JP2003335774A - 新規な化合物及び抗マラリア剤 - Google Patents

新規な化合物及び抗マラリア剤

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JP2003335774A
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惠淑 金
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた抗マラリア活性を備え副作用も少な
く、特に、薬剤耐性マラリア原虫に対して顕著な抗マラ
リア活性を有すると共に、オリーブオイル等の有機溶媒
のみならず、水に対する溶性を向上することができ、経
口薬のみでなく、注射液としても使用することができる
抗マラリア剤を提供すること。 【解決手段】 本発明の抗マラリア剤は、一般式(I)
[式中、Zは未置換若しくは置換基を有してもよい脂環
式炭化水素基を表し、R0は水溶性の官能基を表し、mは
0〜6のいずれかの整数を表し、nは0〜10のいずれ
かの整数を表す。]で示される化合物を含有する。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な化合物や、
マラリア原虫類による感染症の予防及び治療に有用な抗
マラリア剤に関する。
【0002】
【従来の技術】マラリアは、プラスモジウム(Plasmodi
um)属に属する原虫の感染によって起こる伝染性疾患
で、ハマダラ蚊を媒介として感染し、間欠的な熱発作、
貧血、脾腫等の症状を示す。マラリアは、近年、自然や
環境の変化に伴い猛威を振るい始めており、その推定感
染患者数は年間3億〜5億人、年間死亡者数は、150
〜300万人という世界的にも重要な疾病である。ヒト
に感染するマラリア原虫には、アフリカ、アジア、ラテ
ンアメリカの熱帯地域全体に分布する熱帯熱マラリア原
虫(P. falciparum)、世界各地の熱帯と温帯の一部に
分布する三日熱マラリア原虫(P. vivax)、世界各地に
分布する四日熱マラリア原虫(P. malariae)及び主と
して熱帯西アフリカに分布する卵形マラリア原虫(P. o
vale)等の原虫が挙げられるが、その中でも熱帯熱マラ
リアがもっとも重篤な症状を示し、発症後1〜2週間で
脳症、腎症、溶血性貧血、肺水腫、心臓障害、重症腸炎
などを伴って容易に重症マラリアに進展し、短期間内に
多臓器不全を示し宿主を死に至らしめることが多い。
【0003】近年、殺虫剤耐性の蚊や、マラリアの特効
薬として多用されてきたクロロキン耐性のマラリア原虫
が出現し、その対策が困難となっていることに加え、地
球温暖化に伴うマラリア感染危険地域の拡大、即ち、一
部温帯地域への蔓延が検出され、マラリア制圧は専門機
関としてのWHOのみならず、グローバルな交流が日常
化した今日では、全人類にとって益々重要な問題になり
つつある。抗マラリア剤又は抗マラリア化合物として
は、2個の複素環を含有するオルソ−縮合系の新規化合
物(例えば、特許文献1参照。)や、ICAM−1発現
抑制作用を有する化合物を有効成分として含有する抗マ
ラリア剤(例えば、特許文献2参照。)や、5'−o−
スルファモイル−2−クロロアデノシン等のヌクレオシ
ド誘導体等を有効成分として含有する抗マラリア剤(例
えば、特許文献3参照。)や、トリコテセン類等を有効
成分として含有する抗マラリア剤(例えば、特許文献4
参照。)や、シクロプロジギオシン等を有効成分とする
抗マラリア剤(例えば、特許文献5参照。)や、リミノ
フェナジンを有効成分として含有するマラリア予防又は
治療薬(例えば、特許文献6参照。)や、キノリン誘導
体等を有効成分として含有する抗マラリア薬耐性克服剤
(例えば、特許文献7参照。)や、5−フルオロオロチ
ン酸及びスルファモノメトキシンを有効成分とする抗マ
ラリア剤(例えば、特許文献8参照。)等が知られてい
る。
【0004】
【特許文献1】特開2000−7673号公報
【特許文献2】特開平11−228446号公報
【特許文献3】特開平11−228422号公報
【特許文献4】特開平11−228408号公報
【特許文献5】特開平10−265382号公報
【特許文献6】特開平8−231401号公報
【特許文献7】特開平8−73355号公報
【特許文献8】特開平8−59471号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一方、現在使用されて
いる薬剤の代表的なクロロキンに耐性をもつマラリア原
虫に対して、プリマキン、メフロキン等のクロロキン類
似化合物や、アルテミシニン等のペルオキシ環状化合物
等が有効であり、特に、キク科植物から単離されるトリ
オキサ構造を持つアルテミシニンが治療薬として使われ
ていた。しかしながら、アルテミシニン等に対しても耐
性を示すマラリア原虫がすでに現れており、新規なマラ
リア剤に対して次々に耐性を有するマラリア原虫が出現
し、薬剤耐性マラリア原虫の拡散が化学療法の問題とな
っている。薬剤耐性マラリアに唯一有効な薬剤としてキ
ニーネが存在するが、腎不全を引き起こす可能性が極め
て高く、現在の医療水準から見てリスクの高い治療薬で
ある。このような状況からも、抗マラリア活性が高くか
つ安全性の高い新薬の開発が望まれている。本発明に類
似の化合物としては、例えば特公昭59−46266号
公報、特開平8−67704号公報等に記載の有機ペル
オキシド化合物が公知であるが、これらはポリマー製造
の際の開始剤として使用されているのみである。
【0006】本発明の課題は、各種抗マラリア剤に耐性
を有するマラリア原虫に対して有効であり、副作用が少
なく、オリーブオイル等の有機溶媒に対する溶解度を向
上させ、また、水に対する溶解度を向上させ、経口薬の
みならず注射液にも適用することができる新規な化合物
や、これらを有効成分として含有する抗マラリア剤を提
供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、各種抗マ
ラリア剤に耐性を有するマラリア原虫に対して有効であ
り、副作用が少ない抗マラリア剤として、ペルオキシド
誘導体が有用であることを既に報告している(特開平1
2−229965号公報)。かかるペルオキシド誘導体
は優れた抗マラリア活性を示すものの、難溶性であり、
経口でしか投与できなかったが、本発明者らは、かかる
ペルオキシド誘導体に水溶性の官能基を導入し、難溶性
の改善を図り、さらに、これらの誘導体をエステル化し
て得られるエステルが水溶性を有し、経口のみならず注
射薬として使用することができることを見い出し、本発
明を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明は、一般式(I)
【0009】
【化6】
【0010】[式中、Zは未置換若しくは置換基を有し
てもよい脂環式炭化水素基を表し、R 0は水溶性の官能
基を表し、mは0〜6のいずれかの整数を表し、nは0
〜10のいずれかの整数を表す。]で示される化合物に
関し、一般式(I)中、Zが置換基として低級アルキル
基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素
基を表すことを特徴とする請求項1記載の化合物(請求
項2)や、一般式(I)中、Zが6員環、7員環、10
員環又は12員環のいずれかを表すことを特徴とする請
求項1又は2記載の化合物(請求項3)や、一般式
(I)中、R0が水酸基、カルボキシ基、アルコキシカ
ルボニル基、又は未置換若しくは置換基を有してもよい
カルバモイル基のいずれかを表し、nはR0が水酸基を
表すとき1〜10のいずれかの整数、R0がカルボキシ
基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若しくは置換
基を有してもよいカルバモイル基のいずれかを表すとき
0〜9のいずれかの整数を表すことを特徴とする請求項
1〜3のいずれか記載の化合物(請求項4)や、一般式
(I)中、R0が、一般式(II)
【0011】
【化7】
【0012】[式中、R1は未置換若しくは置換基を有
していてもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。]で
示されるアルコキシカルボニル基を表すことを特徴とす
る請求項4記載の化合物(請求項5)や、一般式(I)
中、R0が、一般式(III)
【0013】
【化8】
【0014】[式中、R2及びR3はそれぞれ独立して、
水素原子、未置換若しくは置換基を有していてもよいメ
チル基又はエチル基を表す。]で示されるカルバモイル
基を表すことを特徴とする請求項4記載の化合物(請求
項6)や、一般式(III)中、R2及びR3が、それぞれ
独立して置換基を有していてもよいメチル基又はエチル
基を表すことを特徴とする請求項6記載の化合物(請求
項7)や、一般式(I)中、R0が、一般式(IV)
【0015】
【化9】
【0016】を表すことを特徴とする請求項1〜3のい
ずれか記載の化合物(請求項8)や、一般式(IV)中、
Yが、アルキレン基を表すことを特徴とする請求項8記
載の化合物(請求項9)や、アルキレン基がエチレン
基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基のいずれかを
表すことを特徴とする請求項9記載の化合物(請求項1
