JP2003327917A - 日射遮蔽材料の製造方法とこの日射遮蔽材料を用いた塗布液並びに日射遮蔽膜 - Google Patents

日射遮蔽材料の製造方法とこの日射遮蔽材料を用いた塗布液並びに日射遮蔽膜

Info

Publication number
JP2003327917A
JP2003327917A JP2002141101A JP2002141101A JP2003327917A JP 2003327917 A JP2003327917 A JP 2003327917A JP 2002141101 A JP2002141101 A JP 2002141101A JP 2002141101 A JP2002141101 A JP 2002141101A JP 2003327917 A JP2003327917 A JP 2003327917A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solar radiation
radiation shielding
film
less
sun
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002141101A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Naganami
武 長南
Hiroko Kuno
裕子 久野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2002141101A priority Critical patent/JP2003327917A/ja
Publication of JP2003327917A publication Critical patent/JP2003327917A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 日射透過率とヘイズ値の低い日射遮蔽膜を可
能とする日射遮蔽材料の製造方法とこの材料を用いた塗
布液、日射遮蔽膜を提供する。 【解決手段】 この製造法は、元素換算でSn含有量が5
重量%以上12重量%未満の錫化合物とインジウム化合物
を含有し50℃以下に調整された混合溶液にアルカリ溶液
を30分未満の条件で滴下すると共に攪拌しながら熟成さ
せて沈澱物を得る工程、デカンテーションにて残留する
塩素不純物量が0.2重量%以下となるよう上記沈澱物を
洗浄した後、乾燥して比表面積が100m2/gを超えるイ
ンジウムと錫から成る水酸化物を得る工程、この水酸化
物を還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下にお
いて攪拌しながら25分未満の条件で加熱処理した後、空
気中で酸化させて比表面積が50m2/g以上のインジウ
ム錫酸化物微粒子から成る日射遮蔽材料を得る工程を具
備する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両、ビル、事務
所、一般住宅などの窓、電話ボックス、ショーウィンド
ー、照明用ランプ、透明ケースなど、ガラス、プラスチ
ックスその他の日射遮蔽機能を必要とする透明基材に適
用される日射遮蔽材料に係り、特に、可視光透過率が8
0%以上の高い領域でも日射透過率が低くしかもヘイズ
値の低い日射遮蔽膜の形成を可能とする日射遮蔽材料の
製造方法とこの日射遮蔽材料を用いた塗布液並びに日射
遮蔽膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】太陽光や電球などの外部光源から熱成分
を除去・減少する方法として、従来、ガラス表面に赤外
線を反射する材料からなる膜を形成して熱線反射ガラス
とすることが行われていた。その材料にはFeOx、C
oOx、CrOx、TiOxなどの金属酸化物やAg、
Au、Cu、Ni、Alなどの自由電子を多量にもつ金
属材料が選択されてきた。
【0003】しかし、これらの材料では熱効果に大きく
寄与する赤外線以外に、可視光も同時に反射もしくは吸
収する性質があるため可視光透過率が低下する問題があ
った。そして、建材、乗り物、電話ボックスなどに用い
られる透明基材では可視光領域の高い透過率が必要とさ
れることから、上記材料を利用する場合は膜厚を非常に
薄くしなければならない。このため、スプレー焼付けや
CVD法、あるいはスパッタ法や真空蒸着法などの物理
成膜法を用いて10nmレベルの薄膜に成膜して用いら
れることが通常行われてきた。
【0004】しかしながら、これらの成膜方法は大がか
りな装置や真空設備を必要とし、生産性や大面積化に問
題があり、膜の製造コストが高いといった欠点がある。
また、これ等材料で日射遮蔽特性(波長域300〜21
