JP2003321474A - 包接化合物 - Google Patents

包接化合物

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JP2003321474A
JP2003321474A JP2002128613A JP2002128613A JP2003321474A JP 2003321474 A JP2003321474 A JP 2003321474A JP 2002128613 A JP2002128613 A JP 2002128613A JP 2002128613 A JP2002128613 A JP 2002128613A JP 2003321474 A JP2003321474 A JP 2003321474A
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chlorophyll
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JP2002128613A
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English (en)
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Keiji Terao
啓二 寺尾
Kenji Yoneda
憲司 米田
Tetsushirou Horiuchi
哲嗣郎 堀内
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KENTETSUKU KK
Original Assignee
KENTETSUKU KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 クロロフィルを多様な有益効果を有したまま
で安定化させる。 【解決手段】 この包接化合物は、クロロフィルがシク
ロデキストリン又はシクロデキストリンの誘導体で包接
されて成る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、包接化合物に関す
る。さらに詳述すると、本発明は、クロロフィルとシク
ロデキストリンとより成る包接化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】クロロフィル(葉緑素)は、植物や藻
類、細菌などの細胞質の葉緑体(クロロプラスト)中に
含まれる緑色のポルフィリン系色素である。クロロフィ
ルは、葉緑体に、クロロフィルa(青緑色)やクロロフ
ィルb(黄緑色)等の形で含まれ、緑葉体中で光エネル
ギーを吸収し、励起して光合成を行う。クロロフィル
は、環境ホルモン排泄作用や着色作用、創傷治癒作用、
抗潰瘍作用、血清コレステロール低下作用、脱臭作用、
腸の蠕動運動の亢進作用、抗変異原性、抗アレルギー作
用、制ガン作用など多くの有益効果が認められて注目を
集め、すでにクロロフィルを含有した胃腸薬や歯磨き
剤、口臭防止用ガムなどが商品化されている。
【0003】一方、シクロデキストリンは環状構造を成
し、当該環状構造の中空部分に適当な大きさの有機化合
物が包接され得るため、プロスタグランジンなどの不安
定な生理活性物質の安定化、臭気や苦味の除去、液状物
質の粉末化、脂溶性物質の水溶性などに利用されてい
る。このような性質を応用して、天然色素であるβ−カ
ロチンをシクロデキストリンで包接した包接化合物に関
しての特許が出願されている(特開昭62−26726
1号公報)。また、β−カロチンをα−シクロデキスト
リンで包接した包接化合物に関しての特許が出願されて
いる(特開平4−244059号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、クロロ
フィルは、上述したような優れた特性を多々有し、多く
の用途が期待されているにもかかわらず、現実には用途
が限られていて、利用開発が進んでいるとはいえないの
が現状である。これは、クロロフィルの不安定な性質に
よるものと考えられる。
【0005】即ち、クロロフィルは光や紫外線によっ
て、または高温条件下で、退色や変色を起こしてしま
う。これは、クロロフィル分子中のフィトールとのエス
テル結合がクロロフィラーゼ(加水分解酵素の一種)に