0)や、一般式(IV)中、Yが、一般式(V)
【0017】
【化10】
【0018】を表すことを特徴とする請求項8記載の化
合物(請求項11)に関する。また、本発明は、一般式
(IV)中、Yが、フェニレン基を表すことを特徴とする
請求項8記載の化合物(請求項12)や、請求項1〜1
2に記載される化合物の薬学的に許容し得る塩(請求項
13)や、請求項1〜12に記載される化合物、及び/
又は請求項13に記載される塩を有効成分として含有す
る抗マラリア剤(請求項14)に関する。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の新規な化合物は、一般式
(I)で示される化合物であり、式中、Zは未置換若し
くは置換基を有してもよい脂環式炭化水素基を表し、R
0は水溶性の官能基を表し、mは0〜6のいずれかの整
数を表し、nは0〜10のいずれかの整数を表す化合物
であれば、特に限定されるものではなく、好ましくは、
一般式(I)中、Zが置換基として低級アルキル基を有
していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素基を表
す化合物であり、更に好ましくは、Zが6員環、7員
環、10員環又は12員環のいずれかを表す化合物であ
る。また、一般式(I)中、R0が水酸基、カルボキシ
基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若しくは置換
基を有してもよいカルバモイル基のいずれかを表し、n
はR0が水酸基を表すとき1〜10のいずれかの整数、
0がカルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又は未
置換若しくは置換基を有してもよいカルバモイル基のい
ずれかを表すとき0〜9のいずれかの整数を表す化合物
であることが好ましく、更に好ましくは、一般式(I)
中、R0が、一般式(II)で示されるアルコキシカルボ
ニル基を表す化合物であって、式中、R1は未置換若し
くは置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル
基を表す化合物であるか、あるいは、一般式(I)中、
0が、一般式(III)で示されるカルバモイル基を表す
化合物であって、式中、R2及びR3はそれぞれ独立し
て、水素原子、未置換若しくは置換基を有していてもよ
いメチル基又はエチル基を表す化合物であるか、更に好
ましくは、一般式(III)中、R2及びR3が、それぞれ
独立して置換基として水酸基等を有していてもよいメチ
ル基又はエチル基を表す化合物である。
【0020】また、本発明の新規な化合物は、一般式
(I)中、R0が、一般式(IV)を表す化合物であり、
好ましくは、一般式(IV)中、Yが、エチレン基、テト
ラメチレン基、ヘキサメチレン基等のいずれかを示すア
ルキレン基で表される化合物であるか、あるいは、一般
式(IV)中、Yが、一般式(V)を表す化合物である
か、あるいは、一般式(IV)中、Yが、フェニレン基を
表す化合物であることが好ましい。また、本発明の抗マ
ラリア剤は、上記新規な化合物や、その薬学的に許容し
得る塩を有効成分として含有するものである。
【0021】本発明の一般式(I)において、Zは、未
置換若しくは置換基を有していてもよい脂環式炭化水素
基を表し、脂環式炭化水素基であれば特に限定されるも
のではないが、飽和脂環式炭化水素基が好ましく、脂環
式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピリデン
基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シク
ロヘキシリデン基、シクロへプチリデン基、シクロオク
チリデン基、シクロノニリデン基、シクロデシリデン
基、シクロウンデシリデン基、シクロドデシリデン基等
の単環の脂環式炭化水素基や、ビシクロブチリデン基、
ビシクロオクチリデン基、ビシクロノニリデン基、ノル
ボルニリデン基、アダマンチリデン基等の架橋環又は多
環の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。これら
のうちで員環数が小さいものほど、一般式(I)で表さ
れる化合物の水溶性を向上させることができるが、脂環
式炭化水素基として、好ましくは、炭素数6〜12の単
環の脂環式炭化水素基又はアダマンチリデン基が挙げら
れ、より好ましくは、炭素数が6、7、10又は12の
脂環式炭化水素基であり、具体的には、シクロヘキシリ
デン基、シクロヘプチリデン基、シクロデシリデン基、
シクロドデシリデン基又はアダマンチリデン基等を挙げ
ることができる。
【0022】上記Zの脂環式炭化水素基が有してもよい
置換基としては、特に制限されるものではなく、メチル
基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−
ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert
−ブチル基、直鎖又は側鎖を有するペンチル基等の直鎖
状又は分枝状のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ
基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキ
シ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert
−ブトキシ基、直鎖又は側鎖を有するペンチルオキシ基
等の炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状の低級アルコキシ
基等を例示することができ、好ましくは炭素数1〜6の
低級アルキル基を挙げることができ、より好ましくはt
ert−ブチル基が挙げられる。
【0023】本発明の一般式(I)において、オキソ環
は、上記Zで表される脂環式炭化水素基とスピロ炭化水
素を構成するものであり、スピロ原子に2つのペルオキ
シ基が結合した1,2,4,5−テトロキサン環を有す
る7〜13員環の脂環式炭化水素であれば、特に限定さ
れるものではない。
【0024】上記一般式(I)におけるオキソ環に結合
する置換基としては、R0で表される水溶性の官能基が
直接又は炭素鎖を介してオキソ環に結合されるものであ
れば、特に限定されるものではないが、一般式(I)
中、R0で表される水溶性の官能基として、水酸基、カ
ルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若し
くは置換基を有してもよいカルバモイル基等が好まし
い。これらの官能基が、カルボキシ基、アルコキシカル
ボニル基、又は未置換若しくは置換基を有してもよいカ
ルバモイル基の場合は、オキソ環に直接、あるいは炭素
鎖を介してその末端に結合されるものが好ましく、水酸
基の場合は、炭素鎖の末端に結合されてオキソ環に結合
されるものが好ましい。これらの水溶性の官能基R0
炭素鎖を介してオキソ環に結合される場合の炭素鎖とし
ては、一般式(I)中、R0が水酸基を表すときnが1
〜10のいずれかの整数を表すことが好ましく、具体的
には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブ
チレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−
ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n
−デシレン基の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げら
れ、一般式(I)中、R 0がカルボキシ基、アルコキシ
カルボニル基、又は未置換若しくは置換基を有していて
もよいカルバモイル基のいずれかを表すときnは0〜9
のいずれかの整数を表すことが好ましく、具体的には、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン
基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチ
レン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基の炭素数9
以下のアルキレン基が挙げられ、このような置換基を有
する一般式(I)で表される化合物は、オリーブオイル
等の有機性液体に対する溶解度が向上される。かかる炭
素鎖のうちでは、特に、炭素数の小さいものほど、一般
式(I)で表される化合物の水溶性を向上することがで
きるため、好ましい。
【0025】上記一般式(I)におけるオキソ環に結合
する置換基は、オキソ環中のペルオキシ基に対して、α
位又はβ位、即ち、1,2,4,5−テトロキサン環の
6位又は7位に結合するのが好ましく、この位置に置換
基が結合された一般式(I)で表される化合物は、オキ
ソ環の員環数が大きいものであっても溶媒に対する溶解
性が向上される。
【0026】また、上記一般式(I)におけるR0で表
される官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アルコ
キシカルボニル基、カルバモイル基等であることが好ま
しく、アルコキシカルボニル基としては、特に制限され
