JP2003503006A - Corynebacteriumglutamicum由来のピルビン酸カルボキシラーゼ - Google Patents

Corynebacteriumglutamicum由来のピルビン酸カルボキシラーゼ

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JP2003503006A JP2000591196A JP2000591196A JP2003503006A JP 2003503006 A JP2003503006 A JP 2003503006A JP 2000591196 A JP2000591196 A JP 2000591196A JP 2000591196 A JP2000591196 A JP 2000591196A JP 2003503006 A JP2003503006 A JP 2003503006A
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アンソニー ジェイ. シンスキー,
フィリップ エイ. レサード,
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、産業的な発酵における、リジンおよびグルタミン酸の産生の間に消費されるオキサロ酢酸を補充する、Corynebacterium glutamicum由来のアナプレロティックな酵素に関する。特に、ピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質をコードする単離された核酸分子が提供される。ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドもまた、提供される。寄託されたピルビン酸カルボキシラーゼコスミドクローンの配列決定によって決定されたヌクレオチド配列(図1(配列番号1)に示される)は、1140のアミノ酸残基のポリペプチド(約123.6kDaの推定分子量を有する)をコードする、オープンリーディングフレームを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (本発明における政府権利の陳述) 本発明の開発の間に行われた研究の一部は、米国政府基金を利用した。米国政
府は、本発明において、特定の権利を有する。
【0002】 (発明の背景) (発明の分野) 本発明は、Corynebacterium glutamicumピルビン
酸カルボキシラーゼタンパク質、およびこのタンパク質をコードするポリヌクレ
オチドに関する。
【0003】 (背景情報) ピルビン酸カルボキシラーゼは、産業的発酵における増殖の間、またはリジン
およびグルタミン酸の産生の間の生合成について消費される、オキサロ酢酸を補
充する、重要なアナプレロティックな(anaplerotic)酵素である。
【0004】 ピルビン酸カルボキシラーゼによって触媒される、2工程反応機構を、以下に
示す:
【0005】
【化1】 反応(1)において、ATP依存性ビオチンカルボキシラーゼドメインは、ビ
オチン−カルボキシル−キャリアタンパク質(BCCP)ドメインにおける特定
のリジン残基に結合した、ビオチン置換基をカルボキシル化する。アセチル補酵
素Aは、重炭酸塩依存性ATP切断の速度を増加させることによって、反応(1
)を活性化する。反応(2)において、BCCPドメインは、トランスカルボキ
シラーゼドメインによって触媒される反応におけるピルベート(pyruvat
e)に、CO2を与える(Attwood,P.V.、Int.J.Bioch
em.Cell.Biol.27:231−249(1995))。
【0006】 ピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子は、以下からクローン化され、そして配列
決定されている:Rhizobium etli(Dunn,M.F.ら、J.
Bacteriol.178:5960−5970(1996))、Bacil
lus stearothermophilus(Kondo,H.ら、Gen
e 191:47−50(1997))、Bacillus subtilli
s(Genbank登録番号Z97025)、Mycobacterium t
uberculosis(Genbank登録番号Z83018)およびMet
hanobacterium thermoautotrophicum(Mu
khopadhyay,B.、J.Biol.Chem.273:5155−5
166(1998)。ピルビン酸カルボキシラーゼ活性は、Brevibact
erium lactofermentum(Tosaka,O.ら、Agri
c.Biol.Chem.43:1513−1519(1979))およびCo
rynebacterium glutamicum(Peters−Wend
isch,P.G.ら、Microbiology 143:1095−110
3(1997))において、以前に測定されている。
【0007】 以前の研究は、アミノ酸のアスパラギン酸ファミリーの収率および生産性が、
アナプレロティックな経路を通じる炭素流出(carbon flux)に、き
わどく依存することを示している(Vallino,J.J.およびSteph
anopoulos,G.Biotechnol.Bioeng.41:633
−646(1993))。代謝のバランスに基づいて、リジン産生の速度が、ア
ナプレロティックな経路を介したオキサロ酢酸合成の速度以下であることが、示
され得る。
【0008】 (発明の要旨) 本発明は、図1(配列番号2)のアミノ酸配列、またはATCC受託番号_と
して、細菌性宿主において寄託されたコスミドクローンによってコードされるア
ミノ酸配列を有するピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコードするポリ
ヌクレオチドを含む、単離された核酸分子を提供する。寄託されたピルビン酸カ
ルボキシラーゼコスミドクローンの配列決定によって決定されたヌクレオチド配
列(図1(配列番号1)に示される)は、1140のアミノ酸残基のポリペプチ
ド(約123.6kDaの推定分子量を有する)をコードする、オープンリーデ
ィングフレームを含む。推定ピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質の1140
のアミノ酸配列を、図1および配列番号2に示す。
【0009】 従って、本発明の1つの局面は、以下からなる群より選択されるヌクレオチド
配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子を提供する:(a)
配列番号2の完全なアミノ酸配列を有するピルビン酸カルボキシラーゼポリペプ
チドをコードする、ヌクレオチド配列;(b)ATCC受託番号_において含ま
れるコスミドクローンによってコードされる、完全なアミノ酸配列を有するピル
ビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列;および
(c)上記の(a)または(b)におけるヌクレオチド配列のいずれかに相補的
なヌクレオチド配列。
【0010】 本発明のさらなる実施形態は、上記の(a)、(b)または(c)におけるヌ
クレオチド配列のいずれかに、少なくとも90%同一、そしてより好ましくは、
少なくとも95%、97%、98%または99%同一な、ヌクレオチド配列を有
するポリヌクレオチド、あるいは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション
条件下で、上記の(a)、(b)または(c)におけるヌクレオチド配列に同一
なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにハイブリダイズする、ポリヌク
レオチドを含む、単離された核酸分子を含む。ハイブリダイズするポリヌクレオ
チドは、A残基のみまたはT残基のみからなるヌクレオチド配列を有するポリヌ
クレオチドに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、ハイブリ
ダイズしない。
【0011】 本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含む組換えベクター、およびそ
の組換えベクターを含む宿主細胞、ならびにこのようなベクターおよび宿主細胞
を作製する方法、ならびに組換え技術により、ピルビン酸カルボキシラーゼポリ
ペプチドまたはペプチドの産生のために、このようなベクターおよび宿主細胞を
使用するための方法に関する。
【0012】 本発明は、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する単離されたピ
ルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをさらに提供する:(a)図1(配列番
号2)に示されるアミノ酸配列を有するピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチ
ドのアミノ酸配列;および(b)ATCC受託番号_において含まれるコスミド
クローンによってコードされる完全なアミノ酸配列を有するピルビン酸カルボキ
シラーゼポリペプチドのアミノ酸配列。本発明のポリペプチドはまた、上記の(
a)または(b)において記載されるポリペプチドと、少なくとも90%の類似
性、より好ましくは少なくとも95%の類似性を有するアミノ酸配列を有するポ
リペプチドを含み、ならびに上記のポリペプチドと、少なくとも70%同一、よ
り好ましくは、少なくとも90%同一、そしてなおより好ましくは、95%、9
7%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0013】 (発明の詳細な説明) 本発明は、クローン化されたコスミドの配列決定により同定された、図1(配
列番号2)に示されるアミノ酸配列を有するピルビン酸カルボキシラーゼタンパ
ク質をコードするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子を提供する。本
発明のピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質は、M.tuberculosi
sピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質およびヒトピルビン酸カルボキシラー
ゼタンパク質と、配列相同性を共有する。図1(配列番号1)において示される
ヌクレオチド配列は、ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコードする、
コスミドIII F10を配列決定することにより得られ、このヌクレオチド配
列は、American Type Culture Collection,
10801 University Blvd.,Manassas,VA 2
0110−2209に_に寄託され、そして登録番号_を与えられた。
【0014】 (核酸分子) 他に示されなければ、本明細書中のDNA分子を配列決定することにより決定
された、すべてのヌクレオチド配列は、自動化DNAシーケンサー(例えば、A
BI Prism377)を用いて決定され、そして本明細書中で決定されたD
NA分子によりコードされたポリペプチドのすべてのアミノ酸配列は、上記で決
定されたDNA配列の翻訳によって推定された。従って、この自動化アプローチ
によって決定された任意のDNA配列について、当該分野で公知のように、本明
細書中で決定された任意のヌクレオチド配列が、いくつかのエラーを含み得る。
自動化によって決定されたヌクレオチド配列は、配列決定されたDNA分子の実
際のヌクレオチド配列と、代表的には、少なくとも約90%同一、より代表的に
は、少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%同一である。実際の配列は、
当該分野で周知の、手動のDNA配列決定法を含む他のアプローチによって、よ
り正確に決定され得る。当該分野でまた公知のように、実際の配列と比較して、
決定されたヌクレオチド配列における一つの挿入または一つの欠失は、ヌクレオ
チド配列の翻訳において、フレームシフトを引き起こし、その結果、決定された
ヌクレオチド配列によってコードされた推定アミノ酸配列が、このような挿入ま
たは欠失の点で開始される、配列決定されたDNA分子によって実際にコードさ
れたアミノ酸配列とは完全に異なる。
【0015】 他に示されなければ、本明細書中で示される各々の「ヌクレオチド配列」は、
デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示
される。しかし、核酸分子またはポリヌクレオチドの「ヌクレオチド配列」によ
って、DNA分子またはポリヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドの配列、
およびRNA分子またはポリヌクレオチド、リボヌクレオチド(A、G、Cおよ
びU)の対応する配列が意図され、ここで、特定化されたデオキシヌクレオチド
配列における、各々のチミジンデオキシヌクレオチド(T)が、リボヌクレオチ
ドウリジン(U)に置換される。例えば、デオキシリボヌクレオチドの略語を用
