JP2003342682A - 熱処理後の加工性に優れる缶用薄鋼板およびその製造方法ならびにその熱延素材の製造方法 - Google Patents

熱処理後の加工性に優れる缶用薄鋼板およびその製造方法ならびにその熱延素材の製造方法

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JP2003342682A JP2003066723A JP2003066723A JP2003342682A JP 2003342682 A JP2003342682 A JP 2003342682A JP 2003066723 A JP2003066723 A JP 2003066723A JP 2003066723 A JP2003066723 A JP 2003066723A JP 2003342682 A JP2003342682 A JP 2003342682A
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Makoto Araya
誠 荒谷
Satoru Sato
覚 佐藤
Yukio Obata
由紀夫 小幡
Hideo Kukuminato
英雄 久々湊
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JFE Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製缶加工途中で熱処理が施されるフィルムラ
ミネート缶に用いて好適な高強度極薄缶用鋼板とその製
造方法を提案する。 【解決手段】 C:0.05〜0.1mass%、Si:0.05mass%
以下、Mn:0.4〜0.9mass%、P:0.02mass%以下、S:
0.02mass%以下、Al:0.04〜0.1mass%、N:0.0015〜
0.0050mass%、O:0.005mass%以下、B:0.001〜0.00
5mass%を含有する鋼スラブを、熱間圧延して板厚2mm
以下とし、冷間圧延して0.2mm以下としたのち、連続焼
鈍、調質圧延およびめっき処理を施すことにより、平均
r値:1.0〜1.6、Δr値:0±0.3で、かつ製缶途中で
行われる熱処理後の引張特性が、降伏応力:390Mpa未
満、全伸び:20%以上、降伏点伸び:1〜8%である鋼板
を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製缶加工途中にお
ける熱処理後の加工性に優れる缶用薄鋼板およびその製
造方法ならびに缶用薄鋼板用熱延素材の製造方法を提案
するものである。なお、ここでいう薄鋼板とは、板厚0.
2mm以下の極薄鋼板のことである。
【0002】
【従来の技術】清涼飲料、アルコール飲料等を充填する
飲料缶や、食品等を充填する食缶等の各種缶容器は、そ
の部品構造から、缶胴と上蓋とからなる2ピース缶と、
缶胴、上蓋および底蓋からなる3ピース缶に大別され
る。上記2ピース缶の缶胴は、素材となる鋼板を、深絞
り加工(カップ成形)した後、缶高さを得るために、しご
き加工(アイオニング)やストレッチドローあるいはスト
レッチ加工にしごき加工を組合わせたストレッチドロー
アイオニングなどの加工を行い、その後さらに、ネック
縮径加工、フランジ加工、カール成形加工およびビード
加工などの各種成形加工を経て製造されている。
【0003】また、最近では、ビール瓶のような飲み口
を持ち、リシールできる飲料缶も登場している。この缶
は、リシール性を持った飲み口を形成するために、上記
加工に加えてさらに、口部のドーム成形、カール成形、
ネジ成形やビード成形など、複雑な加工が行われて製造
されている。
【0004】さらに、従来のように平板の段階で行う塗
料やインクを使う塗装や印刷・焼付をしない、環境に優
しい缶も開発されている。この種の缶は、缶の素材とな
るティンフリースチール(TFS、JIS G3315)の缶内面
となる面側に、透明なPETフィルムをラミネートし、
他方の缶外面になる面側に、白色のPETフィルムをラ
ミネートしたフィルムラミネート鋼板を素材とするもの
で、上記鋼板をプレスしてカップ成形後、アイオニング
やストレッチドローアイオニングなどの加工を施して製
造している(例えば、特許文献1参照。)。また、この
フィルムラミネート鋼板を用いた缶においても、リシー
ル性の飲み口をもつ飲料缶が開発されている。このよう
に、2ピース缶の缶胴用鋼板には、上記のような過酷な
成形にも耐え得る加工性が要求されている。
【0005】一方、缶の軽量化やコストの低減を目的と
して、缶胴用鋼板の薄肉化も進められ、最近では2ピー
ス缶にも板厚0.2mm以下の極薄鋼板が使用され始めてい
る(例えば、特許文献2〜4参照。)。しかし、素材の
板厚を薄くすると、製缶加工時の肉厚変動によって、缶
胴のネック部やフランジ部の肉厚が過薄となり、製缶後
の缶強度が不足したり、目的の缶形状が得られなかった
り、または“しわ”不良が発生したりするという問題が
起こる。この問題を回避するには、カップ成形の際のブ
ランク径を大きくし、缶胴部の肉厚を確保することが有
効である。しかし、ブランク径を大きくすることは絞り
比を大きくすることにもなるため、逆に、カップ成形が
難しくなり、破断等のトラブルが発生し易くなるという
問題がある。従って、缶を軽量化するためには、板厚が
