JP2003344375A - 光学分割剤、光学分割カラム及び光学分割方法並びに光学活性化合物の製造方法 - Google Patents

光学分割剤、光学分割カラム及び光学分割方法並びに光学活性化合物の製造方法

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JP2003344375A JP2002154489A JP2002154489A JP2003344375A JP 2003344375 A JP2003344375 A JP 2003344375A JP 2002154489 A JP2002154489 A JP 2002154489A JP 2002154489 A JP2002154489 A JP 2002154489A JP 2003344375 A JP2003344375 A JP 2003344375A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高純度な光学活性化合物を経済的に効率良く
製造することを可能とする光学分割剤、光学分割カラム
及び光学分割方法並びに光学活性化合物の製造方法を提
供する。 【解決手段】 固体表面上に不斉化合物が結合した不斉
分子膜を含んでなる光学分割剤を有する光学分割カラム
を用いたクロマトグラフィーにより処理して、光学活性
化合物を製造する光学活性化合物の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学異性体混合物
の光学分割に用いる光学分割剤、光学分割カラム及び光
学分割方法に関するものである。また、本発明は、高純
度な光学活性化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光学活性化合物は、医農薬、香料、調味
料、液晶等の分野における研究開発の進展に伴い、その
重要性が益々高まっている。特に、生命現象において
は、光学活性化合物が特異な働きをし、生理活性上、光
学活性化合物の一方のみ(例えばD体若しくはL体の一
方、S体若しくはR体の一方、又は、+体若しくは−体
の一方)を得ることが非常に重要である。
【0003】光学活性化合物をラセミ体より得る方法と
しては、(1)ジアステレオマー法、(2)優先晶出
法、(3)酵素法、(4)膜分離法、(5)液体クロマ
トグラフィー法等が知られている。(1)のジアステレ
オマー法とは、ラセミ体に分割剤として光学活性な酸又
は塩基を作用させ、生成したジアステレオマー塩又はジ
アステレオマー誘導体の溶解度の差を利用して分別結晶
を行い、再結晶により精製した後、化学的処理により光
学活性化合物を生成させることにより分割する方法であ
る。(2)の優先晶出法とは、ラセミ体の過飽和溶液に
一方の光学活性化合物の純粋な結晶を種として加え、こ
れと同種の光学活性化合物のみを選択的に析出させる方
法である。
【0004】(3)の酵素法とは、酵素自身が光学活性
触媒として働き、ラセミ体を反応、例えば加水分解、す
ることにより光学活性化合物を製造する方法である。
(4)の膜分離法とは、膜材料に光学活性な化合物を導
入した膜を用い、溶液中のラセミ体の一方の光学活性化
合物を透過させ、他方の光学活性化合物を排除すること
により光学分割する方法である。(5)の液体クロマト
グラフィー法とは、光学活性な化合物を固定相として用
い、移動相中の各光学活性化合物との相互作用の差を利
用して分離する方法である。
【0005】しかしながら、これらの方法においては、
次のような問題点を有している。(1)のジアステレオ
マー法では、分割剤である酸又は塩基に対して安定な化
合物にしか適用できない、また、分割剤がラセミ体と容
易に塩又は誘導体を形成するものでなければならないこ
とによる分割剤選択の困難さ、更に、溶解度差が小さい
場合には光学分割が困難であるといった問題点を有して
いる。(2)の優先晶出法では、ラセミ体と光学活性化
合物を比較して、溶解度がラセミ体の方が光学活性化合
物よりも大きく、かつ融点が光学活性化合物の方がラセ
ミ体よりも大きく、更に、ラセミ体の飽和溶液に光学活
性化合物が溶解しないことが必要であるため、特定の化
合物にしか適用できないといった問題点を有している。
【0006】(3)の酵素法では、製造したい光学活性
化合物及びラセミ体より光学活性化合物を製造する反応
に適応する酵素選択の困難さ、更に、製造効率が低いと
いった問題点を有している。(4)の膜分離法では、生
産性向上のため操作圧力を高めると、膜の不斉識別能が
低下し、不斉識別能を維持すると生産性が極端に低いと
いった問題点を有している。(5)の液体クロマトグラ
