JP2003347065A - 転写フィルムおよびそれを用いた有機led素子 - Google Patents

転写フィルムおよびそれを用いた有機led素子

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JP2003347065A
JP2003347065A JP2002155687A JP2002155687A JP2003347065A JP 2003347065 A JP2003347065 A JP 2003347065A JP 2002155687 A JP2002155687 A JP 2002155687A JP 2002155687 A JP2002155687 A JP 2002155687A JP 2003347065 A JP2003347065 A JP 2003347065A
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organic led
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Takashi Ogura
隆 小倉
Tomonori Akai
伴教 赤井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特性劣化のない有機LED素子を形成するた
めの転写フィルムおよびそれを用いた有機LED素子と
提供することを課題とする。 【解決手段】 基材フィルム上に、透光性電極と少な
くとも発光層を含む単層または複数層からなる有機層と
が堆積された転写フィルム、または基材フィルム上に少
なくとも一方が透光性電極である一対の電極と電極に挟
持された少なくとも発光層を含む単層または複数層から
なる有機層とが堆積された転写フィルムであり、透光性
電極が2層以上の積層構造であることを特徴とする転写
フィルムにより、上記の課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転写法に用いる転
写フィルムおよびそれを用いた有機LED素子に関す
る。
【0002】
【従来の技術】有機LED素子は、少なくとも一方が透
光性である一対の電極間に、有機物からなる発光層と必
要に応じて正孔(ホ−ル)注入輸送層、電子注入輸送層
などを挟持した構造であり、低電圧駆動、高輝度の発光
が可能であることから、近年、有機LED素子およびそ
れを応用した表示パネルの研究が盛んに行われている。
【0003】有機LED素子は電流注入型の素子である
ため、低電圧化や高効率化のためには特に界面の状態や
電極表面の汚染に注意を払う必要がある。陽極の表面洗
浄処理の方法としては、プラズマ処理(特開平7−14
2168号公報)、ラジカル照射処理(特開平10−1
58816号公報)、エキシマランプによる紫外線照射
処理(特開平10−261484号公報)、逆スパッタ
処理(特開平11−200033号公報)などが挙げら
れる。
【0004】発光層、正孔注入輸送層、電子注入輸送層
などの有機層の形成方法としては、マスク蒸着法やイン
クジェット法などが提案されている。しかしながら、マ
スク蒸着法では大型基板への蒸着が困難であるという問
題があり、インクジェット法では大型基板を用いると時
間が掛かるために生産性が低下するなどの問題がある。
【0005】そこで、大型基板を用いることが可能であ
り、作製時間を大幅に短縮することが可能なパターン化
方法として、転写法(特開平9−167684号公報、
特開平10−208881号公報、特開平11−237
504号公報、特開平11−260549号公報、特開
2000−12216号公報、特開2000−7718
2号公報、特開2001−130141号公報、特開2
001−195012号公報)が提案された。これらの
方法は、レーザー照射などの局所化された熱を利用した
パターン化方法である。
【0006】しかしながら、転写法では基材フィルムに
高分子材料を用いるので熱に弱く、基板温度を上げるこ
とができないという問題点があった。このため基材フィ
ルム上に透明電極として、多結晶質であるインジウム酸
化物と錫酸化物の混合層(ITO)を形成すると抵抗率
の大きい膜しか得られないという問題点があった。ま
た、インジウム酸化物と亜鉛酸化物の混合層(IDIX
O)は基板加熱を行わずに室温で形成でき、比較的低抵
抗率の膜が形成できるが、非晶質であるために表面のダ
ングリングボンドの影響で水分などの吸着が起こりやす
く、特に電流注入型の素子である有機LED素子では特