よって加水分解されてクロロフィライドになり、酸の影
響でマグネシウム(Mg)が脱離してフェオホルバイド
等が生成して褐変するためと考えられる。例えば、クロ
ロフィルaからマグネシウムとフィトールが脱離する
と、フェオホルバイドaとなる。また、クロロフィルa
からマグネシウムとフィトールとCO・CHが脱離
すると、ピロフェオホルバイドaとなる。クロロフィル
aの構造式を化学式1に、フィトールの構造式を化学式
2に、フェオホルバイドaの構造式を化学式3に、ピロ
フェオホルバイドaの構造式を化学式4に、それぞれ示
す。
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】
【化3】
【0009】
【化4】
【0010】さらに、クロロフィルが退色等した場合に
生成されるフェオホルバイド等は皮膚刺激を与えるなど
人体に悪影響を及ぼす。これは、フェオホルバイド等が
血液を介して生体内各組織細胞に運ばれると、この物質
の存在下で光により活性化された酸素が細胞膜を構成し
ている脂肪酸(アラキドン酸)等を酸化して過酸化脂質
を作り、この過酸化脂質が生体膜の組織細胞の破壊やそ
の他の各種障害を誘発し、毛細管の透過性を高めて皮膚
の掻痒感を生じるためと考えられる。
【0011】そこで本発明は、クロロフィルを多様な有
益効果を有したままで安定化させることができる包接化
合物を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
め、本発明者等が鋭意研究・実験・検討を重ねた結果、
クロロフィルをシクロデキストリンで包接することで、
クロロフィルの有益な機能を有したまま、クロロフィル
を安定化させることができ、退色などの不安定性を解消
できることを知見するに至った。
【0013】請求項1記載の包接化合物は、かかる知見
に基づくものであって、クロロフィルがシクロデキスト
リン又はシクロデキストリンの誘導体で包接されて成る
ものである。
【0014】したがって、クロロフィルは、退色・変色
することなく、またフェオホルバイド等の有害物質に変
化することなく、安定した状態でシクロデキストリン又
はシクロデキストリンの誘導体の環状構造の中空部分に
包接される。一方でクロロフィルは、例えば水分子との
交換によってシクロデキストリン又はシクロデキストリ
ンの誘導体から解離して、有効成分としての多様な効果
を発揮する。
【0015】さらに、γ−シクロデキストリン又はγ−
シクロデキストリンの誘導体をホストとするとき、クロ
ロフィルが良好に包接されて一層安定した状態となるこ
とが実験により知見された。請求項2記載の包接化合物
は、かかる知見に基づくものであって、クロロフィルが
γ−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンの
誘導体で包接されて成るものである。
【0016】また、請求項3記載の発明は、請求項1ま
たは2に記載の包接化合物において、クロロフィルは熊
笹から得られたものとしている。この場合、各地に多く
生息し大量且つ容易に入手可能であるにもかかわらずそ
の存在量と比較して従来十分な利用が図られていなかっ
た熊笹を、有効に利用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の包接化合物の実施
の一形態を詳細に説明する。この包接化合物は、クロロ
フィルがシクロデキストリン又はシクロデキストリンの
誘導体で包接されて成るものである。
【0018】クロロフィル(葉緑素)は、植物や藻類、
細菌などの細胞質の葉緑体中に含まれる緑色のポリフィ
リン系色素であって、光合成において中心的な役割を持
つマグネシウム1原子を中心に持つポリフィリンであ
り、多くの場合、蛋白質と複合体を作って光合成膜中に
存在する。本発明に用いるクロロフィルを得る方法は特
に限定されるものではない。例えば緑色の植物や藻類、
細菌などから有機溶剤を用いてクロロフィルを抽出する
ことができる。有機溶剤としては、特に限定するもので
ないが、脂肪族アルコール系の溶剤が望ましく、例えば
エタノールやプロピレングリコールが最適である。
【0019】ここで、本発明に用いるクロロフィルとし
ては、特に熊笹から得られたものが望ましい。この場
合、各地に多く生息し大量且つ容易に入手可能であるに
