JP2003505845A - X線陽極およびその製造法 - Google Patents

X線陽極およびその製造法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、X線陽極およびその製造法に関する。X線陽極は、陽極材料が層としてダイヤモンド窓上に存在していることによって特徴付けられる。X線陽極は、有利にX線装置の場合に使用され、この場合できるだけ点状のX線発生は、できるだけ高い放射線強度の達成のために必要とされる。特に好ましいのは、X線顕微鏡での使用であり、この場合には、高い放射線密度は、最高の分解能を保証ずる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 技術分野 本発明は、X線陽極およびその製造法に関する。本発明によるX線陽極は、好
ましくはX線装置に使用され、この場合には、できるだけ高い放射線強度が必要
とされる。特に好ましいのは、X線顕微鏡への使用であり、この場合には、高い
放射線強度が最高の分解能を保証する。
【0002】 背景技術 X線を発生させる場合、たいてい陽極材料には電子が衝突する。特徴のある電
子移動によって発生する放射線は、X線に対して透明の窓を通じて装置を去る。
この場合、X線の発生は、吸収の回避のために低いガス圧で行なわれる。透明の
窓は、外側領域から低圧領域を分離するために使用される。
【0003】 例えば、角形のターゲット装置中での銅またはモリブデンからなるX線陽極お
よびベリリウムからなる窓は、公知である。この場合、陽極とベリリウム窓は、
或る程度の空間的距離を有し、互いに傾倒している。発生されたX線をX線鏡検
法の目的のために使用する場合には、この解決法は、陽極と結像すべき対物レン
ズとの間の避けることのできない放射線の発散のために、分解能が直角でのみ適
度であるという欠点に結び付いている。また、ベリリウムは、著しい毒性であり
、したがって窓材料としてはできるだけ避けるべきである。
【0004】 X線装置の放射線出射窓としてのベリリウム窓に対して選択的なものとしては
、米国特許第5173612号明細書に厚さ10μm未満のダイヤモンド窓の使
用が提案されている。しかし、厚手のダイヤモンド窓は、ダイヤモンドによる高
められた吸収のために始めから問題にならないので、前記の薄手のダイヤモンド
窓の場合には、著しい機械的問題をまねく。薄手のダイヤモンド窓は、低圧領域
と外側領域との間の約10Paの圧力差に殆んど耐えることができず、相応す
るウェブによって費用を掛けて安定化されなければならない。
【0005】 更に、陽極材料が層としてベリリウム窓上に存在する、所謂ミクロ焦点調節源
(Mikrofokusquelle)は、公知であり、この場合には、陽極は、できるだけ正確
に焦点調節された電子ビームと衝突される。このミクロ焦点調節源の場合には、
陽極は、結像の際に対物レンズに隣接して移動し、分解能は高めることができる
。この場合、陽極に衝突する電子ビームが陽極上に衝突するのが鋭利であればあ
るほど、分解能はますます良好な結果となる。回折現象を無視しての陽極上での
点状の焦点調節は、理想的なものであろう。しかし、点状の焦点調節の場合には
、電子衝撃によって結合されたエネルギーが材料の溶融および/または蒸発、ひ
いては材料の寿命の短縮をまねくという問題が起こる。陽極材料の蒸発を補償す
るために、陽極は、厚手に選択されなければならない。しかし、厚手の陽極は、
X線が陽極材料それ自体によって吸収されることを生じる。厚手のベリリウム窓
の選択は、同じ理由から排除される。更に、前記解決は、圧力差が存在するため
に、ミクロ焦点調節源が簡単に破裂しうるという機械的問題を生じる可能性があ
る著しい欠点を有する。しかし、これは、毒性のベリリウムの場合には、特に不
利であり、ミクロ焦点調節源が破裂する際に必要とされる、個人の安全に対する
安全措置のために装置の望ましくない可使時間をまねく。この理由から、公知技
術水準による点状の焦点調節は、制限されてのみ可能である。
【0006】 発明の開示 本発明は、公知技術水準による欠点を十分に回避する、X線陽極を提供すると
いう技術的問題に基づくものである。X線陽極は、健康上懸念されるものではな
く、殊に公知技術水準よりも本質的に小さな焦点調節で作業することを可能にす
る。
【0007】 この技術的問題の解決は、請求項1記載の特徴によって解決される。この種の
X線陽極を製造するという、方法による課題は、請求項16記載の特徴によって
解決される。好ましい実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0008】 本発明によれば、前記問題は、陽極材料がダイヤモンド窓上に存在するX線陽
極によって解決することができることが確認された。
【0009】 ダイヤモンドは、ミクロ焦点調節源のための材料としては、最初、不適当であ
るように思われた。Z=6の原子番号を有するダイヤモンドは、Z=4を有する
ベリリウムよりも強くX線を吸収する。従って、ベリリウム窓よりも薄手のダイ
ヤモンド窓を使用しなければならず、その結果、上記の機械的な問題が予想され
