細胞の分子生物学), Third edition, Garland Publishing, Inc., Ne
w York and London, pp. 124 (1994)を参照)。
【0003】 遺伝子の発現を調節する多くのタンパク質やタンパク質複合体(たとえば転写
活性化因子や転写抑制因子)は、タンパク質−タンパク質相互作用やタンパク質
重合を介して核酸との強い相互作用を得る。単純な場合では、一つのサブユニッ
トが別のサブユニットと会合して二量体を形成する。二つの単量体間のタンパク
質−タンパク質相互作用によって二量体は安定化する。たとえば、ヘリックス−
ターン−ヘリックスタンパク質は、二つの非常に類似した「ハーフサイト(half-
site)」から構成されるDNA配列に対称的二量体として結合している何百もの
DNA結合タンパク質を含むタンパク質のファミリーの一つである。この「ハー
フサイト」も同じく対称的に配置されている。この配置により、二つのタンパク
質単量体が、ほぼそろって接触するため、結合親和性が著しく増加する。第二の
重要なDNA結合モチーフ群は、構造成分として一個以上の亜鉛分子を利用して
いる。このような亜鉛配位型のDNA結合モチーフは、ジンクフィンガー(zinc
finger)とよばれ、二量体を同じく形成し、各サブユニットの二本のαヘリック
スのうちの一本がDNAの大きい溝と相互作用する。さらに、第三のタンパク質
モチーフは、ロイシンジッパーモチーフ(leucine zipper motif)とよばれ、DN
Aを二量体として識別する。ロイシンジッパードメインにおいては、各単量体に
由来する一本ずつのαヘリックスが二本一緒になって短いより合わせコイルを形
成する。ロイシンジッパーモチーフをもつ遺伝子調節タンパク質は、二つの単量
体が同一なホモ二量体か、単量体が異なるヘテロ二量体のどちらかを形成できる
。二量体としてDNAに結合する調節タンパク質の第四のグループは、ヘリック
ス−ループ−ヘリックスモチーフ(helix-loop-helix motif)からなる。ロイシン
ジッパータンパク質と同様に、ヘリックス−ループ−ヘリックスタンパク質は、
ホモ二量体あるいはヘテロ二量体を形成できる(Alberts et al., Molecular Bi
ology of the Cell(細胞の分子生物学), Third edition, Garland Publishing
, Inc., New York and London, pp. 124 (1994)を参照)。多くの遺伝子調節タ
ンパク質、特に転写因子が適切に機能するかどうかは、タンパク質−タンパク質
相互作用およびタンパク質重合に左右される。
【0004】 同様に、いくつかの細菌毒素の機能は、タンパク質−タンパク質相互作用およ
びサブユニットどうしの重合により決まる。たとえば、百日咳毒素、ジフテリア
毒素、コレラ毒素、シュードモナスA型外毒素、大腸菌の熱に不安定な毒素、ベ
ロ毒素、および志賀赤痢菌毒素は類似した構造をもち、その構造は、ホロ毒素(h
olotoxin)の形成に必要なBサブユニットのオリゴマーに重合される、酵素活性
を有するAサブユニットを特徴とする。(Stein et al., Nature 355:748 (1992
);Read他、米国特許第5,856,122号;Lingwood, Trends in Microbiol
ogy 4:147 (1996))。Bサブユニットは共通の祖先をもつタンパク質(たとえば
細胞表面の炭水化物を識別する五量体タンパク質)から分岐したものであり、異
なる酵素成分と会合するようになったのであると、一般に考えられている(Stei
n et al., Nature 355:748 (1992))。
【0005】 小さな超分子構造に加えて、複数のサブユニットから構成される大きな超分子
複合体も自然界に存在する。細胞において機械的強度が主に重要である場合には
、分子集合体は普通、球状のサブユニットよりもむしろ繊維状のサブユニットか
らつくられる。遺伝子調節タンパク質のいくつかのファミリーにおいては、短い
より合わせコイルが二量体形成のドメインとして働くが、より一般的には、より
合わせコイルは100nm以上にもわたっており、アクチンの太いフィラメント
やチューブリン集束体のような大きな繊維状の構造体の構成単位として役立って
いる。(アルバート他著、『細胞の分子生物学[第3版]』、ガーランド出版社
、ニューヨークおよびロンドン、124−125ページ(1994年))。しか
し、大きな繊維状の構造体が蓄積することは、場合によっては有害になりうる。
また、重合したタンパク質の無秩序な沈着は、さまざまな形態の癌や、アルツハ
イマー病およびスクレーピー(プリオン関連疾患)のようなアミロイドーシスに
関連した神経変性性疾患と関連していることがわかっている。
【0006】 また、いくつかのタンパク質サブユニットは、サブユニットどうしが六方格子
をなすように配置されて平坦なシート状構造をつくる。膜に特有なタンパク質は
、脂質二重層内でしばしばこのように並んでいる。個々のサブユニットの幾何学
的位置がわずかに変化すると、蜂の巣状のシートはチューブに変形し、さらに位
置が変化すると、中空の球体になる。この原理は、多くのウイルスのタンパク質
キャプシドがつくられる場合にはっきり見られる。このような外殻は多くの場合
、何百という同一のタンパク質サブユニットからできており、ウイルスの核酸を
包んで保護している。このようなキャプシドのタンパク質は、特別に適応性のあ
る構造をもっている。なぜなら、このタンパク質はいくつかの異なる種類の結合
をするし、またウイルスがいったん細胞に入れば、ウイルスの増殖を開始するた
めにタンパク質の配置を変化させて核酸を放出しなければならないからである。
巨大分子および細胞の複雑な集合体の多くを細胞内につくるための情報は、サブ
ユニット自体に含まれているはずである。なぜならサブユニットを適当な条件に
置くと孤立したサブユニットどうしが自己集合して決まった構造をつくりあげる
からである。
【0007】 自然界に存在する多くのタンパク質−タンパク質相互作用は、タンパク質の機
能、タンパク質重合、および超分子複合体の構築を実現するために必要不可欠で
ある。転写因子、転写複合体、細菌毒素、繊維状集合体、およびウイルスキャプ
シドの会合はタンパク質−タンパク質相互作用とタンパク質重合に左右される。
これらのタンパク質−タンパク質相互作用およびタンパク質重合事象を選択的に
阻害する試薬の発見により、多くの疾患の研究、治療、および予防のための新規
な生物工学的手段、治療法、および予防法の開発が可能になるであろう。
【0008】 [発明の概要] 本発明の実施形態には、修飾された小ペプチド(長さが二個から十個のアミノ
酸)が含まれる。この小ペプチドは、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパ
ク質重合、および超分子複合体の構築を阻害する。タンパク質重合阻害剤とよば
れるこのようなペプチド試薬の選択、デザイン、製造、キャラクタリゼーション
、および使用は、「PPIテクノロジー」と総称される。PPIテクノロジーの
利用は、治療および予防医学や生物工学的研究開発に限定されることなく、これ
らを含む多くの分野にわたりうる。
【0009】 多くの生化学的事象(たとえば、転写因子の二量体、転写複合体、細菌毒素、
および繊維状あるいは束状構造体の形成、およびウイルスキャプシドの構築)は
、タンパク質サブユニットからタンパク質重合体や複合体をつくるタンパク質−
タンパク質相互作用に左右される。このような超分子構造は、その特殊な機能を
二量体化、三量体化、四量体化、または多量体化に依存しているが、このような
超分子構造の構築を妨げる方法として、かかるタンパク質−タンパク質相互作用
、タンパク質重合、および複合体の形成に作用する小分子をつくることが挙げら
れる。カルボキシル末端の水酸基をアミド基で置換した小ペプチドに、そのよう
な阻害作用があることが発見された。こうして、本発明の実施形態には、タンパ
ク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合、およびタンパク質複合体の形成に
作用する、修飾された小ペプチドが含まれる。
【0010】 望ましい実施形態では、修飾された短いペプチドは、タンパク質の、タンパク
質−タンパク質相互作用および/またはサブユニットの集合に関与する領域に結
合し、これによりタンパク質重合あるいはタンパク質複合体の形成を阻害または
防止する。ある実施形態では、転写因子の配列に対応する配列をもつ小ペプチド
が転写因子の単量体と相互作用して二量体化を妨げる。別の実施形態では、転写
活性化因子または転写抑制因子に対応する配列を有する小ペプチドが転写活性化
因子または転写抑制因子のタンパク質と相互作用して、転写活性化因子または転
写抑制因子の複合体の構築を調節する。たとえば、NF−κB/IκB複合体は
転写を活性化できないが、これらの複合体を安定化しているタンパク質−タンパ
ク質相互作用に関与する領域でNF−κBまたはIκBと相互作用する小ペプチ
ドは、複合体の形成を調節(たとえば阻害または防止もしくは促進)して、遺伝
子発現を促進するか、もしくは遺伝子発現を防止または妨げることができる。N
F−κBおよびIκB複合体の構築または安定化に関与しているタンパク質−タ
ンパク質相互作用にあずかる領域に対応する配列をもつ小ペプチドを投与するこ
とによりNF−κBおよびIκB複合体の構築を調節する方法が提供される。さ
らに、NF−κBおよびIκB複合体の構築を調節する小ペプチドを同定する方
法が提供される。NF−κBおよびIκB複合体の構築を調節する能力があるこ
とが確認された小ペプチドは、生物工学的手段として用いることができるし、あ
るいはNF−κBおよびIκB複合体の調節異常に関係する疾患を治療あるいは
予防するために投与することができる。
【0011】 別の実施形態では、百日咳毒素、ジフテリア毒素、コレラ毒素、シュードモナ
スA型外毒素、大腸菌の熱に不安定な毒素、およびベロ毒素のような細菌毒素の
サブユニットにおける配列に対応する修飾された小ペプチドが、細菌ホロ毒素の
構築を防止または阻害するために用いられる。たとえば、ホロ毒素を形成するサ
ブユニットの構築または安定化に関与しているタンパク質−タンパク質相互作用
にあずかる領域に対応する配列を有する小ペプチドを投与することにより百日咳
毒素の構築および機能を阻害または防止する方法が提供される。さらに、細菌ホ
ロ毒素の構築を阻害または防止する別の小ペプチドを同定する方法が提供される
。細菌ホロ毒素の形成を阻害する能力があることが確認された小ペプチドは、生
物工学的手段として用いることができるし、あるいは細菌ホロ毒素の毒作用を治
療あるいは予防するために投与することができる。
【0012】 そのほかの実施形態には、アクチン、β−アミロイドペプチド、およびプリオ
ン関連タンパク質のような繊維状タンパク質の重合を阻害する小ペプチドの製造
および同定が含まれる。タンパク質重合に関与しているタンパク質−タンパク質
相互作用にあずかる領域に対応する配列を有する修飾された小ペプチドを投与す
ることにより、アクチン、β−アミロイドペプチド、およびプリオン関連タンパ
ク質の重合を阻害または防止する方法が提供される。さらに、タンパク質重合を
阻害または防止する小ペプチドを同定する方法が提供される。アクチン、β−ア
ミロイドペプチド、およびプリオン関連タンパク質の重合を阻害する能力がある
ことが確認された小ペプチドは、生物工学的手段として用いることができるし、
あるいはアルツハイマー病やスクレーピーのような神経変性性疾患を含む、異常
型のアクチン、β−アミロイドペプチド、あるいはプリオン関連タンパク質の重
合に関係する疾患を治療あるいは予防するために投与することができる。
【0013】 本発明の別の態様には、チューブリンの重合を阻害する小ペプチドの製造およ
び同定が含まれる。チューブリンの重合の阻害剤は、さまざまな形態の癌の治療
のためにこれまで数年間にわたり投与されてきてはいるが、より無害なチューブ
リン重合阻害剤が今なお必要とされている。チューブリンの重合に関与している
チューブリンの配列に対応する小ペプチドは、副作用をほとんど生じないか全く
生じることなく経口投与することができる。チューブリンの重合に関与している
タンパク質−タンパク質相互作用にあずかる領域に対応する配列を有する小ペプ
チドを投与することにより、チューブリンの重合を阻害または防止する方法が提
供される。さらに、チューブリンの重合を調節(たとえば阻害、防止あるいは促
進)する小ペプチドを同定する方法が提供される。チューブリンの重合に作用す
る能力があることが確認された小ペプチドは、生物工学的手段として用いること
ができるし、あるいは異常型のチューブリンの重合に関係する疾患を治療あるい
は予防するために投与することができる。
【0014】 好ましい実施形態では、ウイルスキャプシドの構築に関与する配列に対応する
修飾された小ペプチドが、タンパク質−タンパク質相互作用を妨げるために用い
られ、これによりウイルスキャプシドの構築を阻害または防止できる。たとえば
、好ましい小ペプチドとして、Gly−Pro−Gly−NH2(GPG−NH2 )、Gly−Lys−Gly−NH2(GKG−NH2)、Cys−Gln−Gl
y−NH2(CQG−NH2)、Arg−Gln−Gly−NH2(RQG−NH2 )、Lys−Gln−Gly−NH2(KQG−NH2)、Ala−Leu−Gl
y−NH2(ALG−NH2)、Gly−Val−Gly−NH2(GVG−NH2 )、Val−Gly−Gly−NH2(VGG−NH2)、Ala−Ser−Gl
y−NH2(ASG−NH2)、Ser−Leu−Gly−NH2(SLG−NH2 )、およびSer−Pro−Thr−NH2(SPT−NH2)が挙げられる。ウ
イルスキャプシドの構築または安定化に関与しているタンパク質−タンパク質相
互作用にあずかる領域に対応する配列を有する小ペプチドを投与することにより
、ウイルスキャプシドの構築を阻害または防止する方法が提供される。さらに、
ウイルスキャプシドの構築を阻害または防止する小ペプチドを同定する方法が提
供される。ウイルスキャプシドの構築を阻害または防止する能力があることを確
認された小ペプチドは、生物工学的手段として用いることができるし、あるいは
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染のようなウイルス感染を治療あるいは予防
するために投与することができる。また、本発明の修飾された小ペプチドを含む
薬剤が開示される。さらに、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合
、および超分子複合体の構築に関係する疾患の治療および予防のためのかかる薬
剤、予防薬、および治療薬を調製する方法が提供される。
【0015】 [好適な実施形態の詳細な説明] タンパク質−タンパク質相互作用にあずかる領域に対応する配列を有する修飾
された小ペプチドは、タンパク質重合および超分子複合体の構築を防止および/
または阻害することがこれまでに発見されている。多くの超分子構造体において
は、タンパク質サブユニット(たとえばタンパク質単量体)が、非共有結合性の
タンパク質−タンパク質相互作用が関与する集合あるいは重合過程を経て、複数
のタンパク質分子からなる多量体を生成する。水酸基の代わりにアミド基をカル
ボキシル末端にもつ小ペプチドは、多量体の生成に必要なタンパク質−タンパク
質相互作用を阻害することにより、この重合過程を妨げる。タンパク質重合阻害
剤とよばれるこのような小ペプチドは、生物工学的手段の製造や、ヒト疾患の研
究ならびに治療および予防のための薬剤の製造において有用である。さらに、転
写因子、細菌毒素、繊維状または束状タンパク質、ウイルスキャプシドタンパク
質、ならびにタンパク質重合および超分子集合体の構築に関与する他のタンパク
質の配列に対応する、修飾された小ペプチドおよび/またはこれらの小ペプチド
に類似したペプチドミメティクス(peptidomimetics)(「ペプチド試薬」と総称
する)を含む生物工学的手段および薬剤組成物を製造するためのアプローチにつ
いて以下に述べる。
【0016】 ある実施形態では、転写活性化因子の配列に対応する配列をもつ小ペプチドが
、転写因子の単量体と相互作用して二量体化を防止する。転写活性化因子(たと
えばNF−κB)の二量体化を阻害することにより、転写因子によって活性化さ
れる遺伝子の発現を効果的に減弱または阻害できる。NF−κBは分子量が50
および65kDの二つのタンパク質からなる。NF−κBは、さまざまなサイト
カイン遺伝子の遺伝子発現の転写制御因子であると考えられている(Haskill他
、米国特許第5,846,714号)。転写活性化因子を安定化させるタンパク
質−タンパク質相互作用に関与するNF−κBの配列に対応する小ペプチドはN
F−κB複合体の形成を妨げ、これによってサイトカイン遺伝子の発現を阻害す
る。このような阻害剤には、生物工学的手段としての用途、および薬剤(たとえ
ば、サイトカイン遺伝子の過剰発現という特徴を有する炎症性疾患の治療用の薬
剤)としての用途がある。
【0017】 別の実施形態では、転写活性化因子または転写抑制因子に対応する配列をもつ
小ペプチドが転写因子と相互作用して転写抑制因子複合体の構築を調節し、これ
により遺伝子発現を調節する。上述したように、NF−κBは、あるサイトカイ
ン遺伝子のDNA調節領域に結合する転写活性化因子である(Haskill他、米国
特許第5,846,714号)。NF−κBは、IκBとよばれる分子量36k
Dのリプレッサータンパク質と会合することにより調節される。NF−κBおよ
びIκBの複合体(「NF−κB/IκB」)は転写を活性化することができな
いが、NF−κBがリン酸化されたときにはIκBが解離し、転写を活性化する
ことができる。好ましくはNF−κB/IκB複合体を安定化させるタンパク質
−タンパク質相互作用に関与している領域で、NF−κBまたはIκBと相互作
用する小ペプチドは、複合体の形成を阻害または防止して遺伝子発現を促進する
か、あるいは代わりに複合体を安定化して、これにより遺伝子発現を防止または
妨害する。NF−κBのIκBへの会合を調節する多くの小ペプチドは、以下に
述べる方法を用いることによって同定できる。上記のように、NF−κB/Iκ
B複合体の構築を調節する能力があることが確認された小ペプチドは、生物工学
的手段として用いることができるし、あるいはNF−κB/IκB複合体の調節
異常に関係する疾患を治療または予防するために投与することができる。
【0018】 別の実施形態では、細菌毒素の構築に必要なタンパク質重合を阻害するための
小ペプチドを製造、同定、および使用する方法が提供される。効果を奏するため
には、細菌毒素はホロ毒素の触媒サブユニットを適切な相互作用部位に運ばなけ
ればならない。いくつかの細菌毒素は、二つの機能的成分、すなわち触媒成分お
よび細胞識別または結合成分、からなる超分子構造体を形成することにより、こ
の問題に適応している。たとえば百日咳毒素およびベロ毒素では、一つの触媒サ
ブユニット「A」が、毒素の結合に関与している五つの「B」サブユニットから
なる五量体集合体に結合している。百日咳毒素、ジフテリア毒素、シュードモナ
スA型外毒素、大腸菌の熱に不安定な毒素、およびベロ毒素のような細菌毒素の
サブユニットにおける配列に対応する修飾された小ペプチドは、細菌ホロ毒素の
構築を防止または阻害するために用いることができ、これにより細菌毒素の毒作
用を弱体化または阻害できる。細菌ホロ毒素の構築を阻害する別の小ペプチドを
同定する方法も以下に記載される。細菌ホロ毒素の形成を阻害する能力があるこ
とが確認された小ペプチドは、生物工学的手段として用いることができるし、あ
るいは細菌ホロ毒素の毒作用を治療あるいは予防するために投与することができ
る。
【0019】 さらに、アクチンおよびβ−アミロイドペプチドの重合を阻害する小ペプチド
を製造および同定する方法も本発明の態様の範囲に含まれる。細胞膜でのβ−ア
ミロイドの沈着および凝集あるいは重合は、カルシウムの流入を起こし、カルシ
ウムの流入により神経細胞が損傷することが、これまでに示されている。このニ
ューロンの傷害は、アルツハイマー病、卒中、ハンチントン病に限定されること
なくこれらを含むいくつかの神経変性性疾患に関係していることがこれまでにわ
かっている。サイトカラシンのような、アクチンの解重合をおこす化合物は、重
合したβ−アミロイドペプチドが存在するにもかかわらずカルシウムの恒常性を
維持するために有用である。アクチンの重合およびβ−アミロイドペプチドの凝
集を阻害または防止する小ペプチドを同定する方法が以下に記載される。アクチ
ンの重合を阻害または防止する小ペプチドは、カルシウムの恒常性を回復してあ
る種の神経変性性疾患に苦しむ患者にとって治療に役立つ処理剤を提供するため
に、β−アミロイドペプチドの凝集を阻害または防止する小ペプチドと共に投与
することができる。
【0020】 本発明の別の実施形態には、チューブリンの重合を阻害する小ペプチドの製造
および同定が含まれる。ビンブラスチンやビンクリスチンのような、チューブリ
ン重合の阻害剤は、さまざまな形態の癌の治療のためにこれまで数年間にわたり
投与されてきてはいるが、現在用いられているチューブリン重合阻害剤は、多く
の副作用を伴い、人体にはあまり十分に取り入れられない。これに対して、重合
に関与しているチューブリンの配列に対応する小ペプチドは、副作用をほとんど
生じないか全く生じることなく経口投与することができ、人体に十分に許容され
る。チューブリンの重合を阻害する小ペプチドを同定する方法が以下の開示にお
いて提供される。チューブリンの重合を阻害する能力があることが確認された小
ペプチドは、生物工学的手段として用いることができるし、あるいは癌を治療あ
るいは予防するために投与することができる。
【0021】 ある実施形態では、ウイルス性疾患の治療および予防用の、ウイルスキャプシ
ドタンパク質における配列に対応する修飾された小ペプチドを製造、同定、およ
び使用する方法が提供される。これらの小ペプチドはウイルスキャプシドタンパ
ク質に結合して、ウイルスキャプシドタンパク質の重合を阻害し、これによって
ウイルスの感染力を阻害する。試験管内のバインディングアッセイを用いて、た
とえば、ウイルスキャプシドタンパク質p24に対応する配列を有する小ペプチ
ドが、HIV−1の主要キャプシドタンパク質(p24)に結合することが実証
される。さらに、電子顕微鏡を用いることにより、そのような小ペプチドがキャ
プシドタンパク質の重合およびキャプシドの構築を効果的に妨げることが示され
る。GPG−NH2、GKG−NH2、CQG−NH2、RQG−NH2、KQG−
NH2、ALG−NH2、GVG−NH2、VGG−NH2、ASG−NH2、SL
G−NH2、およびSPT−NH2のような小ペプチドがHIV−1、HIV−2
、およびSIVの複製を阻害することの証拠も提供される。
【0022】 タンパク質重合および超分子集合体の構築を媒介するタンパク質−タンパク質
相互作用に関与するいくつかのタンパク質の領域の配列が知られているので、以
下に記載された手法、あるいは本明細書の開示をうけた当業者にとっては自明で
あるようなこれらのアッセイを改変したものを用いて、タンパク質の結合または
タンパク質の重合を効果的に阻害および/または防止する小ペプチドを同定する
ために、これらの配列に対応するいくつかの修飾された小ペプチドを、選択、デ
ザイン、製造、および迅速にスクリーニングすることができる。好ましいペプチ
ド試薬は、たとえばGPG−NH2、GKG−NH2、CQG−NH2、RQG−
NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、GVG−NH2、VGG−NH2、AS
G−NH2、SLG−NH2、およびSPT−NH2のような、カルボキシル末端
にアミド基を有するトリペプチドであるが、式X123−NH2または式X45123−NH2(式中、X1、X2、X3、X4、およびX5は、任意のアミノ酸
であり、いずれか1個または2個のアミノ酸が欠けていてもよい)のアミド型ペ
プチドを含む、タンパク質−タンパク質相互作用およびタンパク質重合を阻害す
る組成物および方法が提供される。望ましい実施形態は、X3としてグリシン残
基を有する。
【0023】 いくつかの実施形態では、ペプチド試薬は単量体の形で提供される。別の実施
形態では、ペプチド試薬は多量体の形あるいは多量体化した形で提供される。い
くつかの実施形態においては、支持体が結合したペプチド試薬も用いられる。ペ
プチド試薬を含む薬剤組成物は、疾患の治療および/または予防のために、治療
薬または予防薬もしくはその両者として投与される。いくつかの実施形態では、
ペプチド試薬を含む薬剤組成物が、特定の疾患のための別の従来の治療法と組み
合わせて投与される。
【0024】 ペプチド試薬は合理的なやり方によってまず選択およびデザインされる。すな
わち、ペプチド試薬の配列がタンパク質重合あるいはタンパク質複合体の構築を
調節するタンパク質−タンパク質相互作用に関与しているという知識に基づいて
、ペプチド試薬は選択およびデザインされる。この選択過程において、いくつか
の情報が役に立つ。たとえば変異解析、タンパク質のホモロジー解析(たとえば
、関連するドメインを有する他の配列の解析)、タンパク質モデリング、および
ラショナルドラッグデザインにおける他の方法論による情報が含まれるが、これ
らに限定されるわけではない。また、ペプチド試薬を任意に選択することももち
ろん可能である。
【0025】 それから、ペプチド試薬は従来のペプチド合成方法あるいは化学物質合成方法
を用いて製造される。多くのペプチド試薬はまた市販品として入手できる。次に
、ペプチド試薬の能力を評価するアッセイを行う。目的のタンパク質に結合する
能力、タンパク質重合および/または超分子複合体の構築を可能にするタンパク
質−タンパク質相互作用を妨げる能力、および疾患を予防する能力を評価する。
本明細書中に記載されるアッセイは、目的のタンパク質に結合する能力、タンパ
ク質重合あるいはタンパク質複合体の構築を調節する能力、および疾患を予防す
る能力といったペプチド試薬の能力を評価するものであり、「ペプチド試薬キャ
ラクタリゼーションアッセイ(peptide agent characterization assay)」と総称
される。理解されるべきは、本明細書中に記載されるペプチド試薬キャラクタリ
ゼーションアッセイのいかなる数、順序、および改変も、タンパク質−タンパク