性への影響が大きいという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特性劣化の
ない有機LED素子を形成するための転写フィルムおよ
びそれを用いた有機LED素子と提供することを課題と
する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、基材フ
ィルム上に透光性電極と少なくとも発光層を含む単層ま
たは複数層からなる有機層とが堆積された転写フィルム
であり、透光性電極が、2層以上の積層構造であること
を特徴とする転写フィルムが提供される。この転写フィ
ルムにより、特性劣化のない有機LED素子を形成する
ことができる。
【0009】また、本発明によれば、基材フィルム上に
少なくとも一方が透光性電極である一対の電極と電極に
挟持された少なくとも発光層を含む単層または複数層か
らなる有機層とが堆積された転写フィルムであり、透光
性電極が、2層以上の積層構造であることを特徴とする
転写フィルムが提供される。この転写フィルムは、基板
上に微細な電極パターンを形成する必要がないので、基
板上の電極をパターニングする際に生じる表面酸化や汚
染などの影響がなく、特性劣化のない有機LED素子を
形成することができる。
【0010】本発明の転写フィルムは、透光性電極がバ
ルク層と表面改質層の2層からなるのが好ましい。この
ような構成により、より特性劣化のない有機LED素子
を形成することができる。
【0011】本発明の転写フィルムは、表面改質層がバ
ルク層を逆スパッタすることにより形成された層である
のが好ましい。このような構成により、透光性電極(バ
ルク層)と表面改質層とを同一のスパッタ装置内で形成
することができ、工程時間の増加を最小限に抑えること
ができる。
【0012】本発明の転写フィルムは、表面改質層の形
成における逆スパッタが、ArとO 2の混合ガスを用い
て行われるのが好ましい。このような構成により、透光
性電極表面の酸化度が上がるので、正孔の注入効率が向
上し、特性劣化のない有機LED素子を形成することが
できる。
【0013】本発明の転写フィルムは、表面改質層を形
成するバルク層がインジウム酸化物と亜鉛酸化物の混合
層であるのが好ましい。このような構成により、転写フ
ィルムにダメージを与えない低い基板温度で透明電極を
形成した場合でも電極抵抗値が低く、より特性劣化のな
い有機LED素子を形成することができる。
【0014】また、本発明の転写フィルムは、透光性電
極が、インジウム酸化物と亜鉛酸化物の混合層と、イン
ジウム酸化物と錫酸化物の混合層との2層からなるのが
好ましい。このような構成により、特性劣化のない有機
LED素子を形成することができ、電極にITOを使用
した場合と同等の特性が得られる。
【0015】本発明の転写フィルムは、2層からなる透
光性電極のインジウム酸化物と亜鉛酸化物の混合層が、
インジウム酸化物と錫酸化物の混合層の膜厚よりも厚い
のが好ましい。このような構成により、特性劣化のない
有機LED素子を形成することができ、基材フィルム上
に透明電極を形成した場合、その電極抵抗はIDIXO
と同程度の低い抵抗値であり、電極にITOを使用した
場合と同等の特性が得られる。
【0016】また、本発明によれば、上記の転写フィル
ムを用いて作製された有機LED素子が提供される。特
に、本発明の有機LED素子は、駆動素子およびスイッ
チング素子を含むアクティブマトリクス基板を有するの
が好ましい。このような構成により、高精細、高機能の
有機LED素子ならびに有機LEDパネルが得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の転写フィルムは、基材フ
ィルム上に透光性電極と少なくとも発光層を含む単層ま
たは複数層からなる有機層とが堆積された転写フィルム
であり、透光性電極が、2層以上の積層構造であるこ
と、および基材フィルム上に少なくとも一方が透光性電
極である一対の電極と電極に挟持された少なくとも発光
層を含む単層または複数層からなる有機層とが堆積され
た転写フィルムであり、透光性電極が、2層以上の積層
構造であることを特徴とする。以下、本発明の転写フィ
ルムおよびそれを用いた有機LED素子、有機LEDパ
ネルについて詳しく説明する。
【0018】本発明の転写用フィルムは、ベースフィル
ム上に転写法により転写される転写層が形成されたもの
であり、必要に応じてベースフィルムと転写層の間に転
写補助層が設けられる。
【0019】ベースフィルムとしては、基板との密着性