00nmの光を遮蔽する特性)を高くしようとすると、
可視光領域の反射率も同時に高くなってしまう傾向があ
り、鏡のようなギラギラした外観を与えて美観を損ねて
しまう。更に、これらの材料では膜の導電性が高いもの
が多く、膜の導電性が高いと携帯電話やTV、ラジオな
どの電波を反射して受信不能になったり、周辺地域に電
波障害を引き起こすなどの問題がある。
【0005】このような従来の欠点を改善するには、膜
の物理特性として、可視光領域の光の反射率が低くて赤
外線領域の反射率が高く、かつ膜の表面抵抗が概ね10
6Ω/□以上の膜を形成する必要があった。
【0006】ところで、可視光透過率が高くしかも優れ
た日射遮蔽機能を持つ材料の一つとしてインジウム錫酸
化物(以下、ITOと略す)が知られている。
【0007】そして、この日射遮蔽機能を有するITO
を得る方法として、一般的にはインジウム塩と錫塩の混
合水溶液に沈澱剤を添加して共沈させ、この沈殿物を乾
燥焼成する方法(共沈法)が知られている。例えば、特
開平7−69632号公報にはITO粉末をさらに加圧
不活性ガス中で熱処理する方法が、特開平5−2483
7号公報にはアルコ−ル雰囲気下で加熱処理する方法
が、特許第3122375号公報には錫塩およびインジ
ウム塩の混合溶液を30℃以下に保持しながらアルカリ
水溶液を反応系のpHが最終的に5.0〜9.0となる
ように、0.5〜12時間の添加時間で添加して得られ
た水和物を不活性ガス雰囲気下あるいは還元性ガス雰囲
気下で加熱処理する方法等が提案されている。更に、特
開平7−21831号公報には2種以上の遷移金属の組
合せから成る導電性酸化物原料を加圧不活性ガス中で熱
処理する方法が、特許第3175212号公報にはアル
コール雰囲気下で加熱処理する方法が提案されている。
【0008】しかしながら、これ等の方法ではITOに
対し所望とする脱酸素を施すための還元処理に要する時
間が1時間以上と長く生産効率が悪い欠点があった。
【0009】また、これ等方法で得られたITO粉末を
用いて形成した膜では、80%以上の高い可視光透過率
を維持しつつ、60%以下の低い日射透過率でかつ1%
を下回るような低ヘイズ値の膜を形成するような材料は
未だ実現されていなかった。
【0010】上記ヘイズ値は、全透過光に対する拡散透
過光の割合であり、この値が高いと人間の目には曇って
見える。したがって、透明性を要求される窓材、特によ
り透明性を必要とする車両用途では、1%を下回る低ヘ
イズ値の膜が望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の課題
とするところは、可視光透過率が80%以上の高い領域
でも日射透過率が低くしかもヘイズ値が低い日射遮蔽材
料についてその生産性に優れた製造方法を確立すること
にあり、更には高コストの物理成膜法を用いずに簡便な
塗布法で日射遮蔽膜を形成できる塗布液とこれを用いた
日射遮蔽膜を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】そして、上記目的を達成
するため本発明者等が鋭意研究を継続した結果、所望と
する脱酸素を施すための還元処理に要する時間が長くか
かる等の弊害原因として、上記共沈法で得られた沈殿物
内に含まれる不純物、特に残留する塩素不純物にあるこ
とを見出すに至った。
【0013】すなわち、共沈法で得られた沈殿物をデカ
ンテーションにより洗浄して残留する塩素不純物量が
0.2重量%以下となるよう調製することで上記還元処
理時間の短縮が可能となり、更に、このような洗浄処理
を施して得られた日射遮蔽材料を分散した膜若しくは成
形体においては、可視光領域に透過率の極大を持つと共
に可視光領域に近い近赤外域に強いプラズマ吸収を発現
して透過率の極小を持ちかつヘイズ値が極めて低くなる
という現象を見出すに至った。
【0014】本発明はこのような技術的発見に基づき完
成されたものである。
【0015】すなわち、請求項1に係る発明は、インジ
ウム錫酸化物微粒子で構成される日射遮蔽材料の製造方
法を前提とし、元素換算でSn含有量が5重量%以上1
2重量%未満の錫化合物とインジウム化合物を含有しか
つ50℃以下の温度に調整された原料混合溶液にアルカ
リ溶液を滴下時間30分未満の条件で滴下すると共に継
続的に攪拌しながら熟成させて沈澱物を得る工程と、残
留する塩素不純物量が0.2重量%以下となるよう上記
沈澱物をデカンテーションにより洗浄した後、乾燥して
比表面積が100m2/gを超えるインジウムと錫から
成る水酸化物を得る工程と、この水酸化物を還元性ガス
と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下において攪拌しなが
ら25分未満の条件で加熱処理した後、空気中で酸化さ