質相互作用、タンパク質重合、またはタンパク質複合体の構築を調節するペプチ
ド試薬を特定するために用いることができるということである。
【0026】 以下に、本発明のいくつかのソフトウェアおよびハードウェアの実施形態、お
よび本発明のペプチド試薬の選択およびデザインにおいて援用することができる
計算方法を提供する。
【0027】 ソフトウェアおよびハードウェアの実施形態 核酸配列、および/もしくは目的のポリペプチドまたはその断片(たとえば、
タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合、あるいはタンパク質複合体
の構築に関与するタンパク質)のタンパク質配列は、記録および操作のためコン
ピュータで読み取り可能な記憶媒体に書き込むことができる。核酸配列、および
目的のタンパク質またはその断片のタンパク質配列が書き込まれた、コンピュー
タで読み取り可能な記憶媒体が、相同配列ならびに構造的および機能的ドメイン
の決定、およびタンパク質モデルの構築に有用であるということは、当業者によ
って理解されるであろう。核酸配列、および/もしくは目的のタンパク質または
その断片のタンパク質配列が書き込まれた、コンピュータで読み取り可能な記憶
媒体の有用性として、当業者に公知のコンピュータプログラムを用いて配列を比
較できることが挙げられる。これによって、タンパク質−タンパク質相互作用、
タンパク質重合、およびタンパク質複合体の構築を調節するペプチド試薬を選択
するために、ホモロジー検索を行ったり、構造的および機能的ドメインをつきと
めたり、タンパク質モデルを開発することができる。
【0028】 核酸配列、および/もしくはタンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重
合、あるいはタンパク質複合体の構築に関与するタンパク質のタンパク質配列ま
たはその断片は、コンピュータによって読み取ったりアクセスしたりできる、い
かなる記憶媒体上においても格納、記録、および操作できる。本明細書で用いる
場合、「記録」および「格納」という語は、コンピュータで読み取り可能な記憶
媒体上に情報を格納する過程をいう。当業者は、この実施形態のヌクレオチドあ
るいはポリペプチドの配列情報を含む製品をつくるために、コンピュータで読み
取り可能な記憶媒体上に情報を記録する方法であれば現在公知であるいかなる方
法でも容易に利用することができる。
【0029】 当業者は、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列がその上に記録されているコ
ンピュータで読み取り可能な記憶媒体をつくるために、さまざまなデータ格納構
造体を利用することができる。データ格納構造体の選択は一般的に、格納された
情報にアクセスするために選ばれる構成部品に基づいて行われる。コンピュータ
で読み取り可能な記憶媒体としては、磁気的に読み取り可能な記憶媒体、光学的
に読み取り可能な記憶媒体、あるいは電子的に読み取り可能な記憶媒体が挙げら
れる。たとえば、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テー プ、ZIPディスク、CD−ROM、DVD−ROM、RAM、あるいはROM 、および当業者に知られている別の種類の他の記憶媒体を、コンピュータで読み 取り可能な記憶媒体として用いることができる。配列情報がその上に格納された コンピュータで読み取り可能な記憶媒体は、パーソナルコンピュータ、ネットワ ーク、サーバー、あるいは当業者に知られている他のコンピュータシステム内に 存在しうる。
【0030】 本発明の実施形態には、システム、特にコンピュータベースシステムが含まれ
る。このコンピュータベースシステムでは、本明細書中に記載される配列および
タンパク質モデルの情報が、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合
事象、あるいはタンパク質複合体の構築を調節するためのペプチド試薬をデザイ
ンおよび選択するために用いられる。「コンピュータベースシステム」という用
語は、そのような目的のためにポリペプチドあるいはその配列を解析するために
用いられるハードウェア、ソフトウェア、およびあらゆるデータベースをいう。
コンピュータベースシステムには、好ましくは、上述した格納媒体、および配列
データにアクセスしたり操作したりするための処理装置が含まれる。この実施形
態のコンピュータベースシステムのハードウェアは、中央演算装置(CPU)お
よびデータのデータベースを含む。当業者は、現在用いることができるコンピュ
ータベースシステムのうちのいずれもが適当であることを容易に理解できる。
【0031】 ある特定の実施形態では、コンピュータシステムには、主記憶装置(好ましく
はRAMとして実装される)に接続しているバスに接続された処理装置、および
たとえばハードドライブやリムーバブルメディア記憶装置のようなさまざまな副
記憶装置が含まれる。リムーバブルメディア記憶装置とは、たとえば、フロッピ
ーディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、磁気テープドライブなどを
意味しうる。制御論理および/またはその中に記録されたデータ(たとえば核酸
配列、および/もしくはタンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合、あ
るいはタンパク質複合体の構築に関与するタンパク質のタンパク質配列またはそ
の断片)を含む、フロッピーディスク、コンパクトディスク、磁気テープなどの
ようなリムーバブルな記憶媒体は、リムーバブル記憶装置に挿入することができ
る。このコンピュータシステムには、リムーバブルメディア記憶装置に挿入され
たリムーバブルな記憶媒体から制御論理および/またはデータを読み出すための
適切なソフトウェアが含まれる。
【0032】 核酸配列、および/もしくは目的のタンパク質のタンパク質配列またはその断
片は、周知の方法によって主記憶装置、副記憶装置のいずれか、および/または
リムーバブルな記憶媒体に格納できる。核酸配列、および/もしくはタンパク質
配列またはその断片にアクセスしたり処理したりするためのソフトウェア(たと
えば検索ツール、比較ツール、およびモデリングツールなど)は、実行される間
は主記憶装置に常駐する。
【0033】 本明細書で用いる場合、「データベース」とは、ヌクレオチドまたはポリペプ
チドの配列情報、タンパク質モデルの情報、ならびに他のペプチド、化学物質、
ペプチドミメティクス、およびタンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重
合、あるいはタンパク質複合体の構築を調節する他の試薬に関する情報を格納で
きる記憶装置をいう。さらに、「データベース」とは、ヌクレオチドまたはポリ
ペプチドの配列情報、タンパク質モデルの情報、および本明細書中で提供される
さまざまなペプチドキャラクタリゼーションアッセイ(peptide characterizatio
n assay)から得られた情報を記録された製品にアクセスできる、メモリアクセス
部分もいう。ある実施形態では、データベースは、非常に多くのペプチド試薬の
上述した情報や、データを比較できるような製品を格納する。すなわち、複数の
データベースは、このような情報を、試験される各ペプチド試薬の「プロファイ
ル」として格納することができ、異なるペプチド試薬のプロファイルは、所望の
応答をするペプチド試薬誘導体において必要とされる機能的および構造的特性を
同定するために比較することができる。それにより、これらの誘導体分子は分子
生物学およびタンパク質工学における従来技術によってつくることができ、さら
なる一連の機能的アッセイにおいて試験することができる。そのうえ、非常に多
くのペプチド試薬に関するプロファイルは、複数のペプチド試薬を用いる戦略を
開発する際に有用である。複数のペプチド試薬を(たとえば疾患の治療または予
防用薬剤において)使用することにより、タンパク質−タンパク質相互作用、タ
ンパク質重合、あるいはタンパク質複合体の形成をある一つの部位において調節
するペプチド試薬を投与する場合に比べてより効果的に、目的のタンパク質と別
のタンパク質または複数のタンパク質の組み合わせとの会合を調節することがで
きる。
【0034】 目的のタンパク質またはペプチド試薬もしくはその両者の配列情報は、さまざ
まな形式のさまざまなデータ処理プログラムにおいて格納および操作することが
できる。たとえば配列データは、DB2、SYBASE、あるいはORACLE
といった当業者になじみのある様々なデータベースプログラムにおいて、マイク
ロソフトワードやワードパーフェクトのようなワードプロセッシングファイル、
ASCIIファイル、htmlファイル、またはpdfファイルにおけるテキス
トとして格納できる。「サーチプログラム」とは、目的のタンパク質のヌクレオ
チドまたはポリペプチド配列を、上記のようにしてつくられた別のヌクレオチド
またはポリペプチド配列および分子のプロファイルと比較するために、コンピュ
ータベースシステムにおいて実行される一つ以上のプログラムをいう。また、サ
ーチプログラムとは、一つ以上のタンパク質モデルをデータベース中に存在する
いくつかのタンパク質モデルと比較したり、一つ以上のタンパク質モデルをデー
タベース中に存在するいくつかのペプチド試薬と比較する一つ以上のプログラム
のことも指す。サーチプログラムは、たとえば、ペプチド試薬の配列が存在する
データベース中の配列と一致する、目的のタンパク質のタンパク質配列またはそ
の断片の領域を比較して、類似または相同の配列を特定するために用いられる。
【0035】 「回復プログラム(retrieval program)」とは、相同の核酸配列、相同のタン
パク質配列、相同のタンパク質モデル、あるいは相同のペプチド試薬配列を特定
するために、コンピュータベースシステムにおいて実行される一つ以上のプログ
ラムをいう。回復プログラムはまた、データベース中に格納されたタンパク質配
列あるいはタンパク質モデルと相互作用する、ペプチド、ペプチドミメティクス
、および化学物質を特定するためにも用いられる。さらに、回復プログラムは、
目的のタンパク質複合体における所望のタンパク質−タンパク質相互作用と一致
する、データベース中のプロファイルを特定するために用いられる。
【0036】 以下の記載において、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合、あ
るいはタンパク質複合体の構築に関与すると考えられる目的のタンパク質と相互
作用するペプチド試薬をデザインあるいは選択するための、分子モデリング、組
み合わせ化学、およびラショナルドラッグデザインのいくつかの方法が記載され
る。
【0037】 ラショナルドラッグデザインの方法 いくつかの実施形態では、目的のタンパク質の領域と別のタンパク質を比較す
るためにサーチプログラムが用いられる。これにより、タンパク質−タンパク質
相互作用、タンパク質重合、あるいはタンパク質複合体の構築を調節するペプチ
ド試薬を、より効率的に選択およびデザインすることができる。別の実施形態で
は、目的のタンパク質の領域と、ペプチド試薬およびペプチド試薬のプロファイ
ルとを比較するためにサーチプログラムが用いられる。これにより、ペプチド試
薬と目的のタンパク質との相互作用(たとえば、タンパク質−タンパク質相互作
用、タンパク質重合、およびタンパク質複合体の構築の調節)を予測することが
できる。この過程は「ラショナルドラッグデザイン」とよばれる。ラショナルド
ラッグデザインは、五つの異なるソマトスタチン受容体サブタイプに対するHI
Vプロテアーゼ阻害剤およびアゴニストを開発するために、これまでに用いられ
ている(Erickson et al., Science, 249:527-533 (1990)およびBerk et al., S
cience, 282:737 (1998))。
【0038】 一例として、たとえば、目的のタンパク質の、タンパク質重合あるいはタンパ
ク質複合体の構築に必要なタンパク質−タンパク質相互作用にあずかる領域が未
知であるが、関連したタンパク質についてはそのような領域が既知であるとする
。目的のタンパク質またはその断片の、配列またはタンパク質モデルから出発し
て、タンパク質重合あるいはサブユニットの集合に必要なタンパク質−タンパク
質相互作用にあずかる領域が既知である関連のあるいは相同のポリペプチドを迅
速に特定することができる。新たに分かった相同タンパク質におけるタンパク質
−タンパク質相互作用にあずかる既知の領域と目的のタンパク質を比較すること
により、タンパク質−タンパク質相互作用に関与しているらしい、目的のタンパ
ク質のドメインを特定することができ、これらの領域に対応するペプチド試薬を
選択およびデザインすることができる。
【0039】 このように、二次元的なアプローチにより、二つのポリペプチドのアミノ酸の
類似性および位置を比較するために通常用いられる標準的な方法でパーセント配
列同一性を決定できる。BLASTあるいはFASTAのようなコンピュータプ
ログラムを用いて、二つのポリペプチドにおけるそれぞれのアミノ酸の最適マッ
チング(片方または両方の配列の全長にわたるか、片方または両方の配列の予め
決められた部分にわたるかのどちらか)に応じて二つのポリペプチドが整列させ
られる。このようなプログラムには、「デフォルトの」オープニングペナルティ
および「デフォルトの」ギャップペナルティが用意されており、PAM250(
標準的なスコアリング行列;Dayhoff et al., in Atlas of Protein Sequence a
nd Structure, Vol.5, Supp. 3 (1978)を参照)のようなスコアリング行列をコ
ンピュータプログラムと連係して用いることができる。パーセント同一性は下記
のようにして計算することができる。 同一マッチの総数/[一致した範囲のうち長い方の配列の長さ+ 二つの配列を整列させるために長い方の配列に挿入されるギャップの数] ×100
【0040】 目的のタンパク質のタンパク質配列は、タンパク質ベースで既知の配列と比較
される。目的のタンパク質のタンパク質配列は、たとえば、パラメータW=8お
よび最大10マッチを許容する条件でBLASTPを用いてSwissprotリリース
35、PIRリリース53およびGenpeptリリース108といった公開データベ
ースにおいて見つかる既知のアミノ酸配列と比較される。さらに、目的のタンパ
ク質をコードしているタンパク質配列は、パラメータE=0.001の条件でB
LASTXを用いてSwissprotにおいて、見つかる公知のアミノ酸配列と比較さ
れる。いったん関連するポリペプチドのグループが特定されれば、関連するタン
パク質配列に関する入手可能な文献を検討して、一つ以上の関連するタンパク質
を特定でき、そのタンパク質においてタンパク質重合およびタンパク質複合体の
構築を可能にするタンパク質−タンパク質相互作用を決定することができる。 タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合、あるいはタンパク質複合体
の構築に関与している関連タンパク質の領域がわかると、これらの配列は、保存
されているアミノ酸を置換することを考慮して相同性について目的のタンパク質
と比較される。この方法で、目的のタンパク質の以前には未知であった、タンパ
ク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合、およびタンパク質複合体の構築に
関与している領域を決定することができ、この情報はペプチド試薬を選択および
デザインするために用いることができる。
【0041】 さらに、タンパク質重合およびタンパク質複合体の構築に必要なタンパク質−
タンパク質相互作用にあずかる領域が未知である場合、サブユニットの会合に必
要な、タンパク質のドメインを決定するために、変異解析におけるさまざまな手
法を用いることができる。一つの手法は、アラニンスキャンである(Wells, Met
hods in Enzymol., 202:390-411 (1991))。このアプローチにより、目的のタン
パク質中の各々のアミノ酸残基はアラニンによって置換され、一回につき一つの
変異体ができ、そしてタンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合事象を
行う、あるいはタンパク質複合体の構築に関与するタンパク質の能力に対する各
々の変異の効果が測定される。目的のタンパク質の各々のアミノ酸残基はこのよ
うにして解析され、サブユニットの会合および重合に必要な残基を有するタンパ
ク質の領域が特定される。
【0042】 また、タンパク質重合またはタンパク質複合体の構築に必要なタンパク質−タ
ンパク質相互作用を調節するそれ自体の能力によって選択される、標的に特異的
な抗体を単離することや、ペプチド試薬による調節に応答する目的のタンパク質
の領域を特定するためにその結晶構造を解析することも可能である。原則として
、このアプローチによってファーマコア(pharmacore)が得られる。次に行うデザ
インはこのファーマコアに基づいて行うことができる。このアプローチによって
、機能的な、薬理学的に活性な抗体に対する抗イディオタイプ抗体を生成するこ
とにより目的のタンパク質のタンパク質結晶解析を一切回避することができる。
鏡像の鏡像のように、抗イディオタイプ抗体の結合部位は、目的のタンパク質の
領域のアナログであると予想されるであろう。そこで、抗イディオタイプ抗体は
、ペプチド試薬をデザインおよび選択するために用いることができる。
【0043】 さらに、目的のタンパク質の三次元構造は、タンパク質−タンパク質相互作用
、タンパク質重合、あるいはタンパク質複合体の構築に関与しているタンパク質
の領域を特定するために用いることができる。従来、タンパク質の三次元構造は
、多数の方法によって決定されてきた。タンパク質構造を決定する方法でおそら
く最もよく知られているのは、X線結晶解析を用いるものである。この手法の一
般的な総説は、Van Holde, K.E., Physical Biochemistry, Prentice-Hall, N.J
., pp. 221-239 (1971)にある。この手法を用いれば、高精度で三次元構造を解
明することが可能である。さらに、タンパク質の構造は、中性子回折の手法を用
いることによって、あるいは核磁気共鳴(NMR)によって決定してもよい(た
とえば、Moore, W.J., Physical Chemistry, 4th Edition, Prentice-Hall, N.J
. (1972)を参照)。
【0044】 または、コンピュータベースのタンパク質モデリング手法を用いて、タンパク
質モデルを構築することもできる。ある方法によれば、タンパク質フォールディ
ング(折りたたみ)の問題が、既知の三次元タンパク質構造における残基の構造
的環境を表すプロファイル(profile)に最も親和性のある標的配列を見つけるこ
とにより解決される(たとえば、1995年7月25日付けで発行されたEisenb
erg他、米国特許第5,436,850号を参照)。別の手法では、所定のファ
ミリーのタンパク質の既知の三次元構造を重ね合わせて、そのファミリーにおけ
る構造的に保存された領域が明らかにされる。このタンパク質モデリング手法は
また、目的のポリペプチドの構造を近似するために、相同タンパク質の既知の三
次元構造を使用する(たとえば、1996年9月17日付けで発行されたSriniv
asan他、米国特許第5,557,535号を参照)。従来のホモロジーモデリン
グ手法は、プロテアーゼおよび抗体のモデルを構築するために、これまで日常的
に用いられている(Sowdhamini et al., Protein Engineering, 10:207, 215 (1
997))。比較の手法によるアプローチはまた、目的のタンパク質の、鋳型となる
タンパク質との配列同一性が不十分であるときに、三次元タンパク質モデルを生
成するために用いることもできる。いくつかの場合では、配列同一性が非常に弱
いにもかかわらず、タンパク質が類似の三次元構造に折りたたまれる。たとえば
、多数のヘリカルサイトカインの三次元構造は、配列相同性が弱いにもかかわら
ず、類似した三次元トポロジーに折りたたまれる。
【0045】 近年のスレッディング法および「ファジー(fuzzy)」アプローチの発達により
、今では、標的と鋳型との間の構造的関連性が配列レベルで検出できないような
多くの場合においても、予測されるフォールディングパターンおよび機能的タン
パク質ドメインを特定することが可能である。ある方法によると、マルチプルシ
ーケンススレッディング(MST)を用いてフォールドが認識され、そして、低
分解能モデルを構築するディスタンスジオメトリープログラムDRAGONを用
いて、スレッディングの出力から構造的同等性が演繹される。それから、QUA
NTAのような分子モデリングパッケージを用いて、全原子の表示が作成される
【0046】 この三段階のアプローチによれば、まず、候補となる鋳型を新規なフォールド
認識アルゴリズムMSTを用いて特定する。このMSTは、多重アラインメント
された配列を一つ以上の三次元構造上へ同時にスレッディング処理することが可
能である。第二段階では、MSTの出力から得られた構造的同等性を残基間距離
拘束に変換し、二次構造予測から得られた補助情報と一緒に、ディスタンスジオ
メトリープログラムDRAGONへ供給する。このプログラムは距離拘束を無作
為に組み合わせて非常に多くの数の低分解能モデル確認を迅速に生成する。第三
段階では、これらの低分解能モデル確認を全原子モデルに変換し、分子モデリン
グパッケージQUANTAを用いて、エネルギー極小化を行う(たとえば、Aszo
di et al., Proteins: Structure, Function, and Genetics, Supplement 1:38-
42 (1997)を参照)。
【0047】 ある方法では、目的のタンパク質またはタンパク質複合体の三次元構造を、上
述のようにX線結晶解析、NMR、または中性子回折およびコンピュータモデリ
ングによって決定する。また、タンパク質またはタンパク質複合体の有用なモデ
ルをコンピュータモデリングのみにより得ることもできる。タンパク質−タンパ
ク質相互作用、タンパク質重合、およびタンパク質複合体の構築に関与している
タンパク質の領域を特定し、これらの領域に対応するペプチド試薬を選択および
デザインする。それから、候補となるペプチド試薬を製造し、ここに記載された
ペプチド試薬キャラクタリゼーションアッセイにおいて試験する。関連するペプ
チド試薬のライブラリーを合成することができ、そしてこれらの分子をペプチド
試薬キャラクタリゼーションアッセイにおいてスクリーニングする。所望の応答
を生じる化合物を特定し、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録し(た
とえば、一つのプロファイルがつくられる)、そして最適なペプチド試薬を選択
するために、この過程を繰り返す。それぞれの新たに特定されたペプチド試薬、
およびペプチド試薬キャラクタリゼーションアッセイにおけるその試薬の性能を
コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録し、さまざまなペプチド試薬に関
するプロファイルのデータベースまたはライブラリーを生成する。これらのプロ
ファイルは、活性な分子および不活性な分子の間の重要な特性の差異を特定する
ために研究者たちによって用いられる。その結果、ペプチド試薬のライブラリー
(たとえば、複数のペプチド試薬を用いる戦略において用いられる)が、有望な
特性をもつ分子に対して拡充される。
【0048】 さらに、目的のタンパク質またはタンパク質複合体の三次元モデルを第1のデ
ータベースに格納することができる。また、そのタンパク質またはタンパク質複
合体に対応するペプチド試薬およびそれらのプロファイルのライブラリーを第2
のデータベースに格納することができる。そして、ペプチド試薬のプロファイル
によって規定されるパラメータを与えてサーチプログラムを使用することにより
、第1のデータベースのモデルと第2のデータベースのペプチド試薬を比較する
ことができる。次に、回復プログラムを用いることにより、タンパク質−タンパ
ク質相互作用、タンパク質重合、あるいはタンパク質複合体の構築を調節してい
ると予測される一つまたは複数のペプチド試薬を得ることができる。その後、こ
れらのペプチド試薬をペプチド試薬キャラクタリゼーションアッセイにおいてス
クリーニングすることができる。この手法は、ペプチド試薬を迅速に選択および
デザインするために極めて有用となりうるし、ヒト疾患用の治療プロトコルを作
成するために用いることができる。
【0049】 ペプチド試薬を選択およびデザインするために、本発明の実施形態では多くの
コンピュータプログラムおよびデータベースを用いることができる。下記のリス
トは本発明を制限するものではなく、上述したアプローチにおいて有用なプログ
ラムおよびデータベースについての手引きを提供することを企図するものである
。用いることができるプログラムおよびデータベースとしては、MacPattern (EM
BL)、DiscoveryBase (Molecular Applications Group)、GeneMine (Molecular A
pplications Group)、Look (Molecular Applications Group)、MacLook (Molecu
lar Applications Group)、BLASTおよびBLAST2 (NCBI)、BLASTNおよびBLASTX (A
ltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403 (1990))、FASTA (Pearson and Lipman
, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444 (1988))、Catalyst (Molecular Simul
ations Inc.)、Catalyst/SHAPE (Molecular Simulations Inc.)、Cerius2.DBAcc
ess (Molecular Simulations Inc.)、HypoGen (Molecular Simulations Inc.)、