を向上させるために、フレキシブルな材料が好ましい。
このような材料としては、例えばポリエチレンテレフタ
レート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメ
チルメタクリレート(PMMA)、ポリエステル、エポ
キシ樹脂、ポリエチレン、ポリスチレンなどの高分子材
料が挙げられるが、本発明はこれらにより限定されるも
のではない。これらの高分子材料の中でも、PET、P
Cが特に好ましい。ベースフィルムの厚さは、10〜6
00μmが好ましく、50〜200μmが特に好まし
い。
【0020】転写補助層としては、カーボンブラックを
エポキシ系樹脂などの高分子材料に分散させた光−熱変
換層が挙げられる。
【0021】転写層は、実際に転写工程により転写され
る層であり、本発明の転写フィルムの転写層を構成する
層構造としては、例えば、通常の有機LED素子に用い
られる有機層と電極層を組み合わせた構造、より具体的
には、透明電極/有機層、透明電極/有機層/電極の構
造が挙げられる。転写層が透明電極/有機層の場合に
は、転写される基板側に電極を設けておく必要がある。
【0022】電極材料は、公知の電極材料を用いること
ができる。陽極としては、インジウム酸化物と亜鉛酸化
物の混合層(ITO)、インジウム酸化物と錫酸化物の
混合層(IDIXO)、酸化錫(SnO2)などの透明
電極が挙げられる。陰極としては、Ca、Ce、Cs、
Rb、Ba、Al、Mg:Ag合金などの仕事関数の低
い金属を少なくとも含有するものおよび薄膜の絶縁層と
金属電極の積層(LiF/Alなど)が挙げられる。
【0023】本発明の転写フィルムは、透光性電極がバ
ルク層と表面改質層の2層からなるのが好ましい。この
ような構成により、より特性劣化のない有機LED素子
を形成することができる。本発明の転写フィルムは、表
面改質層がバルク層を逆スパッタすることにより形成さ
れた層であるのが好ましい。このような構成により、透
光性電極(バルク層)と表面改質層とを同一のスパッタ
装置内で形成することができ、工程時間の増加を最小限
に抑えることができる。本発明の転写フィルムは、表面
改質層の形成における逆スパッタが、ArとO 2の混合
ガスを用いて行われるのが好ましい。このような構成に
より、透光性電極表面の酸化度が上がるので、正孔の注
入効率が向上し、特性劣化のない有機LED素子を形成
することができる。本発明の転写フィルムは、表面改質
層を形成するバルク層がインジウム酸化物と亜鉛酸化物
の混合層であるのが好ましい。このような構成により、
転写フィルムにダメージを与えない低い基板温度で透明
電極を形成した場合でも電極抵抗値が低く、より特性劣
化のない有機LED素子を形成することができる。
【0024】また、本発明の転写フィルムは、透光性電
極が、インジウム酸化物と亜鉛酸化物の混合層と、イン
ジウム酸化物と錫酸化物の混合層との2層からなるのが
好ましい。このような構成により、特性劣化のない有機
LED素子を形成することができ、電極にITOを使用
した場合と同等の特性が得られる。本発明の転写フィル
ムは、2層からなる透光性電極のインジウム酸化物と亜
鉛酸化物の混合層が、インジウム酸化物と錫酸化物の混
合層の膜厚よりも厚いのが好ましい。このような構成に
より、特性劣化のない有機LED素子を形成することが
でき、基材フィルム上に透明電極を形成した場合、その
電極抵抗はIDIXOと同程度の低い抵抗値であり、電
極にITOを使用した場合と同等の特性が得られる。
【0025】本発明によれば、上記の転写フィルムを用
いて作製された有機LED素子が提供される。特に、本
発明の有機LED素子は、駆動素子およびスイッチング
素子を含むアクティブマトリクス基板を有するのが好ま
しい。このような構成により、高精細、高機能の有機L
ED素子ならびに有機LEDパネルが得られる。
【0026】有機層は単層構造でも多層構造でもよく、
例えば下記の構成が挙げられるが本発明はこれらに限定
されるものではない。 (1)有機発光層 (2)正孔輸送層/有機発光層 (3)有機発光層/電子輸送層 (4)正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層 (5)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送
層 有機発光層は単層構造でも多層構造でもよい。また、母
体材料にドーパントをドープした層でもよい。
【0027】有機発光層は公知の方法で成膜することが