いて示された、配列番号1の配列を有するRNA分子に対する参照が、配列番号
1の各々のデオキシヌクレオチドA、GまたはCが、対応するリボヌクレオチド
A、GまたはCで置換され、そして各々のデオキシヌクレオチドTが、リボヌク
レオチドUで置換されている配列を有するRNA分子を示すことが意図される。
【0016】 本明細書中で提供された情報(例えば、図1のヌクレオチド配列)を使用して
、ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコードする本発明の核酸分子が、
標準的なクローニング手順およびスクリーニング手順(例えば、開始物質として
mRNAを用いた、DNAをクローニングするための手順)を使用して、得られ
得る。図1(配列番号2)において示されるピルビン酸カルボキシラーゼタンパ
ク質は、M.tuberculosisに約63%同一であり、そしてヒトに4
4%同一である。当業者が理解するように、上記で議論した配列決定のエラーの
可能性、ならびに異なる既知のタンパク質におけるリーダーについての切断部位
の可変性に起因して、寄託されたコスミドによってコードされる実際のピルビン
酸カルボキシラーゼポリペプチドは、約1140アミノ酸を含むが、1133〜
1147アミノ酸の範囲のどこにでも存在し得る。
【0017】 示されるように、本発明の核酸分子は、RNAの形態(例えば、mRNA)ま
たはDNAの形態(例えば、クローニングまたは合成的に産生することによって
得られたcDNAおよびゲノムDNAを含む)であり得る。DNAは、二本鎖ま
たは一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたは一本鎖RNAは、コード鎖(センス
鎖としても公知である)であり得るか、または非コード鎖(アンチセンス鎖とも
よばれる)であり得る。
【0018】 「単離された」核酸分子によって、ネイティブの環境から取り出された核酸分
子(DNAまたはRNA)が意図される。例えば、ベクター中に含まれる組換え
DNA分子は、本発明の目的のために単離されたと考えられる。単離されたDN
A分子のさらなる例は、異種宿主細胞において維持される組換えDNA分子、ま
たは溶液中の精製された(部分的または実質的に)DNA分子を含む。単離され
たRNA分子は、本発明のDNA分子のRNA転写物を、インビボまたはインビ
トロで含む。本発明に従う単離された核酸分子は、合成的に産生されたこのよう
な分子をさらに含む。
【0019】 本発明の単離された核酸分子は、以下を含む:図1(配列番号1)において示
されるヌクレオチド配列の199〜201位の開始コドンを有するオープンリー
ディングフレーム(ORF)を含むDNA分子;図1および配列番号2において
示されるピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質のコード配列を含むDNA分子
;および上記のDNA分子と実質的に異なる配列を含むが、遺伝コードの縮重に
起因して、ピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質をさらにコードするDNA分
子。もちろん、遺伝コードは、当該分野で周知である。従って、当業者が、上記
のように、縮重した改変体を産生することは慣用的である。
【0020】 別の局面において、本発明は、ATCC受託番号_として寄託されたコスミド
クローンによってコードされるアミノ酸配列を有する、ピルビン酸カルボキシラ
ーゼポリペプチドをコードする、単離された核酸分子を提供する。好ましくは、
この核酸分子は、上記の寄託されたクローンによってコードされるポリペプチド
をコードする。本発明は、図1(配列番号1)において示されるヌクレオチド配
列または上記の寄託されたクローン中に含まれるピルビン酸カルボキシラーゼD
NAのヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子、あるいは上記の配列のう
ちの1つに相補的な配列を有する核酸分子をさらに提供する。
【0021】 別の局面において、本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条
件下で、上記の本発明の核酸分子(例えば、ATCC受託番号_において含まれ
るコスミドクローン)におけるポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズする
ポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子を提供する。「ストリンジェント
なハイブリダイゼーション条件」によって、以下を含む溶液中の、42℃での一
晩のインキュベーションが意図される:50% ホルムアミド、5×SSC(1
50mM NaCl、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナ
トリウム(pH7.6)、5×Denhardt’s溶液、10% 硫酸デキス
トランおよび20μg/ml 変性剪断サケ精子DNA。その後、約65℃で、
0.1×SSCでフィルターを洗浄する。ポリヌクレオチドの「一部分」にハイ
ブリダイズするポリヌクレオチドによって、参照ポリヌクレオチドの少なくとも
約15ヌクレオチド(nt)、そしてより好ましくは、参照ポリヌクレオチドの
少なくとも約20nt、さらにより好ましくは、参照ポリヌクレオチドの少なく
とも約30nt、そしてなおより好ましくは、参照ポリヌクレオチドの約30〜
70ntにハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれ
か)が意図される。これらは、診断プローブおよび診断プライマーとして有用で
ある。
【0022】 もちろん、参照ポリヌクレオチド(例えば、寄託されたコスミドクローン)の
より大きな一部に(例えば、50〜750nt長の一部)、または参照ポリヌク
レオチドの完全長にさえ、ハイブリダイズするポリヌクレオチドはまた、本発明
に従ったプローブとして有用であるが、寄託されたDNAのヌクレオチド配列、
または図1(配列番号1)において示されるヌクレオチド配列のほとんどに(全
てにではない場合)、対応するポリヌクレオチドである。例えば、「少なくとも
20nt長」のポリヌクレオチドの一部とは、参照ポリヌクレオチドのヌクレオ
チド配列(例えば、寄託されたDNA、または図1(配列番号1)において示さ
れるヌクレオチド配列)由来の20個以上連続したヌクレオチドを意図する。示
されるように、このような一部は、例えば、Sambrook,J.,Frit
sch,E.F.およびManiatis,T.によって編集された、Mole
cular Clonig、A Laboratory Manual、第2版
、(1989)、Cold Spring Harbor Laborator
y Press(その全体の開示が本明細書中で、本明細書の参考として援用さ
れる)において記載される、従来のDNAハイブリダイゼーション技術に従った
プローブか、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による標的配列の増幅のた
めのプラスミドライマーのいずれかとして診断上有用である。
【0023】 ピルビン酸カルボキシラーゼコスミドクローンが寄託されており、そしてその
決定されたヌクレオチド配列が、図1(配列番号1)において提供されるので、
ピルビン酸カルボキシラーゼDNA分子の一部にハイブリダイズするポリヌクレ
オチドを生成することは、当業者にとって慣用的である。例えば、ピルビン酸カ
ルボキシラーゼコスミドクローンの制限エンドヌクレアーゼ切断または超音波処
理による剪断は、種々の大きさのDNA部分(これは、ピルビン酸カルボキシラ
ーゼDNA分子の一部にハイブリダイズするポリヌクレオチドである)を生成す
るために容易に使用され得る。あるいは、本発明のハイブリダイズするポリヌク
レオチドは、公知の技術に従って合成的に生成され得る。
【0024】 示されるように、ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコードする本発
明の核酸分子は、以下を含み得るが、それらに制限されない;それ自体でこのポ
リペプチドのアミノ酸配列をコードするもの;そのポリペプチドのコード配列お
よび付加的配列(例えば、プレタンパク質配列、またはプロタンパク質配列、あ
るいはプレプロタンパク質配列);例えば、イントロンならびに非コード5’配
列および非コード3’配列(例えば、転写、mRNAプロセシング(スプライシ
ングを含む))およびポリアデニル化シグナルにおいて役割(例えば、mRNA
のリボソーム結合および安定性)を果たす、転写される非翻訳配列を含むがそれ
らに限定されない付加的非コード配列とともに上述の付加的コード配列配列を有
するか、または有さないポリペプチドのコード配列;付加的アミノ酸(例えば、
さらなる機能性を提供する付加的アミノ酸)をコードする付加的コード配列。従
って、ポリペプチドをコードする配列は、マーカー配列(例えば、融合されたポ
リペプチドの精製を容易にするペプチドをコードする配列)と融合され得る。本
発明のこの局面の特定の好ましい実施形態においては、このマーカーアミノ酸配
列は、とりわけ、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(QI
AGEN,Inc.)で提供されるタグ)であり、それらの多くは市販されてい
る。例えば、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
86:821−824(1989)に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンは
、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。「HA」タグは、インフルエンザ赤
血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応し、Wilsonら、Cell
37:767(1984)に記載されている、精製のために有用な別のペプチド
である。
【0025】 本発明はさらに、ピルビン酸カルボキシラーゼのタンパク質の一部、アナログ
または誘導体をコードする本発明の核酸分子の改変体に関する。改変体は、天然
に存在し得る(例えば、天然対立遺伝子改変体)。「対立遺伝子改変体」とは、
生物の染色体上の所定の遺伝子座を占有する遺伝子のいくつかの代替形態の1つ
を意図する。Genes II、Lewin,B.編。天然に存在しない改変体
は、当該分野で公知の変異誘発技術を使用して生成され得る。
【0026】 そのような改変体は、ヌクオチドの置換、欠失または付加により生成される改
変体を含む。この置換、欠失または付加は、1以上のヌクレオチドを含み得る。
改変体は、コード領域もしくは非コード領域またはその両方の領域において変化
し得る。コード領域における改変は、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、
欠失または付加を生じ得る。これらの間で特に好ましいのは、ピルビン酸カルボ
キシラーゼタンパク質またはそれらの一部の特性および活性を変化させない、サ
イレントな置換、付加および欠失である。この点で、保存的置換もまた特に好ま
しい。最も非常に好ましいのは、図1(配列番号2)において示されるアミノ酸
配列を有するピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質をコードする核酸分子であ
る。
【0027】 また好ましいのは、C.glutamicumならびにフィードバック阻害変
異体における、その発現よりも、2〜20倍高くピルビン酸カルボキシラーゼを
好ましく発現する変異体または改変体である。
【0028】 本発明のさらなる実施形態は、以下のヌクレオチド配列と少なくとも90%同
一、およびより好ましくは少なくとも95%、97%、98%または99%同一
であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子
を含む:(a)配列番号2における完全アミノ酸配列を有するピルビン酸カルボ
キシラーゼポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列;(b)ATCC受託
番号 に含まれるコスミドクローンによりコードされる完全アミノ酸配列を有す
る、ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
または(c)(a)または(b)における任意のヌクレオチド配列と相補的なヌ
クレオチド配列。
【0029】 ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列
と、少なくとも例えば、95%「同一な」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレ
オチドとは、そのポリヌクレオチド配列が、ピルビン酸カルボキシラーゼポリペ
プチドをコードする参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチド毎に5箇所まで
の点変異を含み得ることを除いて、そのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が
