JP2003328054A - アルミニウム系合金部材の製造方法 - Google Patents

アルミニウム系合金部材の製造方法

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JP2003328054A
JP2003328054A JP2002140886A JP2002140886A JP2003328054A JP 2003328054 A JP2003328054 A JP 2003328054A JP 2002140886 A JP2002140886 A JP 2002140886A JP 2002140886 A JP2002140886 A JP 2002140886A JP 2003328054 A JP2003328054 A JP 2003328054A
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aluminum
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JP2002140886A
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Junichi Ichikawa
淳一 市川
Takashi Suzuki
貴志 鈴木
Hideo Yomo
英雄 四方
Toshikatsu Koike
俊勝 小池
Yutaka Yamagata
裕 山縣
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Yamaha Motor Co Ltd
Resonac Corp
Original Assignee
Hitachi Powdered Metals Co Ltd
Yamaha Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表層の微細クラックおよび欠陥を除去する機
械加工等を不要にし、クラックはおろか欠陥すらも残留
しない、機械特性により優れたアルミニウム系合金部材
を安価な工程で製造可能にする。 【解決手段】 液相発生成分を粉末中に固溶するアルミ
ニウム系急冷凝固粉末を、密度比80%以上に圧粉成形
した後、非酸化性ガス雰囲気中で脱ろうおよび液相焼結
した焼結体を、350〜550℃で加熱し、350〜5
50℃に加熱した金型および上下パンチにより熱間鍛造
を施して真密度にすることを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種構造用部材や
摺動部材、塑性加工用素材として好適なアルミニウム系
合金部材の製造方法に関する。なお、本明細書におい
て、Al、Si、Fe、Cu、Mg等は元素記号であ
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、Al基地に例えば過飽和のS
iを急速に冷却して固溶限以上のSiを強制的に固溶させ
たAl−Si系等のアルミニウム系急冷凝固粉末を用い
たアルミニウム系合金は、軽量であることに加え、溶製
材料では得られない強度、耐摩耗性等の特性が得られ
る。しかし、アルミニウム系急冷凝固粉末は、硬くて圧
縮性が低く、又、粉末表面が強固な酸化被膜で覆われて
いることにより、通常の粉末冶金法の工程であるニアネ
ットシェイプ形状への圧粉成形および焼結のような工程
では粉末どうしの拡散が進行しにくく、高い強度の合金
部材が得られない。このため、一般的なアルミニウム系
合金部材の製造方法としては、アルミニウム系急冷凝固
粉末を静水圧成形等で固化した後、金属缶に密封した状
態で脱ガスを行い、熱間押出し加工等により強制的に酸
化被膜を破壊して粉末どうしを強固に金属結合させた
後、金属缶の除去、所望の長さへ切断を経て最終形状に
熱間鍛造する方法が採用されている。
【0003】また、他のアルミニウム系合金部材の製造
方法としては、アルミニウム系急冷凝固粉末を静水圧成
形で固化した後、緻密化鍛造および据え込み鍛造を順次
行った後、最終形状に鍛造もしくは押出加工する方法も
実施されている。その他にも様々なアルミニウム系合金
部材の製造法が提案されている。例えば、特公平6−4