せて比表面積が50m2/g以上のインジウム錫酸化物
微粒子から成る日射遮蔽材料を得る工程、を具備するこ
とを特徴とするものである。
【0016】また、請求項2に係る発明は、溶媒中に日
射遮蔽材料が分散した日射遮蔽膜形成用塗布液を前提と
し、上記日射遮蔽材料が請求項1記載の日射遮蔽材料で
構成されかつその固形分濃度が30重量%以下であるこ
とを特徴とし、請求項3に係る発明は、請求項2記載の
発明に係る日射遮蔽膜形成用塗布液を前提とし、無機バ
インダー若しくは樹脂バインダーが含まれていることを
特徴とする。
【0017】次に、請求項4に係る発明は、日射遮蔽材
料が分散した日射遮蔽膜を前提とし、上記日射遮蔽材料
が請求項1記載の日射遮蔽材料で構成されていることを
特徴とし、請求項5に係る発明は、請求項4記載の発明
に係る日射遮蔽膜を前提とし、可視光透過率80%以上
のときの波長域300〜2100nmにおける日射透過
率が60%未満で、かつ、ヘイズ値が1%未満であるこ
とを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、具体的に説明する。
【0019】まず、本発明に係る日射遮蔽材料の製造方
法は、元素換算でSn含有量が5重量%以上12重量%
未満の錫化合物とインジウム化合物を含有しかつ50℃
以下の温度に調整された原料混合溶液にアルカリ溶液を
滴下時間30分未満の条件で滴下すると共に継続的に攪
拌しながら熟成させて沈澱物を得る工程と、残留する塩
素不純物量が0.2重量%以下となるよう上記沈澱物を
デカンテーションにより洗浄した後、乾燥して比表面積
が100m2/gを超えるインジウムと錫から成る水酸
化物を得る工程と、この水酸化物を還元性ガスと不活性
ガスとの混合ガス雰囲気下において攪拌しながら25分
未満の条件で加熱処理した後、空気中で酸化させて比表
面積が50m2/g以上のインジウム錫酸化物微粒子か
ら成る日射遮蔽材料を得る工程を具備することを特徴と
するものである。
【0020】ここで、本発明において適用されるインジ
ウム化合物および錫化合物は特に限定されるものでな
く、例えば、硝酸インジウム、塩化インジウム、塩化
錫、硝酸錫などが挙げられる。また、錫化合物における
錫含有量は、元素換算での5重量%以上12重量%未満
である。5重量%未満では所望の光学特性が得られず、
他方12重量%を超えると錫が固溶せず、錫の添加効果
が発揮されないからである。
【0021】次に、本発明で用いるアルカリ溶液も特に
限定されず、例えば、炭酸水素アンモニウム、水酸化ア
ンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの
各水溶液が挙げられる。また、濃度は、各塩が水酸化物
となるに必要な化学当量以上、好ましくはアルカリ残留
による洗浄時間の観点から当量〜1.5倍過剰量とす
る。このときの溶液温度は50℃以下とする。下限は得
られるITO微粒子の特性から特に限定されないが、低
すぎると新たに冷却装置などが必要になってくることか
らそのような装置を要しない温度とすることが好まし
い。他方、50℃を越えると水酸化物粒子の成長によっ
て所望の光学特性が得られないため50℃以下とする必
要がある。アルカリ溶液の滴下時間は、生産性の観点か
ら30分未満、好ましくは25分以下とする。終了後、
系内の均一化を図るために継続的に攪拌しながら熟成を
行うが、そのときの温度は共沈温度と同温とする。ま
た、時間は特に限定されないが、生産性の観点から30
分以下、好ましくは15分以下であるとよい。
【0022】次に、熟成させて得られた沈澱物はデカン
テ−ションにより塩素イオンの残留不純物量が0.2重
量%以下となるよう十分洗浄した後、乾燥する。上記残
留不純物量(塩素不純物量)が0.2重量%を超える
と、還元処理において残留不純物が還元阻害因子となる
ため、所望の光学特性を得るためには還元時間を長くす
る必要があり生産効率を悪化させる弊害を生じ、また、
還元時間を短くすると所望の光学特性が得られなくなる
弊害を生ずる。尚、上記塩素不純物量の下限については
任意であり、洗浄に要する時間や光学特性の観点から適
宜設定される。また、洗浄処理後の乾燥温度やその時間
は特に限定されるものではない。ここで、上記沈澱物中
には塩素イオン以外に、例えば、硝酸イオンや硫酸イオ
ンも残留することがあるが、硝酸イオンについては水酸
化物の加熱処理において熱分解により除去され易く、ま
た、硫酸イオンについてはデカンテ−ションによる洗浄
処理にて塩素イオンと同程度若しくはより完全に除去さ
れていると考えられることから、これ等硝酸イオンや硫
酸イオンの残留不純物量についての測定は任意であり、
かつ、塩素イオンの残留不純物量(塩素不純物量)が
0.2重量%以下であることを条件に上述した弊害を解