Insight II (Molecular Simulations Inc.)、Discover (Molecular Simulations
Inc.)、CHARMm (Molecular Simulations Inc.)、Felix (Molecular Simulation
s Inc.)、DelPhi (Molecular Simulations Inc.)、QuanteMM (Molecular Simula
tions Inc.)、Homology (Molecular Simulations Inc.)、Modeler (Molecular S
imulations Inc.)、Modeller 4 (Sali and Blundell, J. Mol. Biol. 234:217-2
41 (1997))、ISIS (Molecular Simulations Inc.)、Quanta/Protein Design (Mo
lecular Simulations Inc.)、WebLab (Molecular Simulations Inc.)、WebLab D
iversity Explorer (Molecular Simulations Inc.)、Gene Explorer (Molecular
Simulations Inc.)、SeqFold (Molecular Simulations Inc.)、EMBL/Swissprot
einデータベース、MDL Available Chemicals Directoryデータベース、MDL Drug
Data Reportデータベース、Comprehensive Medicinal Chemistryデータベース
、Derwents's World Drug Indexデータベース、およびBioByteMasterFileデータ
ベースが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。多くの他のプログラ
ムおよびデータベースは、本記載を教示された当業者にとっては自明であるだろ
う。
【0050】 いったんペプチド試薬を選択およびデザインすれば、当業者に周知の多くのア
プローチによってペプチド試薬を製造することができる。さらに、多くの民間企
業が、注文製のペプチド、ペプチドミメティクス、および化学物質の製造を専門
に扱っている。以下の記載は、修飾された小ペプチドの製造についての一般的な
アプローチを提供するものである。
【0051】 ペプチド試薬の入手 本明細書中に記載された修飾された小ペプチドを得るために用いられるアプロ
ーチがこの項で開示される。本明細書中に開示される実験に用いられたいくつか
のトリペプチドは、自動ペプチド合成装置(Syro、Multisyntech、チュービンゲ
ン、ドイツ)によって化学的に合成されたものである。合成は、標準的なプロト
コルに従って、9−フルオレニルメトキシカルボニル(fmoc)で保護された
アミノ酸(Milligen、ベッドフォード、マサチューセッツ州)を用いて行われた
。すべてのペプチドは凍結乾燥された後、適当な濃度でリン酸緩衝生食液(PB
S)に溶解させた。これらのペプチドは、PepS-15 C18カラム(Pharmacia、ウプ
サラ、スウェーデン)を用いて逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HP
LC)によって分析された。
【0052】 多くの実施形態において、ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基を有
するペプチド(「修飾されたペプチド」)を用いた。いくつかの場合では、修飾
されたペプチドを、ペプチドの末端カルボキシル基に通常存在する水酸基残基を
アミノ基で置換することによって作製した。すなわち、末端のCOOHの代わり
にCO−NH2を有するペプチドを合成した。たとえば、好ましい小ペプチドと
して、グリシル−リシル−グリシンアミド(GKG−NH2)、シスチル―グル
タミニル―グリシンアミド(CQG−NH2)、グリシル−プロリル−グリシン
アミド(GPG−NH2)、アルギニル−グルタミニル−グリシンアミド(RQ
G−NH2)、リシル−グルタミニル−グリシンアミド(KQG−NH2)、アラ
ニル−ロイシル−グリシンアミド(ALG−NH2)、グリシル−バリル−グリ
シンアミド(GVG−NH2)、バリル−グリシル−グリシンアミド(VGG−
NH2)、アラニル−セリル−グリシンアミド(ASG−NH2)、セリル−ロイ
シル−グリシンアミド(SLG−NH2)、およびセリル−プロリル−トレオニ
ンアミド(SPT−NH2)が挙げられる。合成したものに加えて、GKG−N
2、CQG−NH2、およびGPG−NH2を含む(ただし、これらに限定され
るわけではない)多くのトリペプチドは、スイスのBachem AGから購入もした。
【0053】 小ペプチドを合成する方法は数多く存在する。以上の記載は、本明細書中に開
示される修飾された小ペプチドの実施形態を得るための一つのありうる方法とし
て挙げたものである。本明細書中に記載された小ペプチドに類似したペプチドミ
メティクスをつくるためのいくつかのアプローチは当業者に周知である。大量の
数の方法を、たとえば、米国特許第5,288,707号、第5,552,53
4号、第5,811,515号、第5,817,626号、第5,817,87
9号、第5,821,231号、および第5,874,529号において見つけ
ることができる。これらは全体としてこの参照により本明細書中に開示として含
まれる。
【0054】 ペプチド試薬を選択、デザイン、および製造した後、タンパク質−タンパク質
相互作用および/またはタンパク質重合および/またはタンパク質複合体の構築
を調節する、そのペプチド試薬の能力を決定するために、一つ以上のペプチドキ
ャラクタリゼーションアッセイにおいて、そのペプチド試薬は試験される。ペプ
チドキャラクタリゼーションアッセイは、たとえば、目的のタンパク質に結合す
る能力、タンパク質重合またはタンパク質複合体の構築を調節する能力、および
疾患を予防する能力といったペプチド試薬の能力を評価することができる。生物
工学的手段や薬剤に組み込むためのペプチド試薬を特定するためのペプチドキャ
ラクタリゼーションアッセイの使用について、詳細な実施例および応用例を参照
して以下に記載される。これらの実施例および応用例は、本発明の範囲を記載さ
れた特定の実施形態に限定するためのものではない。なぜなら、本明細書中に記
載された技術は、いくつかの別のタンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質
重合事象、およびタンパク質複合体の構築を調節するために用いることができる
からである。
【0055】 以下においては、転写活性化因子NFκBの二量体化を阻害するためのPPI
テクノロジーの使用に関する記載を提供する。
【0056】 転写活性化因子の二量体化の阻害 転写因子のrel/NFκBファミリーのメンバーは、感染に対抗したり細胞
ストレスに対して反応したりするのに必要な細胞応答のような、迅速な細胞応答
の調節においてきわめて重大な役割を演じている。タンパク質のこのファミリー
のメンバーは、二量体化に対する異なる親和性を有するホモ二量体およびヘテロ
二量体を形成する。これらはrel相同領域(RHR)として知られる構造モチ
ーフを共有する。RHRのC末端側三分の一はタンパク質の二量体化に影響する
(Huang et al., Structure 5:1427-1436 (1997))。rel/NFκBファミリ
ーのメンバーであるp50およびp65のDNA結合ホモ二量体型の結晶構造が
これまでに解明されている。これらの構造により、p50およびp65の両方の
二量体化領域からの残基がDNA結合に参加していること、およびDNA−タン
パク質およびタンパク質二量体化の表面が一つの連続的に重複した界面を形成し
ていることが示された(Huang et al., Structure 5:1427-1436 (1997))。さら
に、2.2Åおよび2.0Åの分解能でのマウスのp50およびp65の二量体
化領域の結晶構造が解明されており、これら二つの構造を比較した結果、保存さ
れたアミノ酸の三つの位置での変化がこれらの二量体の界面における差異の原因
であることがわかった。マウスのp50の254、267、および307に対応
する位置のアミノ酸は、観測された二量体化親和性における差異に対する主たる
決定因子として機能する(Huang et al., Structure 5:1427-1436 (1997))。
【0057】 上記の研究結果は、NFκBの二量体化を調節するペプチド試薬を選択および
デザインするために用いることができる。マウスのp50の結晶構造は、p50
のアミノ酸残基254、267、および307がNFκBの二量体化に関与して
いることを確定するために用いられた。これらのアミノ酸残基を包含している重
複配列に対応するペプチド試薬をデザインし、製造し、そしてペプチド試薬キャ
ラクタリゼーションアッセイにおいてスクリーニングした。さらに、マウスのp
50モデルは、アミノ酸残基254、267、および307に対応するタンパク
質の領域を識別するために、ヒトのp50モデルと比較することができる。マウ
スとヒトとのNFκBp50タンパク質の相同性の程度は高いので、アミノ酸残
基254、267、および307またはこれらの部位に近いアミノ酸は、ヒトの
NFκBの二量体化に必要らしい。さらに、ペプチド試薬をp50およびp65
の別の領域に対して選択およびデザインすることができる。好ましいペプチド試
薬はrel相同領域(RHR)のC末端側の末端に見つかった配列に対応する。
RHRはタンパク質の二量体化に影響する(Huang et al., Structure 5:1427-1
436 (1997))。
【0058】 いったんp50およびp65の領域に対応するペプチド試薬が選択、デザイン
、および製造されれば、これらの試薬をペプチド試薬キャラクタリゼーションア
ッセイにおいてスクリーニングすることができる。はじめにバインディングアッ
セイを行う。ある方法によると、p50、p65、またはp105二量体を、1
0,000mwカットオフの透析膜(たとえば、Slide-A-Lyzer、Pierce)中に
配置する。または、目的のタンパク質を支持体(たとえば、アフィニティクロマ
トグラフィー樹脂またはマイクロタイタープレートのウェル)上に固定する。放
射性標識したペプチド試薬を適当な緩衝液に加えて、結合反応を4℃で一晩行わ
せる。ペプチド試薬は、標準的な手法に従って、125Iまたは14Cで放射性標識
することができるし、あるいは別の検出可能なシグナルで標識することができる
。結合反応が起こった後に、ペプチド試薬を含む緩衝液を除去し、そしてタンパ
ク質が結合した支持体を放射性標識されたペプチド試薬を含まない緩衝液によっ
て洗浄するか、あるいは目的のタンパク質を有する透析膜を放射性標識されたペ
プチド試薬を含まない緩衝液中において4℃で二時間透析する。その後、支持体
上のタンパク質に結合した放射能または透析したタンパク質中に存在する放射能
をシンチレーションによって測定する。このようにして、p50、p65、また
はp105に結合するペプチド試薬を迅速に特定することができる。当業者にと
っては自明であろうように、たとえば、目的のタンパク質をマイクロタイタープ
レートに結合させ、蛍光標識したペプチド試薬の結合をスクリーニングすること
によるハイスループット分析(high throughput analysis)に容易に敏感に反応す
る上述のような特定のバインディングアッセイにおいて、これらのバインディン
グアッセイを改変したものも用いることができる。
【0059】 一つ以上のペプチド試薬の結合を決定した後、NFκBの二量体化を調節する
ペプチド試薬の能力を評価するアッセイを行う。そのようなアッセイの一つに、
ゲルシフトアッセイ(gel-shift assay)(たとえば、Haskill他、米国特許第5,
846,714号を参照)がある。NFκB二量体は、TGGGGATTCCC
CA(配列表の配列番号1)という配列を有する特異的な調節DNAエンハンサ
ーに結合する。そして、この配列を有する放射性標識(たとえば32P)されたオ
リゴヌクレオチドを用いて、NFκBおよびそのオリゴヌクレオチドの複合体を
低いパーセント濃度の無変性のポリアクリルアミドゲル中において解析すること
ができる。
【0060】 よって、NFκBの二量体化を阻害するペプチド試薬の能力を評価するゲルシ
フトアッセイは、次のように行なわれる。NFκBエンハンサー配列を有するオ
リゴヌクレオチドを従来のアプローチによって放射性標識する。これらのオリゴ
ヌクレオチドを、さまざまな濃度の候補となるペプチド試薬およびNFκBを有
する核抽出物の存在下、23℃で15分間インキュベートする。典型的な結合条
件としては、10μgの核抽出物、10,000cpmのオリゴヌクレオチドプ
ローブ、10mMのトリス、pH7.7、50mMのNaCl、0.5mMのED
TA、1mMのDTT、2μgのpoly dI-dCおよび最終体積が20μlの10%グ
リセロールが挙げられる。核抽出物を含むNFκBは、さまざまな種類の細胞か
ら得ることができるが、好ましくは分裂促進因子およびホルボールエステルに誘
導されるJurkatT細胞から得られるものである。結合後、複合体を、トリス/グ
リシン/EDTA緩衝液(Baldwin, DNA & Protein Eng. Tech. 2:73-76 (1990) に
記載されている)中でつくられた5%無変性ポリアクリルアミドゲル上で解析す
る。電気泳動を20mAで2時間行い、次に−70℃で一晩そのゲルについてオ
ートラジオグラフィーを行う。標識したオリゴヌクレオチドに結合したNFκB
の二量体複合体は、電気泳動後に複合体と結合したままになっているいかなる単
量体(p50またはp65)からでも解析することができるので、NFκBの二
量体化を阻害するペプチド試薬の能力を迅速に決定することができる。好ましく
は、NFκB二量体の形成を十分に阻害する量を見いだすために、異なるペプチ
ド試薬の濃度を、いくつかの実験を通じて滴定する。
【0061】 さらに、NFκBレポーターコンストラクト(reporter construct)を移入させ
た細胞をさまざまな濃度のペプチド試薬で処理することにより、細胞におけるN
FκBによる転写活性化を阻害するペプチド試薬の候補の能力を決定することが
できる。NFκBレポーターコンストラクトは、たとえば、最小プロモーターお
よびレポーター分子(たとえば、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチ
ルトランスフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)に結合した三つ以上のエン
ハンサー配列(たとえば、TGGGGATTCCCCA(配列表の配列番号1)
)からなる。このようなレポーターコンストラクトは、分子生物学における手法
を用いて作製することができる。好ましくは、レポーターコンストラクトを、Ju
rkat細胞のような、分裂促進因子およびホルボールエステルでの刺激により多量
のNFκBを産生することができる細胞系に移入する。候補となるペプチド試薬
は、さまざまな濃度のペプチド試薬の存在下で培養した細胞にレポーターコンス
トラクトを移入することによってスクリーニングすることができる。未処理の対
照細胞において検出したレポーターシグナルのレベルをペプチド試薬で処理した
細胞のものと比較することにより、NFκBに媒介された転写活性化を阻害する
特定のペプチド試薬の能力を決定することができる。好ましくは、マウスp50
の254、267、および307に対応する位置のアミノ酸およびrel相同領
域のC末端部の別のアミノ酸からなるペプチド試薬を、上述の手法を用いて選択
、デザイン、製造、およびアッセイを行う。この方法では、NFκBによる活性
化を阻害するペプチド試薬を、NFκB関連疾患の治療および/または予防用の
薬剤に含めるために特定することができる。
【0062】 以下においては、NFκBのIκB抑制因子との会合を阻害するためのPPI
テクノロジーの使用に関する記載を提供する。
【0063】 転写抑制因子複合体の阻害 転写抑制因子複合体の阻害もまた、PPIテクノロジーを用いてなしとげるこ
とができる。たとえば、NFκB/IκB複合体を安定化させるタンパク質−タ
ンパク質相互作用に関与しているNFκBおよびIκBの配列に対応するペプチ
ド試薬を選択、デザイン、製造することができ、およびNFκB/IκB複合体
の構築を効果的に調節するペプチド試薬を特定するために、ペプチドキャラクタ
リゼーションアッセイにおいてスクリーニングすることができる。
【0064】 よって、ペプチド試薬は、NFκB/IκB複合体の安定化に関与しているこ
とを示された配列に対応するために選択およびデザインされる。アンキリン反復
(ankyrin-repeat)を含むドメインおよびカルボキシル末端の酸性tail/PEST配
列は、105kDaのNFκBヘテロ二量体への結合に関与していることがわか
ったIκBの領域である(Latimer et al., Mol. Cell Biol., 18:2640 (1998)
およびMalek et al., J. Biol. Chem., 273:25427 (1998))。さらに、NFκB
の核局在配列、二量体化ドメイン、およびアミノ末端DNA結合ドメインは、N
FκB/IκB複合体を安定化させるようにIκBと相互作用する(Malek et a
l., J. Biol. Chem., 273:25427 (1998))。これらの領域に対応するペプチド試
薬が選択、デザイン、および製造される。
【0065】 次に、候補となるペプチド試薬が、NFκBまたはIκBに結合する能力、N
FκB/IκB複合体の形成を阻害する能力、およびIκBに媒介された転写抑
制を阻害する能力といったペプチド試薬の能力を評価するペプチドキャラクタリ
ゼーションアッセイにおいてスクリーニングされる。NFκBかIκBのどちら
かに結合するペプチド試薬の能力を評価するために、試験管内でのバインディン
グアッセイを行う。先に述べたように、当業者に周知の試験管内でのバインディ
ングアッセイにはいくつかの種類があり、望ましいアプローチとしては、支持体
上にあるいは透析膜中に配置されたNFκBまたはIκBタンパク質への放射性
標識したペプチド試薬の結合が関わっているものである。ある方法によると、N
FκBまたはIκBタンパク質は、10,000mwカットオフの透析膜(たと
えば、Slide-A-Lyzer、Pierce)中に配置される。または、目的のタンパク質を
支持体(たとえば、アフィニティクロマトグラフィー樹脂またはマイクロタイタ
ープレートのウェル)上に固定する。次に、放射性標識したペプチド試薬を適当
な緩衝液に加えて、結合反応を4℃で一晩行わせる。ペプチド試薬は、標準的な
手法に従って、125Iまたは14Cで放射性標識することができるし、あるいは別
の検出可能なシグナルで標識することができる。結合反応が起こった後に、ペプ
チド試薬を含む緩衝液を除去し、そしてタンパク質が結合した支持体を放射性標
識されたペプチド試薬を含まない緩衝液によって洗浄するか、あるいは目的のタ
ンパク質を有する透析膜を放射性標識されたペプチド試薬を含まない緩衝液中に
おいて4℃で二時間透析する。その後、支持体上のタンパク質に結合した放射能
または透析したタンパク質中に存在する放射能をシンチレーションによって測定
する。このようにして、NFκBまたはIκBに結合するペプチド試薬を迅速に
特定することができる。当業者にとっては自明であるように、たとえば、目的の
タンパク質をマイクロタイタープレートに結合させ、蛍光標識したペプチド試薬
の結合をスクリーニングすることによるハイスループット分析に容易に敏感に反
応する上述のような特定のバインディングアッセイにおいて、これらのバインデ
ィングアッセイを改変したものも用いることができる。
【0066】 一つ以上のペプチド試薬の結合を決定した後、NFκB/IκB複合体の構築
を阻害するペプチド試薬の能力を評価するアッセイが用いられる。そのようなア
ッセイの一つに、ゲルシフトアッセイ(たとえば、Haskill他、米国特許第5,
846,714号を参照)がある。NFκB二量体は、TGGGGATTCCC
CAという配列を有する特異的な調節DNAエンハンサーに結合する。そして、
この配列を有する放射性標識(たとえば32P)されたオリゴヌクレオチドを用い
て、NFκBおよびそのオリゴヌクレオチドの複合体を低いパーセント濃度の無
変性のポリアクリルアミドゲル中において解析することができる。
【0067】 よって、NFκB/IκB複合体の構築を阻害するペプチド試薬の能力を評価
するゲルシフトアッセイは、次のように行われる。NFκBエンハンサー配列を
有するオリゴヌクレオチドを従来のアプローチによって放射性標識する。これら
のオリゴヌクレオチドを、さまざまな濃度の候補となるペプチド試薬ならびにN
FκBおよびIκBを有する核抽出物の存在下、23℃で15分間インキュベー
トする。典型的な結合条件としては、10μgの核抽出物、10,000cpm
のオリゴヌクレオチドプローブ、10mMのトリス、pH7.7、50mMのN
aCl、0.5mMのEDTA、1mMのDTT、2μgのpoly dI-dCおよび最終体
積が20μlの10%グリセロールが挙げられる。核抽出物を含むNFκBおよ
びIκBは、さまざまな種類の細胞から得ることができるが、好ましくは分裂促
進因子およびホルボールエステルに誘導されるJurkatT細胞から得られるもので
ある。結合後、複合体を、トリス/グリシン/EDTA緩衝液(Baldwin, DNA & Pro
tein Eng. Tech. 2:73-76 (1990) に記載されている)中でつくられた5%無変
性ポリアクリルアミドゲル上で解析する。電気泳動を20mAで2時間行い、次
に−70℃で一晩ゲルによるオートラジオグラフィーを行う。標識したオリゴヌ
クレオチドに結合したNFκBの二量体複合体は、電気泳動後にゲル上で解析す
ることができるし、NFκB/IκB複合体はエンハンサーに結合できないので
、NFκB/IκB複合体の形成を妨げるか防止するペプチド試薬の能力を迅速
に決定することができる。好ましくは、NFκB/IκBの集合を十分に阻害す
る量を見いだすために、異なるペプチド試薬の濃度を、いくつかの実験を通じて
滴定する。NFκB/IκB複合体の会合を防止するNFκBまたはIκBの領
域に対応するペプチド試薬は、NFκBに結合した放射性標識したオリゴヌクレ
オチドからなるゲル化遅延生成物として検出されるが、NFκB/IκB複合体
を分裂させることができないペプチド試薬は電気泳動度移動アッセイによって解
析できない。
【0068】 さらに、NFκBレポーターコンストラクトを移入させた細胞をさまざまな濃
度のペプチド試薬で処理することにより、細胞におけるIκBに媒介された転写
抑制を阻害するペプチド試薬の候補の能力を決定することができる。NFκBレ
ポーターコンストラクトは、たとえば、最小プロモーターおよびレポーター分子
(たとえば、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラー
ゼ、または緑色蛍光タンパク質)に結合した三つ以上のエンハンサー配列(たと
えば、TGGGGATTCCCCA)からなる。このようなレポーターコンスト
ラクトは、分子生物学における手法を用いて作製することができる。好ましくは
、レポーターコンストラクトを、IκBを有する細胞系で、Jurkat細胞のような
、分裂促進因子およびホルボールエステルでの刺激により多量のNFκBを産生
することができる細胞系に移入する。候補となるペプチド試薬は、さまざまな濃
度のペプチド試薬の存在下で培養した細胞にレポーターコンストラクトを移入す
ることによってスクリーニングすることができる。未処理の対照細胞において検
出したレポーターシグナルのレベルをペプチド試薬で処理した細胞のものと比較
することにより、IκBに媒介された転写抑制を阻害する特定のペプチド試薬の
能力を決定することができる。NFκB/IκB複合体の会合を防止するNFκ
BまたはIκBの領域に対応するペプチド試薬は、このアッセイにおいて転写の
増加を示すだろう。ところが、NFκB/IκB複合体を分裂させることができ
ないペプチド試薬は、たとえあったとしてもほとんど転写はないだろう。この方
法では、NFκB/IκB複合体を分裂させるペプチド試薬を、NFκB関連疾
患の治療および/または予防用の薬剤に含めるために特定することができる。
【0069】 以下においては、本発明者は、細菌ホロ毒素の構築に必要な細菌毒素タンパ
ク質重合を阻害するための修飾された小ペプチドの製造、同定、および使用につ
いて述べる。
【0070】 細菌毒素の毒性の阻害 いくつかの細菌毒素は、重合したタンパク質からなる超分子構造を有している
。たとえば、Bordetella Pertussisは105kDaの外毒素を有している。この
毒素は百日咳毒素とよばれ、百日咳、すなわち幼児や小児の感染性の高い呼吸器
疾患をひきおこす。百日咳毒素は、五つのポリペプチドサブユニット(S1から
S5)からなり、これらのサブユニットは、いくつかの細菌毒素に典型的なA−
B構造に配置されている(たとえば、Read他、米国特許第5,856,122号
を参照)。S2、S3、S4(二個)およびS5サブユニットは五量体(Bオリ
ゴマー)を形成する。この五量体はS1サブユニットと結合するとホロ毒素を形
成する。S1は、ADP−リボシルトランスフェラーゼおよびNAD−グリコヒ
ドロラーゼ活性を有する酵素である。S1の活性が、百日咳毒素(PT)の毒性
の主な原因である。
【0071】 Bオリゴマーは、標的細胞へのホロ毒素の結合を媒介し、Aプロトマーの侵入
を促進する。この基本構造体の機能は宿主細胞の受容体へ結合することおよびS
1サブユニットが細胞膜を透過することを可能にすることにある(Armstrong an
d Peppler, Infection & Immun. 55:1294 (1987))。百日咳毒素は、たとえば、
S2サブユニットのAsn−105およびS3サブユニットのLys−105を
欠失させるか、S3のTyr−82残基を置換することにより、細胞へ結合する
性質を改変することによって無毒化することができる(Lobet et al., J. Exp.
