JP2003340834A - 合成樹脂成形体並びにその成形型及びその成形方法 - Google Patents

合成樹脂成形体並びにその成形型及びその成形方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 回転軸の固定強化と、回転軸とインペラの底
部との直交度を確保でき、インペラの振れを簡単に調整
することができる。 【解決手段】 インペラ20は、熱可塑性の合成樹脂製
の合成樹脂部30と金属製の回転軸40との結合により
なる。合成樹脂部30は、下方に開口する略有底円筒状
の椀形部32の外周部32dに7枚の羽根部34が突設
されてなる。回転軸保持部32bの外部側の表面には、
回転軸40の周囲に同軸状に3個の円弧状の凹部32c
が等間隔に形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、軸を有する合成樹
脂射出成形体、特に、中央部に回転軸が植設された合成
樹脂製インペラとして好適に利用し得る合成樹脂射出成
形体、及びその合成樹脂射出成形体としてのインペラを
備えたファンモータ、例えばOA機器等に用いられるフ
ァンモータ、モータ、ターンテーブル等の回転体並びに
その成形型及びその成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は従来のファンモータのインペラの
断面図である。このインペラ1は椀形部12、羽根部1
4及びその一端が植設された回転軸16により構成され
る。また椀形部12は、底部12a、回転軸保持部12
b及び外周部12cにより構成される。この椀形部12
の外周部12cは円環状の回転対称形状をなし、その外
周面には、7枚の羽根部14が等間隔に突設されてい
る。一方、回転軸保持部12bは、椀形部12の底部1
2aの中央において、植設された回転軸16の一端を他
端に向かって囲繞する形で突出固着することにより、回
転軸16を支持している。この回転軸16は、椀形部1
2の外周部12cの回転対称軸16aに一致するように
配置されている。
【0003】図4には、この従来のファンモータにおけ
るインペラの平面図を示す。このインペラ1は、合成樹
脂射出成形体であって、その外形形状に合致したキャビ
ティ(金型で成形品が成形される隙間)を有する金型
に、回転軸16の一部を金型のキャビティ内に位置させ
た状態で、図4のGに対応するゲート(熱溶融した合成
樹脂を射出注入する注入口)からそのキャビティ内に溶
融合成樹脂を射出充填し、合成樹脂を冷却固化させた
後、その成形体を金型から分離することにより製造す
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】回転軸16を支持する
回転軸保持部12bは、その周りの底部12aに比べ軸
線方向において肉厚な構造を有する。これは、回転軸保
持部12bに埋め込まれる回転軸16の固定強度を確保
すると共に、回転軸16に対する底部12aとの直交度
を確保するためである。回転軸保持部12bは、椀形部
12と一体的構造であり、樹脂成形されるが、肉厚の薄
い部分の方が、厚い部分より先に固化する。よって、底
部12aの方が回転軸保持部12bよりも早く固化し、
回転軸保持部12bにはその外周方向に対して不均一の
引っ張り力が作用する。その結果、回転軸保持部12b
によって支持される回転軸16に傾きが生じ、回転軸1
6に対する底部12aとの直交度が損なわれ、回転振れ
が生じ、駆動時において振動、騒音発生の原因となる。
また、モータ、ファンモータを製造する場合、外周部1
2cの内周面に装着される環状のロータマグネットと、
それに対向してわずかな隙間を介して設けられているス
テータ(図示を略す)とが接触し、モータ特性を低下さ
せる等の問題が生じる。
【0005】本発明は上記問題点に鑑みなされたもので
あり、回転軸の固定強化と、回転軸とインペラの底部と
の直交度を確保でき、回転体の振れを簡単に調整するこ
とができる合成樹脂成形体並びにその成形型及びその成
形方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の合成樹脂成形体は、軸と、合成樹脂部とを
具備し、前記軸の何れかの部分は、前記合成樹脂成形体
に設けられた軸保持部により支持され、前記軸の他の部
分は合成樹脂部から外部に露出し、前記軸保持部に1又
は複数の凹部が設けられている。