3628号公報には、アルミニウム系急冷凝固粉末を成
形して成形体を形成し、この成形体に、温度300〜5
20℃に15分〜3時間加熱保持する熱処理を施した
後、引き続き前記温度において予備的な熱間密閉鍛造を
施して前記成形体を密度比95%以上に緻密化し、次い
でこのようにして得られた予備鍛造体を温度300〜5
20℃に再加熱して、20〜50%の加工率の下に熱間
鍛造するアルミニウム系合金部材の製造方法が開示され
ている。また、特開平4−346603号公報には、ア
ルミニウム系急冷凝固粉末を冷間または温間成形して成
形密度75〜93%の成形体を作り、この成形体を温度
300〜560℃の熱間で押出比3以下の押出加工およ
び軸方向圧縮を行って、軸心と並行な表層部に気孔がな
く中央部に独立気孔が残存する気孔率2〜4%の固化体
とした後、この固化体をサイジングして鍛造後の機械加
工なしで寸法精度に優れたアルミニウム系合金部材を製
造する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したアルミニウム
系合金部材の製造方法は、鍛造等の後の塑性加工体にお
ける表層部に微細なクラックが残留して強度等が本来の
性能まで発揮できない等の問題があり、また、表層の微
細クラックを除去するため最後の工程で機械加工等を行
わなくてはならず、コストを引き上げる要因となってい
る。なお、上記特開平4−346603号の製造方法で
は、機械加工が不要であると記載されているものの工程
数が多く、製品内部では気孔が残留しているため、真密
度のものに比べて伸びや疲れ強さ等の機械的特性が低い
という点は解消されていない。
【0005】ところで、アルミニウム系合金部材は、気
孔が残留していると機械的特性、特に伸びおよび疲れ強
さが低下するため、真密度まで密度を高めておくことが
好ましい。しかし、真密度であっても、粉末粒子どうし
が互いに充分に結合していないと、欠陥として機能し、
製品特性の低下原因となる。このような欠陥は主として
製品表層部に残留しやすい。これは次のような機構に起
因するものと推察される。すなわち、鍛造、押出加工等
の塑性加工においては、圧粉体等の素材は圧力を受けて
塑性変形するが、素材表面は金型壁面に対する摩擦力に
より拘束されて流動性が素材内部より低下するため、密
度が上がりにくく、また、真密度が達成できたとして
も、変形量が少なくなり、粉末粒子表面の酸化被膜が完
全に破壊されたときのような金属接触・拡散が阻害さ
れ、粉末粒子どうしの結合が不充分で、この部分が欠陥
として残留する。そして、その状態がひどいとクラック
として認められるようになる。そのため、従来の製造方
法では、前記した表層に残留する欠陥およびクラックを
機械加工等によって除去することが必要となり、コスト
高となって特殊用途にしか適用できず、汎用部品への適
用が制約される。
【0006】本発明の目的は、以上のような課題を解消
して、表層の微細クラックおよび欠陥を除去する機械加
工等を不要にし、クラックはおろか欠陥すらも残留しな
い、機械特性に優れたアルミニウム系合金部材を簡易な
工程で製造可能にすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するに
は、アルミニウム系急冷凝固粉末を原料粉末として用い
鍛造を行うことにより得られるアルミニウム系合金部材
として、上記した表層に残留する欠陥およびクラックの
除去を不要とし、鍛造後の鍛造体の全ての部位において
粉末粒子どうしがお互いに充分に結合していることが要
件となる。本発明は、前記の要件を製造方法から充足す
べく試験を重ね完成されたものであり、液相発生成分を
粉末中に固溶するアルミニウム系急冷凝固粉末を、密度
比80%以上に圧粉成形した後、非酸化性ガス雰囲気中
で脱ろうおよび液相焼結した焼結体を、350〜550
℃で加熱し、350〜550℃に加熱した金型および上
下パンチにより熱間鍛造を施して真密度にすることを特
徴とするアルミニウム系合金部材の製造方法である。
【0008】以上の本発明においては、液相焼結により
予め金属結合部を設けているため、後の鍛造工程におい
て、上記した従来構成に比べて表面の酸化被膜破壊のた
めに必要となるエネルギーが小さくて済み、余剰のエネ
