JP2003343436A - 極高真空排気装置、真空排気方法、及びスパッタイオンポンプ - Google Patents

極高真空排気装置、真空排気方法、及びスパッタイオンポンプ

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JP2003343436A
JP2003343436A JP2002151510A JP2002151510A JP2003343436A JP 2003343436 A JP2003343436 A JP 2003343436A JP 2002151510 A JP2002151510 A JP 2002151510A JP 2002151510 A JP2002151510 A JP 2002151510A JP 2003343436 A JP2003343436 A JP 2003343436A
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Abstract

(57)【要約】 【課 題】 圧力10-12Pa台以下の極高真空域を
得ることができる極高真空排気装置、真空排気方法及び
スパッタイオンポンプを提供すること。 【解決手段】 真空容器(1)内を10-12Pa台以下
の極高真空状態に排気するための極高真空排気装置であ
って、ゲッター材を熱処理してガスを吸着して排気を行
う非蒸発ゲッターポンプ(NEG)と、互いに対向して
配置された一対の磁石と、前記一対の磁石の内側に対向
して配置された一対の陰極と、前記一対の陰極の内側に
筒状の複数の陽極(8)とを有するスパッタイオンポン
プ(SIP)と、前記超高真空状態の真空容器(1)内
のガスの排気を促進させる排気促進材を供給する排気促
進材供給装置(C-FEG)とを備えることを特徴とす
る極高真空排気装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、実用真空として、
10-12Pa台より良い極高真空を得ることができる極
高真空排気装置、真空排気方法、及びスパッタイオンポ
ンプに関する。
【0002】(用語の定義)なお、本明細書において、
「真空度が良い」や「真空度が高い」は圧力が低いこと
を指し、「真空度が悪い」や「真空度が低い」は圧力が
高いことを指す。また、本明細書において、高真空と
は、圧力が1×10-1[Pa]〜1×10-5[Pa]の
範囲の真空を指し、超高真空とは、1×10-5[Pa]
〜1×10-9[Pa]の範囲の真空、極高真空とは、1
×10-9[Pa]より良い真空度の真空を指す。
【0003】
【従来の技術】電子顕微鏡用の冷陰極電界放出電子銃、
原子レーザ、表面分析装置(半導体材料走査電子顕微
鏡、Auger(オージェ)電子顕微鏡、ESCA(X
線光電子分光分析装置:Electron Spectroscopy for Ch
emical Analysis)、走査型トンネル電流顕微鏡)、及
び加速器等において、それらの真空室を排気する真空ポ
ンプとして、スパッタイオンポンプ、チタンサブリメー
ションゲッターポンプや非蒸発ゲッターポンプが知られ
ている。
【0004】スパッタイオンポンプは、複数の筒状の陽
極セルを有する陽極と、前記陽極の上下に配置された一
対の板状の陰極(例えばチタン材料で形成)と、前記陰
極の対向する方向に0.01〜0.1T(テスラ)程度
の磁場を印加する磁石とを有するポンプである。スパッ
タイオンポンプ内がある程度の以上の真空度(放電開始
真空度)で、陰陽極間に1〜数kVの電圧を印加する
と、陰極から1次電子が放出(放電)される。この放電
をペニング放電という。前記1次電子は、正電位の陽極
に移向かって移動する。このとき、陰陽極間の電界及び
陰極の対向する方向に印加された磁場によって力を受
け、陽極セル内部または陽極セルどうしに囲まれた部分
の内部で、筒状の陽極セルの軸を中心として螺旋を描い
て旋回移動する。このとき、前記1次電子は、陽極セル
内部等の電気的に中性のガス(原子・分子)と電離衝突
(電子の放出を伴う衝突)して、プラス(+)にイオン
化したガスと2次電子を生成する。生成された2次電子
は、1次電子と同様に、陽極セル内部で旋回移動し、他
のガスと電離衝突してプラスにイオン化したガスと2次
電子を生成し、雪崩現象(連鎖的に正イオンと2次電子
が生成される現象)を起こす。
【0005】プラスにイオン化したガスは負電位の陰極
に衝突して、陰極のチタン原子をスパッタする(弾き出
す)。スパッタされたチタン原子は、陽極セルの表面や
ポンプ内に配置された部材表面に付着して、化学的に活
性なチタン膜(チタン原子の膜)を連続的に形成する。化
学的に活性なチタン膜は、表面に衝突して付着したガス
(マイナス(−)にイオン化したガスやイオン化してい
ないガス)を収着する作用(ゲッター作用)が強い。ここ
で、収着(sorption)とは、ガスが固体の表面に吸着さ
れると同時に固体に吸収されて固溶体または化合物を作
る現象をいう。したがって、前記チタン膜に付着した活
性ガスは、チタンと反応して安定な固体化合物(例えば
TiO2、TiN等)となってチタン膜に収着される。
また、アルゴンやヘリウム等の不活性ガスは、陽極セル
表面等に付着したチタン膜内部に吸収される。したがっ
て、スパッタイオンポンプは、スパッタされたチタン等
が形成する膜がガスを収着して排気する。
【0006】チタンサブリメーションゲッターポンプ
は、チタンを加熱して昇華させて、昇華したチタンが容
器等の壁面に付着して形成される化学的に活性なチタン
膜がガスを収着する作用(ゲッター作用)によって排気
するポンプである。非蒸発ゲッターポンプは、ジルコニ
ウム−アルミニウムの2元合金または、ジルコニウム−
バナジウム−鉄若しくはジルコニウム−稀土類金属−コ
バルトの三元合金の粉体を金属板に圧着したもの(ゲッ
ター材)を加熱して活性化(蒸発させない)し、活性化
した前記粉体がガスを収着する作用(ゲッター作用)に
より排気するポンプである。
【0007】現在、広く普及しているスパッタイオンポ
ンプの仕様では、放電開始真空度(ペニング放電が開始
される真空度)、数Pa〜10-3Pa、到達真空度(排
気終了時の真空度)10-6Pa、排気速度20〜100
0L/secが保証されている。このスパッタイオンポン
プは、真空容器を高温(250℃〜300℃)で20時
間以上焼き出しを行い且つ、真空容器内で作業(顕微分
析作業等)を行うことによる真空度の低下を抑え、真空
漏れが無く、低温という好条件の下で使用した場合、圧
力1×10-8Paの真空度迄は排気できる。さらに、ス
パッタイオンポンプとチタンゲッターポンプとを組み合
わせた複合型ポンプや、スパッタイオンポンプの陰極の
対向する方向に印加される磁場を強力にすることによ
り、真空度(圧力)5×10-9Pa程度迄排気すること
は工業用実用レベルで可能である。実験室では、非蒸発
ゲッターポンプの使用や、ポンプ内壁の表面処理(電解
研磨、窒化チタンや金のコーティング)、及び極高真空
計測技術の進展により1×10-10Pa台が実現してい
る。また、特開2001−126657号公報記載の技
術では、電子真空ポンプを使用してメタンガスや1酸化
炭素等の排気し難いガスを分解して排気することによっ
て、1×10-10Pa台が実現している。さらに、特開
2001−357814号公報記載の技術では、スパッ
タイオンポンプのカソード(陰極)を非蒸発ゲッターポ
ンプのゲッター材と同じ材料で構成することで、1×1
-11Pa台の極高真空が実現している。
【0008】また、従来、スパッタイオンポンプでは、
排気速度(排気量)を向上させるために、同一長さで同
一径の小径(2〜20mm)の陽極セルを大量に備えた
ものが広く使用されていた。特開平5−121035号
公報記載の技術では、超高真空域における陰陽極間の放
電停止対策及び排気速度の向上を目的として、小さな径
の筒状陽極セルを内側に配置し、内側に比べ磁束密度が
低くなる周辺部に大きな径の筒状陽極セルを配置した陽
極を使用している。実公平3−39882号公報には、
高真空領域での排気特性に優れた(排気速度の大きい)
小径の筒状陽極セルと超真空領域での排気特性に優れた
大径の筒状陽極セルとによって、高真空領域から超高真
空領域まで安定した排気を行う技術が記載されている。
【0009】スパッタイオンポンプの陽極セルの径また
は長さと、スパッタイオンポンプの前記放電開始真空
度、到達真空度及び排気速度との関係について以下のよ
うな検討・考察を行った。スパッタイオンポンプの陽極
セルの径が大きい場合、陽極セルの容積が大きいので、
真空度が高くなった状態で且つ、ポンプ内部の残留ガス
の原子・分子数が減少した状態でも、セル内部にガスが
ある程度存在する。即ち、陽極セルの径が大きい場合、
真空度が高くなっても、陽極セル内部でガスがイオン化
され、2次電子が発生し、ペニング放電が継続する。し
たがって、陽極セルの径が大きい場合、比較的高い真空
度(極高真空)でも放電が継続する。即ち、陽極セルの
径が大きい場合、比較的高い真空度でも排気することが
できる。前記ペニング放電は、陽極セル内部の軸の部分
と陰極との間で発生し、陽極セルの軸の部分の電位(以
下、軸電位という)と陰極との電位差が大きいほど放電
が発生しやすい。陽極セル内部の電位は陽極セルの筒壁
からの距離の2乗に反比例して小さくなるので、陽極セ
ルの軸の部分の電位(軸電位)が最も小さくなる。前記
軸電位は、陽極セルの径(即ち、筒壁からの距離)が小
さくなるほど大きくなる。したがって、小径の陽極セル
と大径の陽極セルの両方に同じ電圧を印加した場合、小
径の陽極セルの軸電位は、大径の陽極セルの軸電位と比
べて高い。したがって、陽極セルの径が小さい場合、比
較的低い真空度(高真空〜超高真空)において、陽極セ
ルと陰極との間でペニング放電が開始される。即ち、陽
極セルの径が小さい場合、比較的低い真空度から排気を
開始することができる。
【0010】また、前記陽極セルの長さが長い場合、陽
極セルの端部と陰極との間隔が狭いので、間隔が広い場
合に比べ放電が発生しやすい。したがって、陽極セルの
長さが長い場合、比較的低い真空度でペニング放電が発
生し、排気を開始することができる。一方、陽極セルの
長さが短い場合、陰極との距離が広いので、陽極セルの
外部から陽極セル内部へガスが流入しやすい。即ち、真
空度が高くなって陽極セル内のガスが少なくなっても、
陽極セル内部にガスが流入しやすいので、陽極セルの長
