JP3926206B2 - 極高真空排気装置、真空排気方法、及びスパッタイオンポンプ - Google Patents

極高真空排気装置、真空排気方法、及びスパッタイオンポンプ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、実用真空として、10-12Pa台より良い極高真空を得ることができる極高真空排気装置、真空排気方法、及びスパッタイオンポンプに関する。
【0002】
(用語の定義)
なお、本明細書において、「真空度が良い」や「真空度が高い」は圧力が低いことを指し、「真空度が悪い」や「真空度が低い」は圧力が高いことを指す。また、本明細書において、高真空とは、圧力が1×10-1[Pa]〜1×10-5[Pa]の範囲の真空を指し、超高真空とは、1×10-5[Pa]〜1×10-9[Pa]の範囲の真空、極高真空とは、1×10-9[Pa]より良い真空度の真空を指す。
【0003】
【従来の技術】
電子顕微鏡用の冷陰極電界放出電子銃、原子レーザ、表面分析装置(半導体材料走査電子顕微鏡、Auger(オージェ)電子顕微鏡、ESCA(X線光電子分光分析装置:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)、走査型トンネル電流顕微鏡)、及び加速器等において、それらの真空室を排気する真空ポンプとして、スパッタイオンポンプ、チタンサブリメーションゲッターポンプや非蒸発ゲッターポンプが知られている。
【0004】
スパッタイオンポンプは、複数の筒状の陽極セルを有する陽極と、前記陽極の上下に配置された一対の板状の陰極(例えばチタン材料で形成)と、前記陰極の対向する方向に0.01〜0.1T(テスラ)程度の磁場を印加する磁石とを有するポンプである。スパッタイオンポンプ内がある程度の以上の真空度(放電開始真空度)で、陰陽極間に1〜数kVの電圧を印加すると、陰極から1次電子が放出(放電)される。この放電をペニング放電という。前記1次電子は、正電位の陽極に移向かって移動する。このとき、陰陽極間の電界及び陰極の対向する方向に印加された磁場によって力を受け、陽極セル内部または陽極セルどうしに囲まれた部分の内部で、筒状の陽極セルの軸を中心として螺旋を描いて旋回移動する。このとき、前記1次電子は、陽極セル内部等の電気的に中性のガス(原子・分子)と電離衝突(電子の放出を伴う衝突)して、プラス(+)にイオン化したガスと2次電子を生成する。生成された2次電子は、1次電子と同様に、陽極セル内部で旋回移動し、他のガスと電離衝突してプラスにイオン化したガスと2次電子を生成し、雪崩現象(連鎖的に正イオンと2次電子が生成される現象)を起こす。
【0005】
プラスにイオン化したガスは負電位の陰極に衝突して、陰極のチタン原子をスパッタする(弾き出す)。スパッタされたチタン原子は、陽極セルの表面やポンプ内に配置された部材表面に付着して、化学的に活性なチタン膜(チタン原子の膜)を連続的に形成する。化学的に活性なチタン膜は、表面に衝突して付着したガス(マイナス(−)にイオン化したガスやイオン化していないガス)を収着する作用(ゲッター作用)が強い。ここで、収着(sorption)とは、ガスが固体の表面に吸着されると同時に固体に吸収されて固溶体または化合物を作る現象をいう。したがって、前記チタン膜に付着した活性ガスは、チタンと反応して安定な固体化合物(例えばTiO2、TiN等)となってチタン膜に収着される。また、アルゴンやヘリウム等の不活性ガスは、陽極セル表面等に付着したチタン膜内部に吸収される。
したがって、スパッタイオンポンプは、スパッタされたチタン等が形成する膜がガスを収着して排気する。
【0006】
チタンサブリメーションゲッターポンプは、チタンを加熱して昇華させて、昇華したチタンが容器等の壁面に付着して形成される化学的に活性なチタン膜がガスを収着する作用(ゲッター作用)によって排気するポンプである。
非蒸発ゲッターポンプは、ジルコニウム−アルミニウムの2元合金または、ジルコニウム−バナジウム−鉄若しくはジルコニウム−稀土類金属−コバルトの三元合金の粉体を金属板に圧着したもの(ゲッター材)を加熱して活性化(蒸発させない)し、活性化した前記粉体がガスを収着する作用(ゲッター作用)により排気するポンプである。
【0007】
現在、広く普及しているスパッタイオンポンプの仕様では、放電開始真空度(ペニング放電が開始される真空度)、数Pa〜10-3Pa、到達真空度(排気終了時の真空度)10-6Pa、排気速度20〜1000L/secが保証されている。このスパッタイオンポンプは、真空容器を高温(250℃〜300℃)で20時間以上焼き出しを行い且つ、真空容器内で作業(顕微分析作業等)を行うことによる真空度の低下を抑え、真空漏れが無く、低温という好条件の下で使用した場合、圧力1×10-8Paの真空度迄は排気できる。さらに、スパッタイオンポンプとチタンゲッターポンプとを組み合わせた複合型ポンプや、スパッタイオンポンプの陰極の対向する方向に印加される磁場を強力にすることにより、真空度(圧力)5×10-9Pa程度迄排気することは工業用実用レベルで可能である。
実験室では、非蒸発ゲッターポンプの使用や、ポンプ内壁の表面処理(電解研磨、窒化チタンや金のコーティング)、及び極高真空計測技術の進展により1×10-10Pa台が実現している。また、特開2001−126657号公報記載の技術では、電子真空ポンプを使用してメタンガスや1酸化炭素等の排気し難いガスを分解して排気することによって、1×10-10Pa台が実現している。さらに、特開2001−357814号公報記載の技術では、スパッタイオンポンプのカソード(陰極)を非蒸発ゲッターポンプのゲッター材と同じ材料で構成することで、1×10-11Pa台の極高真空が実現している。
【0008】
また、従来、スパッタイオンポンプでは、排気速度(排気量)を向上させるために、同一長さで同一径の小径(2〜20mm)の陽極セルを大量に備えたものが広く使用されていた。特開平5−121035号公報記載の技術では、超高真空域における陰陽極間の放電停止対策及び排気速度の向上を目的として、小さな径の筒状陽極セルを内側に配置し、内側に比べ磁束密度が低くなる周辺部に大きな径の筒状陽極セルを配置した陽極を使用している。実公平3−39882号公報には、高真空領域での排気特性に優れた(排気速度の大きい)小径の筒状陽極セルと超真空領域での排気特性に優れた大径の筒状陽極セルとによって、高真空領域から超高真空領域まで安定した排気を行う技術が記載されている。
【0009】
スパッタイオンポンプの陽極セルの径または長さと、スパッタイオンポンプの前記放電開始真空度、到達真空度及び排気速度との関係について以下のような検討・考察を行った。
スパッタイオンポンプの陽極セルの径が大きい場合、陽極セルの容積が大きいので、真空度が高くなった状態で且つ、ポンプ内部の残留ガスの原子・分子数が減少した状態でも、セル内部にガスがある程度存在する。即ち、陽極セルの径が大きい場合、真空度が高くなっても、陽極セル内部でガスがイオン化され、2次電子が発生し、ペニング放電が継続する。したがって、陽極セルの径が大きい場合、比較的高い真空度(極高真空)でも放電が継続する。即ち、陽極セルの径が大きい場合、比較的高い真空度でも排気することができる。
前記ペニング放電は、陽極セル内部の軸の部分と陰極との間で発生し、陽極セルの軸の部分の電位(以下、軸電位という)と陰極との電位差が大きいほど放電が発生しやすい。陽極セル内部の電位は陽極セルの筒壁からの距離の2乗に反比例して小さくなるので、陽極セルの軸の部分の電位(軸電位)が最も小さくなる。前記軸電位は、陽極セルの径(即ち、筒壁からの距離)が小さくなるほど大きくなる。したがって、小径の陽極セルと大径の陽極セルの両方に同じ電圧を印加した場合、小径の陽極セルの軸電位は、大径の陽極セルの軸電位と比べて高い。したがって、陽極セルの径が小さい場合、比較的低い真空度(高真空〜超高真空)において、陽極セルと陰極との間でペニング放電が開始される。即ち、陽極セルの径が小さい場合、比較的低い真空度から排気を開始することができる。
【0010】
また、前記陽極セルの長さが長い場合、陽極セルの端部と陰極との間隔が狭いので、間隔が広い場合に比べ放電が発生しやすい。したがって、陽極セルの長さが長い場合、比較的低い真空度でペニング放電が発生し、排気を開始することができる。
一方、陽極セルの長さが短い場合、陰極との距離が広いので、陽極セルの外部から陽極セル内部へガスが流入しやすい。即ち、真空度が高くなって陽極セル内のガスが少なくなっても、陽極セル内部にガスが流入しやすいので、陽極セルの長さが長い場合に比べ、陽極セル内部における電子とガス分子とが衝突する確率(即ち、ガスがイオン化される確率)が高くなり、高い真空度でも排気することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
顕微分析用の冷陰極電界放出電子銃や、原子レーザ、表面分析装置等は、実用真空として、圧力10-12Pa台以下の極高真空が要求されているが、従来のスパッタイオンポンプ、チタンサブリメーションゲッターポンプ、非蒸発ゲッターポンプや、前記特開2001−357814号公報、特開2001−126657号公報記載の技術等では、未だ実現されていない。前記各技術を含む従来技術では、計算上や短期間では圧力10-12Pa台以下の極高真空の実現の可能性も指摘されているが、実現したとしても現状では10-12Pa台以下の極高真空を長期間安定して得ることができない上、非常に高価であり工業的採算ベースに乗っていないのが現状である。
【0012】