消することが可能である。
【0023】次に、乾燥処理された水酸化物については
特定の粉体色にするため還元処理を施す。特定の粉体色
にするための処理法は、窒素、アルゴン、ヘリウムなど
の不活性ガス単独またはこれらが混合されたガスと還元
性ガスとの混合ガスを供給する。このときの処理温度
は、所望とする高比表面積値を有する微粒子、光学特性
および生産効率の観点から下限は200℃以上が好まし
い。一方、上限は、400℃を越えても格段の効果が得
られず、また高温になるほど粒成長による光学特性の低
下が懸念されることから、400℃以下が好ましい。こ
のときの還元時間は温度に応じて所望とする粉体色とな
るよう適宜選択され、上記洗浄処理により塩素不純物量
が0.2重量%以下となることにより25分未満とする
ことが可能となる。この後、空気中で酸化させて比表面
積が50m2/g以上のインジウム錫酸化物微粒子から
成る日射遮蔽材料が得られる。そして、このようにして
得られた日射遮蔽材料を用いた日射遮蔽膜はそのヘイズ
値も極端に低くなる。
【0024】また、本発明に係る塗布液は上記日射遮蔽
材料を溶媒中にその固形分濃度が30重量%以下、好ま
しくは15重量%以下となるように分散したものであ
る。固形分濃度が高くなるほどコスト高となるため、所
望とする日射遮蔽特性との兼ね合いから上述したように
30重量%以下、好ましくは15重量%以下となるよう
に調整する。また、上記日射遮蔽材料が分散される溶媒
は特に限定されるものではなく、塗布条件、塗布環境、
および無機バインダーや樹脂バインダ−を含有させたと
きはバインダーに合わせて適宜選択する。例えば、水や
エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソプロピル
アルコ−ル、イソブチルアルコ−ル、ジアセトンアルコ
−ルなどのアルコ−ル類、メチルエ−テル,エチルエ−
テル,プロピルエ−テルなどのエ−テル類、エステル
類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、
シクロヘキサノン、イソブチルケトンなどのケトン類と
いった各種の有機溶媒が使用可能であり、また必要に応
じて酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。さら
に、塗布液中の微粒子の分散安定性を一層向上させるた
め各種の界面活性剤、カップリング剤などの添加も勿論
可能である。
【0025】また、必要に応じて配合される無機バイン
ダーや樹脂バインダ−についてその種類は特に限定され
るものではない。例えば、無機バインダーとして、珪
素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金
属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物あるい
はオルガノシラザンが利用でき、樹脂バインダーとし
て、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂な
どの熱硬化性樹脂などが利用できる。また、日射遮蔽材
料の分散方法は、塗布液中に均一に分散される方法であ
れば特に限定されず、例えばビ−ズミル、ボ−ルミル、
サンドミル、ペイントシェ−カ−、超音波ホモジナイザ
−などが挙げられる。
【0026】この塗布液を用いて膜を形成したときの膜
の導電性は、ITO微粒子の接触個所を経由した導電パ
スに沿って行われるため、例えば界面活性剤やカップリ
ング剤の量を加減することで導電パスを部分的に切断す
ることができ、膜の導電性を106Ω/□以上の表面抵抗
値へ低下させることは容易である。また、無機バインダ
ー、あるいは樹脂バインダ−の含有量の加減によっても
導電性を制御できる。
【0027】次に、本発明に係る日射遮蔽膜は、透明基
材上に上記ITO微粒子が高密度に堆積して膜形成する
ものであり、塗布液中に含まれる樹脂バインダ−または
無機バインダ−は、塗布硬化後にITO微粒子の基材へ
の密着性を向上させ、さらに膜の硬度を向上させる効果
がある。また、このようにして得られた膜上に、さらに
珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの
金属アルコキシド、これらの部分加水分解縮重合物から
なる皮膜を第2層として被着し、珪素、ジルコニウム、
チタン、もしくはアルミニウムの酸化物膜を形成するこ
とで、ITO微粒子を主成分とする膜の基材へ結着力や
膜の硬度、耐候性を一層向上させることができる。ま
た、塗布液中に樹脂バインダ−または無機バインダ−を
含まない場合に得られる膜は、基材上に上記ITO微粒
子のみが堆積した膜構造になる。このままでも日射遮蔽
