JP2003327971A - 石油系重質油の水素化分解方法 - Google Patents

石油系重質油の水素化分解方法

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JP2003327971A
JP2003327971A JP2002140324A JP2002140324A JP2003327971A JP 2003327971 A JP2003327971 A JP 2003327971A JP 2002140324 A JP2002140324 A JP 2002140324A JP 2002140324 A JP2002140324 A JP 2002140324A JP 2003327971 A JP2003327971 A JP 2003327971A
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Motoharu Yasumuro
元晴 安室
Toshiaki Okui
利明 奥井
Noriyuki Okuyama
憲幸 奥山
Masaaki Tamura
正明 田村
Takuo Shigehisa
卓夫 重久
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 減圧蒸留残渣油等の如く重金属を含有する石
油系重質油を水素化分解して軽質化するに際し、経済的
に且つ高収率で、軽質化された軽質な油を得ることがで
きる石油系重質油の水素化分解方法を提供する。 【解決手段】 前記重質油およびリモナイト鉄鉱石触媒
を含む原料スラリーと水素ガスとを懸濁床反応器に供給
し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応温度:430〜455
℃、反応時間:30〜180 分の反応条件下で、前記重質油
を水素化分解する反応工程を有する石油系重質油の水素
化分解方法であって、前記原料スラリーを加熱して反応
温度:430 〜455 ℃に昇温させる途中で前記原料スラリ
ーを320 〜420 ℃の温度で10〜60分間加熱する予備加熱
をすることを特徴とする石油系重質油の水素化分解方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石油系重質油の水
素化分解方法に関する技術分野に属し、より詳細には、
重金属を含有する石油系重質油の水素化分解方法に関
し、特には、常圧蒸留残渣油や減圧蒸留残渣油の如く重
金属を含有する石油系重質油を水素化分解して軽質化さ
れた油を得る方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】原油の重質化と需要の軽質化が同時に進
行するという需要の急激な変化を背景に、不足する軽質
製品を余剰の重質油から製造する重質油分解技術が注目
されており、有限な石油埋蔵量の減少が不可避の情勢に
あってその重要度がますます増大してきている。
【0003】これまでに、重質油の熱分解、水素化分解
について多くの方法が提案されているが、これらの方法
は減圧蒸留残渣油等のような重質油の軽質化に対して
は、なんらかの問題点を有する。この詳細を以下説明す
る。
【0004】減圧蒸留残渣油等のような重質油は、かな
り大量の窒素化合物及び硫黄化合物を含む傾向にあり、
更に、重質油分解を触媒存在下で行わせる場合に極めて
有害となりがちな多量の有機金属性不純物を含有してい
る。かかる金属性不純物としては、ニッケル(Ni)及び
バナジウム(V)を含むものが最も多いが、他の金属を
含むものも多い。これらの金属性不純物は、重質油中の
アスファルテン等の比較的高分子の有機化合物と化学的
に結合しており、これらが存在すると、窒素、硫黄及び
酸素含有化合物の分解除去並びに重質有機物の水素化分
解反応に対する触媒活性がかなり阻害される。
【0005】触媒を用いずに減圧蒸留残渣油等の如き重
質油を分解処理する方法としては、熱分解方法であると
ころの、いわゆるコーカー法が知られているが、この方
法においては、多量に副生するコークスの処理の問題に
加えて、過分解によるガス生成量の増加のため、得られ
る留出油の収率低下が免れない上、得られる留出油は芳
香族分、オレフィン成分が多く、品質の悪いものになる
という欠点がある。
【0006】粒状の触媒を反応器内に充填して行う固定
床方式の水素化分解方法では、高度に軽質化を行うと、
前記の如き重質油中のアスファルテンやV、Ni等の重金
属の影響を受け、副生するコーク(Coke)や重金属が次
第に触媒層に沈積し、この結果、触媒の活性低下や触媒
層の閉塞をもたらし、長期連続運転をし得なくなるとい
う問題点がある。
【0007】Co-Mo 系等の押出成形粒子触媒を使用して
沸騰床方式の反応器で水素化分解を行わせる方法におい
ては、沸騰床反応器内の激しい混合状態により、コーク
等の蓄積による圧力損失の増加の問題はなく、又、運転
中に触媒の抜き出しと補給とが可能であることから、触
媒の活性を一定に保ったまま、長期に連続運転でき、固
定床方式の水素化分解方法に比べて利点を有している。
しかしながら、触媒を循環させて運転するため、ポンプ
等のメカニカルな問題があり、固定床方式の水素化分解
方法の場合に比べて運転の難しさがある。また、触媒が
高価であり、反応圧力は一般的に150 〜200kg/cm2 と高
く、反応生成物の脱硫、脱窒素が不充分であるという問