フィー法は、多くの光学活性カラムが上市され、大量の
光学活性化合物の分取も行われる状況に至っており、工
業的にも有力な方法であるが、光学活性な化合物を分割
剤として用いているものの、光学活性な部位が一方向に
配列していないため、固定相近傍の分割場全てが光学活
性な場とはならないため、全体としての不斉識別能は充
分ではないといった問題点を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のごと
き状況に鑑みてなされたものであり、高純度な光学活性
化合物を経済的に効率良く製造することを可能とする光
学分割剤、光学分割カラム及び光学分割方法並びに光学
活性化合物の製造方法を提供することを目的とするもの
である。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、光学異
性体混合物の光学分割方法及び高純度な光学活性化合物
を経済的に効率良く製造する方法を提供するため、鋭意
検討を重ねた結果、固体表面上に不斉化合物が結合した
不斉分子膜を光学分割剤とすることにより、固定相近傍
の分割場全てが光学活性な場となることを見いだし、更
に、該不斉分子膜を光学分割剤とする光学分割カラムを
用いるクロマトグラフィーによる処理により、処理後の
光学純度が処理前の光学異性体混合物の光学純度よりも
高められることを見いだし、本発明を完成するに至っ
た。
【0009】本発明の光学分割方法は、分割場全てが光
学活性な場である不斉分子膜による光学活性化合物の分
割方法という従来にない新しい概念による分割方法であ
る。これまで、触媒や電極の表面を不斉分子で修飾し、
光学活性化合物を立体選択的に合成しようとする例が数
多く報告されている。しかし、表面において不斉分子が
「組織化」しているのか、すなわち、二次元の不斉構造
が形成されているのかは明らかではない。実際に得られ
る不斉選択性は、おそらく修飾分子と反応分子の一対一
の相互作用に基づくものと推測される。本発明では、こ
のような不斉分子が単に表面に凝集した構造ではなく、
有機分子の自己組織化を利用して表面における分子の配
列そのものが不斉であるという「二次元不斉構造」を創
製するとともに、これを光学活性化合物の製造等に応用
することが可能であることを見いだしたものである。予
備的な検討の結果、軸不斉化合物の光学活性体が金単結
晶表面に自己組織化単分子層膜を形成し、二種の光学活
性体から形成される表面構造が鏡像関係にあること、す
なわち「二次元不斉構造」の構築を確認した。これは、
単に物理吸着させた不斉分子の例をのぞくとはじめての
例であるとともに、二次元不斉構造が具体的にどのよう
なものであるかをはじめて示したものである。以上のよ
うな予備的知見にもとづいて本発明においては、二次元
不斉構造の設計と構造特性の解明を積極的に推進して、
新しい研究分野を開拓するとともに、該二次元不斉構造
による機能の開発を行った結果、光学分割剤、光学分割
カラム及び光学分割方法並びに光学活性化合物の製造方
法に好適に適用することができることに想到したもので
ある。
【0010】すなわち本発明は、固体表面上に不斉化合
物が結合した不斉分子膜を含んでなる光学分割剤であ
る。なお、本発明の光学分割剤は、不斉化合物が結合し
ている固体と、不斉化合物により形成された不斉分子膜
とを含んでなり、不斉分子膜により光学分割作用が発揮
されるものである。また、不斉分子膜とは、不斉化合物
が固体表面上に結合することにより固体表面上を覆うよ
うに形成されるものである限り、固体表面の全部に形成
されたものでもよく、一部に形成されたものでもよい。
このような不斉分子膜の膜構造としては、空隙を有しな
い構造でもよく、空隙を有する構造でもよい。これらの
なかでも、分子間隙が空隙(空孔)となる構造が好適で
ある。
【0011】本発明はまた、上記光学分割剤を有する光
学分割カラムでもある。本発明は更に、上記光学分割カ
ラムを用いたクロマトグラフィーによる処理により、光
学異性体混合物を光学分割する光学分割方法でもある。
本発明はそして、上記光学分割方法により、光学異性体
混合物を光学分割して該光学異性体混合物よりも光学純
度が高い光学活性化合物を分取する工程を含む光学活性
化合物の製造方法でもある。なお、本発明において、
「光学分割」とは、光学異性体混合物よりもわずかでも
光学純度が高くなったものを分離する操作を意味し、
「光学活性化合物」とは、該光学分割により分離された
ものを意味する。以下に本発明を詳述する。
【0012】上記固体表面とは、金、白金、銅等の金属
表面、酸化チタン等の金属酸化物表面、硫化亜鉛等の金