もかかわらずその存在量と比較して従来十分な利用が図
られていなかった熊笹を、有効に利用することができ
る。尚、クロロフィルには、クロロフィルa,b,c,
d,e等と複数種あるが、本発明にはこれらクロロフィ
ル全般が適用可能である。
【0020】シクロデキストリンは、デンプンから酵素
反応により合成され、ブドウ糖を構成単位とする環状無
還元マルトオリゴ糖である。環を構成するブドウ糖の数
が、6個のもの(即ち重合度が6のもの)をα−シクロ
デキストリン、7個のもの(即ち重合度が7のもの)を
β−シクロデキストリン、8個のもの(即ち重合度が8
のもの)をγ−シクロデキストリンという。環を構成す
るブドウ糖の数により環内孔のサイズが異なる。本発明
者等が種々実験・検討した結果、α−シクロデキストリ
ンはホストとしてのサイズが小さくてクロロフィルの包
接がやや不完全であること、β−シクロデキストリンで
もホストとしてのサイズがやや小さくてクロロフィルの
包接が完全ではないこと、γ−シクロデキストリンであ
ればクロロフィルの包接の度合いが高まりα−シクロデ
キストリンやβ−シクロデキストリンを用いた場合と比
べてクロロフィルがより安定した状態となることが知見
された。一般に市場で入手できるのはα−シクロデキス
トリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキスト
リンの3種であるが、このうちγ−シクロデキストリン
がクロロフィルを包接するホストとして最も適した物質
であるといえる。α−シクロデキストリンの構造式を化
学式5に、β−シクロデキストリンの構造式を化学式6
に、γ−シクロデキストリンの構造式を化学式7に、そ
れぞれ示す。
【0021】
【化5】
【0022】
【化6】
【0023】
【化7】
【0024】ただし、上記知見を外挿すると、環を構成
するブドウ糖の数が9個あるいは10個、11個、…
等、さらにホストとしてのサイズが大きいシクロデキス
トリンを用いることで、より良好にクロロフィルを安定
化することができると推定される。したがって、γ−シ
クロデキストリンより更に重合度の高いシクロデキスト
リンが得られれば、これを本発明に用いても良いのは勿
論である。例えば、γ−シクロデキストリンより更に重
合度の高いδ−シクロデキストリン、ε−シクロデキス
トリンの存在が知られている。
【0025】また、シクロデキストリンの各種誘導体
(例えばメチル体、ヒドロキシルプロピル体、モノアセ
チル体、トリアセチル体、モノクロロトリアジニル体な
どのシクロデキストリン各種誘導体)を、クロロフィル
を包接するホストとして用いることも可能である。本発
明者等が種々実験・検討した結果、母体がシクロデキス
トリン(特にγ−シクロデキストリン)であればクロロ
フィルを安定化することができ、化学修飾の各基による
影響は少ないことが知見されたからである。
【0026】以下、クロロフィルがシクロデキストリン
又はシクロデキストリンの誘導体で包接されて成る包接
化合物を、本明細書では、クロロフィル−シクロデキス
トリン包接化合物と呼ぶ。
【0027】クロロフィル−シクロデキストリン包接化
合物の製造方法は、特に限定されるものではない。例え
ば、75%アルコール水(即ち、75重量%のアルコー
ルと25重量%の水からなる溶液)中にクロロフィルと
シクロデキストリンを例えばモル比1:1で加えてよく
撹拌してから、溶媒であるアルコール水を留去してクロ
ロフィルがシクロデキストリンで包接された包接化合物
を粉末として得ることができる。また、クロロフィルに
対するシクロデキストリンの使用量は、特に限定される
ものでないが、例えば等モル比〜1:10モル比の範囲
での使用が好適であり、等モル比〜1:2モル比の範囲
での使用がより望ましい。
【0028】クロロフィル−シクロデキストリン包接化
合物は、その用途が特に限定されるものではなく、例え
ば食品や化粧品または医薬品等に適用できる。例えば、
クロロフィル−シクロデキストリン包接化合物を化粧品
(例えば皮膚に塗布する化粧水やクリーム)に用いた場
合の、クロロフィルの有効成分としての作用機構は以下
の通りである。即ち、水溶液や乳化液中でクロロフィル
は、シクロデキストリンと包接化合物(包接体)を形成
するが、同時に水分子との交換による解離も行われる。
ここで、水溶液や乳化液を入れている容器内では容器上