さが長い場合に比べ、陽極セル内部における電子とガス
分子とが衝突する確率(即ち、ガスがイオン化される確
率)が高くなり、高い真空度でも排気することができ
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】顕微分析用の冷陰極電
界放出電子銃や、原子レーザ、表面分析装置等は、実用
真空として、圧力10-12Pa台以下の極高真空が要求
されているが、従来のスパッタイオンポンプ、チタンサ
ブリメーションゲッターポンプ、非蒸発ゲッターポンプ
や、前記特開2001−357814号公報、特開20
01−126657号公報記載の技術等では、未だ実現
されていない。前記各技術を含む従来技術では、計算上
や短期間では圧力10-12Pa台以下の極高真空の実現
の可能性も指摘されているが、実現したとしても現状で
は10-12Pa台以下の極高真空を長期間安定して得る
ことができない上、非常に高価であり工業的採算ベース
に乗っていないのが現状である。
【0012】また、前記特開2001−357814号
公報記載の技術を含む従来のスパッタイオンポンプは、
予備排気ポンプ(ソープションポンプ等)で排気できる
低真空度で放電開始を可能とし且つ、排気速度を大きく
するために、同一長さの小径の筒状陽極(陽極セル)を
多数備える構成となっている。前記スパッタイオンポン
プは、前述のように、ペニング放電によりガスをイオン
化して排気するが、極高真空領域では、陽極セル内のガ
スの単位体積あたりの原子・分子の数が減少するため、
2次電子の発生量も少なくなり、ペニング放電電流(電
子及びイオンの移動により生じる陰陽極間の電流)が少
なくなり、放電の継続が難しくなる。前記特開2001
−357814号公報等記載の従来のスパッタイオンポ
ンプでは、陽極セルが同一径・同一長さで構成されてい
るので、圧力10-12Pa台に到達する前のある真空度
で、全ての陽極セルと陰極との間のペニング放電が同時
に停止してしまい、圧力10-12Pa台以下の極高真空
域を得られない。
【0013】また、前記特開平5−121035号公報
記載のスパッタイオンポンプでは、大径の陽極セルを備
えているので、前述のように比較的高い真空度まで排気
できるが、陽極セルの内径が24mmとそれ程大きくな
いので、当該公開公報の図5に記載されているように1
×10-8Pa程度の超高真空までしか排気できず、10
-12Pa台以下の極高真空まで排気することは難しい。
さらに、前記実公平3−39882号公報記載のスパッ
タイオンポンプは、径の異なる陽極セルを使用している
が、陽極セルは全て同じ長さとなっている。通常、スパ
ッタイオンポンプの設計上の性能(放電開始真空度や排
気速度等)に応じて陽極セルの径および長さが設定され
る。しかし、放電開始真空度に応じて陽極セルの長さが
設定されているので、比較的高い真空度でも排気できる
大径の陽極セルと陰極との間隔があまり広くない。前述
の通り、陽極セルと陰極との間隔が狭い場合、真空度が
高い状態では、小径の陽極セル及び大径の陽極セルの内
部にガスが流入しにくく、ペニング放電が継続しにく
い。したがって、前記実公平3−39882号公報記載
のスパッタイオンポンプは、到達真空度が高くならず、
当該公報の図2に示されるように1×10-9Pa程度ま
で排気できるが、10 -12Pa台以下の極高真空まで排
気することは難しい。
【0014】また、極高真空状態まで一度排気した後、
スパッタイオンポンプを停止すると、5×10-8Pa迄
真空度を悪く(圧力を高く)しないと、陽極セル内のガ
スの原子・分子の数が少なすぎてペニング放電が発生し
難いので排気を再開することが難しい。真空容器等を放
置して、真空度が悪くなるのを成り行きに任せて待って
いると、排気が開始されるまでに時間がかかる上、再度
極高真空状態まで排気されて、顕微分析等の作業ができ
るようになるまでに1〜2時間、時に数時間を要する。
短時間で真空度をペニング放電が発生する程度に低下さ
せるために、従来、真空容器やポンプの壁面を叩いた
り、局所的に加熱したりして、真空容器等の内壁に吸着
されていたガスを放出させる方法が行われていた。
【0015】しかしながら、前記壁面を叩く方法では、
顕微分析装置等の精密機械の軸ズレが発生したり、叩い
た時に発生した振動が止まらずに長期間持続する場合に
は不必要なガスが放出されてしまう問題があった。ま
た、前記局所を加熱する方法は、加熱をやめてもガス放
出が継続するため、不必要なガス(排気しにくい高分子
の気体)が放出されてしまう問題がある。したがって、
これらの方法では、やはり極高真空状態まで再排気する
のに時間がかかる。また、スパッタイオンポンプに直接
ガスを導入することによって短時間で真空度を悪くする
方法も行われていたが、水又は空気が不純物として混入
し、到達真空度まで排気するのに時間がかかり、ボン
ベ、減圧バルブ、リークバルブ等用意する必要があるた
め高価になり操作も複雑になるという問題点があった。
【0016】さらに、スパッタイオンポンプの陰極に
は、チタンやタンタルが使用されているので、極高真空
域では、チタンが触媒となり、炭素原子と水素が化学反
応し、メタンガス等の炭化水素ガスが生成される。前記
メタンガス等は、安定な化合物であるため、イオン化さ
れ難く、排気されにくい。したがって、メタンガス等が
増加すると、真空度を高めることが困難となる。
【0017】本発明は、前述の問題点に鑑み、下記(O
01)〜(O06)の記載内容を技術的課題とする。(O0
1)圧力10-12Pa台以下の極高真空領域を得ることが
できる極高真空排気装置及び真空排気方法を提供するこ
と。(O02)一度、圧力10-12Pa台以下の極高真空
領域に到達して極高真空排気装置を停止した後、圧力が
10-12Pa台より悪い真空領域から10-12Pa台以下
の極高真空領域への復帰を短時間で行うこと。(O03)
圧力10-12Pa台以下の極高真空領域に到達する時間
を短縮すること。(O04)前記極高真空排気装置及び真
空排気方法で好適に使用可能なスパッタイオンポンプを
提供すること。(O05)極高真空領域においてスパッタ
イオンポンプの陰極から放出されるメタンガス等を排気
すること。
【0018】
【課題を解決するための手段】次に、前記課題を解決し
た本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施
例の要素との対応を容易にするため、実施例の要素の符
号をカッコで囲んだものを付記する。また、本発明を後
述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明
の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例
に限定するためではない。
【0019】(本発明)前記課題を解決するために、本
発明の極高真空排気装置は、真空容器(1)内を10
-12Pa台以下の極高真空状態に排気するための極高真
空排気装置であって、ゲッター材を熱処理してガスを吸
着することにより前記極高真空状態より高圧の(真空度
が低い)超高真空状態で排気を行う非蒸発ゲッターポン
プ(NEG)と、互いに対向して配置されてその間に磁
界を形成する一対の磁石(9)と、前記一対の磁石
(9)の内側であって磁界方向に離れて配置され且つ対
向する一対の陰極(7,7′,7″)と、前記一対の陰
極(7,7′,7″)の内側であって磁界の方向に沿っ
て軸が配置された筒状の複数の陽極(8,8′,8″)
と、を有し、電圧印加時の陰陽極間での放電によりプラ
スにイオン化されたガスにより前記陰極(7,7′,
7″)からスパッタされた金属材料が前記陽極(8,
8′,8″)に付着すると共に、前記陽極(8,8′,
8″)に付着した金属材料がガスを吸着して排気するス
パッタイオンポンプ(SIP)と、前記超高真空状態の
真空容器(1)内のガスの排気を促進させる排気促進材
を供給する排気促進材供給装置(C-FEG;UV+5
2)と、を備えることを特徴とする。
【0020】前記構成要件を備えた本発明の極高真空排
気装置では、非蒸発ゲッターポンプ(NEG)は、ゲッ
ター材を熱処理して活性化しガスを吸着することにより
前記極高真空状態より高圧の(真空度が低い)超高真空
状態で排気を行う。また、スパッタイオンポンプ(SI
P)では、電圧印加時の陰陽極間での放電(ペニング放
電またはマグネトロン放電)によって陰極(7,7′,
7″)から放出された電子がガスと電離衝突し、プラス
(+)にイオン化したガスと電子が発生する。前記プラ
スにイオン化したガスは、陰陽極間の電界によって移動
し、陰極(7,7′,7″)に衝突する。このとき、前
記陰極(7,7′,7″)からスパッタされた金属材料
が前記陽極(8,8′,8″)に付着する。前記陽極
(8,8′,8″)に付着した金属材料はガスを吸着し
て排気する。
【0021】排気促進材供給装置(C-FEG;UV+
52)は、前記非蒸発ゲッターポンプ(NEG)及びス
パッタイオンポンプ(SIP)によって排気が行われて
いる状態で、排気促進材(電子または活性酸素や紫外光
エネルギー等)を真空容器(1)内に供給する。前記排
気促進材として電子が供給された場合、電子とガスとの
電離衝突によるガスのイオン化が促進されて、スパッタ
イオンポンプ(SIP)での排気が促進される。前記排
気促進材として活性酸素や紫外光エネルギーが供給され
た場合、スパッタイオンポンプ(SIP)及び非蒸発ゲ
ッターポンプ(NEG)によって排気し難い炭化水素ガ
ス(メタンガス等)が活性酸素によって炭素、水素、一
酸化炭素、水等に分解される。分解されてできた水素や
一酸化炭素等は、前記スパッタイオンポンプ(SIP)
及び非蒸発ゲッターポンプ(NEG)で排気される。し
たがって、極高真空領域においてスパッタイオンポンプ
(SIP)の陰極から放出されるメタンガス等を、活性
酸素によって分解して排気することができる。したがっ
て、排気促進材(電子または活性酸素や紫外光エネルギ
ー等)が真空容器(1)に供給されることによって、排
気が促進され、真空容器(1)内を10-12Pa台以下
の極高真空状態に排気することができる。
【0022】また、本発明の極高真空排気装置では、前
記排気促進材供給装置は、排気促進材としての電子を供
給する電子供給源(C-FEG)によって構成すること
ができる。前記構成要件を備えた極高真空排気装置で
は、電子供給源(C-FEG)によって、スパッタイオ
ンポンプ(SIP)に電子が供給される。したがって、