効果を示すが、この膜上にさらに珪素、ジルコニウム、
チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシドやこ
れらの部分加水分解縮重合物などの無機バインダ−また
は樹脂バインダ−を含む塗布液を塗布して皮膜を形成し
て多層膜とするとよい。このようにすることにより、塗
布液成分が第1層のITO微粒子の堆積した間隙を埋め
て成膜されるため、膜のヘイズが低減して可視光透過率
が向上し、また微粒子の基材への結着性が向上する。
【0028】また、本発明に係る塗布液の塗布方法およ
び本発明で用いる皮膜形成用の塗布方法は特に限定され
ず、例えば、スピンコ−ト法、バ−コ−ト法、スプレ−
コ−ト法、ディップコ−ト法、スクリ−ン印刷法、ロ−
ルコ−ト法、流し塗りなど、処理液を平坦かつ薄く均一
に塗布できる方法であればいずれの方法でもよい。
【0029】また、無機バインダーとして、珪素、ジル
コニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコ
キシドおよびその加水分解重合物を含む塗布液の塗布後
における基材の加熱温度は、100℃未満では塗膜中に
含まれるアルコキシドまたはその加水分解重合物の重合
反応が未完結で残る場合が多く、また水や有機溶媒が膜
中に残留して加熱後における膜の可視光透過率の低下の
原因となるので、100℃以上が好ましく、さらに好ま
しくは塗布液中の溶媒の沸点以上で加熱を行うことがよ
い。他方、樹脂バインダ−を使用した場合は、それぞれ
の硬化方法に従って硬化させればよい。例えば、紫外線
硬化樹脂であれば紫外線を適宜照射すればよく、また常
温硬化樹脂であれば塗布後そのまま放置しておけばよ
い。このため、既存の窓ガラスなどへの現場での塗布が
可能である。
【0030】そして、本発明に係る日射遮蔽膜では、I
TO微粒子が分散しているため、物理成膜法により製造
された酸化物薄膜のように結晶が緻密に膜内を埋めた鏡
面状表面をもつ膜に比べると可視光領域での反射が少な
く、ギラギラした外観を呈することが回避できる。その
一方で、可視から近赤外域にプラズマ周波数をもつた
め、これに伴うプラズマ反射が近赤外域で大きくなる。
さらに可視光領域の反射を抑制したい場合には、ITO
微粒子分散膜の上に、SiO2やMgF2のような低屈折
率の膜を成膜することにより、容易に視感反射率1%以
下の多層膜を得ることができる。
【0031】また、本発明に係る日射遮蔽材料、塗布液
並びに日射遮蔽膜のさらなる紫外線遮蔽機能を付与させ
るため、無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウム
などの微粒子や、有機系のベンゾフェノンやベンゾトリ
アゾ−ルなどの1種もしくは2種以上を添加してもよ
い。
【0032】このように本発明によれば、日射遮蔽効果
を発揮する塗布膜製造が可能であり、ITO微粒子は無
機材料であるので有機材料と比べて耐候性が非常に高
く、例えば太陽光線(紫外線)の当たる部位に使用して
も色や諸機能の劣化はほとんど生じない。また、本発明
に係る塗布液は、焼成時の熱によって塗布成分の分解あ
るいは化学反応を利用して目的の日射遮蔽膜を形成する
ものではないため、特性の安定した均一な膜厚の透過膜
を形成することができる。
【0033】
【実施例】以下、本発明についてその実施例を挙げ更に
具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定
されるものではない。
【0034】尚、得られた日射遮蔽膜の可視光透過率や
日射透過率は日立製作所(株)製の分光光度計U−40
00を用いて測定した。また、ヘイズ値は村上色彩技術
研究所(株)製HR−200を用いて測定した。膜評価
においては線径の異なる3種のバーコーターで成膜し、
得られた膜厚が異なる3種類の膜の3点プロットから可
視光透過率84%のときの日射透過率およびヘイズ値を
求めた。
【0035】[実施例1]10%In(NO33・3H
2O水溶液500g、および、10%SnCl4・5H2
O水溶液64.4g(Sn10%相当)との原料混合水
溶液に、20℃制御下で攪拌しながら15%NH4HC
3水溶液259gを20分かけて滴下し、滴下後さら
に10分間攪拌して熟成した。
【0036】次に、デカンテーションにて一回につき7
00mlのイオン交換水での洗浄を繰り返し行い、その
後105℃で乾燥した。尚、乾燥物中の残留Cl量(表
1と表2において共に「残留不純物量」と記載する)は
0.07重量%であった。
【0037】次に、粉砕処理を施した上記乾燥物25g
を500mlのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しな