属硫化物表面であり、好ましくは元素周期表第VIII
族金属表面であり、より好ましくは金表面であり、特に
好ましくは金(111)表面である。該固体表面は、そ
のものの表面でもよいし、有機物質又は無機物質等の担
体に金属等を蒸着又は含浸担持等の方法によりコートし
た表面、すなわち有機物質又は無機物質等の固体が有す
る金属層の表面でもよい。また、該表面を持つ固体の形
状は、例えば、板状、球状、不定形状、管状、ハニカム
状等の形状であればよい。これらの固体表面は、単独又
は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0013】上記有機物質としては、ポリスチレン、ポ
リアクリルアミド、ポリアクリレート等の高分子物質が
好適であり、無機物質としては、シリカゲル、アルミ
ナ、マグネシア、ジルコニア、ガラス、水晶、カオリ
ン、酸化チタン、ケイ酸塩、ケイソウ土等が好適であ
る。これらのなかでも、シリカゲル、ガラス、水晶等が
好適に用いられる。これらの有機物質又は無機物質は、
単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することがで
きる。
【0014】上記表面を持つ固体が球状又は不定形状で
あるときの大きさは、直径の下限が好ましくは1μm以
上、より好ましくは5μm以上であり、上限が好ましく
は1mm以下、より好ましくは300μm以下である。
また、上記表面を持つ固体は、無孔質であってもよい
が、多孔質であることが好ましい。多孔質の場合の細孔
径は、下限が好ましくは10Å以上、より好ましくは1
00Å以上、上限が好ましくは100μm以下、より好
ましくは5000Å以下である。なお、本発明において
固体表面とは、多孔質である場合には、孔の内部の表面
を含めたものを意味する。すなわち本発明の光学分割剤
としては、不斉化合物が結合した不斉分子膜が固体が有
する孔の内部の表面に形成されたものであってもよい。
【0015】上記不斉化合物とは、不斉中心及び/又は
軸不斉を持つヘテロ原子を有する化合物であり、好まし
くは不斉中心及び/又は軸不斉を持つ硫黄原子を有する
化合物であり、特に好ましくは光学活性軸不斉を持つ硫
黄原子を有する化合物である。上記不斉化合物として
は、具体的には、例えば、システイン等の不斉中心を持
つ化合物;1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジチオ
ール等のビナフトチオール類や、1,1’−ビナフタレ
ン−2,2’−ジオール等のビナフトール類等の軸不斉
を持つ化合物等が好適である。これらのなかでも、ビナ
フトチオール類が特に好ましい。これらの不斉化合物
は、単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用すること
ができる。
【0016】上記固体表面上に不斉化合物が結合した不
斉分子膜とは、上述の固体表面に上述の不斉化合物が化
学結合によって結合した分子膜であり、単に不斉化合物
が固体表面に結合しただけでなく、不斉化合物の固体表
面での分子の並び方が不斉な二次元不斉膜である。該不
斉分子膜は、単層膜でも多層膜でもよい。ここで、分子
の並び方が不斉な二次元不斉膜とは、分子の方向性と分
子相互の位置関係に規則性があり、かつその規則的配列
が不斉、すなわち、互いに重ね合わせることが不可能な
鏡像関係にある一対の配列構造のうちの一方である膜を
意味する。
【0017】図1に1,1’−ビナフタレン−2,2’
−ジチオールの金(111)表面上における二次元不斉
膜の具体例を示し説明する。図1の左側(a)が(R)
−1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジチオールの二
次元不斉膜であり、図1の右側(b)が(S)−1,
1’−ビナフタレン−2,2’−ジチオールの二次元不
斉膜である。ひし形は両者の規則構造の単位格子で、ほ
ぼ同じである。図1中に示されている「粒」(一つの三
角の中に六個ある「○」のうちの一個)は、1,1’−
ビナフタレン−2,2’−ジチオールの短軸方向の幅に
一致し、一個がナフタレン環の一つに相当し、二個で一
分子に相当する。一方、分子が存在しない暗い空孔部分
(分子間隙部分)が規則的に配列している。この空孔と
粒の関係を見ると、六個の粒から形成される三角形三つ
が空孔を取り囲んでおり、その三角形の配列が図1の左
側(a)と右側(b)で互いに重ね合わせることが不可
能な鏡像関係にある。すなわち、このような分子の配列
構造を二次元不斉膜と呼ぶ。
【0018】該不斉分子膜は、上記固体表面に、上記不
斉化合物を自己組織化法により結合させることにより得