Med. 177:79-87 (1993)およびLoosmore et al., Infect. Immun. 61:2316-2324
(1993))。百日咳毒素の三次元構造は、ジフテリア毒素、コレラ毒素、シュード
モナスA型外毒素、大腸菌の熱に不安定な毒素、およびベロ毒素1型を含む、P
Tとの機能的および/または構造的類似性を共有している多くの他の細菌毒素と
同様である(Read他、米国特許第5,856,122号、Choe et al., Nature
357:216-222 (1992)、Allured et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:1320-1
324 (1986)、Brandhuber et al., Proteins 3:146-154 (1988)、Sixma et al.,
J. Mol. Biol. 230:8990-9180 (1993)、Sixma et al., Biochemistry 32:191-19
8 (1993)、およびStein et al., Nature 355:748-750 (1992))。この三次元情
報およびこれらの細菌毒素のポリペプチドをコードしているアミノ酸配列は、細
菌毒素のサブユニットの重合を阻害することにより細菌毒素のホロ毒素の形成を
阻害するペプチド試薬をデザインおよび製造するために用いることができる。
【0072】 ある方法によると、百日咳毒素の三次元モデルは、小ペプチドによる阻害を受
ける、タンパク質−タンパク質相互作用が働く領域を選択するために使用される
。このような領域の一つは、S1のC末端(228から235)と、S1とB−
オリゴマーとの間の埋もれた表面の28%を占めるB−オリゴマーの細孔との間
における相互作用に関与している。そこで、ある実施形態には、B−オリゴマー
と相互作用するS1の領域に対応する配列を有するペプチド試薬(たとえば、S
1の重複配列(228から235)に対応する小ペプチド)が含まれる。同様に
、S1とB−オリゴマーとの間の埋もれた表面の28%を占めるS2、S3、S
4、およびS5の領域は、ホロ毒素の形成を阻害するペプチド試薬を選択および
デザインするために用いられる。
【0073】 PTの二量体化は標的細胞に結合する際において機能的に重要であるので、タ
ンパク質重合に必要なタンパク質−タンパク質相互作用にあずかる領域に対応す
るペプチド試薬を用いてこの二量体化過程を妨げることにより、ホロ毒素を不活
性化する方法を得ることができる。S2のいくつかの残基は、二量体化を促進す
る非反復アミノ酸決定因子を含んでいる(Read他、米国特許第5,856,12
2号)。Glu−68、Asp−81、Leu−82、およびLys−83のS
2の残基は、S3においては保存されていないが、PTの二量体化の原因である
と予測される。さらに、82および83のアミノ酸残基はまた、複合糖質の結合
において重要である。S2およびS4サブユニットの別の領域、たとえばS2の
Trp−52およびS4のAsp−1、Tyr−4、Thr−88、およびPr
o−93の残基は、S2およびS4サブユニットの重合を媒介するタンパク質−
タンパク質相互作用に関与していると考えられる。ホロ毒素の構築に関与してい
る毒素のサブユニットの領域に対応するペプチド試薬が、選択、デザイン、およ
び製造される。同様にして、ジフテリア毒素、シュードモナスA型外毒素、大腸
菌の熱に不安定な毒素、およびベロ毒素1型のような他の細菌毒素の重合を阻害
するペプチド試薬を選択、デザイン、および製造することができる。
【0074】 次に、候補となるペプチド試薬が、毒素のサブユニットタンパク質に結合する
能力、ホロ毒素の形成を阻害する能力、およびホロ毒素の毒作用を阻害する能力
といったペプチド試薬の能力を評価するペプチドキャラクタリゼーションアッセ
イにおいてスクリーニングされる。PTのホロ毒素またはホロ毒素を構成する個
々のタンパク質に結合するペプチド試薬の能力を評価するために、試験管内での
バインディングアッセイを行う。先に述べたように、当業者に周知の試験管内で
のバインディングアッセイにはいくつかの種類があり、好ましいアプローチとし
ては、PTタンパク質または透析膜中に配置されたホロ毒素への放射性標識した
ペプチド試薬の結合が関与するものである。ある方法によると、PTタンパク質
またはホロ毒素は、10,000mwカットオフの透析膜(たとえば、Slide-A-
Lyzer、Pierce)中に配置される。次に、放射性標識したペプチド試薬を適当な
緩衝液に加えて、結合反応を4℃で一晩行わせる。ペプチド試薬は、標準的な手
法に従って、125Iまたは14Cで放射性標識することができるし、あるいは別の
検出可能なシグナルで標識することができる。結合反応が起こった後に、ペプチ
ド試薬を含む緩衝液を除去し、目的のタンパク質を有する透析膜を放射性標識さ
れたペプチド試薬を含まない緩衝液中において4℃で二時間透析する。その後、
透析したタンパク質中に存在する放射能をシンチレーションによって測定する。
このようにして、PTタンパク質またはホロ毒素に結合するペプチド試薬を迅速
に特定することができる。当業者にとっては自明であるように、たとえば、PT
タンパク質またはホロ毒素をマイクロタイタープレートに結合させ、蛍光標識し
たペプチド試薬の結合をスクリーニングすることによるハイスループット分析に
容易に敏感に反応する上述のような特定のバインディングアッセイにおいて、こ
れらのバインディングアッセイを改変したものも用いることができる。
【0075】 PTタンパク質またはホロ毒素に結合するペプチド試薬を特定した後、ホロ毒
素を分裂させるペプチド試薬の能力を評価するアッセイを行う。そのようなアッ
セイのいくつかは当業者に周知である。Headらは、PTホロ毒素をPTサブユニ
ットに分裂させるペプチド試薬の能力を決定するために容易に用いることができ
るアプローチを提供している(Head et al., J. Biol. Chem. 266:3617 (1991)
)。これによると、いくつかの実験においては、精製したPT(List Biologica
l Laboratories, Inc.から入手できる)を、ペプチド試薬と共に4℃で2時間イ
ンキュベートする。別の実験においては、精製したPTをまず解離緩衝液におい
て解離させ、次にペプチド試薬の存在下で生理的緩衝液に戻し、その後、4℃で
2時間結合させる。ホロ毒素を解離する条件下に戻すために、解離緩衝液(6M
の尿素、0.1MのNaCl、0.1Mのプロピオン酸、pH4)を滴下して加
え、そして毒素を、撹拌せずに4℃で1時間インキュベートする(Ito et al.,
Microb. Pathog., 5, 189-195 (1988))。もし解離を少量(たとえば、25μl
)で行い、解離したサブユニットが、所望の濃度のペプチド試薬を含む多量の生
理的緩衝液(たとえば、975μl)中に再懸濁する場合、ホロ毒素の形成およ
びペプチド試薬の結合を促進する条件を迅速に元に戻すことができる。適当な生
理的結合緩衝液は、pH7.4、50mMのトリス緩衝生食液(TBS)である
【0076】 結合反応後、ホロ毒素を、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によっ
て解離した複合体から分析する。約1mgのサブユニットまたはホロ毒素(1m
l中)を含む結合反応物を、pH7.4、50mMのトリス緩衝生食液(TBS
)を用いて1.0ml/分の流速で予め平衡化させたTSK-G2000SW HPLCのゲル濾
過カラムに注入する。次に、λ=280nmの吸光度でピークを測定し、そして
画分を採取する。精製したPTは、約12−15分の保持時間で単一ピークとし
て移動する。解離したサブユニットは、AサブユニットとBサブユニットを表す
二つのピークを有するプロファイルを与える。PTホロ毒素を分裂させるかある
いはホロ毒素の構築を防止するペプチド試薬が、上記のアッセイにおける二つの
ピークの出現によって特定される。好ましくは、PTホロ毒素の構築を十分に妨
げるか防止する量を見いだすために、異なるペプチド試薬の濃度を、いくつかの
実験を通じて滴定する。
【0077】 いったんPTホロ毒素の構築を妨げるか防止するペプチド試薬が特定されれば
、PTの毒作用を阻害するそのような分子の能力が、細胞ベースまたは動物ベー
スの系において評価される。ある細胞ベースのアッセイは、チャイニーズハムス
ター卵巣(CHO)培養細胞に対するPTの作用を分析する。CHO細胞アッセ
イは、本来Hewlett他によって記載されたように行う(Hewlett et al., Infect.
Immun., 40:1198 (1983))。CHO細胞は、10%ウシ胎児血清およびさまざ
まな濃度のペプチド試薬を含むHam F-12(GIBCO Laboratories, Grand Island,
N.Y.)培地において5%CO2雰囲気下で培養および維持される。一連のPTの
二倍希釈物を、Ham F-12培地において調製する。10μlの量の毒素をCHO細
胞に加え、20時間後に、それらをマイクロタイターのウェルに入れる。さらに
24時間インキュベートした後、毒の投与に関連した特徴的な成長パターンがあ
るかどうかCHO細胞を観察する。すなわち、隙間のない凝集塊として成長して
いる丸くて平たい細胞を観察する。対照として、ペプチド試薬で処理した細胞は
(毒を投与されなかった対照細胞のように)、細長い細胞の単一層を示す。
【0078】 別のアプローチによれば、PTの毒性を妨げるペプチド試薬の能力を評価する
ために動物ベースの研究を行う。百日咳毒素のサブユニットの配列に対応する小
ペプチドの効力を同定するための動物ベースの免疫性試験は、以下のようにして
行うことができる。第ゼロ日目に、タコニックマウス(15から17g)の腹膜
内に、0.5mlの修飾された小ペプチドを、小ペプチドの血中濃度が100μ
Mから300μMになるように三回にわけて注射する。それぞれの投与量を10
匹のマウスに注入する。第2日目に、標準投与量のB. pertussisを大脳内に注射
して、これらのマウスの免疫性試験を行う。試験の有効性を確保するために、対
照のマウスにも同時に注射する。試験の三日後から、死亡した動物の数を最長第
28日目まで毎日記録する。第28日目に、麻痺したマウスおよび脳水腫のある
マウスも死亡したものとして記録する。結果はLD50として記録される。LD50 とは、半数のマウスが死亡する投与量である。この実験の結果は、小ペプチドで
処理したマウスのLD50が未処理のマウスのそれより大きいこと、およびこのよ
うに修飾された小ペプチドで処理すると疾患から保護されるということを示すだ
ろう。このようにして特定されたペプチド試薬は、PTの毒作用に対する治療お
よび予防用の薬剤に含めることができる。さらに、上記のアプローチを用いるこ
とによって、たとえばジフテリア毒素、シュードモナスA型外毒素、大腸菌の熱
に不安定な毒素、コレラ毒素、ならびにベロ毒素1型およびベロ毒素2型のよう
な他の細菌毒素の構築を妨げるか防止するペプチド試薬を選択、デザイン、製造
、およびペプチドキャラクタリゼーションアッセイに従ってスクリーニングする
ことができる。
【0079】 別の実施形態では、以下に開示するように、アルツハイマー病やプリオン病の
ような神経変性性疾患の罹患と関連している超分子構造体の形成に関与している
タンパク質(たとえば、アクチンおよびβ−アミロイドペプチド)の重合を阻害
するために、修飾された小ペプチドが製造、同定、および使用される。
【0080】 アクチンおよびβ−アミロイドペプチドの重合の阻害 ペプチド試薬はまた、アルツハイマー病(AD)やプリオン病のような、繊維
状タンパク質の構築異常と関連する疾患の罹患に関与しているタンパク質の重合
を阻害または防止するためにも用いることができる。ADのように、ヒトプリオ
ン病、クロイツフェルト・ヤコブ病およびゲルストマン−ストロイスラー−シャ
インカー病は、ゆっくりした神経変性の始まりを特徴とする。これらの疾患にお
ける脳の病理学的所見はADのそれに類似しており、ひとつの正常細胞タンパク
質であるプリオンタンパク質(PrP)(ADと関係のあるβ−アミロイドペプ
チドではなく)の凝集を同様に特徴とする(Baker and Ridley, Neurodegenerat
ion, 1:3-16 (1992)、(Prusiner, N. Engl. J. Med. 310:661-663 (1984))、
および(Prusiner, Science 252:1515-1522 (1991)))。
【0081】 スクレーピーの感染性病原体は、通常律速的であるアミロイドの形成における
段階を加速することによって機能するものと考えられている(Griffith, Nature
215:1043-1044 (1967)および(Prusiner, Science 252:1515-1522 (1991)))
。この段階、すなわち規則正しい核の形成は、核形成に依存した重合の決定的な
特徴であり、ヒトプリオン病やADにおけるアミロイドの形成と作用機序的に関
連がある(Jarret and Lansbury, Cell 73:1055-1058 (1993))と多くの人が考
えている。このように、アミロイドの形成のシードを壊すことが、スクレーピー
の伝染やADの罹患を治療または予防するためのアプローチとなりうる。
【0082】 核形成に依存したタンパク質重合は、タンパク質結晶化、微小管の構築、鞭毛
の構築、鎌状赤血球のヘモグロビンフィブリルの形成、バクテリオファージのプ
ロキャプシドの構築、およびアクチンの重合を含む、明確な特徴のあるプロセス
を説明する。ある解釈によると、核形成には、熱力学的に不利な(Kg<<1)
一連の会合段階が必要である。なぜなら、結果として生ずる分子間相互作用は会
合によるエントロピーの増大にまさるものではないからである(Chothia and Ja
nin, Nature 256:705 (1975))。いったん核が形成されると、単量体のさらなる
付加は熱力学的に有利(Kg>>1)になる。単量体は成長しつつある多量体に
複数の部位で接触し、その結果として急速な重合/成長がもたらされるからであ
る。すなわち、過飽和のレベルが低いときには核形成は律速的である。したがっ
て、動力学的に可溶な過飽和溶液にシードまたは予め形成された核を加えると、
結果として即座に重合することになる。しかし、重合を可能にするタンパク質−
タンパク質相互作用に必要なシードの領域を決定することによって、ペプチド試
薬をこれらの領域に対して選択およびデザインすることができ、そして「シード
の形成(seeding)」または重合を阻害または防止する能力に応じて特定すること
ができる。このようなペプチド試薬は薬剤に含めることができるし、ADやプリ
オン病のような神経変性性疾患の治療および予防のために投与することができる
。天然のβ−アミロイドペプチドの凝集を阻害するために、ビオチンや他の環状
および複素環式化合物ならびに類似した立体[バルク(bulk)」を有する他の化合
物のような修飾基に結合した6個から60個のアミノ酸残基を有するβ−アミロ
イドペプチドを用いることが、これまでに報告されている(米国特許第5,81
7,626号)。
【0083】 病理学的には、アルツハイマー病(AD)は患者の脳に特徴的な病変が存在す
ることを特徴とする。これらの脳の病変には、神経原繊維錯綜(NFTs)とよ
ばれる異常な細胞間フィラメント、および老人斑あるいはアミロイド斑における
アミロイド産生タンパク質の細胞外沈着が含まれる。アミロイド斑の主要なタン
パク質構成成分は、β−アミロイドペプチドとよばれる4kDaのペプチド(ア
ミノ酸数40から42)としてこれまでに特定されている(Glenner et al., Bi
ochem. Biophys. Res. Commun. 120:885-890 (1984)およびMasters et al., Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA 82:4245-4249 (1985))。β−アミロイドペプチドの
広汎性の沈着は、正常な成人の脳においてしばしば観察されるものであるが、A
Dの脳組織は、もっと詰まっており高密度の核のあるβ−アミロイド斑を特徴と
する(たとえば、Davis et al., Neurology 38:1688-1693 (1988)を参照)。β
−アミロイドペプチドの神経毒性は、原形質膜に蓄積し細胞のカルシウム恒常性
を壊す凝集体や多量体の「種をまく」能力に依存している。グルタミン酸受容体
および電位作動性チャネルを介したカルシウムの流入は、ニューロンにおける整
然と組織された機能的および構造的応答を媒介する。しかし、抑制のないカルシ
ウムの流入は神経細胞を傷害したり殺したりしうる。β−アミロイドペプチドの
凝集または重合は、神経細胞を傷害したり殺したりするカルシウムの激しい流入
をもたらしうる。
【0084】 アクチンの微小繊維は主要な細胞骨格要素であり、その重合状態はカルシウム
に対する感受性が高い。サイトカラシン化合物はアクチンの解重合をもたらし、
グルタミン酸あるいは膜の脱分極によって引き起こされるカルシウムの流入を減
少させ、そして原形質膜においてβ−アミロイドペプチドにより媒介されるカル
シウムの流入を排除する(Mattson、米国特許第5,830,910号)。この
ように、細胞骨格を構成するアクチンの微小繊維はカルシウムの恒常性を調節す
る上で活発な役割を演じており、アクチンの重合に影響をおよぼす化合物は、さ
まざまな神経変性性条件におけるニューロンの損傷を軽減しうる。よって、別の
実施形態では、アクチンの重合に関与しているアクチンの配列に対応するペプチ
ド試薬を選択、デザイン、製造、およびアクチンの重合を阻害する能力に応じて
特定する。これによってβ−アミロイドペプチドの凝集により引き起こされるカ
ルシウムの流入を妨げる。同様にして、原形質膜におけるβ−アミロイドペプチ
ドの凝集を防止するために、β−アミロイドペプチドの配列に対応するペプチド
試薬を用いることができ、これによってβ−アミロイドペプチドの凝集により引
き起こされるカルシウムの流入を妨げる。さらに、アクチンおよびβ−アミロイ
ドタンパク質の領域に対応するペプチド試薬を組み合わせて用いる治療法も、本
発明のいくつかの実施形態の範囲内に含まれる。
【0085】 重合に関与しているアクチンおよびβ−アミロイドペプチドの配列に対応する
ペプチド試薬をデザインおよび製造し、ならびに上記の戦略を用いることによっ
て特定する。再び述べると、一般的に、文献における変異解析、タンパク質モデ
リングおよびドラッグ相互作用解析が再検討されるか、あるいは、タンパク質重
合に関与している配列に対応する適切なペプチド試薬をデザインおよび選択する
ための従来のアプローチによって、そのような決定方法が行われる。もちろん、
小ペプチドを任意に選択することができる。それから、ペプチド試薬を製造する
(たとえば、上記のアプローチを用いることによって)。次に、目的のタンパク
質に結合する能力、タンパク質の重合または結合を阻害または防止する能力、お
よび重合したタンパク質または超分子集合体に関係する疾患状態を限定する能力
といったペプチド試薬の能力を評価するペプチドキャラクタリゼーションアッセ
イを行うことによって、選択した小ペプチドを同定する。タンパク質の重合また
は超分子複合体の構築を阻害する小ペプチドを特定するために、ペプチドキャラ
クタリゼーションアッセイの数や順序はいかなるものでも用いることができる。
【0086】 サイトカラシンは、アクチンのすばやく成長する(逆向きの)末端に結合し、
それによりあらゆる会合および解離反応を妨げるので、逆向きの末端におけるア
クチン配列に対応する小ペプチドはアクチンの重合を妨げるであろう。このよう
にして、アクチンのこの領域に対応するペプチド試薬を選択、デザイン、および
製造する。
【0087】 β−アミロイドペプチドの二つの疎水性アミノ酸の変異または置換はアミロイ
ドの産生を減少させるということがこれまでに示されている(Hilbich et al.,
J. Mol. Biol. 228:460-473 (1992))。β−アミロイドペプチドの17から20
の残基のまわりのよく保存された疎水性のコアは、β−シート構造の形成や他の
アミロイドの性質にとって重要であることがわかった。この領域はアミロイド斑
を構築し安定化する上で重要な役割を演じていると考えられている。よって、β
−アミロイドペプチドのこの領域に対応するペプチド試薬が、選択、デザイン、
および製造される。
【0088】 いったんペプチド試薬がつくられると、これらのペプチド試薬は、ペプチドキ
ャラクタリゼーションアッセイにおいてスクリーニングされる。アクチンまたは
β−アミロイドペプチド(精製されたものがSigma社から入手できる)に結合す
るペプチド試薬の能力を評価するために、放射性標識したペプチド試薬を用いて
試験管内でのバインディングアッセイを行う。前に記載したように、好ましいア
プローチでは、目的のタンパク質を透析膜中に配置し、このタンパク質を放射性
標識したペプチド試薬と結合させる。よって、目的のタンパク質は、10,00
0mwカットオフの透析膜(たとえば、Slide-A-Lyzer、Pierce)中に配置され
る。次に、放射性標識したペプチド試薬を適当な緩衝液に加えて、結合反応を4
℃で一晩行わせる。ペプチド試薬は、標準的な手法に従って、125Iまたは14
で放射性標識することができるし、あるいは別の検出可能なシグナルで標識する
ことができる。結合反応が起こった後に、ペプチド試薬を含む緩衝液を除去し、
目的のタンパク質を有する透析膜を放射性標識されたペプチド試薬を含まない緩
衝液中において4℃で二時間透析する。その後、透析したタンパク質中に存在す
る放射能をシンチレーションによって測定する。このようにして、アクチンまた
はβ−アミロイドペプチドに結合するペプチド試薬を迅速に特定することができ
る。当業者にとっては自明であろうように、たとえば、アクチンまたはβ−アミ
ロイドペプチドをマイクロタイタープレートに結合させ、蛍光標識したペプチド
試薬の結合をスクリーニングすることによるハイスループット分析に容易に敏感
に反応する上述のような特定のバインディングアッセイにおいて、これらのバイ
ンディングアッセイを改変したものも用いることができる。