できる。例えば、有機発光材料を直接成膜する真空蒸着
法、EB法、MBE法などのドライプロセス法、有機発
光層形成用塗液を塗布するスピンコート法、ドクターブ
レード法、吐出コート法、スプレーコート法、インクジ
ェット法、または印刷する凸版印刷法、凹版印刷法、ス
クリーン印刷法、マイクログラビアコート法などのウェ
ットプロセス法が挙げられる。
【0028】有機発光層形成用塗液は、少なくとも有機
発光材料を溶剤に溶解または分散させた溶液であり、1
種類もしくは多種類の有機発光材料を含有していてもよ
い。また、有機発光層形成用塗液は、レベリング剤、発
光アシスト剤、添加剤(ドナー、アクセプターなど)電
荷輸送剤、発光性のドーパントなどを含有していてもよ
い。
【0029】溶剤は、有機発光材料を溶解または分散で
きる溶剤であればよい、例えば、純水、メタノール、エ
タノール、TFT(テトラヒドロフラン)、クロロホル
ム、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどが挙
げられる。
【0030】有機発光材料としては、有機LED素子用
の公知の発光材料を用いることができる。このような発
光材料は、低分子発光材料、高分子発光材料、高分子発
光材料の前駆体などに分類される。以下にこれらの具体
的な化合物を例示するが、本発明はこれらに限定される
ものではない。
【0031】低分子発光材料としては、例えば、4,
4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニ
ル(DPVBi)などの芳香族ジメチリデン化合物、5
−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾ
オキサジリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾール
などのオキサジアゾール化合物、3−(4−ビフェニリ
ル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,
2,4−トリアゾール(TZA)などのトリアゾール化
合物、1,4−ビス(2−メチスチリル)ベンゼンなど
のスチリルベンゼン化合物、チオピラジンジオキシド誘
導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アン
トラキノン誘導体などの蛍光性有機材料、アゾメチン亜
鉛錯体、(8−ヒドロキシノリナート)アルミニウム錯
体(Alq3)などの蛍光性有機金属化合物などが挙げ
られる。
【0032】高分子発光材料としては、例えば、ポリ
(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−P
PP)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−ト
リエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル
ーアルト−1、4−フェニルレン]ジブロマイド(PP
P−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオ
キシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン]
(MEH−PPV)などが挙げられる。また、高分子発
光材料の前駆体としては、例えば、ポリ(P−フェニレ
ンビニレン)前駆体(Pre−PPV)、ポリ(P−ナ
フタレンビニレン)前駆体(Pre−PNV)などが挙
げられる。
【0033】正孔輸送層および電子輸送層(これらを合
わせて「電荷輸送層」ともいう)はそれぞれ単層構造で
も多層構造でもよい。電荷輸送層は発光層材料と同様に
公知の方法で成膜することができる。電荷輸送材料とし
ては、公知の材料を用いることができる。以下にこれら
の具体的な化合物を例示するが、本発明はこれらに限定
されるものではない。また、溶剤としては発光材料の形
成に使用する溶剤が挙げられる。
【0034】正孔輸送材料としては、例えば、ポルフィ
リン化合物、N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)
−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TP
D)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’
−ジフェニル−ベンジジン(NPD)などの芳香族第3