るものではないが、一般式(II)中、R1が未置換若し
くは置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル
基を有するアルコキシカルボニル基であることが好まし
い。このようなアルコキシカルボニル基として、メトキ
シカルボニル基、エトキシカルボニル基、iso−プロピ
ルオキシカルボニル基等を挙げることができ、また、置
換基としてメチル基、エチル基等の低級アルキル基を挙
げることができ、このような置換基を有するアルコキシ
カルボニル基として、具体的には、tert−ブトキシ
カルボニル基等を例示することができる。
【0027】また、上記一般式(I)におけるR0で表
される官能基として未置換若しくは置換基を有していて
もよいカルバモイル基は、特に制限されるものではない
が、一般式(III)中、R2及びR3がそれぞれ独立し
て、水素原子、未置換若しくは置換基を有していてもよ
いメチル基、エチル基を有するカルバモイル基であるこ
とが好ましい。このようなカルバモイル基として、具体
的には、R2及びR3が共に水素原子である未置換のカル
バモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメ
チルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,
N−ジエチルカルバモイル基、N,N−メチルエチルカ
ルバモイル基等を例示することができる。メチル基、エ
チル基の置換基としては水酸基等が挙げられ、置換基を
有するカルバモイル基として、具体的には、N−ヒドロ
キシメチルカルバモイル基、N,N−ビス(ヒドロキシ
メチル)カルバモイル基、N−ヒドロキシエチルカルバ
モイル基、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)カルバモ
イル基、N,N−ヒドロキシメチルヒドロキシエチルカ
ルバモイル基等を例示することができる。カルバモイル
基を有する一般式(I)で表される化合物は、水酸基を
有する一般式(I)で表される化合物と比較して一般に
水溶性は低下するが、N,N−ビス(ヒドロキシエチ
ル)カルバモイル基を有するものは水溶性が著しく改善
され、酸性から中性水に対しても溶解性が向上されるた
め、好ましい。
【0028】また、上記一般式(I)におけるR0で表
される官能基としては、一般式(I)中、R0が水酸基
を表す場合における一般式(I)で表されるアルコール
がジカルボン酸によりエステル化された化合物における
モノエステル基であって、一般式(IV)で表される官能
基であることが好ましい。一般式(IV)中、Yはアルキ
ル基であることが好ましく、かかる官能基は、一般式
(I)中、R0が水酸基を表す場合における一般式
(I)で表されるアルコールと脂肪族飽和ジカルボン酸
とが結合して形成されるエステル基であり、かかるエス
テル基を形成する脂肪族飽和ジカルボン酸としては、シ
ュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン
酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン
酸等を挙げることができるが、特に、一般式(IV)中、
Yがエチレン基、テトラエチレン基、ヘキサメチレン基
のいずれかで表される炭素数が2,4,6であるエステ
ル基をそれぞれ形成するコハク酸、アジピン酸、スベリ
ン酸等の偶数酸が好ましい。
【0029】また、上記一般式(IV)で表される官能基
として、Yが一般式(V)で示されるエステル基を表す
ことが好ましい。かかる官能基は、一般式(I)中、R
0が水酸基を表す場合における一般式(I)で表される
アルコールと脂肪族不飽和ジカルボン酸とが結合して形
成されるエステル基であり、かかるエステル基を形成す
る脂肪族不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フ
マル酸等を挙げることができる。
【0030】更に、上記一般式(IV)で表される官能基
として、Yがフェニレン基を表すことが好ましい。かか
る官能基は、一般式(I)中、R0が水酸基を表す場合
における一般式(I)で表されるアルコールと芳香族ジ
カルボン酸とが結合して形成されるエステル基であり、
かかるエステル基を形成する芳香族ジカルボン酸として
は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げる
ことができる。
【0031】また、本発明の新規化合物の薬学的に許容
し得る塩としては、上記の化合物と薬学的に許容し得る
塩であれば、特に制限されるものではないが、上記一般
式(I)で表される化合物が塩となることにより、これ
らの化合物の水溶性が向上されるものであればいずれの
ものであってもよく、上記一般式(I)中、R0がカル
ボキシ基、若しくはアルコキシカルボニル基、又は一般
式(IV)で示されるエステル基を表すいずれかの化合物
の薬学的に許容し得る塩が好ましく、かかる塩として
は、上記一般式(I)中、R0がカルボキシ基、若しく
はアルコキシカルボニル基、又は一般式(IV)で示され
るエステル基を表すいずれかの化合物が、ナトリウムイ
オン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウ
ムイオン等の塩基とそれぞれ結合した、ナトリウム塩、
カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を挙げる
ことができる。かかる塩は、化合物の水溶性を著しく向
上させることができ、特に一般式(I)中、R0が一般
式(IV)で示されるエステル基を表す化合物のナトリウ
ム塩は水溶性の向上が顕著であり、好ましい。
【0032】このような一般式(I)で表される化合物
として、具体的には、9−ヒドロキシメチル−7,8,
11,12−テトラオキサスピロ[5.6]ドデカン、
9−カルボキシ−7,8,11,12−テトラオキサス
ピロ[5.6]ドデカン、9−メトキシカルボニル−
7,8,11,12−テトラオキサスピロ[5.6]ド
デカン、9−カルバモイル−7,8,11,12−テト
ラオキサスピロ[5.6]ドデカン、9−(N,N−ビ
スヒドロオキシエチル)カルバモイル−7,8,11,
12−テトラオキサスピロ[5.6]ドデカン、6−
(7,8,11,12−テトラオキサスピロ[5.6]
ドデシ−9−イル)ヘキサン−1−オール、5−(7,
8,11,12−テトラオキサスピロ[5.6]ドデシ
−9−イル)ペンタン−1−カルボン酸、5−(7,
8,11,12−テトラオキサスピロ[5.6]ドデシ
−9−イル)ペンタン−1−カルボン酸メチル、5−
(7,8,11,12−テトラオキサスピロ[5.6]
ドデシ−9−イル)ペンタン−1−カルボキサミド、5
−(7,8,11,12−テトラオキサスピロ[5.
6]ドデシ−9−イル)ペンタン−1−(N,N−ビス
ヒドロオキシエチル)アミド、10−ヒドロキシメチル
−7,8,12,13−テトラオキサスピロ[5.7]
トリデカン、10−カルボキシ−7,8,12,13−
テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10−メト
キシカルボニル−7,8,12,13−テトラオキサス
ピロ[5.7]トリデカン、10−カルバモイル−7,
8,12,13−テトラオキサスピロ[5.7]トリデ
カン、10−(N,N−ビスヒドロオキシエチル)カル
バモイル−7,8,12,13−テトラオキサスピロ
[5.7]トリデカン、6−(7,8,12,13−テ
トラオキサスピロ[5.7]トリデシ−10−イル)ヘ
キサン−1−オール、5−(7,8,12,13−テト
ラオキサスピロ[5.7]トリデシ−10−イル)ペン
タン−1−カルボン酸、5−(7,8,12,13−テ
トラオキサスピロ[5.7]トリデシ−10−イル)ペ
ンタン−1−カルボン酸メチル、5−(7,8,12,
13−テトラオキサスピロ[5.7]トリデシ−10−
イル)ペンタン−1−カルボキサミド、5−(7,8,
12,13−テトラオキサスピロ[5.7]トリデシ−
10−イル)ペンタン−1−(N,N−ビスヒドロオキ
シエチル)アミド等を例示することができる。
【0033】更に、一般式(I)で表される化合物とし
て、具体的には、11−ヒドロキシメチル−8,9,1
3,14−テトラオキサスピロ[6.7]テトラデカ
ン、11−カルボキシ−8,9,13,14−テトラオ
キサスピロ[6.7]テトラデカン、11−メトキシカ
ルボニル−8,9,13,14−テトラオキサスピロ
[6.7]テトラデカン、11−カルバモイル−8,
9,13,14−テトラオキサスピロ[6.7]テトラ
デカン、11−(N,N−ビスヒドロオキシエチル)カ
ルバモイル−8,9,13,14−テトラオキサスピロ
[6.7]テトラデカン、6−(8,9,13,14−
テトラオキサスピロ[6.7]テトラデシ−11−イ
ル)ヘキサン−1−オール、5−(8,9,13,14
−テトラオキサスピロ[6.7]テトラデシ−11−イ
ル)ペンタン−1−カルボン酸、5−(8,9,13,
14−テトラオキサスピロ[6.7]テトラデシ−11
−イル)ペンタン−1−カルボン酸メチル、5−(8,
9,13,14−テトラオキサスピロ[6.7]テトラ
デシ−11−イル)ペンタン−1−カルボキサミド、5
−(8,9,13,14−テトラオキサスピロ[6.