薄くてもなおかつ深絞り性に優れた缶用鋼板が求められ
る。
【0006】さらに、素材の板厚を薄くすると、鋼板を
カップ形状に深絞り加工する際、剛性が不足してしわが
発生しやすくなる。この傾向は、ブランク径が大きくな
るほど顕著となる。しわの発生を防止するには、プレス
加工時のしわ押え力(BHF)を大きくすることが有効で
ある。しかし、BHFを大きくすると、絞り加工で発生
した耳の先端が切れやすくなるという別の問題が生ず
る。この問題を解決するには、r値の面内異方性の少な
い、即ち、△r値の小さい鋼板が望まれる。
【0007】また、缶用鋼板の他の動向として、缶蓋強
度の増加とコストダウンを図るために、上蓋の小径化が
進められている。そのため、2ピース缶の缶胴ネック部
はより多段化、小径化されて、ネック部の加工量が増加
する傾向にある。しかも、ビール瓶のような注ぎ口を成
形するためには、さらに縮径加工したのち、ねじ加工や
ビード加工を行う必要がある。このような、小径加工
後、縮径加工するような場合には、縮径部の肉厚が増加
するので加工性改善には寄与するが、逆に、ネックしわ
が発生しやすくなる。このネックしわは、パッカーにお
いて、内容物を充填し、上蓋を取り付けた後に内容物が
漏れ出すというトラブルを引き起こすため、致命的な欠
陥となる。
【0008】上記ネックしわを防止するには、剛性が高
い高強度鋼板を使用することが有効である。しかし、素
材の高強度化は、圧延負荷の増大を招くため、板厚の極
薄化を困難にする。さらに、高強度鋼板は、一般的に降
伏応力が高くて伸びが低いため、縮径加工が難しく、フ
ランジ加工に際して割れが発生しやすいという問題もあ
る。従って、缶用鋼板には、縮径化を図る観点からは、
ある程度の強度を有すると共に、軟鋼板並の加工性を有
するという、相矛盾する特性を満たすことが要求され
る。
【0009】以上説明したように、最近の2ピース缶の
胴材用の鋼板には、0.20mm以下という極薄板厚において
もなおかつ、プレス加工(カップ成形)やしごき加工、縮
径加工等の厳しい加工に耐える加工性を具備しているほ
か、耳の発生を抑制するために、Δrが小さく、しかも
ネックしわを防止し、缶強度を確保するために、ある程
度の強度を有するという、お互いに相矛盾する特性を併
せ持つことが求められている。
【0010】
【特許文献1】 特開平05−247669号公報
【特許文献2】 特開2000−160289号公報
【特許文献3】 特開2001−335888号公報
【特許文献4】 国際公開第00−63453号パンフ
レット
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、PETフィ
ルムをラミネートした高強度極薄鋼板に、上述した各種
の製缶加工を連続して行う場合には、フィルムに加工歪
が蓄積されてフィルムが破れ、加工トラブルや耐食性の
劣化を招くことがある。この問題に対処するために、フ
ィルムの歪除去を目的として、製缶途中で加工を中断
し、約230℃以上で60秒以下の短時間の熱処理を施すこ
とが行われている。この熱処理温度は、従来の塗装・焼
付温度と比較し高温であるため、鋼板によっては、歪時
効が進行して硬度の上昇を招くことになる。この時効硬
化は、缶強度の確保には有利であるが、熱処理後の製缶
加工が困難になるという問題を引き起こす。
【0012】また、冷延板の板厚を極薄化するには、冷
延母板すなわち熱延板の板厚を変えずに冷延圧下率を上
げる方法と、冷延圧下率を変えずに熱延板の板厚を薄く
する方法の2つの方法がある。しかし、冷延圧下率を上
げる方法は、r値の面内異方性を大きくして絞り成形時
の耳の発生を助長するため、限界がある。一方、熱延板
の板厚を薄くする方法は、熱延コイルが長くなって圧延
に長時間を要するため、圧延中の温度低下を招いて、幅
方向、長さ方向の圧延温度の確保が難しくなる他、生産
性の低下を招くという問題がある。
【0013】本発明の目的は、製缶加工途中で熱処理が
施されるフィルムラミネート缶に用いて好適な高強度極
薄缶用鋼板およびその製造方法を提案することにある。
また、本発明の他の目的は、上記極薄缶用鋼板用の熱延
素材の有利な製造方法を提案することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記相矛盾
する諸要求を満たす特性を有する2ピース缶用の極薄鋼
板について鋭意研究を行った。その結果、缶強度は、加
工がより厳しくなるほど、すなわち加工歪量が多くなる
ほど加工硬化し上昇すること、また、加工途中における
熱処理によってもさらに時効硬化し、上昇することに着
目した。つまり、缶強度を確保するためには、素材とな
る缶用鋼板は、必ずしも高強度である必要はなく、むし
ろ、加工時には軟質で加工性に優れると共に、製缶加工
による加工硬化と、製缶加工途中の熱処理による歪時効
硬化によって高強度化する特性を有することが望ましい
ことを見出した。
【0015】すなわち、本発明は、2ピース缶に用いら
れる鋼板は、プレス加工やしごき加工等が行われる製缶
工程の前段では、軟質で深絞り性に優れる特性を有する
と共に、縮径加工等が行われる製缶工程の後段では、上
述した製缶加工途中におけるフィルムの歪取熱処理によ
って歪時効硬化し、高強度化されているような特性を有
する鋼板であれば、上述した相矛盾する特性を満たすこ