られる。ここで言う自己組織化法とは、ヘテロ原子を持
つ化合物の溶液中に、例えば金等の固体表面を浸漬させ
ると、ヘテロ原子を持つ化合物が化学反応により該固体
表面に自然に結合されるという方法である。不斉分子膜
の製造において、上記固体表面は、上記不斉化合物の配
列が不斉分子膜を作るのに充分な面積を持つ必要があ
る。
【0019】不斉分子膜の製造に用いられるヘテロ原子
を持つ化合物の溶液には、溶媒として、水及び/又は有
機溶剤が使用できる。有機溶剤としては、具体的には、
例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタ
ノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエー
テル類;クロロホルム等の塩素系溶剤類等が好適であ
る。これらのなかでも、メタノール、エタノール、プロ
パノール、ブタノール等のアルコール類が好ましく、エ
タノールが特に好ましい。これらの有機溶剤は、単独で
も、又は、2種以上を適宜組み合わせても使用すること
ができる。
【0020】また、不斉分子膜の製造に用いられるヘテ
ロ原子を持つ化合物の溶液は、塩基性であることが好ま
しい。該溶液を塩基性にするには、具体的には、例え
ば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカ
リ(土類)金属水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸水
素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素カルシウム、
炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭
酸カルシウム等のアルカリ(土類)金属炭酸塩;酢酸ナ
トリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシ
ウム等のアルカリ(土類)金属カルボン酸塩;ナトリウ
ムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキ
シド、カリウムエトキシド等のアルカリ(土類)金属ア
ルコキシド;アンモニア、メチルアミン、エチルアミ
ン、エタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミ
ン、ジエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチ
ルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、
テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシク
ロ[2,2,2]オクタン、アニリン、メチルアニリ
ン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、コリジン
等のアミン類等の塩基性化合物により塩基性とすればよ
い。これらのなかでも、水酸化ナトリウムが好適に用い
られる。これらの塩基性化合物は、単独でも、又は、2
種以上を適宜組み合わせても使用することができる。
【0021】本発明の光学分割剤は、上述したような構
成を有するものであるが、好ましい形態の一つとして
は、表面に金属層を有する固体と、該金属層上に形成さ
れた不斉分子膜とを含んでなる光学活性体の形態が挙げ
られる。このような形態の光学活性体は、(1)有機物
質又は無機物質等の固体、(2)該固体の表面に金属
層、(3)該金属層上に形成された不斉分子膜の(1)
〜(3)を内側からこの順に有する形態であり、その他
の構成は上述した光学分割剤と同様である。このような
光学活性体は、不斉分子膜が結合する金属の使用量を抑
制して製品コストを抑制することが可能であり、光学活
性な物質を利用する各種の分野に好適なものである。
【0022】本発明の光学分割カラムとは、上記光学分
割剤、すなわち固体表面上に不斉化合物が結合した不斉
分子膜を含んでなる光学分割剤を充填剤とするカラムで
ある。すなわち、不斉分子膜が形成された板状、球状、
不定形状、管状、ハニカム状等の光学分割剤を管に充填
したものである。このとき管は円柱状が好ましいが、直
径及び長さは限定されるものではなく使用目的により適
宜選択すればよい。また、管状又はハニカム状の該光学
分割剤を充填する際は、管の穴と同一方向に穴が向くよ
うにすることが好ましい。
【0023】本発明の光学分割方法とは、上記光学分割
カラム、すなわち固体表面上に不斉化合物が結合した不