7]テトラデシ−11−イル)ペンタン−1−(N,N
−ビスヒドロオキシエチル)アミド、4−ヒドロキシメ
チル−1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.9]
ヘプタデカン、4−カルボキシ−1,2,6,7−テト
ラオキサスピロ[7.9]ヘプタデカン、4−メトキシ
カルボニル−1,2,6,7−テトラオキサスピロ
[7.9]ヘプタデカン、4−カルバモイル−1,2,
6,7−テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデカン、
4−(N,N−ビスヒドロオキシエチル)カルバモイル
−1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.9]ヘプ
タデカン、6−(1,2,6,7−テトラオキサスピロ
[7.9]ヘプタデシ−4−イル)ヘキサン−1−オー
ル、5−(1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.
9]ヘプタデシ−4−イル)ペンタン−1−カルボン
酸、5−(1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.
9]ヘプタデシ−4−イル)ペンタン−1−カルボン酸
メチル、5−(1,2,6,7−テトラオキサスピロ
[7.9]ヘプタデシ−4−イル)ペンタン−1−カル
ボキサミド、5−(1,2,6,7−テトラオキサスピ
ロ[7.9]ヘプタデシ−4−イル)ペンタン−1−
(N,N−ビスヒドロオキシエチル)アミド等を例示す
ることができる。
【0034】更に、一般式(I)で表される化合物とし
て、具体的には、4−ヒドロキシメチル−1,2,6,
7−テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4−
カルボキシ−1,2,6,7−テトラオキサスピロ
[7.11]ノナデカン、4−メトキシカルボニル−
1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノナ
デカン、4−カルバモイル−1,2,6,7−テトラオ
キサスピロ[7.11]ノナデカン、4−(N,N−ビ
スヒドロオキシエチル)カルバモイル−1,2,6,7
−テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、6−
(1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノ
ナデシ−4−イル)ヘキサン−1−オール、5−(1,
2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ
−4−イル)ペンタン−1−カルボン酸、5−(1,
2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ
−4−イル)ペンタン−1−カルボン酸メチル、5−
(1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノ
ナデシ−4−イル)ペンタン−1−カルボキサミド、5
−(1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]
ノナデシ−4−イル)ペンタン−1−(N,N−ビスヒ
ドロオキシエチル)アミド、3−ヒドロキシメチル−
1,2,7,8−テトラオキサスピロ[8.11]イコ
サン、3−カルボキシ−1,2,7,8−テトラオキサ
スピロ[8.11]イコサン、3−メトキシカルボニル
−1,2,7,8−テトラオキサスピロ[8.11]イ
コサン、3−カルバモイル−1,2,7,8−テトラオ
キサスピロ[8.11]イコサン、3−(N,N−ビス
ヒドロオキシエチル)カルバモイル−1,2,7,8−
テトラオキサスピロ[8.11]イコサン、6−(1,
2,7,8−テトラオキサスピロ[8.11]イコシ−
3−イル)ヘキサン−1−オール、5−(1,2,7,
8−テトラオキサスピロ[8.11]イコシ−3−イ
ル)ペンタン−1−カルボン酸、5−(1,2,7,8
−テトラオキサスピロ[8.11]イコシ−3−イル)
ペンタン−1−カルボン酸メチル、5−(1,2,7,
8−テトラオキサスピロ[8.11]イコシ−3−イ
ル)ペンタン−1−カルボキサミド、5−(1,2,
7,8−テトラオキサスピロ[8.11]イコシ−3−
イル)ペンタン−1−(N,N−ビスヒドロオキシエチ
ル)アミド等や、これらのナトリウム塩、カリウム塩、
カルシウム塩、アンモニウム塩等を例示することができ
る。
【0035】また、一般式(I)におけるR0が水酸基
を表す化合物のエステルとして、具体的には、10−
(5'−カルボキシ−3'−オキソ−2'−オキシペンチ
ル)−7,8,12,13−テトラオキサスピロ[5.
7]トリデカン、10−(10'−カルボキシ−8'−オ
キソ−7'−オキシデシル)−7,8,12,13−テ
トラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10−(7'
−カルボキシ−3'−オキソ−2'−オキシヘプチル)−
7,8,12,13−テトラオキサスピロ[5.7]ト
リデカン、10−(12'−カルボキシ−8'−オキソ−
7'−オキシドデシル)−7,8,12,13−テトラ
オキサスピロ[5.7]トリデカン、10−(9'−カ
ルボキシ−3'−オキソ−2'−オキシノチル)−7,
8,12,13−テトラオキサスピロ[5.7]トリデ
カン、10−(14'−カルボキシ−8'−オキソ−7'
−オキシテトラデシル)−7,8,12,13−テトラ
オキサスピロ[5.7]トリデカン、10−(5'−カ
ルボキシ−5'−エン−3'−オキソ−2'−オキシペン
チル)−7,8,12,13−テトラオキサスピロ
[5.7]トリデカン、10−(10'−カルボキシ−
10'−エン−8'−オキソ−7'−オキシデシル)−
7,8,12,13−テトラオキサスピロ[5.7]ト
リデカン、10−(p−ベンゾイルカルボニル)−7,
8,12,13−テトラオキサスピロ[5.7]トリデ
カン、4−(5'−カルボキシ−3'−オキソ−2'−オ
キシペンチル)−1,2,6,7−テトラオキサスピロ
[7.11]ノナデカン、4−(10'−カルボキシ−
8'−オキソ−7'−オキシデシル)−1,2,6,7−
テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4−
(7'−カルボキシ−3'−オキソ−2'−オキシヘプチ
ル)−1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.1
1]ノナデカン、4−(12'−カルボキシ−8'−オキ
ソ−7'−オキシドデシル)−1,2,6,7−テトラ
オキサスピロ[7.11]ノナデカン、4−(9'−カ
ルボキシ−3'−オキソ−2'−オキシヘプチル)−1,
2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカ
ン、4−(14'−カルボキシ−8'−オキソ−7'−オ
キシテトラデシル)−1,2,6,7−テトラオキサス
ピロ[7.11]ノナデカン、4−(5'−カルボキシ
−5'−エン−3'−オキソ−4'−オキシペンチル)−
1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノナ
デカン、4−(10'−カルボキシ−10'−エン−8'
−オキソ−7'−オキシデシル)−1,2,6,7−テ
トラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4−(p−
ベンゾイルカルボニル)−1,2,6,7−テトラオキ
サスピロ[7.11]ノナデカンや、これらのナトリウ
ム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を
例示することができる。
【0036】このような一般式(I)で表される化合物
の製造方法は、特に限定されるものではないが、例え
ば、式(VI)に示すジカルボン酸のジエステル等を出発
物質(i)として、以下の工程により生成されるジハロ
ゲン化合物(viii)と、式(VII)に示す脂環式炭化水
素(ix)を出発物質として生成されるビスヒドロキシペ
ルオキシド化合物(x)とを結合してオキシ環を生成す
る製造方法によることができる。
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】ジエステル(i)と、末端にテトラヒドロ
ピラン−2−イルオキシ基(THPO)等のピランの誘
導体等の置換基を有するアルキル基R(THPO(CH
26)のハロゲン化物(ii)とを、ナトリウムをエタノ
ールに添加して得たナトリウムエトキシドのエタノール
溶液等の存在下で反応させ、ジカルボン酸のジエステル
に置換基Rを導入する(iii)(工程)。工程で用
いられるハロゲン化物(ii)は、文献記載の方法 [G. B
erube, P. Wheeler, C. H. J. Ford, M. Gallant, and
Z. Tsaltas, Can. J. Chem., 71, 1327 (1993)] により
合成することができ、ハロゲン化物としては、フッ素化
物、塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物等であってもよい
が、臭素化物が好ましい。工程の反応は20〜80℃
の温度範囲、好ましくは、50℃前後で行なうことがで
き、化合物(i)に対してハロゲン化物(ii)を1〜5