【0089】 アクチンまたはβ−アミロイドペプチドに結合するペプチド試薬を特定した後
、アクチンまたはβ−アミロイドペプチドの重合を妨げるペプチド試薬の能力を
評価するアッセイを行う。アクチンの重合の阻害に関する限り、免疫組織化学に
おける手法を用いることができる。したがって、ペプチド試薬で処理した細胞に
ついて、免疫蛍光法による研究がなされる。重合したアクチンが存在するかどう
かは、アクチンに対して特異的な抗体(たとえば、モノクローナル抗アクチン−
FITC接合体(クローン番号AC−40)Sigma F3046)を用いて決定される
。形質転換マウスの神経芽細胞腫細胞および正常な線維芽細胞がこれらの実験に
適しており、このような細胞はさまざまな量のペプチド試薬と接触させられ、固
定され、抗アクチン抗体を用いて染色され、そして標準的な免疫蛍光法の手法に
従って分析される。
【0090】 ある方法では、形質転換マウスの神経芽細胞腫クローンN1E-115の細胞を、5
%ウシ胎仔血清加ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)にて37℃で10%
CO2雰囲気下において培養する。正常マウスの線維芽細胞(Swiss/3T3)を10
%ウシ胎仔血清加DMEMにて培養する。細胞を100μMから300μMのペ
プチド試薬に一晩接触させるか、またはペプチド試薬に接触させない(対照)。
その後、細胞をガラスカバースリップを含む35mmプラスチック組織培養皿上
に移しかえる。2%ジメチルスルフォキシド(DMSO)を培養液に加えること
によって、分化した神経芽細胞腫細胞が得られる。
【0091】 次に、カバースリップ上の細胞を氷冷し、培養液を除去し、そして細胞を冷や
したリン酸緩衝生食液(PBS)で洗浄する。洗浄後、細胞を2%パラフォルム
アルデヒド(PFA)、4%PFAのPBSでの1:1希釈物、および1%Trit
onX−100で、氷上で30分間固定するか、または100%メタノールで−1
0℃にて15分間固定する。固定後、固定液を除去し、細胞を4℃のPBSで2
回洗浄する(5分間/1回の洗浄)。FITC標識した抗アクチン抗体を1:75の
希釈比にて加え、4℃にて1時間結合させる。その後、細胞を4℃のPBSで4
回洗浄する(5分間/1回の洗浄)。
【0092】 細胞を顕微鏡によって調べると、未処理の細胞は、FITC抗アクチン抗体で標識
された大量のアクチン微小繊維を有していることがわかるだろう。未処理の細胞
は長いアクチン束状体を特徴とする組織化したアクチンを示すだろう。神経芽細
胞腫細胞は、特に、なめらかな輪郭を示し、ミクロスパイク(microspike)を典型
的な特徴とするだろう。対照的に、アクチンの重合に関与しているアクチンの配
列に対応するペプチド試薬で処理した細胞は、まるい細胞で、ミクロスパイクが
なく、変性した成長円錐を示すだろう。さらに、正常細胞にみられる長いアクチ
ン束状体はもはや認識できず、アクチンの強い標識が原形質中あるいはしわのあ
る膜中にみられるだろう。上記の手法を用いることにより、アクチンのタンパク
質配列に対応するペプチド試薬をデザインし、製造し、そしてアクチンに結合す
る能力やアクチンの重合を防止する能力に対してスクリーニングする。さらなる
正の調節として、細胞をサイトカラシン化合物で処理することができ、免疫蛍光
法により、長いアクチン束状体の欠如を特徴とするアクチンの解重合が示される
だろう。
【0093】 β−アミロイドペプチドの凝集/重合を阻害する試薬の決定に関しては、いく
つかの方法が知られている。ある方法によると、β−アミロイドタンパク質(1
−40)を、ヘキサフルオロイソプロピノール(HFIP;Aldrich Chemical C
o)に2mg/mlの濃度で溶解させる。HFIP溶液の分割量を試験管に移し
、それぞれの試験管にアルゴンガスの気流を通して、HFIPを蒸発させる。結
果として生じるβ−アミロイドペプチドの薄膜を、DMSOに溶解させ、テフロ
ン(登録商標)でコートされた小さな磁気撹拌子を各試験管に入れる。適当な緩 衝液(たとえば、100mMのNaCl、10mMのリン酸ナトリウム、pH7 .4)を撹拌しながらDMSO溶液に加える。得られた混合物を連続的に撹拌し て、光学密度を400nmでモニターし、不溶なペプチド凝集体の形成を観測す る。対照試料においては、ペプチド試薬は、400nmでの光学密度の増加によ って決定されるように、容易に識別できる。しかし、ペプチド試薬の存在下では 、対照試料より400nmでの光学密度が低いことによって検出されることから 、β−アミロイドペプチドの凝集は阻害されるだろう。
【0094】 二番目のアッセイでは、β−アミロイドタンパク質の凝集は、蛍光アッセイ(f
luorometric assay)を用いて測定される(Levine, Protein Science 2:404-410
(1993))。このアッセイでは、染料のチオフラビンT(ThT)をβ−アミロイ
ドタンパク質溶液と接触させる。染料ThTは凝集したβ−アミロイドタンパク
質と結合するが、単量体またはゆるく凝集したβ−アミロイドタンパク質とは結
合しない。β−アミロイドタンパク質と結合すると、遊離の場合の385nmお
よび455nmと比較して、ThTは最大450nmで励起し、482nmで強
く発光する。よって、β−アミロイドタンパク質の分割量を、β−アミロイドタ
ンパク質の配列に対応するペプチド試薬の存在下および非存在下で反応容器に加
え、チオフラビンT(10mM;Aldrich Chemical Co.から入手)を含むpH7
.0の50mMリン酸カリウム緩衝液を加える。励起は450nmでおこり、発
光は482nmで測定される。上記の会合アッセイにおけるように、β−アミロ
イドペプチドの凝集を阻害するペプチド試薬を含む試料は、遊離の染料が発光す
る444nmと比べて、482nmでほとんど発光を示さないだろう。ところが
、対照試料は482nmにて相当な発光を示し、444nmではほとんど発光し
ないだろう。
【0095】 三番目のアッセイでは、β−アミロイドペプチドをペプチド試薬と混合し、そ
の混合物をコンゴレッドで染色することによって、β−アミロイドの凝集を妨げ
る本発明のペプチド試薬の能力を決定する。あらゆる種類のアミロイドは、染料
コンゴレッドで染色した場合に偏光の下で緑色の複屈折を示す。しかし、ペプチ
ド試薬の存在によって凝集できないβ−アミロイドペプチドは、偏光の下で緑色
の複屈折を示さないだろう。したがって、約0.5から1mgの凍結乾燥したβ
−アミロイドペプチドを、100μMから300μMのペプチド試薬を含む10
0μlのPBS(pH7.4)に懸濁させる。β−アミロイドペプチドを加えた
後、5μlのコンゴレッド溶液(水に1%)を加える。次に、20μlの懸濁液
を顕微鏡のスライドガラス上にのせ、偏光下および非偏光下ですばやく顕微鏡を
のぞく。一次倍率200倍で写真をとることができる。対照試料においては、た
とえば、ペプチド試薬なしで、凝集したβ−アミロイドペプチドおよび緑色の複
屈折が観測できるだろう。しかし、ペプチド試薬を含む試料は、弱まったβ−ア
ミロイドの凝集および緑色の複屈折を示すだろう。
【0096】 さらに、電子顕微鏡を用いることによって、ペプチド試薬の存在下および非存
在下におけるβ−アミロイドの凝集を評価することができる。フィラメントを形
成するために、β−アミロイドペプチドの70%HCOOH溶液(1mgのβ−
アミロイドペプチド/200μl)を、PBSとHCOOHの混合物(ペプチド
試薬を含むものと含まないもの)に対して室温で5日間透析する。この間、透析
緩衝液におけるPBSの量を20から100%に増やす。β−アミロイドペプチ
ドをPBSに懸濁させた新しい懸濁液(ペプチド試薬を含むものと含まないもの
)を、(透析後)炭素でコートされ脱イオン化された銅のグリッドに塗布し、乾
燥させ、2%(w/v)酢酸ウラニルでネガティブ染色し、そして電子顕微鏡で
観察する。β−アミロイドペプチドの独特な特徴は、分子質量の大きな不溶性の
フィラメントに凝集する傾向である。このような凝集体は電子顕微鏡によって容
易に検出できる。その直径は約5nm、長さは200nmにほぼ等しい。しかし
、ペプチド試薬に接触させたβ−アミロイドペプチドを含む試料には、あったと
してもフィラメントはほとんどないだろう。
【0097】 β−アミロイドペプチドの凝集によって引き起こされるカルシウムの流入を妨
げるアクチン配列およびβ−アミロイド配列に対応するペプチド試薬の能力を確
かめるために、培養海馬細胞を用いて機能的アッセイを行う。プラスチック製3
5mm培養皿、96ウェルプレート、あるいはガラス底35mm培養皿中のポリ
エチレンイミンでコートされた培養基上にて、解離したラット胚の海馬細胞の培
養を確立し維持する。細胞密度は約70−100細胞/mm2に維持する。細胞
を、20mMピルビン酸ナトリウムを含む10%ウシ胎仔血清加イーグル最小必
須培地にて維持する。6−10培養日の培養物について実験を行う。 この時期には、ニューロンが、NMDAおよびα−アミノ−3−ヒドロキシ−5
−メチルイソオキサゾール−4−プロピオン酸(AMPA)/カイニン酸受容体
の両方によって媒介されるグルタミン酸に対するカルシウム応答を示し、興奮毒
性およびβ−アミロイド毒性に対して脆弱である。1mMの濃度のペプチド試薬
を無菌蒸留水に溶解して、β−アミロイドペプチド25−35および1−40(
それぞれSigma A1075、A4559)を使用直前に調製する。これらのペプチドは培地
に入れると迅速に凝集し、可溶な形で培養物に加えると48時間にわたって次第
にニューロンを死滅させる(Mattson、米国特許第5,830,910号、本願
に参照として援用する)。
【0098】 処理直前と処理後の時点において、同じ顕微鏡視野(10倍の対物レンズ)に
おける生存能力のあるニューロンの数を数えることによって、ニューロンの生存
率を定量化する。さらに、アラマーブルー蛍光試薬(Alamar Laboratories)の
存在下で96ウェルプレートにおいて培養した細胞を、蛍光プレートリーダーを
用いることにより定量化する。アラマーブルーは、細胞代謝産物により還元され
ると蛍光性になる非蛍光性基質である。ニューロンの生存能力は、形態学的基準
により評価される。直径が一様な入力神経突起およびなめらかで丸い外観の細胞
体をもつニューロンは生存能力があるものとみなす。これに対して、断片化した
神経突起および空胞があるか膨潤した細胞体をもつニューロンは、生存能力なし
とみなす。
【0099】 生存価は、実験処理前に存在したニューロンの初期数の百分率として表すこと
ができる。タンパク質重合に必要なアクチン配列および/またはβ−アミロイド
配列に対応するペプチド試薬の存在下では、50%より多いニューロンの生存が
確認されるだろう。望ましくは、アクチンまたはβ−アミロイド配列もしくは両
方の配列に対応するペプチド試薬と細胞を接触させることによりもたらされるニ
ューロンの生存率は50−100%の間となるだろう。好ましくは、ニューロン
の生存率は60−100%であり、ニューロンの生存率は、55%、60%、6
5%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%の値
をとりうる。対照的に、100mMグルタミン酸とともにインキュベートした細
胞は、25%未満の生存率を示すだろう。また、β−アミロイドペプチドの存在
下において培養した細胞は、50%未満の生存率を示すだろう。さらに、アクチ
ン配列および/またはβ−アミロイドペプチドに対応するペプチド試薬で1時間
、前処理した細胞においては、グルタミン酸の神経毒性が低下するだろう。
【0100】 さらなる研究では、アクチンおよび/またはβ−アミロイドペプチド配列に対
応するペプチド試薬の存在下および非存在下におけるカルシウムの流入を、カル
シウム指示薬である染料Fura−2を用いることにより測定することができる
。一つの方法として、アクチンまたはβ−アミロイドペプチド配列のいずれか、
もしくは両方に対応するペプチド試薬の存在下および非存在下において、グルタ
ミン酸かβ−アミロイドペプチドのいずれかで処理しておいたニューロン細胞体
中のCa2+を定量化するために、Ca2+指示薬である染料Fura−2の蛍光比
の画像表示を用いることができる。Ca2+指示薬の染料Fura−2のアセトキ
シメチルエステル誘導体(2mM)の存在下において30−40分間、細胞をイ
ンキュベートする。次に、新しい培養液で二回(1回あたり2ml)洗浄し、画
像化の前に少なくとも40分間インキュベートする。画像化の直前に、10mM
のHEPES緩衝剤および10mMブドウ糖を含むハンクス平衡塩液(Gibco)
で標準培養液を置換する。油浸対物レンズを備えたZeiss社のAttofluorシステム
または40倍の油浸対物レンズを備えたQuantexシステムを用いて細胞を画像化
する。ただし、当業者には他の顕微鏡システムを使用できることがわかるだろう
【0101】 異なる励起波長(334および380nm)を用いた蛍光発光の比を用いて、
カルシウム流入を確定する。Ca2+を含有しない溶液またはCa2+飽和溶液(1
mM)を用いて、基本系を校正する。Fura−2カルシウム画像化は、アクチ
ンまたはβ−アミロイドペプチドまたその両方の配列に対応するペプチド剤がグ
ルタミン酸塩およびβ−アミロイドペプチド誘導性膜脱分極に対する[Ca2+ i 応答を弱めるということを明示する。対照培養では、例えば50mMグルタミ
ン酸塩は、ニューロン[Ca2+iの急速な増大を誘導する。これに対比して、
300μMペプチド剤で1時間前処理したニューロンにおけるグルタミン酸塩に
対する[Ca2+i応答は低減される。さらに、グルタミン酸塩に対するニュー
ロン[Ca2+i応答は、β−アミロイドペプチドで3時間前処理した培養中で
は大いに増強される。しかしながら、アクチンまたはβ−アミロイドペプチド配
列に対応するペプチド剤の存在下では、β−アミロイド前処理培養中のグルタミ
ン酸塩に対する[Ca2+i応答の相乗作用は抑制される。これらの実験は、ア
クチンおよびβ−アミロイドペプチドの配列に対応するペプチド剤の存在により
引き起こされるアクチン脱重合および/またはβ−アミロイドペプチド脱重合が
、グルタミン酸塩およびβ−アミロイド媒介性膜脱分極により誘導される[Ca 2+i流入を低減する、ということを実証する。
【0102】 前節に記載したように、アクチン配列およびβ−アミロイドペプチド配列に対
応する両ペプチド剤を用いる組合せ療法は、本発明の実施態様である。前記の検
定を用いることにより、アクチンおよびβ−アミロイドペプチドと結合するペプ
チド剤を選択し、デザインし、製造し、キャラクタリゼーションし得る。アクチ
ンおよびβ−アミロイドペプチドの配列に対応するペプチド剤を投与することに
より、良好な応答(例えば、低Ca2+流入)を得ることができる。さらに、前記
と同様のアプローチを用いることにより、プリオン関連タンパク質プラークの形
成を抑制するペプチド剤を選択し、デザインし、製造し、そしてキャラクタリゼ
ーションし得る。前記のように選択され、デザインされ、製造され、そしてキャ
ラクタリゼーションされたペプチド剤を、神経変性疾患、例えばアルツハイマー
病およびプリオン病の治療および予防のための治療および予防薬として用いるた
めの薬剤に混入し得る。このような薬剤を投与することにより、アルツハイマー
病のような神経変性状態に苦しむ被験者の治療方法を実施する(β−アミロイド
ペプチド凝集のモジュレーターに関しては、米国特許第5,817,626号(
Findeis et al.)を参照)。さらに、アルツハイマー型神経病理学知見を示すト
ランスジェニックマウスで、このようなペプチドの効力を検査し得る(Gains et
al., Nature 373:523-527)。これらのトランスジェニックマウスは、高レベル
のヒト突然変異体アミロイド前躯体を発現し、アルツハイマー病に関連した多く
の病理学的症状を漸増的に発症する。下記の開示において、癌の治療および予防
のためのチューブリン重合を中断するためのPPIテクノロジーの使用を記載す
る。
【0103】 チューブリン重合の抑制 別の局面において、チューブリン重合の抑制のためのペプチド剤の製造および
使用を説明する。バイオテクノロジーツールとして、および種々の形態の癌の治
療のための治療薬として、チューブリン重合を抑制するペプチド剤を用いる。例
えばチューブリンαまたはβサブユニットまたは両方に対応するペプチド剤は、
チューブリン重合を防止し、抗腫瘍剤として用いられ得る。白血病、黒色腫、な
らびに結腸、肺、卵巣、CNSおよび腎臓癌、ならびにその他の癌を治療するた
めの薬剤中に、小ペプチドチューブリン重合阻害剤を混入し得る。好ましくは、
ペプチド剤は結腸癌を治療するために用いる。
【0104】 強力な細胞傷害性および抗腫瘍性活性を示す種々の臨床的に有望な化合物は、
チューブリン重合の効率的な抑制によりそれらの主な作用様式をもたらすことが
既知である(Gerwick et al., J. Org. Chem. 59:1243(1994))。この種類の抗
腫瘍化合物はチューブリンと結合し、次に、細胞保持および細胞分裂のための必
須化合物である微小管に重合するチューブリンの能力を休止させる(Owellen et
al., Cancer Res.36:1499(1975))。一般に、癌の治療のための最も認識された
且つ臨床的に有用なチューブリン重合阻害剤としては、ビンブラスチン、ビンク
リスチン、リゾキシン、コムブレタスチンA−4およびA−2、ならびにタキソ
ールが挙げられる(米国特許第5,886,025号(Pinney))。
【0105】 チューブリンは、球状αおよびβチューブリンサブユニットのヘテロ二量体で
ある。チューブリンのための光親和性標識試薬を用いることにより、チューブリ
ン上の3つの別個の小分子結合部位を、研究者等は同定した。さらに、光親和性
標識試薬は、リゾキシンがβ−チューブリン上のMet−363−L−379部
位に結合することを明示した(Sewada et al., Biochem. Pharmacol.45:1387(19
93))。さらに、タキソールベースの試薬は、β―チューブリンのN末端の31
アミノ酸残基を標識することが判明した(Swindell et al., J. Med. Chem. 37:
1446(1994)およびRao et al., J. Biol. Chem. 269:3132(1994))。好ましくは、
これらの実施態様のペプチド剤は、これらの領域における配列に対応するよう選
択され、デザインされる。
【0106】 選択し、デザインし、そして製造したら、チューブリンと結合するそれらの能
力に関してスクリーニングする。前記と同様のアプローチを用いることにより、
チューブリン(シグマT4925)を透析膜(例えば、スライドアライザーSlide-A
-lyzer, Pierce)中に入れる。次に、放射能標識ペプチド剤を適切な緩衝液中に
加え、4℃で一夜、結合反応を起こさせる。ペプチド剤を、標準技法により125
Iまたは14Cで放射能標識し得るか、あるいは他の検出可能シグナルで標識し得
る。結合反応が起きた後、ペプチド剤含有緩衝液を除去し、当該タンパク質を有
する透析膜を、放射性ペプチド剤を欠く緩衝液中で4℃で2時間透析する。その
後、透析タンパク質中に存在する放射能を、シンチレーションにより測定する。
チューブリンと結合するペプチド剤は、シンチレーション流体中の放射能の検出
により迅速に同定される。当業者に明らかなように、これらの結合検定の変法を
用い得る。特に前記のような結合検定は、例えばマイクロプレートにチューブリ
ンを結合し、蛍光標識ペプチド剤の結合に関してスクリーニングすることにより
、高処理量分析を容易に施し得る。
【0107】 チューブリンと結合するペプチドを同定後、チューブリン重合を崩壊させるペ
プチド剤の能力を評価する検定を実施する。適切な一検定系は、Bai ら, Cancer
Res. 56:4398-4406(1996)により記載されたものである。ペプチド剤の存在下お
よび非存在下での精製チューブリンのグルタミン酸塩誘導性集合の抑制は、GT
Pを用いて37℃で15分間の予備インキュベーション後に0.25mlの反応
混合物中で評価し得る。典型的反応混合物に関する最終濃度は、1.0mg/m
l(10μM)のチューブリン、300μMのペプチド剤、1.0Mのグルタミ
ン酸一ナトリウム、1.0mMのMgCl2、0.4mMのGTPおよび4%(v
/v)DMSOであり得る。0℃から37℃への75−s−ジャンプ(75-s-jump)
により集合を開始し、350nmでギルフォード分光光度計でモニタリングし得
る。20分後に反応の程度を評価する。ペプチド剤の存在下では、350nmで
ごく少量の吸光が検出される。これに対比して、ペプチド剤の非存在下では、3
50nmでの有意の吸光が検出される。
【0108】 ペプチド剤の存在下および非存在下でのチューブリン凝集は、Ramona5
−LSフロー検出器と一列に並べたLKB系を用いた7.5x300mmTSK
G3000SWゲル浸透カラム上でのHPLCによっても追跡調査し得る。0
.1MのMES(pH6.9)および0.5mMのMgCl2を含有する溶液でカ
ラムを平衡化させる。IBMコンパチブルコンピューター上でRaytestソ
フトウェアを用いて、吸光度データを評価する。ペプチド剤の存在下では、35
0nmでごく少量の吸光が検出される。これに対比して、ペプチド剤の非存在下
では、350nmでの有意の吸光が検出される。さらに、電子顕微鏡を用いて、
ペプチド剤の存在下および非存在下でのチューブリン凝集を評価し得る。したが
って、5μlの反応物を200メッシュ炭素被覆Farmavar処理銅グリッ
ド上に載せて、5〜10秒後、非結合試料を5〜10滴の0.5%酢酸ウラニル
で洗い落とす。トーン濾紙(torn filter paper)に吸わせて余分の染色を除去し
、陰性染色検体を電子顕微鏡で検査する。ペプチド剤の存在下では、極少数の束
が観察される。
【0109】 腫瘍細胞増殖を抑制するそれらの能力に関しても、ペプチド剤を試験し得る。
いくつかのヒト癌細胞株、例えば卵巣、CNS、腎臓、肺、結腸および黒色腫株
に対する増殖抑制活性に関して、チューブリンの配列に対応するペプチド剤の細
胞傷害性を評価する。用いられる検定は、Monks等(例えば、Monks et al., J.