る。その上、これまで窓材料としては唯一ベリリウムが該当するものであった。
それというのも、ベリリウムは、十分に圧延可能な金属であり、この金属から簡
単にベリリウム窓を製造することができるからである。この窓は、公知技術水準
によれば、施与されるべき金属陽極のための基板として使用される。
【0010】 しかし、経験によれば、前記欠点をダイヤモンドからなる基板の場合に過剰に
補償しうることを検出することができた。あらゆる予想とは異なり、ダイヤモン
ド窓上のX線陽極は、ベリリウム窓上のX線陽極の場合よりも本質的に小さな焦
点調節で作業することが可能である。過剰補償は、ダイヤモンドが優れた熱導体
であり、それによって導入された熱エネルギーがダイヤモンド基板を通じて特に
効果的に搬出されうるという理由に基づく。それによって、焦点調節領域は、殆
んど加熱されず、よりいっそう強力に焦点調節することが可能になる。これは、
必要に応じてよりいっそう高い放射線密度を生じる。反対に、ベリリウム窓をダ
イヤモンド基板と交換することは、均一な放射線密度および寿命でX線の僅かな
吸収を有する薄手の陽極を可能にする。
【0011】 また、極めて薄手の陽極を有する比較的に厚手のダイヤモンド層は、有利に使
用されうることが判明した。この意味において、50μm〜1000μmの厚さ
、好ましくは300μm〜700μmの厚さのダイヤモンド窓も適している。こ
のような厚さの場合には、熱の効果的な搬出および良好な機械的安定性が保証さ
れている。
【0012】 本発明の範囲内で、多結晶性ダイヤモンド基板またはダイヤモンド窓ならびに
単結晶からなる窓を使用することができる。この場合、多結晶のダイヤモンド基
板は、特に簡単に化学蒸着(英語CVD: chemical vapour deposition)により製
造されることができ、即ち例えば熱線CVDまたはマイクロ波CVDにより製造
されることができる。また、これは、適正な価格で大きなダイヤモンド基板の製
造を可能にする。陽極材料の析出は、別の析出法、即ち例えば物理蒸着法(PVD
)によって行なわれる。
【0013】 陽極材料としては、原則的に金属、多相の金属または金属合金がこれに該当す
る。陽極材料の厚さは、好ましくは1μm〜25μmの範囲内、よりいっそう好
ましくは3〜12μmの範囲内にあり、最高で6μmである。
【0014】 層は、一定の厚さを有する必要はない。それについて、例えばディスク状のミ
クロ焦点調節源の場合には、ディスクの厚さは単一である必要がないものと理解
される。ディスクは、例えば縁部でより大きな厚さを有することができる。従っ
て、層について上記された厚さは、これが焦点調節の範囲内の厚さであることで
十分である。
【0015】 絶えず十分に陽極材料がダイヤモンド上に存在し、相応する運転時間数に依存
せずに蒸発することを保証するために、本発明によるX線陽極には、温度センサ
ーが備えられていてよい。これに関連して洗練された方法は、サーミスターとし
てのダイヤモンド窓の使用、即ちダイヤモンド窓の電気抵抗の熱依存性の利用に
ある。更に、使用者は、相応する較正により最小の蒸発速度の際に望ましい放射
線強度に関連して最適な作業点になお調節することができる。これは、本発明に
よるX線陽極の熱的に避けることのできない損傷の回避を簡易化する。相応する
運転時間数により陽極材料の一部が蒸発される場合であっても、ダイヤモンド窓
は、熱的に著しく安定した材料として多くの場合にはなお完全になる。この場合
には、待ち作業の範囲内で残りの陽極材料は、化学的に除去され、ダイヤモンド
窓は、新たに被覆される。それによって、窓材料としてのダイヤモンドの選択は
、同時にダイヤモンド窓を再使用する場合に本発明によるX線陽極の安価な分解
整備を可能にする。
【0016】 最も簡単な実施態様において、陽極材料は、完全にダイヤモンド基板上に存在
する。しかし、ミクロ焦点調節源の製造の特殊性またはミクロ焦点調節源の導入
された使用に応じて、ダイヤモンド層の一部だけを陽極材料で被覆することで十
分である。ダイヤモンド基板上の陽極材料の付着力に依存して、陽極材料を直接
にダイヤモンド層上に施与することで十分である。しかし、付着力が劣悪である
場合には、付着を補助する中間層は好ましい。同様に、中間層は、できるだけ単
色光の放射線がX線陽極を去る場合には、好ましい。この場合、中間層は、放射
線フィルターおよび/またはモノクロメーターの機能を発揮する。
【0017】 更に、試験の場合には、本発明によるX線陽極を用いての同じ放射線効率の際
に温度に敏感な試料がベリリウム窓を有する比較陽極を用いた場合よりも良好に
試験されうることが判明した。即ち、ダイヤモンドの優れた熱効率のために、大
気領域に対向した側で僅かな温度が存在し、このことは、試験の際に試料を窓に
隣接して配置することを可能にした。また、これは、よりいっそう良好な分解能
を生じる。
【0018】 本発明の実施例は、以下に詳細に記載されている。
【0019】 補助基板上に熱線CVDにより250μmの厚さの多結晶性ダイヤモンド層(
1)を析出させる。補助基板の除去後、このダイヤモンド層上に物理蒸着(PV
D)により6μmの厚さのタングステン層(2)を析出させる。このタングステ