モル当量、好ましくは1〜2モル当量使用し、反応時間
は2〜5時間が好ましい。得られた化合物(iii)は、
通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再
結晶等により反応混合物から容易に単離精製することが
できる。
【0040】置換基Rが導入されたジカルボン酸のジエ
ステルを水素化リチウムアルミニウム(LAH)(iv)
の存在下、ジオール(v)とする(工程)。工程
は、エーテル等の溶媒の存在下で行なわれるのが好まし
く、反応温度は0〜50℃の範囲、好ましくは0℃前後
で行なうことができる。反応後、反応副生成物のアルミ
ニウム塩はセライトを用いた吸引濾過等で除去すること
ができる。反応に際しては、置換基Rが導入された化合
物(iii)に対して水素化リチウムアルミニウム(iv)
を1〜5モル当量、好ましくは2モル当量使用し、反応
時間は1〜5時間が好ましい。得られたジオール(v)
は、通常の方法、例えば、無水硫酸マグネシウム等で乾
燥し、溶媒を減圧留去し、例えばカラムクロマトグラフ
ィー等により反応混合物から容易に単離精製することが
できる。
【0041】得られたジオールにピリジン存在下、メタ
ンスルホニルクロリド(vi)を反応させ、ジメシラート
とする(vii)(工程)。反応温度は0〜40℃の範
囲、好ましくは0℃前後で行うことができる。反応に際
しては、ジオール(v)に対してメタンスルホニルクロ
リド(vi)を2〜10モル当量、好ましくは2〜8モル
当量使用し、反応時間は1〜4時間が好ましい。得られ
たジメシラート(vii)は、通常の方法、例えば、無水
硫酸マグネシウム等で乾燥し、カラムクロマトグラフィ
ー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製する
ことができる。
【0042】更に、工程で得られたジメシラートをア
ルカリ金属ハロゲン化物と反応させジハロゲン化物とす
る(viii)(工程)。工程の反応は、アルカリ金属
のハロゲン化物としてはヨウ化ナトリウムを用い、ジメ
チルホルムアミド等の溶媒の存在下で行なわれるのが好
ましく、アルカリ金属ハロゲン化物をジメチルホルムア
ミド等の溶媒に溶解させるために、50〜100℃の温
度範囲、好ましくは70℃前後に加温した後、30〜6
0℃の温度範囲、好ましくは50℃前後に降下させた
後、工程において得られたジメシラートを添加して、
反応させることができる。反応に際しては、ジメシラー
ト(vii)に対してアルカリ金属ハロゲン化物を2〜1
0モル当量、好ましくは2〜4モル当量使用し、反応時
間は2〜10時間が好ましい。得られたジハロゲン化合
物(viii)は、通常の方法、例えば、無水硫酸マグネシ
ウム等で乾燥し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等
により反応混合物から容易に単離精製することができ
る。
【0043】一方、式(VII)で表されるビスヒドロペ
ルオキシド化合物(x)の合成は、J.Org. Chem., 62, 4
949 (1997) 記載に準じた方法によることができる。す
なわち、メトキシメチレン基を有する脂環式炭化水素を
出発物質(ix)とし、化合物(ix)を過酸化水素存在
下、適当な溶媒中でオゾンと反応させることによりビス
ヒドロペルオキシド化合物(x)を得ることができる。
溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限は
なく、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル
等を例示でき、好ましくはエーテルである。反応に際し
ては、30〜100重量%の過酸化水素を使用すること
ができ、化合物(ix)に対して、過酸化水素を1〜10
モル当量、好ましくは1〜3モル当量使用し、オゾンを
0.5〜5モル当量、好ましくは1〜2モル当量使用す
ることができる。反応温度は−70〜20℃であること
が好ましく、反応時間は5〜30分とすることができ
る。得られたビスヒドロペルオキシド化合物(x)は、
通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再
結晶等により反応混合物から容易に単離精製することが
できるが、単離又は単離することなく上記方法により得
られるジメシラートとの反応に使用することができる。
【0044】上記方法によって得られたビスヒドロペル
オキシド化合物(x)とジハロゲン化物(viii)との反
応は、既報告の方法 [K. J. McCullough, Y. Nonami,
A. Masuyama, M. Nojima, H.-S. im, and Y. Wataya, T
etrahedron Lett., 40, 9151-9155 (1999)] に準じて行
なうことができる。即ち、式(VIII)で表される酸化銀
を含有する溶媒に、ビスヒドロペルオキシド化合物
(x)を含有する溶媒を添加して、0〜40℃の温度範
囲、好ましくは室温で反応させることができる。反応に
際しては、溶媒として、酢酸エチル等を使用することが
でき、ビスヒドロペルオキシド化合物(x)に対してジ
ハロゲン化物を1〜2モル当量、好ましくは1.5モル
当量使用し、反応時間は2〜15時間とすることができ
る。反応副生成物のハロゲン化銀はセライトを用いた吸
引濾過により除去し、溶媒は減圧留去し、置換基Rを有
するテトラキソ環化合物(xi)は、通常の方法、例え
ば、カラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混
合物から容易に単離精製することができる。
【0045】
【化13】
【0046】上記方法により得られるテトラキソ環化合
物(xi)の置換基Rに水酸基を導入するには、置換基R
が末端にテトラヒドロピラン−2−イルオキシル基等の
ピランの誘導体等を有するアルキル基である場合、酢酸
水溶液等の存在下、室温で末端基を水酸基に置換するこ
とができる。反応に際しては、テトラキソ環化合物(x
i)に対して酢酸を50〜500モル当量使用し、反応
時間は10〜30時間とすることができる。反応終了
後、反応副生成物のハロゲン化銀をセライトを用いた吸
引濾過により除去し、溶媒を減圧留去し、置換基Rの末
端に水酸基が導入されたヒドロキシアルキルテトラキソ
環化合物(xii)を得ることができる。ヒドロキシアル
キルテトラキソ環化合物(xii)は、通常の方法、例え
ば、無水硫酸マグネシウム等で乾燥し、カラムクロマト
グラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離
精製することができる。
【0047】更に、上記方法により得られたヒドロキシ
アルキルテトラキソ環化合物(xii)をコハク酸等のジ
カルボン酸によりエステル化して、一般式(IV)で表さ
れるエステルを製造することができる。ヒドロキシアル
キルテトラキソ環化合物(xii)と、ジカルボン酸の反
応は、硫酸、塩化水素等の酸触媒、あるいはピリジン等
塩基触媒の存在下等公知の方法に準じて行なうことがで
きる。反応は室温で行なうことができ、ヒドロキシアル
キルテトラキソ環化合物(xii)に対してジカルボン酸
を1〜2モル当量、好ましくは1.5モル当量使用し、
反応時間は10〜15時間とすることができる。
【0048】更に、一般式(I)で表される化合物の薬
学的に許容し得る塩の製造方法としては、上記方法によ
り得られたヒドロキシアルキルテトラキソ環化合物(xi
i)等を炭酸水素ナトリウム水溶液等一般式(I)で表
される化合物と塩を構成する金属イオン等を含有する水
溶液に添加、攪拌等の製造方法を挙げることができ、室
温であるいは、必要に応じて適宜加熱することもでき
る。
【0049】上記一般式(I)で表される化合物や、そ
の塩を、マラリア原虫類による感染症の予防、抑制及び
治療に使用する場合、上記の化合物やその塩の1種又は
2種以上を混合して適宜使用することができ、投与経路
としては、経口に限らず、水溶性が向上されるため、皮
下注射、静脈注射、局所投与等のいずれも選択すること
ができる。また、製剤としては、通常、製薬的に許容さ
れる担体、賦形剤、その他添加剤を用いて製造した散
剤、錠剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口
剤、点眼剤、注射剤、坐剤等の非経口剤を挙げることが
できる。製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加
剤としては、グルコース、ラクトース、ゼラチン、マン
ニトール、でんぷんペースト、トリケイ酸マグネシウ
ム、コーンスターチ、ケラチン、コロイド状シリカ等が
あり、さらには、安定剤、増量剤、着色剤及び芳香剤の
様な補助剤を含有してもよい。これらの製剤は、各々当
業者に公知慣用の製造方法により製造できる。
【0050】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定さ
れるものではない。 実施例1;2−[6−(テトラヒドロピラン−2−イル
オキシ)ヘキシル]マレイン酸ジエチルエステル(iii)
の合成 還流冷却管、滴下ロートを装備した300ml四つ口ナ
スフラスコにエタノール 75mlを入れ、次いで薄く
切ったナトリウム805mg(35.00mmol)を
徐々に加えた。このナトリウムエトキシドのエタノール
溶液を約50℃に保ち、マロン酸ジエチル5600mg
(35.00mmol)を滴下ロートを用いて約1時間
かけて滴下し、ついで文献記載の方法 [G. Berube, P.