、参照配列と同一であることを意図する。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と
少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得る
ために、その参照配列の5%までのヌクレオチドが、欠失または別のヌクレオチ
ドと置換され得、あるいは参照配列の総ヌクレオチドの5%までの多くのヌクレ
オチドが、参照配列の中に挿入され得る。参照配列のこれらの変異は、その参照
ヌクレオチド配列の5’末端位置または3’末端位置、あるいはそれらの末端位
置の間のどこかで生じ得、参照配列におけるヌクレオチドの間で個々に散在する
か、または参照配列内で1個以上連続した群として散在するかのいずれかである
【0030】 実際問題として、任意の特定の核酸分子が、例えば図1に示されるヌクレオチ
ド配列または寄託されたコスミドクローンのヌクレオチド配列に少なくとも90
%、95%、97%、98%または99%同一であるか否かは、Bestfit
プログラム(Wisconsin Sequence Analysis Pa
ckage,Version 8 for Unix(登録商標),Genet
ics Computer Group,University Resear
ch Park,575 Science Drive,Madison,WI
53711)のような公知のコンピュータープログラムを使用して従来どおり決
定され得る。Bestfitは、SmithおよびWaterman(Adva
nces in Applied Mathematics 2:482−48
9(1981))の局所的相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の最も相
同性の高いセグメントを見出す。特定の配列が、例えば、本発明に従う参照配列
と95%同一か否かを決定するために、Bestfitまたは任意の他の配列整
列化プログラムを使用する場合、パラメーターは、もちろん、参照ヌクレオチド
配列の全長にわたって同一性のパーセンテージが計算されるように、そして参照
配列のヌクレオチドの総数の5%までの、相同性におけるギャップが可能である
ように設定される。
【0031】 本出願は、図1(配列番号1)に示される核酸配列または寄託されたDNAの
核酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%または99%同一である
核酸分子に関し、それらがピルビン酸カルボキシラーゼ活性を有するポリペプチ
ドをコードするか否かとは無関係である。これは、特定の核酸分子がピルビン酸
カルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードしない場合でさえ、当業者
にはなお、例えばハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)プライマーとしての核酸分子の使用方法が公知であるからである。
【0032】 しかし、図1(配列番号1)に示される核酸配列、または実際に、ピルビン酸
カルボキシラーゼタンパク質活性を有するポリペプチドをコードする寄託された
DNAの核酸配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%または9
9%同一の配列を有する核酸分子が好ましい。「ピルビン酸カルボキシラーゼ活
性を有するポリペプチド」とは、特定の生物学的アッセイにおいて測定される場
合に、本発明のピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質の活性に、類似するが同
一である必要はない活性を提示するポリペプチドを意図する。
【0033】 もちろん遺伝コードの縮重に起因して、寄託したDNAの核酸配列または図1
(配列番号1)に示される核酸配列に対して、少なくとも90%、95%、97
%、98%または99%同一である配列を有する大多数の核酸分子が「ピルビン
酸カルボキシラーゼタンパク質活性を有する」ポリペプチドをコードすることを
、当業者は直ちに認識する。実際、これらのヌクレオチド配列の縮重改変体は全
て同じポリペプチドをコードするので、このことは上記の比較アッセイを実施し
なくとも当業者に明らかである。縮重改変体でない、このような核酸分子につい
ても、妥当な数のものがまたピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質活性を有す
るポリペプチドをコードすることは、当該分野においてさらに認識される。これ
は、タンパク質の機能を有意にもたらすようであるか、またはもたらさないよう
であるかのいずれかのアミノ酸置換(例えば、一つの脂肪族アミノ酸を第二の脂
肪族アミノ酸で置換すること)を当業者らは十分に承知しているからである。
【0034】 例えば、表現型的にサイレントなアミノ酸置換を作製する方法に関するガイダ
ンスが、Bowie.J.U.ら、「Deciphering the Mes
sage in Protein Sequences:Tolerance
to Amino Acid Substitutions」Science
247:1306−1310(1990)に提供されており、その中で著者らは
、変化に対するアミノ酸配列の寛容性を研究するための2つの主なアプローチが
存在することを示す。第1の方法は進化の過程に依存し、ここで変異は自然選択
によって受け入れられるか、または拒絶されるかのいずれかである。第2のアプ
ローチは、遺伝子操作を使用して、クローニングされた遺伝子の特定の位置にア
ミノ酸の変化を導入し、そして選択またはスクリーニングを使用して機能性を維
持する配列を同定する。著者らがいうように、これらの研究は、タンパク質がア
ミノ酸置換に対して驚くべきほど寛容であることを明らかにしてきた。著者らは
さらに、どのアミノ酸変化がタンパク質の特定の位置において許容的である可能
性があるかを示す。例えば、大部分の埋没したアミノ酸残基は、非極性側鎖を必
要とするが、一方、表面側鎖の特徴は一般的にほとんど保存されていない。他の
このような表現型的にサイレントな置換は、Bowie,J.U.ら(前出)お
よびそこに引用される参考文献中に記載される。
【0035】 (ベクターおよび宿主細胞) 本発明はまた、本発明の単離されたDNA分子を含むベクター、この組換えベ
クターで遺伝子操作された宿主細胞、および組換え技術によるピルビン酸カルボ
キシラーゼポリペプチドまたはその一部の産生に関する。
【0036】 組換え構築物は、感染、形質導入、トランスフェクション、トランスベクショ
ン(transvection)、接合、エレクトロポレーション、および形質
転換のような周知の技術を使用して宿主細胞へ導入され得る。ベクターは、例え
ば、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、またはレトロ
ウイルスベクターであり得る。
【0037】 ポリヌクレオチドは、宿主における増殖のために、選択マーカーを含むベクタ
ーに結合され得る。一般的に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈澱物
のような沈澱物か、または荷電された脂質との複合体で導入される。ベクターが
ウイルスである場合、ベクターは、適切なパッケージング細胞株を用いてインビ
トロでパッケージングされ得、次いで宿主細胞に形質導入され得る。
【0038】 目的のポリヌクレオチドに対するシス性作用制御領域を含むベクターが好まし
い。適切なトランス作用因子は、宿主への導入において、宿主によって供給され
るか、相補ベクターによって、供給されるか、またはベクターそれ自体によって
供給され得る。
【0039】 この点における特定の好ましい実施形態において、ベクターは、誘導性および
/または細胞型特異的であり得る特定の発現を提供する。このようなベクターの
うちで、温度および栄養添加物のような、操作が容易であるこれらの環境因子に
よる誘導性であるものが特に好ましい。
【0040】 本発明において有用な発現ベクターとして、以下が挙げられる:染色体ベクタ
ー、エピソームベクター、およびウイルス由来ベクター(例えば、細菌プラスミ
ド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメント由来のベクタ
ー)、ウイルス(例えば、バキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイ
ルス、アデノウイルス、禽痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、およびレトロウイ
ルス)、ならびにそれらの組み合わせ由来のベクター(例えば、コスミドおよび
ファージミド)。
【0041】 そのDNAインサートは、例えば、いくつかの名前を挙げると、ファージλP L プロモーター、E.coli lac、trp、およびtacプロモーター、
SV40初期および後期プロモーター、ならびにレトロウイルスLTRのプロモ
ーターなどのような、適切なプロモーターに作動可能に結合されるべきである。
他の適切なプロモーターは、当業者に公知である。発現構築物は、転写開始のた
めの部位、転写終結のための部位、および転写された領域において翻訳のための
リボソーム結合部位をさらに含む。構築物によって発現される成熟転写物のコー
ド部分は、翻訳されるポリペプチドの始めの翻訳開始コドン(AUGまたはGU
G)および翻訳されるポリペプチドの最後に適切に位置する終結コドンを含む。
【0042】 示されたように、発現ベクターは、好ましくは、少なくとも1つの選択マーカ
ーを含む。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ
葉酸レダクターゼ、またはネオマイシン耐性、ならびにE.coliおよび他の
細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺
伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、またはカナマイシン耐性遺伝子が挙げ
られる。適切な宿主の代表的な例としては、細菌細胞(例えば、E.coli細
胞、C.glutamicum細胞、Streptomyces細胞、およびS
almonella typhimurium細胞);真菌細胞(例えば酵母細
胞)が挙げられる。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当該分
野で公知である。
【0043】 細菌における使用に好ましいベクターには、pA2、pQE70、pQE60
、およびpQE−9(QIAGENから入手可能);pBSベクター、Phag
escriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH
16a、pNH18A、pNH46A(Stratageneから入手可能);
ならびにptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540
、pRIT5(Pharmaciaから入手可能)が含まれる。好ましい真核生
物ベクターの中には、Stratageneから入手可能なpWLNEO、pS
V2CAT、pOG44、pXT1およびpSG;ならびにPharmacia
から入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLがある。他の
適切なベクターは、当業者に容易に明らかである。
【0044】 本発明の使用に適切な公知の細菌プロモーターとしては、E.coli la
cIプロモーターおよびE.coli lac Zプロモーター、T3プロモー
ターおよびT7プロモーター、gptプロモーター、λPRプロモーターおよび
λPLプロモーター、ならびにtrpプロモーターが挙げられる。適切な真核生
物プロモーターには、CMV即時初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプ
ロモーター、初期SV40および後期SV40プロモーター、レトロウイルスL
TRのプロモーター(例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)
、ならびにメタロチオネインプロモーター(例えば、マウスメタロチオネインI
プロモーター)が含まれる。
【0045】 宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DE
AE−デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフ
ェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染または他の方法によって
もたらされ得る。このような方法は、多くの標準的研究室マニュアルに記載され
ている(例えば、Davisら、Basic Methods in Mole
cular Biology(1986))。
【0046】 高等真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、エン
ハンサー配列をベクターに挿入することにより増加され得る。エンハンサーは、
DNAのシス作用性エレメント(通常、約10〜300bpであり、所定の宿主