供給された電子が陽極(8,8′,8″)内のガスと電
離衝突し、ガスのイオン化が促進され、排気が促進され
る。この結果、真空容器(1)内を10-12Pa台以下
の極高真空状態に排気することができる。
【0023】また、本発明の極高真空排気装置は、電子
供給源として、冷陰極電界放出電子銃(C-FEG)を
使用することができる。前記構成要件を備えた極高真空
排気装置では、冷陰極電界放出電子銃(C-FEG)に
よって、スパッタイオンポンプ(SIP)に冷陰極電界
放出による電子が供給される。冷陰極電界放出電子銃
(C-FEG)を使用した場合、熱電子を使用する場合
と比較して、極高真空排気装置や真空容器(1)が加熱
されないので、真空容器(1)の内壁面等からのガスの
放出が防止される。この結果、ガスの放出による真空度
の低下を防止でき、真空容器(1)内を10-12Pa台
以下の極高真空まで効率良く排気できる。
【0024】また、前記本発明の極高真空排気装置は、
前記電子供給源から放出された電子を増幅して前記スパ
ッタイオンポンプ(SIP)に供給する電子増幅器(E
M)を備えることもできる。前記構成要件を備えた極高
真空用真空排気システムでは、前記電子増幅器(EM)
は、電子供給源から放出された電子を増幅(増倍)して
前記スパッタイオンポンプ(SIP)に供給する。これ
により、スパッタイオンポンプ(SIP)の陰陽極間で
の放電・排気がさらに促進され、より短時間で効率的に
真空容器(1)内を圧力10-12Pa台以下の極高真空
状態に排気することができる。
【0025】また、前記本発明の極高真空排気装置は、
酸化チタン材料(52)と、前記酸化チタン材料(5
2)に紫外線を照射して、酸化チタン材料(52)から
排気促進材としての活性酸素を放出させる紫外線源(U
V)によって構成された排気促進材供給装置を備えるこ
ともできる。前記構成要件を備えた極高真空排気装置で
は、前記紫外線源(UV)は、酸化チタン材料(52)
に紫外線を照射する。紫外線が酸化チタン材料(52)
に照射されると、酸化チタン材料(52)から活性酸素
(オゾン等)が放出される。前記活性酸素が前記真空容
器(1)内のメタンガス等の炭化水素(有機化合物気
体)と反応したり、前記炭化水素に紫外線が直接照射さ
れたりすると、炭化水素が炭素、水素、一酸化炭素、二
酸化炭素等に分解される。分解されて発生した水素等
は、前記スパッタイオンポンプ(SIP)及び非蒸発ゲ
ッターポンプ(NEG)によって排気される。したがっ
て、排気されにくいメタンガス等を分解してスパッタイ
オンポンプ(SIP)や非蒸発ゲッターポンプ(NE
G)で排気することによって、真空容器(1)内を圧力
10-12Pa台以下の極高真空状態に排気することがで
きる。なお、極高真空排気装置に排気促進材供給装置と
して、電子供給源(C-FEG)と紫外線源(UV)の
双方を備えることも可能である。
【0026】また、本発明の極高真空排気装置は、前記
極高真空状態の時に、真空容器(1)内部の部材表面に
吸着されたガスを放出させるため、超音波を発振して真
空容器(1)内の真空度を低下させる(圧力を上昇させ
る)超音波振動子(UW)を備えることも可能である。
前記構成要件を備えた本発明の極高真空排気装置では、
超音波振動子(UW)は、前記真空容器(1)内が極高
真空状態で超音波を発振することにより、真空容器
(1)内部の部材表面に吸着されたガス(主に水素ガ
ス)を放出させ、真空容器(1)内の圧力を上昇させ
る。即ち、超音波振動子(UW)は、ガスが少なすぎて
前記スパッタイオンポンプ(SIP)の陰陽極間で放電
が発生し難い極高真空領域から、放電が発生し、排気が
再開できる低い真空領域まで、真空容器(1)内の真空
度を低下させる(圧力を高くする)ことができる。した
がって、超音波振動子(UW)を使用することによっ
て、真空容器(1)内の圧力を10-1 2Pa台以下の極
高真空まで短時間で復帰させることができる。なお、弱
い超音波を発振する超音波振動子(UW)を使用する
と、スパッタイオンポンプ(SIP)等で再排気し易い
吸着エネルギーの小さなガス(主に水素ガス)のみを放
出させることができるので、弱い超音波を発振する超音
波振動子(UW)を使用するのが望ましい。
【0027】また、前記課題を解決するために本発明の
真空排気方法は、スパッタイオンポンプ(SIP)と非
蒸発ゲッターポンプ(NEG)とによって排気されて真
空容器(1)内の圧力が5×10-9Paに到達した状態
で、排気促進材供給装置(C-FEG;UV+52)か
ら排気促進材を供給することにより、真空容器(1)内
の圧力を10-12Pa台以下の極高真空状態まで真空度
を高める(図7のST108参照)ことを特徴とする。
【0028】前記本発明の真空排気方法では、スパッタ
イオンポンプ(SIP)と非蒸発ゲッターポンプ(NE
G)とによって排気されて真空容器(1)内の圧力が5
×10-9Paに到達した状態で、排気促進材供給装置
(C-FEG;UV+52)から排気促進材を供給する
ことにより、真空容器(1)内を圧力10-12Pa台以
下の極高真空状態に降下させる。即ち、スパッタイオン
ポンプ(SIP)と非蒸発ゲッターポンプ(NEG)に
よって排気できるほぼ限界の圧力である5×10 -9Pa
に到達したときに、排気促進材供給装置(C-FEG;
UV+52)から排気促進材(電子や活性酸素)が供給
されることによって、ガスのイオン化の促進または排気
されにくいガスの分解が行われ、真空容器(1)内を圧
力10-12Pa台以下の極高真空状態まで排気すること
ができる。
【0029】また、前記課題を解決するために本発明の
真空排気方法は、極高真空状態で、前記スパッタイオン
ポンプ(SIP)を一時停止した後に再起動する際、超
音波振動子(UW)により超音波を発振し、真空容器
(1)内にガス(主に水素ガス)を放出させて真空容器
(1)内の圧力を上昇させ、前記スパッタイオンポンプ
(SIP)の排気の再開を可能にすることを特徴とす
る。前記本発明の真空排気方法では、極高真空状態で、
前記スパッタイオンポンプ(SIP)を一時停止した後
に再起動する際、超音波振動子(UW)により超音波を
発振する。このとき、真空容器(1)内に水素ガスが放
出されて、真空容器(1)内の圧力を短時間で上昇させ
ることができる。したがって、短時間で前記スパッタイ
オンポンプ(SIP)の排気の再開が可能になる。な
お、再起動後短時間で極高真空状態に復帰させるため
に、スパッタイオンポンプ(SIP)によって排気しや
すい吸着エネルギーの小さなガス(主に水素ガス)のみ
を放出させることが可能な弱い超音波を発振することに
よって真空容器(1)内の圧力を上昇させるのが望まし
い。
【0030】また、前記課題を解決するために本発明の
スパッタイオンポンプ(SIP)は、互いに対向して配
置されてその間に磁界を形成する一対の磁石(9)と、
前記一対の磁石(9)の内側であって磁界の方向に離れ
て配置され且つ対向する一対の陰極(7,7′,7″)
と、前記一対の陰極(7,7′,7″)の内側であって
磁界の方向に沿って軸が配置され、且つ前記陰極(7,
7′,7″)との間隔が異なるように配置された複数の
筒状の陽極(8,8′,8″)と、を備え、電圧印加時
の陰陽極間での放電によりプラスにイオン化されたガス
により前記陰極(7,7′,7″)からスパッタされた
金属材料が前記陽極(8,8′,8″)や真空容器
(1)に付着した金属材料がガスを吸着して排気するこ
とを特徴とする。
【0031】前記構成要件を備えた本発明のスパッタイ
オンポンプ(SIP)は、電圧印加時の陰陽極間での放
電(ペニング放電またはマグネトロン放電)により、放
出された電子がガスと電離衝突して、プラス(+)にイ
オン化されたガスと電子が生成される。前記プラスにイ
オン化されたガスは前記陰極(7,7′,7″)をスパ
ッタし、スパッタされた金属材料は前記陽極(8,
8′,8″)や真空容器(1)に付着する。前記陽極
(8,8′,8″)や真空容器(1)に付着した金属材
料は、表面が化学的に活性なので、ガスを収着して排気
する。本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)では、
複数の筒状の陽極(8,8′,8″)と前記陰極(7,
7′,7″)との間隔が異なるように配置されている。
【0032】したがって、陰極(7,7′,7″)と陽
極(8d)との間隔が狭い場所では、放電が発生しやす
いので、真空容器(1)内の真空度が比較的低い状態で
陰陽極間の放電が発生する。前記放電によって発生した
電子は、スパッタイオンポンプ(SIP)内に拡散する
ので、他の陰陽極間でも放電が始まる。即ち、陰極
(7,7′,7″)と陽極(8a〜8c)との間隔が広
い場所では、本来放電が開始されない真空度で放電・排
気を開始することができる。また、陰極(7,7′,
7″)と陽極(8d)との間隔が狭い場所では、ガスが
流入しにくいので、真空容器(1)内の真空度が高くな
ると陽極(8d)内でイオン化されるガスの量が減少
し、放電・排気が停止する。しかし、陰極(7,7′,
7″)と陽極(8a〜8c)との間隔が広い場所では、
ガスが流入しやすいので、放電が継続する。したがっ
て、陰陽極間での放電が同時に停止することなく、真空
容器(1)内の真空度が高くなっても排気し続けること
ができる。この結果、本発明のスパッタイオンポンプ
(SIP)は、真空容器(1)内の真空度が比較的低い
状態から排気を開始することができ、且つ、陰陽極間の
放電が同時に停止することなく継続して排気が行われ、
真空度が高くなっても排気を継続できる。
【0033】また、本発明のスパッタイオンポンプ(S
IP)は、5×10-9Pa以下の状態で使用可能であ
り、その場合、イオン化された水素が陰極(7)をスパ
ッタせずに吸着して排気されるものと考えられる。即
ち、5×10-9Pa以下の状態では、イオン化された水
素等が陰極に衝突して、吸着されるが、前記水素の質量
が小さいので、陰極(7)から金属材料をスパッタしな
い。したがって、スパッタイオンポンプ(SIP)の陽
極(8,8′,8″)内の残留ガスの主成分が水素であ
る場合、5×10-9Pa以下の状態では、スパッタされ
た金属材料に収着されて排気されるのではなく、陰極
(7,7′,7″)に水素が吸着されることにより排気
される。
【0034】また、前記本発明のスパッタイオンポンプ
(SIP)は、内径が30mm以上に形成された陽極(8
a)を備えることもできる。前記構成要件を備えたスパ