級アミン化合物、ヒドラゾン化合物、キナクリドン化合
物、スチルアミン化合物などの低分子材料、ポリアニリ
ン、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリス
チレンサルフォネート(PEDT/PSS)、ポリ(ト
リフェニルアミン誘導体)、ポリビニルカルバゾール
(PVCz)などの高分子材料、ポリ(p−フェニレン
ビニレン)前駆体、ポリ(p−ナフタレンビニレン)前
駆体などの高分子材料の前駆体が挙げられる。
【0035】電子輸送材料としては、例えば、オキサジ
アゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾキノン誘
導体、ナフトキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の低
分子材料、ポリ(オキサジアゾール)などの高分子材料
が挙げられる。
【0036】
【実施例】本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説
明するが、これらの実施例により本発明が限定されるも
のではない。
【0037】実施例1(図1参照) 基材フィルムとして膜厚150μmのポリエチレンテレ
フタレート(PET)フィルムを用い、このフィルム上
に光−熱変換層として、カーボンブラックを高分子材料
(熱硬化型エポキシ樹脂)に分散させた層を膜厚が約4
μmになるように形成した。次に、酸素(O2)1%を
含むArガスをスパッタガスとするDCマグネトロンス
パッタ法により、光−熱変換層上に、透明電極として酸
化亜鉛10%を含む酸化インジウム(IDIXO)を膜
厚が150nmになるように形成した。IDIXOの形
成後、酸素10%を含むArガスをスパッタガスとする
RFスパッタ法により、IDIXO表面が約10nm削
られるように、逆スパッタを行った。これにより、バル
ク層と表面改質層の2層からなる透明電極が得られた。
さらに、蒸着法により、透明電極上に、有機層として正
孔輸送層であるNPD層および発光層であるAlq3層
をそれぞれ膜厚が50nmになるように形成し、転写フ
ィルムを得た。
【0038】上記とは別に、抵抗加熱蒸着法により、ガ
ラス基板上に陰極としてLiF/Al層をそれぞれ膜厚
が1nmおよび150nmになるように形成した。この
ようにして作製した転写フィルムと陰極付き基板とを、
基材フィルムと基板とが外側になるように貼り合わせ、
基材フィルム側からレーザー光(1.0J/cm2)を
照射し、転写層を転写フィルムから基板に転写し、基材
フィルムを剥離した。その後、ガラス製のキャップを用
いて封止を行った。大気中の水分、酸素の影響を避ける
ため、蒸着後のフィルム、基板の保管およびフィルムと
基板の貼り合わせは窒素などの不活性ガス中で行った。
【0039】IDIXO側を+、Al側を−に電圧(6
V)を印加するとIDIXOを通してAlq3からの緑
色発光が確認できた。駆動電圧は通常の蒸着のみで形成
した素子と比較してほぼ同等であった。
【0040】逆スパッタを全く行わない場合や、Arガ
スのみで逆スパッタを行った場合には、Ar+O2ガス
で逆スパッタした場合と比較して、素子の駆動電圧が上
昇し、素子特性が劣化した。これはIDIXO表面の酸
素濃度が異なり、Ar+O2で逆スパッタを行うと表面
酸素濃度が高まり正孔の注入効率が向上したためと考え
られる。実施例1のようにレーザー光の照射により加熱
を行うと、レーザー光を細く絞ることにより高精細なパ
ターン化が実現できる。また、粗いパターンを形成する
場合には、例えば、転写パターンを凸状に形成した金型
を加熱し押し当てる方法やニクロム線に電流を流し加熱
して押し当てる方法などを用いることができる。この場
合にはフィルム上の光-熱変換層が不要となる。
【0041】実施例2(図2参照) 実施例1と同様にして、基材フィルム上に光−熱変換
層、透明電極、正孔輸送層および発光層を形成した。さ
らに連続して、蒸着法により、発光層上に、陰極として
LiF/Al層をそれぞれ膜厚が1nmおよび150n
mになるように形成した。ガラス基板側には電極取り出
し用の配線としてAlをパターニング形成した。このよ
うにして作製した転写フィルムと基板とを、基材フィル
ムが外側になるように貼り合わせ、基材フィルム側から
レーザー光(1.0J/cm2)を照射し、転写層を転
写フィルムから基板に転写し、基材フィルムを剥離し
た。その後、実施例1と同様にして、ガラス製のキャッ
プを用いて封止を行った。
【0042】IDIXO側を+、Al側を−に電圧(6
