JP2003328076A - 中炭素鋼高強度鋼線 - Google Patents

中炭素鋼高強度鋼線

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JP2003328076A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱間圧延された線材から製造されるスティー
ルコードをより簡単で、かつ安価に製造しうる中炭素鋼
高強度鋼線を提供する。 【解決手段】 中炭素鋼を伸線加工して得られる鋼線で
あって、その組織が実質的にフェライトファイバーから
なり、かつ該フェライトファイバーの厚みが15nm以下
で、該フェライトファイバー中に固溶もしくはクラスタ
ーとして存在する炭素が0.3〜0.6質量%である
4.0GPa 以上、絞りが30%以上の中炭素鋼高強度鋼
線であり、また、鋼線の組織中に存在するX線回析法ま
たはメスバウワー分光分析法で検出されるセメンタイト
が実質的に存在しない中炭素鋼高強度鋼線。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ピアノ線、スティ
ールコード、ホースワイヤ、ビードワイヤ、コントロー
ルケーブル、釣り糸、カットワイヤ、ソーワイヤなど伸
線加工によって製造される中炭素鋼高強度鋼線に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、スティールコードなどに用いる
0.6質量%以上の炭素(C)を含む高炭素鋼からなる
ワイヤは、熱間圧延により直径5〜16mmの形状に加工
された後、パテンティング処理などによりパーライト組
織を有する線材とされる。このような線材の製造方法の
例としては、特開昭60−204865号公報に、Mn
含有量を0.3質量%未満に規制して鉛パテンティング
処理後の過冷組織の発生を抑え、C,Si,Mnなどの
元素量を適量に規制することによって撚り線時の断線が
少なく高強度、高靱性、高延性の極細線およびスティー
ルコード用高炭素鋼線材を製造する方法が開示されてお
り、また、特開昭63−24046号公報には、Si含
有量を1.00質量%以上添加することによって鉛パテ
ンティング材の引張強さを高くして伸線加工率を小さく
した高靱性高延性の極細線用線材が開示されている。
【0003】このような高強度が要求される線材は、よ
り高強度のワイヤを製造する技術が必要とされている
が、従来の技術では5.5mm径の線材を伸線加工して、
中間パテンティング処理することが必要不可欠であっ
た。このため、パテンティング処理するためにオーステ
ナイト域に加熱する炉と恒温変態させるための鉛浴或い
は流動層炉が必要となる。そこで、より簡素な設備構成
で製造可能な高強度のスティールコードの開発が切望さ
れていた。
【0004】一方、特開昭60−152655号公報に
は、C含有量:0.01〜0.30質量%を含有する鋼
で、針状粒子の平均換算粒子径が3μm以下の針状マル
テンサイト組織、ベイナイト組織、またはこれらの混合
組織からなる低温変態生成相がフェライト組織に対して
15〜40%の体積分率でフェライト組織中に均一に分
散された金属組織を有する強伸線加工に優れた高強度低
炭素線材が開示されている。しかし、このような方法で
は、平均換算粒子径が3μm以下である針状マルテンサ
イト組織、ベイナイト組織を生成させるためには20%
以上の微細なオーステナイト組織が存在するように加熱
しなければならないため組織調整が困難になるという問
題がある。そのため、この従来技術以上に簡単に製造し
うるより高強度の極細鋼線の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、熱間圧延さ
れた線材から製造されるスティールコードなどに用いら
れる極細鋼線においてより高強度で簡便に製造すること
ができる高強度鋼線を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するためになされたもので、その要旨は、 (1)中炭素鋼を伸線加工して得られる鋼線であって、
その組織が実質的にフェライトファイバーからなり、か
つ該フェライトファイバーの厚みが15nm以下で、該フ
ェライトファイバー中に固溶もしくはクラスターとして
存在する炭素が0.3〜0.6質量%であることを特徴
とする中炭素鋼高強度鋼線。 (2)X線回析法またはメスバウワー分光分析法で検出
されるセメンタイトが前記鋼線の組織中に実質的に存在
しないことを特徴とする(1)記載の中炭素鋼高強度鋼
線。 (3)前記高強度鋼線の引張強さが4.0GPa 以上、絞
りが30%以上であることを特徴とする(1)または
(2)記載の中炭素鋼高強度鋼線。 (4)前記高強度鋼線が、質量%で、C:0.3〜0.