ッタイオンポンプ(SIP)では、内径が30mm以上
に形成された陽極(8a)を備えているので、極高真空
状態での陽極(8a)内に存在するガスの量(ガスの原
子・分子の数)が、小径の陽極(例えば、直径2〜3m
mの陽極)と比較して多くなる。したがって、極高真空
状態でも、前記陽極(8a)内でガスが電離衝突によっ
てプラスにイオン化され、ペニング放電が継続する。し
たがって、本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)
は、真空容器(1)内を極高真空状態まで排気すること
ができる。
【0035】また、前記本発明のスパッタイオンポンプ
(SIP)は、長さが異なる複数の前記陽極(8,
8′,8″)を備えることもできる。前記構成要件を備
えたスパッタイオンポンプ(SIP)では、複数の陽極
(8,8′,8″)の長さが異なるので、前記陽極
(8,8′,8″)を挟んで一対の陰極(7,7′,
7″)を平行に配置した場合、陽極(8,8′,8″)
端部と陰極(7,7′,7″)との間隔が異なる。した
がって、長い陽極(8b、8d,8d″)端部と陰極
(7,7′,7″)との間では、陰陽極間の間隔が狭い
ので、比較的真空度が低い状態で放電(ペニング放電ま
たはマグネトロン放電)が発生する。また、長い陽極
(8a,8c,8a″)端部と陰極(7,7′,7″)
との間では、陰陽極間の間隔が広いので、陽極(8a,
8c,8a″)内部にガスが流入しやすい。即ち、前記
本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、極高真空
状態でも陽極(8a,8c,8a″)内部で比較的多く
のガスが存在するので、ガスのイオン化が停止せず、放
電・排気が継続する。
【0036】また、本発明のスパッタイオンポンプ(S
IP)は、大径、中径、及び小径の少なくとも3種類の
内径の陽極(8a〜8d,8a″,8d″)を有する前
記複数の陽極(8,8′,8″)を備えることができ
る。前記構成を備えたスパッタイオンポンプ(SIP)
では、各陽極(8,8′,8″)と陰極(7,7′,
7″)との間隔が、径の小さな陽極(8b,8d,8
d″)ほど狭い場合、径の小さな陽極(8b,8d,8
d″)と陰極(7,7′,7″)との間では、間隔が同
一の場合と比べより低い真空度から放電・排気がされ
る。また、径の大きな陽極(8a,8c,8a″)と陰
極(7,7′,7″)との間隔が広い場合、径の大きな
陽極(8a,8c,8a″)と陰極(7,7′,7″)
との間で、間隔が同一の場合と比べより高い真空度でも
放電・排気を継続することができる。したがって、前記
本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、より低い
真空度で放電・排気を開始でき、より高い真空度でも放
電・排気を継続することができる。
【0037】また、本発明のスパッタイオンポンプ(S
IP)は、前記小径の陽極(8d)の長さを最も長く形
成することができる。前記構成を備えたスパッタイオン
ポンプ(SIP)では、小径の陽極(8d,8d″)の
長さが円筒陽極内では最も長く形成されているので、陰
陽極間での放電が開始される真空容器(1)内の真空度
をより低くすることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に係る
極高真空排気装置、真空排気方法、及びスパッタイオン
ポンプを図面を参照しつつ説明するが、本発明は以下の
実施例に限定されるものではない。なお、以後の説明の
理解を容易にするために、図面において、前後方向をX
軸方向、右左方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向と
し、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向また
は示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、
下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側と
する。また、図中、「○」の中に「・」が記載されたも
のは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中
に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢
印を意味するものとする。
【0039】(実施例1)(極高真空排気装置)図1
は、本発明の実施の形態に係る極高真空排気装置の要部
断面図である。図2は、図1に示した極高真空排気装置
の斜視図である。
【0040】図1において、走査型プローブ顕微鏡(図
示せず)が内部に配置された真空容器1には、極高真空
排気装置用排気口1aと、超高真空ポンプ用排気口1b
と、真空計接続部1cが設けられている。なお、前記真
空容器1は、走査型プローブ顕微鏡の真空容器に限定さ
れず、その他の表面分析装置(半導体材料分析走査電子
顕微鏡、Auger(オージェ)電子顕微鏡、ESC
A、トンネル走査電子顕微鏡等)、冷陰極電界放出電子
銃、原子レーザ及び加速器等で使用される真空室や真空
チャンバにも適用可能である。前記超高真空ポンプ用排
気口1aにはバルブBを介して、ターボ分子ポンプTM
Pの吸気口が接続され、ターボ分子ポンプ(ターボモリ
キュラポンプ)TMPの排気口にはスクロールポンプS
Pの吸気口が接続されている。なお、ターボ分子ポンプ
TMP及びスクロールポンプSPは、超高真空状態を得
るために前段的(予備排気)に用いるが、同様の機能を
有する他のポンプであってもよい。そして、前記真空計
接続部1cには真空容器1の真空度(圧力)を計測する
デジタル表示部付き真空計SKが設けられている。ま
た、前記真空容器1の外壁には、焼出(ベークアウト)
時に真空容器1を加熱するシーズヒータ(図示せず)が
設けられている。
【0041】前記真空容器1の極高真空排気装置用排気
口1bには、極高真空排気装置(Extreme High Vacuum
Pump)XHVPが接続されている。なお、実施例1の真
空容器1は焼出を行うので、前記各排気口1a、1bと
各ポンプTMP,SPとの接続はゴム製のOリングでは
なく、金属製のコンフラットフランジ等の接続によって
気密を保持している。前記極高真空排気装置XHVP
は、前記真空容器1に連通する円筒状の排気通路2と、
排気通路2の左右両端に設けられたスパッタイオンポン
プSIPと、排気通路2の前端部(+X端部)に設けら
れた非蒸発ゲッターポンプ(Non Evaporable Getters P
ump)NEGと、排気通路2の上部に設けられた電子供
給源(排気促進材供給装置)としての排気用冷陰極電界
放出電子銃(Cold Field Emission Gun)C-FEGとを
有する。そして、前記排気通路2内部の冷陰極電界放出
電子銃C-FEGの下方には電子増幅器としてのエレク
トロンマルチプライヤEMが設けられ、排気通路2の外
壁には超音波振動子UW(図2参照)が設けられてい
る。
【0042】(スパッタイオンポンプ)図3は実施例1
の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの要部説明
図で、図2のIII−III線断面図である。図4は実施例1
のスパッタイオンポンプの左側の陽極セルの説明図であ
り、図4Aは平面図、図4Bは側面図である。図5は実
施例1のスパッタイオンポンプの右側の陽極セルの説明
図であり、図5Aは平面図、図5Bは側面図である。
【0043】図1,図2に示すように、前記スパッタイ
オンポンプSIPは、排気通路2に連通する左右一対の
箱状ケース6a、6bを有している。図3〜図5におい
て、前記各ケース6a,6bの内部には、チタン材料
(スパッタされた時に化学的に活性な膜を形成する)で
形成された上下一対の平板状の陰極板7,7(図3参
照)が図示しない支持部材によって固定支持されてい
る。そして、各ケース6a、6b内部の前記陰極板7,
7の間には、前記陰極板7,7の対向する方向(上下方
向)に沿って中心軸が配置された複数の円筒状の陽極
8,8(図1〜5参照)が配置されている。前記左側ケ
ース6a内部の陽極8は、4個の大径(例えば内径44m
m)セル8aと8個の中径(例えば内径21mm)セル8b
を有しており(図4参照)、右側ケース6b内部の陽極
8は、8個の中大径(例えば31mm)セル8c、及び6個
の小径(例えば内径17mm)セル8dとを有している(図
5参照)。前記左側ケース6aの陽極セル8a、8bど
うしは接触面で溶接・電通しており、左側陽極8(陽極
セル8a及び8b)を支持する電圧印加部材(図示せ
ず)によって左側ケース6aに固定支持されている。そ
して、前記左側陽極8には前記電圧印加部材によって電
圧が印加され(図3参照)、前記陰極板7,7はアース
されている。同様に、右側ケース6b内の陽極セル8
c、8dも接触面で溶接・電通され、図示しない電圧印
加部材によって右側陽極8が固定支持されている。
【0044】また、図1〜図5に示すように、前記4つ
の大径セル8aの内の1つのセルと、前記中大径セル8
cの内の2つのセルの中心には、前記上下一対の陰極板
7に接続する陰極軸7aが配置されている(図3参
照)。したがって、陰極軸7aが配置されている陽極セ
ル8a,8cと陰極軸7aとの間でマグネトロン放電に
より電流が流れる。そして、前記陰極軸7aの設けられ
ていない陽極セル8a,8b,8c,8dと陰極板7と
の間、及び各陽極セル8a〜8dに囲まれた部分と陰極
板7との間ではペニング放電により電流が流れる。な
お、実施例1では、陰極軸7aは大径または中大径セル
8a,8cの内部にのみ配置したが、中径セル8bまた
は小径セル8c内部に配置することも可能である。ま
た、前記陰極軸7aは径の大きさに関係なく配置するこ
とも可能であり、さらに、陰極軸7aを配置しない構成
とすることも可能である。また、前記陽極セル8は、円
筒状のものに限定されず、多角形筒状ものを使用するこ
とも可能である。
【0045】図3〜図5に示すように、前記各陽極セル
8a〜8dの軸方向の長さは、内径が小さいものほど長
く形成されており、小径セル8bが最も長く、大径セル
8aが最も短く形成されている。即ち、前記陰極板7と
小径セル8bとの間隔が最も狭く、大径セル8aと陰極
板7との間隔が最も広い。そして、実施例1では、前記