部の液面のみが空気と接触し、解離したクロロフィルが
放出する可能性のある開放系を構成している。また、包
接化合物を含有する水溶液や乳液を皮膚表面に塗布した
場合も、空気に触れる液表面は無限大に広がり解離した
クロロフィルが放出する可能性のある開放系を構成す
る。そして、液表面からクロロフィルが空気中にいった
ん放出されると、再びクロロフィルの分子が溶液に戻っ
てシクロデキストリンに包接されることは皆無に近い。
以上のことから、クロロフィルは、開放系において適当
な水分が存在すると、シクロデキストリンから効率よく
解離して有効成分としての効果を発揮する事が容易に推
測できる。
【0029】次に、本発明の実施例として、クロロフィ
ル−シクロデキストリン包接化合物の製造例並びに本発
明の効果を確認するための実験結果について説明する。
ただし、以下の実施例は、本発明を何ら限定するもので
はない。
【0030】
【実施例1】先ず、本実施例の実験に用いたクロロフィ
ル−シクロデキストリン包接化合物の製造例について説
明する。熊笹葉部乾重100g(湿重360g)を50
mm幅に裁断し、この熊笹をエタノール500mlに浸
して室温で24時間放置することでクロロフィルを抽出
して、クロロフィル含有エタノール溶液を得た。次い
で、このクロロフィル含有エタノール溶液100mlに
シクロデキストリン1gを加え、室温で1時間撹拌し
て、クロロフィル−シクロデキストリン包接化合物を含
有したエタノール溶液を得た。ここで、上記の添加する
シクロデキストリンとして、α−シクロデキストリン、
β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンの3
種を用いて、当該3種ごとのクロロフィル−シクロデキ
ストリン包接化合物含有エタノール溶液を得た。加え
て、比較用として、上記方法より得たクロロフィル含有
エタノール溶液(シクロデキストリンを添加しないも
の)を用意した。
【0031】以上の計4種の試験溶液を40日間日光暴
露して、各溶液の色をデジタルカメラで撮影し、画像デ
ータを数値化するソフトウェアを用いて、退色の程度を
RGB値で表して色安定性の程度を確認した。表1に測
定結果を示す。
【表1】
【0032】数値の大きいほど退色が進んでいることを
表している。退色の度合いは、シクロデキストリン無添
加の試験溶液が最も大きく、次いで、α−シクロデキス
トリンを用いた試験溶液、β−シクロデキストリンを用
いた試験溶液、γ−シクロデキストリンを用いた試験溶
液の順であった。
【0033】尚、実験開始時において試験溶液間で既に
RGB値に差が生じているのは、用いたシクロデキスト
リンの構造の差異等に起因するものと推定される。ま
た、表1においては、シクロデキストリン無添加の試験
溶液とα−シクロデキストリンを用いた試験溶液とは同
じ結果となっているが、当該結果に至る経過は異なるも
のであった。図1は、試験溶液を日光暴露した経過日数
を横軸に、当該経過日数に対応する試験溶液のRGB値
を縦軸にとったグラフを示す。図1中の符号aはシクロ
デキストリン無添加の試験溶液、符号bはα−シクロデ
キストリンを用いた試験溶液、符号cはβ−シクロデキ
ストリンを用いた試験溶液、符号dはγ−シクロデキス
トリンを用いた試験溶液の結果を示す。図1から分かる
ように、日光暴露試験の初期から中期にかけて、シクロ
デキストリン無添加の試験溶液よりもα−シクロデキス
トリンを用いた試験溶液の方が、RGB値の増分/経過
日数で示される傾きが緩やかであった。
【0034】以上の実験結果から、シクロデキストリン
がクロロフィルを包接することで、クロロフィルが安定
化されること、特にγ−シクロデキストリンの利用が有
効であることが確認された。
【0035】
【実施例2】本実施例の実験に用いるクロロフィル−シ
クロデキストリン包接化合物は、実施例1と同様の方法
で製造した。ただし、添加するシクロデキストリンとし
て、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリ
ン、γ−シクロデキストリンの夫々のメチル体、ヒドロ
キシルプロピル体、モノアセチル体、トリアセチル体、
モノクロロトリアジニル体の各種誘導体(化学修飾体)
を用いて、15種のクロロフィル−シクロデキストリン