6%,Si:0.1〜1.0%,Mn:0.1〜1.0
%,P:0.02%以下、S:0.02%以下、残部F
eおよび不可避的不純物からなることを特徴とする
(1)〜(3)の何れかの項に記載の中炭素鋼高強度鋼
線。 (5)前記高強度鋼線が、質量%で、C:0.3〜0.
6%,Si:0.1〜1.0%,Mn:0.1〜1.0
%,Cr:0.1〜0.5%,P:0.02%以下、
S:0.02%以下、残部Feおよび不可避的不純物か
らなることを特徴とする(1)〜(3)の何れかの項に
記載の中炭素鋼高強度鋼線。
【0007】
【発明の実施の形態】先ず、本発明で規定した鋼組成と
その限定理由について説明する。なお、本発明で規定す
る成分は全て質量%である。
【0008】Cは、鋼の強化に有効な元素であり、高強
度の鋼線を得るためにはC量を0.3%以上添加する必
要があるが、その含有量が高過ぎると強加工後の伸線ワ
イヤの延性を低下させるのでC量の上限を伸線性が劣化
しない0.6%以下とする。
【0009】Siは、鋼の脱酸のために必要な元素であ
り、0.1%以下では脱酸効果が不十分となり、更に、
Siは熱処理後に形成されるパーライト中のフェライト
相に固溶しパテンティング後の強度を上げるが、反面、
熱処理性を阻害するので上限を1.0%とする。
【0010】Mnは、鋼の焼入れ性を確保するために少
量のMnを添加することが望ましい。しかし、多量のM
nの添加は偏析部分のパーライト変態を遅らすので1.
0%以下とする。
【0011】Crは、パテンティング後の強度および伸
線加工後の強度を向上させるために必要により添加する
が、下限はその効果が期待できる0.1%以上とし、上
限はパテンティング時の変態遅延による熱処理性が劣化
することのない0.5%以下とする。
【0012】PならびにSは、鋼中に多量に存在すると
鋼の伸線加工性が低下するので両者とも0.02%以下
とする。上述した元素以外にも目的に応じて一般的に知
られている鋼の添加元素がパーライト組織を調整するこ
とが可能であれば添加されていてもよい。
【0013】次に、本発明による中炭素鋼高強度鋼線の
製造方法についてみると、鋼組成として、C量が0.3
〜0.6%と共析炭素鋼より低いC量であっても、パテ
ンティング条件を適切に調整することにより亜共析鋼を
実質的にパーライト組織の鋼とすることも可能である。
そこで、パーライト組織に調整された線材を伸線加工を
用いて真歪みで3.5以上の加工を行う。その後、20
0〜400℃の温度範囲に10〜1200秒間、再結晶
させない熱処理を行うことにより伸線されたワイヤの延
性を回復させる。更に、その後、伸線加工を行い、総加
工量を真歪みで6以上とする。これらの工程を経ること
により従来以上の強加工をすることが可能となり、その
結果、鋼線の組織が実質的にフェライトファイバーとな
り、そのフェライトファイバーの厚みを15nm以下に調
整することができる。また、伸線加工された鋼線中の固
溶もしくはクラスターとして存在するC量が0.3〜
0.6%に調整することができる。なお、伸線加工され
た固溶量が前記範囲で存在するフェライトファイバーの
幅方向の大きさが15nmを超える場合には組織が均一と
ならないため延性が低下するため、フェライトファイバ
ーの大きさを15nm以下とする必要がある。このよう
に、上述した強加工を施すことにより引張強さを4GPa
以上とすることも可能となる。
【0014】更に、パーライト組織を有する鋼を伸線加
工することによりセメンタイト組織が実質的に存在しな
い状態にすることもできる。このセメンタイト組織の存
在を確認する方法として透過電子顕微鏡を用いるが、こ
の場合には任意の測定点のうち回析パターンの得られな
い測定点が、全測定点の95%以上存在する状態で実質
的にセメンタイト組織が存在するか、しないかを判定す
る。この時、セメンタイト組織は伸線加工により固溶状
態かクラスター状態であれば透過電子顕微鏡を用いたX
線回析法を用いてもセメンタイト組織として回析パター
ンを得ることができない。なお、上記X線回析法に代え
てメスバウワー分光分析法を採用しても同様の観察結果
が得られるので、この分析法を採用しても良い。
【0015】
【実施例】表1に示す化学成分を有する鋼に調整された