ン層は、ダイヤモンド層を完全に被覆している。X線源を締付装置(3)により
商業的なX線顕微鏡のケーシング(4)中に組み込み、この場合には、安定した
真空を保証するために、パッキンリング(4)が使用されている。唯一の図1は
、組み込まれた状態の前記のミクロ焦点調節源を示す。X線陽極に電子eが点
状で衝突することによって、X線hνが形成される。このX線陽極を用いた場合
には、達成可能な最大の放射線密度が測定される。500μmの厚さのベリリウ
ム層を有するダイヤモンド層を使用する場合には、いずれにせよ同じ条件下で形
成されたX線の放射線密度を1/4に減少させる。同様に500μmのダイヤモ
ンド層厚の場合には、本発明によるX線陽極で達成可能な放射線密度は、この場
合になお良好な熱搬出のためになおいっそう良好になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ミクロ焦点調節源よりなる本発明によるX線陽極を示す略図。
【符号の説明】
1 多結晶性ダイヤモンド層、 2 タングステン層、 3 締付装置、 4 ケーシングまたはパッキンリング、 e 電子、 hν X線
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成13年9月5日(2001.9.5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01J 9/14 H01J 9/14 M 35/18 35/18 (72)発明者 トルステン マッテー ドイツ連邦共和国 マイネ ヴィーゼンヴ ェーク 11 アー

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極材料がダイヤモンド窓上に存在していることを特徴とす
    るX線陽極。
  2. 【請求項2】 多結晶性ダイヤモンド窓が重要である、請求項1記載のX線
    陽極。
  3. 【請求項3】 ダイヤモンド窓が単結晶である、請求項1記載のX線陽極。
  4. 【請求項4】 ダイヤモンド窓の厚さが50μm〜2000μmの範囲内に
    ある、請求項1から3までのいずれか1項に記載のX線陽極。
  5. 【請求項5】 ダイヤモンド窓の厚さが300μm〜700μmの範囲内に
    ある、請求項4記載のX線陽極。
  6. 【請求項6】 陽極材料が金属であるか、合金であるかまたは金属の多数の
    層である、請求項1から5までのいずれか1項に記載のX線陽極。
  7. 【請求項7】 陽極材料の厚さが1μm〜25μmの間にある、請求項1か
    ら6までのいずれか1項に記載のX線陽極。
  8. 【請求項8】 陽極材料の厚さが3μm〜12μmの間にある、請求項7記
    載のX線陽極。
  9. 【請求項9】 陽極材料の厚さが6μmである、請求項8記載のX線陽極。
  10. 【請求項10】 陽極材料が窓を全面的に被覆している、請求項1から9ま
    でのいずれか1項に記載のX線陽極。
  11. 【請求項11】 陽極材料が窓を部分的に被覆している、請求項1から9ま
    でのいずれか1項に記載のX線陽極。
  12. 【請求項12】 中間層がX線陽極とダイヤモンド窓との間に備えられてい
    る、請求項1から11までのいずれか1項に記載のX線陽極。
  13. 【請求項13】 中間層が付着補助層である、請求項1から12までのいず
    れか1項に記載のX線陽極。
  14. 【請求項14】 中間層が放射線フィルターである、請求項1から13まで
    のいずれか1項に記載のX線陽極。
  15. 【請求項15】 温度センサーが備えられている、請求項1から14までの
    いずれか1項に記載のX線陽極。
  16. 【請求項16】 温度センサーとしてダイヤモンド窓が備えられている、請
    求項15記載のX線陽極。
  17. 【請求項17】 X線陽極を製造する、殊に請求項1から16までのいずれ
    か1項に記載のX線陽極を製造するための方法において、補助基板を化学蒸着法
    (CVD)を用いてダイヤモンド層で被覆し、このダイヤモンド層上に金属層を
    析出させることを特徴とする、X線陽極を製造する、殊に請求項1から16まで
    のいずれか1項に記載のX線陽極を製造するための方法。
  18. 【請求項18】 補助基板の被覆を熱線CVDまたはマイクロ波CVDによ
    り行なう、請求項17記載の方法。
  19. 【請求項19】 50μm〜1000μmの厚さを有するダイヤモンド層を
    析出させる、請求項17または18記載の方法。
  20. 【請求項20】 300μm〜700μmの厚さを有するダイヤモンド層を
    析出させる、請求項19記載の方法。
  21. 【請求項21】 X線装置のための請求項1から16までのいずれか1項に
    記載のX線陽極の使用。
  22. 【請求項22】 X線顕微鏡のための請求項1から16までのいずれか1項
    に記載のX線陽極の使用。
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