JP2003313400A - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物

Info

Publication number
JP2003313400A
JP2003313400A JP2003044507A JP2003044507A JP2003313400A JP 2003313400 A JP2003313400 A JP 2003313400A JP 2003044507 A JP2003044507 A JP 2003044507A JP 2003044507 A JP2003044507 A JP 2003044507A JP 2003313400 A JP2003313400 A JP 2003313400A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
epoxy resin
resin composition
ink
water
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003044507A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4006346B2 (ja
JP2003313400A5 (ja
Inventor
Akihiko Shimomura
明彦 下村
Isao Imamura
功 今村
Hiromichi Noguchi
弘道 野口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2003044507A priority Critical patent/JP4006346B2/ja
Publication of JP2003313400A publication Critical patent/JP2003313400A/ja
Publication of JP2003313400A5 publication Critical patent/JP2003313400A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4006346B2 publication Critical patent/JP4006346B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Epoxy Resins (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 極性溶媒のように、撥水剤の成膜性や密着性
を損なう成分を含む溶液や物質との接触機会のある場所
に適用する、撥水剤又は撥水性塗料として好適に用いる
ことができ、又、比較的低い温度でも物品表面に密着性
に優れた撥水膜を位置選択的に与えることのできるエポ
キシ樹脂組成物の提供。 【解決手段】 1分子中に撥水性を有する基を1個以上
及び環状脂肪族エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹
脂と、トリアジン系カチオン重合触媒と、非極性の溶剤
とを少なくとも含有することを特徴とするエポキシ樹脂
組成物。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、物品表面に撥水・
撥インク性を付与するための表面処理に用いることがで
きる硬化性のエポキシ樹脂組成物、とりわけ紫外線照射
によってパターン状に皮膜を形成することが可能であ
り、又、エキシマーレーザー等によって選択的な硬化皮
膜の除去を行うことが可能なエポキシ樹脂組成物に関
し、更には、該組成物を用いることで優れた効果が得ら
れる、基材表面の表面処理方法、該組成物を用いて撥イ
ンク処理されたインクジェット記録ヘッド、及びそれを
用いたインクジェット記録装置を提供することに関す
る。 【0002】 【従来の技術】各種の分野において、耐水性や撥インク
性が要求される部材に、撥水性塗料を適用してこれらの
性質を付与する方法が一般的に知られており、それに用
いる樹脂素材や塗料が開発されている。例えば、フルオ
ロオレフィンや、パーフルオロ基を有するフッ素系塗料
からなる皮膜は、熱的にも化学的にも極めて安定であ
り、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐溶剤性等に優れ、更
に、離型性、耐摩擦性、撥水性にも優れ、各種の用途に
広く利用されている。 【0003】一方、インクを吐出口から小滴として吐出
して、紙等に付着させて記録や画像の形成を行うインク
ジェット記録ヘッドでは、記録特性をより高度なものと
するために、より小さな液滴、より高い駆動周波数、ノ
ズル数へと性能アップが続けられている。従って、ノズ
ル表面を常に同じ表面状態に維持するための処理がます