題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な事情
に着目してなされたものであって、その目的は、減圧蒸
留残渣油等の如く重金属を含有する石油系重質油を水素
化分解して軽質化するに際し、経済的に且つ高収率で、
軽質化された軽質な油を得ることができる石油系重質油
の水素化分解方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法は請
求項1〜3記載の石油系重質油の水素化分解方法として
おり、それは次のような構成としたものである。
【0010】即ち、請求項1記載の石油系重質油の水素
化分解方法は、重金属を含有する石油系重質油の水素化
分解方法であり、重金属を含有する石油系重質油と触媒
として添加されたリモナイト鉄鉱石と助触媒として添加
された硫黄とを含む原料スラリーと、水素ガスとを、懸
濁床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応
温度:430 〜455 ℃、反応時間:30〜180 分の反応条件
下で、前記重質油を水素化分解する反応工程を有する石
油系重質油の水素化分解方法であって、前記原料スラリ
ーを加熱して反応温度:430 〜455 ℃に昇温させる途中
で前記原料スラリーを320 〜420 ℃の温度で10〜60分間
加熱する予備加熱をすることを特徴とする石油系重質油
の水素化分解方法である(第1発明)。
【0011】請求項2記載の石油系重質油の水素化分解
方法は、前記予備加熱での加熱温度を340 〜400 ℃とす
る請求項1記載の石油系重質油の水素化分解方法である
(第2発明)。
【0012】請求項3記載の石油系重質油の水素化分解
方法は、前記予備加熱での加熱時間を20〜40分間とする
請求項1または2記載の石油系重質油の水素化分解方法
である(第3発明)。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は例えば次のようにして実
施する。減圧蒸留残渣油等のように重金属を含有する石
油系重質油に触媒としてリモナイト鉄鉱石を添加すると
共に助触媒として硫黄を添加して原料スラリーとなし、
該原料スラリーを水素ガスと共に懸濁床反応器に供給
し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応温度:430〜455
℃、反応時間:30〜180 分の反応条件下で、前記重質油
を水素化分解する反応工程を実施する。このとき、原料
スラリーを加熱して反応温度:430 〜455 ℃に昇温させ
る途中で原料スラリーを320 〜420 ℃の温度で10〜60分
間加熱する予備加熱をし、しかる後、反応温度:430 〜
455 ℃に昇温させる。
【0014】このような形態で本発明に係る石油系重質
油の水素化分解方法が実施される。以下、本発明につい
て主にその作用効果を説明する。
【0015】本発明に係る石油系重質油の水素化分解方
法は、基本的には、重金属を含有する石油系重質油と触
媒として添加されたリモナイト鉄鉱石と助触媒として添
加された硫黄とを含む原料スラリーと、水素ガスとを、
懸濁床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反
応温度:430 〜455 ℃、反応時間:30〜180 分の反応条
件下で、前記重質油を水素化分解する反応工程(以下、
基本的反応工程ともいう)を有するようにしている。上
記リモナイト鉄鉱石は、水素化分解に対する触媒活性が
非常に高く、しかも安価で使い捨て可能な触媒である。
特にこの点に起因して、上記基本的反応工程では、高収
率で軽質化された油を得ることができ、また、触媒が安
価で経済性に優れている。従って、減圧蒸留残渣油等の
如く重金属を含有する石油系重質油を水素化分解して軽
質化するに際し、経済的に且つ高収率で、軽質化された
軽質な油を得ることができる。
【0016】更には、このとき、原料スラリーを加熱し
て反応温度:430 〜455 ℃に昇温させる際に、単に(単
調に)反応温度:430 〜455 ℃に昇温させるのではな
く、昇温の途中で原料スラリーを320 〜420 ℃の温度で
10〜60分間加熱する予備加熱をし、しかる後、反応温
度:430 〜455 ℃に昇温させるようにしている。これに
起因して、重質油の水素化分解の反応性が向上し、ひい
ては、より高い収率で軽質化された油を得ることがで
き、油の収率を高めることができる。
【0017】上記本発明の作用効果等の詳細を、以下に
説明する。
【0018】水素化分解用の触媒としては、基本的に触
媒として活性が高いこと(触媒として水素化分解効率を
高める機能が高い事)、経済上の観点から安価で入手し
易いこと等が必要である。安価であるという点では、硫
化鉄、酸化鉄、赤泥等の鉄系触媒が知られているが、触
媒としての活性(以下、触媒活性という)が充分でない
という問題点がある。本発明者らは、鉄系触媒種の石油
系重質油に対する水素化分解活性に及ぼす影響を鋭意検
討してきた結果、リモナイト鉄鉱石(褐鉄鉱)が石油系
重質油に対する触媒活性に優れていることを見出した。
【0019】このような知見に基づき、本発明に係る石
油系重質油の水素化分解方法においては、基本的には、
水素化分解用の触媒としてリモナイト鉄鉱石を用いるよ
うにし、そして、重金属を含有する石油系重質油に触媒