また、前記特開2001−357814号公報記載の技術を含む従来のスパッタイオンポンプは、予備排気ポンプ(ソープションポンプ等)で排気できる低真空度で放電開始を可能とし且つ、排気速度を大きくするために、同一長さの小径の筒状陽極(陽極セル)を多数備える構成となっている。前記スパッタイオンポンプは、前述のように、ペニング放電によりガスをイオン化して排気するが、極高真空領域では、陽極セル内のガスの単位体積あたりの原子・分子の数が減少するため、2次電子の発生量も少なくなり、ペニング放電電流(電子及びイオンの移動により生じる陰陽極間の電流)が少なくなり、放電の継続が難しくなる。前記特開2001−357814号公報等記載の従来のスパッタイオンポンプでは、陽極セルが同一径・同一長さで構成されているので、圧力10-12Pa台に到達する前のある真空度で、全ての陽極セルと陰極との間のペニング放電が同時に停止してしまい、圧力10-12Pa台以下の極高真空域を得られない。
【0013】
また、前記特開平5−121035号公報記載のスパッタイオンポンプでは、大径の陽極セルを備えているので、前述のように比較的高い真空度まで排気できるが、陽極セルの内径が24mmとそれ程大きくないので、当該公開公報の図5に記載されているように1×10-8Pa程度の超高真空までしか排気できず、10-12Pa台以下の極高真空まで排気することは難しい。
さらに、前記実公平3−39882号公報記載のスパッタイオンポンプは、径の異なる陽極セルを使用しているが、陽極セルは全て同じ長さとなっている。通常、スパッタイオンポンプの設計上の性能(放電開始真空度や排気速度等)に応じて陽極セルの径および長さが設定される。しかし、放電開始真空度に応じて陽極セルの長さが設定されているので、比較的高い真空度でも排気できる大径の陽極セルと陰極との間隔があまり広くない。前述の通り、陽極セルと陰極との間隔が狭い場合、真空度が高い状態では、小径の陽極セル及び大径の陽極セルの内部にガスが流入しにくく、ペニング放電が継続しにくい。したがって、前記実公平3−39882号公報記載のスパッタイオンポンプは、到達真空度が高くならず、当該公報の図2に示されるように1×10-9Pa程度まで排気できるが、10-12Pa台以下の極高真空まで排気することは難しい。
【0014】
また、極高真空状態まで一度排気した後、スパッタイオンポンプを停止すると、5×10-8Pa迄真空度を悪く(圧力を高く)しないと、陽極セル内のガスの原子・分子の数が少なすぎてペニング放電が発生し難いので排気を再開することが難しい。真空容器等を放置して、真空度が悪くなるのを成り行きに任せて待っていると、排気が開始されるまでに時間がかかる上、再度極高真空状態まで排気されて、顕微分析等の作業ができるようになるまでに1〜2時間、時に数時間を要する。短時間で真空度をペニング放電が発生する程度に低下させるために、従来、真空容器やポンプの壁面を叩いたり、局所的に加熱したりして、真空容器等の内壁に吸着されていたガスを放出させる方法が行われていた。
【0015】
しかしながら、前記壁面を叩く方法では、顕微分析装置等の精密機械の軸ズレが発生したり、叩いた時に発生した振動が止まらずに長期間持続する場合には不必要なガスが放出されてしまう問題があった。また、前記局所を加熱する方法は、加熱をやめてもガス放出が継続するため、不必要なガス(排気しにくい高分子の気体)が放出されてしまう問題がある。したがって、これらの方法では、やはり極高真空状態まで再排気するのに時間がかかる。
また、スパッタイオンポンプに直接ガスを導入することによって短時間で真空度を悪くする方法も行われていたが、水又は空気が不純物として混入し、到達真空度まで排気するのに時間がかかり、ボンベ、減圧バルブ、リークバルブ等用意する必要があるため高価になり操作も複雑になるという問題点があった。
【0016】
さらに、スパッタイオンポンプの陰極には、チタンやタンタルが使用されているので、極高真空域では、チタンが触媒となり、炭素原子と水素が化学反応し、メタンガス等の炭化水素ガスが生成される。前記メタンガス等は、安定な化合物であるため、イオン化され難く、排気されにくい。したがって、メタンガス等が増加すると、真空度を高めることが困難となる。
【0017】
本発明は、前述の問題点に鑑み、下記(O01)〜(O06)の記載内容を技術的課題とする。
(O01)圧力10-12Pa台以下の極高真空領域を得ることができる極高真空排気装置及び真空排気方法を提供すること。
(O02)一度、圧力10-12Pa台以下の極高真空領域に到達して極高真空排気装置を停止した後、圧力が10-12Pa台より悪い真空領域から10-12Pa台以下の極高真空領域への復帰を短時間で行うこと。
(O03)圧力10-12Pa台以下の極高真空領域に到達する時間を短縮すること。
(O04)前記極高真空排気装置及び真空排気方法で好適に使用可能なスパッタイオンポンプを提供すること。
(O05)極高真空領域においてスパッタイオンポンプの陰極から放出されるメタンガス等を排気すること。
【0018】
【課題を解決するための手段】
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施例の要素との対応を容易にするため、実施例の要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。また、本発明を後述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例に限定するためではない。
【0019】
(本発明)
前記課題を解決するために、本発明の極高真空排気装置は、真空容器(1)内を10-12Pa台以下の極高真空状態に排気するための極高真空排気装置であって、
ゲッター材を熱処理してガスを吸着することにより前記極高真空状態より高圧の(真空度が低い)超高真空状態で排気を行う非蒸発ゲッターポンプ(NEG)と、
互いに対向して配置されたその間に磁界を形成する一対の磁石(9)と、前記一対の磁石(9)の内側であって磁界方向に離れて配置され且つ対向する一対の陰極(7,7′,7″)と、前記一対の陰極(7,7′,7″)の内側であって磁界の方向に沿って軸が配置された筒状の複数の陽極(8,8′,8″)とを有し、電圧印加時の陰陽極間での放電によりプラスにイオン化されたガスにより陰極(7,7′,7″)からスパッタされた金属材料が前記陽極(8,8′,8″)に付着すると共に、前記陽極(8,8′,8″)に付着した前記金属材料がガスを吸着して排気するスパッタイオンポンプ(SIP)と、
前記超高真空状態の真空容器(1)内のガスの排気を促進させる排気促進材を供給する排気促進材供給装置(C−FEG)であって、前記排気促進材としての電子を供給する電子供給源(C−FEG)によって構成された前記排気促進材供給装置(C−FEG)と、
前記電子供給源(C−FEG)から放出された電子を増幅して前記スパッタイオンポンプ(SIP)に供給する電子増幅器(EM)と、
を備えたことを特徴とする。
【0020】
前記構成要件を備えた本発明の極高真空排気装置では、非蒸発ゲッターポンプ(NEG)は、ゲッター材を熱処理して活性化しガスを吸着することにより前記極高真空状態より高圧の(真空度が低い)超高真空状態で排気を行う。また、スパッタイオンポンプ(SIP)では、電圧印加時の陰陽極間での放電(ペニング放電またはマグネトロン放電)によって陰極(7,7′,7″)から放出された電子がガスと電離衝突し、プラス(+)にイオン化したガスと電子が発生する。前記プラスにイオン化したガスは、陰陽極間の電界によって移動し、陰極(7,7′,7″)に衝突する。このとき、前記陰極(7,7′,7″)からスパッタされた金属材料が前記陽極(8,8′,8″)に付着する。前記陽極(8,8′,8″)に付着した金属材料はガスを吸着して排気する。
【0021】
電子供給源(C−FEG)によって構成された排気促進材供給装置(C - FEG)は、前記非蒸発ゲッターポンプ(NEG)及びスパッタイオンポンプ(SIP)によって排気が行われている状態で、前記排気促進材としての電子を供給する。電子増幅器(EM)は、前記電子供給源(C−FEG)から放出された電子を増幅 ( 増倍 ) して前記スパッタイオンポンプ(SIP)に供給する。前記排気促進材として電子が供給された場合、電子とガスとの電離衝突によるガスのイオン化が促進されて、スパッタイオンポンプ(SIP)での排気が促進される。したがって、排気促進材(電子)が真空容器(1)に供給されることによって、排気が促進され、真空容器(1)内を10-12Pa台以下の極高真空状態に排気することができる。
また、本発明の極高真空廃棄装置では、電子増幅器(EM)により、前記電子供給源(C−FEG)から放出された電子が増幅 ( 増倍 ) されるため、スパッタイオンポンプ(SIP)の陰陽極間での放電・排気がさらに促進され、より短時間で効率的に真空容器(1)内を圧力10 -12 Pa台以下の極高真空状態に排気することができる。
【0023】
また、本発明の極高真空排気装置は、電子供給源として、冷陰極電界放出電子銃(C-FEG)を使用することができる。
前記構成要件を備えた極高真空排気装置では、冷陰極電界放出電子銃(C-FEG)によって、スパッタイオンポンプ(SIP)に冷陰極電界放出による電子が供給される。冷陰極電界放出電子銃(C-FEG)を使用した場合、熱電子を使用する場合と比較して、極高真空排気装置や真空容器(1)が加熱されないので、真空容器(1)の内壁面等からのガスの放出が防止される。この結果、ガスの放出による真空度の低下を防止でき、真空容器(1)内を10-12Pa台以下の極高真空まで効率良く排気できる。
【0025】
また、前記技術的課題を解決するために本発明の極高真空排気装置は、
真空容器内を10 -12 Pa台以下の極高真空状態に排気するための極高真空排気装置であって、
ゲッター材を熱処理してガスを吸着することにより前記極高真空状態より高圧の超高真空状態で排気を行う非蒸発ゲッターポンプと、
互いに対向して配置されたその間に磁界を形成する一対の磁石と、前記一対の磁石の内側であって磁界方向に離れて配置され且つ対向する一対の陰極と、前記一対の陰極の内側であって磁界の方向に沿って軸が配置された筒状の複数の陽極とを有し、電圧印加時の陰陽極間での放電によりプラスにイオン化されたガスにより陰極からスパッタされた金属材料が前記陽極に付着すると共に、前記陽極に付着した前記金属材料がガスを吸着して排気するスパッタイオンポンプと、