とができるとの知見にもとづくものである。そして、適
度の時効性を付与するためには、固溶Nを十分に固定し
た上で、固溶Cによる時効硬化作用を利用すべきである
こと、さらに、Δr値を小さくするためには、Bを適正
量添加することが有効であることを併せて知見し、本発
明を完成した。
【0016】上記知見に基づき開発された本発明は、
C:0.05〜0.1mass%、Si:0.05mass%以下、Mn:0.4〜
0.9mass%、P:0.02mass%以下、S:0.02mass%以
下、Al:0.04〜0.1mass%、N:0.0015〜0.0050mass
%、O:0.005mass%以下、B:0.001〜0.005mass%を
含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、表面
にSnめっき、NiめっきまたはCrめっきのうちの少なくと
も1種のめっき層を有することを特徴とする熱処理後の
加工性に優れる缶用薄鋼板である。
【0017】また本発明は、C:0.05〜0.1mass%、S
i:0.05mass%以下、Mn:0.4〜0.9mass%、P:0.02mas
s%以下、S:0.02mass%以下、Al:0.04〜0.1mass%、
N:0.0015〜0.0050mass%、O:0.005mass%以下、
B:0.001〜0.005mass%を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなり、表面にSnめっき、Niめっきまたは
Crめっきのうちの少なくとも1種のめっき層を有し、か
つ平均r値:1.0〜1.6、Δr値:0±0.3である板厚0.2
mm以下の表面処理鋼板であって、製缶加工時の熱処理後
の特性が、降伏応力:390Mpa未満、全伸び:20%以上、
降伏点伸び:1〜8%を示すものであることを特徴とする
熱処理後の加工性に優れる缶用薄鋼板である。
【0018】なお、本発明の上記鋼板は、連続焼鈍後の
固溶Nが3mass ppm以下(0を含む)であることが好まし
い。さらに、上記鋼板は、めっき層の上にクロメート処
理が施されたものであることが好ましい。
【0019】また、本発明は、C:0.05〜0.1mass%、S
i:0.05mass%以下、Mn:0.4〜0.9mass%、P:0.02mas
s%以下、S:0.02mass%以下、Al:0.04〜0.1mass%、
N:0.0015〜0.0050mass%、O:0.005mass%以下、
B:0.001〜0.005mass%を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなる鋼スラブを、仕上圧延終了温度がA
r3変態点+10℃以上920℃以下の熱間圧延により板厚2m
m以下とした後、600〜700℃で巻取ることを特徴とする
缶用薄鋼板用熱延素材の製造方法を提案する。
【0020】なお、本発明の上記熱延素材の製造方法
は、前記熱間圧延において、粗圧延後、先行のシートバ
ーの後端部と後行のシートバーの先端部とを接合したの
ち、仕上圧延することが好ましい。さらに、粗圧延後、
シートバーの長手方向端部および/またはシートバーの
幅方向端部を加熱昇温することが好ましい。
【0021】さらに、本発明は、上記熱延素材から冷間
圧延、焼鈍、調質圧延、めっき処理の一連の工程を経て
缶用鋼板を製造するに際し、上記焼鈍を、Ac1変態点以
上760℃以下で焼鈍後、急冷し、その後、過時効処理す
る連続焼鈍で行うことを特徴とする熱処理後の加工性に
優れる缶用薄鋼板の製造方法を提案する。
【0022】なお、本発明の上記缶用薄鋼板の製造方法
は、前記調質圧延の圧下率を1%以上15%未満とするこ
とが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】発明者らはまず、素材としての鋼
板が、上記製缶途中で行われる熱処理後の加工にも充分
耐え得る加工性を有すると共に、加工後の缶が要求強度
を十分に満たすためには、どのような特性を具備すべき
かを検討した。その結果、鋼板の深絞り性の指標である
平均r値やΔr値は、めっき処理後の生の状態で評価で
きるが、缶強度に直接影響する鋼板の引張特性は、歪を
付与していない鋼板に、フィルムラミネート鋼板が製缶
加工途中で受けるフィルムの歪除去熱処理温度である23
0℃以上の時効熱処理を施した後に評価すべきであるこ
とがわかった。
【0024】上記時効熱処理条件は、実操業の条件と合
わせる必要があるが、230〜300℃×20〜120秒、より好
ましくは、230〜260℃×20〜60秒に設定するのがよい。
なお、上記230℃以上という時効温度は、Snめっき鋼板
(ぶりき)が缶用鋼板として主に使用されていた時には、
Snの融点が233℃であることから、採用されていなかっ
た温度である。しかし、近年は、フィルムの密着性に優
れたCrめっき鋼板(TFS)が素材として用いられるよう
になったことから、230℃以上の温度での熱処理が行わ
れるようになってきた。
【0025】以下、本発明の缶用鋼板が具備すべき必要
特性について説明する。 熱処理後降伏応力(YP):390Mpa未満 時効熱処理後の降伏応力(YP)は、缶強度を確保するた
めには、高いほど望ましい。しかし、高強度に過ぎる
と、熱処理後の加工性が劣化する。従って、缶強度と加