細胞型においてプロモーターの転写活性を増加するために作用する)である。エ
ンハンサーの例として、複製起点の後側の100〜270bpに位置するSV4
0エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起
点の後側におけるポリオーマエンハンサー、ならびにアデノウイルスエンハンサ
ーが挙げられる。
【0047】 小胞体の管腔へか、細胞膜周辺腔へか、または細胞外環境へ翻訳されたタンパ
ク質の分泌のために、適切な分泌シグナルは、発現されたポリペプチドに取り込
まれる。このシグナルは、ポリペプチドに対して内在性であり得るか、または異
種シグナルであり得る。
【0048】 ポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で発現され得、そし
て分泌シグナルのみならず、付加的な異種機能的領域も含み得る。従って、例え
ば、付加的なアミノ酸(特に荷電されたアミノ酸)の領域は、精製の間、または
続く操作および保存の間、宿主細胞における安定性および持続性を改良するため
にポリペプチドのN末端へ付加され得る。また、ペプチド部分が、精製を容易に
するために、ポリペプチドに付加され得る。
【0049】 ピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質は、硫酸アンモニウム沈澱またはエタ
ノール沈澱、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホ
セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニ
ティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、および
レクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって組換え細胞培養物から回
収され、そして精製され得る。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(
「HPLC」)が精製のために用いられる。
【0050】 本発明のポリペプチドとしては以下が挙げられる:天然に精製された生成物;
化学合成手順の産物;および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細
胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換
え技術によって産生された産物。組換え産生手順において用いられる宿主に依存
して、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されていてもよく、またはグリコ
シル化されていなくてもよい。さらに、本発明のポリペプチドはまた、いくつか
の場合、宿主媒介プロセスの結果として、改変された開始メチオニン残基を含み
得る。
【0051】 (ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドおよびペプチド) 本発明はさらに、寄託されたDNAによりコードされるアミノ酸配列、もしく
は図1(配列番号2)のアミノ酸配列、または上記ポリペプチドの一部を含むペ
プチドまたはポリペプチドを有する、単離されたピルビン酸カルボキシラーゼポ
リペプチドを提供する。用語「ペプチド」および「オリゴペプチド」は(一般的
に認識されるように)、同義とみなされ、そして各々の用語は、文脈が必要とす
るように、少なくとも、ペプチジル結合により連結されるアミノ酸の鎖を示すた
めに可換的に使用され得る。語「ポリペプチド」は、10を超えるアミノ酸残基
を含む鎖に対して、本明細書中で使用される。本明細書中の全てのオリゴペプチ
ドおよびポリペプチドの式および配列は、左から右へ、そしてアミノ末端からカ
ルボキシル末端への方向で、書かれる。
【0052】 ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドのいくつかのアミノ酸配列が、タン
パク質の構造または機能に有意に影響することなく変化し得ることは、当該分野
で認識される。配列におけるこのような差が意図される場合、活性を決定するタ
ンパク質上の重大な領域が存在することは、記憶されるべきである。一般的に、
類似の機能を実行する残基が使用される場合、三次構造を形成する残基を置換す
ることは可能である。他の例では、改変がタンパク質の重大ではない領域で起こ
る場合、残基の型は、全く重要でない可能性がある。
【0053】 従って、本発明はさらに、実質的な活性を示すか、または以下で議論するタン
パク質部分のようなピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質の領域を含むピルビ
ン酸カルボキシラーゼタンパク質のバリエーションを含む。このような変異体と
しては、欠失、挿入、逆位、反復および型置換(例えば、ある親水性残基から別
の残基へ置換すること、しかし、一般的に、強親水性残基から強疎水性残基へで
はない)が挙げられる。小さな変化、またはこのような「中性」アミノ酸置換は
、一般的に活性にほとんど効果がない。
【0054】 代表的に、脂肪族アミノ酸のAla、Val、Leu、およびIleの間の、
あるものから別のものへの置換(replacement);ヒドロキシル残基
のSerおよびThrの置き換え(interchange)、酸性残基のAs
pおよびGluの交換(exchange)、アミド残基のAsnとGlnとの
間の置換(substitution)、塩基性残基のLysおよびArgの交
換(exchange)、芳香族残基のPhe、Tyrの間の置換(repla
cement)は、保存的置換(substitution)として、理解され
る。
【0055】 上記に詳細に記載されるように、アミノ酸の変化が表現型的にサイレントであ
るようであること(すなわち、機能に対して有意な有害効果を有さないようであ
ること)に関する、さらなるガイダンスは、Bowie,J.U.ら、「Dec
iphering the Message in Protein Sequ
ences:Tolerance to Amino Acid Substi
tutions,」Science 247:1306−1310(1990)
において見い出され得る 本発明のポリぺプチドは、好ましくは、単離された形態で提供され、そして好
ましくは実質的に精製される。ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドの組換
え的に生成されたバージョン(version)は、SmithおよびJohn
son、Gene 67:31−40(1988)に記載される1工程の方法に
よって、実質的に精製され得る。
【0056】 本発明のポリペプチドとしては、寄託されたDNAによってコードされるポリ
ペプチド、配列番号2のポリペプチド、ならびに上記のポリペプチドに対して少
なくとも90%類似性、より好ましくは少なくとも95%類似性、そしてなおよ
り好ましくは少なくとも97%、98%または99%類似性を有するポリペプチ
ドが挙げられる。本発明のさらなるポリペプチドとしては、寄託されたDNAに
よりコードされるポリペプチド、配列番号2のポリペプチドに対して、少なくと
も70%同一、より好ましくは少なくとも90%または95%同一、なおより好
ましくは少なくとも97%、98%または99%同一なポリペプチドが挙げられ
、そして少なくとも30アミノ酸、およびより好ましくは少なくとも50アミノ
酸を有する、このようなポリペプチドの部分もまた挙げられる。
【0057】 2つのポリペプチドに関する「%類似性」により、Bestfitプログラム
(Wisconsin Sequence Analysis Package
,Version8 for Unix(登録商標),Genetics Co
mputer Group,University Research Par
k,575 Science Drive,,Madison,WI53711
)および類似性を決定するためのデフォルト設定を使用して、2つのポリペプチ
ドのアミノ酸配列を比較することにより生じる類似性スコアを意図する。Bes
tfitは、SmithおよびWaterman(Advances in A
pplied Mathematics 2:482−489,1981)の局
所的相同性アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性の最良のセグメントを
見出す。
【0058】 ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドの参照アミノ酸配列に、例えば、少
なくとも95%「同一」であるアミノ酸配列を有するポリペプチドによって、ポ
リペプチドのアミノ酸配列は、ポリペプチド配列がピルビン酸カルボキシラーゼ
ポリペプチドの参照アミノ酸配列の各100アミノ酸あたり5つまでのアミノ酸
点変異を含み得ることを除いて、参照配列に対して同一であることを意図される
。換言すれば、参照アミノ酸配列に対して少なくとも95%同一のアミノ酸配列
を有するポリペプチドを得るために、参照配列のアミノ酸残基の5%までが欠失
され得るか、または別のアミノ酸で置換され得るか、あるいは参照配列中の総ア
ミノ酸残基の5%までの多数のヌクレオチドが参照配列中に挿入され得る。これ
らの参照配列の改変は、参照アミノ酸配列のアミノ末端位置またはカルボキシ末
端位置、あるいは参照配列、もしくは参照配列内の1つ以上の連続する群の残基
間のいずれかで個々に分散されるこれらの末端の位置の間ならどこでもで起こり
得る。
【0059】 実際問題として、任意の特定のポリぺプチドが、例えば、図1(配列番号2)
に示されるアミノ酸配列、または寄託されたコスミドクローンによりコードされ
るアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または9
9%同一であるか否かは、Bestfitプログラム(Wisconsin S
equence Analysis Package,Version8 fo
r Unix(登録商標),Genetics Computer Group
,University Research Park,575 Scienc
e Drive,,Madison,WI53711)のような公知のコンピュ
ータープログラムを使用して従来的に決定され得る。本発明に従って、特定の配
列が、参照配列に対して、例えば95%同一であるか否かを決定するために、B
estfitまたは任意の他の配列整列化プログラムを使用する場合、もちろん
、同一性の割合が参照アミノ酸配列の全長にわたって計算されるような、そして
参照配列中のアミノ酸残基の総数の5%までの相同性におけるギャップが容認さ
れるようなパラメーターが設定される。
【0060】 (Corynebacteriumを操作するための遺伝的道具) Corynebacteriumにおいて代謝工学のために必要な遺伝的変化
を作製するために、研究者は、標的経路に関連する遺伝子を同定し、クローニン
グできることを必要とする。彼らはまた、これらがコードする酵素の発現の調節
またはレベルに影響を与えるためにそれたの遺伝子を変化させるための、そして
アミノ酸生合成に対するそれらの効果をモニターするためにCorynebac
terium中に変更遺伝子を続いて再導入するするための方法を必要とする。
従って、代謝操作は、Corynebacteriumおよび他(より簡便には
操作された宿主(例えば、E.coli))の両方で複製され得るプラスミドの
それらの使い捨てアレイで行われなければならない。例えば、抗原耐性をコード
する選択マーカーのコレクション、改変遺伝子の調節を可能にするよく特徴づけ
られた転写プロモーター、およびプラスミドを標的Corynebacteri
um株中へ挿入させることを可能にする、効果的な形質転換または複合系もまた
必要とされる。
【0061】 (プラスミド)いくつかの異なるプラスミドは、単離され、そしてCoryn
ebacteriumにおける遺伝子の導入および発現のために増殖された(S
onnen,H.,ら、Gene 107:69−74(1991))。これら
の大多数は、C.glutamicum、C.callunaeおよびC.la
ctofermentum由来の小さい(3〜5kbp)潜在的なプラスミドと
して本来同定された。これらは、4つの適合性グループに分類され、プラスミド
pCC1、pBL1、pHM1519およびpGA1として例証される。シャト
ルベクター(CorynebacteriumおよびE.coliの両方で複製
され得るプラスミド)は、公知のE.coliプラスミド(特にpBR322ま
たはpUC18由来のColE1複製起点)由来のエレメント、および抗生物質
耐性マーカーを組み込むことにより、これらの潜在プラスミドから開発された。
Corynebacteriumを操作するために非常に有用である、プラスミ
ドの第五クラスは、pNG2(Corynebacterium diphth
eriaeから本来単離されたプラスミド)に基づく(Serwold−Dav
is,T.M.,ら、Prec.Natl.Acad.Sci.USA 84:
4964−4968(1987))。このプラスミドおよびその誘導体は、多く
のコリネバクテリウム種、ならびにE.coliで効果的に複製される。pNG