前記超高真空状態の真空容器内のガスの排気を促進させる排気促進材を供給する排気促進材供給装置であって、酸化チタン材料(52)と、前記酸化チタン材料(52)に紫外線を照射して、酸化チタン材料(52)から排気促進材としての活性酸素を放出させる紫外線源(UV)によって構成された排気促進材供給装置と、
を備えたことを特徴とする。
前記構成要件を備えた極高真空排気装置では、非蒸発ゲッターポンプ(NEG)は、ゲッター材を熱処理して活性化しガスを吸着することにより前記極高真空状態より高圧の(真空度が低い)超高真空状態で排気を行う。また、スパッタイオンポンプ(SIP)では、電圧印加時の陰陽極間での放電(ペニング放電またはマグネトロン放電)によって陰極(7,7′,7″)から放出された電子がガスと電離衝突し、プラス(+)にイオン化したガスと電子が発生する。前記プラスにイオン化したガスは、陰陽極間の電界によって移動し、陰極(7,7′,7″)に衝突する。このとき、前記陰極(7,7′,7″)からスパッタされた金属材料が前記陽極(8,8′,8″)に付着する。前記陽極(8,8′,8″)に付着した金属材料はガスを吸着して排気する。
前記紫外線源(UV)により構成された排気促進材供給装置は、酸化チタン材料(52)に紫外線を照射することにより前記超高真空状態の真空容器内のガスの排気を促進させる。紫外線が酸化チタン材料(52)に照射されると、酸化チタン材料(52)から活性酸素(オゾン等)が放出される。前記活性酸素が前記真空容器(1)内のメタンガス等の炭化水素(有機化合物気体)と反応したり、前記炭化水素に紫外線が直接照射されたりすると、炭化水素が炭素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素等に分解される。分解されて発生した水素等は、前記スパッタイオンポンプ(SIP)及び非蒸発ゲッターポンプ(NEG)によって排気される。したがって、排気されにくいメタンガス等を分解してスパッタイオンポンプ(SIP)や非蒸発ゲッターポンプ(NEG)で排気することによって、真空容器(1)内を圧力10-12Pa台以下の極高真空状態に排気することができる。
なお、極高真空排気装置に排気促進材供給装置として、電子供給源(C-FEG)と紫外線源(UV)の双方を備えることも可能である。
【0026】
また、本発明の極高真空排気装置は、前記極高真空状態の時に、真空容器(1)内部の部材表面に吸着されたガスを放出させるため、超音波を発振して真空容器(1)内の真空度を低下させる(圧力を上昇させる)超音波振動子(UW)を備えることも可能である。
前記構成要件を備えた本発明の極高真空排気装置では、超音波振動子(UW)は、前記真空容器(1)内が極高真空状態で超音波を発振することにより、真空容器(1)内部の部材表面に吸着されたガス(主に水素ガス)を放出させ、真空容器(1)内の圧力を上昇させる。即ち、超音波振動子(UW)は、ガスが少なすぎて前記スパッタイオンポンプ(SIP)の陰陽極間で放電が発生し難い極高真空領域から、放電が発生し、排気が再開できる低い真空領域まで、真空容器(1)内の真空度を低下させる(圧力を高くする)ことができる。したがって、超音波振動子(UW)を使用することによって、真空容器(1)内の圧力を10-12Pa台以下の極高真空まで短時間で復帰させることができる。
なお、弱い超音波を発振する超音波振動子(UW)を使用すると、スパッタイオンポンプ(SIP)等で再排気し易い吸着エネルギーの小さなガス(主に水素ガス)のみを放出させることができるので、弱い超音波を発振する超音波振動子(UW)を使用するのが望ましい。
【0027】
また、前記課題を解決するために本発明の真空排気方法は、スパッタイオンポンプ(SIP)と非蒸発ゲッターポンプ(NEG)とによって排気されて真空容器(1)内の圧力が5×10-9Paに到達した状態で、排気促進材供給装置(C-FEG;UV+52)から排気促進材を供給することにより、真空容器(1)内の圧力を10-12Pa台以下の極高真空状態まで真空度を高める(図7のST108参照)ことを特徴とする。
【0028】
前記本発明の真空排気方法では、スパッタイオンポンプ(SIP)と非蒸発ゲッターポンプ(NEG)とによって排気されて真空容器(1)内の圧力が5×10-9Paに到達した状態で、排気促進材供給装置(C-FEG;UV+52)から排気促進材を供給することにより、真空容器(1)内を圧力10-12Pa台以下の極高真空状態に降下させる。即ち、スパッタイオンポンプ(SIP)と非蒸発ゲッターポンプ(NEG)によって排気できるほぼ限界の圧力である5×10-9Paに到達したときに、排気促進材供給装置(C-FEG;UV+52)から排気促進材(電子や活性酸素)が供給されることによって、ガスのイオン化の促進または排気されにくいガスの分解が行われ、真空容器(1)内を圧力10-12Pa台以下の極高真空状態まで排気することができる。
【0029】
また、前記本発明の真空排気方法において、極高真空状態で、前記スパッタイオンポンプ(SIP)を一時停止した後に再起動する際、超音波振動子(UW)により超音波を発振し、真空容器(1)内にガス(主に水素ガス)を放出させて真空容器(1)内の圧力を上昇させ、前記スパッタイオンポンプ(SIP)の排気の再開を可能にすることも可能である。
前記本発明の真空排気方法では、極高真空状態で、前記スパッタイオンポンプ(SIP)を一時停止した後に再起動する際、超音波振動子(UW)により超音波を発振する。このとき、真空容器(1)内に水素ガスが放出されて、真空容器(1)内の圧力を短時間で上昇させることができる。したがって、短時間で前記スパッタイオンポンプ(SIP)の排気の再開が可能になる。なお、再起動後短時間で極高真空状態に復帰させるために、スパッタイオンポンプ(SIP)によって排気しやすい吸着エネルギーの小さなガス(主に水素ガス)のみを放出させることが可能な弱い超音波を発振することによって真空容器(1)内の圧力を上昇させるのが望ましい。
【0030】
また、前記課題を解決するために本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、
互いに対向して配置されてその間に磁界を形成する一対の磁石(9)と、
前記一対の磁石(9)の内側であって磁界の方向に離れて配置され且つ対向する一対の陰極(7,7′,7″)と、
前記一対の陰極(7,7′,7″)の内側であって磁界の方向に沿って軸が配置され、且つ前記陰極(7,7′,7″)との間隔が異なるように配置された複数の筒状の陽極(8,8′,8″)と、
を備え、
電圧印加時の陰陽極間での放電によりプラスにイオン化されたガスにより前記陰極(7,7′,7″)からスパッタされた金属材料が前記陽極(8,8′,8″)や真空容器(1)に付着した金属材料がガスを吸着して排気することを特徴とする。
【0031】
前記構成要件を備えた本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、電圧印加時の陰陽極間での放電(ペニング放電またはマグネトロン放電)により、放出された電子がガスと電離衝突して、プラス(+)にイオン化されたガスと電子が生成される。前記プラスにイオン化されたガスは前記陰極(7,7′,7″)をスパッタし、スパッタされた金属材料は前記陽極(8,8′,8″)や真空容器(1)に付着する。前記陽極(8,8′,8″)や真空容器(1)に付着した金属材料は、表面が化学的に活性なので、ガスを収着して排気する。本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)では、複数の筒状の陽極(8,8′,8″)と前記陰極(7,7′,7″)との間隔が異なるように配置されている。
【0032】
したがって、陰極(7,7′,7″)と陽極(8d)との間隔が狭い場所では、放電が発生しやすいので、真空容器(1)内の真空度が比較的低い状態で陰陽極間の放電が発生する。前記放電によって発生した電子は、スパッタイオンポンプ(SIP)内に拡散するので、他の陰陽極間でも放電が始まる。即ち、陰極(7,7′,7″)と陽極(8a〜8c)との間隔が広い場所では、本来放電が開始されない真空度で放電・排気を開始することができる。
また、陰極(7,7′,7″)と陽極(8d)との間隔が狭い場所では、ガスが流入しにくいので、真空容器(1)内の真空度が高くなると陽極(8d)内でイオン化されるガスの量が減少し、放電・排気が停止する。しかし、陰極(7,7′,7″)と陽極(8a〜8c)との間隔が広い場所では、ガスが流入しやすいので、放電が継続する。したがって、陰陽極間での放電が同時に停止することなく、真空容器(1)内の真空度が高くなっても排気し続けることができる。
この結果、本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、真空容器(1)内の真空度が比較的低い状態から排気を開始することができ、且つ、陰陽極間の放電が同時に停止することなく継続して排気が行われ、真空度が高くなっても排気を継続できる。
【0034】
また、前記本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、内径が30mm以上に形成された陽極(8a)を備えることもできる。
前記構成要件を備えたスパッタイオンポンプ(SIP)では、内径が30mm以上に形成された陽極(8a)を備えているので、極高真空状態での陽極(8a)内に存在するガスの量(ガスの原子・分子の数)が、小径の陽極(例えば、直径2〜3mmの陽極)と比較して多くなる。したがって、極高真空状態でも、前記陽極(8a)内でガスが電離衝突によってプラスにイオン化され、ペニング放電が継続する。したがって、本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、真空容器(1)内を極高真空状態まで排気することができる。