工性を両立させるためには、時効後YPを390Mpa未満と
する必要がある。なお、時効後YPの下限値は、製缶工
程前段での歪量によっても変化するため、一律に決めら
れないが、290MPa以上であることが望ましい。
【0026】熱処理後全伸び(El):20%以上 時効熱処理後の全伸び(El)は、加工性を支配する1つ
の因子であり、複雑な缶形状に加工される用途には、大
きいほど望ましい。とくに、本発明に係る鋼板のよう
に、加工途中で時効硬化され、その後、さらに加工を受
ける場合には、時効後のElは、少なくとも20%以上が
必要である。好ましくは、25%以上である。
【0027】熱処理後降伏点伸び(YEl):1〜8% 加工途中の熱処理により時効硬化した鋼板は、降伏応力
が上昇すると共に、降伏点伸び(YEl)が発生するよう
になる。このYElは、一般には、時効硬化量が大きい
ほど大きくなるが、過度に大きい場合には、加工歪量が
軽度な箇所でストレッチャーストレインが発生し、外観
を損ねると共に、胴円周方向の板厚分布が不均一となる
ので好ましくない。一方、時効硬化量が小さい場合に
は、ストレッチャーストレインは問題とならないが、熱
処理後の強度上昇が得られないため、後段の加工でしわ
が発生したり、必要とする缶強度が確保できなくなる。
従って、本発明の目的にかなう鋼板は、熱処理後、ほど
ほどのYElを有することが必要であり、その範囲は1
〜8%である。
【0028】平均r値:1.0〜1.6 r値(ランクフォード値)は、加工性、特に深絞り性と密
接な関係があり、高いほど深絞り性がよい。特に、本発
明の缶用鋼板のように、最初の工程でカップ形状にプレ
ス成形される鋼板では、めっき後の状態(生)で少なくと
も平均r値は1.0以上が必要である。一方、平均r値が
高くなるに伴い、後述するΔr値も大きくなる傾向にあ
るため、上限を1.6に制限する。ここで、本発明の上記
平均r値は、圧延方向に対して平行(L)、直角(T)およ
び45°(D)方向のr値をそれぞれ、rL,rTおよびrD
とした場合、下記式で定義されるr値を意味する。 平均r値=(rL+rT+2rD)/4
【0029】Δr値:0±0.3以内 Δr値は、r値の面内異方性を示す指標であり、この値
が大きいと、プレス加工の際に発生する缶胴部の耳高さ
や缶胴部の円周方向の肉厚変動が大きくなる。また、真
円度も悪くなって必要な缶形状や缶高さが得られなくな
る。そのため、Δr値は、小さいほど好ましい。特に、
本発明の鋼板のように、プレス成形後、しごき加工やス
トレッチ加工が行われる材料では、このΔr値は厳しく
管理する必要があり、−0.3〜+0.3の範囲に制限する。
ここで、Δr値は下記式で定義される値である。 △r値=(rL+rT−2rD)/2
【0030】次に、発明者らは、上記時効特性を鋼板に
付与する方法について検討した。時効硬化は、鋼中の固
溶C,Nによって引き起こされる現象であり、時効性を
付与するためには、固溶C,Nを鋼板中に存在させる必
要がある。そのためには、冷間圧延後の焼鈍は、連続焼
鈍法を採用するのが有利である。そこで、連続焼鈍を前
提とし、固溶Cと固溶Nによる時効特性の付与方法につ
いて検討を行った。
【0031】まず、固溶N量と時効特性(時効後YEl)
との関係を調査することを目的とし、C:0.03mass%と
0.07mass%のアルミキルド鋼(Al:0.05mass%)と、それ
にBを0.003mass%添加した鋼を用いて、製造条件を種
々に変化し、連続焼鈍後の固溶N量を変化させためっき
鋼板を作製した。この鋼板について、固溶N量と、260
℃×1分の熱処理後のYElを測定し、結果を図1に示
した。ここで、固溶N(N sol)は、下記式で定義したも
のである。 固溶N(N sol)=N total−(N as AlN+N as BN)
【0032】上記図1より、Bが添加されていない鋼
A,Bには、固溶Nが3mass ppm以上存在し、しかも、
時効後のYElは目標とするYEl:1〜8%を大きく
超える値となることがわかった。一方、Bを添加してN
を固定した鋼C,D,Eは、固溶Nが6mass ppm以下に
低減されていること、さらに、固溶Nを3mass ppm以下
とすれば、時効後YElを目標とする1〜8%の範囲内
に収めることが可能であることがわかった。しかし、こ
の鋼C,D,Eの時効後YElは、固溶Nが3mass ppm
近傍で急激に変化している。しかも、この固溶Nが3ma
ss ppmという量は非常に微量でもある。これらの結果
は、230℃以上で熱処理を行う場合には、鋼板の時効特
性を固溶N量によって制御することは好ましくないこと
を意味する。そこで、本発明においては、固溶NをBお
よびAlにより3mass ppm以下に十分に固定したうえで、
固溶Cを用いて時効特性を制御する方法を採用すること
にした。
【0033】続いて、固溶C量を安定して存在させるた
めの制御方法について検討を行った。単に固溶C量を減
少させるのであれば、Cを極端に少なくした極低炭素鋼
板を用いる方法がある。しかし、この方法では、必要な
鋼板強度が得られない。一方、Cを0.10mass%超え添加
した鋼板は、析出炭化物が密に分布し、固溶C析出のた
めの移動距離が小さくなる結果、固溶C量は減少する。
しかし、この方法で得られる鋼板は、平均r値が低く、
