JP2003334633A - 段付き軸形状品の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属材料を鍛造して片フランジ型の段付き軸
形状品を製造するに当り、効率がよく、したがって所要
時間が短く、製品品質がすぐれ、材料歩留まりが高い、
２個取りおよび４個取りの製造方法を提供すること。 【解決手段】 ２個取りの方法は、適宜の長さの鍛造素
材（１）を用意し、この素材の両端（５Ａ，５Ｂ）を所
定の長さだけフランジ部分として残し、フランジ部分以
外の部分すなわち中央の部分（６）を鍛伸して軸部分
（７）を形成したのち、軸部分の中央において余長
（８）を切断除去することによって、同時に２個の製品
（９Ａ，９Ｂ）を得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、金属材料を鍛造し
て片フランジ型の段付き軸形状品を製造する方法の改良
に関する。

【０００２】

【従来の技術】金属材料、とくに鋼材を鍛造して、片フ
ランジ型の段付き軸形状品を製造する場合には、直径を
フランジの径に合わせて用意した素材の一部を鍛伸して
軸を形成するのが、通常の製造手順である。多数の製品
を製造するには、作業能率からいって、「二個合わせ取
り鍛造」法が有利である。

【０００３】この方法は、図１に示すように、適切な長
さの鍛造素材（１）を用意し（段階Ａ）、その中央部分
においてフランジ２個の厚さに相当する長さの部分をフ
ランジ部分（２）として残し、まず片側の端を鍛伸して
軸部分（３Ａ）を形成し（段階Ｂ）、左右を反転させて
から（段階Ｃ）、反対側の端を鍛伸してもう一方の軸部
分（３Ｂ）を形成し（段階Ｄ）、最後に、中心から切断
して切り離すとともに、両端の軸部分の余長（４Ａ，４
Ｂ）を切断除去して、製品（９Ａ，９Ｂ）を得る（段階
Ｅ）工程からなる。

【０００４】上記の製造方法によるときは、片側の端を
鍛伸したのち反対側の端を鍛伸するには、左右を反転さ
せる必要があり、その作業に時間がかかるので、鍛造能
率がよくない。鍛造が長時間にわたり、また、あとから
鍛伸される反対側の端はマニピュレータで長時間つかま
れていたものが鍛造されるわけであるから、鍛造される
頃には温度が低下している。高合金鋼などの難加工性材
料を対象とする場合、温度の低下は端部にワレやキズが
発生しやすくなり、好ましくない。せっかく鍛造して
も、良品歩留まりがよくないことになるからである。そ
のような欠陥を避けるためには、切断除去される余長部
分を大きくとらなければならず、それが材料歩留まりの
低下をもたらしている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、鍛造
により片フランジ型の段付き軸形状品を２個取り製造す
る方法を改良し、鍛造中の素材の左右反転作業を不要に
することによって、従来技術には不可避であった素材端
部の温度低下を防ぎ、鍛造品端部の品質の向上をはかる
とともに、切断除去される余長部分をなるべく短くする
ことによって、歩留まりの改善を実現した製造方法を提
供することにある。

【０００６】上記の段付き軸形状品を２個取り製造する
方法をさらに進めて、いっそう効率を高めた４個取り製
造方法を提供することも、本発明の目的に含まれる。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記した第一の目的を達
成する、本発明の段付き軸形状品の２個取り製造方法
は、金属材料を鍛造して片フランジ型の段付き軸形状品
を製造する方法において、図２に示すように、直径をフ
ランジ径に合わせて用意した鍛造素材（１）を用意する
こと（段階Ａ）は、図１の従来法と同じであるが、つぎ
の工程では、その両端（５Ａ，５Ｂ）を所定の長さだけ
フランジ部分として残し、フランジ部分以外の部分すな
わち中央の部分（６）を鍛伸して軸部分（７）を形成し
た（段階Ｆ）のち、軸部分の中央において余長（８）を
切断除去することによって、同時に２個の製品（９Ａ，
９Ｂ）を得る（段階Ｇ）ことを特徴とする。