ルギーを気孔の変形・消滅のエネルギーとして使えるこ
とから、低い密度であっても鍛造後の欠陥の残留を防止
することができる。具体的には以下の通りである。
【0009】(アルミニウム系急冷凝固粉末)原料のア
ルミニウム系急冷凝固粉末としては、Cu,Mg等の液
相発生成分をアルミニウム系急冷凝固粉末中に固溶して
与えた内部添加法による合金粉末を用いるが、内部添加
法の場合でも液相発生成分は粉末中に完全に均一に固溶
されているわけではなく、粉末中でも場所により微妙に
その成分の含有量が異なる状態で固溶されている。この
ような粉末の圧粉体を用いて焼結すると、成分の微小な
濃度差により、各部で液相発生成分の融点が微妙に異な
って、成分粉末の良好な分散状態を保って均一組成で液
相焼結を行うことができる。すなわち、一般的には、液
相発生成分をアルミニウム系急冷凝固粉末とは別に与え
る外部添加法が用いられているが、外部添加法の場合
は、焼結すると温度に応じて異なる成分元素からなる液
相が数種類発生し、基地中の各部で含まれる成分元素に
ばらつきが生じることとなって機械的特性のばらつきが
大きくなる。これを避けるためにはさらに高温で焼結し
たり、焼結時間を長くするなどして成分元素を基地中に
均一に拡散させる必要があり、結果として焼結条件の選
択幅が狭くなって製造コストが高くなる。
【0010】(圧粉成形)本発明では、上記のアルミニ
ウム系急冷凝固粉末を密度比80%以上に圧粉成形する
が、密度比80%以上への圧粉成形は通常の冷間で行う
ことができる。この圧粉成形において、密度比が80%
未満であると、残留する気孔量が多くなり、熱間鍛造時
に気孔の変形・消滅に要するエネルギーが大量に消費さ
れて欠陥が残留しやすくなる。あるいは、液相焼結時に
形成される金属結合の量が少なくなり、酸化被膜破壊の
ためのエネルギーがさらに必要となって、気孔、欠陥が
残留しやすくなる。このため、圧粉体の密度比として
は、少なくとも80%以上とすることが必須となる。
【0011】なお、圧粉体の密度比が大きくなるほど、
熱間鍛造時に必要な気孔の変形・消滅に要するエネルギ
ーが減少するが、冷間での圧粉成形においては成形圧力
を上昇させても成形密度の向上の率が乏しくなる。この
ため、より高密度に圧粉成形する場合には、金型潤滑方
法および/または温間成形方法を採用すると効果的であ
る。
【0012】請求項3と4の関係において、一般に行わ
れている原料粉末に成形潤滑剤を配合する内部潤滑方法
では、成形潤滑剤により見掛け密度が低下すること、お
よび内部では成形潤滑剤により粉末のすべりが得られ密
度が上がりやすいが、金型壁面と粉末の間では全ての部
分において成形潤滑剤が存在するわけではないので粉末
が金型壁面に拘束されて緻密化する方向に移動しにくい
ことから、高密度が達成しにくい。また、無理矢理に高
密度とした場合、成形潤滑剤が除去しにくく、除去のた
めの脱ろうが不充分または長時間になり得策ではない。
一方、金型表面に成形潤滑剤を塗布する金型潤滑方法に
よれば、金型壁面と粉末間の潤滑が充分に得られ、粉末
の緻密化方向への移動が容易であるとともに、成形潤滑
剤の付着部分が金型と接する成形体表層部のみであるた
め、脱ろうが容易に行える。また、成形密度を向上する
ために温間で成形すると、粉末が軟化して圧縮性が改善
され高密度にしやすいが、温間成形の成形温度が100
℃未満では粉末の軟化が不充分で圧縮性改善の効果が乏
しい。また、成形温度が400℃を超えると、酸化や合
金内部の成分が吸着水分等と反応し製品内部の気孔の原
因となる。このため、温間成形は、100℃以上、40
0℃以下の温度範囲で行う必要がある。好ましくは、圧
縮性の改善効果が顕著な150℃以上、酸化等の虞のな
い330℃以下、つまり150〜330℃の温度範囲が
最もよい態様である。
【0013】(脱ろうおよび焼結)本発明では、上記密
度比の圧粉体を非酸化性ガス雰囲気中で脱ろうおよび液
相焼結する。この脱ろうおよび液相焼結は、請求項2で
特定したように、露点が−25℃以下の非酸化性ガス雰
囲気中で行うことが好ましい。雰囲気ガスとしては、酸
化を防ぐため非酸化性雰囲気であることが必要となる。
雰囲気ガスは、Arガス等でも差し支えないが、窒素ガ