【0007】合成樹脂中に軸を何れかの部分を埋め込ん
で成形する場合、軸の材料は、溶融合成樹脂の熱や圧力
により悪影響を受けないものであれば特に限定されず、
金属及びその他の材料を適宜用いることができる。ま
た、軸と合成樹脂との接着性が高いことは必ずしも要し
ない。両者間に接着性がなくても、又は接着性が低くて
も差し支えない。
【0008】また、軸の合成樹脂部から外部に露出した
部分は、例えば、合成樹脂部の表面に表れているだけの
ものであってもよく、合成樹脂部から大きく又は小さく
突出しているものであってもよい。
【0009】本発明の回転体は、この合成樹脂成形体を
回転体としたものであり、本発明のファンモータはこの
回転体をインペラとして備えたものである。
【0010】次に、本発明の成形型は、合成樹脂成形体
を成形するキャビティを有し、前記成形キャビティの合
成樹脂成形体の回転軸保持部に対面する部分には、1又
は複数の凸部が設けられている。前記凸部は、合成樹脂
成形体の回転軸保持部の凹部を形成する。
【0011】更に、本発明の成形方法は、まず、合成樹
脂成形体を試作して回転振れを測定し、回転振れが基準
以上であった場合は、合成樹脂成形体と軸との直交度を
調整するために、成形型の1又は複数の凸部のうち、1
以上の凸部を切削する。そして、再度合成樹脂成形体を
試作し、回転振れを測定する。この手順を数回繰り返
し、回転振れが基準内の数値になった時点で量産に入
る。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1及び図
2を参照しつつ説明する。図1及び図2は、本発明の実
施の形態の一例としてのファンモータのインペラについ
てのものである。図1は断面図、図2は平面図である。
【0013】インペラ20は、熱可塑性の合成樹脂製の
合成樹脂部30と金属製の回転軸40との結合によりな
る。合成樹脂部30は、図1における下方に開口する略
有底円筒状の椀形部32の外周部32dに7枚の羽根部
34が突設されてなる。回転軸40は、その基部40a
が椀形部32の底部32a(図1における上部に位置す
る)の中央に設けられている回転軸保持部32bに埋め
込まれて椀形部32を構成する合成樹脂と強固に接着し
た状態で、外周部32dの回転対称軸40cに一致する
ように植設されている。回転軸保持部32bはその周囲
の底部32aに比べて軸線方向において肉厚である。
【0014】回転軸40のうち、ファンモータの軸受
(図示を略す)によって支持される被回転支持部40b
は、椀形部32の内部側に突出し、その先端部は椀形部
32の外へ達する。椀形部32の底部32aの外部側の
表面(図1における上面)は、軸方向において全体とし
て回転軸40の基端面と一致する。回転軸保持部32b
の外部側の表面(図1における上面)には、回転軸40
の周囲に同軸状に3個の円弧状の凹部32cが等間隔に
形成されている。
【0015】凹部32cの個数は3個に限らず、また、
回転軸保持部32b外部側の表面(図1における上面)
に設けることができれば、円弧状でなくてもよい。
【0016】インペラ20を射出成形により製造するに
は、回転軸40の基部40aを、金型における合成樹脂
部30の外形に一致する形状に形成されたキャビティ内
に位置させ、回転軸40と同軸状の位置に、キャビティ
内に開口するように等間隔に設けたGに対応する3個の
ゲートを通じてキャビティ内に溶融合成樹脂を射出充填
する。
【0017】本発明における成形方法は、型を用いるこ
とができる方法であればよく、通常は射出成形である
が、例えば注型による成形も可能である。
【0018】また、本発明における合成樹脂は、成形に
用いることができる合成樹脂であればよく、通常は熱可
塑性樹脂であるが、熱硬化性樹脂を使用することも可能
である。
【0019】射出充填された合成樹脂がキャビティ内で
固化した後、合成樹脂射出成形体であるインペラ20を
金型から分離して金型のゲートにおいて固化した合成樹
脂をインペラ20の合成樹脂部30から切り離すと、イ
ンペラ20を得ることができる。
【0020】このインペラ20の椀形部32の外周部3
2dの内周側に円環状のロータマグネットを設け、回転
軸40を軸受により支持することによって、ロータマグ
ネットがステータの外周側に相対する状態でインペラ2
0を回転自在に支持すれば、軸流型のファンモータ(図
示を略す)が得られる。
【0021】回転振れの少ないインペラを作るために