としてリモナイト鉄鉱石を添加すると共に助触媒として
硫黄を添加して原料スラリーとなし、該原料スラリーを
水素ガスと共に懸濁床反応器に供給し、反応圧力:30〜
160kg/cm2 、反応温度:430〜455 ℃、反応時間:30〜18
0 分の反応条件下で、前記重質油を水素化分解する反応
工程(基本的反応工程)を有するようにしている。
【0020】上記リモナイト鉄鉱石は、前記のように石
油系重質油に対する触媒活性に優れているだけでなく、
安価であり使い捨て可能な触媒である。特にこの点に起
因して、上記基本的反応工程では、重質油の水素化分解
の反応性が優れ、高収率で軽質化された油を得ることが
できる。また、用いられる触媒が安価である点から、経
済性に優れている。従って、減圧蒸留残渣油等の如く重
金属を含有する石油系重質油を水素化分解して軽質化す
るに際し、経済的に且つ高収率で、軽質化された軽質な
油を得ることができる。
【0021】ここで、基本的反応工程での反応条件を、
反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応温度:430 〜455 ℃、
反応時間:30〜180 分としている理由について、以下説
明する。
【0022】反応圧力を30〜160kg/cm2 としているの
は、30kg/cm2〔9.80665 ×104Pa/(kg/cm2)×30kg/cm2
2.94×106Pa =2.94MPa 〕未満とすると、水素分圧が小
さいために、コーク生成量の増大が起こり、160kg/cm2
超とすると、増圧による反応促進の寄与度は顕著でな
く、結果的にコスト高となるからである。反応温度を43
0〜455 ℃としているのは、430 ℃未満とすると、水素
化分解反応が促進せず、軽質化した油を高収率で製造す
るのは困難であり、455 ℃超とすると、熱分解が激しく
なり、重縮合反応の速度が大きくなってコーク生成量が
急激に増加するからである。反応時間を30〜180 分とし
ているのは、30分未満とすると、高収率の油製造が困難
であり、180 分超とすると、水素化分解反応が進みすぎ
て、炭化水素ガスの生成量が多くなり、軽質化された油
の製造量が低下するばかりでなく、水素消費量も必要以
上に多くなり、結果的にコスト高となるからである。
【0023】本発明に係る石油系重質油の水素化分解方
法においては、更には、前記基本的反応工程において原
料スラリーを加熱して反応温度:430 〜455 ℃に昇温さ
せる際に、単に(単調に)反応温度:430 〜455 ℃に昇
温させるのではなく、昇温の途中で原料スラリーを320
〜420 ℃の温度で10〜60分間加熱する予備加熱をし、し
かる後、反応温度:430 〜455 ℃に昇温させるようにし
ている。これに起因して、重質油の水素化分解の反応性
が向上し、ひいては、より高い収率で軽質化された油を
得ることができ、油の収率を高めることができる。これ
は、下記〜のような理由による。
【0024】 リモナイト鉄鉱石触媒の硫化の円滑化
による触媒活性の向上 リモナイト鉄鉱石(FeOOH)触媒は、200 ℃程度より硫黄
と反応し始め、ピロータイト(Pyrrhotite)(Fe1-xS )
を生成し、このピロータイトが触媒活性を発現する。こ
のとき、一部のFeOOH は活性が低いとされるトロイタイ
ト(FeS)を生成する。
【0025】前記のような予備加熱をすると、リモナイ
ト鉄鉱石触媒の硫化がスムーズ(円滑)に進み、トロイ
タイト(FeS)の生成が抑制され、ピロータイトの生成量
が多くなり、かつ、生成するピロータイトの結晶サイズ
が小さくなり、このため触媒活性が向上し、それにより
重質油の水素化分解の反応性が向上する。
【0026】 重質油の熱分解ラジカルの重縮合反応
の抑制による軽質化反応性の向上 重質油の一部は350 ℃程度より熱分解が起こり始めてい
ると考えられ、温度の上昇と共に熱分解速度は速くな
る。
【0027】重質油が熱分解して生じたラジカル(熱分
解ラジカル)に、触媒を介して水素が供与されることに
より、軽質化反応が進行する。
【0028】原料スラリーを加熱して反応温度:430 〜
455 ℃に昇温させる際に、単に(一気に)反応温度:43
0 〜455 ℃まで昇温させると、熱分解ラジカルに水素が
供与される速度が、熱分解ラジカルの生成速度に追いつ
けず、熱分解ラジカル同士が重縮合反応を起こし、反応
性が悪くなり、軽質化が進みにくくなる。
【0029】これに対し、前記のような予備加熱をする
と、熱分解で生じるラジカルの生成が抑制され、熱分解
ラジカルに対して充分な水素供与が行われ、熱分解ラジ
カル同士の重縮合化が抑制され、これによって反応性が
向上し、軽質化がよく進行する。
【0030】 重質油中のアスファルテンのミセル構
造体の凝集の抑制による水素化分解の反応性の向上 重質油中のアスファルテン成分は、平均環数5〜6環の
芳香環をコアとし、その外側にアルキル基本を有する構
造体が、数層積層したミセル構造を形成していると考え
られる。
【0031】原料スラリーを加熱して反応温度:430 〜
455 ℃に昇温させる際に、単に(一気に)反応温度:43
0 〜455 ℃まで昇温させると、積層したミセル構造体が
凝集し、このため重質油の水素化分解の反応性が低下す
る。
【0032】これに対し、前記のような予備加熱をする
と、重質油中の油分や重質油の熱分解により生成した油
分が、ミセル構造の中に含浸し、ミセル構造体の凝集を