スがコストも安価で好ましい。但し、露点が−25℃を
超えていると、液相の酸化が進行して焼結が進行しなく
なり、欠陥の原因となるため、露点の管理には注意が必
要である。
【0014】液相焼結は、上記アルミニウム系急冷凝固
粉末の融点−50℃〜融点−10℃の範囲で行うことが
好ましい。液相発生成分を粉末中に固溶したアルミニウ
ム系急冷凝固粉末では、粉末の成分組成より定まる融点
よりも低い温度で液相が徐々に発生してくるため、融点
より低い温度で液相焼結を行うことができる。但し、粉
末の融点−50℃未満では、発生する液相の量が乏し
く、焼結時に得られる金属結合の量が少なくなって、鍛
造しても欠陥が残留しやすくなる。一方、粉末の融点−
10℃を超えると液相発生量が多くなり過ぎて、寸法精
度の悪化や型くずれまたは液相の吹き出しが発生しやす
くなる。
【0015】(熱間鍛造)上記のようにして作製される
焼結体は、液相焼結により粉末どうしの金属結合が既に
形成されている。本発明では、この焼結体を350〜5
50℃で加熱し、350〜550℃に加熱した金型およ
び上下パンチにより熱間鍛造して真密度にすることで、
表層に欠陥を有さない理想的な鍛造体を得るものであ
る。この熱間鍛造では、焼結体の加熱温度が350℃未
満であると、塑性変形能が乏しく、製品表層に欠陥が残
留しやすくなる。また、金型および上下パンチの加熱温
度が350℃未満であると、鍛造体の温度が低下して塑
性変形能が低下する。一方、焼結体の加熱温度、およ
び、金型および上下パンチの加熱温度が、550℃を超
えると、成分組成によっては再び液相が発生し、製品の
寸法精度が極端に低下したり、場合によっては型くずれ
やブリスター等の欠陥が生じる。
【0016】以上の条件で作製された鍛造体(アルミニ
ウム系合金部材)は、全ての部位において前記粉末の粒
子表面どうしが互いに充分に結合しており、欠陥を有さ
ないため、機械加工による欠陥除去工程が不要であると
共に、高い強度を有する。また、製造工程としては、コ
ストが高くなる熱間鍛造工程が1回のみであり、従来の
欠陥を除去する機械加工工程が不要であることから、高
い強度のものをコストを抑えて量産可能にする。なお、
本発明方法で得られるアルミニウム系合金部材は、上記
のような欠陥を有さず、全部分で粉末どうしが均一に充
分結合されているので、請求項5に特定したように、こ
れを塑性加工用素材として用いて鍛造または押出加工等
の塑性加工に供しても、素材の変形割れの発生しない良
好な素材として使用でき、その場合には鍛造や押出加工
等の塑性加工工程がさらに追加されることになる。次
に、以上の本発明の製造方法および有用性を実施例によ
り明らかにする。
【0017】
【実施例1】この実施例は、同一の元素からなる液相を
発生させて基地組織の均一化を図る上で好ましい原料粉
末、つまり液相発生成分をアルミニウム系急冷凝固粉末
中に固溶させて与えたもの(以下、内部添加法適用粉末
という)と、液相発生成分をアルミニウム系急冷凝固粉
末とは別に添加したもの(以下、外部添加法適用粉末と
いう)とで、どの様な傾向にあるか調べたときの一例で
ある。ここでは、内部添加法適用粉末として、成分組成
がAl−10Si−5Fe−1Cu−0.5Mgの急冷
凝固粉末を用意した。また、外部添加法適用粉末とし
て、Al−10Si−5Feの急冷凝固粉末にCu粉末
1質量%、およびAl−50Mg粉末を1質量%を添加
して、全体の成分組成がAl−9.8Si−4.9Fe
−1Cu−0.5Mgとした配合粉末を用意した。これ
らほぼ同じ全体組成の両粉末について、比熱測定装置に
より温度(℃)と比熱(cal/g・℃)の関係を測定し
た結果を図1と図2に示す。図1は前記内部添加法適用
粉末の場合であり、図2は前記外部添加法適用粉末の場
合である。
【0018】図1と図2の比較から次のことが分かる。
図2の外部添加法適用粉末は、図1の内部添加法適用粉
末と比べて低い温度から比熱の上昇、すなわち液相の発
生が確認される。特に、518℃近辺の小ピーク(比熱
0.4cal/g・℃)はAl−Mg−Cuの液相で、5
34℃近辺の小ピーク(比熱0.9cal/g・℃)はA
l−Si−Cuの液相で、更に546℃近辺の小ピーク
(比熱1.6cal/g・℃)はAl−Cuの液相であ