Wheeler, C. H. J. Ford, M. Gallant, and Z. Tsalta
s, Can. J. Chem., 71, 1327 (1993)] により別途合成
した2−(6−ブロモヘキシルオキシ)テトラヒドロピ
ラン927mg(35.00mmol)を同様に約1時
間かけて滴下し、2時間還流撹拌した。反応終了後40
℃以下で溶媒を減圧留去し、残渣を水にあけ、エーテル
で二回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、40℃
以下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリカゲルカラム
クロマトグラフィーにより、ヘキサン−エーテル、8
5:15によって展開される留分として、ジエステル
(iii)9006mg(収率75%)を得た。 An oil; 1H NMR δ 1.27 (t, J = 7.3 Hz, 6 H), 1.3-
2.0 (m, 16 H), 3.31 (t,J = 6.6 Hz, 1 H), 3.38 (m,
1 H), 3.50 (m, 1 H), 3.74 (m, 1 H), 3.87 (m,1 H),
4.19 (q, J = 7.3 Hz, 4 H), 4.58 (t, J = 3.5 Hz, 1
H), 13C NMR δ14.02, 19.63, 25.41, 25.90, 27.21, 2
8.61, 29.00, 29.54, 30.69, 51.95, 61.19, 62.28, 6
7.44, 98.78, 169.51.
【0051】実施例2;2−[6−(テトラヒドロピラ
ン−2−イルオキシ)ヘキシル]プロパン−1,3−ジ
オール(v)の合成 還流冷却管、滴下ロートを装備した300ml四つ口ナ
スフラスコに水素化リチウムアルミニウム (以下、LA
Hと称する。)2280mg(60.00mmol)と
エーテル100mlの懸濁溶液を調製し、実施例1で得
られたジエステル(iii)10.32g(30mmo
l)を0℃でゆっくり滴下した後、1時間室温で撹拌し
た。反応終了後水酸化ナトリウム水溶液を加え、生じた
アルミニウム塩をセライトを用いた吸引濾過で除去し、
濾液をエーテルで二回抽出し、無水硫酸マグネシウムで
乾燥し、40℃以下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリ
カゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン−エ
ーテル、0:100によって展開される留分として、ジ
オール(v)5123mg(収率66%)を得た。 An oil; 1H NMR δ 1.2-1.9 (m, 17 H), 2.44 (br s, 2
H), 3.35 (d, J = 6.6Hz, 2 H), 3.38 (m, 1 H), 3.41
(d, J = 6.6 Hz, 2 H), 3.50 (m, 1 H), 3.74(m, 1
H), 3.87 (m, 1H), 4.57 (t, J = 3.5 Hz, 1 H), 13C N
MR δ 19.54, 25.29, 25.93, 26.96, 27.53, 29.47, 2
9.53, 30.59, 41.76, 62.32, 65.70, 67.53, 98.80.
【0052】実施例3;2−メタンスルホニルオキシメ
チル−8−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)オ
クチルエステル(vii)の合成 100mlナスフラスコに実施例2で得られたジオール
(v)3640mg(14.00mmol)、メタンス
ルホニルクロリド3220mg(28.00mmol)
を加え、0℃ でピリジン4424mg(56.00m
mol)をゆっくり滴下し、1時間室温で撹拌した。反
応終了後10%塩酸にあけ、エーテルで二回抽出し、飽
和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した
後、40℃以下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン−酢酸エ
チル、65:35によって展開される留分として、ジメ
シラート(vii)4333mg(収率74%)を得た。 An oil; 1H NMR δ 1.2-1.9 (m, 17 H), 3.05 (s, 6
H), 3.38 (m, 1 H), 3.50(m, 1 H), 3.74 (m, 1 H), 3.
87 (m, 1 H), 4.21 (d, J = 6.6 Hz, 2 H), 4.27(d, J
= 6.6 Hz, 2 H), 4.57 (t, J = 3.5 Hz, 1 H), 13C NMR
δ 19.70, 25.41, 25.99,26.47, 26.88, 29.29, 29.5
6, 30.73, 37.25, 38.12, 62.41, 67.44, 68.16, 98.8
9.
【0053】実施例4;2−(8−イオド−7−イオド
メチルオクチルオキシ)テトラヒドロピラン(viii)の
合成 100mlナスフラスコにジメチルホルムアミド(DM
F)100mlとヨウ化ナトリウム4500mg(3
0.00mmol)を加え、70℃に加温し、ヨウ化ナ
トリウムを完全に溶かした後、50℃ まで冷却し、実
施例3で得られたジメシラート(vii)4160mg
(10.00mmol) を加え、2時間室温で撹拌し
た。反応終了後、水を加え5分撹拌した後、エーテルで
三回抽出し、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウム
で乾燥し、40℃ 以下で溶媒を減圧留去した。シリカ
ゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン−エー
テル、95:5によって展開される留分として、ジヨー
ジド(viii)2810mg(収率59%)を得た。 An oil; 1H NMR δ 1.2-1.9 (m, 17 H), 3.19 (d, J =
6.0 Hz, 2 H), 3.23 (d,J = 6.0 Hz, 2 H),3.38 (m, 1
H), 3.50 (m, 1 H), 3.74 (m, 1 H), 3.87 (m,1 H), 4.
57 (t, J = 3.5 Hz, 1 H), 13C NMR δ 14.25, 19.59,
25.38, 25.95,26.70, 29.15, 29.51, 30.64, 34.13, 4
0.34, 63.25, 67.37, 98.71.
【0054】実施例5;(シクロドデシリデン)ビスヒ
ドロペルオキシド(x)の合成 斉藤等の方法(Saito,I.;Nagata,R.;Yuba,K.;Mat
uura,T.TetrahedronLett.1983,24,1737)で調整し
た過酸化水素2.5molのエーテル溶液25mlに公
知化合物であるメトキシメチレンシクロドデカン630
mg(3.00mmol)を溶かし、−70℃でオゾン
化を行った。オゾン化は通常のオゾン化装置(Nipp
on Ozone Model ON−1−2(日本オゾ
ン株式会社製)を使い、15分間50l/hrの流速で
酸素を吹き込むことにより、使用したメトキシメチレン
シクロドデカンと等量のオゾンを発生させて行なった。
反応終了後、70mlのエーテルを加え、有機層を重曹
水、次いで飽和食塩水で洗った後、無水硫酸マグネシウ
ムで乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー
により、エーテル−ヘキサン、2:8によって展開され
る留分として、ビスヒドロペルオキシド(x)232m
g(収率33%)得た。 mp. 140−141℃, 1H NMR (CDC13) δ 1.2-1.8 (m, 22
H), 8.13 (brs, 2H), 13CNMR (CDC13) δ 19.28,21.8
6,22.15,6.02,26.19,26.29,112.64.
【0055】実施例6;(4−tert−ブチルシクロヘキ
シリデン)ビスヒドロペルオキシド(x)の合成 実施例5と同様に調整した過酸化水素を含むエーテル溶
液25mlに4−tert−ブチル−2−メトキシメチレン
シクロヘキサン546mg(3.00mmol)を溶か
し、−70℃でオゾン化を行った。反応終了後、上記実
施例5と同様の方法で処理した後、シリカゲルカラムク
ロマトグラフィーにより、エーテル−ヘキサン、2:8
によって展開される留分として、ビスヒドロペルオキシ
ド(x)285mg(収率47%)を得た。 mp. 83−84℃ (ether−hexane), 1H NMR (CDC13) δ
0.87 (s, 9H), 1.1-1.8(m, 9H), 9.27 (s, 2H), 13C
NMR (CDC13) δ 23.32, 27.58, 29.70, 32.31, 4
7.39, 110.00. Anal.Clacd. for C10H20O4: C, 5
8.80, H, 9.87. Found: C, 58.87, H, 9.80.
【0056】実施例7;(2−アダマンチリデン)ビス
ヒドロペルオキシド(x)の合成 実施例5と同様に調整した過酸化水素を含むエーテル溶
液25mlに2−メトキシメチレンアダマンタン712
mg(4.00mmol)を溶かし、−70℃でオゾン
化を行った。反応終了後、実施例5と同様の方法で処理
した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、
エーテル−ヘキサン、2:8によって展開される留分と
して、ビスヒドロペルオキシド(x)335mg(収率
42%)を得た。 mp. 144−145℃ (ether−hexane), 1H NMR (CDC13) δ
1.7−2.1 (m, 14H),8.82 (s, 22H), 13C NMR (CDC1
3) δ 26.94, 31.14, 33.68, 33.98, 112.88, 3
3.98, 37.25, 73.94, 109.95.