がらN2ガスをキャリアとした9%H2ガスを供給しなが
ら加熱し、300℃の温度で20分間還元処理した後、
空気中で酸化させることによってITO微粒子(日射遮
蔽材料)を得た。なお、還元処理前における乾燥粉の比
表面積は158.9m2/gで、還元処理後における乾燥
粉の比表面積は77.6m2/gであった。
【0038】次に、該微粒子20重量%、メチルイソブ
チルケトン63.3重量%、分散剤16.7重量%を、
充填率63%相当の0.3mmジルコニアビ−ズを入れ
たペイントシェ−カ−で18時間分散した。
【0039】次に、該分散液67.5重量%、バインダ
−としてメチルイソブチルケトンに溶解したアクリル樹
脂溶液27.5重量%および硬化剤5重量%からなる塗
布液を、番手40,24,6のバ−でそれぞれ100m
m×100mm×3mmのソ−ダライムガラス基板に塗
布した後、180℃で1時間焼成して膜aを得た。膜a
の日射透過率およびヘイズ値はそれぞれ57.5%、
0.20%であった。
【0040】[実施例2〜実施例5、比較例1〜比較例
4]還元時間を10分とした以外は実施例1と同様にし
て膜b(実施例2)を得、また、還元時間を14分とし
た以外は実施例1と同様にして膜c(実施例3)を得、
また、残留Cl量が0.10重量%である乾燥物の還元
時間を23分とした以外は実施例1と同様にして膜d
(実施例4)を得、また、還元温度を320℃として5
分間還元した以外は実施例1と同様にして膜e(実施例
5)を得、また、残留Cl量が0.31重量%である乾
燥物の還元時間を270分とした以外は実施例1と同様
にして膜f(比較例1)を得、また、比較例1と同一の
乾燥物を用い還元時間を10分とした以外は実施例1と
同様にして膜g(比較例2)を得、また、比較例1と同
一の乾燥物を用い還元時間を90分とした以外は実施例
1と同様にして膜h(比較例3)を得、また、比較例1
と同一の乾燥物を用い還元時間を180分とした以外は
実施例1と同様にして膜i(比較例4)を得た。
【0041】そして、表1に示すように、実施例2の膜
b、実施例3の膜c、実施例4の膜dおよび実施例5の
膜eの日射透過率はいずれも60%以下であり、ヘイズ
値も1%未満であった。
【0042】一方、比較例1の膜f、比較例3の膜hお
よび比較例4の膜iの日射透過率は、90分以上の還元
処理により60%未満となり、また、還元時間を10分
とした比較例2の膜gの日射透過率は60%を超え、か
つ、ヘイズ値も10.5%と1%を大幅に越えるもので
あった。
【0043】[実施例6〜8、比較例5〜6]10%I
nCl3・4H2O水溶液500g、および、10%Sn
Cl4・5H2O水溶液77.7g(Sn10%相当)と
の原料混合水溶液とした以外は実施例1と同様にして膜
j(実施例6)を得、また、10%In2(SO43
9H2O水溶液500g、および、10%SnCl4・5
2O水溶液67.0g(Sn10%相当)との原料混
合水溶液とした以外は実施例1と同様にして膜k(実施
例7)を得、また、10%In2(SO43・9H2O水
溶液500g、および、10%SnCl4・5H2O水溶
液67.0g(Sn10%相当)との原料混合水溶液と
した以外は実施例2と同様にして膜l(実施例8)を
得、また10%In2(SO43・9H2O水溶液500
g、および、10%SnCl4・5H2O水溶液67.0
g(Sn10%相当)との原料混合水溶液とした以外は
比較例1と同様にして膜m(比較例5)を得、また、1
0%In2(SO43・9H2O水溶液500g、およ
び、10%SnCl4・5H2O水溶液67.0g(Sn
10%相当)との原料混合水溶液とした以外は比較例2
と同様にして膜n(比較例6)を得た。
【0044】そして、表2に示すように、実施例6の膜
j、実施例7の膜kおよび実施例8の膜lの日射透過率
はいずれも60%以下であり、ヘイズ値も1%未満であ
った。
【0045】一方、比較例5の膜mの日射透過率は、2
70分以上の還元処理により60%未満となり、また、
還元時間を10分とした比較例6の膜nの日射透過率は
60%を超え、かつ、ヘイズ値も11%と1%を大幅に
越えるものであった。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】請求項1記載の発明に係る日射遮蔽材料
の製造方法によれば、可視光透過率が80%以上の高い
領域でも日射透過率が低くしかもヘイズ値が低い日射遮
蔽材料について効率よく製造することができる効果を有
する。
【0049】また、請求項2〜3記載の発明に係る塗布
液によれば、可視光透過率が80%以上の高い領域でも
日射透過率が低くしかもヘイズ値が低い日射遮蔽材料に
ついて簡便な塗布法により形成できる効果を有する。
【0050】更に、請求項4〜5記載の発明に係る日射