加工性の劣化を招くため好ましくない。また、Cの増加
により硬質化するため、冷間圧延性に劣り、平坦度も悪
くなる。一方、C量が0.05mass%未満の領域では、熱延
巻取温度(CT)により、炭化物の分散状態が大きく変化
するため、固溶C量を安定して制御することが難しくな
る。
【0034】図2は、図1と同じ、Cが0.03mass%およ
び0.07mass%の低炭素アルミキルド鋼(Al:0.05mass%)
に、Bを0.003mass%添加した鋼と添加しない鋼とを素
材とし、熱延巻取温度を600℃と680℃の2水準とする熱
間圧延を行い、その後、冷間圧延、連続焼鈍、調質圧延
して電気めっき処理を行った鋼板における、時効処理温
度と時効後YElとの関係を示したものである。この図
2から、C:0.07mass%のアルミキルド鋼にBを0.003m
ass%添加した鋼板C,D(CT:600℃、680℃)の230〜
300℃熱処理後の時効後YElは、2〜8%の範囲に入
っていることがわかる。これに対し、C:0.03mass%の
アルミキルド鋼にBを0.003mass%添加した鋼板E(C
T:680℃)は、230℃以下の熱処理温度での時効後YE
lは8%以下であるが、230℃以上の熱処理温度での時
効後YElは8%を超えている。この結果は、前述した
C:0.05mass%以下の素材における、固溶C制御の難し
さを示すものである。なお、比較例として、B無添加の
C:0.03mass%のアルミキルド鋼(鋼A,B)の結果につ
いても示したが、時効後YElが10%以上発生してお
り、実用上、使用できるレベルではない。
【0035】また、図3は、図2の鋼D(C:0.07mass
%、B:0.003mass%)を用いて、CT:680℃とした熱
延鋼板を素材とした電気めっき鋼板の時効処理温度と時
効後YPとの関係を示したものである。この図から、鋼
Dにおける時効後YPは、230℃以上の熱処理により急
激に上昇するが、300℃ではほぼ飽和すること、その結
果、230〜300℃の時効後YPは、概ね320〜390MPaであ
ることがわかる。なお、比較例として、C:0.07mass%
のB無添加鋼(CT:600℃)の場合の特性も示したが、2
30〜300℃の時効後YPは、400MPaを大きく超えてい
る。以上の実験結果から、本発明においては、Bを添加
してNを固定したC:0.05〜0.10mass%のアルミキルド
鋼を素材として用いることが好ましいことが明らかとな
った。
【0036】次に、上記時効硬化特性を満足できる条件
において、さらにΔr値を低減することを検討した。C
を0.05〜0.10mass%含有した低炭素アルミキルド熱延鋼
帯を、冷延圧下率85〜93%で冷間圧延し、その後、Ac1
変態点直上温度で連続焼鈍した板厚0.20mm以下の鋼板に
ついて、Δr値を調査した。その結果、これらの鋼板の
△r値は、いずれも本発明の目標Δr値(0±0.3以内)に
対しマイナス側に大きく外れており、本発明が目的とす
る深絞り加工を伴う缶には使用できないことが明らかと
なった。そこでさらに、△r値を+側に移行するための
研究を行った。その結果、Bを適正量添加することによ
り、Δr値は著しく改善されることを見出した。
【0037】図4は、C:0.07mass%の低炭素Alキルド
鋼に、Bを0〜0.0060mass%の範囲で添加した鋼スラブ
を、仕上圧延温度をAr3+10℃以上、巻取温度を690℃
と610℃の2水準とする熱間圧延を行い板厚2.0mmの熱延
板とした後、冷間圧延して最終板厚0.18mm(冷延圧下
率:91%)とし、その後、連続焼鈍と調質圧延を行い、
電気めっきした鋼板について、Δr値を測定した結果を
示したものである。この図から、C:0.07mass%の鋼板
のΔr値は、Bが無添加の場合、−0.3より大きくマイ
ナス側にずれているが、Bを適正量添加することによ
り、Δrがほぼ0(ゼロ)となること、しかしあまり過度
に添加すると、逆にΔr値はプラス側に変化していくこ
とがわかる。この傾向は、巻取温度、690℃と610℃のい
ずれの場合にも同じである。そして、Δr値を±0.3以
内とするためには、Bを0.001〜0.005mass%の範囲で添
加すればよいことがわかった。本発明は、以上の実験結
果に基づき完成されたものである。
【0038】次に、本発明において、鋼板の成分組成を
上述した範囲に限定する理由について説明する。 C:0.05〜0.1mass% Cは、鋼板強度を高めるのに有用な元素である。また、
本発明の重要な要件である、時効硬化特性を発揮するた
めの固溶Cを確保するためにも必要な元素である。しか
し、C量が0.05mass%未満では、先述したように、熱延
巻取温度(CT)により、鋼中に析出した炭化物の分散状
態が大きく変化するため、固溶C量を安定して制御する
ことが難しくなる。一方、C量が0.10mass%を超える
と、析出炭化物の密度が増して、却って固溶C量が低減
する。また、鋼板の平均r値が低下し、加工性の劣化を
招くため好ましくない。そこで、C量は、0.05〜0.1mas
s%の範囲に制限する。
【0039】Si:0.05mass%以下 Siは、表面処理性や耐食性を劣化させる元素であるとと
もに、材質を極端に硬質化させる元素であるため、その
添加量は0.05mass%以下に制限する。とくに、優れた耐
食性を得るためには、0.02mass%以下とするのが好まし