り、これら発生する液相の成分組成が全て異なってい
る。そして、最後に560℃近辺より共晶液相が発生し
て融点を迎えている。一方、図1の内部添加法適用粉末
では、外部添加法適用粉末のときのような小ピークは認
められず、融点よりも30℃程度低い温度より共晶液相
の発生が始まり、温度の上昇とともに融点まで徐々に液
相発生量が増加している。以上のことから、同一の元素
からなる液相を発生させて基地組織の均一化を図る点か
らは、内部添加法適用粉末の方が外部添加法適用粉末よ
り優れていることが確認できた。
【0019】
【実施例2】この実施例は、液相焼結および熱間鍛造に
用いられる圧粉体の密度比による影響を調べたときの一
例である。ここでは、実施例1で使用した内部添加法適
用粉末(液相発生成分を固溶した、融点が約570℃の
急冷合金粉末)を用いて、成形圧力を変えてφ40×L
30の形状に圧粉成形し、密度比75、80、85、9
0%に作成した圧粉体を用い、各圧粉体を露点が−40
℃の窒素ガス雰囲気中550℃で焼結を行った。これら
の各焼結体を500℃に加熱した後、400℃に加熱し
た金型と上下パンチにより圧力500MPaを加えてφ
50に熱間鍛造して真密度の鍛造体(異なる密度比の圧
粉体を用い焼結および鍛造した4種の試料鍛造体)を得
た。評価は、各試料鍛造体の表層よりJIS Z 2201に規定
される板引張り試験片を加工し、引張り試験を行い、引
張り強さ(MPa)と伸び(%)を測定した。また、各
試料鍛造体の破断面の様子を観察した。これらの結果を
表1に示し、又、破断面の観察例として2つの試料鍛造
体のSEM写真を図3と図4に示す。図3は密度比85
%の圧粉体を液相焼結した後、熱間鍛造した試料鍛造体
の破断面のSEM写真であり、図4は密度比75%の圧
粉体を液相焼結した後、熱間鍛造した試料鍛造体の破断
面のSEM写真である。
【0020】
【表1】
【0021】表1より、密度比80%以上の圧粉体を液
相焼結した後、熱間鍛造した試料鍛造体は、引張り強さ
および伸びの向上が顕著で、特に密度比85%以上のも
のでは最大値まで向上していることが確認できた。ま
た、SEM写真において、密度比75%の試料鍛造体
(図4)では真密度まで熱間鍛造したにもかかわらず、
ところどころにディンプル破面ではない、白くのっぺり
とした部分、すなわち元の粉末表面が結合していない部
分が認められるのに対し、密度比85%の試料鍛造体
(図3)ではそのような部分は見られず、全面ディンプ
ル破面を呈しており、全ての粉末表面が結合(金属結
合)していることが確認できた。以上のことから、品質
を充足するには、例え同じ真密度であったも、粉末の結
合状態が重要であり、密度比80%以上、より好ましく
は85%以上の圧粉体を用いて液相焼結した後、熱間鍛
造で真密度まで加工することが必須となる。また、粉末
の結合状態は外部から観察はできないが、破断面を観察
することにより確認できることがわかった。
【0022】
【実施例3】この実施例は、熱間鍛造に用いられる焼結
体の焼結温度による影響を調べたときの一例である。こ
こでは、実施例1で使用した内部添加法適用粉末を用
い、そのアルミニウム系急冷凝固粉末を実施例2と同じ
条件で密度比85%に圧粉成形し、焼結温度だけを49
0、520、545、560、565、570℃に変え
て液相焼結した。その後、各焼結体を500℃に加熱し
た後、400℃に加熱した金型と上下パンチにより圧力
500MPaを加えてφ50に熱間鍛造して真密度の鍛
造体(焼結温度の異なる焼結体を用いて鍛造した6種の
試料鍛造体)を得た。評価は、実施例2と同じく引張り
強さと伸びを測定し、又、各試料鍛造体の破断面の様子
を観察した。これらの結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】表2より、焼結温度が490℃(融点−8
0℃)の試料鍛造体では、液相の発生がなく、液金属結
合が進行せず、鍛造後に真密度にしても欠陥が残留して
引張り強さおよび伸びが低い。また、焼結温度が520
℃(融点−50℃)〜560℃(融点−10℃)までの
試料鍛造体は、適当な量の液相が発生し、金属結合が得
られた結果、真密度への鍛造後引張り強さ及び伸びが高
い値を示す。しかし、焼結温度が560℃(融点−10