2中での唯一の複製起点(1.8kbpのみのエレメント)が、グラム陽性宿主
、およびグラム陰性宿主の両方において機能するので、これにさらなるColE
1型エレメントを加える必要は無い。結果として、pNG2誘導体(例えば、p
EP2)は、他のCorynebacteriumシャトルベクターよりずっと
小さく、そして従って、より容易に操作される。
【0062】 (選択マーカー)抗原耐性を与えるいくつかの遺伝子は、プラスミドの選択の
ため、そしてコリネバクテリウム中で働く他の組換えDNAにおいて、有用であ
ることが証明された。これらは、Tn903由来のカナマイシン耐性決定因子、
Streptomycyes hygroscopicusから単離されたヒグ
ロマイシン耐性マーカー、Streptococcus faecalis由来
のテトラサイクリン耐性遺伝子、Tn5由来のブレオマイシン耐性遺伝子、およ
びStreptomycyes acrimycini由来のクロラムフェニコ
ール耐性マーカーを含む。多くのE.coliプラスミド(例えば、pBR32
2)において使用されるβラクタマーゼ遺伝子は、Corynebacteri
umにおけるアンピシリン耐性を与えない。
【0063】 (形質転換系)いくつかの方法が、外来性DNAをCorynebacter
ium中に導入するために発明された。慣用的に使用される最新の方法は、DN
Aおよびポリエチレングリコールの存在下でのスフェロプラストのインキュベー
ションを含む、他のグラム陽性種について成功したプロトコールに基づいた(Y
oshihama,M.,ら、J.Bacteriol.162:591−59
7(1985))。有用である一方、これらの方法は、一般的に非能率的であり
、しばしば、DNA1ミリグラムあたり105未満の形質転換体を得る。Cor
ynebacteriumスフェロプラストのエレクトロポレーションは、非常
により効率的であり、そして形質転換の信頼のおける手段であることが証明され
た。スフェロプラストは、グリシンおよび/または低濃度の細胞壁生合成の他の
阻害剤(例えば、イソニコチン酸ヒドラジン(イソニアジド)、アンピシリン、
ペニシリンG、またはTween−80)を含む濃厚な培地で、細胞を増殖する
ことにより生成される。次いで、エレクトロポーションに供される前に、このス
フェロプラストは、グリセロールを含む低塩濃度緩衝液中で洗浄され、濃縮され
、そしてDNAと混合される。プラスミドDNAの1μグラムあたり107の形
質転換体と同程度に高い効率が,このプロトコールを用いて報告された。
【0064】 コリネバクテリウム中へのDNA転移のための第三の方法は、トランス接合を
含む。この方法は、プラスミドRP4の誘導体を保有する、乱雑なE.coli
株を利用する。E.coliにおいて、RP4は、宿主株からE.coliの他
のレシピエント株、またはさらに他の種までのプラスミドの接合性の転移を媒介
する多くの機能をコードする。これらの「tra機能」は、線毛の形成およびプ
ラスミドの転移を媒介する。RP4はまた、プラスミドを、線毛を介して、そし
てレシピエント株中に伝達させる転換装置により認識される転移起点oriT(
シス作用性エレメント)を保有する。この系より、Simonら(Bio/Te
chnology 1:784−791(1985))は、E.coliからC
orynebacteriumへのプラスミドの移入を可能にする有用なトラン
ス接合の道具を開発した。これらは、RP4からのtra機能をS−17と呼ば
れる株のE.coli染色体中へ再配置する。RP4 oriTを保有するプラ
スミドは、非常に効率的にS17−1から他のレシピエント中へ移動され得る。
この方法は、Corynebacterium中へ複製プラスミドを導入するこ
とに対する有用性を証明したが、遺伝子破壊を生じるためのさらなる有用性も証
明した。このことは、破壊に対して標的化されるCorynebacteriu
m遺伝子のクローン中に選択マーカーを導入することにより達成される。次いで
、この構築物は、このRP4 oriTを保有するが、Corynebacte
riumでの複製を支持するための起点を欠く、E.coliプラスミド中へ連
結される。次いで、このプラスミドを保有するS17−1は、レシピエント株を
用いてインキュベートされ、そしてこの混合物は、後に選択培地に移される。導
入されたプラスミドは、コリネバクテリウム有で複製され得ないので、選択マー
カーを発現するトランス接合物は、ゲノムDNA中で、交叉組換えを最もよく受
けるようである。
【0065】 (制限−欠乏株)使用される形質転換系とは関係なく、コリネバクテリウムが
、E.coli誘導性DNAを外来として認識し得、そしてこのE.coli誘
導性DNAを最もよく分解するという明確な前例が、文献において存在する。こ
の能力は、Corynebacterium制限系および改変系に起因した。こ
の系を克服するために、いくつかの形質転換プロトコールおよびトランス接合プ
ロトコールは、形質転換前に、レシピエント株を簡単に加熱することを必要とす
る。この熱処理は、制限系を担う酵素をおそらく不活性化し、そして酵素が代謝
回転される前に、導入されたDNAを確立させる。DNAの移入の効率を改良す
るための別のストラテジーは、制限系において欠乏性のCorynebacte
rium変異体を単離することであった。これらの株は、Corynebact
erium中で繁殖されたプラスミドとほぼ同じ効率を有する、E.coli中
で繁殖されたプラスミドを取り込む。Corynebacteriumにおける
制限系を回避するために使用される代替的ストラテジーにおいて、Leblon
および共同研究者ら(Reyes,O.,ら、Gene 107:61−68(
1991))は、遺伝子破壊のための「インテグロン(integron)」系
を開発した。インテグロンは、標的宿主DNAと同じ制限/改変特性を有するD
NA分子であり、宿主ゲノムの部分(すなわち、破壊されるゲノムの領域)に相
同であるDNAを保有し、そして宿主細胞において複製され得ない。Coryn
ebacteriumからクローン化された遺伝子は、1つのCoryneba
cterium株中で繁殖されるプラスミド中の選択マーカーにより、始めに割
り込まれる。次いで、この構築物は、コリネバクテリウムのプラスミドから切除
され、そして自己連結され、非複製環状分子を形成する。次いで、この「インテ
グロン」は、制限宿主中にエレクトロポレートされる。DNAの改変は、このイ
ンテグロンにこの宿主制限系を溶出させ、そして宿主ゲノム中への組換えは、選
択マーカーの発現を可能にする。
【0066】 (プロモーター)信頼の置ける転写プロモーターは、Corynebacte
rium中の外来性遺伝子の効率的な発現のために必要とされる。特定の実験の
ために、調節プロモーターの必要性もまた存在し、この活性は、特定の培養条件
下で誘導され得る。プロモーター(例えば、Corynebacterium遺
伝子由来のfdaプロモーター、thrCプロモーター、homプロモーター)
は、相同遺伝子の発現に対する有用性を証明した。E.coli由来の誘導プロ
モーター(例えば、lacリプレッサー(lacI)が存在する場合にイソプロ
ピルチオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導される、PlacおよびPt rc 、trpリプレッサー(trpR)が存在する場合にインドールアクリル酸誘
導物質に応答するPtrp、および温度感応性λリプレッサー(cI857)の存
在下で抑制されるλPl)は、全て、Corynebacteriumにおける
遺伝子発現を調節するために使用された。
【0067】 (遺伝子の同定)適所に他の全ての他の遺伝的道具を用いても、Coryne
bacterium由来の関連遺伝子を同定することの試みは、未だ残存する。
E.coliにおいて、遺伝子を単離するために使用された資源のいくつかは、
形質導入およびトランス接合実験からの、形質導入ファージ、転移因子、E.c
oli染色体の遺伝子地図であり、そしてより最近では、染色体の完全な物理的
および配列地図である。現在まで、Corynebacterium由来の遺伝
子を同定し、回収するための、成功した方法のほとんどは、既知のE.coli
の栄養要求体を補完するために、CorynebacteriumゲノムDNA
を使用することであった。この課題において、Corynebacterium
ゲノムのフラグメントを保有するプラスミドのライブラリーは、特定の酵素また
は機能を欠くE.coli株中に導入される。栄養要求体(例えば、ホモセリン
欠損)をもはや提示しない形質転換体は、Corynebacterium由来
の相補する遺伝子を保有するようである。このストラテジーは、アスパラギン酸
誘導アミノ酸および芳香族アミノ酸の合成、中間代謝および他の細胞プロセスを
担う経路からいくつかを含む、多くのCorynebacterium遺伝子の
単離を導いた。このストラテジーに対する1つの制限は、Corynebact
erium由来の全ての遺伝子がE.coli宿主で発現されるわけではないこ
とである。従って、遺伝子は、プラスミドライブラリーに提示され得るが、それ
は、E.coli変異体を相補し得ず、従って、選択の間に回復されない。この
制限を克服してより少ない遺伝子が同様のストラテジーで同定され、この中で野
生型Corynebacterium由来のプラスミドライブラリーは、他のC
orynebacterium株中の変異体を直接的に相補するために使用され
た。このストラテジーは、この栄養要求宿主における不完全な遺伝子発現の関連
を回避するが、その有用性は、栄養要求体における乏しいプラスミド形質転換効
率により制限される。なお、他の遺伝子は、他の種由来の相同遺伝子に基づく核
酸プローブ、ならびにポリメラーゼ連鎖反応および変性オリゴヌクレオチドプラ
イマーを使用する遺伝子の直接的な増幅を用いてハイブリダイゼーションにより
同定されている。
【0068】 (転移因子)転移因子は、遺伝子の同定における非常に強力な道具である。な
ぜなら、これらは、遺伝子回復と変異現性を結び付けるからである。遺伝子内に
点変異または小さな欠失を生じる古典的な変異誘発技術とは異なり、転移因子が
遺伝子内に挿入される場合、これらは、大きな破壊を形成し、それにより、より
容易な同定のために変更遺伝子を「タグ化(tagging)」する。多くの転
位因子が、Corynebacterium中のトランスポゾンに見出されてい
る。プラスミド(C.xerosisのpTP10およびC.diphther
iaeのpNG2)中に見出されたトランスポゾンは、C.glutamicu
mにおけるトランスポゾンに示され、エリスロマイシンに対する耐性を与えた。
日本のMistubishi Chemical Companyからのグルー
プは、C.glutamicumから発見した挿入配列(IS31831)から
一連の人工トランスポゾンを開発した(Vertes,A.A.,ら、Mol.
Gen.Genet.245:397−405(1994))。IS31831
の逆方向反復の間に選択マーカーを挿入した後、これらの研究者は、エレクトロ
ポレーションを介して、生じたトランスポゾンをE.coliプラスミドのC.
glutamicum株(Corynebacteriumでは複製できない)
中へ導入し得た。彼らは、選択マーカーが、約4×104変異体/μgDNAの
頻度で、標的細胞のゲノム中に挿入されることを見出した。Corynebac
terium栄養用球体を生じるためにこのようなトランスポゾンの使用は、コ
リネバクテリウムにおいて、アミノ酸生合成ならびに他の機能を担ういくつかの
遺伝子の単離を導いた。
【0069】 (形質導入ファージ)形質導入ファージは、遺伝子座をマッピングするため、
および遺伝子を単離するために他の系で使用された。1976年に、日本のAj
inomoto Co.の研究者は、形質導入に有用であり得るファージを同定
するために、150株の特徴づけられたグルタミン酸生成コリネ型細菌の株、お
よび特徴づけられてないグルタミン酸産生コリネ型細菌の株を調査した(Mor
nose,H.,ら、J.Gen.Appl.Microbiol,Rev.1
6:243−252(1995))。このスクリーニングから回収された24の
異なるファージのうち、3つのみが任意の評価可能な頻度でtrpマーカーを、
trp+ドナーからtrp-レシピエントへ形質導入され得るが、しかしこの頻度
は、たった10-7以下である。これらの研究者は、4mMの環状アデノシン一リ
ン酸(cAMP)または1.2Mの塩化マグネシウムを含むことにより、形質導
入効率をわずかに改良し得た。数人の別の研究者は、供給源(例えば、混入する
産業的発酵、土壌および動物の排泄物)からコリネファージを単離することによ
り、信頼のおける形質導入方法を開発することを試みた。多くのファージが単離
され、そして特徴づけられたが、ほとんど形質導入に関連せず、そして、グルタ
ミン酸産生細菌を用いる一般的な使用のための信頼のおける高効率な形質導入系
を開発する機会は、未だ存在する。
【0070】 (実施例) 以下のプロトコルおよび実験の詳細は、続く実施例において参照される。
【0071】 (細菌株およびプラスミド) C.glutamicum21253(hom-、リジン過剰産生株)を染色
体DNAの調製のために使用した。Escherichia coli DH5
α(hsdR-、recA-)(Hanahan,D.,J.Mol.Biol.