【0035】
また、前記本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、長さが異なる複数の前記陽極(8,8′,8″)を備えることもできる。
前記構成要件を備えたスパッタイオンポンプ(SIP)では、複数の陽極(8,8′,8″)の長さが異なるので、前記陽極(8,8′,8″)を挟んで一対の陰極(7,7′,7″)を平行に配置した場合、陽極(8,8′,8″)端部と陰極(7,7′,7″)との間隔が異なる。したがって、長い陽極(8b、8d,8d″)端部と陰極(7,7′,7″)との間では、陰陽極間の間隔が狭いので、比較的真空度が低い状態で放電(ペニング放電またはマグネトロン放電)が発生する。また、長い陽極(8a,8c,8a″)端部と陰極(7,7′,7″)との間では、陰陽極間の間隔が広いので、陽極(8a,8c,8a″)内部にガスが流入しやすい。即ち、前記本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、極高真空状態でも陽極(8a,8c,8a″)内部で比較的多くのガスが存在するので、ガスのイオン化が停止せず、放電・排気が継続する。
【0036】
また、本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、大径、中径、及び小径の少なくとも3種類の内径の陽極(8a〜8d,8a″,8d″)を有する前記複数の陽極(8,8′,8″)を備えることができる。
前記構成を備えたスパッタイオンポンプ(SIP)では、各陽極(8,8′,8″)と陰極(7,7′,7″)との間隔が、径の小さな陽極(8b,8d,8d″)ほど狭い場合、径の小さな陽極(8b,8d,8d″)と陰極(7,7′,7″)との間では、間隔が同一の場合と比べより低い真空度から放電・排気がされる。また、径の大きな陽極(8a,8c,8a″)と陰極(7,7′,7″)との間隔が広い場合、径の大きな陽極(8a,8c,8a″)と陰極(7,7′,7″)との間で、間隔が同一の場合と比べより高い真空度でも放電・排気を継続することができる。したがって、前記本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、より低い真空度で放電・排気を開始でき、より高い真空度でも放電・排気を継続することができる。
【0037】
また、本発明のスパッタイオンポンプ(SIP)は、前記小径の陽極(8d)の長さを最も長く形成することができる。
前記構成を備えたスパッタイオンポンプ(SIP)では、小径の陽極(8d,8d″)の長さが円筒陽極内では最も長く形成されているので、陰陽極間での放電が開始される真空容器(1)内の真空度をより低くすることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る極高真空排気装置、真空排気方法、及びスパッタイオンポンプを図面を参照しつつ説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、右左方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0039】
(実施例1)
(極高真空排気装置)
図1は、本発明の実施の形態に係る極高真空排気装置の要部断面図である。
図2は、図1に示した極高真空排気装置の斜視図である。
【0040】
図1において、走査型プローブ顕微鏡(図示せず)が内部に配置された真空容器1には、極高真空排気装置用排気口1aと、超高真空ポンプ用排気口1bと、真空計接続部1cが設けられている。なお、前記真空容器1は、走査型プローブ顕微鏡の真空容器に限定されず、その他の表面分析装置(半導体材料分析走査電子顕微鏡、Auger(オージェ)電子顕微鏡、ESCA、トンネル走査電子顕微鏡等)、冷陰極電界放出電子銃、原子レーザ及び加速器等で使用される真空室や真空チャンバにも適用可能である。前記超高真空ポンプ用排気口1aにはバルブBを介して、ターボ分子ポンプTMPの吸気口が接続され、ターボ分子ポンプ(ターボモリキュラポンプ)TMPの排気口にはスクロールポンプSPの吸気口が接続されている。なお、ターボ分子ポンプTMP及びスクロールポンプSPは、超高真空状態を得るために前段的(予備排気)に用いるが、同様の機能を有する他のポンプであってもよい。そして、前記真空計接続部1cには真空容器1の真空度(圧力)を計測するデジタル表示部付き真空計SKが設けられている。
また、前記真空容器1の外壁には、焼出(ベークアウト)時に真空容器1を加熱するシーズヒータ(図示せず)が設けられている。
【0041】
前記真空容器1の極高真空排気装置用排気口1bには、極高真空排気装置(Extreme High Vacuum Pump)XHVPが接続されている。なお、実施例1の真空容器1は焼出を行うので、前記各排気口1a、1bと各ポンプTMP,SPとの接続はゴム製のOリングではなく、金属製のコンフラットフランジ等の接続によって気密を保持している。前記極高真空排気装置XHVPは、前記真空容器1に連通する円筒状の排気通路2と、排気通路2の左右両端に設けられたスパッタイオンポンプSIPと、排気通路2の前端部(+X端部)に設けられた非蒸発ゲッターポンプ(Non Evaporable Getters Pump)NEGと、排気通路2の上部に設けられた電子供給源(排気促進材供給装置)としての排気用冷陰極電界放出電子銃(Cold Field Emission Gun)C-FEGとを有する。そして、前記排気通路2内部の冷陰極電界放出電子銃C-FEGの下方には電子増幅器としてのエレクトロンマルチプライヤEMが設けられ、排気通路2の外壁には超音波振動子UW(図2参照)が設けられている。
【0042】
(スパッタイオンポンプ)
図3は実施例1の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの要部説明図で、図2のIII−III線断面図である。
図4は実施例1のスパッタイオンポンプの左側の陽極セルの説明図であり、図4Aは平面図、図4Bは側面図である。
図5は実施例1のスパッタイオンポンプの右側の陽極セルの説明図であり、図5Aは平面図、図5Bは側面図である。
【0043】
図1,図2に示すように、前記スパッタイオンポンプSIPは、排気通路2に連通する左右一対の箱状ケース6a、6bを有している。図3〜図5において、前記各ケース6a,6bの内部には、チタン材料(スパッタされた時に化学的に活性な膜を形成する)で形成された上下一対の平板状の陰極板7,7(図3参照)が図示しない支持部材によって固定支持されている。そして、各ケース6a、6b内部の前記陰極板7,7の間には、前記陰極板7,7の対向する方向(上下方向)に沿って中心軸が配置された複数の円筒状の陽極8,8(図1〜5参照)が配置されている。前記左側ケース6a内部の陽極8は、4個の大径(例えば内径44mm)セル8aと8個の中径(例えば内径21mm)セル8bを有しており(図4参照)、右側ケース6b内部の陽極8は、8個の中大径(例えば31mm)セル8c、及び6個の小径(例えば内径17mm)セル8dとを有している(図5参照)。前記左側ケース6aの陽極セル8a、8bどうしは接触面で溶接・電通しており、左側陽極8(陽極セル8a及び8b)を支持する電圧印加部材(図示せず)によって左側ケース6aに固定支持されている。そして、前記左側陽極8には前記電圧印加部材によって電圧が印加され(図3参照)、前記陰極板7,7はアースされている。同様に、右側ケース6b内の陽極セル8c、8dも接触面で溶接・電通され、図示しない電圧印加部材によって右側陽極8が固定支持されている。
【0044】
また、図1〜図5に示すように、前記4つの大径セル8aの内の1つのセルと、前記中大径セル8cの内の2つのセルの中心には、前記上下一対の陰極板7に接続する陰極軸7aが配置されている(図3参照)。したがって、陰極軸7aが配置されている陽極セル8a,8cと陰極軸7aとの間でマグネトロン放電により電流が流れる。そして、前記陰極軸7aの設けられていない陽極セル8a,8b,8c,8dと陰極板7との間、及び各陽極セル8a〜8dに囲まれた部分と陰極板7との間ではペニング放電により電流が流れる。なお、実施例1では、陰極軸7aは大径または中大径セル8a,8cの内部にのみ配置したが、中径セル8bまたは小径セル8c内部に配置することも可能である。また、前記陰極軸7aは径の大きさに関係なく配置することも可能であり、さらに、陰極軸7aを配置しない構成とすることも可能である。また、前記陽極セル8は、円筒状のものに限定されず、多角形筒状ものを使用することも可能である。
【0045】
図3〜図5に示すように、前記各陽極セル8a〜8dの軸方向の長さは、内径が小さいものほど長く形成されており、小径セル8bが最も長く、大径セル8aが最も短く形成されている。即ち、前記陰極板7と小径セル8bとの間隔が最も狭く、大径セル8aと陰極板7との間隔が最も広い。そして、実施例1では、前記陰陽極間の間隔は、間隔と陽極セルの径との比がほぼ1:1になるように設定されている。
【0046】
図2、図3に示すように、前記ケース6の外部の上下には前記陽極セル8の軸方向(上下方向)に沿った磁界を印加する上下一対の永久磁石9が設けられている。前記磁石9として、実施例1では、0.15T(テスラ)のフェライト磁石ではなく、0.3T程度のサマリウム−コバルト磁石を使用している。
なお、実施例1では永久磁石を使用したが、電磁石を使用することも可能である。
【0047】