い。
【0040】Mn:0.4〜0.9mass% Mnは、Sによる熱間脆性を抑制するために有効な元素で
ある。また、Mnは、セメンタイト中に濃化し、セメンタ
イト/フェライト界面の移動速度を低下させ、セメンタ
イトの凝集、粗大化を抑制し、結晶粒を微細化する効果
を有する。これらの効果は、0.4mass%以上の添加で認
められる。一方、0.9mass%を超えて多量に含有する
と、耐食性が劣化する傾向にあるのに加え、鋼板を硬質
化して製缶加工性を劣化させる。そのため、Mnは0.4〜
0.9mass%の範囲で添加する。なお、冷間圧延性を確保
しかつ良好な平坦度を得るためには、0.4〜0.6mass%の
範囲とするのが好ましい。
【0041】P:0.02mass%以下 Pは、材質を硬質化させ、かつ耐食性を劣化させる元素
であるので、過剰の含有は好ましくなく、0.02mass%以
下に制限する。
【0042】S:0.02mass%以下 Sは、過剰に含有すると、高温γ域で固溶していたS
が、熱間圧延時に、(Fe,Mn)Sとしてγ粒界に析出して
赤熱脆性を引き起こし、熱延鋼帯の耳割れの原因とな
る。また、S系介在物となって、プレス成形性を害す
る。したがって、Sは0.02mass%以下にする必要があ
る。
【0043】Al:0.04〜0.1mass% Alは、鋼の精錬工程において脱酸剤として添加される。
また、清浄度を改善するほか、固溶Nを固定する有用な
元素でもある。これらの効果を発揮させるためには、0.
04mass%以上の添加が必要である。一方、含有量が多す
ぎると、アルミナクラスターなどに起因する表面欠陥の
発生頻度が急増するため、0.1mass%を上限とする。好
ましい添加量は、0.04〜0.06mass%である。
【0044】N:0.0015〜0.0050mass% Nは、上述したように、時効性を高める元素であるが、
ストレッチャーストレインの発生頻度を増加させるた
め、極力低減することが望ましい。しかし、精錬時に不
可避的に溶鋼中に混入し、0.0015mass%以下に低減する
ことは難しい。一方、鋼中に混入したNは、AlやBの添
加によりある程度固定することが可能である。しかし、
含有N量の増加は、Al,Bの添加量の増加にもつながる
ため、0.0050mass%を上限とする。好ましくは0.0015〜
0.0035mass%の範囲である。
【0045】O:0.005mass%以下 Oは、鋼中のAl,Mnや耐火物中のSi、フラックス中のC
a,Na,F等と酸化物を形成して鋼中に残存し、製缶加
工時の割れあるいは耐食性劣化の原因となるので、でき
るだけ低減することが望ましい。とくに、本発明の鋼板
は、フランジ加工などの厳しい加工がなされるため、0.
005mass%以下に制限する必要がある。
【0046】B:0.001〜0.005mass% Bは、本発明では、Alと同様、Nを固定するのに有効な
元素であると共に、r値の異方性(Δr)を改善するため
に重要な元素であり、必須の元素として添加する。Bの
添加量が、0.001mass%未満では、Δrの改善効果が小
さく、一方、0.005mass%を超えて添加すると、Δrが
プラス側に大きくずれてしまうので、その添加量は0.00
1〜0.005mass%の範囲に制限する。
【0047】次に、本発明に係る鋼板の製造方法につい
て説明する。上述した成分組成を有する鋼スラブは、常
法に従って製造すればよく、例えば、転炉等で溶製した
溶鋼を、必要に応じて真空脱ガス処理を施して成分調整
を行った後、連続鋳造して製造することができる。続く
熱間圧延は、スラブを1050〜1250℃に再加熱した後、ま
たは、連続鋳造した後直ちに、粗圧延し、仕上圧延して
熱延鋼板とする。この時の、仕上圧延終了温度(FDT)
が鋼板のAr3変態点以下になると、熱延鋼板の結晶組織
が異常となり、また、r値が大きく劣化するため、Ar3
変態点以上とすることが必要とされる。しかし、板幅端
部は中央部に比べて温度が低下する傾向にあり、Ar3
態点以下となりやすい。しかも、極薄冷延鋼板の場合に
は、その母材となる熱延鋼板の板厚もまた極薄であるこ
とから、熱間圧延においてコイル全長、全幅にわたって
均一温度を確保することは難しい。そこで、熱延鋼帯の
全長、全幅のFDTをAr3変態点以上の温度とするため
には、FDTの下限温度をAr3変態点+10℃以上とする
必要がある。一方、FDTの上限は、920℃を超えて高
温になると、酸化皮膜(スケール)が厚くなって歩止りが
低下するだけでなく、スケール欠陥を引き起こしやす
い。また結晶粒が粗大化し、r値の低下を招くので、材
質上好ましくない。よって、FDTは、Ar3変態点+10
℃以上920℃以下の範囲に制御する必要がある。
【0048】また、熱延後のコイルの巻取温度(CT)
は、600〜700℃とする必要がある。CTが600℃未満で
は、鋼中NがAlNとして固定析出せず、また鋼中Cも炭
化物として充分に凝集しないため、固溶N,Cが多く残
存し、冷延後の再結晶焼鈍で、深絞り性に優れた集合組
織が得られない。一方、700℃を超えると、表面スケー
ルが厚くなって酸洗性を害するほか、コイル内の温度差
が大きくなり、材質のバラツキの原因となる。
【0049】熱延板の板厚は2.0mm以下とする。熱延板
厚が2.0mmを超えると、製品板厚0.2mm以下に冷間圧延す