陰陽極間の間隔は、間隔と陽極セルの径との比がほぼ
1:1になるように設定されている。
【0046】図2、図3に示すように、前記ケース6の
外部の上下には前記陽極セル8の軸方向(上下方向)に
沿った磁界を印加する上下一対の永久磁石9が設けられ
ている。前記磁石9として、実施例1では、0.15T
(テスラ)のフェライト磁石ではなく、0.3T程度の
サマリウム−コバルト磁石を使用している。なお、実施
例1では永久磁石を使用したが、電磁石を使用すること
も可能である。
【0047】前記実施例1のスパッタイオンポンプSI
Pは、放電開始真空度より良い真空度において、陰極板
7と陽極8との間に1〜数kVの電圧が印加されると、
前述のように、ペニング放電またはマグネトロン放電に
よって陰極板7や陰極軸7aから1次電子が放出され
る。前記1次電子は、前述のように、各陽極セル8a〜
8d内または陽極セル8a〜8dに囲まれた部分で旋回
移動し、前述の雪崩現象によりプラスにイオン化したガ
スと2次電子が大量に生成される。前記プラスにイオン
化したガスは、負電位の陰極板7に衝突して、陰極板7
のチタン原子をスパッタする。スパッタされたチタン原
子は、各陽極セル8a〜8dの表面やケース6a、6b
の内壁に付着して、化学的に活性なチタンの膜を形成す
る。化学的に活性なチタン膜は前述のゲッター作用によ
り、陽極セル8a〜8d内のガスを収着して排気する。
この結果、前記スパッタイオンポンプSIPによって、
排気通路2と連通する真空容器1が排気される。
【0048】ここで、実施例1の極高真空排気装置XH
VPは、0.3Tの磁束密度の大きな磁石9を使用して
いるので、各陽極セル8a〜8d内の2次電子が磁界に
よって受ける力が大きい。即ち、磁界が弱い場合と比較
して、陽極セル8a〜8d内部で旋回移動する2次電子
の軌道が、より陽極セル8a〜8dの軸に近い軌道とな
る。したがって、2次電子の旋回移動する距離が磁界が
弱い場合と比べ長くなり、2次電子とガスとが電離衝突
する確率(即ち、ガスがイオン化される確率)が高くな
り、排気可能な真空度(到達真空度)が向上する。
【0049】前述したように、陽極セル8a〜8dの径
が小さいほど、陽極セル8a〜8dの前記軸電位が高く
なるので放電開始真空度が低くなる。また、陽極セル8
a〜8dの径が大きいほど、陽極セル8a〜8d内部に
存在するガスが多いので、到達真空度が高くなる。さら
に、陽極セル8a〜8dの長さが長いほど、即ち、陰極
板7と陽極セル8a〜8dとの間隔が狭いほど、ペニン
グ放電等が発生しやすいので、放電開始真空度が低くな
る。また、陽極セル8a〜8dの長さが短いほど、即
ち、陰極板7と陽極セル8a〜8dとの間隔が広いほ
ど、外部から気体が流入しやすいので、到達真空度が高
くなる。実施例1の極高真空排気装置XHVPでは、ス
パッタイオンポンプSIPの陽極8は、大径セル8a、
中径セル8b、中大径セル8c、小径セル8dの4種類
の異なる径の筒状セルを有し且つ、大径セル8aの軸方
向の長さが最も短く、小径セル8dの軸方向の長さが最
も長く形成されている。即ち、実施例1のスパッタイオ
ンポンプSIPは、長く径の小さい小径セル8dを有す
るので放電開始真空度が低くなり、且つ、短く径の長い
大径セル8aによって到達真空度が高くなる。
【0050】また、実施例1のスパッタイオンポンプS
IPは、放電開始真空度で放電が開始しされると、放出
された前記1次電子及び2次電子は右側ケース6b内だ
けでなく、左側ケース6a内にも拡散し、全ての陽極セ
ル8a〜8cと陰極板7との間の放電・排気を開始させ
る。即ち、前記大径セル8a、中径セル8b及び中大径
セル8cは、本来放電が発生しない低い真空度から放電
・排気が開始される。また、超高真空領域に到達して小
径の陽極セル8dと陰極板7との間で放電・排気されな
くなっても、大径セル8a、中大径セル8c及び中径セ
ル8bによって排気を継続することが可能であり、極高
真空領域に到達しても、大径セル8a、中大径セル8c
によって排気が持続する。
【0051】この結果、実施例1のスパッタイオンポン
プSIPは、到達真空度が向上し、極高真空においても
排気できる。また、径が小さく長い小径セル8dを備え
ているので放電開始真空度を低くできる。さらに、実施
例1のスパッタイオンポンプSIPでは、全ての陽極セ
ル8a〜8dの長さ及び径が異なっているので、ある真
空度で全ての陽極セル8a〜8dの放電・排気が同時に
停止することなく、高真空領域から極高真空領域まで安
定して排気することができる。
【0052】なお、本発明者の実験の結果、各陽極セル
8a〜8dと陰極板7との間隔が各陽極セル8a〜8d
の径の大きさとほぼ等しい場合、または、それより若干
狭い場合、極高真空領域での排気効率が良くなり、より
到達真空度が高くなった。したがって、陰極板7と各陽
極セル8a〜8d端部との間隔が、各陽極セル8a〜8
dの径の大きさとほぼ等しくなるように設定された実施
例1のスパッタイオンポンプSIPでは、極高真空状態
での排気効率が高くなっている。
【0053】また、実施例1では、左側ケース6a内の
陽極セル8c,8dと右側ケース6bの陽極8a,8b
とを異なる径及び長さの4種類の陽極セル8a〜8dで
構成したが、左右両ケース6a、6bの陽極8を大径8
a及び中径8bの2種類の陽極セル8a,8bで構成す
ることも可能である。また、陽極8の形状は同時に排気
が停止するのを防止するために2種類以上の複数の長さ
または径のセルによって構成するのが望ましいが、ター
ボ分子ポンプTMP等の予備排気真空ポンプによって排
気可能な真空度(圧力)から排気可能で、極高真空状態
に排気できる性能を確保できれば、同一径、同一長さの
多数の陽極セルのみで構成することも可能である。
【0054】(非蒸発ゲッターポンプ)図1,図2にお
いて、前記非蒸発ゲッターポンプNEGは、排気通路2
内部に突出するゲッター部11(図1参照)と、前記ゲ
ッター部11を支持し且つ排気通路2の外部に設けられ
たゲッターポンプ支持体12とを有している。前記ゲッ
ターポンプ支持体12の後端には図示しない電源に接続
するコネクタ12aが設けられており、電気が供給され
るとゲッターポンプ支持体12は内部に設けられた加熱
装置(図示せず)によってゲッター部11を数百℃以上
(500℃程度)に加熱する。前記ゲッター部11は、
ジルコニウム(Zr)−アルミニウム(Al)の二元合
金の粉体を金属板(例えば銅板)に圧着して製造された
非蒸発ゲッター材によって形成されている。前記ゲッタ
ー部11は、表面積を広くするために前記非蒸発ゲッタ
ー材の金属板が何重にも折り込まれて形成されており、
これにより排気できる面積が広くなっている。なお、前
記ゲッター部11はジルコニウム(Zr)−バナジウム
(V)−鉄(Fe)またはジルコニウム(Zr)−稀土
類金属−コバルト(Co)の三元合金等の粉体を金属板
に圧着したもの等で構成することも可能である。
【0055】前記非蒸発ゲッターポンプNEGは、真空
中でゲッター部11が数百℃まで加熱すると、ゲッター
部11表面のガスが付着した膜(酸化膜)が昇華(蒸
発)せず、内部に拡散し、新しい活性なゲッター面が現
れる。この過程は活性化と呼ばれている。活性化され
た、ゲッター部11表面に付着したガスはゲッター材内
部に拡散して永久に固定され、一度収着したガスは再度
放出されることはない。即ち、前記ゲッター部11が活
性化され、新たに現れた活性なゲッター材の表面(ゲッ
ター面)がガスを収着することによって、排気が行われ
る。また、新たに現れた活性なゲッター面は、表面が酸
化されてもガスを収着し続けるので、一度活性化された
ゲッター部11は、加熱を停止してもガスを排気するこ
とができる。また、前記材料で構成されたゲッター部1
1は、特に、極高真空領域の残留ガスの主成分であるメ
タンガス、一酸化炭素、水素のうち、一酸化炭素及び水
素を吸着しやすい特性を有している。
【0056】(排気用冷陰極電界放出電子銃)図6は実
施例1の極高真空排気装置の冷陰極電界放出電子銃とエ
レクトトンマルチプライヤとによる電子の移動を説明す
る作用説明図である。図1、図2において、極高真空排
気装置XHVPの排気通路2に設けられた前記冷陰極電
界放出電子銃C-FEGは、先端の尖った陰極と、前記
陰極を取り囲むように配置された陽極を有し、前記陽極
と陰極間に電圧を加えることによって陰極から電子を放
出する従来公知(例えば、特許第2779026号参
照)の電子銃である。なお、前記冷陰極電界放出電子銃
C-FEGの代わりに、熱電子銃(例えば、ショットキ
ーエミッション型電子銃等)を使用することも可能であ
る。
【0057】図2,図6において、前記冷陰極電界放出
電子銃C-FEGは、排気通路2内に1次電子(排気促
進材)を放出する。放出された1次電子は、電気的な力
によって、スパッタイオンポンプSIPの陽極セル8a
〜8dに向かって移動する。即ち、真空度が高くなり、
ポンプ内の残留ガス(原子・分子)の数が減少したため
に、ペニング放電及びマグネトロン放電が発生し難い状
態であっても、前記冷陰極電界放出電子銃C-FEGに
よってスパッタイオンポンプSIPの陽極セル8a〜8
d内に電子を供給することによって、ガスのイオン化が
促進され、さらに排気することができる。
【0058】(電子増幅器)図1,図4において、前記
冷陰極電界放出電子銃C-FEGの下方には、従来公知
(例えば、特開2001−126657号公報等)のエ
レクトロンマルチプライヤ(電子増幅器)EMが設けら
れている。図6において、前記エレクトロンマルチプラ
イヤEMは、冷陰極電界放出電子銃C-FEGから放出
された1次電子の数を1×106倍程度に増幅(増倍)
して、2次電子(オージェ電子・反射電子を含む)とし
て排気通路2内部に放出する。放出された2次電子は、
電気的な力によってスパッタイオンポンプSIPの陽極
セル8a〜8d内に供給され、陽極セル8a〜8d内の
ガスをイオン化させる。したがって、冷陰極電界放出電
子銃C-FEGだけしか備えない場合よりも、増幅され
た電子によってガスを効率よくイオン化できる。なお、
実施例1では、電子増幅器としてエレクトロンマルチプ
ライヤEMを使用したが、チャンネルトロンやマイクロ
チャンネルプレート等の電子増幅器を使用することも可
能である。
【0059】(超音波振動子)前記排気通路2の上部外
壁に設けられた超音波振動子UW(図2参照)は、エネ
ルギーの弱い超音波を発振する従来公知のものを使用可