前記実施例1のスパッタイオンポンプSIPは、放電開始真空度より良い真空度において、陰極板7と陽極8との間に1〜数kVの電圧が印加されると、前述のように、ペニング放電またはマグネトロン放電によって陰極板7や陰極軸7aから1次電子が放出される。前記1次電子は、前述のように、各陽極セル8a〜8d内または陽極セル8a〜8dに囲まれた部分で旋回移動し、前述の雪崩現象によりプラスにイオン化したガスと2次電子が大量に生成される。前記プラスにイオン化したガスは、負電位の陰極板7に衝突して、陰極板7のチタン原子をスパッタする。スパッタされたチタン原子は、各陽極セル8a〜8dの表面やケース6a、6bの内壁に付着して、化学的に活性なチタンの膜を形成する。化学的に活性なチタン膜は前述のゲッター作用により、陽極セル8a〜8d内のガスを収着して排気する。この結果、前記スパッタイオンポンプSIPによって、排気通路2と連通する真空容器1が排気される。
【0048】
ここで、実施例1の極高真空排気装置XHVPは、0.3Tの磁束密度の大きな磁石9を使用しているので、各陽極セル8a〜8d内の2次電子が磁界によって受ける力が大きい。即ち、磁界が弱い場合と比較して、陽極セル8a〜8d内部で旋回移動する2次電子の軌道が、より陽極セル8a〜8dの軸に近い軌道となる。したがって、2次電子の旋回移動する距離が磁界が弱い場合と比べ長くなり、2次電子とガスとが電離衝突する確率(即ち、ガスがイオン化される確率)が高くなり、排気可能な真空度(到達真空度)が向上する。
【0049】
前述したように、陽極セル8a〜8dの径が小さいほど、陽極セル8a〜8dの前記軸電位が高くなるので放電開始真空度が低くなる。また、陽極セル8a〜8dの径が大きいほど、陽極セル8a〜8d内部に存在するガスが多いので、到達真空度が高くなる。さらに、陽極セル8a〜8dの長さが長いほど、即ち、陰極板7と陽極セル8a〜8dとの間隔が狭いほど、ペニング放電等が発生しやすいので、放電開始真空度が低くなる。また、陽極セル8a〜8dの長さが短いほど、即ち、陰極板7と陽極セル8a〜8dとの間隔が広いほど、外部から気体が流入しやすいので、到達真空度が高くなる。
実施例1の極高真空排気装置XHVPでは、スパッタイオンポンプSIPの陽極8は、大径セル8a、中径セル8b、中大径セル8c、小径セル8dの4種類の異なる径の筒状セルを有し且つ、大径セル8aの軸方向の長さが最も短く、小径セル8dの軸方向の長さが最も長く形成されている。即ち、実施例1のスパッタイオンポンプSIPは、長く径の小さい小径セル8dを有するので放電開始真空度が低くなり、且つ、短く径の長い大径セル8aによって到達真空度が高くなる。
【0050】
また、実施例1のスパッタイオンポンプSIPは、放電開始真空度で放電が開始しされると、放出された前記1次電子及び2次電子は右側ケース6b内だけでなく、左側ケース6a内にも拡散し、全ての陽極セル8a〜8cと陰極板7との間の放電・排気を開始させる。即ち、前記大径セル8a、中径セル8b及び中大径セル8cは、本来放電が発生しない低い真空度から放電・排気が開始される。また、超高真空領域に到達して小径の陽極セル8dと陰極板7との間で放電・排気されなくなっても、大径セル8a、中大径セル8c及び中径セル8bによって排気を継続することが可能であり、極高真空領域に到達しても、大径セル8a、中大径セル8cによって排気が持続する。
【0051】
この結果、実施例1のスパッタイオンポンプSIPは、到達真空度が向上し、極高真空においても排気できる。また、径が小さく長い小径セル8dを備えているので放電開始真空度を低くできる。さらに、実施例1のスパッタイオンポンプSIPでは、全ての陽極セル8a〜8dの長さ及び径が異なっているので、ある真空度で全ての陽極セル8a〜8dの放電・排気が同時に停止することなく、高真空領域から極高真空領域まで安定して排気することができる。
【0052】
なお、本発明者の実験の結果、各陽極セル8a〜8dと陰極板7との間隔が各陽極セル8a〜8dの径の大きさとほぼ等しい場合、または、それより若干狭い場合、極高真空領域での排気効率が良くなり、より到達真空度が高くなった。
したがって、陰極板7と各陽極セル8a〜8d端部との間隔が、各陽極セル8a〜8dの径の大きさとほぼ等しくなるように設定された実施例1のスパッタイオンポンプSIPでは、極高真空状態での排気効率が高くなっている。
【0053】
また、実施例1では、左側ケース6a内の陽極セル8c,8dと右側ケース6bの陽極8a,8bとを異なる径及び長さの4種類の陽極セル8a〜8dで構成したが、左右両ケース6a、6bの陽極8を大径8a及び中径8bの2種類の陽極セル8a,8bで構成することも可能である。また、陽極8の形状は同時に排気が停止するのを防止するために2種類以上の複数の長さまたは径のセルによって構成するのが望ましいが、ターボ分子ポンプTMP等の予備排気真空ポンプによって排気可能な真空度(圧力)から排気可能で、極高真空状態に排気できる性能を確保できれば、同一径、同一長さの多数の陽極セルのみで構成することも可能である。
【0054】
(非蒸発ゲッターポンプ)
図1,図2において、前記非蒸発ゲッターポンプNEGは、排気通路2内部に突出するゲッター部11(図1参照)と、前記ゲッター部11を支持し且つ排気通路2の外部に設けられたゲッターポンプ支持体12とを有している。前記ゲッターポンプ支持体12の後端には図示しない電源に接続するコネクタ12aが設けられており、電気が供給されるとゲッターポンプ支持体12は内部に設けられた加熱装置(図示せず)によってゲッター部11を数百℃以上(500℃程度)に加熱する。前記ゲッター部11は、ジルコニウム(Zr)−アルミニウム(Al)の二元合金の粉体を金属板(例えば銅板)に圧着して製造された非蒸発ゲッター材によって形成されている。前記ゲッター部11は、表面積を広くするために前記非蒸発ゲッター材の金属板が何重にも折り込まれて形成されており、これにより排気できる面積が広くなっている。なお、前記ゲッター部11はジルコニウム(Zr)−バナジウム(V)−鉄(Fe)またはジルコニウム(Zr)−稀土類金属−コバルト(Co)の三元合金等の粉体を金属板に圧着したもの等で構成することも可能である。
【0055】
前記非蒸発ゲッターポンプNEGは、真空中でゲッター部11が数百℃まで加熱すると、ゲッター部11表面のガスが付着した膜(酸化膜)が昇華(蒸発)せず、内部に拡散し、新しい活性なゲッター面が現れる。この過程は活性化と呼ばれている。活性化された、ゲッター部11表面に付着したガスはゲッター材内部に拡散して永久に固定され、一度収着したガスは再度放出されることはない。即ち、前記ゲッター部11が活性化され、新たに現れた活性なゲッター材の表面(ゲッター面)がガスを収着することによって、排気が行われる。また、新たに現れた活性なゲッター面は、表面が酸化されてもガスを収着し続けるので、一度活性化されたゲッター部11は、加熱を停止してもガスを排気することができる。また、前記材料で構成されたゲッター部11は、特に、極高真空領域の残留ガスの主成分であるメタンガス、一酸化炭素、水素のうち、一酸化炭素及び水素を吸着しやすい特性を有している。
【0056】
(排気用冷陰極電界放出電子銃)
図6は実施例1の極高真空排気装置の冷陰極電界放出電子銃とエレクトトンマルチプライヤとによる電子の移動を説明する作用説明図である。
図1、図2において、極高真空排気装置XHVPの排気通路2に設けられた前記冷陰極電界放出電子銃C-FEGは、先端の尖った陰極と、前記陰極を取り囲むように配置された陽極を有し、前記陽極と陰極間に電圧を加えることによって陰極から電子を放出する従来公知(例えば、特許第2779026号参照)の電子銃である。
なお、前記冷陰極電界放出電子銃C-FEGの代わりに、熱電子銃(例えば、ショットキーエミッション型電子銃等)を使用することも可能である。
【0057】
図2,図6において、前記冷陰極電界放出電子銃C-FEGは、排気通路2内に1次電子(排気促進材)を放出する。放出された1次電子は、電気的な力によって、スパッタイオンポンプSIPの陽極セル8a〜8dに向かって移動する。即ち、真空度が高くなり、ポンプ内の残留ガス(原子・分子)の数が減少したために、ペニング放電及びマグネトロン放電が発生し難い状態であっても、前記冷陰極電界放出電子銃C-FEGによってスパッタイオンポンプSIPの陽極セル8a〜8d内に電子を供給することによって、ガスのイオン化が促進され、さらに排気することができる。
【0058】
(電子増幅器)
図1,図4において、前記冷陰極電界放出電子銃C-FEGの下方には、従来公知(例えば、特開2001−126657号公報等)のエレクトロンマルチプライヤ(電子増幅器)EMが設けられている。
図6において、前記エレクトロンマルチプライヤEMは、冷陰極電界放出電子銃C-FEGから放出された1次電子の数を1×106倍程度に増幅(増倍)して、2次電子(オージェ電子・反射電子を含む)として排気通路2内部に放出する。放出された2次電子は、電気的な力によってスパッタイオンポンプSIPの陽極セル8a〜8d内に供給され、陽極セル8a〜8d内のガスをイオン化させる。したがって、冷陰極電界放出電子銃C-FEGだけしか備えない場合よりも、増幅された電子によってガスを効率よくイオン化できる。
なお、実施例1では、電子増幅器としてエレクトロンマルチプライヤEMを使用したが、チャンネルトロンやマイクロチャンネルプレート等の電子増幅器を使用することも可能である。
【0059】
(超音波振動子)
前記排気通路2の上部外壁に設けられた超音波振動子UW(図2参照)は、エネルギーの弱い超音波を発振する従来公知のものを使用可能であり、例えば、眼鏡、入歯、宝石などの洗浄を目的とした家庭用の小型洗浄機に使用される圧電振動子を使用することができる。前記超音波振動子UWは、真空容器1が極高真空状態の時に、弱い超音波を発振し、真空容器1や排気通路2を振動させる。真空容器1等が振動すると、真空容器1等の内壁面に弱く吸着していたガス(吸着エネルギーが小さく質量の小さい気体、主に水素)が放出され、真空容器1内の真空度が低下する。
この結果、単位体積あたりの原子・分子の数が少なすぎてペニング放電の開始が難しい極高真空領域から、ペニング放電及びマグネトロン放電が発生しスパッタイオンポンプSIPで排気可能な真空度(5×10-8程度)まで、短時間且つ容易に真空度を低下させることができる。
【0060】