166:557−580(1983))を形質転換のために使用した。プラスミ
ドpCR2.1 TOPO(Invitrogen)を、ポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)産物のクローニングのために使用した。プラスミドpRR850は、
本研究において構築し、そしてpCR2.1 TOPOプラスミドにクローン化
した850−bp PCRフラグメントを含んだ。
【0072】 (培地および培養条件) E.coli株を、Luria−Bertani(LB)培地で37℃で増殖
させた(Sambrook,J.ら、Molecular cloning:a
laboratory manual、第2版、Cold Spring H
arbor Laboratory,Cold Spring Harbor,
NY(1989))。C.glutamicumを、LB培地で30℃で増殖さ
せた。記録した場合、アンピシリンを、以下の濃度で使用した:プレート中10
0μg/mlおよび液体培養において50μg/ml。
【0073】 (DNA操作) ゲノムDNAを、Tomiokaら(Tomioka,N.ら、Mol.Ge
n.Genet.184:359−363(1981))により記載されるよう
にC.glutamicumから単離した。PCRフラグメントを、製造業者の
指示に従って、pCR2.1 TOPOベクターにクローン化した。コスミドD
NAおよびプラスミドDNAを、Qiaprepスピンカラムを用いて調製し、
そしてDNAを、Qiaexキット(Qiagen)を用いてアガロースゲルか
ら抽出した。配列決定のためのコスミドDNAの大規模な高純度の調製物につい
ては、Promega Wizardキット(Promega)を使用した。E
.coliの形質転換およびアガロースゲル電気泳動のために、標準的な技術(
Sambrook,J.ら、Molecular cloning:a lab
oratory manual、第2版、Cold Spring Harbo
r Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1
989))を使用した。制限酵素は、Boehringer Mannheim
またはNew England Biolabsから購入した。
【0074】 (コスミドライブラリー) 使用したコスミドライブラリーをC.glutamicum染色体DNAをS
upercosベクター(Stratagene)にクローニングすることによ
り構築した。
【0075】 (ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)) PCRを、Boehringer Mannheim PCRコアキットを用
い、製造業者の指示に従って行った。PCRをCorynebacterium
染色体DNAで行った場合、各反応に約1μgのDNAを使用した。PCR反応
に使用した正方向プライマーは、5’GTCTTCATCGAGATGAATC
CGCG3’であり、使用した逆方向プライマーは、5’CGCAGCGCCA
CATCGTAAGTCGC3’であった。
【0076】 (ドットブロット分析) 本研究において同定したコスミド由来のDNAを含むドットブロットおよびポ
ジティブコントロールとしてのプローブを、S&S(Schleicher&S
chuell)minifold装置を用いて調製した。C.glutamic
umピルビン酸カルボキシレート遺伝子の一部をコードする850−bpフラグ
メントを、プローブとして使用した。このプローブを、ジゴキシゲニン−11−
dUTP(Boehringer Mannheim)を用いて、製造業者によ
り記載されるようなランダムにプライムしたDNA標識化反応で、標識した。ド
ットブロットのハイブリダイゼーション、洗浄および比色検出を、Boehri
ngerからのGeniusシステムを用いて、フィルターハイブリダイゼーシ
ョンについてのそのユーザーズガイド中のプロトコルに従って行った。291コ
スミドとの最初のハイブリダイゼーションを、65℃で一晩行い、そして洗浄を
このハイブリダイゼーション温度で行った。第二のスクリーニングにおいて使用
した17のコスミドについては、ハイブリダイゼーションを、65℃で、しかし
8時間だけ行い、そしてフィルムへの暴露時間を減少した。
【0077】 (ウエスタンブロッティングによるビオチン含有タンパク質の検出) C.glutamicum由来の細胞抽出物を、JettenおよびSins
key(Jetten,M.S.M.およびSinskey,A.J.,FEM
S Microbiol.Lett.111:183−188(1993))に
より記載されたように調製した。細胞抽出物中のタンパク質を、BioRadミ
ニゲル装置中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)/7.5%ポリアクリルアミ
ドゲル中で分離し、そしてTowbinら(Towbin,H.ら、Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 76:4350−4354(1979)
)により記載されたBioRadミニトランスブロット装置を用いて、ニトロセ
ルロース上でエレクトロブロットした。ビオチン化したタンパク質を、BioR
adからのアビジン結合アルカリホスファターゼ、およびSchleicher
&Schullからの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルホスフェート−
p−トルイジン塩/ニトロブルー塩化テトラゾリウムを用いて検出した。
【0078】 (DNA配列決定) 自動化DNA配列決定を、MIT Biopolymers施設で、ABI
Prism377DNAシーケンサーを用いて行った。
【0079】 (配列分析) DNA Strider Version1.0プログラム(Institu
t de Recherche Fondamentale,France)を
、DNA配列を転化、相補および翻訳するため、ならびにこの配列中のオープン
リーディングフレームを発見するために使用した。National Cent
er for Biotechnology Information(NCB
I)からのBLASTプログラム(Altschul,S.F.ら、J.Mol
.Biol.215:403−410(1990))を、タンパク質とDNA配
列を比較するために使用した。タンパク質における相同性検策を、MACAWソ
フトウェア(NCBI)を用いて行った。PCRプライマーを、Biosoft
InternationalからのPrimer Premierソフトウェ
アの助けにより設計した。ExPasy分子生物学サーバー(Universi
ty of Geneva)上のpI/MW計算ツールを、推定アミノ酸配列の
分子量およびpIを推定するために使用した。
【0080】 (実施例1:ビオチン化酵素を検出するためのウエスタンブロッティング) ピルビン酸カルボキシレートがビオチンを含むことが知られているので、ウエ
スタンブロッティングを、C.glutamicumによりビオチン化タンパク
質の産生を検出するために使用した。LB培地で増殖させた細胞から調製した抽
出物中に、2つのビオチン化タンパク質を検出し、(データは示されない)先の
報告と一致した。1つのバンド(約80kDaに位置する)を、アセチルCoA
カルボキシラーゼのビオチン−カルボキシル−キャリアドメイン(BCCP)(
Jager,W.ら、Arch.Microbiol.166:76−82(1
996))として同定した。第二のバンド(120kDaに位置する)は、これ
らのタンパク質が113〜130kDaの範囲にあるので、ピルビン酸カルボキ
シラーゼ酵素であると考えられる(Attwood,P.V.,Int.J.B
iochem.Cell.Biol.27:231−249(1995))。
【0081】 (実施例2:PCRおよびクローニング) C.glutamicumピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子を、先にクロー
ン化した遺伝子の高度な保存領域の相同性に基づいてクローン化した。13の生
物体由来のピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子を検査し、そしてピルビン酸カル
ボキシラーゼに保存されたATP結合サブモチーフに対応するプライマー、およ
びピルベート結合モチーフ(表1)に近接する領域を設計した。アミノ酸が異な
る場合、M.tuberculosisのC.glutamicumとの近い関
係のため、プライマーを、M.tuberculosisに基づいて設計した。
850−bpフラグメントを、PCRを用いてC.glutamicumゲノム
DNAから増幅させ、そしてInvitrogenのpCR2.1 TOPOに
クローン化し、プラスミドpRR850を構築した。プライマーをまた、保存さ
れたビオチン結合部位およびピルベート結合部位に基づいて設計した(データは
示されない)。
【0082】 (実施例3:C.glutamicumピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子を
含有するコスミドの単離) C.glutamicumピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子の一部を含む8
50塩基対フラグメントを、C.glutamicumゲノムライブラリーをプ
ローブするために使用した。スクリーニングの第一ラウンドにおいて、ドットプ
ロットにおける291コスミドのうちの17がポジティブを示した。同じプロー
ブであるが、よりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて、ス
クリーニングの第二ラウンドを、これらの17コスミドについて行い、ポジティ
ブシグナルを有する4コスミドを得た。これらのコスミドが、ピルビン酸カルボ
キシラーゼ遺伝子を確かに含むことを確認するために、これらの4つのポジティ
ブコスミドをテンプレートとして用い、そしてプローブを作製するために使用し
たのと同じプライマーを用いて、PCRを行った。850−bpフラグメントを
4つのポジティブコスミド全てから増幅し、IIIF10、IIE9、IIIG
7およびIIIB7と命名した。
【0083】
【表1】 (表1)13の生物体のピルビン酸カルボキシラーゼ配列(GenBankから
入手した)を、MACAWソフトウェアを用いて整列させた。2つの高度な保存
領域を選択し、そしてオリゴヌクレオチドプライマーを、これらの領域に対応す
るMycobacterium tuberculosis DNA配列に基づ
いて設計した。正方向プライマーは、保存領域Aに対応するDNA配列に基づき
、そして逆方向プライマーは、保存領域Bに対応するDNA配列に基づく。
【0084】 (実施例4:配列決定ストラテジー) プラスミドpRR850の850−bp挿入物を、M13正方向プライマーお
よびM13逆方向プライマーを用いて配列決定した。この配列に基づき、プライ
マーBegrev1およびEndfor1を設計し、そしてピルビン酸カルボキ
シラーゼ遺伝子の850−bp部分の始めおよび終わりから外向きの配列に使用
した。コスミドIIIF10を、配列決定テンプレートとして使用した。この配
列決定を、新しいプライマー(表2)を設計し、この遺伝子の端から端までを「
歩く」まで続けた。
【0085】 (実施例5:配列分析) コスミドIIIF10の3637bpを配列決定した。1140アミノ酸のタ
ンパク質をコードすると推定される、3420−bpのオープンリーディングフ
レームを同定した。この推定タンパク質は、M.tuberculosisピル
ビン酸カルボキシラーゼと63%同一、そしてヒトピルビン酸カルボキシラーゼ
と44%同一であり、そしてC.glutamicum遺伝子pcを、この相同
性に基づいて命名した。この推定タンパク質は、5.4の推定pIおよび123
.6kDaの推定分子量を有し、これはSDS/ポリアクリルアミドゲル電気泳
動により見積もられた120kDaのサブユニット分子量と同様である。開始メ
チオニンの上流に、コンセンサスリボソーム結合部位AAGGAAがあるようで
ある。推定翻訳開始部位は、M.tuberculosis配列との相同性に基
づいて、他の細菌の配列において観察されている(Stryer,L.,Bio
chemistry、第3版、Freeman,NY(1988);Keilh
auer,C.ら、J.Bacteriol.175:5595−5603(1
993))ように、GTGコドンである。このDNA配列は、GenBankに