遮蔽膜によれば、可視光透過率が80%以上の高い領域
でも日射透過率が低くしかもヘイズ値が低い効果を有す
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G02B 5/22 G02B 5/22 Fターム(参考) 2H048 FA05 FA09 FA12 4G059 AA01 AC06 EA02 EA03 EA07 EB09 4J038 AA001 CG001 DB001 HA211 HA216 KA06 NA19 PB05 PB07 PC02 PC03

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】インジウム錫酸化物微粒子で構成される日
    射遮蔽材料の製造方法において、 元素換算でSn含有量が5重量%以上12重量%未満の
    錫化合物とインジウム化合物を含有しかつ50℃以下の
    温度に調整された原料混合溶液にアルカリ溶液を滴下時
    間30分未満の条件で滴下すると共に継続的に攪拌しな
    がら熟成させて沈澱物を得る工程と、 残留する塩素不純物量が0.2重量%以下となるよう上
    記沈澱物をデカンテーションにより洗浄した後、乾燥し
    て比表面積が100m2/gを超えるインジウムと錫か
    ら成る水酸化物を得る工程と、 この水酸化物を還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰
    囲気下において攪拌しながら25分未満の条件で加熱処
    理した後、空気中で酸化させて比表面積が50m2/g
    以上のインジウム錫酸化物微粒子から成る日射遮蔽材料
    を得る工程、を具備することを特徴とする日射遮蔽材料
    の製造方法。
  2. 【請求項2】溶媒中に日射遮蔽材料が分散した日射遮蔽
    膜形成用塗布液において、 上記日射遮蔽材料が請求項1記載の日射遮蔽材料で構成
    されかつその固形分濃度が30重量%以下であることを
    特徴とする日射遮蔽膜形成用塗布液。
  3. 【請求項3】無機バインダー若しくは樹脂バインダーが
    含まれていることを特徴とする請求項2記載の日射遮蔽
    膜形成用塗布液。
  4. 【請求項4】日射遮蔽材料が分散した日射遮蔽膜におい
    て、 上記日射遮蔽材料が請求項1記載の日射遮蔽材料で構成
    されていることを特徴とする日射遮蔽膜。
  5. 【請求項5】可視光透過率80%以上のときの波長域3
    00〜2100nmにおける日射透過率が60%未満
    で、かつ、ヘイズ値が1%未満であることを特徴とする
    請求項4記載の日射遮蔽膜。
JP2002141101A 2002-05-16 2002-05-16 日射遮蔽材料の製造方法とこの日射遮蔽材料を用いた塗布液並びに日射遮蔽膜 Pending JP2003327917A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002141101A JP2003327917A (ja) 2002-05-16 2002-05-16 日射遮蔽材料の製造方法とこの日射遮蔽材料を用いた塗布液並びに日射遮蔽膜

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002141101A JP2003327917A (ja) 2002-05-16 2002-05-16 日射遮蔽材料の製造方法とこの日射遮蔽材料を用いた塗布液並びに日射遮蔽膜

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003327917A true JP2003327917A (ja) 2003-11-19

Family

ID=29701785

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002141101A Pending JP2003327917A (ja) 2002-05-16 2002-05-16 日射遮蔽材料の製造方法とこの日射遮蔽材料を用いた塗布液並びに日射遮蔽膜

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003327917A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008500938A (ja) * 2004-05-28 2008-01-17 インペリアル・ケミカル・インダストリーズ・ピーエルシー インジウム錫酸化物
JPWO2016017658A1 (ja) * 2014-07-31 2017-05-25 富士フイルム株式会社 窓用断熱フィルム、窓用断熱ガラスおよび窓