なお、弱い超音波を発振する前記超音波振動子UWに替えて強い超音波を発振する超音波振動子を使用することも可能である。しかし、強い超音波振動子を使用すると、スパッタイオンポンプSIP等で再排気し難い吸着エネルギーの大きく質量の大きなガスまで放出されるため、再び排気して極高真空領域に復帰するのに長時間を要する。そのため、弱い超音波を発振する超音波振動子UWを使用するのが望ましい。また、真空度を低下させる方法として、局所を加熱する方法、壁を叩く方法、及びガスを導入する方法もあるが、超音波振動子UWを使用する方が、シンプル且つ低コストな構成及び電気的制御で、排気の容易な吸着エネルギーの小さく質量の小さなガス(主に水素ガス)だけを、選択的に放出させることができるので、弱い超音波振動子UWを使用するのが望ましい。
【0061】
(実施例1の作用)
図7は実施例1の極高真空排気装置を用いた真空排気の作業手順の説明図である。
前記構成を備えた実施例1の極高真空排気装置XHVPは、以下に示す真空排気作業手順(真空排気方法)により、真空容器1内を圧力10-12Pa台の極高真空状態に排気することができる。
(極高真空排気装置を用いた真空排気作業手順)
図7のST101において、バルブB(図1参照)を開いた状態で、前記スクロールポンプSPの作動スイッチをオンにして、スクロールポンプSPによって大気圧からの排気を開始する。
ST102において、作業者が前記真空計SKの計測値を確認し、前記スクロールポンプSPの排気によって、ターボ分子ポンプTMPが作動可能な所定の圧力(真空度)になった状態で、ターボ分子ポンプTMPの作動スイッチをオンにして、ターボ分子ポンプTMPによる排気を開始する。
【0062】
ST103において、真空計SKの計測値を確認し、スパッタイオンポンプSIPが作動可能な所定の真空度(例えば、圧力1×10-4Pa程度)まで排気された状態で、前記スパッタイオンポンプSIPの陽極8に電圧を印加して、スパッタイオンポンプSIPを作動させ、排気を開始する。このとき、スパッタイオンポンプSIPの陰陽極間の放電により、陽極8表面に付着していたガスや塵等が放出され、陽極8表面の尖っている部分(凸部)が放電によって削れて、陽極8の表面が清浄化(放電洗浄)される。この放電洗浄は3〜5分で終了し、放出されたガスや塵等はスクロールポンプSP及びターボ分子ポンプTMPによって排気される。
ST104において、スパッタイオンポンプSIPが作動した状態で、前記真空容器1の外壁に設けたシーズヒータ(図示せず)のスイッチをオンにして真空容器1のベークアウト(焼出)を行う。前記ベークアウトは、真空容器1を250℃〜300℃に加熱することによって行う。このベークアウトを行うことによって、極高真空領域において真空容器1表面からガス等が放出されるのを防止でき、結果として、到達真空度を上昇させることができる。
【0063】
ST105において、前記ベークアウトを開始してから所定の時間経過後(15時間〜20時間程度)、作業者が真空計SKの計測値を確認して所定の真空度(圧力5×10-6Pa以下)になった状態で、シーズヒータのスイッチをオフにして、ベークアウトを終了し、自然冷却を開始する。
ST106において、真空計SKの計測値を確認して、非蒸発ゲッターポンプNEGが作動可能な所定の真空度(圧力5×10-7Pa程度)になった状態で、非蒸発ゲッターポンプNEGのスイッチをオンにして、非蒸発ゲッターポンプNEGを作動させ、ゲッター部11のゲッター材を活性化させる。このとき、非蒸発ゲッターポンプNEGによる排気が開始される。
ST107において、次の(1)〜(3)の作業を行う。
(1)前記バルブBを閉じる。
(2)前記ターボ分子ポンプTMPを停止させる。
(3)前記スクロールポンプSPを停止させる。
【0064】
ST108において、前記非蒸発ゲッターポンプNEGが作動してから所定の時間(2〜3時間程度)が経過し、真空計SKの計測値が圧力5×10-9Pa以下の真空度に達した状態で、冷陰極電界放出電子銃C-FEGを作動させ、極高真空排気装置XHVP内に電子(排気促進材)を供給する。このとき、数十秒〜数分で、真空容器1内は、圧力10-12Pa台以下の極高真空に到達する。
【0065】
その理由(原理)は次のように考えられる。圧力5×10-9Pa以下の真空度では、陽極セル8a〜8d内のガス分子の数が少なくペニング放電やマグネトロン放電がほとんど発生せず、スパッタイオンポンプSIPによる排気は限界に近づいている。即ち、前記陽極セル8a〜8dに付着したチタン膜がガス(特に水素)を吸着する速度と、放出する速度とが平衡状態に達している。この状態で、冷陰極電界放出電子銃C-FEGから1次電子(排気促進材)が供給されると、1次電子によって陽極セル8a〜8d内のガスがイオン化され、イオン化されたガスが陰極板7に引き寄せられる。この真空度では、真空容器1内のガスはほとんどが原子量の小さな水素なので、イオン化された水素が電界によって加速されて陰極板7に衝突しても、陰極板7のチタン原子はほとんどスパッタされないものと考えられる。したがって、圧力5×10-9Pa以下の真空度より高い真空度では、イオン化された水素は、主に、陰極板7に衝突した時にチタン原子をスパッタせずに吸着されて排気される。また、このとき、イオン化されていない水素も陰極板7の表面に衝突した時に吸着し、排気される。
また、冷陰極電界放出電子銃C-FEGから供給された1次電子はエレクトロンマルチプライヤEMによって増幅(増倍)される。したがって、前記スパッタイオンポンプSIP内には増倍された大量の2次電子(排気促進材)が放出されるので、ペニング放電・マグネトロン放電が促進され、排気が促進される。
【0066】
真空容器1内の真空度が急激に上昇したため、真空容器1や極高真空排気装置XHVPの構成部材からガスが放出される。即ち、このようにして得られた圧力10-12Pa台以下の極高真空状態は、持続性に乏しい。したがって、前記スパッタイオンポンプSIP、非蒸発ゲッターポンプNEG及び冷陰極電界放出電子銃C-FEGを作動させたまま、前記構成部材からのガス放出が減少するのを待つ。このとき、構成部材の1つである真空計SKがペニング真空計(ペニング電流を計測することにより真空度を計測する真空計)等である場合、真空計測時にガスが放出される可能性があるので、計測する時以外は作動を停止させる。
構成部品からのガスの放出が減少すると、真空容器1内の圧力が10-12Pa台以下の安定した極高真空状態が得られる。
【0067】
ST109において、前記10-12Pa台以下の極高真空状態の真空容器1内部は、作業(顕微分析作業や描画作業等)を行ったり、作業を中断したりしながら、極高真空度に近い真空度を、数ヶ月〜2年程度維持することがある。前記真空容器1内の真空度を極高真空度に近い状態に維持する期間中、スパッタイオンポンプSIP、非蒸発ゲッターポンプNEG及び冷陰極電界放出電子銃C-FEGのいずれか又は全てを、必要に応じて停止、再起動する。
ST110において、顕微分析作業等を終了し、且つ、真空排気作業も終了する時、作業者により全てのスイッチがオフにされ、全作業手順を終了する。
【0068】
(極高真空排気装置によって圧力10-12Pa台以下の極高真空状態に排気された後の極高真空排気装置の再起動作業の手順)
前述の極高真空排気方法の作業手順ST109において、10-12Pa台以下の安定した極高真空の真空容器1で作業(顕微分析作業や描画作業等)を行った後、冷陰極電界放出電子銃C-FEGとスパッタイオンポンプSIPを停止した状態で、極高真空状態が保持されている場合がある。このとき、真空度がスパッタイオンポンプSIPの再起動が可能な真空度(5×10-8Pa程度)まで低下していれば、それぞれの真空度に対応して再起動を行うことができる。
【0069】
しかし、真空度が悪化しても圧力1×10-10Pa程度の状態では、スパッタイオンポンプSIPを作動させても、真空度が高すぎるためペニング放電やマグネトロン放電が起こりにくく、スパッタイオンポンプSIPによって排気ができない。したがって、この場合、スパッタイオンポンプSIPによる排気が可能な真空度である5×10-8Paまで真空度を低下させなければ、再び10-12Pa台以下の極高真空領域を得ることができない。このとき、成り行きに任せて真空度の低下を待っていると時間がかかるので、真空容器1内の真空度を5×10-8Pa程度に強制的に低下させるために、前述のように真空容器1外壁を叩いて振動させると、振動した真空容器1内壁から排気に時間のかかる高分子量のガスが放出されることがある。その場合、再起動後極高真空状態に復帰するのにやはり時間がかかる。
【0070】
そこで、実施例1では、真空度が5×10-8Paより高い時には、短時間且つ容易に真空度を低下させるために、前記弱い超音波振動子UWを使用する。
次に、超音波振動子UWを使用した極高真空領域での極高真空排気装置の再起動作業の手順を説明する。
真空容器1内の真空度が5×10-8Paより高い(良い)場合、作業者は超音波振動子UWのスイッチをオンにして、超音波振動子UWを作動させる。前記超音波振動子UWが作動すると、極高真空排気装置XHVPの外壁が振動し、極高真空排気装置XHVPの内壁等に弱く付着しているガス(主に水素)が放出される。そして、ガスの放出により、真空計SKの計測値が5×10-8Paより低い真空度まで悪化した時、前記スパッタイオンポンプSIPを作動させ、スパッタイオンポンプSIPによる放電・排気を再開する。そして、前記超音波振動子UWのスイッチをオフにし、超音波振動子UWを停止する。前記超音波振動子UW停止後、前記極高真空排気装置による真空排気方法の作業手順のST108と同様に、冷陰極電界放出電子銃C-FEGを作動させて、真空容器1内を再び、圧力10-12Pa台以下の極高真空領域まで排気する。
【0071】