【０００８】第二の目的にかなう本発明の段付き軸形状
品の４個取り製造方法は、金属材料を鍛造して片フラン
ジ型の段付き軸形状品を製造する方法において、図３に
示すように、直径をフランジ径に合わせて用意した鍛造
素材（１）を用意すること（段階Ａ）は、ここでも図１
の従来法と同じであるが、つぎの工程では、この素材の
両端（５Ａ，５Ｂ）を所定の長さだけフランジ部分とし
て残すとともに、中央（６）をそのほぼ２倍の長さだけ
フランジ部分として残し、フランジ部分以外の２カ所の
部分を逐次鍛伸して、すなわち一方を鍛伸して軸部分
（７Ａ）を形成し（段階Ｈ）、続いて他方を鍛伸して軸
部分（７Ｂ）を形成した（段階Ｉ）のち、２カ所の軸部
分の中央において余長（８Ａ，８Ｂ）を切断除去するこ
とによって、同時に４個の製品（９Ａ，９Ｂ，９Ｃ，９
Ｄ）を得る（段階Ｊ）ことを特徴とする。

【０００９】

【発明の実施形態】本発明の段付き軸形状品の製造方法
は、汎用の機械構造用鋼、高合金鋼から超合金に至るま
で、鍛造により成形する金属材料であれば、すべてに適
用可能である。鍛造装置としては、常用の油圧プレス鍛
造機でもよいが、四面高速鍛造機がとくに好適である。
この鍛造装置は高速で打撃を与えるため、短時間で所望
の成形ができるだけでなく、鍛造中に被加工材の温度を
上昇させることさえ可能であるから、鍛造中の温度低下
を防いで、各部分が同様な温度条件で鍛造されることを
保証する。したがって四面高速鍛造機を使用して本発明
を実施すれば、温度低下に起因するワレやキズの発生は
原理的に防止され、本発明が意図したところが理想的に
実現する。

【００１０】鍛造後の、２個取りまたは４個取りに必要
な、フランジ部分の切断分離および余長の切断除去に
は、エメリーソーのような鋸を用いてもよいし、ガス火
焔によってもよい。そのほか、本発明の製造方法を実施
するに当たっては、既知の技術が利用できる。

【００１１】

【実施例１】ニッケル−クロム−モリブデン鋼（０．３
Ｃ−３Ｎｉ−３Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｆｅ）を使用し、図
２に示した２個取り法により、片フランジ型の段付き軸
形状品を製造した。まず、７５０mmの角ビレットを、油
圧プレス鍛造機で直径６８０mmまで細くして長さ１１１
０mmに切断した素材の、両端からそれぞれ４２０mmをフ
ランジ部分として残し、中央の長さ２７０mmの部分を鍛
伸して、径３１０mmの軸部分を形成した。鍛伸により形
成された細い部分の長さは１３００mmである。この中央
の軸部分から、余長１８０mmを切断除去することによ
り、目的とする製品が２個同時に得られた。

【００１２】図１に示した従来法によった場合、鍛造用
の素材は、長さを１２３０mmとする必要があり、除去し
た余長部分は２２％を占め、材料歩留まりは７８％であ
ったが、実施例１の方法によるときは、材料歩留まりが
８７％に向上した。また、鍛造過程における左右反転の
必要がなくなったことにより、鍛造作業の所要時間が約
９５分間から約６０分間に短縮できた。この時間短縮
は、軸部の品質改善に役立った。

【００１３】

【実施例２】ニッケル基合金（４５Ｎｉ−１４Ｃｒ−７
Ｍｏ−Ｆｅ）を対象にして、図３に示した原理による４
個取り法を実施した。ただし、製品の最終的な形状と各
部の寸法は、図４に示すとおりである。

【００１４】インゴットの分塊により得たビレットを、
四面高速鍛造機にかけて直径２２０mm、長さ１８００mm
にした素材を用意した。これを加熱炉で１１００℃に加
熱して取り出し、直径１５０mmに鍛伸した後、両端から
それぞれ２００mmと、中央の長さ４００mmの部分とをフ
ランジ部分として残し、それ以外の２カ所を鍛伸して、
径１００mmの軸部分を形成した。軸部分の長さは、両端
のテーパ部分を含めて、２カ所とも２７６０mmである。
中央のフランジ部分を中心から切断し、かつ、２カ所の
軸部分からそれぞれ余長２００mmを切断除去することに
より、目的とする製品が４個同時に得られた。