ます重要になっている。 【0004】しかしながら、既存の材料を使用して、オ
リフィス面にインクが付着しないように選択的に或いは
パターン状に精密に表面処理を行うことは困難である。
その理由は、上記材料にフォトレジストのような特性を
持たせるためには、感光性の官能基を持った物質を主体
としなければならないが、そうした化合物が同時に撥水
・撥インク性を持つように分子を設計することに、まず
大きな困難があるからである。 【0005】又、仮に既存のフッ素系の材料で表面処理
ができたとしても、その表面の性質を長く維持できるよ
うに皮膜構造を設計することが必要である。上記した性
能を全て有するパターン状の表面処理材料は、以下に説
明するようにインクジェット記録ヘッドの表面処理にと
って非常に価値がある。 【0006】即ち、インクを小液滴にして飛翔させ、記
録を行うインクジェット記録方式において、吐出口
(孔)は、以下のような性能を有するように設計されて
いることが好ましい。 (1)吐出圧によって引き出されたインク柱の、液滴化
しない残部のインクが、速やかにノズル内に再収納され
ること。 (2)ヘッド表面に付着したインク滴は、クリーニング
操作で容易に掃き出されること。 (3)クリーニング操作や用紙搬送に対して耐擦傷性に
優れること。 (4)繰り返される液滴形成とインクリフィルにおい
て、ノズル表面位置にメニスカス(図1中の23参照)
が形成されること。 (5)メニスカスの法線方向が吐出方向になっているこ
と。 (6)低い表面張力のインクであっても、或いは低い負
圧の状態であってもメニスカスを形成しうるだけの十分
な界面張力、即ち接触角を持つこと。 【0007】吐出口に、これらの諸要求性能が求められ
る理由は、液体噴射記録ヘッドでは、吐出口の周辺に、
インク等の記録用の液体が付着していると、吐出口から
吐出される液滴の吐出(飛翔)方向にズレが生じ、高精
度での印字ができなくなるという印字性能に直接関係す
るからである。係る吐出方向のズレの原因となる吐出口
付近への液体の付着を防止するために、吐出口が形成さ
れている面に撥水剤処理を行う方法が知られている。 【0008】これらに関係する先行技術としては、例え
ば、フルオロアセチル基とシラザン基を有するポリマー
で撥インク処理を行うことが知られている(例えば、特
許文献1)。一方、液体噴射記録方式を応用したプリン
タによる画像記録への高度な要求に伴って、記録用液体
(インク)に対して要求される特性も高度なものとなり
つつある。このような記録用液体は、内容物の溶解安定
性や分散安定性のより一層の向上のためにpHを7〜1
1の塩基性に調節されることが多く、そのためプリンタ
部材には、耐アルカリ性及び加水分解性に優れた構造材
を採用することが好ましい。 【0009】 【特許文献1】特開平2−39944号公報 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、極性有
機溶媒を含む記録用液体や、上記のような高いpHの記
録用液体を用いた場合には、記録用液体に用いた溶媒成
分、特に極性有機溶剤成分と接触することによって、上
述したような目的で吐出口面の表面処理に適用した撥水
剤を有する撥水性皮膜が、その成膜性や適用部材との密
着性が損なわれることで剥離し、その結果、吐出口面の
撥水性が失われる場合があった。 【0011】従って本発明の目的は、極性溶媒のよう
に、撥水剤の成膜性や密着性を損なう成分を含む溶液や
物質との接触機会のある場所に適用する、撥水剤又は撥
水性塗料として好適に用いることができ、又、比較的低
い温度でも物品表面に密着性に優れた撥水膜を与えるこ
とのできるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
又、本発明の他の目的は、係るエポキシ樹脂組成物を用
いて、物品の表面に位置選択的に撥水性を付与する表面
処理方法を提供することにある。又、本発明の更に他の
目的は、上記した特性を有するエポキシ樹脂組成物で基
材の表面処理を行うことで、吐出口面を常に同じ表面状
態に維持でき、記録用媒体に長期に接触してもプリント
ヘッドのインク吐出口面におけるインクの付着がなく、
結果として、ドットの着弾精度がよく、画像の印字品位
を良好に長く維持できるインクジェット記録ヘッド及び
インクジェット記録装置を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記目的は以下の本発明
によって達成される。即ち、本発明の一実施態様は、 [1]1分子中に撥水性を有する基を1個以上及び環状
脂肪族エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂と、ト
リアジン系カチオン重合触媒と、非極性の溶剤とを少な
くとも含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物で