Nat. Cancer Inst., 83:757-766(1991)参照)(この記載内容は、参照により本
明細書中に含まれる)に記載されている。要するに、特定の細胞型および予測標
的細胞密度(細胞増殖特徴に基づいて約5,000〜40,000細胞/ウエル
)により希釈した細胞懸濁液をピペットで96ウエルマイクロプレートに付加す
る。安定化のために、接種物質に37℃で24〜28時間の予備インキュベーシ
ョン時間を割り当てる。ペプチド剤を用いて、5%CO大気および100%湿度
中で48時間、インキュベーションする。
【0110】 細胞のインシテュ(in situ)固定、およびその後の細胞高分子の塩基性アミノ
酸と結合するタンパク質結合染料スルホローダミンB(SRB)で染色すること
により、細胞増殖の確定を成し遂げる。可溶化染色を分光的に測定する。チュー
ブリンの配列に対応するペプチド剤を、好ましくはP388白血病細胞に対する
細胞傷害性活性に関して評価する。細胞増殖の50%を抑制するために必要な有
効投与量と定義されるED50値を、試験したペプチド剤の各々に関して確定し得
る。ペプチド剤の存在下でインキュベートした癌細胞は、極少量の増殖および細
胞増殖を示し、一方、ペプチド剤の非存在下では、癌細胞が増殖する。前記のよ
うに選択され、デザインされ、製造され、そしてキャラクタリゼーションされた
ペプチド剤を、種々の形態の癌の治療および予防のための治療および予防薬とし
て用いるための薬剤に混入し得る。下記の開示は、ウイルス感染の治療および予
防のためのウイルスキャプシド集合を崩壊させるためのPPIテクノロジーの使
用を考察する。
【0111】 ウイルスキャプシド集合の抑制 別の局面は、ウイルス感染の抑制のためのペプチド剤の製造および使用を含む
。ウイルス感染を抑制するペプチド剤を、バイオテクノロジーツールとして、お
よび種々の形態のウイルス性疾患の治療のための治療薬として用いる。例えばウ
イルスキャプシドタンパク質の配列に対応するペプチド剤は、キャプシドの重合
を防止し、抗ウイルス剤として用いられ得る。HIV−ZおよびSIV、ならび
にウイルス感染型のものを治療するための薬剤中に、これらの抗ウイルスペプチ
ド剤を混入し得る。
【0112】 最初に、HIV−1、HIV−2およびSIV(「p24」)を選択し、デザ
インし、そして製造した。p24タンパク質を重合して、ウイルスキャプシドを
生成し、そしてそれはレンチウイルスヌクレオキャプシドの形成のための内在性
構成成分である。キャプシドの重合を可能にするタンパク質−タンパク質相互作
用に関与すると考えられるp24の配列に対応する表1に列挙したアミド型の小
ペプチドを製造し、キャラクタリゼーションアッセイ(characterization assay)
でスクリーニングした。これらのペプチド剤を前記の方法にしたがって合成した
が、しかし、もちろん、当業界で既知の任意の方法により合成し得る。
【0113】
【表1】
【0114】 表1に列挙したペプチド剤がウイルスキャプシドタンパク質p24に結合され
るか否かを確定するために、インビトロ(in vitro)結合検定を実施した。前記の
ように、10kD未満のポアサイズを有する透析膜を用いて、透析ベースの結合
検定を実行した(スライドアライザーSlide-A-lyzer, Pierce)。組換え体タンパ
ク質p24、gp120(AIDSプログラム,NCIBから贈与された)およ
びBSA(Sigma)の10μMストック50mlをべつべつの透析膜に導入して
、150mMのNaClおよび50mMのトリス−HCl、pH7.4緩衝液お
よび27.5Mの14C−GPG−NH3(Amersham Ltc. UK)で構成される50
0ml溶液に対して、4℃で2日間、タンパク質を透析した。その後、透析した
p24、gp120およびBSAの10または5μlアリコートを取り出し、シ
ンチレーションバイアル中の3mlのReadySafe(Beckman)と混合した。次にシ
ンチレーション計数により、14Cを検出した。
【0115】 表2には、代表的な透析ベースの結合検定からの結果を提示する。特に、p2
4のGPG−NH2との会合が透析平衡時に観察された。p24と会合した放射
性GPG−NH2の量は、緩衝液中に存在する量の7.5倍であった。これに対
比して、透析緩衝液中に存在する量を上回る放射性GPG−NH2の目に見える
ほどの量で、gp120またはBSAと会合したものはなかった。これらの結果
は、小ペプチド、例えばGPG−NH2がp24と結合することを立証する。
【0116】
【表2】
【0117】 修飾化小ペプチドと接触したHIV−1粒子に関して電子顕微鏡検査を実施す
ることにより、ペプチド剤がウイルスキャプシド重合を、したがって適正なヌク
レオキャプシド集合を抑制しまたは防止するという証拠を得た。この実験組では
、HUT78細胞にHIV−1 SF−2ウイルスを300TCiD50で37℃
で1時間、感染させた。その後、感染細胞を3回洗浄し、ペレット化した。その
後、10%FBS、抗生物質(100u/ml)およびポリブレン(3.2μ/
ml)を補充したRPMI培地に細胞を再懸濁させた。その後、感染の3、5ま
たは7日後に、1μMまたは10μMの濃度でGPG−NH2を細胞培養液に加
えた。対照試料には、0.5μMのリトナビル(プロテアーゼ阻害剤)を投与し
た。14日目まで細胞を培養し、この時点で、細胞を慣用的手段により2.5%
グルタルアルデヒド中に固定した。次に固定細胞を1%OsO4中で後固定して
、脱水し、エポキシ樹脂に包埋して、ブロックを重合させた。ヌクレオキャプシ
ドの幅を収容するために、ウイルス感染細胞のエポン切片(epon section)を約6
0〜80nm厚に作製した。切片をグリッドに載せて、1.0%酢酸ウラニルで
染色し、ツァイスCEM902顕微鏡で、80kVの加速電圧で分析した。顕微
鏡は、画像の質を改善するための分光計を装備し、液体窒素冷却トラップを用い
てビーム損傷を低減した。対照およびGPG−NH2インキュベート細胞を有す
るグリッドをいくつか盲検した。
【0118】 未処理HIV粒子の電子顕微鏡検査は、特徴的円錐形ヌクレオキャプシドと、
ヌクレオキャプシドの長さを伸ばす封入均一染色RNAを明示した(図1参照)
。これに対比して、図2は、ウイルスプロテアーゼ阻害剤リトナビルに接触した
いくつかのHIV−1粒子を示す2つの電子顕微鏡写真を提示する。リトナビル
で処理されていた感染細胞は、予測どおり、識別可能なヌクレオキャプシドを有
さない不恰好な構造を示した。図3は、GPG−NH2と接触させられたウイル
ス粒子を示す顕微鏡写真を提示する。GPG−NH2と接触されたHIV−1粒
子を有する細胞は、リトナビル処理粒子とは別個の識別可能なキャプシド構造を
有するHIV−1粒子を示した。特に、いくつかのトリペプチド処理ウイルス粒
子では、円錐形キャプシド構造は部分的には無傷であるが、しかしRNAは、キ
ャプシドの外側またはキャプシドの上部(広端)で球様形状に集められた。さら
に、いくつかのキャプシドは、正常ヌクレオキャプシドに似ている形態をほとん
どまたはまったく有さない奇形の構造を有することが観察され、RNAはその構
造の外側または内側に一端に存在することが認められた。これらの試験から、小
ペプチドがウイルスキャプシドタンパク質重合およびヌクレオキャプシドの適正
な形成を妨げることは明らかであった。
【0119】 次に、ウイルス感染を抑制するペプチド剤の能力を評価した。したがって表1
に列挙したペプチド剤を、いくつかのウイルス(例えば、HIV−1、HIV−
2およびSIV)感染検定に用いた。逆転写活性,細胞上清中のp24の濃度に
より、およびHIV−1シンシチウム形成の顕微鏡的評価により、HIV−1、
HIV−2およびSIV感染の効率をモニタリングした。初期実験では、H9細
胞におけるHIV−1、HIV−2およびSIVを抑制する能力に関して、いく
つかの修飾トリペプチドをスクリーニングした。抑制トリペプチドが同定された
ら、さらに特定の検定を実行して、種々の濃度の選定トリペプチドおよび組合せ
治療(例えば組合せにおいて、1つより多い修飾トリペプチドの使用)の効果を
確定した。
【0120】 実験1および2では、約200,000個のH9細胞にHIV−1、HIV−
2またはSIVを25TCID50で感染させて、以下の合成トリペプチドLKA
−NH2、ILK−NH2、GPQ−NH2、GHK−NH2、GKG−NH2、A
CQ−NH2、CQG−NH2、ARV−NH2、KAR−NH2、HKA−NH2
、GAT−NH2、KAL−NH2およびGPG−NH2の抑制作用を試験した。
したがってH9細胞を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)、
ペニシリン(100u/ml)およびストレプトマイシン(100u/ml)(
すべてGIBCOから入手可能)、ならびにポリブレン(g/ml)(Sigmaから入手
可能)を補充した1mlのRPMI 1640倍地中に、異なるペプチド(約1
00μM)を用いてまたは用いずに、再懸濁した。その後、20〜30μlの容
量中に25TCID50でウイルスを加えた。細胞をウイルスとともに37℃で1
時間インキュベートし、次に170xgで7分間ペレット化した。次に細胞を室
温でペプチドを含有しないRPMI培地中で3回洗浄し、前記と同様に170x
gで7分間ペレット化した。最終洗浄後、細胞を24ウエルプレート(Costar c
orporation)中のRPMI培地中に再懸濁し、湿気を有する5%CO2中に37
℃で保持した。
【0121】 培養上清を収集し、感染後4、7、10および14日目に培地を取り換えた時
に分析した。ウイルスの複製をモニタリングするために、市販のレンチ−RT活
性キット(Cavidi Tech, Uppsala, Sweden)を用いて、上清中の逆転写(RT)
活性を検定した。RTの量は、標準物質の回帰線によって確定した。結果を吸収
値(OD)として示し、吸光度が高いほどタンパク質濃度が高く、ウイルス感染
が多いことを示す。顕微鏡検査により、シンシチウム形成もモニタリングした。
表3および4は、それぞれ実験1および2の細胞培養上清の吸収値を示す。
【0122】 実験3では(表5)、約200,000個のH9細胞にHIV−1、HIV−
2またはSIVを25TCID50で感染させて、異なる濃度のペプチドGPG−
NH2、GKG−NH2およびCQG−NH2、ならびにこれらのペプチドの組合
せ(示した濃度は各トリペプチドの濃度に一致する)の抑制作用を試験した。前
記と同様に、H9細胞を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)
、ペニシリン(100u/ml)およびストレプトマイシン(100u/ml)
ならびにポリブレン(g/ml)を補充した1mlのRPMI 1640倍地中
に、異なる濃度で異なるペプチドを用いてまたは用いずに、再懸濁した。その後
、20〜30μlの容量中に25TCID50でウイルスを加えた。細胞を指示ウ
イルスとともに37℃で1時間インキュベートし、次に170xgで7分間ペレ
ット化した。次に細胞を室温でペプチドを含有しないRPMI培地中で3回洗浄
し、前記と同様に170xgで7分間ペレット化した。最終洗浄後、細胞を24
ウエルプレート(Costar corporation)中のRPMI培地中に再懸濁し、湿気を
有する5%CO2中に37℃で保持した。
【0123】 感染後4、7および11日目に培地を取り換える時に、培養上清を収集した。
前記と同様に、各ウイルスの複製を、レンチ−RT活性キット(Cavidi Tech)
を用いて上清中の逆転写(RT)活性を検定することにより、モニタリングした
。RTの量は、標準物質の回帰線によって確定した。結果を吸収値(OD)とし
て示し、吸光度が高いほどタンパク質濃度が高く、ウイルス感染が多いことを示
す。表4は、実験3の細胞培養上清の吸収値を示す。
【0124】 実験4では(表6)、約200,000個のH9細胞にHIV−1を25TC
ID50で感染させて、異なる濃度のペプチドGPG−NH2、GKG−NH2およ
びCQG−NH2、ならびにこれらのペプチドの組合せ(指示濃度はトリペプチ
ドの総濃度に対応する)の抑制作用を試験した。前記と同様に、H9細胞を、1
0%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリン(100u/m
l)およびストレプトマイシン(100u/ml)ならびにポリブレン(g/m
l)を補充した1mlのRPMI 1640倍地中に、異なる濃度で異なるペプ
チドを用いてまたは用いずに、再懸濁した。その後、20〜30μlの容量中に
25TCID50でウイルスを加えた。細胞を指示ウイルスとともに37℃で1時
間インキュベートし、次に170xgで7分間ペレット化した。次に細胞を室温
でペプチドを含有しないRPMI培地中で3回洗浄し、前記と同様に170xg
で7分間ペレット化した。最終洗浄後、細胞を24ウエルプレート(Costar cor
poration)中のRPMI培地中に再懸濁し、湿気を有する5%CO2中に37℃
で保持した。
【0125】 感染後4、7および11日目に培地を取り換える時に、培養上清を収集した。
前記と同様に、各ウイルスの複製を、レンチ−RT活性キット(Cavidi Tech)
を用いて上清中の逆転写(RT)活性を検定することにより、モニタリングした
。RTの量は、標準物質の回帰線により確定した。結果を吸収値(OD)として
示し、吸光度が高いほどタンパク質濃度が高く、ウイルス感染が多いことを示す
。表5は、実験4の細胞培養上清の吸収値を示す。検出をより正確に確定し得る
よう、11日目に分析した上清を5倍希釈した。
【0126】 実験5では(表7)、約200,000個のH9細胞にHIV−1、HIV−
2またはSIVを25TCID50で感染させて、異なる濃度のペプチドGPG−
NH2、GKG−NH2およびCQG−NH2、ならびにこれらのペプチドの組合
せの抑制作用を試験した。前記と同様に、H9細胞を、10%(v/v)熱不活
性化ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリン(100u/ml)およびストレプト
マイシン(100u/ml)ならびにポリブレン(g/ml)を補充した1ml
のRPMI 1640倍地中に、異なる濃度で異なるペプチドを用いてまたは用
いずに、再懸濁した。その後、20〜30μlの容量中に25TCID50でウイ
ルスを加えた。細胞を指示ウイルスとともに37℃で1時間インキュベートし、
次に170xgで7分間ペレット化した。次に細胞を室温でペプチドを含有しな
いRPMI培地中で3回洗浄し、前記と同様に170xgで7分間ペレット化し
た。最終洗浄後、細胞を24ウエルプレート(Costar corporation)中のRPM
I培地中に再懸濁し、湿気を有する5%CO2中に37℃で保持した。
【0127】 感染後4、7および14日目に培地を取り換える時に、培養上清を収集した。
各ウイルスの複製を、上清中のp24の存在を検定することにより、モニタリン
グした。結果を吸収値(OD)として示し、吸光度が高いほどタンパク質濃度が
高く、ウイルス感染が多いことを示す。いくつかの場合には、p24濃度をより
正確に検出するために、上清の連続希釈を行なった。表6は、実験5の細胞培養
上清の吸収値を示す。以下でさらに詳細に考察するように、トリペプチドGPG
−NH2、GKG−NH2およびCQG−NH2、ならびにこれらのペプチドの組
合せは、HIV−1、HIV−2およびSIV感染を有効に抑制することが示さ
れた。
【0128】 実験6では(表8および図4)、約200,000個のHUT78細胞にHI
V−1を25TCID50で感染させて、GPG−NH2、RQG−NH2、KQG
−NH2、ALG−NH2、GVG−NH2、VGG−NH2、ASG−NH2、S
LG−NH2、およびSPT−NH2の抑制作用を試験した。HUT細胞を、10
%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS、GIBCO)、ペニシリン(100
u/ml)、ストレプトマイシン(100u/ml)およびポリブレン(Sigma
、2μg/ml)を補充した1mlのRPMI 1640倍地中に、前記の異な
る小ペプチド(100μM)の存在を用いてまたは用いずに、再懸濁した。その
後、20μlの容量中に25TCID50でウイルスを加えた。細胞をウイルスと
ともに37℃で1時間インキュベートし、次に170xgで7分間ペレット化し
た。次に細胞を室温でペプチドを含有しないRPMI培地中で3回洗浄し、前記
と同様に170xgで7分間ペレット化した。最終洗浄後、細胞を24ウエルプ
レート(Costar corporation)中のRPMI培地中に再懸濁し、湿気を有する5
%CO2中に37℃で保持した。感染後4、7および11日目に培地を取り換え
る時に、培養上清を収集し、HIV−1 p24ELISAキット(Abbott Lab
oratories, N orth Chicago, USA)を用いてウイルスp24産生をモニタリング
した。以下で考察するように、小ペプチドRQG−NH2、KQG−NH2、AL
G−NH2、GVG−NH2、VGG−NH2、ASG−NH2、SLG−NH2
およびSPT−NH2は、HIV−1感染を有効に抑制することが発見された。
【0129】
【表3】
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
【表8】
【0135】 表1に挙げられた小ペプチドの中で、GPG−NH2、GKG−NH2、CQG
−NH2、RQG−NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、GVG−NH2、V
GG−NH2、ASG−NH2、SLG−NH2、およびSPT−NH2は、HIV
−1感染を阻害かつ/または防止し、GKG−NH2、CQG−NH2、およびG
PG−NH2はHIV−2およびSIV感染を阻害または防止も示した。小ペプ
チドRQG−NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、GVG−NH2、VGG−
NH2、ASG−NH2、SLG−NH2、およびSPT−NH2は、HIV−2ま
たはSIV感染を防止または阻害する能力を分析されなかったが、HIV−2お
よびSIVは、小ペプチドGPG−NH2、GKG−NH2、CQG−NH2、R
QG−NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、GVG−NH2、VGG−NH2
、ASG−NH2、SLG−NH2、およびSPT−NH2が対応する領域でキャ
プシドタンパク質構造に有意な相同性を共有するという事実が与えられ、HIV
−2またはSIV感染またはその両方の阻害また防止が考えられる。
【0136】 実施例1ないし6についての結果(表3ないし8および図4に示す)は、カル
ボキシ末端アミノ酸のようなグリシンを有するウィルス性キャプシドタンパク質
配列に対応するアミド型の小ペプチドGPG−NH2、GKG−NH2、CQG−
NH2、RQG−NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、GVG−NH2、VG
G−NH2、ASG−NH2、およびSLG−NH2がHIV感染を阻害または防
止したことを示している。カルボキシ末端残基、Leu−Lys−Ala(LK
A)およびHis−Lys−Ala(HKA)、またはカルボキシ末端グルタミ
ン残基、Gly−Pro−Gln(GPO)およびAla−Cys−Gln(A
CQ)は、HIV感染を防止しなかった。しかしながら、アミノ末端グリシン残
基、Gly−Pro−Gln(GPQ)、Gly−His−Lys(GHK)、
およびGly−Ala−Thr(GAT)が感染およびシンシチウム形成を防止
しなかったため、アミノ末端でのグリシンは阻害剤因子ではなかった。さらに、
Gly−Pro−Gln(GPQ)、Ala−Cys−Gln(ACQ)、およ
びGly−Ala−Thr(GAT)のような他の非荷電極性側鎖、またはAl
a−Arg−Val(ARV)、His−Lys−Ala(HKA)、Lys−
Ala−Leu(KAL)、およびLeu−Lys−Ala(LKA)のような
カルボキシ末端での非極性側鎖を有するペプチドは感染の防止をしなかった。カ
ルボキシ末端でのグリシン残基はHIVおよびSIV感染の阻害と会合されるよ
うに見えるにもかかわらず、小ペプチドのカルボキシ末端での他のアミノ酸残基
または修飾アミノ酸残基も、HIVおよびSIV感染を阻害することができる。
たとえば、Ser−Pro−Thr(SPT)がHIV−1感染を阻害または防
止することが示された。
【0137】 いくつかの実験では、HIV−1、HIV−2、およびSIV感染への小ペプ
チドの影響は、濃度および時間に依存している。5μMおよび20μMと同じ低
さのGKG−NH2、CQG−NH2、およびCPG−NH2の濃度、ならびにこ
れらの組み合わせが、HIV−1およびHIV−2感染を低減するのに有効であ
った。しかしながら、100μMかそれ以上では、トリペプチドGKG−NH2
、CQG−NH2、およびGPG−NH2、ならびにこれらの組み合わせは、HI
V−1、HIV−2、およびSIV感染をより有効に阻害した。図7に示すよう
に、300μMのGKG−NH2およびCQG−NH2は、細胞懸濁液中のp24
抗原の存在によって検出されたように、HIV−1感染性をほぼ100%低減し
た。表7中に挙げられた低減%は、ペプチド処理された試料で検出されたp24
抗原量を対照試料で検出されたp24抗原量で除算し、ペプチドを得るためにこ
の被除数に100を乗じて割合を出し、割合を100%から引くことにより算定
した。たとえば、低減%は、GPG−NH2により以下のように示された:
【0138】
【数1】5.6x102 x100 = 3%、そして100%−3%=97% 2.0x104
【0139】 第1の5つの実験(表3ないし7)では、トリペプチドGKG−NH2、CQ
G−NH2、およびGPG−NH2、ならびにこれらの組み合わせは、5μMまた
はそれ以上の濃度でHIV−1、HIV−2、およびSIV感染を阻害した。
【0140】 第6の実験(表8および図4)では、小ペプチドRQG−NH2、KQG−N
2、ALG−NH2、GVG−NH2、VGG−NH2、ASG−NH2、SLG
−NH2、およびSPT−NH2は、100μMでHIV−1感染を有効に阻害か
つ/防止することが示された。表7に示すように、上清中のキャプシドタンパク
質p24の量で測定された、ほぼ100%のウィルスの低減は、小ペプチドRQ
G−NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、SLG−NH2により達成された。
表8に示すp24の低減%は、表7について上記に説明されるように算定された
。GVG−NH2、VGG−NH2、ASG−NH2、およびSPT−NH2は、1
00μMでHIV−1感染を阻害または防止するのにあまり有効でないが、トリ
ペプチドは、高濃度ではより有効であると考えられている。表3ないし8および
図4に示す実験1ないし6で示されたデータは、ウィルス性キャプシドタンパク