V)を印加するとIDIXOを通してAlq3からの緑
色発光が確認できた。駆動電圧、発光効率は通常の蒸着
のみで形成した素子と比較してほぼ同等であった。実施
例2では基板側に高精細な電極パターンを形成する必要
がないため、比較的簡単なプロセスを用いて配線を形成
でき、また陰極パターン形成時の表面酸化、表面汚染の
影響を除くことができる。
【0043】実施例3(図3参照) 透明電極として、IDIXOおよびITOをそれぞれ膜
厚が130nmおよび20nmになるように、Ar+O
2をスパッタガスとするDCマグネトロンスパッタ法に
より、同一の真空槽内で連続して積層形成すること以外
は、実施例1と同様にして転写フィルムを得た。基板温
度を室温として形成するとITOの抵抗率が比較的大き
くなり、ITOの膜厚をIDIXOの膜厚より厚くする
とトータルの抵抗率が大きくなる。このためITOの膜
厚をIDIXOの膜厚よりも薄くした。また、同一の真
空槽内で連続して積層形成することにより、プロセス時
間の増大を最小限に押さえることができた。
【0044】基板として、ガラス基板上に有機LED素
子の駆動用トランジスタ、データ書き込み用トランジス
タおよびデータ保持用キャパシタを形成したTFT基板
を用いた。エポキシ系の樹脂を用いて、TFT基板の表
面を平坦化し、Alの電極パッドを形成した。このよう
にして作製した転写フィルムと基板とを、基材フィルム
が外側になるように貼り合わせ、基材フィルム側からレ
ーザー光(1.0J/cm2)を照射し、転写層を転写
フィルムから基板に転写し、基材フィルムを剥離した。
その後、実施例1と同様にして、ガラス製のキャップを
用いて封止を行った。この素子の特性はITOを透明電
極として用いた素子とほぼ同じであり、TFT駆動を行
うことにより、高精細、高機能な有機LEDパネルが得
られた。
【0045】
【発明の効果】透明電極を積層構造とすることにより、
特性劣化のない転写用フィルムが作製でき、従来の素子
と同等の特性を持つ有機LED素子が熱転写法により作
製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1を説明するための概略断面図である。
【図2】実施例2を説明するための概略断面図である。
【図3】実施例3を説明するための概略断面図である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材フィルム上に透光性電極と少なくと
    も発光層を含む単層または複数層からなる有機層とが堆
    積された転写フィルムであり、透光性電極が、2層以上
    の積層構造であることを特徴とする転写フィルム。
  2. 【請求項2】 基材フィルム上に少なくとも一方が透光
    性電極である一対の電極と電極に挟持された少なくとも
    発光層を含む単層または複数層からなる有機層とが堆積
    された転写フィルムであり、透光性電極が、2層以上の
    積層構造であることを特徴とする転写フィルム。
  3. 【請求項3】 透光性電極が、バルク層と表面改質層の
    2層からなる請求項1または2に記載の転写フィルム。
  4. 【請求項4】 表面改質層が、バルク層を逆スパッタす
    ることにより形成された層である請求項3に記載の転写
    フィルム。
  5. 【請求項5】 逆スパッタが、ArとO2の混合ガスを
    用いて行われる請求項4に記載の転写フィルム。
  6. 【請求項6】 バルク層が、インジウム酸化物と亜鉛酸
    化物の混合層である請求項3〜5のいずれか1つに記載
    の転写フィルム。
  7. 【請求項7】 透光性電極が、インジウム酸化物と亜鉛
    酸化物の混合層と、インジウム酸化物と錫酸化物の混合
    層との2層からなる請求項1または2に記載の転写フィ
    ルム。
  8. 【請求項8】 インジウム酸化物と亜鉛酸化物の混合層
    が、インジウム酸化物と錫酸化物の混合層の膜厚よりも
    厚い請求項7に記載の転写フィルム。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1つに記載の転
    写フィルムを用いて作製された有機LED素子。
  10. 【請求項10】 有機LED素子が、駆動素子およびス
    イッチング素子を含むアクティブマトリクス基板を有す
    る請求項9に記載の有機LED素子。
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