鋼を溶製後、ブルーム或いはビレットに連続鋳造した。
なお、ブルームに鋳造されたものはビレットに圧延され
た。このビレットを加熱後熱間圧延され任意の線径の線
材に加工した。熱間圧延後の調整冷却は組織が全てパー
ライト組織となるように直接パテンティング処理する
か、別途パテンティング処理を行って全てパーライト組
織となるように調整した。表1のA−1からA−8は本
発明で規定する化学組成を満たす実施例で、A−9はC
含有量が多く本発明範囲を外れた比較例で、A−10は
C含有量が少なく本発明範囲を外れた比較例である。
【0016】次いで、これらの線材は、デスケーリング
後、表面に潤滑剤引き込まれ易いように燐酸塩被膜処
理、ボラックス処理、電解ボンデ処理などのいずれかの
処理を行った。その後、表2に示すような伸線加工を行
い、途中で250℃〜350℃の温度範囲で焼鈍を行っ
た後、再度ボンデ処理或いはブラスメッキ処理を行い、
伸線加工を行って所定の線径を有する製材を製造した。
【0017】表3に得られたワイヤの引張強さ、絞り
値、ならびにフェライトファイバーの幅を示した。ファ
ライトファイバーの幅はTEM観察を行い、X線回析に
よりフェライトファイバーの単位を同定し、得られた1
0個以上のファイバーの幅の平均値として求めた。表3
から分かるように、本発明による実施例A−1〜A−8
は何れも4000MPa 以上の強度と30%以上の高い絞
り値を示している。一方、比較例A−9,A−10は何
れも最後までの伸線加工ができなかった。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により、中
間パテンティング処理を実施することなく中炭素鋼で高
強度の鋼線を容易に得ることができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中炭素鋼を伸線加工して得られる鋼線で
    あって、その組織が実質的にフェライトファイバーから
    なり、かつ該フェライトファイバーの厚みが15nm以下
    で、該フェライトファイバー中に固溶もしくはクラスタ
    ーとして存在する炭素が0.3〜0.6質量%であるこ
    とを特徴とする中炭素鋼高強度鋼線。
  2. 【請求項2】 X線回析法またはメスバウワー分光分析
    法で検出されるセメンタイトが前記鋼線の組織中に実質
    的に存在しないことを特徴とする請求項1記載の中炭素
    鋼高強度鋼線。
  3. 【請求項3】 前記高強度鋼線の引張強さが4.0GPa
    以上、絞りが30%以上であることを特徴とする請求項
    1または2記載の中炭素鋼高強度鋼線。
  4. 【請求項4】 前記高強度鋼線が、質量%で、C:0.
    3〜0.6%,Si:0.1〜1.0%,Mn:0.1
    〜1.0%,P:0.02%以下、S:0.02%以
    下、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴
    とする請求項1〜3の何れかの項に記載の中炭素鋼高強
    度鋼線。
  5. 【請求項5】 前記高強度鋼線が、質量%で、C:0.
    3〜0.6%,Si:0.1〜1.0%,Mn:0.1
    〜1.0%,Cr:0.1〜0.5%,P:0.02%
    以下、S:0.02%以下、残部Feおよび不可避的不
    純物からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかの
    項に記載の中炭素鋼高強度鋼線。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008038199A (ja) * 2006-08-04 2008-02-21 Bridgestone Corp 金属線材の延性回復方法
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CN114058951A (zh) * 2021-10-19 2022-02-18 首钢集团有限公司 一种65Mn锯片钢及其制备方法

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