斉分子膜を含んでなる光学分割剤を充填剤とするカラム
を用いたクロマトグラフィーによる光学異性体混合物か
らの光学活性化合物の分割方法である。
【0024】本発明の光学分割カラムを用いたクロマト
グラフィー処理に用いられる移動相は、対象とする光学
異性体混合物及び光学活性化合物を溶解しうる全ての一
般的な有機溶媒及び/又は水を用いることができる。有
機溶媒としては、具体的には、例えば、ベンゼン、トル
エン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタ
ン等の脂肪族炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサ
ン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;塩化メチレ
ン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化
水素;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イ
ソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;ア
セトン、メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニト
リル等のニトリル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエス
テル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド
等の極性溶媒等が好適である。これらのなかでも、ヘキ
サン、トルエン、アセトニトリル、メタノール、エタノ
ール、n−プロパノール、イソプロパノールが好適に用
いられる。これらの移動相は、単独で用いても、又は、
2種類以上を適宜混合して用いてもよい。混合する場合
の組合わせとしては、ヘキサン−アルコール、トルエン
−アルコール、アセトニトリル−アルコールの組合わせ
が好ましい。混合する場合は、クロマトグラフィー処理
の全体を通して同一濃度でもよいし、処理途中で連続的
又は間欠的に濃度が変化してもよい。
【0025】本発明の光学分割カラムを用いたクロマト
グラフィー処理は、バッチ操作によるものでも、連続操
作によるものでもよい。また、光学分割カラムの本数、
直径及び長さも限定されるものではなく、分離する光学
異性体混合物に応じて適宜決定すればよい。本発明にお
けるクロマトグラフィー処理には、低圧液体クロマトグ
ラフィー(LPLC)、中圧液体クロマトグラフィー
(MPLC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPL
C)の何れを使用してもよいが、分離成果ができるだけ
高い処理速度で達成されることになるように、高圧液体
クロマトグラフィーが好適に使用される。
【0026】本発明のクロマトグラフィー処理における
移動相の流速は、下限が好ましくは0.05ml/分以
上、より好ましくは0.1ml/分以上、上限が好まし
くは15ml/分以下、より好ましくは10ml/分以
下である。本発明のクロマトグラフィー処理における操
作温度の下限は、0℃以上が好ましく、10℃以上がよ
り好ましく、20℃以上が特に好ましい。操作温度の上
限は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好まし
く、40℃以下が特に好ましい。
【0027】本発明の光学活性化合物の製造方法とは、
原料光学異性体混合物を本発明の光学分割カラムを用い
たクロマトグラフィーにより処理して、すなわち本発明
の光学分割方法により処理して、処理後の光学純度が処
理前の光学異性体混合物の光学純度よりも高められた光
学活性化合物を分取する方法である。
【0028】上記原料光学異性体混合物の光学純度は0
〜99%ee.の範囲であればよい。製造効率の面から
は、所望の光学異性体の光学純度が高い光学異性体混合
物を原料とすることが好ましい。その場合、所望の光学
異性体の光学純度は、20%ee.以上が好ましく、5
0%ee.以上がより好ましく、60%ee.以上が更
に好ましく、80%ee.以上が特に好ましい。なお、
本発明における光学純度を表す単位「%ee.」とは、
より多く含まれる光学活性化合物のモル%から他方の光
学活性化合物のモル%を引いたものを表す。例えばS体
50モル%とR体50モル%の混合物の光学純度は0%
ee.(50−50=0)となり、S体90モル%とR
体10モル%の混合物の光学純度はS体80%ee.