したがって、前記弱い超音波振動子UWにより吸着エネルギーの小さく質量の小さなガス(主に水素ガス)を放出させることによって、スパッタイオンポンプSIPの放電可能な真空度(5×10-8Pa程度)まで短時間で悪化させることができる。また、質量の小さな排気しやすいガス(水素ガス等)が多いので、その後のスパッタイオンポンプSIPや非蒸発ゲッターポンプNEGによる排気も短時間で行うことができ、短時間で10-12Pa台以下の極高真空状態に復帰することができる。
以上の結果、実施例1の極高真空排気装置XHVPは、冷陰極電界放出電子銃C-FEGを作動させることによって、10-12Pa台以下の極高真空状態まで排気することができる。
【0072】
(実施例2)
図8は実施例2の極高真空排気装置の説明図であり、実施例1の図1に対応する図である。
図9は実施例2の極高真空排気装置の要部断面斜視図であり、実施例2の図2に対応する図である。
なお、この実施例2の極高真空排気装置の説明において、前記実施例1の極高真空排気装置の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図8、図9において、実施例2の極高真空排気装置XHVP′では、実施例1の冷陰極電界放出電子銃C-FEGに替えてキセノンランプを有する紫外線照射装置(紫外線源)UVが配置されている。前記紫外線照射装置UVは、排気通路2内部に向けて紫外線を照射する紫外線照射部51を有する。そして、実施例2の極高真空排気装置XHVP′では、エレクトロンマルチプライヤEMに替えて、酸化チタンを主成分とするチタン及び非磁性金属の合金で形成された酸化チタンプレート(酸化チタン材料)52が、前記紫外線照射部51に対向する位置に固定支持されている。
なお、前記紫外線照射装置UVは、キセノンランプに替えて、水銀キセノンランプや紫外線パルスレーザ発生装置等の従来公知の紫外線照射装置を使用することが可能である。
前記紫外線照射装置UVと、酸化チタンプレート52とによって排気促進材供給装置(UV+52)が構成されている。
【0073】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2の極高真空排気装置XHVP′では、実施例1の真空排気作業手順(図7参照)のST108において、冷陰極電界放出電子銃C-FEGに替えて紫外線照射装置UVを作動させる。前記紫外線照射装置UVから照射された紫外線は、散乱・反射によって極高真空排気装置XHVP′内部に広がる。このとき、作動中の前記スパッタイオンポンプSIPの陽極8には、陰極板7からスパッタされたチタンによってチタン膜が形成されている。紫外線が陽極8表面のチタン膜や、チタンプレート52等の酸化チタンを含む部材に照射されると、オゾン等の活性な酸素(活性酸素)が発生する。前記活性酸素(排気促進材)が炭化水素(メタン等)と化学反応すると、炭化水素が、炭素(固体)、水素(気体)、一酸化炭素(気体)、二酸化炭素(気体)や水(気体)等に分解される。また、前記紫外線照射装置UVから照射された紫外線が、メタンガス等の炭化水素に直接照射された場合も、紫外線の持つ光エネルギー(排気促進材)によって、同様に分解される。
【0074】
前記炭化水素(メタンガス等)は、イオン化され難くスパッタイオンポンプSIPで排気されにくい。その上、従来技術の問題点として前述したように、極高真空状態では、チタンを触媒として前記炭化水素ガスが生成される放出される。実施例2の極高真空排気装置XHVP′では、活性酸素や紫外線の持つ光エネルギー(紫外光エネルギー)によって、排気が困難であったメタンガス等の炭化水素(有機化合物気体)が排気可能なガス(水素等)に分解されるので、スパッタイオンポンプSIPで排気することができる。
【0075】
また、極高真空状態では、陽極8表面のチタン膜や陰極板7、ゲッター部11等に吸着されるガスと、チタン膜等から放出されるガスとが平衡状態になり、排気がほとんど行われなくなっている。しかし、前記活性酸素によってメタンガス等が分解されると、極高真空排気装置XHVP′内のガスのイオン化率が増加するため、前記平衡状態が崩れ、スパッタイオンポンプSIP及び非蒸発ゲッターポンプNEGで排気することが可能となる。
したがって、活性酸素や紫外光エネルギー(排気促進材)によって、メタンガス等を分解することにより、メタンガス等に比べイオン化されやすい水素、一酸化炭素等のガスの量が増加するので、ガスのイオン化が促進され且つ、平衡状態が崩れ、スパッタイオンポンプSIPや非蒸発ゲッターポンプNEGによってさらに排気することができる。この結果、実施例2の極高真空排気装置P′は、実施例1の極高真空排気装置XHVPと同様に、真空容器1内を圧力10-12Pa台以下の極高真空状態まで排気することができる。
【0076】
なお、実施例2の極高真空排気装置XHVP′では、電子供給源としての冷陰極電界放出電子銃C-FEGに替えて、紫外線照射装置UVと酸化チタンプレート52を使用したが、冷陰極電界放出電子銃C-FEGと紫外線照射装置UV及び酸化チタンプレート52を両方共に備える構成とすることも可能である。この場合、さらに効率的に排気することができる。
【0077】
(実施例3)
図10は実施例3の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの断面説明図である。
なお、この実施例3の極高真空排気装置の説明において、前記実施例1の極高真空排気装置の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図10に示すように、実施例3の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプSIPでは、対向する2組の陰極板7a′,7a′と7b′,7b′とが磁石9の磁界の方向に沿って配置されている。前記陰極板7a′,7a′どうしの間隔は、陰極板7b′,7b′どうしの間隔よりも狭くなるように配置されている。そして、実施例3の複数の陽極8′は、同一径・同一長さの筒状のセル8eによって構成されている。したがって、実施例3のスパッタイオンポンプSIPでは、陰極板7a′と後側(−X側)の陽極セル8eとの間隔が狭くなり、陰極板7b′と前側(+X側)の陽極セル8eとの間隔が広くなっている。
【0078】
なお、実施例3のスパッタイオンポンプSIPは、対向する2組の陰極板7a′,7a′、7b′,7b′を有しているが、3組以上の対向する陰極板を備える構成とすることも可能である。
また、実施例3の陽極8は同一径・同一長さの陽極セル8eを使用したが、陰極板7′との間隔の狭い後側(−X側)に小径セルを配置し、間隔の広い前側(+X側)に大径セルを配置することも可能である。このとき、前記実施例1,2の長い小径セル8dと短い大径セル8aと同様の作用効果が得られる。さらに、小径セルと大径セルとの間に中径セルを配置する構成も可能である。
【0079】
(実施例3の作用)
前記構成を備えた実施例3の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプSIPでは、陰極板7a′、7b′と陽極セル8e端部との間隔が異なるように構成されているので、比較的低い真空度(高真空領域)で後側(−X側)の陽極8と陰極板7′との間で放電・排気が開始される。そして、前記陽極セル8e端部と陰極板7′との間隔が異なるので、ある真空度で排気が同時に停止することが防止される。また、同一径の前記陽極セル8の内径を適切な大きさ(大径)にすることによって、極高真空領域においても排気することができる。
【0080】
(実施例4)
図11は実施例4の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの断面説明図である。
なお、この実施例4の極高真空排気装置の説明において、前記実施例3の極高真空排気装置の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図11において、実施例4の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプSIPは、上下に対向して配置された陰極板7,7と、前記陰極板7,7の中間部に前記陰極板7,7に平行に配置された中央陰極板7″とを有している。そして、前記上側の陰極板7と中央陰極板7″との間及び下側の陰極板7と中央陰極板7″との間には、それぞれ、陽極8″、8″が図示しない支持部材によって固定支持されている。
前記陽極8″、8″には、同一の電圧を印加され、中央陰極板7″はアースされている。また、前記陽極8″,8″は、実施例1の陽極セルと同様に、短い大径セル8a″、8a″及び長い小径セル8d″、8d″を有している。
【0081】
なお、実施例4では、陽極8″は大径セル8a″と小径セル8d″とによって構成されているが、実施例1と同様に中径セル8bを備えることも可能であるし、実施例3のように全て同一径のセルで構成することも可能である。
また、実施例4では、陽極セル8″、8″を2段に配置したが、3段以上配置することも可能である。
【0082】
(実施例4の作用)
前記構成を備えた実施例4の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプSIPでは、実施例1と同様に、比較的低い放電開始真空度で、小径セル8d″と陰極板7,7″との間で放電・排気を開始することができ、且つ、極高真空領域において大径セル8a′,8a″と陰極板7,7″との間で放電・排気を持続することができる。また、複数の前記陽極セル8a″,8d″と陰極板7′との間隔が異なるので、ある真空度で排気が同時に停止することが防止される。
【0083】
(実施例5)
図12は実施例5の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの平面図である。