提出されており、受託番号AF038548が付けられている。
【0086】 C.glutamicumピルビン酸カルボキシラーゼのアミノ末端セグメン
トは、ヘキサペプチドGGGGRGを含み、これは、全てのビオチン結合タンパ
ク質において見出されており、そしてATP−結合部位をであると考えられてい
るGGGG(R/K)G配列(Fry,D.C.ら、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA 83:907−911(1986);Post,L.E
.ら、J.Biol.Chem.265:7742−7747(1990))と
マッチする。ATP結合に関係し、そしてビオチン依存性カルボキシラーゼおよ
びカルバミルホスフェート(carbamyphosphate)シンテターゼ
中に存在することが提案されている(Lim,F.ら、J.Biol.Chem
.263:11493−11497(1988))第二の領域は、C.glut
amicum配列に保存される。この推定C.glutamicumピルビン酸
カルボキシラーゼタンパク質はまた、推定ピルベート結合モチーフ(FLFED
PWDR)を含み、これは、Mycobacteriumヒトピルビン酸カルボ
キシラーゼ、Rhizobiumヒトピルビン酸カルボキシラーゼおよびヒトピ
ルビン酸カルボキシラーゼのトランスカルボキシラーゼドメインに保存される(
Dunn,M.F.ら、J.Bacteriol.178:5960−5970
(1996))。トランスカルボキシラーゼを用いるトリプトファン蛍光研究は
、このモチーフ中に存在するTrp残基が、ピルベート結合に関連することを示
している(Kumer,G.K.ら、Biochemistry 27:597
8−5983(1988))。この酵素のカルボキシ末端セグメントは、推定ビ
オチン結合部位(AMKM)を含み、これは、他のピルビン酸カルボキシラーゼ
および他のビオチン依存性酵素のビオチン−カルボキシル−キャリアタンパク質
(BCCP)ドメインにおいて見出された推定ビオチン結合部位と同一である。
【0087】
【表2】 (表2)コスミドIIIF10中のピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子の配列を
得るために使用したプライマーのDNA配列 先の研究は、ホスホeno/ピルビン酸カルボキシラーゼ(ppc)が、C.
glutamicumに対する主要なアナプレロティック酵素ではないことを示
している。なぜなら、その非存在は、リジン産生に影響しないからである(Gu
bler,M.ら、Appl.Microbiol.Biotechnol.4
0:857−863(1994);Peters−Wendisch,P.G.
ら、Microbiol.Lett.112:269−274(1993))。
さらに、多くの研究が、13C標識実験ならびにNMR分析およびGC−MS分析
(Park,S.M.ら、Applied Microbiol.Biotec
hnol.47:430−440(1997b);Peters−Wendis
ch,P.G.ら、Arch.Microbiol.165:387−396(
1996))または無細胞抽出物(Tosaka,O.,Agric.Biol
.Chem.43:1513−1519(1979))および浸透性の細胞(P
eters−Wendisch,P.G.ら、Microbiol.143:1
095−1103(1997))を用いる酵素アッセイを使用して、ピルビン酸
カルボキシル化酵素の存在を示している。非常に低いピルビン酸カルボキシル化
活性が、無細胞抽出物において検出されたが、この活性は、非常に高いATPバ
ックグラウンドから分離していない。この測定された活性が可逆的な糖新生酵素
(例えば、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼおよびリンゴ酸酵素)に起因するこ
とは、非常にあり得ることである。C.glutamicum中のピルビン酸カ
ルボキシラーゼの存在は、上記の糖新生酵素がこの株のアナプレロティックな必
要性に役立ち得ることを、非常に見込みがないようにする。
【0088】 C.glutamicumピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子の推定アミノ酸
配列は、生物体の多様な群由来のピルビン酸カルボキシラーゼ配列と顕著な類似
性を有する。これは、そのN末端領域にビオチンカルボキシラーゼドメイン、そ
のC末端領域にBCCPドメイン、およびその中心領域に、ピルベートに対して
特異的な結合部位を有するトランスカルボキシラーゼドメインを含む。このC.
glutamicumピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質は、M.tube
rculosisピルビン酸カルボキシラーゼおよびヒトピルビン酸カルボキシ
ラーゼと強力な相同性を示した(Wexler,I.D.ら、Biochim.
Biophys.Acta 1227:46−52(1994))。
【0089】 C.glutamicumが、オキサロ酢酸を再生するアナプレロティックな
機能を行う、1より多い酵素を含むことを見出した前例が存在する。Pseud
omonas citronellolis、Pseudomonas flu
orscens、Azotobacter vinelandiiおよびThi
obacillus novellusは、ppcおよびピルビン酸カルボキシ
ラーゼの両方を含む(O’Brien,R.W.ら、J.Biol.Chem.
252:1257−1263(1977);Scrutton,M.C.および
Taylor,B.L.、Arch.Biochem.Biophys.164
:641−654(1974);Milrad de Forchetti,S
.R.およびCazullo,J.J.,J.Gen.Microbiol.9
3:75−81(1976);Charles,A.M.およびWiller,
D.W.,Can.J.Microbiol.30:532−539(1984
))。Zea maysは、ppcの3つのアイソザイムを含み(Toh,H.
ら、Plant Cell Environ.17:31−43(1994))
、そしてSaccharomyces cerevisiaeは、ピルビン酸カ
ルボキシラーゼの2つのアイソザイムを含み(Brewster,N.K.ら、
Arch.Biochem.Biophys.311:62−71(1994)
)、各々差次的に調節される。C.glutamicum中のピルビン酸カルボ
キシラーゼ遺伝子の存在のこの発見により、この株において、ホスホeno/ピ
ルベート(PEP)、オキサロアセテートおよびピルベートを相互変換し得る酵
素の数は、6に増加する。1つの生物体における6つの酵素全てのこの存在は、
以前は報告されていなかった。P.citronellolisは、オキサロア
セテート、PEPおよびピルベートを相互変換する、1組の5つの酵素(すなわ
ち、ピルビン酸キナーゼ、PEPシンセターゼ、PEPカルボキシラーゼ、オキ
サロアセテートデカルボキシラーゼおよびピルビン酸カルボキシラーゼ)を含む
(O’Brien,R.W.ら、J.Biol.Chem.252:1257−
1263(1977))。Azotobacterは、PEPシンセターゼを除
く上記の酵素全てを含む(Scrutton,M.C.およびTaylor,B
.L.,Arch.Biochem.Biophys.164:641−654
(1974))。
【0090】 C.glutamicumにおける6つの代謝的に関連する酵素の存在は、エ
フェクターを介したこれらの酵素の調節が重要であることを示唆する。他の下流
の活性との協調における、6つの酵素全ての生化学的研究および遺伝子的研究は
、この産業的に重要な生物体による一次代謝産物の産生を最大にするために必要
な、正確な手順の解明を導き得る。
【0091】 (実施例6:ピルビン酸カルボキシラーゼ変異体の構築) ピルビン酸カルボキシラーゼDNAのヌクレオチド180〜ヌクレオチド36
30のリーディングフレーム全体を、PCRを用いて増幅した。PCRに使用し
たオリゴヌクレオチドプライマーは、サイレントな変異誘発によりコード配列内
にあるSalI部位を除去し、そしてEcoRV部位およびSalI部位を、こ
のオープンリーディングフレームの上流および下流にそれぞれ導入するために設
計した。このPCR産物を、EcoRVおよびSalIを用いて消化し、そして
ベクターpBluescriptにクローン化した。得られるプラスミドは、p
PCBluescriptである。pycのプラスミド媒介性破壊を得るために
、pPCBluescriptの誘導体を、pyc遺伝子の中心部分を欠失させ
、そして抗生物質チオストレプトンに対する耐性をコードするtsr遺伝子と置
換させて作製した。次いで、RP4mobエレメントをこのプラスミドに挿入し
、pAL240を得た。このプラスミドは、Corynebacteriumに
結合的に移され得るが、これは、ColE1複製起点のみを有するので、次いで
複製することができない。pAL240を、トランス接合を介してE.coli
S17−1からC.glutamicumへ移し、そしてトランス接合体を、
チオストレプトンおよびナリジクス酸を含む培地上で選択した。
【0092】 各々のトランス接合体の薬物耐性表現型を確認した後、このトランス接合体を
、異なる炭素源上で増殖するそれらの能力について試験した。pAL240は、
C.glutamicum中で複製できないので、生存する細胞のみが、そのゲ
ノムがこのプラスミドとの組換えを受けた細胞でなければならない。いくつかの
候補が、表現型の適切なセットと同一であった:これらは、チオストレプトンお
よびナリジクス酸に対して耐性であり、唯一の炭素源としてグルコースまたはア
セテートを含む最小プレート上で良好に増殖し、そして唯一の炭素源としてラク
テートを含む最小プレート上では不十分に増殖するかまたは全く増殖しない。サ
ザンハイブリダイゼーションおよびPCRに基づくアッセイを、このゲノム中に
ピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子の1つのコピーのみが存在するか否かという
こと、およびそれがチオストレプトン耐性マーカーを用いて破壊されることを確
認するために使用した。この株によるリジン産生およびビオチン化タンパク質の
産生を試験し、そしてΔpyc株を、活性アッセイにおけるネガティブコントロ
ールとし、そして相補性試験のための宿主株とした。
【0093】 (実施例7:過剰発現株の開発) ピルビン酸カルボキシラーゼの増加したレベルがリジンの増加した産生を導く
という仮説を試験するために、そのピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子の発現が
、誘導プロモーターの制御下にある株を作製する必要がある。
【0094】 ベクターpAPE12(これは、IPTG制御trcプロモーターの下流に、
NG2複製起点およびマルチクローニング部位を有する)を、C.glutam
icumにおける発現ベクターとして使用した。Ptrcの下流にピルビン酸カ
ルボキシラーゼ遺伝子を含むpAPE12の誘導体を作製した。このpyc遺伝
子を、SalIおよびXbaIを用いてpPCBluescriptから切り出
し、そして同じ酵素で切断したpAPE12に連結し、pLW305を形成した
。PCBluescriptに(そしてそれ故、pLW305に)存在するこの
ピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子は野生型GTG開始コドンを有し、そしてこ
の野生型遺伝子の5’末端付近に存在するSalI制限部位は、ピルビン酸カル
ボキシラーゼ遺伝子の増幅の間の、1塩基のサイレントな変異の導入により除去
された。
【0095】 pLW305およびpAPE12を、いくつかの他のCorynebacte
rium遺伝子のバックグラウンドへエレクトロポレートした。
【0096】 pLW305のピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子は、GTG開始コドンを有
し、そしてtrcプロモーターと開始コドンとの間に、いくつかの介在DNAを
保有するので、これらの欠点を排除する、ピルビン酸カルボキシラーゼ過剰発現
プラスミド(pXL1)を設計した。この遺伝子の5’末端を、同時にGTG開
始コドンをATGに変化し、そしてBspLU11−I制限部位(これはNco
Iと適合性である)を導入するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、pLW