質の配列に対応する小ペプチドが濃度の全範囲にわたって有効な抗ウィルス性作
用物質であることを示している。
【0141】 上記の実験では、ウィルス性キャプシドタンパク質に対応する配列を有する修
飾小ペプチドが、ウィルス性キャプシドタンパク質に結合し、ウィルス性キャプ
シドタンパク質重合を防止または阻害し、それによって適切なキャプシド集合お
よびウィルス性感染を遮ることにより、ウィルス性感染(たとえば、HIV−1
、HIV−2、およびSIV感染)を阻害することが示されている。上記に詳細
した多くのアッセイを用いて、いずれの小ペプチド、修飾小ペプチド、オリゴペ
プチド、またはペプチド疑似体の能力を同定して、HIVまたはSIV感染を防
止または阻害し得る。同様の技法を用いて、いずれの小ペプチド、修飾小ペプチ
ド、オリゴペプチド、またはペプチド疑似体の能力を同定して、他のウィルス性
感染も防止または阻害し得る。さらに、この一群の実験は、タンパク質重合に必
要なタンパク質間の相互作用に有効な阻害剤であるペプチド薬の他の例も提供す
る。
【0142】 複数のウィルス性キャプシドタンパク質の配列は既知であるため、種々のウィ
ルス性キャプシドタンパク質の適切な重合を防止するアミド型の小ペプチドのデ
ザイン、製造、および同定は容易である。複数のウィルス性キャプシドタンパク
質は、たとえば、主相同性領域(MHR)と呼ばれる20アミノ酸長の相同性領
域を含み、この領域は、多数の腫瘍性レンチウィルスのカルボキシ末端ドメイン
内に存在する(図5を参照)。図5は、HIV−1のカルボキシ末端ドメイン(
残基146−321)を示しており、この配列を、いくつかが鳥、ネズミ、およ
びサルに感染する他のウィルスのキャプシドタンパク質配列と比較している。こ
れらのウィルスキャプシドタンパク質の配列にかなりの相同性が見出されること
に留意されたい。研究者らは、カルボキシ末端ドメインがHIV−1のキャプシ
ド二量化およびウィルス性集合に必要とされることを観察した。(Gamble et al
. ,Science 278:849(1997)、本明細書に参照により開示される)。この開示に記
載されているアッセイにおいて抗ウィルス性活性を示した小ペプチドは、HIV
−1、HIV−2、またはSIVのカルボキシ末端ドメインの領域に完全にある
いは部分的に対応しており、ウィルスのN末端ドメインの領域はキャプシド重合
とって重要であり、ウィルス性キャプシドタンパク質のN末端領域のアミノ酸に
完全にあるいは部分的に対応する小ペプチドのデザインおよび合成は、本発明の
望ましい実施形態である。しかしながら、ウィルス性キャプシドタンパク質のM
HR領域およびカルボキシ末端ドメイン内のアミノ酸に完全にあるいは部分的に
対応する小ペプチドの使用が、本発明の実施形態に好ましい。
【0143】 図5に開示された配列の領域に対応する小ペプチド、オリゴペプチド、および
/またはペプチド疑似体をデザインおよび製造することにより、HIV、SIV
、RSV、HTLV−1、MMTV、MPMV、およびMMLV感染を阻害する
新規の分子を、当業者には明らかなように、上記のスクリーニング法またはこれ
らのアッセイの改変を用いることによって即座に同定し得る。さらに、たとえば
アレナウィルス、ロタウィルス、オルビウィルス、レトロウィルス、パピロマウ
ィルス、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、パラミクソウィルス、ミクソウィ
ルス、およびヘパドナウィルス属のウイルスの、多数の他のウィルス性キャプシ
ドタンパク質の配列が既知である。これらの配列に完全にあるいは部分的に対応
する小ペプチド、オリゴペプチド、および/またはペプチド疑似体を選択して、
迅速にスクリーニングして、本明細書に記載のウィルス感染性アッセイ、ウィル
ス性キャプシドタンパク質結合アッセイ、および電子鏡検法、または本開示を与
えられた当業者には明らかであるようなこれらのアッセイの改変を用いることに
より、ウィルス感染を有効に阻害および/または防止するものを同定し得る。
【0144】 好ましい実施形態は、タンパク質間の相互作用、タンパク質重合、および超分
子複合体の集合を遮るのに必要とされる修飾カルボキシ末端を有する小ペプチド
(1つ以上のアミノ酸および長さが10アミノ酸長に等しいかそれよりも短い)
小ペプチドを含むペプチド薬剤である。好ましくは、タンパク質間の相互作用、
タンパク質重合事象、または超分子複合体の集合に伴うタンパク質の領域に対応
する配列を有するペプチド、トリペプチド、およびオリゴペプチドならびに対応
するペプチド疑似体を使用する。たとえば、本発明のオリゴペプチドは、4個の
アミノ酸、5個のアミノ酸、6個のアミノ酸、7個のアミノ酸、8、9、または
10個のアミノ酸を有してもよく、本発明のペプチド疑似体は、4、5、6、7
、8,9、または10個のアミノ酸に類似した構造を有し得る。望ましいオリゴ
ペプチドは、トリペプチドGPG−NH2、GKG−NH2、CQG−NH2、R
QG−NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、GVG−NH2、VGG−NH2
、ASG−NH2、およびSLG−NH2、およびSPT−NH2中に完全にある
いは部分的に見出される配列を含み得る。ジペプチド、トリペプチド、およびオ
リゴペプチドに類似したペプチド疑似体はまた、GPG−NH2、GKG−NH2 、CQG−NH2、RQG−NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、GVG−N
2、VGG−NH2、ASG−NH2、およびSLG−NH2、およびSPT−N
2中に見出される配列に対応し得る。
【0145】 小ペプチドは、カルボキシル基(COOH)よりはむしろそれらのカルボキシ
末端にある修飾基(例えば、アミド基)(CO−NH2)を有することが好まし
い。カルボキシ末端を有する他の修飾基を有する小ペプチドを用いることができ
るが、望ましくは、加えた修飾基はアミド基と同じ電荷を有し、アミド基と立体
的に同じ作用をする(米国特許第5,627,035号、Vahine et al.、カル
ボキシル末端にある異なる弛緩基を有するペプチドを比較するアッセイに関する
)。予期せぬことに、本発明者は、修飾基(例えば、アミド基または化学的にか
つ立体的にアミド基と同様に作用する置換基)により、ペプチドは関心あるタン
パク質と相互作用することができ、それにより、タンパク質−タンパク質相互作
用、タンパク質の重合、および超分子複合体の集合を妨げることを開示した。
【0146】 以下の開示では、生化学的ツールおよびジペプチド、トリペプチド、10個以
下のアミノ酸を有するオリゴペプチド、ならびに10個以下のアミノ酸を有する
トリペプチドおよびオリゴヌクレオチドに類似するペプチドミメティクス(pepti
domimetics)(集合的に「ペプチド薬」と呼ぶ)を含む薬学的組成物を製造する
ために、幾つかのアプローチを提供する。「ペプチド薬」は、例えば、2個、3
個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸、および2個
、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸を有する
ペプチドに類似するペプチドミメティクスである。さらに、「ペプチド薬」は、
以下のように多量体または多量体化薬剤として提供される、2個、3個、4個、
5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個のアミノ酸を有するペプチドまた
は2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個のアミノ酸
を有するペプチドに類似するペプチドミメティクスである。
【0147】 予防薬もしくは治療薬に対する望ましい生化学的ツールまたは構成成分は、タ
ンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合現象、または超高分子複合体の
集合の十分な親和性または抑制が得られるような形態または方法で、ペプチド薬
を提供する。天然のモノマーペプチド薬(例えば、各々唯一の結合エピトープを
保有するペプチド薬の別個のユニットとして現れる)は十分能力がある一方で、
合成リガンドまたは多量体リガンド(例えば、幾つかの結合エピトープを有する
ペプチド薬の複数ユニットとして現れる)は、タンパク質−タンパク質相互作用
、タンパク質重合、および超高分子複合体の集合を抑制するはるかに大きな能力
を有することができる。「多量体」という用語は、単一の別個のユニット、例え
ば、タンデムに結合した幾つかのトリペプチド、オリゴペプチド、またはペプチ
ドミメティクスのように結合した1つよりも多いリガンドの存在を指し、「多量
体化」という用語と区別して、例えば、トリペプチド、オリゴペプチドまたはペ
プチドミメティクスの幾つかの個々の分子の1つより大きいユニットの存在を指
すことを意味することに留意すべきである。
【0148】 多量体薬剤(合成または天然)は、高分子支持体にペプチド薬を結合させるこ
とにより得られる。「支持体」はまた、ペプチド薬を結合させるか、または固定
するか、または安定化する担体、樹脂またはいかなる高分子構造と称することが
できる。固体支持体としては、反応トレイの壁またはウェル、試験管、ポリスチ
レンビーズ、磁気ビーズ、ニトロセルロースストリップ、膜、ラテックス粒子の
ような微小粒子、ヒツジ(または他の動物)の赤血球細胞、人工細胞またはその
他のものが挙げられるが、これらに限定されない。支持体はまたは、医薬品調製
用として理解されるような担体である。
【0149】 高分子支持体は、疎水性非共有相互作用によりペプチド薬の一部と相互作用す
る疎水性表面を有することができる。支持体の疎水性表面はまた、疎水性基が結
合されているプラスチックまたは任意の他のポリマー(例えば、ポリスチレン、
ポリエチレンまたはポリビニル)のようなポリマーであり得る。あるいは、ペプ
チド薬は、タンパク質およびオリゴ糖/多糖(例えば、セルロース、デンプン、
グリコーゲン、キトサンまたはアミノ化セファロース)を含む担体に共有結合す
ることができる。これらの後者の実施形態において、ヒドロキシ基またはアミノ
基のようなペプチド薬における反応基は、担体上の反応基に結合して、共有結合
するのに使用され得る。支持体はまた、ペプチド薬と相互作用する帯電した表面
を有することができる。さらに、支持体は、ペプチド薬に結合するように、化学
的に活性化され得る他の反応基を有することができる。例えば、臭化シアン活性
化マトリックス、エトキシ活性化マトリックス、チオおよびチオプロピルゲル、
ニトロフェニルクロロフォルメートおよびN−ヒドロキシスクシンイミドクロロ
ホルメートリンケージ、ならびにオキシランアクリル支持体は、当該技術分野に
おいて一般的である。
【0150】 支持体はまた、酸化ケイ素(例えば、シリカゲル、ゼオライト、珪藻土または
アミノ化ガラス)のような無機担体を含有することができ、ペプチド薬は、ヒド
ロキシ、カルボキシまたはアミノ基および担体上の反応基を介してその無機担体
に共有結合する。さらに、幾つかの実施形態では、リポソームまたは脂質二重層
(天然または合成)は、支持体として考えられ、ペプチド薬は、リポソームエン
ジニアリングにおける技術により膜表面に結合されるか、または膜の中に組み込
まれる。1つのアプローチにより、リポソーム多量体支持体は、二重層表面上に
露出されるペプチド薬および脂質二重層にペプチド薬を固定する第2のドメイン
を含む。アンカーは、既知の膜ドメインに類似して、疎水性アミノ酸残基から構
築することがでるか、または従来の技術により第1のドメインに結合するセラミ
ドを含有することができる。
【0151】 身体で使用するための(すなわち、予防薬または治療薬用に)支持体または担
体は、望ましくは生理学的に非毒性であり、好ましくは、非免疫応答性である。
身体で使用するための考えられる担体としては、ポリLリシン、ポリD,L−ア
ラニン、リポソーム、およびクロモソルブ*(Johns-Manville Products, Denver
Co.)が挙げられる。リガンド結合クロモソルブ*(Synsorb-Pk)を、溶血性尿毒
症症候群の防止に関してヒトに試験し、逆反応を示さないと報告された(Armstro ng et al, J. Infectious Disease, 171:1042-1045(1995)。幾つかの実施形態に 関して、本発明者は、被験体の身体に、ペプチド薬を結合する能力を有する「裸 の(naked)」担体(すなわち、結合したペプチド薬を欠如している)の投与を意 図する。このアプローチにより、「プロドラッグ型」治療を予想し、その治療で は、裸の担体をペプチド薬とは別に投与し、両方が被験体の体にひとたび存在す ると、担体およびペプチド薬は、多量体複合体を構築する。
【0152】 ペプチド薬のより大きな融通性を助長し、それにより支持体により付与される
立体障害を克服するために、ペプチド薬および支持体間のλリンカーのような適
切な長さのリンカーの挿入がまた意図される。適切な長さのリンカーの確定は、
本開示ににおいて詳述するアッセイにおいて、リンカーを変えて、ペプチド薬を
スクリーニングすることにより確定される。
【0153】 1つより多い型のペプチド薬を含む複合支持体もまた、1つの実施形態である
。「複合支持体」は、2つまたはそれ以上の異なるペプチド薬を結合または固定
するのに用いられる、担体、樹脂、または任意の高分子構造であってもよく、そ
れらはp24のようなキャプソメアタンパク質に結合し、および/またはキャプ
シド集合を妨げ、および/またはHIVもしくはSIV感染のようなウイルス感
染を抑制する。幾つかの実施形態では、リポソームまたは脂質二重層(天然また
は合成)は、複合支持体およびペプチド薬を構築する際の使用のために意図され
、それらは、リポソームエンジニアリングにおける技術を用いて、膜表面に結合
されるか、または膜の中に組み込まれる。上記のように、ペプチド薬のより大き
な融通性を助長し、それにより起こり得る立体障害を克服するために、ペプチド
薬および支持体間のλリンカーのような適切な長さのリンカーの挿入がまた意図
される。適切な長さのリンカーの確定は、本開示ににおいて詳述するアッセイに
おいて、リンカーを変えて、ペプチド薬をスクリーニングすることにより確定さ
れる。
【0154】 本発明の他の実施形態では、上述の多量体およぶ複合支持体は、それぞれ「多
量体化多量体支持体」および「多量体化複合支持体」を創り出すために、結合さ
れた多量体化リガンドを有することができる。多量体化リガンドは、例えば、分
子生物学における従来の技術を用いて、2つまたはそれ以上のペプチド薬をタン
一列に連結することにより得ることができる。多量体化形態にあるリガンドは、
p24のようなキャプソメアタンパク質に結合し、および/またはキャプシド集
合を妨げ、および/またはHIVもしくはSIV感染のようなウイルス感染を抑
止する、より優れた能力を有する薬剤を得る能力のために、多くの適用に有利で
あり得る。さらに、多量体化薬剤を構成する個々のドメイン間のフレキシブルλ
リンカーのようなリンカーまたはスペーサーの組込みは、有利な実施形態である
。タンパク質結合ドメイン間の適切な長さのλリンカーの挿入は、例えば、分子
内のより大きな融通性を助長し、立体障害を克服することができる。同様に、多
量体化リガンドおよび支持体間のリンカーの挿入は、より大きな融通性を助長し
、支持体により付与され立体障害を制限することができる。適切な長さのリンカ
ーの確定は、本開示により詳述されるアッセイにおいて、リンカーを変化させて
、リガンドをスクリーニングすることにより、確定することができる。
【0155】 好ましい実施形態では、上述の様々な型の支持体は、修飾ペプチドGPG−N
2、GKG−NH2、CQG−NH2、RQG−NH2、KOQ−NH2、ALG
−NH2、GVG−NH2、VGG−NH2、ASG−NH2、SLG−NH2およ
びSPT−NH2を用いて、創り出すことができる。多量体支持体、複合支持体
、多量体化多量体支持体、または多量体化複合支持体は、全部で「支持体結合薬
」と称され、また好ましくは、トリペプチドGPG−NH2、GKG−NH2、C
QG−NH2、RQG−NH2、KQG−NH2、ALG−NH2、GVG−NH2
、VGG−NH2、ASG−NH2、SLG−NH2およびSPT−NH2を用いて
構築される。
【0156】 本明細書に開示する組成物の幾つかの製造および使用方法もまた、実施形態で
ある。1つのアプローチにより、PPl技術により得られるペプチド薬を医薬品
に組み込む。すなわち、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合現象
、または疾患を防止または抑制するペプチド薬の能力のために、選択、デザイン
、製造、および同定されるペプチド薬(例えば、ペプチドキャラクタリゼーショ
ンアッセイにおけるそれらの性能により同定されるペプチド薬)を、ヒトの疾患
を治療する際に使用するために、医薬品に組み込む。幾つかの態様では、選択お
よびデザインは、コンピューターシステムにより達成される。探索プログラムお
よび検索プログラムは、例えば、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質
重合、または超高分子複合体集合を抑制するペプチド薬を選択およびデザインす
るための1つまたはそれ以上のデータベースにアクセスするために使用される。
さらに、合理的薬剤デザインにおけるアプローチは、上述のように、ペプチド薬
を選択およびデザインするのに使用される。いったん選択およびデザインされる
と、ペプチド薬が「得られる」(例えば、製造するか、または商品を購入する)
。次に、関心あるタンパク質に結合し、タンパク質重合を妨げ、疾患を防止また
は治療するペプチド薬の能力を評価するペプチドキャラクタリゼーションアッセ
イで、ペプチド薬をスクリーニングする。次に、かかるキャラクタリゼーション
アッセイにおいて、ペプチド剤の性能に基づいて、ペプチド剤を選択する。ペプ
チド薬を表すシンボルを有し、1つまたはそれ以上のシンボルはペプチドキャラ
クタリゼーションアッセイにおける性能を示すプロフィールを創り出すことがで
き、これらのプロフィールは、医薬品に組み込むための、または新規ペプチド薬
のさらなる選択およびデザインのための、適切なペプチド薬を選択するために比
較される。キャラクタリゼーションされると、従来の技術に従って、ペプチド薬
を医薬品に組み込む。
【0157】 薬理学的に有効な化合物は、ガレノス式薬剤調製法の従来の方法に従って処理
して、患者(例えば、ヒトを含む哺乳動物)に投与する医療用薬剤を製造する。
修飾あり及びなしで、ペプチド薬は医薬品に組み込まれる。さらに、幾つかの経
路により、ペプチド薬または小ペプチドをコードする核酸塩基配列を送達する医
薬品または治療薬の製造は、実施形態である。例えば、限定するものではないが
、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質重合現象、または超高分子複合
体の集合を妨げる小ペプチドをコードする配列を有するDNA、RNAおよびウ
イルスは、本発明の態様の範囲内である。所望のペプチドをコードする核酸は、
単独で、またはペプチド薬と組合せて、投与することができる。
【0158】 ペプチド薬は、従来の賦形剤、すなわち、ペプチド薬と有害に反応しない、非
経口的、経腸的(例えば、経口)または局所的適用に適した薬学的に許容可能な
有機または無機担体物質と混合して使用することができる。適切な薬学的に許容
可能な担体としては、水、塩溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジ
ルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトースのような炭化水
素、アミロースまたはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、
粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペンタエリ
スリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリド
ン等が挙げられるが、これらに限定されない。製剤は滅菌され、望ましい場合に
は、活性化合物と有害に反応しない助剤、例えば、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿
潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、風味および芳香性物
質等と混合される。それらはまた、望ましい場合には、他の有効薬、例えばビタ
ミンと組み合わせることができる。
【0159】 特定のペプチド薬配合物の有効量および投与方法は、個々の患者および病期、
ならびに当業者に既知の他の要素に基づいて変化し得る。かかる化合物の治療効
力および毒性は、細胞培養液または実験動物における標準的な薬学的手法、例え
ば、ED50(集団の50%における治療学的に有効な用量)およびLD50(
集団の50%の致死用量)により確定することができる。治療効果に対する毒性
の用量比は、治療指数であり、それは、比LD50/ED50と表現することが
できる。大きな治療指数を示す薬学的組成物は好ましい。かかる化合物の投与量
は、毒性がほとんどないか、または全くないED50を含む循環濃度の範囲内に
あるのが好ましい。投与量は、用いる投与形態、患者の感受性、および投与経路
に応じて、この範囲内で変化する。
【0160】 正確な投与量は、治療されるべき患者を考慮して、個々の医師により選択され
る。投与量および投与は、十分なレベルの活性不部分を提供するか、または所望
の効果を維持するために、調整される。考慮してもよいさらなる要素としては、
病期の重度、患者の体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物併用(
複数可)、反応感受性および治療に対する耐性/応答が挙げられる。活性が短い
薬学的組成物は、毎日投与されるが、活性が長い薬学的組成物は、2、3もしく
は4日毎、毎週または2週間に1回投与される。特定の配合物の半減期およびク
リアランス率(clearance rate)に応じて、本発明の薬学的組成物は、1日につき
1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以
上、投与される。
【0161】 標準投与量は、投与経路に依存して、薬1〜100,000マイクログラムま
で、全用量は約10gまで、変化させることができる。望ましい投与量としては
、250μg、500μg、1mg、50mg、100mg、150mg、20
0mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、50
0mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、80
0mg、850mg、900mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.