る際の圧延負荷が大きくなるほか、圧下率の上昇によ
り、Δr値がマイナス側に大きく外れるからである。
【0050】なお、上述したように、熱延板の板厚を薄
くすると、熱間圧延に要する時間が長時間とり、圧延中
の温度低下が大きくなる。そのため、圧延コイルの先端
と後端との温度差が大きくなり、コイル内の材質(品質)
のバラツキが大きくなるという問題がある。この問題を
解決する方法としては、熱間粗圧延終了後、先行するシ
ートバーの後端と後行するシートバーの先端とを接合
し、熱間仕上圧延を高速で連続圧延するいわゆる連続熱
間圧延を採用することが有効である。これにより、圧延
時間を短縮し、先後端の温度差を低減することができ
る。
【0051】さらに、熱延板厚の低減は、コイル先後端
の温度差以外に、コイル幅方向の温度差を拡大し、板幅
方向の材質のバラツキを引き起こすほか、冷間圧延にお
ける形状不良をも引き起こす。この問題解決のために
は、粗圧延後のシートバーの先後端あるいはシートバー
の幅方向両端をシートバーヒーターやエッジヒーター等
により加熱昇温してから仕上圧延することが好ましい。
加熱手段としては、誘導加熱法が好適である。
【0052】上記熱延板は、酸洗後、0.20mm以下の最終
板厚に冷間圧延した後、連続焼鈍と調質圧延を行った
後、めっき処理を施す。上記冷間圧延は、その圧下率が
r値およびΔr値と強い相関があるため、適切な範囲に
収める必要がある。特に、Δrを小さくするためには、
圧下率を93%以下とするのが好ましい。
【0053】連続焼鈍は、再結晶焼鈍と、固溶C量を調
整するための急冷処理、過時効処理とを組合せたヒート
サイクルを採用することが好ましい。再結晶の焼鈍温度
は、良好な深絞り性を得るためには、Ac1変態点以上の
温度で行うことが好ましい。しかし、高温に過ぎると、
結晶粒の粗大化や固溶Cの増大を招くほか、ヒートバッ
クル等の操業トラブルを引き起こし、安定して焼鈍がで
きなくなるため、760℃以下とする。続く急冷処理は、
過剰に固溶したCに析出の駆動力を与えるために、10℃
/秒以上の冷却速度で行うことが好ましい。また、過時
効処理は、400〜550℃で1〜3分の範囲で行うことが好
ましい。この処理条件は、素材の成分組成、熱延温度、
焼鈍温度等を考慮し、決定すればよい。
【0054】続いて、連続焼鈍した鋼板には、材質改
善、形状矯正および表面粗度の付与を目的とし、1%以
上15%未満の調質圧延を行う。調質圧延の圧下率は、焼
鈍後の鋼板の降伏点伸びを消失させるために、1%以上
とする必要がある。また、この調質圧延工程では、圧下
率を上げることにより、目的とする調質度すなわち鋼板
硬さ(HR30T)を得ることも可能である。しかし、過度の
圧下率の増大は、鋼板強度を高め、伸びの低下を招いて
深絞り性を劣化させるほか、異方性も大きくする。この
ため、圧下率は15%未満とする。
【0055】調質圧延後の鋼板は、その後、Snめっき、
NiめっきまたはCrめっき等の電気めっき処理が施され、
さらに必要に応じてクロメート処理等の表面処理が施さ
れ、製品とされる。
【0056】
【実施例】C,Al,NおよびBの量を種々に変化した表
1に示す成分組成の鋼スラブを、1050〜1250℃に加熱
後、仕上圧延終了温度を920℃以下Ar3変態点+10℃以
上とする熱間圧延により2.0mmの熱延板としたのち、0.1
8mmに冷間圧延し、その後、730℃×30秒の再結晶焼鈍
後、急冷し、450℃×120秒の過時効処理を伴う連続焼鈍
と、1.5%の調質圧延を行って得た冷延鋼板に、Crめっ
き処理を施して、ティンフリースチールとした。得られ
た製品板について、平均r値とΔr値を測定するほか、
260℃×1分の時効熱処理を行い、熱処理前および後の
引張特性(YP,TS,El,YEL)の測定を行った。
また、熱延板および連続焼鈍後の鋼板については、鋼中
の固溶N量の分析も行った。
【0057】これらの結果を、表1に併せて示した。こ
の結果から、本発明の製造条件(化学成分、熱延条件(C
T)、連続焼鈍後の固溶N量)に適合する鋼板は、いず
れも本発明の要求特性(YP、El、YEl、平均r
値、Δr値)を満足していることがわかる。これに対
し、本発明の製造条件を満たさない鋼板は、YP、E
l、YEl、平均r値およびΔr値のいずれか1つ以上
が、本発明の要求特性を満たしていない。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
プレス加工やしごき加工等が行われる製缶工程の前段で
は軟質で深絞り性に優れ、製缶加工途中における熱処理
による時効硬化では高強度化し、その後の縮径加工等が
行われる製缶工程の後段ではしわの発生がなく、しかも
製缶後の缶強度が高いという優れた特性を有する缶用極
薄鋼板を提供することができる。この鋼板は、2ピース
缶用の極薄鋼板、特に製缶加工途中で熱処理が施される
フィルムラミネート缶用極薄鋼板として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 連続焼鈍後の固溶N量が、時効後YElに及
ぼす影響を示したグラフである。
【図2】 時効処理温度と時効後YElとの関係を示し
たグラフである。
【図3】 時効処理温度と時効後YPとの関係を示した
グラフである。