305から増幅した。次いで、このPCR産物を、BspLU11−IおよびA
feIで切断し、そして、NcoIを用いるpLW305の部分的な消化、続い
てAfeIを用いる完全な切断により得られる7.5kbの骨格に、連結した。
連結および形質転換の2つの独立したセットは、推定pXL1クローンを生じた
【0097】 (実施例8:発酵の結果) ピルビン酸カルボキシラーゼ活性のレベルは、この遺伝子が、そのネイティブ
のC.glutamicumプロモーターから発現される場合、使用される炭素
源により大いに変化することが示されている。従って、これらの炭素源上で増殖
した株におけるピルビン酸カルボキシラーゼの産生を試験した。
【0098】 株NRRL B−11474、NRRL B−11474(pLW305)、
およびNRRL B−11474Δpyc候補35を、2つの異なる炭素源:グ
ルコースまたはラクテート、を有するNRRL B−11474のための最小培
地上でフラスコ中で培養した。増殖およびアミノ酸産生の結果を以下に示す。
【0099】
【表3】 NRRL B−11474およびpLW305は、グルコース上で同じ挙動を
示す。両方の株は、同じ量のバイオマスおよびリジンを産生する。ラクテート上
でもまた、これらの株は、同様なリジンの産生量を有する。NRRL B−11
474(pLW305)が、培地中の全てのラクテート(17g/l)を消費し
たのに対して、野生型NRRL B−11474は、同じ時間の間に40%少な
いラクテートを消費した。NRRL B−11474は、ラクテートを0.37
gラクテート/時の速度で消費すると計算されたのに対して、NRRL B−1
1474(pLW305)株は、この基質を0.65gラクテート/時の速度で
消費した。
【0100】 NRRL B−11474Δpycは、ラクテート上で増殖せず、これは予想
された表現型と一致する。B−11474Δpycのグルコース上での増殖は非
常に低く、そしてこの株はリジンを産生しない。これらの株の挙動をさらに特徴
付けるために、動力学的研究を行う。
【0101】 (実施例9:ビオチン化タンパク質の可視化) ピルビン酸カルボキシラーゼは、ビオチンを含む。従って、細胞における特定
のビオチン化産物の出現をモニターすることにより、この酵素の蓄積の検出が可
能であるはずである。
【0102】 (実施例10:電気泳動ゲル) 電気泳動ゲル中でビオチン化タンパク質を検出するために、市販のアルカリホ
スホターゼに結合したストレプトアビジンを使用した。E.coli DH5α
またはNRRL B−11474の誘導培養物および非誘導培養物からの粗タン
パク質は、pAPE12またはpLW305を保有し、これらのタンパク質を、
2連の7.5%ポリアクリルアミド変性電気泳動ゲル上で分離した。全てのタン
パク質を可視化し、そして各レーンにロードしたタンパク質の等しいレベルを確
実にするために、各対の1つのゲルを、Coomassie Brillian
t Blueで染色する。他方のゲルを、ビオチン化タンパク質と結合するスト
レプトアビジン−アルカリホスファターゼ試薬で処理する。次いで、これらのタ
ンパク質の位置を、比色基質(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフ
ェート(BCIP))とともにアルカリホスファターゼを提供することにより可
視化し得る。他者より報告されたように、2つの主要なビオチン化タンパク質を
検出した。より大きい分子量の種(約120kDa)は、ピルビン酸カルボキシ
ラーゼであり、そしてより小さい分子量の種(約60kDa)は、アセチルCo
Aカルボキシラーゼのビオチン化サブユニットであることが示された。
【0103】 本明細書中上記に言及された全ての刊行物は、本明細書中に参考としてその全
体が援用される。
【0104】 上記の発明を、明瞭さおよび理解の目的でいくぶん詳細に記載しているが、形
態および詳細における種々の変更が、本発明および添付の特許請求の範囲の真の
範囲から逸脱することなくなされ得ることは、本発明の開示を読むことにより、
当業者により理解される。
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ATCC受託番号_において含まれるDNAクローンの配列決定によ
って決定された、完全なピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質のヌクレオチド
(配列番号1)および推定アミノ酸(配列番号2)の配列を示す。このタンパク
質は、約1140アミノ酸残基の配列を有し、そして推定分子量約123.6k
Daを有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 9/00 C12N 15/00 ZNAA C12P 13/08 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM ,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE, KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,L T,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE, SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,U A,UG,US,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 シンスキー, アンソニー ジェイ. アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02115, ボストン, コモンウェルス アベニュー 285 (72)発明者 レサード, フィリップ エイ. アメリカ合衆国 マサチューセッツ 01701, フラミンガム, フォスター ドライブ 11 (72)発明者 ウィリス, ローラ ビー. アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02139, ケンブリッジ, ナンバー1, エルム ストリート 32 Fターム(参考) 4B024 AA03 AA05 BA07 BA72 CA01 EA06 GA11 4B050 CC03 DD02 EE10 HH00 LL02 LL05 4B064 AE25 CA19 CB30 CC24 CD07 DA01 DA10 4B065 AA24Y AB01 AC14 BA02 BD29 CA17 CA27 CA42 CA44

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単離された核酸分子であって、該核酸分子が、以下: (a)配列番号2のアミノ酸配列を有するピルビン酸カルボキシラーゼポリペ
    プチドをコードする、ヌクレオチド配列; (b)ATCC受託番号_に含まれるコスミドクローンによってコードされる
    、完全なアミノ酸配列を有するピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコー
    ドする、ヌクレオチド配列;および (c)(a)または(b)のいずれかのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオ
    チド配列、 からなる群より選択される配列に、少なくとも95%同一なヌクレオチド配列を
    有するポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
  2. 【請求項2】 前記ポリヌクレオチドが、配列番号1の完全なヌクレオチド
    配列を有する、請求項1に記載の核酸分子。
  3. 【請求項3】 前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のアミノ酸配列を有す
    るピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドをコードする、配列番号1のヌクレ
    オチド配列を有する、請求項1に記載の核酸分子。
  4. 【請求項4】 前記ポリヌクレオチドが、ATCC受託番号_に含まれるコ
    スミドクローンによってコードされる、完全なアミノ酸配列を有するピルビン酸
    カルボキシラーゼポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を有する、請求
    項1に記載の核酸分子。
  5. 【請求項5】 単離された核酸分子であって、該核酸分子が、請求項1に記
    載の(a)、(b)または(c)のヌクレオチド配列に同一なヌクレオチド配列
    を有するポリヌクレオチドに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件
    下で、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを含み、ここで、該ハイブリダイズ
    するポリペプチドが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、A
    残基のみまたはT残基のみからなるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
    にハイブリダイズしない、単離された核酸分子。
  6. 【請求項6】 前記ポリヌクレオチドが、DNAである、請求項1に記載の
    単離された核酸分子。
  7. 【請求項7】 前記ポリヌクレオチドが、RNAである、請求項1に記載の
    単離された核酸分子。
  8. 【請求項8】 組換えベクターを作製するための方法であって、該方法が、
    ベクターに、請求項1に記載の単離された核酸分子を挿入する工程、を包含する
    、方法。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の方法によって産生される、組換えベクター
  10. 【請求項10】 組換え宿主細胞を作製する方法であって、該方法が、宿主
    細胞に、請求項9に記載の組換えベクターを導入する工程、を包含する、方法。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載の方法によって産生される、組換え宿主
    細胞。
  12. 【請求項12】 ピルビン酸カルボキシラーゼを産生するための組換え方法
    であって、該方法が、前記ポリペプチドが発現されるような条件下で、請求項1
    1に記載の組換え宿主細胞を培養する工程、および該ポリペプチドを回収する工
    程、を包含する、組換え方法。
  13. 【請求項13】 前記ピルビン酸カルボキシラーゼが、Corynebac
    terium glutamicumにおける発現よりも、2〜20倍高く発現
    される、請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 単離されたピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチドであ
    って、該ポリペプチドが、以下: (a)配列番号2の完全なアミノ酸配列を有するピルビン酸カルボキシラーゼ
    ポリペプチドのアミノ酸配列; (b)ATCC受託番号_において含まれるコスミドクローンによってコード
    される完全なアミノ酸配列を有する、ピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチド
    のアミノ酸配列;および からなる群より選択される配列に、少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有す
    る、単離されたピルビン酸カルボキシラーゼポリペプチド。
  15. 【請求項15】 アミノ酸配列を作製する方法であって、該方法が、請求項
    1に記載のヌクレオチド配列を発現する工程、および該アミノ酸配列を回収する
    工程、を包含する、方法。
  16. 【請求項16】 前記アミノ酸が、リジンである、請求項15に記載の方法
  17. 【請求項17】 ピルビン酸カルボキシラーゼが、Corynebacte
    rium glutamicumにおける発現よりも、2〜20倍高く発現され
    る、請求項15に記載の方法。
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