4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2g、3g、4g
、5g、6g、7g、8g、9g、および10gが挙げられる。さらに、本発明
のペプチド薬の濃度は、局所形態でこの薬を投与する実施形態において、かなり
高くてもよい。ペプチド薬のモル濃度は、幾つかの実施形態で用いることができ
る。局所投与および/または塗布医療用装備のための望ましい濃度は、100μ
M〜800mMの範囲である。これらの実施形態で好ましい濃度は、500μM
〜500mMの範囲である。例えば、局所塗布および/または塗布医療用装備に
おける使用のための好ましい濃度としては、500μM、550μM、600μ
M、650μM、700μM、750μM、800μM、850μM、900μ
M、1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、3
5mM、40mM、45mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90
mM、100mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160
mM、170mM、180mM、190mM、200mM、300mM、325
mM、350mM、375mM、400mM、425mM、450mM、475
mMおよび500mMが挙げられる。送達のための特定の投与量およ方法に関す
るガイドは、文献(例えば、米国特許第4,657,760号、第5,206,
344号、または第5,225,212号を参照)および以下により提供される
【0162】 より具体的には、本発明のペプチド薬の投与量は、所望の効果を獲得するのに
十分なペプチド薬を提供する量である。したがって、本発明の実施形態の用量は
、約0.1μM〜500mMの組織もしくは血液濃度またはその両方を引き起こ
し得る。望ましい用量は、約1〜800μMの組織または血液濃度またはその両
方を引き起こす。好ましい用量は、約10μM〜約500μMの組織または血液
濃度を引き起こす。好ましい用量は、例えば、10μM、15μM、20μM、
25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、6
0μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95
μM、100μM、110μM、120μM、130μM、140μM、145
μM、150μM、160μM、170μM、180μM、190μM、200
μM、220μM、240μM、250μM、260μM、280μM、300
μM、320μM、340μM、360μM、380μM、400μM、420
μM、440μM、460μM、480μM、および500μMの組織もしくは
血液濃度またはその両方に達成するのに要する小ペプチドの量である。800μ
Mよりも大きい組織濃度を引き起こす用量は好ましくないが、それらは本発明の
幾つかの形態で用いられ得る。血中レベルで測定されるように、組織における安
定な濃度を維持するように、ペプチドの一定の注入を提供することできる。
【0163】 ペプチド薬の投与経路には、局所投与経路、経皮投与経路、非経口投与経路、
胃腸投与経路、経気管支投与経路(transbronchial)、および経肺胞(transalv
eolar)投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。局所投与は、ペプチ
ドを含むクリーム、ジェル、リンス(rinse)などを局所的に適用することによ
り達成される。経皮投与は、ペプチド薬が皮膚を浸透し、血流に入ることが可能
なクリーム、リンス(rinse)、ジェルを適用することによって達成される。非
経口投与経路には、中心静脈への直接注射のような電気または直接注入、静脈内
、筋肉内、腹腔内、または皮下注射が挙げられるが、これらに限定されない。胃
腸投与経路には、経口摂取および直腸が挙げられるが、これらに限定されない。
経気管支投与経路および経肺胞投与経路には、吸入、または口あるいは鼻腔が挙
げられるが、これらに限定されない。
【0164】 局所適用に適切なペプチド薬含有化合物の組成物には、生理学的に許容可能な
移植片(インプラント)、軟膏、クリーム、リンス、およびジェルが挙げられる
が、これらに限定されない。ペプチドが少なくとも最小限に溶解可能であること
に基づいた薬学的に許容可能ないずれの液体、ジェル、または固体物は、本発明
での局所使用に適している。局所適用のための組成物は、特に、HIVの伝染を
防止するために性交の間に有用である。かかる使用に適した組成物は、膣または
肛門座薬、クリーム、および潅水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】 経皮投与経路に適したペプチド薬の組成物は、製薬的に許容可能な、皮膚に直
接適用されるか、またはたとえば経皮装置(transdermal device)(経皮パッチ
)保護担体中に入れられる懸濁液、オイル、クリーム、および軟膏が挙げられる
が、これらに限定されない。適切なクリーム、軟膏などの例は、たとえば、Phys
ician's Desk Referenceに見られ得る。適切な経皮装置の例は、たとえば、Chin
enらに付与され、1989年4月4日に提出された、米国特許第4,818,5
40号(参照により本明細書に開示される)に記載されている。
【0166】 非経口投与経路に適したペプチド薬の組成物は、製薬的に許容可能な無菌等張
液であるが、これに限定されない。かかる溶液は、中心静脈線、静脈内、筋肉内
、腹腔内、または皮下注入へのペプチド薬の注入に適した食塩水(saline)およ
びリン緩衝食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】 経気管支投与経路および経肺胞投与経路に適したペプチド薬の組成物には、吸
入のための種々のタイプのエアロゾルが挙げられるが、これらに限定されない。
たとえば、ペンタミジンは、ニューモシティス−カリーニー(pneumocystis cari
nii)により引き起こされる肺炎を防止するために、AIDS患者にエアロゾルに
より鼻腔内投与される。経気管支投与経路および経肺胞投与経路のペプチド投与
に適した装置も実施形態である。かかる装置には、アトマイザーおよびベーパラ
イザが挙げられるが、これらに限定されない。現在利用可能な形態の多くのアト
マイザーおよびベーパライザが、ペプチド薬を送達するのに容易に適合し得る。
【0168】 胃腸投与に適したペプチド薬の組成物としては薬学的に許容可能な粉末、丸剤
が、経口摂取に関しては液体が、直腸投与に関しては座剤が挙げられるが、これ
らに限定されない。HIV感染の最も一般的な経路および使用の容易さから、胃
腸投与、特に経口投与が、本発明の好ましい実施形態である。トリペプチド(G
PS−NH2)を有する500ミリグラムのカプセルを調製し、4℃で貯蔵する
と、最低12ヶ月安定であることがわかった。他のウイルス−宿主系でこれまで
に示されるように、経口後の血清中で、小ペプチドの特異的な抗ウイルス活性を
検出することができる(Miller et al. Appl. Microbiol., 16:1489(1968))。
【0169】 本ペプチド剤は、HIV感染の防止が重要である情況で用いるのにも適してい
る。例えば、医療従事者は、HIV陽性であるかもしれないそしてその分泌物お
よび体液がHIVウイルスを含有し得る患者に絶えず接している。さらに、ペプ
チド剤は、HIVの伝染を防止するために性交中に用いるための抗ウイルス組成
物中に処方され得る。このような組成物は当業界で既知であり、PCT公告WO
90/04390(Modak等、1990年5月3日)(この記載内容は、参照により本
明細書中に開示される)下で公開された国際出願にも記載されている。
【0170】 本発明の局面は、HIV伝染に対して防御する手袋、シーツおよび作業表面の
ような医療装備のためのコーティングも含む。あるいはペプチド剤は、高分子医
療用具中に含浸し得る。特に好ましいのは、医療用手袋およびコンドームのため
のコーティングである。医療用具に用いるのに適したコーティングは、ペプチド
を含有する粉末により、またはペプチド剤が懸濁される高分子コーティングによ
り提供され得る。コーティングまたは用具のための適切な高分子物質は、生理学
的に許容可能なものであって、それにより治療的有効量のペプチド剤が拡散され
得る。適切なポリマーとしては、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアミ
ド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラ
フルオロエチレン、ポリビニルクロリド、セルロースアセテート、シリコーンエ
ラストマー、コラーゲン、シルク等が挙げられるが、これらに限定されない。こ
のようなコーティングは、例えば米国特許第4,612,337号(Fox等,1986
年9月16日発行)(この記載内容は、参照により本明細書中に開示される)に記
載されている。
【0171】 単量体および多量体ペプチド剤は、予防的測定としてまたはすでに疾患に苦し
められている被験者を治療するための療法として被験者の治療に適している。し
たがって、ヒト疾患の治療方法は、本発明の実施態様である。予防薬としてのペ
プチドで誰もが処置され得るが、しかし最も適切な被験者は、特定の疾患に罹患
する危険がある人々である。例えば本発明の多数の方法においては、危険に直面
した個体をまず同定する。
【0172】 NFκB関連疾患(例えば炎症性疾患または免疫障害)に罹患した個体は、こ
の転写活性剤と関連する遺伝子産物の発現レベルに基づいて同定し得る。例えば
サイトカインの過剰発現を有する個体は、タンパク質ベースのまたはRNAベー
スの診断により同定し得る。一旦同定されれば、NFκBの二量体化を抑制する
治療的有効量のペプチド剤を個体に投与する。同様にして、IκBを過剰発現す
る個体を治療し得る。したがって、タンパク質ベースのまたはRNAベースの診
断により個体を同定し、一旦同定されれば、NFκB/IκB複合体の生成を中
断する治療的有効量のペプチド剤を個体に投与する。
【0173】 さらに、細菌毒素の毒性作用を蒙っている個体を治療し得る。ペプチドは最近
毒素の毒性作用の改善のために予防薬として誰にでも投与し得るが、しかし好ま
しくは感染個体または細菌感染の危険性のある人々を同定する。この決定をなし
得る多数の診断検定が当業界で既知である。一旦同定されれば、細菌ホロ毒素の
生成を妨げる治療的有効量のペプチド剤が投与される。
【0174】 さらに別の実施態様としては、アルツハイマー病およびスクレーピーの治療お
よび予防の方法が挙げられる。多数の人々がこれらの疾患に罹患する危険性があ
り得るし、これを基礎にして同定され得るが、しかしアルツハイマー病に関連し
た家族歴または遺伝子マーカーを有するか、あるいはプリオン関連タンパク質の
存在に関して陽性と試験されたことのある個体が、好ましくは危険性のある患者
として同定される。アルツハイマー病を発症する恐れのある人々を同定するため
のいくつかの診断アプローチが報告されている(例えば、米国特許第5,744
,368号、第5,837,853号および第5,571,671号参照)。これらのア
プローチを用いて、アルツハイマー病を発症する恐れのある患者を同定し得るし
、当業者に既知のその他のアプローチも用いられ得る。一旦同定されれば、アル
ツハイマー病に罹患した個体またはアルツハイマー病に罹患する恐れのある患者
に、前記で詳述したアプローチ(集合的に「PPIテクノロジー」と呼ばれる)
により選定され、デザインされ、製造され、そしてキャラクタリゼーションされ
た治療的安全且つ有効量のペプチド剤が投与される。同様に、プリオン関連タン
パク質の証拠を有すると同定された場合には、PPIテクノロジーを用いて、症
状を治療する必要のある被験者に投与される薬剤を製造する。
【0175】 本発明のさらに別の実施態様は、癌に罹患した患者または癌の恐れがある患者
を同定し、次にPPIテクノロジーにより得られた治療的安全且つ有効量のペプ
チド剤を投与する癌の治療または予防の方法である。本方法を用いて、チューブ
リン重合に関連した多数の形態の癌、例えば白血病、前立腺癌および結腸癌(こ
れらに限定されない)を治療または予防し得る。いくつかの情況では、誰もが癌
を発症する恐れがあり、したがって治療を要する個体として同定されるが、しか
し望ましくは、病歴または家族歴を有する個体を治療のために同定する。異なる
形態の癌を発症する恐れがあるか否かを確定するために、いくつかの診断手法が
利用可能である。例えば米国特許第5,891,857号は、BRCA1検出に
基づいて乳癌、卵巣癌、結腸癌および肺癌を診断するためのアプローチを提供し
、米国特許第5,888,751号は、SCP−1マーカーを検出することによ
り細胞形質転換を検出するための一般的アプローチを提供し、米国特許第5,8
91,651号は、糞便から結腸直腸上皮細胞またはその断片を回収することに
より結腸腫瘍形成を検出するためのアプローチを提供し、米国特許第5,902
,725号は、トリアンテナリー(triantennary)である結合オリゴ糖を有する前
立腺特異的抗原の存在に関して検定することにより前立腺癌を検出するためのア
プローチを提供し、そして米国特許第5,916,751号は、TGFB−4遺
伝子の存在を検出することにより結腸または卵巣のムチン腺癌あるいは精巣の腺
癌を診断するためのアプローチを提供する。多数のさらなる遺伝子ベースのおよ
び血液ベースのスクリーンが既知である。
【0176】 さらに、ウイルス性疾患の治療方法が提供される。したがって感染個体を同定
し、次にウイルスキャプシド集合を、したがってウイルス感染を妨げる治療的有
効量のペプチド剤を投与する。ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染の
恐れのある個体は、好ましくは必要性のある被験者として同定される。
【0177】 さらにいくつかの実施態様では、ヒト疾患の治療のために、他の慣用的療法と
一緒に、ペプチド剤を投与する。一アプローチによれば、ペプチド剤は、外科的
切除単独により提示されるものより良好な患者における殺腫瘍応答を達成するた
めに、細胞低減療法(例えば腫瘍の外科的切除)と一緒に投与される。別の実施
態様では、ペプチド剤は、放射線治療単独により提示されるより良好な患者にお
ける殺腫瘍応答を達成するために、放射線療法とともに投与される。さらに、ペ
プチド剤は、放射性免疫療法単独により生じるより効率的に癌を治療するために
放射性免疫療法とともに投与され得る。さらに本発明のペプチド剤は、抗ウイル
ス剤またはアルツハイマー病を治療するための作用物質とともに投与され得る。
【0178】 いくつかの好ましい実施態様では、ペプチド剤を含む治療薬は、より良好なウ
イルス応答を達成するためにHIV感染のようなウイルス感染を治療する他の治
療薬とともに投与される。現在、ヒトにおけるHIV−1感染の抗ウイルス治療
における臨床的使用において、4つの異なる種類の薬剤が存在する。これらは、
(i)ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤(NRTi)、例えばチドビジン、
ラミブジン、スタブジン、ジダノシン、アバカビルおよびザルシタビン、(ii
)ヌクレオチド類似体逆転写酵素阻害剤、例えばアデトビルおよびビバキシル、
(iii)非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTi)、例えばエファビレ
ンツ、ネビラピンおよびデラビルジン、ならびに(iv)プロテアーゼ阻害剤、
例えばインジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビルおよびアムプレ
ナビルである。2、3または4つの異なる種類の薬剤を、本発明のペプチド剤の
投与とともに同時に用いることにより、異なる種類の薬剤およびペプチド剤を克
服する多重突然変異が同一ウイルス粒子中に現れるということはあまりありそう
にないため、HIVは耐性を発生するとは考えにくい。
【0179】 したがって、ペプチド剤がヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤、ヌクレオチ
ド類似体逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤およびプロテアー
ゼ阻害剤とともに、当業者に既知の用量および方法により投与されることが、本
発明の好ましい実施態様である。本発明のペプチド剤およびヌクレオシド類似体
逆転写酵素阻害剤、ヌクレオチド類似体逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転
写酵素阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤を含む薬剤も本発明の実施態様である。
【0180】 実施態様および実施例に関して本発明を記載してきたが、本発明の精神を逸脱
しない限り、種々の修正がなされ得ると理解されるべきである。したがって本発
明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。本明細書中に引用した参考文献
はすべて、参照により本明細書中に開示される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、未処理HIV粒子の電子顕微鏡写真の組み合わせである。
【図2】 図2は、プロテアーゼ阻害剤リトナビルと接触しているHIV粒子の電子顕微
鏡写真の組み合わせである。
【図3】 図3は、GPG−NH2と接触しているHIV粒子の電子顕微鏡写真の組み合
わせである。
【図4】 図4は、HUT78細胞群においてなされたHIV感染性に関する研究の結果
を表すグラフである。
【図5】 図5は、HIV−1 p24タンパク質(残基数146−231)のカルボキ
シル末端に対応するタンパク質配列、およびHIV−2、サル免疫不全ウイルス
(SIV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(
HTLV−1)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、メイスン−ファイザーサル
ウイルス(MPMV)、およびモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)のタ
ンパク質配列を並べた図である。太線は主要相同領域(MHR)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/15 G01N 33/50 Z 33/50 C07K 5/08 // C07K 5/08 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW

Claims (36)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X 1 、X2、およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro
    −Gly−NH2でない)を含む転写活性化阻害用組成物であって、前記組成物
    は転写活性化因子の二量体化を妨げることにより転写活性化を阻害する組成物。
  2. 【請求項2】 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X 1 、X2、およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro
    −Gly−NH2でない)を含む転写抑制阻害用組成物であって、前記組成物は
    転写抑制因子と転写活性化因子との会合を妨げることにより転写抑制を阻害する
    組成物。
  3. 【請求項3】 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X 1 、X2、およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro
    −Gly−NH2でない)を含む、細菌性ホロ毒素の集合を阻害する組成物であ
    って、前記組成物はタンパク質複合体中の毒素タンパク質サブユニットの会合を
    妨げることにより細菌性ホロ毒素の集合を阻害する組成物。
  4. 【請求項4】 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X 1 、X2、およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro
    −Gly−NH2でない)を含む、アクチンの重合を阻害する組成物であって、
    前記組成物はタンパク質複合体中のアクチンサブユニットの会合を妨げることに
    よりアクチンの重合を阻害する組成物。
  5. 【請求項5】 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X 1 、X2、およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro
    −Gly−NH2でない)を含む、β−アミロイドペプチドの凝集を阻害する組
    成物であって、前記組成物はタンパク質複合体中のβ−アミロイドサブユニット
    の会合を妨げることによりβ−アミロイドペプチドの凝集を阻害する組成物。
  6. 【請求項6】 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X 1 、X2、およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro
    −Gly−NH2でない)を含む、チューブリン複合体の集合を阻害する組成物
    であって、前記組成物はタンパク質複合体中のチューブリンサブユニットの会合
    を妨げることによりチューブリン複合体の集合を阻害する組成物。
  7. 【請求項7】 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X 1 、X2、およびX3は、任意のアミノ酸である)を細胞に与えること を含む転写活性化阻害方法。
  8. 【請求項8】 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X 1 、X2、およびX3は、任意のアミノ酸である)を細胞に与えること を含む転写抑制阻害方法。
  9. 【請求項9】 細菌性ホロ毒素の集合を阻害する方法であって、 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX 3 は、任意のアミノ酸である)を細胞に与えること を含む方法。
  10. 【請求項10】 アクチンの重合を阻害する方法であって、 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX 3 は、任意のアミノ酸である)を細胞に与えること を含む方法。
  11. 【請求項11】 β−アミロイドペプチドの凝集を阻害する方法であって、
    有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX3
    は、任意のアミノ酸である)を細胞に与えること を含む方法。
  12. 【請求項12】 チューブリンの重合を阻害する方法であって、 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX 3 は、任意のアミノ酸である)を細胞に与えること を含む方法。
  13. 【請求項13】 炎症性疾患の治療および予防方法であって、 NFκBを過剰発現しているか又はNFκBを過剰発現するおそれのある個人
    を特定し、 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX 3 は、任意のアミノ酸である)を前記個人に投与すること を含む方法。
  14. 【請求項14】 ヒト疾患の治療および予防方法であって、 NFκBを過剰発現しているか又はNFκBを過剰発現するおそれのある個人
    を特定し、 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX 3 は、任意のアミノ酸である)を前記個人に投与すること を含む方法。
  15. 【請求項15】 ヒト疾患の治療および予防方法であって、 IκBを過剰発現しているか又はIκBを過剰発現するおそれのある個人を特
    定し、 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX 3 は、任意のアミノ酸である)を前記個人に投与すること を含む方法。
  16. 【請求項16】 アルツハイマー病の治療および予防方法であって、 アルツハイマー病に罹患しているかアルツハイマー病に罹患するおそれのある
    個人を特定し、 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX 3 は、任意のアミノ酸である)を前記個人に投与すること を含む方法。
  17. 【請求項17】 癌の治療および予防方法であって、 癌に罹患しているか癌に罹患するおそれのある個人を特定し、 有効量の式X123−NH2のアミド型ペプチド(式中、X1、X2、およびX 3 は、任意のアミノ酸である)を前記個人に投与すること を含む方法。
  18. 【請求項18】 薬剤の製造方法であって、 (a)タンパク質−タンパク質相互作用に関与するタンパク質の部位に対応す
    るペプチド試薬を選択し、 (b)過程(a)において選択したペプチド試薬を得ること、および (c)過程(b)において得たペプチド試薬を、前記タンパク質に結合する能
    力、タンパク質重合を阻害する能力、細胞応答を調節する能力からなる群から選
    ばれる性質を有するものと特定し、 (d)過程(c)において特定したペプチド試薬を薬剤に組み入れること を含む方法。
  19. 【請求項19】 前記ペプチド試薬は式X123−NH2のアミド型ペプチ
    ド(式中、X1、X2、およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはG
    ly−Pro−Gly−NH2でない)である請求項18に記載の方法。
  20. 【請求項20】 前記特定過程はペプチドキャラクタリゼーションアッセイ
    を含む前記請求項19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 有効量の式X123−Rのペプチド(式中、X1、X2
    およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro−Gly
    −NH2でなく、Rは前記ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基であり
    、Rはアミド基、または同様の電荷および立体バルクを有する他の原子団を含む
    )を含む転写活性化阻害用組成物であって、前記組成物は転写活性化因子の二量
    体化を妨げることにより転写活性化を阻害する組成物。
  22. 【請求項22】 有効量の式X123−Rのペプチド(式中、X1、X2
    およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro−Gly
    −NH2でなく、Rは前記ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基であり
    、Rはアミド基、または同様の電荷および立体バルクを有する他の原子団を含む
    )を含む転写抑制阻害用組成物であって、前記組成物は転写抑制因子と転写活性
    化因子との会合を妨げることにより転写抑制を阻害する組成物。
  23. 【請求項23】 有効量の式X123−Rのペプチド(式中、X1、X2
    およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro−Gly
    −NH2でなく、Rは前記ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基であり
    、Rはアミド基、または同様の電荷および立体バルクを有する他の原子団を含む
    )を含む、細菌性ホロ毒素の集合を阻害する組成物であって、前記組成物はタン
    パク質複合体中の毒素タンパク質サブユニットの会合を妨げることにより細菌性
    ホロ毒素の集合体を阻害する組成物。
  24. 【請求項24】 有効量の式X123−Rのペプチド(式中、X1、X2
    およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro−Gly
    −NH2でなく、Rは前記ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基であり
    、Rはアミド基、または同様の電荷および立体バルクを有する他の原子団を含む
    )を含む、アクチンの重合を阻害する組成物であって、前記組成物はタンパク質
    複合体中のアクチンサブユニットの会合を妨げることによりアクチンの重合を阻
    害する組成物。
  25. 【請求項25】 有効量の式X123−Rのペプチド(式中、X1、X2
    およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro−Gly
    −NH2でなく、Rは前記ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基であり
    、Rはアミド基、または同様の電荷および立体バルクを有する他の原子団を含む
    )を含む、β−アミロイドペプチドの凝集を阻害する組成物であって、前記組成
    物はタンパク質複合体中のβ−アミロイドサブユニットの会合を妨げることによ
    りβ−アミロイドペプチドの凝集を阻害する組成物。
  26. 【請求項26】 有効量の式X123−Rのペプチド(式中、X1、X2
    およびX3は、任意のアミノ酸であり、前記ペプチドはGly−Pro−Gly
    −NH2でなく、Rは前記ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基であり
    、Rはアミド基、または同様の電荷および立体バルクを有する他の原子団を含む
    )を含む、チューブリン複合体の集合を阻害する組成物であって、前記組成物は
    タンパク質複合体中のチューブリンサブユニットの会合を妨げることによりチュ
    ーブリン複合体の集合を阻害する組成物。
  27. 【請求項27】 前記ペプチドが、式X45678910123
    R(式中、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10は、任意のアミノ酸であ
    り、いずれか1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個のアミノ酸が欠
    けており、Rは前記ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基であり、Rは
    アミド基、または同様の電荷および立体バルクを有する他の原子団を含む)で表
    される請求項21、22、23、24、25、または26に記載の組成物。
  28. 【請求項28】 請求項21または27に記載の有効量のペプチドを細胞に
    与えること を含む転写活性化阻害方法。
  29. 【請求項29】 請求項22または27に記載の有効量のペプチドを細胞に
    与えること を含む転写抑制阻害方法。
  30. 【請求項30】 請求項23または27に記載の有効量のペプチドを細胞に
    与えること を含む細菌性ホロ毒素の集合を阻害する方法。
  31. 【請求項31】 請求項24または27に記載の有効量のペプチドを細胞に
    与えること を含むアクチンの重合を阻害する方法。
  32. 【請求項32】 請求項25または27に記載の有効量のペプチドを細胞に
    与えること を含むβ−アミロイドペプチドの凝集を阻害する方法。
  33. 【請求項33】 請求項26または27に記載の有効量のペプチドを細胞に
    与えること を含むチューブリンの重合を阻害する方法。
  34. 【請求項34】 治療上または予防上有効な量の請求項27に記載の組成物
    を含む薬剤。
  35. 【請求項35】 タンパク質−タンパク質相互作用を阻害する試薬を必要と
    している個人を特定し、 治療上有効な量の請求項27に記載の組成物を含む薬剤を前記個人に投与する
    こと を含むヒト疾患の治療方法。
  36. 【請求項36】 式X45678910123−R(式中、X4、X 5 、X6、X7、X8、X9、およびX10は、任意のアミノ酸であり、いずれか1個
    、2個、3個、4個、5個、6個、または7個のアミノ酸が欠けており、Rは前
    記ペプチドのカルボキシル末端に結合した修飾基であり、Rはアミド基、または
    同様の電荷および立体バルクを有する他の原子団を含む)で表される、有効量の
    ペプチドを含む薬剤。
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