能であり、例えば、眼鏡、入歯、宝石などの洗浄を目的
とした家庭用の小型洗浄機に使用される圧電振動子を使
用することができる。前記超音波振動子UWは、真空容
器1が極高真空状態の時に、弱い超音波を発振し、真空
容器1や排気通路2を振動させる。真空容器1等が振動
すると、真空容器1等の内壁面に弱く吸着していたガス
(吸着エネルギーが小さく質量の小さい気体、主に水
素)が放出され、真空容器1内の真空度が低下する。こ
の結果、単位体積あたりの原子・分子の数が少なすぎて
ペニング放電の開始が難しい極高真空領域から、ペニン
グ放電及びマグネトロン放電が発生しスパッタイオンポ
ンプSIPで排気可能な真空度(5×10-8程度)ま
で、短時間且つ容易に真空度を低下させることができ
る。
【0060】なお、弱い超音波を発振する前記超音波振
動子UWに替えて強い超音波を発振する超音波振動子を
使用することも可能である。しかし、強い超音波振動子
を使用すると、スパッタイオンポンプSIP等で再排気
し難い吸着エネルギーの大きく質量の大きなガスまで放
出されるため、再び排気して極高真空領域に復帰するの
に長時間を要する。そのため、弱い超音波を発振する超
音波振動子UWを使用するのが望ましい。また、真空度
を低下させる方法として、局所を加熱する方法、壁を叩
く方法、及びガスを導入する方法もあるが、超音波振動
子UWを使用する方が、シンプル且つ低コストな構成及
び電気的制御で、排気の容易な吸着エネルギーの小さく
質量の小さなガス(主に水素ガス)だけを、選択的に放
出させることができるので、弱い超音波振動子UWを使
用するのが望ましい。
【0061】(実施例1の作用)図7は実施例1の極高
真空排気装置を用いた真空排気の作業手順の説明図であ
る。前記構成を備えた実施例1の極高真空排気装置XH
VPは、以下に示す真空排気作業手順(真空排気方法)
により、真空容器1内を圧力10-12Pa台の極高真空
状態に排気することができる。 (極高真空排気装置を用いた真空排気作業手順)図7の
ST101において、バルブB(図1参照)を開いた状
態で、前記スクロールポンプSPの作動スイッチをオン
にして、スクロールポンプSPによって大気圧からの排
気を開始する。ST102において、作業者が前記真空
計SKの計測値を確認し、前記スクロールポンプSPの
排気によって、ターボ分子ポンプTMPが作動可能な所
定の圧力(真空度)になった状態で、ターボ分子ポンプ
TMPの作動スイッチをオンにして、ターボ分子ポンプ
TMPによる排気を開始する。
【0062】ST103において、真空計SKの計測値
を確認し、スパッタイオンポンプSIPが作動可能な所
定の真空度(例えば、圧力1×10-4Pa程度)まで排
気された状態で、前記スパッタイオンポンプSIPの陽
極8に電圧を印加して、スパッタイオンポンプSIPを
作動させ、排気を開始する。このとき、スパッタイオン
ポンプSIPの陰陽極間の放電により、陽極8表面に付
着していたガスや塵等が放出され、陽極8表面の尖って
いる部分(凸部)が放電によって削れて、陽極8の表面
が清浄化(放電洗浄)される。この放電洗浄は3〜5分
で終了し、放出されたガスや塵等はスクロールポンプS
P及びターボ分子ポンプTMPによって排気される。S
T104において、スパッタイオンポンプSIPが作動
した状態で、前記真空容器1の外壁に設けたシーズヒー
タ(図示せず)のスイッチをオンにして真空容器1のベ
ークアウト(焼出)を行う。前記ベークアウトは、真空
容器1を250℃〜300℃に加熱することによって行
う。このベークアウトを行うことによって、極高真空領
域において真空容器1表面からガス等が放出されるのを
防止でき、結果として、到達真空度を上昇させることが
できる。
【0063】ST105において、前記ベークアウトを
開始してから所定の時間経過後(15時間〜20時間程
度)、作業者が真空計SKの計測値を確認して所定の真
空度(圧力5×10-6Pa以下)になった状態で、シー
ズヒータのスイッチをオフにして、ベークアウトを終了
し、自然冷却を開始する。ST106において、真空計
SKの計測値を確認して、非蒸発ゲッターポンプNEG
が作動可能な所定の真空度(圧力5×10-7Pa程度)
になった状態で、非蒸発ゲッターポンプNEGのスイッ
チをオンにして、非蒸発ゲッターポンプNEGを作動さ
せ、ゲッター部11のゲッター材を活性化させる。この
とき、非蒸発ゲッターポンプNEGによる排気が開始さ
れる。ST107において、次の(1)〜(3)の作業
を行う。 (1)前記バルブBを閉じる。 (2)前記ターボ分子ポンプTMPを停止させる。 (3)前記スクロールポンプSPを停止させる。
【0064】ST108において、前記非蒸発ゲッター
ポンプNEGが作動してから所定の時間(2〜3時間程
度)が経過し、真空計SKの計測値が圧力5×10-9
a以下の真空度に達した状態で、冷陰極電界放出電子銃
C-FEGを作動させ、極高真空排気装置XHVP内に
電子(排気促進材)を供給する。このとき、数十秒〜数
分で、真空容器1内は、圧力10-12Pa台以下の極高
真空に到達する。
【0065】その理由(原理)は次のように考えられ
る。圧力5×10-9Pa以下の真空度では、陽極セル8
a〜8d内のガス分子の数が少なくペニング放電やマグ
ネトロン放電がほとんど発生せず、スパッタイオンポン
プSIPによる排気は限界に近づいている。即ち、前記
陽極セル8a〜8dに付着したチタン膜がガス(特に水
素)を吸着する速度と、放出する速度とが平衡状態に達
している。この状態で、冷陰極電界放出電子銃C-FE
Gから1次電子(排気促進材)が供給されると、1次電
子によって陽極セル8a〜8d内のガスがイオン化さ
れ、イオン化されたガスが陰極板7に引き寄せられる。
この真空度では、真空容器1内のガスはほとんどが原子
量の小さな水素なので、イオン化された水素が電界によ
って加速されて陰極板7に衝突しても、陰極板7のチタ
ン原子はほとんどスパッタされないものと考えられる。
したがって、圧力5×10-9Pa以下の真空度より高い
真空度では、イオン化された水素は、主に、陰極板7に
衝突した時にチタン原子をスパッタせずに吸着されて排
気される。また、このとき、イオン化されていない水素
も陰極板7の表面に衝突した時に吸着し、排気される。
また、冷陰極電界放出電子銃C-FEGから供給された
1次電子はエレクトロンマルチプライヤEMによって増
幅(増倍)される。したがって、前記スパッタイオンポ
ンプSIP内には増倍された大量の2次電子(排気促進
材)が放出されるので、ペニング放電・マグネトロン放
電が促進され、排気が促進される。
【0066】真空容器1内の真空度が急激に上昇したた
め、真空容器1や極高真空排気装置XHVPの構成部材
からガスが放出される。即ち、このようにして得られた
圧力10-12Pa台以下の極高真空状態は、持続性に乏
しい。したがって、前記スパッタイオンポンプSIP、
非蒸発ゲッターポンプNEG及び冷陰極電界放出電子銃
C-FEGを作動させたまま、前記構成部材からのガス
放出が減少するのを待つ。このとき、構成部材の1つで
ある真空計SKがペニング真空計(ペニング電流を計測
することにより真空度を計測する真空計)等である場
合、真空計測時にガスが放出される可能性があるので、
計測する時以外は作動を停止させる。構成部品からのガ
スの放出が減少すると、真空容器1内の圧力が10-12
Pa台以下の安定した極高真空状態が得られる。
【0067】ST109において、前記10-12Pa台
以下の極高真空状態の真空容器1内部は、作業(顕微分
析作業や描画作業等)を行ったり、作業を中断したりし
ながら、極高真空度に近い真空度を、数ヶ月〜2年程度
維持することがある。前記真空容器1内の真空度を極高
真空度に近い状態に維持する期間中、スパッタイオンポ
ンプSIP、非蒸発ゲッターポンプNEG及び冷陰極電
界放出電子銃C-FEGのいずれか又は全てを、必要に
応じて停止、再起動する。ST110において、顕微分
析作業等を終了し、且つ、真空排気作業も終了する時、
作業者により全てのスイッチがオフにされ、全作業手順
を終了する。
【0068】(極高真空排気装置によって圧力10-12
Pa台以下の極高真空状態に排気された後の極高真空排
気装置の再起動作業の手順)前述の極高真空排気方法の
作業手順ST109において、10-12Pa台以下の安
定した極高真空の真空容器1で作業(顕微分析作業や描
画作業等)を行った後、冷陰極電界放出電子銃C-FE
GとスパッタイオンポンプSIPを停止した状態で、極
高真空状態が保持されている場合がある。このとき、真
空度がスパッタイオンポンプSIPの再起動が可能な真
空度(5×10-8Pa程度)まで低下していれば、それ
ぞれの真空度に対応して再起動を行うことができる。
【0069】しかし、真空度が悪化しても圧力1×10
-10Pa程度の状態では、スパッタイオンポンプSIP
を作動させても、真空度が高すぎるためペニング放電や
マグネトロン放電が起こりにくく、スパッタイオンポン
プSIPによって排気ができない。したがって、この場
合、スパッタイオンポンプSIPによる排気が可能な真
空度である5×10-8Paまで真空度を低下させなけれ
ば、再び10-12Pa台以下の極高真空領域を得ること
ができない。このとき、成り行きに任せて真空度の低下
を待っていると時間がかかるので、真空容器1内の真空
度を5×10-8Pa程度に強制的に低下させるために、
前述のように真空容器1外壁を叩いて振動させると、振
動した真空容器1内壁から排気に時間のかかる高分子量
のガスが放出されることがある。その場合、再起動後極
高真空状態に復帰するのにやはり時間がかかる。
【0070】そこで、実施例1では、真空度が5×10
-8Paより高い時には、短時間且つ容易に真空度を低下
させるために、前記弱い超音波振動子UWを使用する。
次に、超音波振動子UWを使用した極高真空領域での極
高真空排気装置の再起動作業の手順を説明する。真空容
器1内の真空度が5×10-8Paより高い(良い)場
合、作業者は超音波振動子UWのスイッチをオンにし
て、超音波振動子UWを作動させる。前記超音波振動子
UWが作動すると、極高真空排気装置XHVPの外壁が
振動し、極高真空排気装置XHVPの内壁等に弱く付着
しているガス(主に水素)が放出される。そして、ガス
の放出により、真空計SKの計測値が5×10-8Paよ
り低い真空度まで悪化した時、前記スパッタイオンポン
プSIPを作動させ、スパッタイオンポンプSIPによ