WO2019008883A1 (ja) * 2017-07-04 2019-01-10 三菱マテリアル電子化成株式会社 熱線遮蔽粒子分散液及びその製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008500938A (ja) * 2004-05-28 2008-01-17 インペリアル・ケミカル・インダストリーズ・ピーエルシー インジウム錫酸化物
JPWO2016017658A1 (ja) * 2014-07-31 2017-05-25 富士フイルム株式会社 窓用断熱フィルム、窓用断熱ガラスおよび窓
WO2019008883A1 (ja) * 2017-07-04 2019-01-10 三菱マテリアル電子化成株式会社 熱線遮蔽粒子分散液及びその製造方法
JP2019014774A (ja) * 2017-07-04 2019-01-31 三菱マテリアル電子化成株式会社 熱線遮蔽粒子分散液及びその製造方法
JP7029236B2 (ja) 2017-07-04 2022-03-03 三菱マテリアル電子化成株式会社 熱線遮蔽粒子分散液及びその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4626284B2 (ja) 日射遮蔽体形成用タングステン酸化物微粒子の製造方法、および日射遮蔽体形成用タングステン酸化物微粒子
JP2005226008A (ja) 日射遮蔽体形成用分散液及び日射遮蔽体並びにその製造方法
JP3262098B2 (ja) 熱線遮蔽材料とこれを用いた熱線遮蔽器材並びに塗布液および熱線遮蔽膜
JP2007269523A (ja) 熱線遮蔽ガラス及びその製造方法
JP2003176132A (ja) 日射遮蔽用アンチモン錫酸化物粒子および日射遮蔽膜形成用塗布液ならびに日射遮蔽膜
JP3744188B2 (ja) 熱線遮蔽膜形成用塗布液及び熱線遮蔽膜
JP2008230954A (ja) 日射遮蔽体形成用アンチモン含有酸化錫微粒子の製造方法、日射遮蔽体形成用分散液、日射遮蔽体、および、日射遮蔽用基材
JP4182825B2 (ja) 日射遮蔽用アンチモン錫酸化物微粒子とこれを用いた日射遮蔽体形成用分散液および日射遮蔽体並びに日射遮蔽用透明基材
JP3473272B2 (ja) 導電膜形成用塗布液および導電膜
EP1967495B1 (en) Manufacturing method for antimony-containing tin oxide fine particles for forming solar radiation shielding body, dispersion for forming solar radiation shielding body, solar radiation sheilding body, and solar radiation shielding base material
US20040197549A1 (en) Conductive film, manufactruing method thereof, substrate having the same
JP2003215328A (ja) 日射遮蔽用微粒子とこの微粒子を含む日射遮蔽膜形成用塗布液および日射遮蔽膜
JP2002194291A (ja) 日射遮蔽膜形成用塗布液の製造方法
JP4200424B2 (ja) 日射遮蔽材料の製造方法、日射遮蔽膜形成用塗布液および日射遮蔽膜並びに日射遮蔽用透明基材
JP3915880B2 (ja) 日射遮蔽膜形成用微粒子の製造方法
JP2003327917A (ja) 日射遮蔽材料の製造方法とこの日射遮蔽材料を用いた塗布液並びに日射遮蔽膜
JP2004284904A (ja) 日射遮蔽材料の製造方法、日射遮蔽材料、日射遮蔽膜形成用塗布液および日射遮蔽膜
JP6413969B2 (ja) 日射遮蔽体形成用分散液および当該分散液を用いた日射遮蔽体
JP2004244613A (ja) 日射遮蔽体と日射遮蔽体形成用分散液
JP2002138271A (ja) 熱線遮蔽用微粒子の製造方法およびこの方法により製造された微粒子を用いた熱線遮蔽膜形成用塗布液の製造方法
JP2002201027A (ja) 日射遮蔽用インジウム錫酸化物微粒子とその製造方法およびこれを用いた塗布液および日射遮蔽膜
JP3979967B2 (ja) 低反射低抵抗膜の製造方法
JP2003327429A (ja) 日射遮蔽用微粒子とこの微粒子を含む日射遮蔽膜形成用塗布液および日射遮蔽膜
JPH1036975A (ja) 低抵抗膜又は低屈折率膜形成用塗布液、及び、低抵抗膜又は低反射低屈折率膜の製造方法
JP2002146228A (ja) 日射遮蔽膜形成用インジウム錫酸化物微粒子の処理方法および日射遮蔽膜