(90−10=80)となる。
【0029】本発明の光学活性化合物の製造方法に供す
ることができる光学異性体混合物としては、不斉中心を
持つ化合物の光学異性体混合物又は軸不斉を持つ化合物
の光学異性体混合物であればよい。該光学異性体混合物
としては、具体的には、例えば、フェニルアラニン、ト
リプトファン等のアミノ酸;1−フェネチルアミン等の
アミン類が好適である。これらのなかでも、フェニルア
ラニン等のアミノ酸が好適に使用される。
【0030】本発明の光学活性化合物の製造方法により
製造される光学活性化合物は、不斉中心を持つ光学活性
化合物又は軸不斉を持つ光学活性化合物である。光学活
性化合物は、D体又はL体、S体又はR体、+体又は−
体のいずれも製造することができる。該光学活性化合物
としては、具体的には、上記光学異性体混合物の光学活
性化合物である。光学活性化合物は、本発明の光学分割
カラムを用いたクロマトグラフィー処理により、光学活
性化合物それぞれを含む画分を分取し、溶媒を留去する
ことにより得ることができる。溶媒を留去する方法は、
蒸留、蒸発等の方法を採用することができる。
【0031】本発明により製造される光学活性化合物
は、光学純度が原料光学異性体混合物よりも高められた
光学活性化合物であり、その光学純度は1〜100%e
e.である。光学活性化合物の光学純度としては、50
%ee.以上が好ましく、80%ee.以上がより好ま
しく、90%ee.以上が更に好ましく、95%ee.
以上が特に好ましく、98%ee.以上が最も好ましく
製造される。
【0032】以上のようにして得た光学活性化合物は、
更に精製する工程等を含むことができる。上記精製手段
は特に限定されるものではないが、蒸留法、抽出法及び
カラムクロマト法等によって分離・精製することができ
る。これらの方法は組み合わせて実施してもよい。
【0033】以上のようにして得られた光学活性化合物
のうち、所望の光学活性化合物が一方(例えばD体、S
体、+体のいずれか)のみである場合、他方の光学活性
化合物(例えばL体、R体、−体のいずれか)は、従来
公知の方法によりラセミ化し、原料として再び用いるこ
とができ、廃棄物を削減することができる。
【0034】
【実施例】以下、実施例により、本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるもの
ではない。
【0035】実施例1 光学分割剤の製造 シリカゲル粉末(60〜80メッシュ)上にチタン及び
金を順次真空蒸着し、金(111)表面を作成した。金
(111)配向性は、粉末X線回折測定(マックサイエ
ンス社製;MXP3型粉末X線回折装置)により確認し
た。該固体を(R)−ビナフトチオールの1マイクロM
溶液(溶媒=10mM水酸化ナトリウム/エタノール溶
液)に室温で1時間浸漬した。ろ過後乾燥することによ
り、固体表面に(R)−ビナフトチオールの不斉分子膜
が形成された光学分割剤を得た。固体表面上の(R)−
ビナフトチオールの不斉分子膜は、原子間力顕微鏡(デ
ィジタルインスツルメンツ社製;ナノスコープIIIA−
マルチモードAFM型)により確認した。
【0036】実施例2 光学分割剤の製造 R−ビナフトチオールに変えて(S)−ビナフトチオー
ルを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、固体
表面に(S)−ビナフトチオールの不斉分子膜が形成さ
れた光学分割剤を得た。固体表面の(S)−ビナフトチ
オールの不斉分子膜は、原子間力顕微鏡により確認し
た。
【0037】実施例3 光学分割カラムの製造 実施例1で得られた光学分割剤を内径10mm、長さ2
5cmの円柱状SUS316製の管に充填し、光学分割
カラムを得た。 実施例4 光学分割カラムの製造 実施例2で得られた光学分割剤を内径10mm、長さ2
5cmの円柱状SUS316製の管に充填し、光学分割
カラムを得た。
【0038】実施例5 光学分割及び光学活性化合物の
製造 高速液体クロマトグラフィー装置(日立製作所社製;L