ある。 【0013】上記した本発明に係るエポキシ樹脂組成物
の好ましい形態としては、下記の[2]〜[7]を挙げ
ることができる。 [2]前記撥水性を有する基が、アルキルシロキサン基
及びフロオロアルキル基の少なくとも一方である上記
[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。 【0014】[3]前記エポキシ樹脂が、下記一般式
(1)で表わされるエポキシ樹脂である上記[1]に記
載のエポキシ樹脂組成物。 (但し、上記式(1)において、R1、R4、R5は、各
々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であ
り、R2及びR3は、各々独立にメチル基又はフェニル基
を示し、xは2〜100の整数であり、n1は1〜3の
整数、n2は1〜5の整数を示し、Rfはフルオロアル
キル基であり、aは1〜50の整数、bは2〜100の
整数、cは1〜50の整数、dは1〜50の整数であっ
て、その数平均分子量が8,000〜22,000であ
る)。 【0015】[4]前記非極性の溶剤が、芳香族炭化水
素及び脂肪族炭化水素のうちの少なくとも一方を含む上
記[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。 【0016】[5]前記トリアジン系カチオン重合触媒
が、下記(i)〜(v)から選ばれる少なくとも1つで
ある上記[1]に記載のエポキシ樹脂組成物: (i)2,4−トリクロロメチル−6−(4’−メトキ
シフェニル)−s−トリアジン、(ii)2,4−トリク
ロロメチル−6−(4’−メトキシナフチル)−s−トリ
アジン、(iii)2,4−トリクロロメチル−6−ピペ
ロニル−s−トリアジン、(iv)2,4−トリクロロメ
チル−6−(4’−メトキシスチリル)−s−トリアジ
ン、(v)2,4−トリクロロメチル−6−(3’−ブ
ロモ−4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン。 【0017】[6]前記トリアジン系カチオン重合触媒
が、2,4−トリクロロメチル−6−ピペロニル−s−
トリアジンである上記[1]に記載のエポキシ樹脂組成
物。 【0018】[7]前記エポキシ樹脂組成物が、更に下
記一般式(2)及び(3)で表わされる化合物の少なく
とも一方を含有する上記[1]に記載のエポキシ樹脂組
成物。 【0019】本発明の別の実施態様は、[8]物品の表
面の選択的処理方法であって、(i)上記[1]に記載
のエポキシ樹脂組成物の皮膜を形成する工程;(ii)該
皮膜にマスクを介して活性エネルギー線をパターン状に
照射する工程;及び及び(iii)上記皮膜の非照射部分
を溶解しうる液体にて上記非照射部分を溶解除去する工
程、を有することを特徴とする物品の表面の選択的処理
方法である。 【0020】本発明の別の実施態様は、[9]物品の表
面の選択的処理方法であって、(i)上記[1]に記載
のエポキシ樹脂組成物の皮膜を形成する工程;(ii)該
皮膜の重合硬化を行う工程;及び(iii)上記皮膜を選
択的に除去する工程、を有することを特徴とする物品の
表面の選択的処理方法である。 【0021】本発明の別の実施態様は、[10]液体を
吐出する吐出口を有するインクジェット記録ヘッドにお
いて、少なくとも該吐出口の開口部周辺が、上記[1]
に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化膜で被覆されている
ことを特徴とするインクジェット記録ヘッドである。 【0022】本発明の別の実施態様は、[11]上記
[10]に記載のインクジェット記録ヘッドを有するこ
とを特徴とするインクジェット記録装置である。 【0023】 【発明の実施の形態】次に好ましい実施の形態を挙げて
本発明を更に詳しく説明する。本発明に係る樹脂組成物
は、エポキシ樹脂系であるので、該エポキシ樹脂組成物
からなる皮膜は、各種部材に対する密着性に優れ、比較
的低温でも硬化可能であり、構造物としての物性にも優
れた硬化皮膜を提供できる。更に、例えば、アルキルシ
ロキサン基或いはフルオロアルキル基等の撥水性を有す
る基を有するエポキシ化合物が含有されているため、上
記皮膜は、水溶性有機溶剤、特に極性有機溶剤に対する
耐性が大幅に向上したものとなる。そして、更に相溶化
剤を含む構成とした場合は、相溶化剤の作用によってエ
ポキシ樹脂組成物の成分間に相溶性を与え、本発明に係
るエポキシ樹脂組成物の材料構成の範囲を広くすること
ができる。 【0024】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を塗布及
び乾燥して形成される皮膜は、活性エネルギー線によっ
て賦活化されるトリアジン系光酸発生剤を触媒として含