【0057】実施例8;4−[6−(テトラヒドロピラ
ン−2−イルオキシ)]−1,2,6,7−テトラオキ
サスピロ[7.11]ノナデカン(xi)の合成 既報告の方法 [K. J. McCullough, Y. Nonami, A. Masu
yama, M. Nojima, H.-S.Kim, and Y. Wataya, Tetrahed
ron Lett., 40, 9151-9155 (1999)] を参照して合成し
た。すなわち、窒素雰囲気下、50mlナスフラスコ内
で酸化銀8464mg(2.00mmol)の5ml酢
酸エチル懸濁溶液に、室温で撹拌しながら、文献記載の
方法 [T. Ledaal and T. Solbjoer, Acta Chem. Scan
d., 21, 1658 (1967)] により別途合成したシクロドデ
シリデンビスヒドロペルオキシド232mg(1.00
mmol)の酢酸エチル溶液5mlを滴下し、次いで、
実施例4で得られたジヨージド(viii)720mg
(1.50mmol)の酢酸エチル溶液5mlを滴下
し、室温で15時間撹拌した。反応終了後、セライトを
用いた吸引濾過で副生するヨウ化銀を除去し、40℃以
下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリカゲルカラムクロ
マトグラフィーにより、ヘキサン−エーテル、95:5
によって展開される留分として、分解生成物のシクロド
デカノン70mg(収率38%)が得られ、次いで、ヘ
キサン−エーテル、92:8によって展開される留分と
して、テトロキソカン(xi)181mg(収率40%)
を得た。 mp. 42−44℃(hexane), 1H NMR δ 1.2-1.8 (m, 38H),
2.4−2.5 (m, 1H), 3.38 (m, 1H), 3.50 (m, 1H),
3.6−3.7 (m, 2H), 3.83 (m, 1H), 4.0−4.2 (m,
2H), 4.35 (m, 1H), 4.57 (t, J = 3.5 Hz, 1H),
13C NMRδ 19.12, 19.39, 19.68, 21.85, 22.14,
25.45, 25.86, 26.00, 26.06, 26.18, 26.40, 2
7.05, 29.62, 30.73, 40.00, 62.37, 67.51, 7
9.17, 98.85, 112.09. Anal. Calcd. for C26H48
O6: C, 68.38, H, 10.60. Found: C, 68.10, H, 1
0.47.
【0058】実施例9;6−(1,2,6,7−テトラ
オキサスピロ[7.11]ノナデシ−4−イル)ヘキサン
−1−オール(xii)の合成 50mlナスフラスコに実施例8で得られたテトロキソ
カン(xi)228mg(0.50mmol)と酢酸4m
l、THF2ml、水1mlを加え、室温で15時間撹
拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム水溶液にあけ、エ
ーテルで二回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫
酸マグネシウムで乾燥し、40℃以下で溶媒を減圧留去
した。残渣のシリカゲルカラムクロマトグラフィーによ
り、ヘキサン−エーテル、90:10によって展開され
る留分として、未反応原料であるテトロキソカン40m
g(添加量の20%)が得られ、次いでヘキサン−エー
テル、68:32によって展開される留分として、アル
コール(xii)140mg(収率75%)を得た。 mp.52-54℃ (hexane−ether), 1H NMR δ 1.2-1.8 (m,
32H), 2.16 (m, 1H), 2.45 (br s, 1H), 3.64 (t, J =
6.6Hz, 2H), 3.70 (m, 2H), 4.0-4.2 (m, 1H),4.3-4.4
(m, 1H), 13C NMR δ 19.23, 19.98, 21.73, 22.01, 2
5.45, 25.72, 25.86, 26.04, 26.96, 28.90, 32.40, 3
9.86, 62.46, 78.98, 111.95. Anal. Calcd. for C21H
40O5: C, 67.70, H, 10.82. Found: C, 67.44, H, 10.5
9.
【0059】実施例10;環状ペルオキシド化合物及び
誘導体の溶解度 実施例9で得られた6−(1,2,6,7−テトラオキ
サスピロ[7.11]ノナデシ−4−イル)ヘキサン−1
−オール(N251)、5−(1,2,6,7−テトラ
オキサスピロ[7.11]ノナデシ−4−イル)ペンタン
−1−カルボン酸(N251−1)、コハク酸モノ−
[6−(1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.1
1]ノナデシ−4−イル)ヘキシル]エステル(N251
−2)、比較例として、1,2,6,7−テトラオキサ
スピロ[7.11]ノナデカン(N89)、アルテミシニ
ン(Artemisinin)、アルテスネ−ト(Artesunate、商
品名:Guilin No.2 Pharmaceutical Factory,Guang
xi, China)について、5%重曹水、ジメチルスルホキ
シド(DMSO)に対する溶解度を測定した。結果を表
1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】実施例11;熱帯熱マラリア原虫の培養検
定試験 熱帯熱マラリア原虫としてP. falciparum FCR−3株
(ATCC30932)及び抗マラリア剤として市販さ
れているクロロキンの耐性株に対する本発明化合物の効
果を検証するためにP. falciparum K−1株のクロロキ
ン耐性マラリア原虫を用いた。実験に用いた培地は、濾
過滅菌したRPMI 1640培地(pH7.4)で、
ヒト血清を10%となるように添加した。マラリア原虫
の培養はO2濃度5%、CO2濃度5%、N2濃度90
%、温度は36.5℃で行った。ヘマトクリット値(赤
血球浮遊液中に占める赤血球の体積の割合)は5%と
し、培養開始時の熱帯熱マラリア原虫の初期感染率は
0.1%とした。24ウエル培養プレートを用いて培養
し、培地は毎日交換し、感染率4%で植え継ぎを行っ
た。感染率は薄層塗沫標本を作成し、ギムザ染色あるい
はDiff−Qick染色を行った後、顕微鏡(油浸、
1000×)下で計測し、マラリア原虫感染率を下記式
より算出した。 マラリア原虫感染率(%)={(感染赤血球数)/(総
赤血球数)}×100
【0062】実施例12;マラリア原虫増殖阻害スクリ
ーニング試験 培養したマラリア原虫感染赤血球を遠心で集め、血清を
含む培地で洗浄を行った後、非感染赤血球を加え、初期
感染率を0.3%とした。この時のヘマトクリット値は
3%である。実施例9で得られた6−(1,2,6,7
−テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ−4−イル)
ヘキサン−1−オール(N251)、比較例として、
1,2,6,7−テトラオキサスピロ[7.11]ノナデ
カン(N89)、クロロキン、アルテミシニン(artemi
sinin)を供試サンプルとし、これらの供試サンプルを
滅菌水、ジメチルホルムアミド(DMF)あるいはジメ
チルスルホキシド(DMSO)に溶解し、所定濃度のサ
ンプル液とした。かかるサンプル液を24ウエル培養プ
レートに試験液を5〜10μlずつ加えた。各供試サン
プルについて、2〜3回の試験を行なった。また、コン
トロールとして、滅菌水、DMF及びDMSOを10μ
l/ウエル加えた。次に、あらかじめ所定濃度に調製し
た熱帯熱マラリア原虫培養液又はクロロキン耐性マラリ
ア原虫をそれぞれ990〜995μlずつ加え、静かに
ピペッティングを行い培地に一様に懸濁させた。培養プ
レートはCO2−O2−N2(5%、5%、90%)イン
キュベーター中で72時間培養した後、それぞれのウエ
ルについて薄層塗沫標本を作成し、ギムザ染色あるいは
Diff−Qick染色を行なった後、顕微鏡(油浸、
1,000×)下で計測し、試薬を加えたものの感染率
及びコントロールの感染率を算出した。上記で求めたマ
ラリア原虫感染率から次式より増殖率を算出した。 増殖率(%)={([b]−[a])/([c]−[a])}×
100 a:初期感染率 b:試験液添加時の感染率 c:コントロールの感染率 算出した増殖率から、マラリア原虫に対する50%増殖
阻害濃度EC50値を求めた。尚、EC50値はマラリア原
虫の培地にサンプル液を添加していないコントロールの
増殖率を100%とし、サンプル液の添加によってコン
トロールのマラリア原虫感染率を50%阻害するサンプ
ルの濃度をモル濃度で表示した値である。結果を表2に
示す。