−7100形ポンプ、L−7490形RI検出器、L−
7450形UV検出器、L−7300形カラムオーブン
で構成される;以下「LC」と呼ぶ)に実施例3で得ら
れた光学分割カラムを装着し、カラム温度を30℃と
し、移動相に水−メタノール混合溶媒(水−メタノール
=2:1;体積比)を2.5ml/分の流速で通液し
た。該LCに光学異性体混合物のフェニルアラニン(D
体/L体=50モル%/50モル%;光学純度=0%e
e.)の3重量%溶液(溶媒=移動相と同じ水−メタノ
ール混合溶媒)を0.1ml注入することにより光学分
割処理を行った。
【0039】上記と同様の操作を20回繰り返し、D−
フェニルアラニンの画分及びL−フェニルアラニンの画
分を分取した。それぞれの画分をロータリーエバポレー
ターを用いて減圧下に移動相を留去し、D−フェニルア
ラニン(光学純度=99.7%ee.)及びL−フェニ
ルアラニン(光学純度=99.4%ee.)を得た。
【0040】実施例6 光学分割及び光学活性化合物の
製造 実施例3で得られた光学分割カラムに変えて実施例4で
得られた光学分割カラムを装着した以外は実施例5と同
様の操作を行った。その結果、D−フェニルアラニン
(光学純度=99.3%ee.)及びL−フェニルアラ
ニン(光学純度=99.6%ee.)を得た。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、分割場全てが光学活性
な場である不斉分子膜による光学活性化合物の分割方法
という従来にない新しい概念による分割方法により、光
学異性体混合物を光学分割することが可能であり、高純
度な光学活性化合物を経済的に効率良く製造することが
できる。本発明方法により製造される光学活性化合物
は、医農薬、香料、調味料及び液晶分野において有用で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における1,1’−ビナフタレン−2,
2’−ジチオールの金(111)表面上における二次元
不斉膜のSTM(走査型トンネル顕微鏡;Scanni
ng Tunneling Microscope)像
である。左側(a)が(R)−1,1’−ビナフタレン
−2,2’−ジチオールの二次元不斉膜であり、右側
(b)が(S)−1,1’−ビナフタレン−2,2’−
ジチオールの二次元不斉膜である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 30/74 G01N 30/74 E (72)発明者 逢坂 哲彌 西東京市芝久保町4丁目2−29 (72)発明者 中西 卓也 東京都中野区鷺宮3丁目11−30−101 (72)発明者 万木 啓嗣 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC83 AD17 BA52

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固体表面上に不斉化合物が結合した不斉
    分子膜を含んでなることを特徴とする光学分割剤。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の光学分割剤を有すること
    を特徴とする光学分割カラム。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の光学分割カラムを用いた
    クロマトグラフィーによる処理により、光学異性体混合
    物を光学分割することを特徴とする光学分割方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の光学分割方法により、光
    学異性体混合物を光学分割して該光学異性体混合物より
    も光学純度が高い光学活性化合物を分取する工程を含む
    ことを特徴とする光学活性化合物の製造方法。
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