抑制し、これにより重質油の水素化分解の反応性が向上
する。即ち、ミセル構造の中に油分が含浸するのに充分
な時間が与えられ、それにより油分がミセル構造の中に
含浸してミセル構造体の凝集が抑制され、それにより重
質油の水素化分解の反応性が向上する。
【0033】前記原料スラリーの予備加熱の温度条件を
320 〜420 ℃としているのは、320℃未満にすると、重
質油の水素化分解の反応性の向上が充分でなく、ひいて
は軽質化された油の収率の向上が不充分であり、320 ℃
以上においては370 ℃付近の温度までは温度が高くなる
に伴い油の収率が高くなり、370 ℃付近からは油の収率
が徐々に低下し、420 ℃超にすると、油の収率の向上が
不充分となり、また、前記基本的反応工程での反応条件
温度:430 〜455 ℃に近くなってしまう(つまり、予備
加熱しない条件で、いきなり反応させるのと同様の条件
となる)からである。なお、370 ℃付近から油の収率が
徐々に低下するのは、予備加熱する温度が高くなると、
前述の〜(リモナイト鉄鉱石触媒の硫化の円滑化に
よる触媒活性の向上、重質油の熱分解ラジカルの重縮合
反応の抑制による軽質化反応性の向上、重質油中のアス
ファルテンのミセル構造体の凝集の抑制による水素化分
解の反応性の向上)の効果が小さくなる(予備加熱しな
い場合と同様の操作に近くなる)ためであると考えられ
る。
【0034】前記予備加熱の時間を10〜60分間としてい
るのは、10分間未満にすると、重質油の水素化分解の反
応性の向上が充分でなく、ひいては軽質化された油の収
率の向上が不充分であり、10分間以上60分間以下におい
ては時間(加熱時間)が長い方が重質油の水素化分解の
反応性が向上し、油の収率の向上の程度が大きくなる
が、60分間超においては、その効果(重質油の水素化分
解の反応性向上による油の収率向上の効果)はほぼ飽和
に達し、経済性が悪くなるからである。
【0035】前記原料スラリーの予備加熱での加熱温度
を340 〜400 ℃とすることが望ましい(第2発明)。そ
うすると、重質油の水素化分解の反応性向上による油の
収率向上の効果をより高い水準で得ることができる。か
かる効果を更に高い水準とするには、予備加熱での加熱
温度は350 〜390 ℃とすることが望ましい。
【0036】前記原料スラリーの予備加熱での加熱時間
については、これを20分間以上とすると、重質油の水素
化分解の反応性向上による油の収率向上の効果をより高
い水準で得ることができる。経済性の点からすると、加
熱時間は短い方がよく、40分間以下とすることが望まし
い。これらの点から前記予備加熱での加熱時間を20〜40
分間とすることが望ましい(第3発明)。更には、25〜
35分間とすることが望ましい。
【0037】前記原料スラリーの予備加熱に際し、加熱
温度は一定としてもよいし、変化させてもよい。即ち、
前記原料スラリーを320 〜420 ℃の温度で10〜60分間加
熱するに際し、320 〜420 ℃の温度から選定される温度
(T℃)に10〜60分間保持する方式(以下、一定温度保
持方式ともいう)でもよいし、320 〜420 ℃の温度から
選定される温度域(温度T1 〜温度T2 )において温度
1 から温度T2 まで10〜60分間で昇温させる方式、つ
まり、温度T1 から温度T2 になるまでの時間を10〜60
分間とする方式(以下、温度変化方式ともいう)でもよ
く、あるいは、これらを組み合わせた方式(以下、組合
せ方式ともいう)でもよい。この組合せ方式は、例え
ば、温度T1 から温度T2 まで昇温させる途中で、その
間の温度に何分か保持し、温度T1 から温度T2 までの
加熱時間の合計を10〜60分間としたり、あるいは、温度
1 に何分か保持した後、温度T2 まで昇温させ、加熱
時間の合計を10〜60分間とすること等によって行う方式
である。なお、前記原料スラリーの予備加熱での加熱温
度を340 〜400 ℃とする場合には、上記320 〜420 ℃を
340 〜400 ℃と読み替え、また、前記予備加熱での加熱
時間を20〜40分間とする場合には、上記10〜60分間を20
〜40分間と読み替えるものとする。
【0038】本発明に係る石油系重質油の水素化分解方
法での基本的反応工程においては重質油の水素化分解反
応生成物が得られる。この水素化分解反応生成物から
は、それを蒸留等の方法により分留すること等により、
種々の沸点範囲の油(留分)を得ることができる。例え
ば、沸点範囲がC5〜171 ℃のガソリン留分、171 〜232
℃の灯油留分、232 〜343 ℃の軽油留分、343 〜525 ℃
の重油留分等である。これらはいずれも、原料の重質油
からみて、軽質化された油である。
【0039】本発明において、原料として用いられる重
金属を含有する石油系重質油としては、特には限定され
ず、常圧蒸留残渣油や減圧蒸留残渣油の如く重金属を含
有する石油系重質油を用いることができる。また、天然
に存在するビチューメン(タールサンド、オイルサンド
等)のような重金属を含有する超重質油に対しても適応
可能である。上記重金属は、触媒としてNi-Mo 系やCo-M
o 系等の触媒が用いられた場合にその触媒の被毒原因と
なる金属類のことであり、特には限定されず、例えばNi
やVを挙げることができる。
【0040】本発明に係る石油系重質油の水素化分解方
法での基本的反応工程における触媒のリモナイト鉄鉱石
の添加量は、石油系重質油の量に対して鉄成分として0.