る放電・排気を再開する。そして、前記超音波振動子U
Wのスイッチをオフにし、超音波振動子UWを停止す
る。前記超音波振動子UW停止後、前記極高真空排気装
置による真空排気方法の作業手順のST108と同様
に、冷陰極電界放出電子銃C-FEGを作動させて、真
空容器1内を再び、圧力10-12Pa台以下の極高真空
領域まで排気する。
【0071】したがって、前記弱い超音波振動子UWに
より吸着エネルギーの小さく質量の小さなガス(主に水
素ガス)を放出させることによって、スパッタイオンポ
ンプSIPの放電可能な真空度(5×10-8Pa程度)
まで短時間で悪化させることができる。また、質量の小
さな排気しやすいガス(水素ガス等)が多いので、その
後のスパッタイオンポンプSIPや非蒸発ゲッターポン
プNEGによる排気も短時間で行うことができ、短時間
で10-12Pa台以下の極高真空状態に復帰することが
できる。以上の結果、実施例1の極高真空排気装置XH
VPは、冷陰極電界放出電子銃C-FEGを作動させる
ことによって、10-12Pa台以下の極高真空状態まで
排気することができる。
【0072】(実施例2)図8は実施例2の極高真空排
気装置の説明図であり、実施例1の図1に対応する図で
ある。図9は実施例2の極高真空排気装置の要部断面斜
視図であり、実施例2の図2に対応する図である。な
お、この実施例2の極高真空排気装置の説明において、
前記実施例1の極高真空排気装置の構成要素に対応する
構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省
略する。図8、図9において、実施例2の極高真空排気
装置XHVP′では、実施例1の冷陰極電界放出電子銃
C-FEGに替えてキセノンランプを有する紫外線照射
装置(紫外線源)UVが配置されている。前記紫外線照
射装置UVは、排気通路2内部に向けて紫外線を照射す
る紫外線照射部51を有する。そして、実施例2の極高
真空排気装置XHVP′では、エレクトロンマルチプラ
イヤEMに替えて、酸化チタンを主成分とするチタン及
び非磁性金属の合金で形成された酸化チタンプレート
(酸化チタン材料)52が、前記紫外線照射部51に対
向する位置に固定支持されている。なお、前記紫外線照
射装置UVは、キセノンランプに替えて、水銀キセノン
ランプや紫外線パルスレーザ発生装置等の従来公知の紫
外線照射装置を使用することが可能である。前記紫外線
照射装置UVと、酸化チタンプレート52とによって排
気促進材供給装置(UV+52)が構成されている。
【0073】(実施例2の作用)前記構成を備えた実施
例2の極高真空排気装置XHVP′では、実施例1の真
空排気作業手順(図7参照)のST108において、冷
陰極電界放出電子銃C-FEGに替えて紫外線照射装置
UVを作動させる。前記紫外線照射装置UVから照射さ
れた紫外線は、散乱・反射によって極高真空排気装置X
HVP′内部に広がる。このとき、作動中の前記スパッ
タイオンポンプSIPの陽極8には、陰極板7からスパ
ッタされたチタンによってチタン膜が形成されている。
紫外線が陽極8表面のチタン膜や、チタンプレート52
等の酸化チタンを含む部材に照射されると、オゾン等の
活性な酸素(活性酸素)が発生する。前記活性酸素(排
気促進材)が炭化水素(メタン等)と化学反応すると、
炭化水素が、炭素(固体)、水素(気体)、一酸化炭素
(気体)、二酸化炭素(気体)や水(気体)等に分解さ
れる。また、前記紫外線照射装置UVから照射された紫
外線が、メタンガス等の炭化水素に直接照射された場合
も、紫外線の持つ光エネルギー(排気促進材)によっ
て、同様に分解される。
【0074】前記炭化水素(メタンガス等)は、イオン
化され難くスパッタイオンポンプSIPで排気されにく
い。その上、従来技術の問題点として前述したように、
極高真空状態では、チタンを触媒として前記炭化水素ガ
スが生成される放出される。実施例2の極高真空排気装
置XHVP′では、活性酸素や紫外線の持つ光エネルギ
ー(紫外光エネルギー)によって、排気が困難であった
メタンガス等の炭化水素(有機化合物気体)が排気可能
なガス(水素等)に分解されるので、スパッタイオンポ
ンプSIPで排気することができる。
【0075】また、極高真空状態では、陽極8表面のチ
タン膜や陰極板7、ゲッター部11等に吸着されるガス
と、チタン膜等から放出されるガスとが平衡状態にな
り、排気がほとんど行われなくなっている。しかし、前
記活性酸素によってメタンガス等が分解されると、極高
真空排気装置XHVP′内のガスのイオン化率が増加す
るため、前記平衡状態が崩れ、スパッタイオンポンプS
IP及び非蒸発ゲッターポンプNEGで排気することが
可能となる。したがって、活性酸素や紫外光エネルギー
(排気促進材)によって、メタンガス等を分解すること
により、メタンガス等に比べイオン化されやすい水素、
一酸化炭素等のガスの量が増加するので、ガスのイオン
化が促進され且つ、平衡状態が崩れ、スパッタイオンポ
ンプSIPや非蒸発ゲッターポンプNEGによってさら
に排気することができる。この結果、実施例2の極高真
空排気装置P′は、実施例1の極高真空排気装置XHV
Pと同様に、真空容器1内を圧力10-12Pa台以下の
極高真空状態まで排気することができる。
【0076】なお、実施例2の極高真空排気装置XHV
P′では、電子供給源としての冷陰極電界放出電子銃C
-FEGに替えて、紫外線照射装置UVと酸化チタンプ
レート52を使用したが、冷陰極電界放出電子銃C-F
EGと紫外線照射装置UV及び酸化チタンプレート52
を両方共に備える構成とすることも可能である。この場
合、さらに効率的に排気することができる。
【0077】(実施例3)図10は実施例3の極高真空
排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの断面説明
図である。なお、この実施例3の極高真空排気装置の説
明において、前記実施例1の極高真空排気装置の構成要
素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳
細な説明を省略する。図10に示すように、実施例3の
極高真空排気装置のスパッタイオンポンプSIPでは、
対向する2組の陰極板7a′,7a′と7b′,7b′
とが磁石9の磁界の方向に沿って配置されている。前記
陰極板7a′,7a′どうしの間隔は、陰極板7b′,
7b′どうしの間隔よりも狭くなるように配置されてい
る。そして、実施例3の複数の陽極8′は、同一径・同
一長さの筒状のセル8eによって構成されている。した
がって、実施例3のスパッタイオンポンプSIPでは、
陰極板7a′と後側(−X側)の陽極セル8eとの間隔
が狭くなり、陰極板7b′と前側(+X側)の陽極セル
8eとの間隔が広くなっている。
【0078】なお、実施例3のスパッタイオンポンプS
IPは、対向する2組の陰極板7a′,7a′、7
b′,7b′を有しているが、3組以上の対向する陰極
板を備える構成とすることも可能である。また、実施例
3の陽極8は同一径・同一長さの陽極セル8eを使用し
たが、陰極板7′との間隔の狭い後側(−X側)に小径
セルを配置し、間隔の広い前側(+X側)に大径セルを
配置することも可能である。このとき、前記実施例1,
2の長い小径セル8dと短い大径セル8aと同様の作用
効果が得られる。さらに、小径セルと大径セルとの間に
中径セルを配置する構成も可能である。
【0079】(実施例3の作用)前記構成を備えた実施
例3の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプSIP
では、陰極板7a′、7b′と陽極セル8e端部との間
隔が異なるように構成されているので、比較的低い真空
度(高真空領域)で後側(−X側)の陽極8と陰極板
7′との間で放電・排気が開始される。そして、前記陽
極セル8e端部と陰極板7′との間隔が異なるので、あ
る真空度で排気が同時に停止することが防止される。ま
た、同一径の前記陽極セル8の内径を適切な大きさ(大
径)にすることによって、極高真空領域においても排気
することができる。
【0080】(実施例4)図11は実施例4の極高真空
排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの断面説明
図である。なお、この実施例4の極高真空排気装置の説
明において、前記実施例3の極高真空排気装置の構成要
素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳
細な説明を省略する。図11において、実施例4の極高
真空排気装置のスパッタイオンポンプSIPは、上下に
対向して配置された陰極板7,7と、前記陰極板7,7
の中間部に前記陰極板7,7に平行に配置された中央陰
極板7″とを有している。そして、前記上側の陰極板7
と中央陰極板7″との間及び下側の陰極板7と中央陰極
板7″との間には、それぞれ、陽極8″、8″が図示し
ない支持部材によって固定支持されている。前記陽極
8″、8″には、同一の電圧を印加され、中央陰極板
7″はアースされている。また、前記陽極8″,8″
は、実施例1の陽極セルと同様に、短い大径セル8
a″、8a″及び長い小径セル8d″、8d″を有して
いる。
【0081】なお、実施例4では、陽極8″は大径セル
8a″と小径セル8d″とによって構成されているが、
実施例1と同様に中径セル8bを備えることも可能であ
るし、実施例3のように全て同一径のセルで構成するこ
とも可能である。また、実施例4では、陽極セル8″、
8″を2段に配置したが、3段以上配置することも可能
である。
【0082】(実施例4の作用)前記構成を備えた実施
例4の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプSIP
では、実施例1と同様に、比較的低い放電開始真空度
で、小径セル8d″と陰極板7,7″との間で放電・排
気を開始することができ、且つ、極高真空領域において
大径セル8a′,8a″と陰極板7,7″との間で放電
・排気を持続することができる。また、複数の前記陽極
セル8a″,8d″と陰極板7′との間隔が異なるの
で、ある真空度で排気が同時に停止することが防止され
る。
【0083】(実施例5)図12は実施例5の極高真空
排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの平面図で