包接化合物含有エタノール溶液を得た。加えて、実施例
1と同様に、比較用としてシクロデキストリンが添加さ
れていないクロロフィル含有エタノール溶液を用意し
た。
【0036】以上の計16種の試験溶液を40日間日光
暴露して、各溶液の色をデジタルカメラで撮影し、画像
データを数値化するソフトウェアを用いて、退色の程度
をRGB値で表して色安定性の程度を確認した。表2に
測定結果を示す。
【表2】
【0037】数値の大きいほど退色が進んでいることを
表している。退色の度合いは、シクロデキストリン無添
加の試験溶液が最も大きく、次いで、α−シクロデキス
トリンの各種化学修飾体を用いた試験溶液、β−シクロ
デキストリンの各種化学修飾体を用いた試験溶液、γ−
シクロデキストリンの各種化学修飾体を用いた試験溶液
の順であった。尚、実験開始時において試験溶液間で既
にRGB値に差が生じているのは、用いたシクロデキス
トリンの構造の差異等に起因するものと推定される。
【0038】以上の実験結果から、母体がシクロデキス
トリンであればクロロフィルの安定化効果を発現し化学
修飾の各基による影響は少ないこと、特にγ−シクロデ
キストリン並びにその各種化学修飾体の利用が有効であ
ることが確認された。
【0039】
【実施例3】本実施例では、クロロフィル−シクロデキ
ストリン包接化合物の粉末を用いた実験を行った。先
ず、当該クロロフィル−シクロデキストリン包接化合物
の粉末の製造例について説明する。実施例1と同様の方
法で製造したクロロフィル−シクロデキストリン包接化
合物のエタノール溶液から、エタノール溶液を留去して
乾燥させた後、クロロフィル−シクロデキストリン包接
化合物の粉末を得た。ここで、実施例1と同様に、添加
するシクロデキストリンとして、α−シクロデキストリ
ン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン
の3種を用いて、当該3種ごとのクロロフィル−シクロ
デキストリン包接化合物の粉末を得た。
【0040】以上の計3種の試験粉末を40日間日光暴
露して、各粉末の色をデジタルカメラで撮影し、例えば
画像データを数値化するソフトウェアを用いて、退色の
程度をRGB値で表して色安定性の程度を確認した。表
3に測定結果を示す。
【表3】
【0041】数値の大きいほど退色が進んでいることを
表している。退色の度合いは、α−シクロデキストリン
を用いた試験粉末が最も大きく、次いで、β−シクロデ
キストリンを用いた試験粉末、γ−シクロデキストリン
を用いた試験粉末の順であった。尚、実験開始時におい
て試験粉末間で既にRGB値に差が生じているのは、シ
クロデキストリンの構造の差異等に起因するものと推定
される。
【0042】以上の実験結果から、シクロデキストリン
によりクロロフィルを包接することによるクロロフィル
の安定化効果は溶液だけでなく粉末においても同様に発
現すること、粉末においてもγ−シクロデキストリンの
利用が特に有効であることが確認された。
【0043】
【実施例4】本実施例では、クロロフィル−シクロデキ
ストリン包接化合物を含有した化粧品を用いた実験を行
った。先ず、当該実験に用いた化粧品の製造例について
説明する。実施例1と同様の方法で製造したクロロフィ
ル−シクロデキストリン包接化合物のエタノール溶液を
用いて、表4に示す処方に従って、常法により、クロロ
フィル−シクロデキストリン包接化合物含有化粧品(ク
リーム)を得た。ここで、本実施例では、添加するシク
ロデキストリンとして、γ−シクロデキストリンのみを
用いた。
【表4】
【0044】また、比較用として、実施例1と同様の方
法で製造したクロロフィル含有エタノール溶液(シクロ
デキストリンが添加されていないもの)を用いて、表4
に示す処方のうちクロロフィル−シクロデキストリン包
接化合物含有エタノール溶液を当該クロロフィル含有エ
タノール溶液に置き換えて、他の成分は表4に示す処方
に従って、常法により、シクロデキストリンが添加され
ていないクロロフィル含有化粧品(クリーム)を得た。
【0045】以上の計2種の試験用化粧品(クリーム)
について、3週間日光暴露する加速試験と、50℃に加
温した環境下に3週間放置する加速試験とを行った。試
験開始直後(試験クリームの製造直後)および試験開始
から1日後、1週間後、3週間後に、各試験用化粧品
(クリーム)の色をデジタルカメラで撮影し、画像デー