3 〜2質量%とすることが望ましい。これは、リモナイ
ト鉄鉱石の添加量を0.3 質量%未満とすると、特にアス
ファルテン成分及びコークの収率が増大する傾向があ
り、2質量%超とすると、450 ℃以下の油収率増大効果
が顕著ではなくなるからである。また、助触媒の硫黄の
添加量については、触媒のリモナイト鉄鉱石から触媒活
性を発現するピロータイトに転換させるためにリモナイ
ト鉄鉱石中の鉄含有量に対して原子比で1倍以上添加す
ることが望ましいが、それ以上の添加量については経済
的観点から例えばリモナイト鉄鉱石中の鉄含有量に対し
て原子比で3倍以下の添加量とすることが望ましい。
【0041】前記基本的反応工程での触媒のリモナイト
鉄鉱石として、平均粒子径2μm 以下の微粉状のリモナ
イト鉄鉱石を用いることが望ましい。触媒の平均粒子径
が大きい場合、触媒の実効表面積が小さいために触媒と
原料の石油系重質油との接触効率が低く、触媒活性が低
いが、触媒の平均粒子径が平均粒子径2μm 以下と小さ
くなると、触媒の実効表面積が増大して触媒活性が高く
なるからである。このような点から触媒の平均粒子径は
小さいほど良く、さらに平均粒子径1μm 以下とするこ
とが望ましい。
【0042】かかる平均粒子径2μm 以下の微粉状のリ
モナイト鉄鉱石は、リモナイト鉄鉱石を機械的に粉砕す
ることにより得られるが、この粉砕は乾式ではなく、石
油系溶剤中で行われることが望ましい。気流式粉砕機等
を用いて乾式粉砕されて得られた触媒は、重質油及び触
媒を含む原料スラリー中において著しく凝集し、触媒の
分散性が悪くなるのに対し、石油系溶剤中で機械的に粉
砕されて得られた触媒は、上記の如き原料スラリー中で
の凝集が起こり難く、触媒の分散性に優れており、触媒
活性が高められるからである。
【0043】リモナイト鉄鉱石は、粉末X線回折分析で
α−オキシ水酸化鉄とα−酸化鉄が成分として認められ
るが、産出地、鉱区等により、それらの成分比が異なっ
ており、更に、かかる成分比が触媒特性に及ぼす影響を
検討した結果、実質的に酸化鉄を含まないリモナイト鉄
鉱石が最も触媒活性が高いことを見出した。従って、触
媒活性をより高めるために、前記基本的反応工程でのリ
モナイト鉄鉱石として、実質的に酸化鉄を含まないリモ
ナイト鉄鉱石を用いることが望ましい。
【0044】上記の如く、実質的に酸化鉄を含まないリ
モナイト鉄鉱石が最も触媒活性が高い理由について、以
下説明する。
【0045】鉄系化合物は一般に硫黄や硫黄化合物によ
り硫化され、ピロータイト(Pyrrh-otite, Fe1-xS )と
称される硫化鉄が触媒活性を発現する活性種となる。こ
のピロータイトに転換する温度が低い程、水素化分解の
対象原料が分解し始める前に活性種が存在することにな
り、この対象原料から発生した熱分解ラジカルに対して
充分な水素供与が行われるため、熱分解ラジカル同士の
重合化が抑制されて軽質化がよく進行する。即ち、触媒
活性が高いことになる。
【0046】α−オキシ水酸化鉄はα−酸化鉄に比べて
ピロータイトへの転換温度が低く、従って、実質的に酸
化鉄を含まないリモナイト鉄鉱石が最も触媒活性が高く
なるのである。因みに、ピロータイトへの転換温度は、
α−オキシ水酸化鉄の場合で200 ℃、α−酸化鉄の場合
で350 ℃であり、他の鉄系触媒の一例として天然パイラ
イト(FeS2)の場合は350 ℃であり、これらのこと等か
らα−オキシ水酸化鉄が極めて低い温度でピロータイト
に転換することがわかる。ここで、上記実質的に酸化鉄
を含まないリモナイト鉄鉱石とは、粉末X線回折分析で
分析されるα−酸化鉄の量が10重量(質量)%以下であ
るリモナイト鉄鉱石をいう。
【0047】
【実施例】本発明の実施例を以下説明するが、本発明は
その要旨を越えない限り、これら実施例に限定されるも
のではない。
【0048】〔実施例1〕重金属を含有する石油系重質
油として原油の減圧蒸留残渣油(以下、VRという)を用
い、該VRに対し、触媒として粉砕したリモナイト鉄鉱石
を鉄で該VR量の1質量%となるように添加し、更に、助
触媒として硫黄を鉄の2倍量(リモナイト鉄鉱石中の鉄
量に対して原子比で2倍の量)となるように添加し、こ
れにより原料スラリーを得た。なお、上記VRの留分構成
は表1に示す通りである。
【0049】上記原料スラリーを内容積5リットル(以
下、L)の攪拌式オートクレーブに入れ、また、該オー
トクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス供給圧力(反
応圧力):10MPa (102kg/cm2 )とし、次に、この状態
で350 ℃の温度まで昇温し、この350 ℃の温度にて上記
原料スラリーを30分間加熱する予備加熱(一定温度保持
方式の予備加熱)をし、しかる後、450 ℃まで昇温し、
反応温度:450 ℃、反応時間:60分、反応圧力:10MPa
の反応条件下で、前記VR(減圧蒸留残渣油すなわち重質
油)を水素化分解する反応を行わせた。
【0050】このとき、320 ℃から350 ℃までの昇温に
4分間、350 ℃から420 ℃までの昇温に17分間を要し、
350 ℃での30分間の予備加熱を含め、320 ℃から420 ℃
まで合計51分間の時間を要した。
【0051】上記反応後、生成ガス、生成液等の水素化
分解生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。な
お、表2において、生成ガスおよび生成液等(以下、留
分等ともいう)の収率は、得られた留分等の量のVR供給
量に対するwt%(質量%)での割合(wt% on feed VR)
である。
【0052】表1及び表2からわかるように、沸点525
℃以下の留分が原料のVR中で14.64wt%(質量%)であ
ったが、水素化分解反応により、沸点525 ℃以下の留分
すなわちC5(C5H12 :ペンタン)〜沸点525 ℃の留分が
74.27wt %に増加しており、沸点525 ℃超の留分が20.8
6 wt%まで減少した。また、コーク収率は3.31wt%に抑
えられている。
【0053】〔実施例2〕実施例1の場合と同様の原料
スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、
また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス
供給圧力(反応圧力):10MPa とし、次に、この状態で
380 ℃の温度まで昇温し、この380 ℃の温度にて上記原
料スラリーを30分間加熱する予備加熱をし、しかる後、
450 ℃まで昇温し、反応温度:450 ℃、反応時間:60
分、反応圧力:10MPa の反応条件下でVRを水素化分解す
る反応を行わせた。
【0054】このとき、320 ℃から380 ℃までの昇温に
8分間、380 ℃から420 ℃までの昇温に10分間を要し、
380 ℃での30分間の予備加熱を含め、320 ℃から420 ℃
まで合計48分間の時間を要した。
【0055】上記反応後、実施例1の場合と同様にし
て、各生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。
表1及び表2からわかるように、実施例1の場合とほぼ
同等の結果が得られた。即ち、沸点525 ℃以下の留分が
原料のVR中で14.64 wt%(質量%)であったが、水素化
分解反応により、沸点525 ℃以下の留分すなわちC5〜沸
点525 ℃の留分が76.52wt %に増加しており、沸点525
℃超の留分が19.24 wt%まで減少した。また、コーク収
率は3.18wt%に抑えられている。
【0056】〔実施例3〕実施例1の場合と同様の原料
スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、
また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス
供給圧力(反応圧力):10MPa とし、次に、この状態で
320 ℃の温度まで昇温し、この320 ℃の温度にて上記原
料スラリーを30分間加熱する予備加熱をし、しかる後、
450 ℃まで昇温し、反応温度:450 ℃、反応時間:60
分、反応圧力:10MPa の反応条件下でVRを水素化分解す
る反応を行わせた。
【0057】このとき、320 ℃から420 ℃までの昇温に
24分間を要し、320 ℃での30分間の予備加熱を含め、32
0 ℃から420 ℃まで合計54分間の時間を要した。
【0058】上記反応後、実施例1の場合と同様にし
て、各生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。
表1及び表2からわかるように、沸点525 ℃以下の留分
が原料のVR中で14.64 wt%(質量%)であったが、水素
化分解反応により、沸点525 ℃以下の留分すなわちC5〜
沸点525 ℃の留分が72.58wt %に増加しており、沸点52
5 ℃超の留分が23.21 wt%まで減少した。また、コーク
収率は2.85wt%に抑えられている。
【0059】上記水素化分解反応後のC5〜沸点525 ℃の
留分の収率(72.58wt %)は、実施例1の場合の収率
(74.27wt %)に比べると低いが、後述する比較例1の
場合に比べると優れている。このように実施例3の場合
には比較例1の場合に比較してC5〜沸点525 ℃の留分の
収率が優れているのは、反応温度:450 ℃に昇温させる
途中で原料スラリーを320 ℃で30分間加熱する予備加熱
をしてからである。
【0060】〔実施例4〕実施例1の場合と同様の原料
スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、
また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス
供給圧力(反応圧力):10MPa とし、次に、この状態で
420 ℃の温度まで昇温し、この420 ℃の温度にて上記原
料スラリーを30分間加熱する予備加熱をし、しかる後、
450 ℃まで昇温し、反応温度:450 ℃、反応時間:60
分、反応圧力:10MPa の反応条件下でVRを水素化分解す
る反応を行わせた。
【0061】このとき、320 ℃から420 ℃までの昇温に
14分間を要し、420 ℃での30分間の予備加熱を含め、32
0 ℃から420 ℃まで合計44分間の時間を要した。
【0062】上記反応後、実施例1の場合と同様にし
て、各生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。
表1及び表2からわかるように、沸点525 ℃以下の留分
が原料のVR中で14.64 wt%(質量%)であったが、水素
化分解反応により、沸点525 ℃以下の留分すなわちC5〜
沸点525 ℃の留分が70.34wt %に増加しており、沸点52
5 ℃超の留分が24.17 wt%まで減少した。また、コーク
収率は4.37wt%に抑えられている。
【0063】上記水素化分解反応後のC5〜沸点525 ℃の
留分の収率(70.34wt %)は、実施例1の場合の収率
(74.27wt %)に比べると低いが、後述する比較例1の
場合に比べると優れている。このように実施例4の場合
には比較例1の場合に比較してC5〜沸点525 ℃の留分の
収率が優れているのは、反応温度:450 ℃に昇温させる
途中で原料スラリーを420 ℃で30分間加熱する予備加熱
をしてからである。
【0064】〔実施例5〕実施例1の場合と同様の原料
スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、
また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス
供給圧力(反応圧力):10MPa とし、次に、この状態で
380 ℃の温度まで昇温し、この380 ℃の温度にて上記原
料スラリーを10分間加熱する予備加熱をし、しかる後、
450 ℃まで昇温し、反応温度:450 ℃、反応時間:60
分、反応圧力:10MPa の反応条件下でVRを水素化分解す
る反応を行わせた。
【0065】このとき、320 ℃から380 ℃までの昇温に
8分間、380 ℃から420 ℃までの昇温に10分間を要し、