ある。なお、この実施例5の極高真空排気装置の説明に
おいて、前記実施例1の極高真空排気装置の構成要素に
対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な
説明を省略する。図12において、実施例5の極高真空
排気装置のスパッタイオンポンプの円筒状の陽極セル8
は、大径セル8a(内径31mm)と、中径セル8b(内径
17mm)と、小径セル8d(内径12.5mm)とを有してい
る。図12に示すように、実施例5の陽極セル8は、内
側に大径セル8aを配置し、その周辺部に中径セル8
b、小径セル8dを配置している。そして、実施例1と
同様に、大径セル8aの長さが最も短く、小径セル8d
の長さが最も長く構成されている。
【0084】(実施例5の作用)前記構成を備えた実施
例5のスパッタイオンポンプは、長い小径セル8dと短
い大径セル8aとを備えているので、比較的低い真空度
で放電・排気が開始され且つ極高真空領域で排気を持続
することができる。また、大径セル8a、中径セル8
b、小径セル8cの長さが異なるので、同時に排気が停
止せず、安定して高真空領域から極高真空領域まで排気
できる。
【0085】(実施例6)図13は実施例6の極高真空
排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの平面図で
ある。なお、この実施例6の極高真空排気装置の説明に
おいて、前記実施例1、実施例5の極高真空排気装置の
構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、
その詳細な説明を省略する。図13において、実施例6
の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セル
8は、最も長さの短い大径セル8a(内径35mm)と、中
間の長さの中径セル8b(内径29mm)と、最も長い小径
セル8c(内径16mm)とを有している。したがって、実
施例6のスパッタイオンポンプは、比較的低い真空度か
ら排気ができ且つ極高真空状態まで排気が停止すること
なく排気できる。
【0086】(変更例)以上、本発明の実施例を詳述し
たが、本発明は、前記実施例に限定されるものではな
く、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内
で、種々の変更を行うことが可能である。以下に変更例
を例示する。(H01)前記各実施例において、活性酸素
を供給する装置として紫外線照射装置UV及び酸化チタ
ンプレート52を使用したが、排気促進材としての活性
酸素を供給可能な任意の排気促進材供給装置を使用可能
である。
【発明の効果】前述の本発明の極高真空排気装置、極高
真空排気方法及びスパッタイオンポンプは、下記の効果
を奏することができる。 (E01)圧力10-12Pa台以下の極高真空領域を得る
ことができる極高真空排気装置及び真空排気方法を提供
することができる。 (E02)一度、圧力10-12Pa台以下の極高真空領域
に到達して極高真空排気装置を停止した後、圧力が10
-12Pa台より悪い真空領域から10-12Pa台以下の極
高真空領域への復帰を短時間で行うことができる。 (E03)圧力10-12Pa台以下の極高真空領域に到達
する時間を大幅に(1ヶ月程度かかっていたのを数分
に)短縮することができる。 (E04)前記極高真空排気装置及び真空排気方法で好適
に使用可能なスパッタイオンポンプを提供することがで
きる。 (E05)極高真空領域においてスパッタイオンポンプの
陰極から放出されるメタンガス等を排気することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施の形態に係る極高真空
排気装置の要部断面図である。
【図2】 図2は、図1に示した極高真空排気装置の斜
視図である。
【図3】 図3は実施例1の極高真空排気装置のスパッ
タイオンポンプの要部説明図で、図2のIII−III線断面
図である。
【図4】 図4は実施例1のスパッタイオンポンプの左
側の陽極セルの説明図であり、図4Aは平面図、図4B
は側面図である。
【図5】 図5は実施例1のスパッタイオンポンプの右
側の陽極セルの説明図であり、図5Aは平面図、図5B
は側面図である。
【図6】 図6は実施例1の極高真空排気装置の冷陰極
電界放出電子銃とエレクトトンマルチプライヤとによる
電子の移動を説明する作用説明図である。
【図7】 図7は実施例1の極高真空排気装置を用いた
真空排気の作業手順の説明図である。
【図8】 図8は実施例2の極高真空排気装置の説明図
であり、実施例1の図1に対応する図である。
【図9】 図9は実施例2の極高真空排気装置の要部断
面斜視図であり、実施例2の図2に対応する図である。
【図10】 図10は実施例3の極高真空排気装置のス
パッタイオンポンプの陽極セルの断面説明図である。
【図11】 図11は実施例4の極高真空排気装置のス
パッタイオンポンプの陽極セルの断面説明図である。
【図12】 図12は実施例5の極高真空排気装置のス
パッタイオンポンプの陽極セルの平面図である。
【図13】 図13は実施例6の極高真空排気装置のス
パッタイオンポンプの陽極セルの平面図である。
【符号の説明】
C-FEG;UV+52…排気促進材供給装置、C-FE
G…冷陰極電界放出電子銃,電子供給源、EM…電子増
幅器、NEG…非蒸発ゲッターポンプ、SIP…スパッ
タイオンポンプ、UV…紫外線源、UW…超音波振動
子、1…真空容器、7,7′,7″…陰極、8,8′,
8″,8a〜8e,8a″,8d″…陽極、9…磁石、
52…酸化チタン材料。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空容器内を10-12Pa台以下の極高
    真空状態に排気するための極高真空排気装置であって、 ゲッター材を熱処理してガスを吸着することにより前記
    極高真空状態より高圧の超高真空状態で排気を行う非蒸
    発ゲッターポンプと、 互いに対向して配置されてその間に磁界を形成する一対
    の磁石と、前記一対の磁石の内側であって磁界方向に離
    れて配置され且つ対向する一対の陰極と、前記一対の陰
    極の内側であって磁界の方向に沿って軸が配置された筒
    状の複数の陽極とを有し、電圧印加時の陰陽極間での放
    電によりプラスにイオン化されたガスにより陰極からス
    パッタされた金属材料が前記陽極に付着すると共に、前
    記陽極に付着した前記金属材料がガスを吸着して排気す
    るスパッタイオンポンプと、 前記超高真空状態の真空容器内のガスの排気を促進させ
    る排気促進材を供給する排気促進材供給装置と、を備え
    た極高真空排気装置。
  2. 【請求項2】 排気促進材としての電子を供給する電子
    供給源によって構成された前記排気促進材供給装置を備
    えた請求項1記載の極高真空排気装置。
  3. 【請求項3】 冷陰極電界放出電子銃によって構成され
    た電子供給源を備えた請求項2記載の極高真空排気装
    置。
  4. 【請求項4】 前記電子供給源から放出された電子を増
    幅して前記スパッタイオンポンプに供給する電子増幅器
    を備えた請求項2または3記載の極高真空排気装置。
  5. 【請求項5】 酸化チタン材料と、前記酸化チタン材料
    に紫外線を照射して酸化チタン材料から排気促進材とし
    ての活性酸素を放出させる紫外線源とによって構成され
    た排気促進材供給装置を備えた請求項1に記載の極高真
    空排気装置。
  6. 【請求項6】 極高真空状態の時に、真空容器内部の部
    材表面に吸着されたガスを放出させるため、超音波を発
    振して真空容器内の圧力を上昇させる超音波振動子を備
    えた請求項1ないし5に記載の極高真空排気装置。
  7. 【請求項7】 スパッタイオンポンプと非蒸発ゲッター
    ポンプとによって排気されて真空容器内の圧力が5×1
    -9Paに到達した状態で、排気促進材供給装置から排
    気促進材を供給することにより、真空容器内の圧力を1
    -12Pa台以下の極高真空状態に降下させることを特
    徴とする真空排気方法。
  8. 【請求項8】 極高真空状態で、前記スパッタイオンポ
    ンプを一時停止した後に再起動する際、超音波振動子に
    より超音波を発振し、極高真空排気装置内の構成部材に
    吸着されているガスを放出させて真空容器内の圧力を上
    昇させ、前記スパッタイオンポンプの排気の再開を可能
    にすることを特徴とする真空排気方法。
  9. 【請求項9】 互いに対向して配置されてその間に磁界
    を形成する一対の磁石と、 前記一対の磁石の内側であって磁界の方向に離れて配置
    され且つ対向する一対の陰極と、 前記一対の陰極の内側であって磁界の方向に沿って軸が
    配置され、且つ前記陰極との間隔が異なるように配置さ
    れた複数の筒状の陽極と、を備え、 電圧印加時の陰陽極間での放電によりプラスにイオン化
    されたガスにより陰極からスパッタされた金属材料が前
    記陽極に付着すると共に、前記陽極に付着した前記金属
    材料がガスを吸着して排気することを特徴とするスパッ
    タイオンポンプ。
  10. 【請求項10】 5×10-9Pa以下の状態で、イオン
    化された水素が陰極に注入されて排気することを特徴と
    する請求項9記載のスパッタイオンポンプ。
  11. 【請求項11】 内径が30mm以上に形成された陽極を
    有することを特徴とする請求項9または10記載のスパ
    ッタイオンポンプ。
  12. 【請求項12】 長さが異なる複数の前記陽極を有する
    ことを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載
    のスパッタイオンポンプ。
  13. 【請求項13】 大径、中径、及び小径の少なくとも3
    種類の内径の陽極を有する前記複数の陽極を有する請求
    項9ないし12記載のスパッタイオンポンプ。
  14. 【請求項14】 前記小径の陽極の長さが最も長く形成
    されていることを特徴とする請求項13に記載のスパッ
    タイオンポンプ。
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