【0063】実施例13;マウスFM3A細胞増殖阻害
試験 マウス乳がん由来FM3A細胞の野生株であるF28−
7株を用いた。培地はES培地に非動化した胎児牛血清
を2%となるように添加し、CO2濃度5%、37℃で
培養した。この条件下でのFM3A細胞の倍加時間は約
12時間であった。前培養を行い、対数増殖期に入った
細胞を5×104cells/mlになるように培地で
希釈した。サンプルはマラリア原虫の抗マラリア活性測
定時に調製したものを用いた。24ウエル培養プレート
に実施例11で調製したサンプル液を5〜10μlずつ
加えた。各供試サンプルについて2〜3回の試験を行な
った。また、コントロールとして滅菌水、DMF及びD
MSOを各10μl加えたウエルも同時に試験した。次
に、用意しておいた培養細胞浮遊液を990〜995μ
lずつ加え、培地等を加えると供試サンプルの最終濃度
は1×10-4〜1×10-6Mとなった。静かにピペッテ
ィングを行い培地に一様に懸濁させた。48時間培養し
た後、それぞれのウエルについて細胞数をセルコントロ
ーラー(CC−108、Toa Medical Ele
ctrics社製)で計数した。計測した細胞数から、
次式より増殖率を算出した。 増殖率(%)={([C]−[A])/([B]−[A])}×
100 A:初期細胞数 B:48時間後のコントロールの細胞数 C:サンプル添加した48時間後の細胞数 算出した増殖率から、細胞増殖阻害濃度IC50値を求
め、細胞増殖阻害活性としてサンプルの細胞毒性を評価
した。細胞増殖阻害濃度IC50値は、FM3A細胞の培
地にサンプル液を添加していないコントロールを添加し
たときの増殖率を100%とし、サンプル液の添加によ
ってコントロールの増殖率を50%阻害するサンプルの
濃度をモル濃度で表示した値である。結果を表2に示
す。
【0064】実施例14;薬効判定 サンプルの抗マラリア作用の評価は、マラリア原虫に対
する選択毒性の指標として用いられる化学療法係数に基
づいて行った。化学療法係数は、マウスFM3A細胞に
対する各供試サンプルのIC50値に対するマラリア原虫
に対する各供試サンプルのEC50値の比として次式によ
って算出し、求めた値から薬効判定を行った。結果を表
2に示す。 化学療法係数=(マウスFM3A細胞に対するサンプル
のIC50値)÷(マラリア原虫に対するサンプルのEC
50値)
【0065】
【表2】
【0066】以上の結果より、本発明化合物は、選択毒
性が従来のものと比べ良好であり、マラリア原虫増殖阻
害活性を有し、優れた薬効を有することが判明した。し
かも、クロロキン耐性熱帯熱マラリア原虫に対しても優
れた抗マラリア活性を有することが判明した。
【0067】実施例15;ネズミマラリア原虫感染マウ
スを用いた原虫抑制試験 本実験はPeters,W.and Richrds,W.H.G.Antimalar
ial drugs I,in:W.Peters,W.H.G.Richards(Ed
s.),Springer-Verlag,Berlin,1984,pp.229-230
に記載の4-day suppressive testに準じて行った。用い
たネズミマラリア原虫(P. berghei NK65株)は強毒原
虫株で、このネズミマラリア原虫を感染させるとマウス
は感染してから10日以内に全部死亡する。継代してい
るネズミマラリア原虫感染マウスの血中感染率が10%
となった時点で実験を開始した。エーテル麻酔を行った
マウスの心臓採血を行い、リン酸緩衝生理食塩水1ml
あたり5×106原虫/mlとなるように調製した原虫
浮遊液を、感染していないマウスに200μl腹腔内感
染(i.p.)した。原虫感染2時間後、オリーブ油に懸濁
した化合物を経口投与又は腹腔内投与した。投与期間
は、1日1回を連続4日間行い、実験開始4日目にマウ
スの尾より採血する。採血した血液で薄層塗抹標本を作
製し、実施例11と同様の方法によりギムザ染色により
顕微鏡下で赤血球感染率を求めた。溶媒のみを投与した
コントロール群に対する薬剤投与群の感染率の割合を調
べることで50%原虫抑制濃度ED50値と90%原虫抑
制濃度ED90値を求めた。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】本発明の化合物は、原虫抑制濃度につい
て、mg/kg及びモル濃度表示でも化合物N89より
優れており、in vivoにおいても優れたマラリア原虫増
殖抑制活性を有することが判明した。
【0070】
【発明の効果】本発明の新規化合物は、抗マラリア剤と
して適用することができ、本発明の抗マラリア剤は、優
れた抗マラリア活性を備え副作用も少なく、特に、薬剤
耐性マラリア原虫に対して顕著な抗マラリア活性を有す
ると共に、オリーブオイル等の有機溶媒のみならず、水
に対する溶性を向上することができ、経口薬のみでな
く、注射液としても使用することができ、適用範囲を著
しく拡張することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C022 NA08 4C086 AA01 AA02 AA03 BA16 MA01 MA04 NA14 ZB38

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 [式中、Zは未置換若しくは置換基を有してもよい脂環
    式炭化水素基を表し、R 0は水溶性の官能基を表し、m
    は0〜6のいずれかの整数を表し、nは0〜10のいず
    れかの整数を表す。]で示される化合物。
  2. 【請求項2】 一般式(I)中、Zが置換基として低級
    アルキル基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式
    炭化水素基を表すことを特徴とする請求項1記載の化合
    物。
  3. 【請求項3】 一般式(I)中、Zが6員環、7員環、
    10員環又は12員環のいずれかを表すことを特徴とす
    る請求項1又は2記載の化合物。
  4. 【請求項4】 一般式(I)中、R0が水酸基、カルボ
    キシ基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若しくは
    置換基を有してもよいカルバモイル基のいずれかを表
    し、nはR0が水酸基を表すとき1〜10のいずれかの
    整数、R0がカルボキシ基、アルコキシカルボニル基、
    又は未置換若しくは置換基を有してもよいカルバモイル
    基のいずれかを表すとき0〜9のいずれかの整数を表す
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の化合
    物。
  5. 【請求項5】 一般式(I)中、R0が、一般式(II) 【化2】 [式中、R1は未置換若しくは置換基を有していてもよ
    い炭素数1〜3のアルキル基を表す。]で示されるアル
    コキシカルボニル基を表すことを特徴とする請求項4記
    載の化合物。
  6. 【請求項6】 一般式(I)中、R0が、一般式(III) 【化3】 [式中、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、未
    置換若しくは置換基を有していてもよいメチル基又はエ
    チル基を表す。]で示されるカルバモイル基を表すこと
    を特徴とする請求項4記載の化合物。
  7. 【請求項7】 一般式(III)中、R2及びR3が、それ
    ぞれ独立して置換基を有していてもよいメチル基又はエ
    チル基を表すことを特徴とする請求項6記載の化合物。
  8. 【請求項8】 一般式(I)中、R0が、一般式(IV) 【化4】 を表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の
    化合物。
  9. 【請求項9】 一般式(IV)中、Yが、アルキレン基を
    表すことを特徴とする請求項8記載の化合物。
  10. 【請求項10】 アルキレン基がエチレン基、テトラメ
    チレン基、ヘキサメチレン基のいずれかを表すことを特
    徴とする請求項9記載の化合物。
  11. 【請求項11】 一般式(IV)中、Yが、一般式(V) 【化5】 を表すことを特徴とする請求項8記載の化合物。
  12. 【請求項12】 一般式(IV)中、Yが、フェニレン基
    を表すことを特徴とする請求項8記載の化合物。
  13. 【請求項13】 請求項1〜12に記載される化合物の
    薬学的に許容し得る塩。
  14. 【請求項14】 請求項1〜12に記載される化合物、
    及び/又は請求項13に記載される塩を有効成分として
    含有することを特徴とする抗マラリア剤。
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