380 ℃での10分間の予備加熱を含め、320 ℃から420 ℃
まで合計28分間の時間を要した。
【0066】上記反応後、実施例1の場合と同様にし
て、各生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。
表1及び表2からわかるように、沸点525 ℃以下の留分
が原料のVR中で14.64 wt%(質量%)であったが、水素
化分解反応により、沸点525 ℃以下の留分すなわちC5〜
沸点525 ℃の留分が70.53wt %に増加しており、沸点52
5 ℃超の留分が24.72 wt%まで減少した。また、コーク
収率は4.26wt%に抑えられている。
【0067】上記水素化分解反応後のC5〜沸点525 ℃の
留分の収率(70.53wt %)は、実施例1の場合の収率
(74.27wt %)に比べると低いが、後述する比較例1の
場合に比べると優れている。このように実施例5の場合
には比較例1の場合に比較してC5〜沸点525 ℃の留分の
収率が優れているのは、反応温度:450 ℃に昇温させる
途中で原料スラリーを380 ℃で10分間加熱する予備加熱
をしてからである。
【0068】〔実施例6〕実施例2で得られた重質成分
(ボトム成分、即ち、沸点525 ℃以上の成分)を原料VR
に対して50wt%(質量%)となるように原料VRと共に仕
込み、実施例2の場合と同一の反応条件下で水素化分解
反応を行わせた。なお、粉砕したリモナイト鉄鉱石触媒
の添加量は鉄で原料VR量の1質量%となるようにし、助
触媒の硫黄の添加量は実施例2の場合と同様に鉄の2倍
量となるようにした。
【0069】ここで、水素化分解反応は反応温度:450
℃、反応時間:60分、反応圧力:10MPa の反応条件下で
行うが、実施例2の場合と同様に反応温度:450 ℃に昇
温させる途中で380 ℃の温度で30分間加熱する予備加熱
をする。しかる後、450 ℃まで昇温し、反応温度:450
℃、反応時間:60分、反応圧力:10MPa の反応条件下で
水素化分解する反応を行わせる。
【0070】このとき、320 ℃から380 ℃までの昇温に
9分間、380 ℃から420 ℃までの昇温に10分間を要し、
380 ℃での30分間の予備加熱を含め、320 ℃から420 ℃
まで合計49分間の時間を要した。
【0071】上記反応後、実施例1の場合と同様にし
て、各生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。
表1及び表2からわかるように、沸点525 ℃超の留分が
7.78wt%(質量%)であり、実施例2の場合のそれ(1
9.24 wt%)に比較して極めて低く、大幅に低減され
た。また、沸点525 ℃以下の留分すなわちC5〜沸点525
℃の留分が84.58wt %であり、実施例2の場合のそれ
(76.52 wt%)に比較して高い。コーク収率は3.54wt%
に抑えられている。
【0072】なお、このように実施例6の場合には実施
例2の場合に比較して沸点525 ℃の留分の収率が低
く、C5〜沸点525 ℃の留分の収率が優れているのは、実
施例6の場合には実施例2で得られた重質成分(ボトム
成分)を原料VRと共に仕込んだこと、即ち、所謂ボトム
循環(リサイクル)をしたことによるものである。
【0073】実施例6の場合のC5〜沸点525 ℃の留分の
収率(84.58wt %)は、後述する比較例3(ボトム循環
あり)の場合に比べて優れている。また、実施例6の場
合の沸点525 ℃超の留分の収率(7.78wt%)およびコー
ク収率(3.54wt%)は、比較例3の場合に比べて低い。
これは、実施例6の場合には、反応温度:450 ℃に昇温
させる途中で原料スラリーを380 ℃で30分間加熱する予
備加熱をしているからである。
【0074】〔比較例1〕実施例1の場合と同様の原料
スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、
また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス
供給圧力(反応圧力):10MPa とし、次に、この状態で
原料スラリーを450 ℃まで昇温し、反応温度:450 ℃、
反応時間:60分、反応圧力:10MPa の反応条件下でVRを
水素化分解する反応を行わせた。
【0075】なお、実施例1の場合のような予備加熱は
行わず、室温から反応温度:450 ℃まで一気に昇温し
た。320 ℃から420 ℃までの昇温に8分間を要した。
【0076】上記反応後、実施例1の場合と同様にし
て、各生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。
表1及び表2からわかる如く、沸点525 ℃以下の留分す
なわちC5〜沸点525 ℃の留分の収率は、64.26wt%であ
り、実施例1の場合(74.27wt%)よりも低い。沸点525
℃超の留分の収率は、28.52wt%であり、実施例1の場合
(20.86wt%)よりも多い。コーク収率は5.36wt% であ
り、実施例1の場合(3.31wt% )よりも多い。
【0077】〔比較例2〕実施例1の場合と同様の原料
スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、
また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス
供給圧力(反応圧力):10MPa とし、次に、この状態で
310 ℃の温度まで昇温し、この310 ℃の温度にて上記原
料スラリーを30分間加熱する予備加熱をし、しかる後、
450 ℃まで昇温し、反応温度:450 ℃、反応時間:60
分、反応圧力:10MPa の反応条件下でVRを水素化分解す
る反応を行わせた。
【0078】なお、上記予備加熱後は、310 ℃から反応
温度:450 ℃まで一気に昇温した。320 ℃から420 ℃ま
での昇温に8分間を要した。
【0079】上記反応後、実施例1の場合と同様にし
て、各生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。