【００１５】実施例２における材料歩留まりの改善は、
４個の製品を得るのに、従来法では７７０Kgの材料を必
要としていたところ、本発明では５５０Kgで足りたか
ら、２５％の改善が実現したわけである。使用した材料
は高価なものであり、非常に有意義な前進がみられた。

【００１６】

【発明の効果】本発明の片フランジ型の段付き軸形状品
を製造する方法において、２個取り製造方法によれば、
従来技術において行なっていた鍛造素材の左右反転作業
が不要になるため所要時間が短縮され、それに伴って温
度の著しい低下が生じないうちに鍛造が完了するから、
軸端部分のワレやキズといった欠陥の発生が少なく、良
品歩留まりが高くなる。本発明の製造方法によれば、鍛
造後に切断除去すべき余長部分を、従来技術による場合
よりも短くすることができるから、材料歩留まりも改善
される。

【００１７】本発明が新たに提供した４個取り製造方法
によれば、片フランジ型の段付き軸形状品を製造する従
来技術では原理的にあり得なかった、きわめて効率的な
製造が実現する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 鍛造により片フランジ型の段付き軸形状品を
製造する、従来の２個取り方法を示す、材料の斜視図。
段階Ａは鍛造される素材、段階Ｂは一方の軸部分を鍛伸
したところ、段階Ｃは左右を反転したところ、段階Ｄは
他方の軸部分を鍛伸したところ、段階Ｅは余長を切断し
たところ。

【図２】 鍛造により片フランジ型の段付き軸形状品を
製造する、本発明の２個取り方法を示す、図１に対応す
る材料の斜視図。段階Ａは鍛造される素材、段階Ｆは軸
部分を鍛伸したところ、段階Ｇは余長を切断したとこ
ろ。

【図３】 鍛造により片フランジ型の段付き軸形状品を
製造する、本発明の４個取り方法を示す、図１に対応す
る材料の斜視図。段階Ａは鍛造される素材、段階Ｈは軸
部分２カ所のうち１カ所を鍛伸したところ、段階Ｉは軸
部分２カ所を鍛伸したところ、段階Ｊは２カ所の余長を
切断したところ。

【図４】 実施例２において、４個取りにより製造した
片フランジ型の段付き軸形状品の、鍛造終了段階におけ
る形状寸法を示す側面図。

【符号の説明】

１ 鍛造素材 ２ フランジ部分 ３Ａ，３Ｂ 軸部分 ４Ａ，４Ｂ 余長 ５Ａ，５Ｂ 両端 ６ 中央 ７；７Ａ，７Ｂ 軸部分 ８；８Ａ，８Ｂ 余長 ９Ａ，９Ｂ；９Ｃ，９Ｄ 製品

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属材料を鍛造して片フランジ型の段付
   き軸形状品を製造する方法において、直径をフランジ径
   に合わせて用意した鍛造素材の両端を所定の長さだけフ
   ランジ部分として残し、フランジ部分以外の部分を鍛伸
   して軸部分を形成したのち、軸部分の中央において余長
   を切断除去することによって、同時に２個の製品を得る
   ことを特徴とする段付き軸形状品の製造方法。
2. 【請求項２】 金属材料を鍛造して片フランジ型の段付
   き軸形状品を製造する方法において、直径をフランジ径
   に合わせて用意した鍛造素材の両端を所定の長さだけフ
   ランジ部分として残すとともに、中央をそのほぼ２倍の
   長さだけフランジ部分として残し、フランジ部分以外の
   ２カ所の部分を逐次鍛伸して軸部分を形成したのち、２
   カ所の軸部分の中央において余長を切断除去することに
   よって、同時に４個の製品を得ることを特徴とする段付
   き軸形状品の製造方法。