は、まず、インペラを試作し、その回転振れを測定す
る。回転振れが高い場合は、振れが高くなる方向に設け
られている金型の凸部を切削する。そして、再度インペ
ラを試作し、回転振れを測定する。回転振れが目標の数
値になるまで、これを数回繰り返し、目標の数値となっ
た時点で、インペラの量産に入る。
【0022】なお、実施例の形態においては、回転軸を
金型のキャビティ内に位置させ、合成樹脂を射出成形し
てインペラを成形する方法について説明したが、合成樹
脂部を成形した後で、軸を設けてもよい。
【0023】また、本発明の合成樹脂成形体は、インペ
ラ以外のものにも勿論適用できる。インペラに適用する
場合でも、ファンモータ以外のインペラにも適用でき
る。また、本発明のファンモータは、OA機器以外の用
途にも勿論使用し得る。
【0024】更に、以上の実施の形態についての記述に
おける上下位置関係は、単に図に基づいた説明の便宜の
ためのものであって、実際の使用状態等を限定するもの
ではない。
【0025】以上、本発明に従う合成樹脂成形体並びに
その成形型及びその成形方法の実施例について説明した
が、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、
本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が
可能である。
【0026】
【実施例】本発明を実施したファンモータの回転振れの
実験結果を表1に示す。インペラを32個試作し、回転
振れを測定した。はインペラの回転軸保持部に凹部を
設けない、従来技術を利用したインペラ、はインペラ
の回転軸保持部に凹部を設けた、本発明を利用したイン
ペラ、は、のインペラの回転振れの測定結果をふま
えて本発明のインペラの金型の凸部を削り、回転振れを
調整したもの。は、のインペラの回転振れの測定結
果をふまえて本発明のインペラの金型の凸部を更に削
り、回転振れを調整したものである。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】本発明の合成樹脂成形体は、インペラの
軸線方向において肉厚である回転軸保持部に複数の凹部
を設けたため、成形時における回転軸保持部及びその周
囲との熱収縮の均一化が図られ、回転軸保持部に嵌着さ
れる回転軸の倒れや傾斜がなくなり回転軸とインペラの
底部との直交度が確保される。また、凹部の成形による
回転軸の固定強度の低下はほとんど生じない。
【0029】本発明の成形型は、合成樹脂成形体を成形
するキャビティの合成樹脂成形体の回転軸保持部に対面
する部分に複数の凸部を有することを特徴としている。
この成形型を使用すると、成形時における回転軸保持部
及びその周囲との熱収縮の均一化が図られ、回転軸保持
部に嵌着される回転軸の倒れや傾斜がなくなり回転軸と
インペラの底部との直交度が確保され、回転振れの少な
い合成樹脂成形体を成形することができる。
【0030】本発明の成形方法は、回転振れの少ないイ
ンペラを作るために、まず、合成樹脂成形体を試作し、
その回転振れを測定する。回転振れが高い場合は、振れ
が高くなる方向に設けられている金型の凸部を削ること
でインペラの回転振れを調整する。そして、再度合成樹
脂成形体を試作し、回転振れを測定する。回転振れが目
標の数値になるまで、これを数回繰り返し、目標の数値
となった時点で、インペラの量産に入る。よって、量産
の段階で、回転振れによる不良が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すファンモータのインペラ
の断面図である。
【図2】本発明の実施例を示すファンモータのインペラ
の平面図である。
【図3】従来のファンモータのインペラの断面図であ
る。
【図4】従来のファンモータのインペラの平面図であ
る。
【符号の説明】
20 インペラ 32 椀形部 32a 底部 32b 回転軸保持部 32c 凹部 32d 外周部 34 羽根部 40 回転軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29L 31:08 B29L 31:08 Fターム(参考) 3H033 AA02 AA11 BB02 BB08 CC01 DD01 DD25 DD26 EE06 4F202 AA36 AH04 AM32 CA11 CA30 CB01 CK11 CK25 CK42 CL42 5H607 AA04 BB01 BB17 CC05 CC09 DD02 FF04 JJ01 KK07