表1及び表2からわかる如く、沸点525 ℃以下の留分す
なわちC5〜沸点525 ℃の留分の収率は、66.82wt%であ
り、実施例3の場合(72.58wt%)よりも低い。沸点525
℃超の留分の収率は、26.91wt%であり、実施例3の場合
(23.21wt%)よりも多い。コーク収率は3.29wt% であ
り、実施例3の場合(2.85wt% )よりも多い。
【0080】この結果は、反応温度:450 ℃に昇温させ
る途中で原料スラリーを予備加熱する際、320 ℃にて30
分間加熱する予備加熱では効果があるが、310 ℃にて30
分間加熱する予備加熱では効果がないことを示してい
る。
【0081】〔比較例3〕実施例6(ボトム循環あり)
の場合と同様、ボトム循環をし、そして、水素化分解す
る反応を行わせた。ただし、実施例6の場合のような予
備加熱は行わず、室温から反応温度:450 ℃まで一気に
昇温した。320 ℃から420 ℃までの昇温に8分間を要し
た。
【0082】上記反応後、実施例1の場合と同様にし
て、各生成物の収率を求めた。この結果を表2に示す。
表1及び表2からわかる如く、沸点525 ℃以下の留分す
なわちC5〜沸点525 ℃の留分の収率は、74.92wt%であ
り、実施例6の場合(84.58wt%)よりも低い。沸点525
℃超の留分の収率は、15.49wt%であり、実施例6の場合
(7.78wt% )よりも多い。コーク収率は7.29wt% であ
り、実施例6の場合(3.54wt% )よりも多い。
【0083】上記の実施例(実施例1〜6)、比較例
(比較例1〜3)の中、一定温度(T℃)にて30分間加
熱する予備加熱をしたもの(ただし、ボトム循環ありの
ものを除く)、即ち、実施例1〜4および比較例2の場
合について、予備加熱の際の保持温度(T℃)と沸点52
5 ℃以下の留分すなわちC5〜沸点525 ℃の留分の収率と
の関係を図1に示す。この図1から、保持温度が320 ℃
未満である場合には、C5〜沸点525 ℃の留分(以下、油
留分)の収率が低く、320 ℃以上になると油留分の収率
が高くなり、370 〜380 ℃付近の温度になると油留分の
収率が最も高くなり、380 ℃付近から420 ℃までは油留
分の収率が徐々に低下し、420 ℃超になると油留分の収
率がさらに低くなって不充分となることが示唆される。
【0084】なお、上記実施例(実施例1〜6)、比較
例(比較例1〜3)においては、重金属を含有する石油
系重質油として原油の減圧蒸留残渣油(VR)を用いた
が、これに代えて原油の常圧蒸留残渣油やオイルサンド
を用いた場合も、上記実施例、比較例の場合と同様の傾
向の結果が得られる。上記実施例、比較例ではリモナイ
ト鉄鉱石触媒の添加量を1質量%としたが、これに代え
てその他の添加量(例えば、0.5 質量%)とした場合
も、上記実施例、比較例の場合と同様の傾向の結果が得
られる。上記実施例、比較例では水素化分解反応の条件
を、反応温度:450℃、反応時間:60分、反応圧力:10M
Pa としたが、これに代えてその他の条件とした場合も
(例えば、反応温度:450 ℃、反応時間:90分、反応圧
力:10MPa とした場合も、反応温度:450 ℃、反応時
間:60分、反応圧力:15MPa とした場合も)、上記実施
例、比較例の場合と同様の傾向の結果が得られる。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【発明の効果】本発明に係る石油系重質油の水素化分解
方法によれば、減圧蒸留残渣油等の如く重金属を含有す
る石油系重質油を水素化分解して軽質化するに際し、経
済的に且つ高収率で、軽質化された軽質な油を得ること
ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例および比較例に係る予備加熱の際の予
備加熱温度と油(525 ℃以下)収率との関係を示す図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥山 憲幸 兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目3番1号 株式会社神戸製鋼所高砂製作所内 (72)発明者 田村 正明 兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目3番1号 株式会社神戸製鋼所高砂製作所内 (72)発明者 重久 卓夫 兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目3番1号 株式会社神戸製鋼所高砂製作所内 Fターム(参考) 4G069 AA02 BA16B BD08B CC05 DA08 4H029 CA00 DA00

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重金属を含有する石油系重質油の水素化
    分解方法であり、重金属を含有する石油系重質油と触媒
    として添加されたリモナイト鉄鉱石と助触媒として添加
    された硫黄とを含む原料スラリーと、水素ガスとを、懸
    濁床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応
    温度:430 〜455 ℃、反応時間:30〜180 分の反応条件
    下で、前記重質油を水素化分解する反応工程を有する石
    油系重質油の水素化分解方法であって、前記原料スラリ
    ーを加熱して反応温度:430 〜455 ℃に昇温させる途中
    で前記原料スラリーを320 〜420 ℃の温度で10〜60分間
    加熱する予備加熱をすることを特徴とする石油系重質油
    の水素化分解方法。
  2. 【請求項2】 前記予備加熱での加熱温度を340 〜400
    ℃とする請求項1記載の石油系重質油の水素化分解方
    法。
  3. 【請求項3】 前記予備加熱での加熱時間を20〜40分間
    とする請求項1または2記載の石油系重質油の水素化分
    解方法。
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