【図4】 B添加量とΔrとの関係を示したグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21D 9/48 C21D 9/48 H C22C 38/06 C22C 38/06 (72)発明者 小幡 由紀夫 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 久々湊 英雄 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 Fターム(参考) 4E002 AA07 AD01 AD06 BC05 BC07 BD05 BD07 BD08 BD09 CB01 4K037 EA01 EA02 EA05 EA15 EA18 EA22 EA23 EA25 EA27 EC01 FA02 FA03 FC04 FC07 FE02 FE03 FF02 FG01 FH01 FJ05 FK03 FL02 FL05 FM02 GA05

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.05〜0.1mass%、Si:0.05mass%以
    下、Mn:0.4〜0.9mass%、P:0.02mass%以下、S:0.
    02mass%以下、Al:0.04〜0.1mass%、N:0.0015〜0.0
    050mass%、O:0.005mass%以下 B:0.001〜0.005mass%を含有し、残部がFeおよび不可
    避的不純物からなり、表面にSnめっき、Niめっきまたは
    Crめっきのうちの少なくとも1種のめっき層を有するこ
    とを特徴とする熱処理後の加工性に優れる缶用薄鋼板。
  2. 【請求項2】C:0.05〜0.1mass%、Si:0.05mass%以
    下、Mn:0.4〜0.9mass%、P:0.02mass%以下、S:0.
    02mass%以下、Al:0.04〜0.1mass%、N:0.0015〜0.0
    050mass%、O:0.005mass%以下 B:0.001〜0.005mass% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、表
    面にSnめっき、NiめっきまたはCrめっきのうちの少なく
    とも1種のめっき層を有し、かつ平均r値:1.0〜1.6、
    Δr値:0±0.3である板厚0.2mm以下の表面処理鋼板で
    あって、製缶加工時の熱処理後の特性が、降伏応力:39
    0Mpa未満、全伸び:20%以上、降伏点伸び:1〜8%を示
    すものであることを特徴とする熱処理後の加工性に優れ
    る缶用薄鋼板。
  3. 【請求項3】上記鋼板は、連続焼鈍後の固溶Nが3mass
    ppm以下(0を含む)であることを特徴とする請求項1ま
    たは2に記載の缶用薄鋼板。
  4. 【請求項4】C:0.05〜0.1mass%、Si:0.05mass%以
    下、Mn:0.4〜0.9mass%、P:0.02mass%以下、S:0.
    02mass%以下、Al:0.04〜0.1mass%、N:0.0015〜0.0
    050mass%、O:0.005mass%以下、B:0.001〜0.005ma
    ss%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
    鋼スラブを、仕上圧延終了温度がAr3変態点+10℃以上
    920℃以下の熱間圧延により板厚2mm以下とした後、600
    〜700℃で巻取ることを特徴とする缶用薄鋼板用熱延素
    材の製造方法。
  5. 【請求項5】前記熱間圧延において、粗圧延後、先行の
    シートバーの後端部と後行のシートバーの先端部とを接
    合したのち、仕上圧延することを特徴とする請求項4に
    記載の缶用薄鋼板用熱延素材の製造方法。
  6. 【請求項6】前記熱間圧延において、粗圧延後、シート
    バーの長手方向端部および/またはシートバーの幅方向
    端部を加熱昇温することを特徴とする請求項4または5
    に記載の缶用薄鋼板用熱延素材の製造方法。
  7. 【請求項7】請求項4〜6に記載の熱延素材から冷間圧
    延、焼鈍、調質圧延、めっき処理の一連の工程を経て缶
    用鋼板を製造するに際し、上記焼鈍を、Ac1変態点以上
    760℃以下で焼鈍後、急冷し、過時効処理する連続焼鈍
    で行うことを特徴とする熱処理後の加工性に優れる缶用
    薄鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】前記調質圧延は、圧下率を1%以上15%未
    満とすることを特徴とする請求項7に記載の缶用薄鋼板
    の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009524526A (ja) * 2006-01-26 2009-07-02 アルヴェーディ、ジョヴァンニ 酸化防止の表面コーティングに適した鋼板の製造工程
CN113748220A (zh) * 2019-03-29 2021-12-03 杰富意钢铁株式会社 罐用钢板和其制造方法

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