タを数値化するソフトウェアを用いて、退色の程度をR
GB値で表して色安定性の程度を確認した。尚、RGB
値の算出は、各試験用化粧品(クリーム)について、離
れた10箇所のRGB値の平均値を求めることによって
行った。表5および図2に測定結果を示す。
【表5】
【0046】数値の大きいほど退色が進んでいることを
表している。γ−シクロデキストリンが添加された試験
用クリームは、3週間経過後においても色の変化を起こ
さず安定であったのに対し、γ−シクロデキストリンが
添加されていない試験用クリームは、試験開始直後から
著しい退色を示した。特に日光暴露の場合には、経日的
にも退色が更に進行する傾向が見られた。尚、RGB値
の測定結果は目視においても裏付けられた。
【0047】以上の実験結果から、シクロデキストリン
によりクロロフィルを包接することによるクロロフィル
の安定化効果が化粧品等のクロロフィル含有製品におい
ても発現すること、日光暴露や加温などの過酷な条件下
においてもクロロフィルの緑色が退色しない安定性が得
られることが確認された。
【0048】また、上述した実施例1〜実施例4から、
シクロデキストリンを添加しないクロロフィル含有試験
体と比較して、シクロデキストリン(特にγ−シクロデ
キストリンおよびγ−シクロデキストリンの誘導体)を
添加したクロロフィル含有試験体の方が、緑色が安定す
ることが明らかとなった。この現象面から、シクロデキ
ストリンをクロロフィル含有試験体に添加したことによ
り、試験体中のクロロフィルがシクロデキストリンに包
接されたものと推定される。
【0049】以上のように本発明によれば、クロロフィ
ルは、シクロデキストリン又はシクロデキストリンの誘
導体で包接されることで、退色・変色することなく、ま
たフェオホルバイド等の有害物質に変化することなく、
安定して存在している。一方でクロロフィルは、例えば
水分子との交換によってシクロデキストリン又はシクロ
デキストリンの誘導体から解離して、有効成分としての
多様な効果を発揮する。
【0050】ここで、シクロデキストリン(特にγ−シ
クロデキストリン)による緑色安定効果のメカニズムに
ついて考察する。γ−シクロデキストリンのホストサイ
ズから考えて、バルキーな分子構造をもつクロロフィル
の基本骨格をゲストとして包接するのは無理があると考
えられる。一方、クロロフィルの側鎖であるフィチルエ
ステル部分は親油性の高い長鎖の脂肪族エステルなの
で、クロロフィルの環状孔と親和力も高いし、ゲストサ
イズとしても適当な大きさであると考えられる。したが
って、γ−シクロデキストリンは、クロロフィルの側鎖
であるフィチルエステル部分を包接していると考えられ
る。当該包接の作用により、クロロフィル分子中のフィ
トールとのエステル結合がクロロフィラーゼによって加
水分解されてクロロフィライドになるのが阻害され、緑
色安定効果が発揮されるものと考えられる。
【0051】また、シクロデキストリンがクロロフィル
を包接することにより、緑色が褐変するのを抑制する現
象は、シクロデキストリンがクロロフィルを包接するこ
とにより、クロロフィルが分解されてフェオホルバイド
等が生成されるのを抑制している現象であると理解でき
る。そして、フェオホルバイド等の生成抑制は、結果と
してクロロフィルの毒性発現抑制に通じ、クロロフィル
の安全性を高めることに繋がる。本発明により、今まで
クロロフィルの用途開発の妨げになっていた天然色素の
安定性と人体への安全性の問題が同時に改善されること
になり、多くの有益な新製品を開発することが可能とな
る。
【0052】したがって、本発明によれば、多様なクロ
ロフィルの機能を有したままで、従来の欠点であったク
ロロフィルの不安定性を解消できる包接化合物を提供す
ることができる。この包接化合物は、例えば医薬品や化
粧品または食品などの分野に広く適用できる有用な新規
物質である。例えば、環境ホルモン排泄作用や着色作
用、創傷治癒作用、抗潰瘍作用、血清コレステロール低
下作用、脱臭作用、腸の蠕動運動の亢進作用、抗変異原
性、抗アレルギー作用、制ガン作用などクロロフィルが
有する有益効果を備えて、しかも光や紫外線によって
も、また高温条件下においても退色や変色または有害物
質への化学変化を起こすことのない又は極めて起こり難
い医薬品や食品、化粧品等を提供することができる。