℃)を超えると、液相発生量が多くなり、急冷凝固粉末
の組織、すなわち急冷することで過飽和に固溶した組織
が維持できず折出相が粗大化し、機械的特性が低下して
いる。なお、焼結温度が融点である570℃の試料鍛造
体では、液相発生により試料の型くずれがひどく、また
基地が脆化して鍛造後、試料に割れが発生し、鍛造を正
常に行うことができなかった。以上のことから、液相焼
結は、融点−50℃〜融点−10℃の温度範囲で行うと
機械的特性が改善されることが確認された。
【0025】
【実施例4】この実施例は、実施例1で使用した内部添
加法適用粉末を用い、そのアルミニウム系急冷凝固粉末
を実施例2と同じ条件で密度比85%に圧粉成形した
後、焼結温度550℃で露点を−40℃〜−10℃の範
囲で変えた窒素ガス雰囲気中で焼結した後、該各焼結体
について抗折試験を行ったときの一例である。表3はそ
の結果を焼結しないものも含めて示す。
【0026】
【表3】
【0027】表3より、露点が−25℃以下では、焼結
が進行して抗折力の増加が認められるが、露点−25℃
より高くなると焼結が進行しないことがわかる。以上の
ことから、焼結雰囲気条件は露点が−25℃以下である
必要があることが確認できた。
【0028】
【実施例5】この実施例は、熱間鍛造に際して行う焼結
体の加熱温度による影響を調べたときの一例である。こ
こでは、実施例1で使用した内部添加法適用粉末を用
い、そのアルミニウム系急冷凝固粉末を実施例2と同じ
条件で密度比85%に圧粉成形した後、焼結温度550
℃で焼結した焼結体について、該焼結体の加熱温度を3
00、350、400、500、550、560℃に変
えて、400℃に加熱した金型および上下パンチを用い
て真密度に熱間鍛造した。得られた試料鍛造体を実施例
1と同様に引張り試験を行い、引張り強さおよび伸びを
測定し、又、破断面の観察を行った。その結果を表4に
示す。
【0029】
【表4】
【0030】表2より、焼結体を熱間鍛造する際の加熱
温度としては、上昇するにつれて引張強さおよび伸びが
向上し、350℃で顕著な改善効果が認められる。ま
た、加熱温度が400〜550℃ではほぼ一定の高い値
を示すが、560℃では局部的な液相発生により鍛造
後、試料鍛造体にブリスターが発生したため、試験を中
止した。以上のことから、熱間鍛造する際の焼結体の加
熱温度としては350℃〜550℃の範囲で行うが必須
となることが確認できた。
【0031】
【実施例6】この実施例は、鍛造用金型の加熱温度によ
る影響を調べたときの一例である。ここでは、実施例5
と同じ条件で作成した焼結体を用い、それぞれ500℃
に加熱し、金型および上下パンチの加熱温度を300、
350、400、500、550℃に変えて真密度に熱
間鍛造した。得られた試料鍛造体は、実施例1と同様に
引張り試験を行い、引張り強さおよび伸びを測定し、
又、破断面の観察を行った。その結果を表5に示す。
【0032】
【表5】
【0033】表5より、鍛造用金型の加熱温度として
は、300℃のときと、350℃以上のときとで相違が
顕著であり、他の条件が同じであっても鍛造用金型が3
50℃以上になると引張り強さおよび伸びの向上が認め
られ、350〜550℃で最も高くかつ一定の値が得ら
れることが確認された。以上のことから、例え同じ圧粉
体を焼結した焼結体および該焼結体の加熱温度を同じく
しても、鍛造用金型の加熱温度も重要であり、当該金型
が少なくとも350℃以上に加熱されることが必須とな
り、上限は経済性とブリスター発生等の虞から550℃
にすることである。
【0034】
【実施例7】この実施例は、圧粉成形の成形態様(常温
と温間)と、成形潤滑方法による影響を調べたときの一
例である。ここでは、実施例1で使用した内部添加法適
用粉末を用い、そのアルミニウム系急冷凝固粉末に、
1.5質量%の成形潤滑剤を添加する内部潤滑方法にて
常温で圧粉成形した場合、成形潤滑剤をそのアルミニウ
ム系急冷凝固粉末に添加せずに圧粉成形用金型表面に塗
布する金型潤滑方法にて常温および300℃の温間で圧
粉成形した場合の3態様について、成形圧力を300、
500、700、900、1100MPaに変えたとき
に得られる圧粉体の密度比の変化を測定し、成形潤滑方