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸と、合成樹脂部とを具備する合成樹脂
    成形体であって、 前記軸の何れかの部分は、前記合成樹脂成形体に設けら
    れた軸保持部により支持され、前記軸の他の部分は合成
    樹脂部から外部に露出し、前記軸保持部に1又は複数の
    凹部が設けられていることを特徴とする合成樹脂成形
    体。
  2. 【請求項2】 軸と、合成樹脂部とを具備する合成樹脂
    成形体において、 前記合成樹脂成形体は前記軸を有する略椀形又は略円盤
    状の回転体であって、 前記軸は、略椀形又は略円盤状の回転体の底部又は円盤
    部の中央に同軸状に設けられた回転軸であって、 前記回転軸の何れかの部分は、略椀形又は略円盤状の前
    記回転体の底部又は円盤部の中央に同軸状に設けられた
    回転軸保持部により支持され、前記回転軸の他の部分は
    合成樹脂部から外部に露出し、前記回転軸保持部表面の
    回転軸基端面の周囲に、1又は複数の凹部が同心状に設
    けられ、複数の凹部は、回転軸を中心とした対称の位置
    に均等に配置されていることを特徴とする回転体。
  3. 【請求項3】 軸と、合成樹脂部とを具備する合成樹脂
    成形体において、 前記合成樹脂成形体は、略椀形形の回転体の略椀形部の
    外周部に複数の羽根部が突設されてなるインペラであっ
    て、 前記軸は、インペラの底部の中央に同軸状に設けられた
    回転軸であって、 前記回転軸の何れかの部分は、略椀形の前記インペラの
    底部の中央に同軸状に設けられた回転軸保持部により支
    持され、前記回転軸の他の部分は合成樹脂部から外部に
    露出し、前記回転軸保持部表面の回転軸基端面の周囲
    に、1又は複数の凹部が同心状に設けられ、複数の凹部
    は、回転軸を中心とした対称の位置に均等に配置されて
    いるインペラを備えたことを特徴とするファンモータ。
  4. 【請求項4】 軸と、合成樹脂部とを具備する合成樹脂
    成形体を成形する成形型であって、 前記合成樹脂成形体に、軸を保持する軸保持部が設けら
    れ、前記軸保持部に1又は複数の凹部が設けられている
    ことを特徴とする合成樹脂成形体を成形するキャビティ
    と、前記凹部を設けるために前記成形キャビティの合成
    樹脂成形体の回転軸保持部に対面する部分に1又は複数
    の凸部を有することを特徴とする成形型。
  5. 【請求項5】 合成樹脂中に軸の何れかの部分が埋め込
    まれ、その軸の他の部分が合成樹脂部から外部に露出す
    る状態でその合成樹脂成形体の成形を行う成形方法であ
    って、 前記合成樹脂成形体に、軸を保持する軸保持部が設けら
    れ、前記軸保持部に1又は複数の凹部が設けられ、 前記合成樹脂成形体を成形するキャビティと、前記凹部
    を設けるために前記成形キャビティの合成樹脂成形体の
    軸保持部に対面する部分に1又は複数の凸部を有するこ
    とを特徴とする成形型によって成形される合成樹脂成形
    体であって、 前記成形型に設けられている凸部のうち、1以上の部分
    又は1以上の凸部を切削することにより、合成樹脂部と
    軸との直交度を調整することを特徴とする合成樹脂成形
    体の成形方法。
  6. 【請求項6】 合成樹脂部を成形した後に軸を設ける合
    成樹脂成形体において、 前記合成樹脂成形体に、軸を保持する軸保持部が設けら
    れ、前記軸保持部に1又は複数の凹部が設けられ、 前記合成樹脂成形体を成形するキャビティと、前記凹部
    を設けるために前記成形キャビティの合成樹脂成形体の
    軸保持部に対面する部分に1又は複数の凸部を有するこ
    とを特徴とする成形型によって成形される合成樹脂成形
    体であって、 前記成形型に設けられている凸部のうち、1以上の部分
    又は1以上の凸部を切削することにより、合成樹脂部と
    軸又は軸保持部の孔部との直交度を調整することを特徴
    とする合成樹脂成形体の成形方法。
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