【0053】なお、上述の実施形態は本発明の好適な実
施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本
発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能
である。例えば、本発明に用いるクロロフィルとして、
実施例では熊笹から得られたものを用いたが、この例に
限定されるものではなく、他の植物や藻類、細菌などか
ら既知又は新規の方法で得られたクロロフィルを用いて
も良い。また、本発明に用いるシクロデキストリンとし
ては、ホストとしてのサイズが好適であり尚且つ容易に
入手可能であることから、γ−シクロデキストリンの採
用が好適であるが、この例に限定されるものではない。
γ−シクロデキストリンより更に重合度の高いシクロデ
キストリンが得られれば、これを本発明に用いても良い
のは勿論である。
【0054】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
1記載の包接化合物によれば、クロロフィルがシクロデ
キストリン又はシクロデキストリンの誘導体で包接され
ているので、クロロフィルは、退色・変色することな
く、またフェオホルバイド等の有害物質に変化すること
なく、安定した状態で維持される。一方でクロロフィル
は、例えば水分子との交換によってシクロデキストリン
又はシクロデキストリンの誘導体から解離して、有効成
分としての多様な効果を発揮する。したがって、クロロ
フィルが有する多様な有益効果を備え、しかも光や紫外
線によっても、また高温条件下においても退色や変色ま
たは有害物質への化学変化を起こすことのない若しくは
極めて起こり難い医薬品や食品、化粧品等を提供するこ
とができる。
【0055】さらに、請求項2記載の包接化合物のよう
に、γ−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリ
ンの誘導体をホストとすることで、クロロフィルは良好
に包接されて一層安定した状態となる。
【0056】さらに、請求項3記載の包接化合物のよう
に、熊笹から得られたクロロフィルを用いることで、各
地に多く生息し大量且つ容易に入手可能であるにもかか
わらずその存在量と比較して従来十分な利用が図られて
いなかった熊笹を、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の効果を確認するための実験結果を示
し、試験溶液を日光暴露した経過日数を横軸に、当該経
過日数に対応する試験溶液の退色の程度を表すRGB値
を縦軸にとったグラフを示す。
【図2】本発明の効果を確認するための実験結果を示
し、試験用化粧品を日光暴露および加温した経過日数を
横軸に、当該経過日数に対応する試験用化粧品の退色の
程度を表すRGB値を縦軸にとったグラフを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07F 3/02 C07F 3/02 Z Fターム(参考) 4C050 PA08 4C083 AA112 AB032 AC022 AC072 AC102 AC122 AC182 AC242 AC312 AC352 AC422 AC442 AC532 AC851 AC852 AD251 AD252 AD352 CC05 DD27 DD31 EE01 EE09 EE11 FF01 FF05 4C090 BA11 BB52 BD31 CA46 DA11 DA26 4H048 AA01 AB20 VA20 VA32 VA60 VB10

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロロフィルがシクロデキストリン又は
    シクロデキストリンの誘導体で包接されて成ることを特
    徴とする包接化合物。
  2. 【請求項2】 クロロフィルがγ−シクロデキストリン
    又はγ−シクロデキストリンの誘導体で包接されて成る
    ことを特徴とする包接化合物。
  3. 【請求項3】 前記クロロフィルは熊笹から得られたも
    のであることを特徴とする請求項1または2に記載の包
    接化合物。
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