法の差異と、常温と温間成形による効果について調べ
た。その結果を表6に示す。
【0035】
【表6】
【0036】表6より、成形潤滑方法としては、常温成
形より温間成形の方が成形性がよく、高密度の圧粉体が
得やすいことがわかる。また、密度比90%以上の圧粉
体を得るためには、例えば、金型潤滑方法を採用した温
間成形方法では500MPa以上で成形すればよく、工
業上問題ない領域での製造が可能であることがわかる。
【0037】
【発明の効果】以上のことから、本発明によるアルミニ
ウム系合金部材の製造方法は、1回の熱間鍛造で済むた
め製造コストを低くでき、しかも製品表層部に欠陥がな
いため欠陥除去のための機械加工工程を省けるためさら
に安価に提供することを可能にする。また、本発明で作
成されるアルミニウム系合金部材は、安価で欠陥を有さ
ないことから各種構造用部材、摺動部材等として好適で
あるとともに、さらにはこのアルミニウム系合金部材を
塑性加工用素材として用いた場合、鍛造や押出加工等の
塑性加工を行っても素材の割れが発生せず好適であり、
アルミニウム系合金の一層の用途拡大に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 内部添加法適用粉末での温度と比熱の関係を
示すグラフである。
【図2】 外部添加法適用粉末での温度と比熱の関係を
示すグラフである。
【図3】 本発明の製造方法に好適な圧粉体の破断面写
真である。
【図4】 本発明の製造方法に適さない圧粉体の破断面
写真である。
フロントページの続き (72)発明者 四方 英雄 千葉県松戸市大金平1−48−1 (72)発明者 小池 俊勝 静岡県磐田市新貝2500番地 ヤマハ発動機 株式会社内 (72)発明者 山縣 裕 静岡県磐田市新貝2500番地 ヤマハ発動機 株式会社内 Fターム(参考) 4K018 AA16 BA08 CA02 CA16 DA31 EA32 EA47 FA01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液相発生成分を粉末中に固溶するアルミ
    ニウム系急冷凝固粉末を、密度比80%以上に圧粉成形
    した後、非酸化性ガス雰囲気中で脱ろうおよび液相焼結
    した焼結体を、350〜550℃で加熱し、350〜5
    50℃に加熱した金型および上下パンチにより熱間鍛造
    を施して真密度にすることを特徴とするアルミニウム系
    合金部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記液相焼結をアルミニウム系急冷凝固
    粉末の融点−50℃〜融点−10℃の範囲で、露点が−
    25℃以下の非酸化性ガス雰囲気中で行うことを特徴と
    する請求項1に記載のアルミニウム系合金部材の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウム系急冷凝固粉末が成形
    潤滑剤を含有しないとともに、前記圧粉成形を金型表面
    に潤滑剤を塗布する金型潤滑方法により行うことを特徴
    とする請求項1または2に記載のアルミニウム系合金部
    材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記圧粉成形を100〜400℃の温間
    で行うことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載
    のアルミニウム系合金部材の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1から4の何れかに記載のアルミ
    ニウム系合金部材を塑性加工用素材として用い、前記塑
    性加工用素材を熱間塑性加工することを特徴とするアル
    ミニウム系合金部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105579167A (zh) * 2013-09-30 2016-05-11 日立化成株式会社 铝系多孔质体及其制造方法

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