なお、この実施例5の極高真空排気装置の説明において、前記実施例1の極高真空排気装置の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図12において、実施例5の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの円筒状の陽極セル8は、大径セル8a(内径31mm)と、中径セル8b(内径17mm)と、小径セル8d(内径12.5mm)とを有している。図12に示すように、実施例5の陽極セル8は、内側に大径セル8aを配置し、その周辺部に中径セル8b、小径セル8dを配置している。そして、実施例1と同様に、大径セル8aの長さが最も短く、小径セル8dの長さが最も長く構成されている。
【0084】
(実施例5の作用)
前記構成を備えた実施例5のスパッタイオンポンプは、長い小径セル8dと短い大径セル8aとを備えているので、比較的低い真空度で放電・排気が開始され且つ極高真空領域で排気を持続することができる。また、大径セル8a、中径セル8b、小径セル8cの長さが異なるので、同時に排気が停止せず、安定して高真空領域から極高真空領域まで排気できる。
【0085】
(実施例6)
図13は実施例6の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの平面図である。
なお、この実施例6の極高真空排気装置の説明において、前記実施例1、実施例5の極高真空排気装置の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図13において、実施例6の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セル8は、最も長さの短い大径セル8a(内径35mm)と、中間の長さの中径セル8b(内径29mm)と、最も長い小径セル8c(内径16mm)とを有している。
したがって、実施例6のスパッタイオンポンプは、比較的低い真空度から排気ができ且つ極高真空状態まで排気が停止することなく排気できる。
【0086】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。以下に変更例を例示する。
(H01)前記各実施例において、活性酸素を供給する装置として紫外線照射装置UV及び酸化チタンプレート52を使用したが、排気促進材としての活性酸素を供給可能な任意の排気促進材供給装置を使用可能である。
【発明の効果】
前述の本発明の極高真空排気装置、極高真空排気方法及びスパッタイオンポンプは、下記の効果を奏することができる。
(E01)圧力10-12Pa台以下の極高真空領域を得ることができる極高真空排気装置及び真空排気方法を提供することができる。
(E02)一度、圧力10-12Pa台以下の極高真空領域に到達して極高真空排気装置を停止した後、圧力が10-12Pa台より悪い真空領域から10-12Pa台以下の極高真空領域への復帰を短時間で行うことができる。
(E03)圧力10-12Pa台以下の極高真空領域に到達する時間を大幅に(1ヶ月程度かかっていたのを数分に)短縮することができる。
(E04)前記極高真空排気装置及び真空排気方法で好適に使用可能なスパッタイオンポンプを提供することができる。
(E05)極高真空領域においてスパッタイオンポンプの陰極から放出されるメタンガス等を排気することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施の形態に係る極高真空排気装置の要部断面図である。
【図2】 図2は、図1に示した極高真空排気装置の斜視図である。
【図3】 図3は実施例1の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの要部説明図で、図2のIII−III線断面図である。
【図4】 図4は実施例1のスパッタイオンポンプの左側の陽極セルの説明図であり、図4Aは平面図、図4Bは側面図である。
【図5】 図5は実施例1のスパッタイオンポンプの右側の陽極セルの説明図であり、図5Aは平面図、図5Bは側面図である。
【図6】 図6は実施例1の極高真空排気装置の冷陰極電界放出電子銃とエレクトトンマルチプライヤとによる電子の移動を説明する作用説明図である。
【図7】 図7は実施例1の極高真空排気装置を用いた真空排気の作業手順の説明図である。
【図8】 図8は実施例2の極高真空排気装置の説明図であり、実施例1の図1に対応する図である。
【図9】 図9は実施例2の極高真空排気装置の要部断面斜視図であり、実施例2の図2に対応する図である。
【図10】 図10は実施例3の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの断面説明図である。
【図11】 図11は実施例4の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの断面説明図である。
【図12】 図12は実施例5の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの平面図である。
【図13】 図13は実施例6の極高真空排気装置のスパッタイオンポンプの陽極セルの平面図である。
【符号の説明】
C-FEG;UV+52…排気促進材供給装置、C-FEG…冷陰極電界放出電子銃,電子供給源、EM…電子増幅器、NEG…非蒸発ゲッターポンプ、SIP…スパッタイオンポンプ、UV…紫外線源、UW…超音波振動子、1…真空容器、7,7′,7″…陰極、8,8′,8″,8a〜8e,8a″,8d″…陽極、9…磁石、52…酸化チタン材料。

Claims (11)

  1. 真空容器内を10-12Pa台以下の極高真空状態に排気するための極高真空排気装置であって、
    ゲッター材を熱処理してガスを吸着することにより前記極高真空状態より高圧の超高真空状態で排気を行う非蒸発ゲッターポンプと、
    互いに対向して配置されたその間に磁界を形成する一対の磁石と、前記一対の磁石の内側であって磁界方向に離れて配置され且つ対向する一対の陰極と、前記一対の陰極の内側であって磁界の方向に沿って軸が配置された筒状の複数の陽極とを有し、電圧印加時の陰陽極間での放電によりプラスにイオン化されたガスにより陰極からスパッタされた金属材料が前記陽極に付着すると共に、前記陽極に付着した前記金属材料がガスを吸着して排気するスパッタイオンポンプと、
    前記超高真空状態の真空容器内のガスの排気を促進させる排気促進材を供給する排気促進材供給装置であって、前記排気促進材としての電子を供給する電子供給源によって構成された前記排気促進材供給装置と、
    前記電子供給源から放出された電子を増幅して前記スパッタイオンポンプに供給する電子増幅器と、
    を備えた極高真空排気装置。
  2. 冷陰極電界放出電子銃によって構成された前記電子供給源を備えた請求項1記載の極高真空排気装置。
  3. 真空容器内を10-12Pa台以下の極高真空状態に排気するための極高真空排気装置であって、
    ゲッター材を熱処理してガスを吸着することにより前記極高真空状態より高圧の超高真空状態で排気を行う非蒸発ゲッターポンプと、
    互いに対向して配置されたその間に磁界を形成する一対の磁石と、前記一対の磁石の内側であって磁界方向に離れて配置され且つ対向する一対の陰極と、前記一対の陰極の内側であって磁界の方向に沿って軸が配置された筒状の複数の陽極とを有し、電圧印加時の陰陽極間での放電によりプラスにイオン化されたガスにより陰極からスパッタされた金属材料が前記陽極に付着すると共に、前記陽極に付着した前記金属材料がガスを吸着して排気するスパッタイオンポンプと、
    前記超高真空状態の真空容器内のガスの排気を促進させる排気促進材を供給する排気促進材供給装置であって、酸化チタン材料と、前記酸化チタン材料に紫外線を照射して酸化チタン材料から排気促進材としての活性酸素を放出させる紫外線源とによって構成された前記排気促進材供給装置と、
    を備えた極高真空排気装置。
  4. 極高真空状態の時に、真空容器内部の部材表面に吸着されたガスを放出させるため、超音波を発振して真空容器内の圧力を上昇させる超音波振動子を備えた請求項1ないし3のいずれかに記載の極高真空排気装置。
  5. スパッタイオンポンプと非蒸発ゲッターポンプとによって排気された真空容器内の圧力が5×10-9Paに到達した状態で、排気促進材供給装置から排気促進材を供給することにより、真空容器内の圧力を10-12Pa台以下の極高真空状態に降下させることを特徴とする真空排気方法。
  6. 極高真空状態で、前記スパッタイオンポンプを一時停止した後に再起動する際、超音波振動子により超音波を発振し、極高真空排気装置内の構成部材に吸着されているガスを放出させて真空容器内の圧力を上昇させ、前記スパッタイオンポンプの排気の再開を可能にすることを特徴とする請求項5記載の真空排気方法。
  7. 互いに対向して配置されてその間に磁界を形成する一対の磁石と、
    前記一対の磁石の内側であって磁界の方向に離れて配置され且つ対向する一対の陰極と、
    前記一対の陰極の内側であって磁界の方向に沿って軸が配置され、且つ前記陰極との間隔が異なるように配置された複数の筒状の陽極と、
    を備え、
    電圧印加時の陰陽極間での放電によりプラスにイオン化されたガスにより陰極からスパッタされた金属材料が前記陽極に付着すると共に、前記陽極に付着した前記金属材料がガスを吸着して排気することを特徴とするスパッタイオンポンプ。
  8. 内径が30mm以上に形成された陽極を有することを特徴とする請求項7記載のスパッタイオンポンプ。
  9. 長さが異なる複数の前記陽極を有することを特徴とする請求項7または8記載のスパッタイオンポンプ。
  10. 大径、中径、及び小径の少なくとも3種類の内径の陽極を有する前記複数の陽極を有する請求項7ないし9のいずれかに記載のスパッタイオンポンプ。
  11. 前記小径の陽極の長さが最も長く形成されていることを特徴とする請求項10に記載のスパッタイオンポンプ。
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