有しているため、パターン状に選択的に硬化させること
が可能であり、又、非極性の溶剤に可溶であるので塗布
溶剤として非極性溶剤が使用できる。このため上記エポ
キシ樹脂を含む塗布液を基材に塗布しても基材を侵食す
ることがない。 【0025】パターン状に表面を処理する具体的な方法
としては、上記した構成を有する本発明に係るエポキシ
樹脂組成物を基材に塗布及び乾燥して皮膜を形成し、該
皮膜に所望のパターンを有するマスクを介して活性エネ
ルギー線の照射を行い、次いで現像液を用いた現像処理
を行なって皮膜の未硬化部分を除去することによって行
なうことができる。このパターン処理は、基本的な工程
はフォトリソグラフィー法と同じであるが、現像液とし
ては、本発明に係るエポキシ樹脂組成物からなる皮膜に
適した溶剤或いは溶剤組成物を選択する。現像液として
は、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類、グリコ
ールエーテル類等及びそれらの混合物を使用する。 【0026】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いて
パターン状に表面を処理する方法を実施する場合には、
該エポキシ樹脂組成物からなる皮膜の硬化の完結を期す
ために、現像後に皮膜を、加熱、或いは活性エネルギー
線の照射を更に行う、所謂ポストキュアを施すことが望
ましい。 【0027】以上のように使用することで、本発明に係
るエポキシ樹脂組成物は、極性有機溶剤のように撥水剤
の密着性を損なう成分を含む溶液や物質との接触機会の
ある場所に適用する撥水剤又は撥水性塗料として、更に
は、インクジェット記録ヘッドの吐出口面の撥水・撥イ
ンク処理に好適に用いることができる。 【0028】即ち、インクジェット記録装置に対して本
発明に係るエポキシ樹脂組成物を適用することによって
得られる、光重合性を利用した選択的な表面改質、処理
の高い精度、硬化膜としての固体強度、摩擦強度による
デバイスとしての高い耐久性、撥水・撥インク性の効果
は、水系インクのメニスカス保持力、クリーニング性、
液滴吐出方向の正確さ、連続吐出における持続性、休止
後の印字開始の適性等の、インクジェット記録ヘッドの
諸特性の向上に繋がるのである。ここでメニスカス保持
力とは、インクがノズル先端でそのインク表面を表面張
力で維持し、且つ繰り返される液滴吐出に際してメニス
カスを所定の位置に回復し保持する性質を指している。
この保持力が低いと、インクがノズル先端から滲み出
す、或いはメニスカスが後退して吐出するインクの液滴
の体積が減少する、或いは極端な場合には、インクの吐
出欠損が起こる等の不具合に繋がるのである。 【0029】本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、1分
子中に撥水性を有する基を1個以上及び環状脂肪族エポ
キシ基を2個以上有するエポキシ樹脂と、トリアジン系
カチオン重合触媒と、非極性の溶剤とを少なくとも含有
することを特徴としている。以下、これらの具体的成分
について説明する。 【0030】上記エポキシ樹脂組成物の主剤であるエポ
キシ樹脂としては、上記の条件を満たす樹脂であれば特
に限定されないが、前記撥水性を有する基が、アルキル
シロキサン基及び/又はフロオロアルキル基であること
が好ましい。一般的には、下記一般式(1)で表される
エポキシ樹脂が挙げられる。 【0031】 上記式(1)において、R1、R4、R5は、各々独立
に、水素原子、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分
岐鎖状のプロピル基であり、R2及びR3は、各々独立に
メチル基又はフェニル基を示す。又、xは2〜100の
整数であり、n1は1〜3の整数、n2は1〜5の整数を
示す。更にRfはフルオロアルキル基、例えば、炭素数
1〜3のフルオロアルキル基を表し、aは1〜50の整
数、bは2〜100の整数、cは1〜50の整数、dは
1〜50の整数である。 【0032】上記の如き一般式(1)で表わされるエポ
キシ樹脂は、アルキルシロキサン基を側鎖に有する(メ
タ)アクリレートモノマー、パーフルオロアルキル基を
有する(メタ)アクリレートモノマー、3,4−オキシ
シクロヘキシルメチルメタクリレートモノマー、及びス
チレンを、常法に従って適当なモノマー比で共重合させ
ることによって得られるとともに、市場から入手して使
用することもできる。本発明で用いる、上記式(1)で
示されるエポキシ樹脂は、その数平均分子量が8,00
0〜22,000、特には8,500〜20,000で
あるものが撥水膜の耐久性の点で好ましい。 【0033】更に具体的な一例としては、下記式で表わ
されるエポキシ樹脂(数平均分子量=1万)(A−1)
が挙げられる。 【0034】本発明に係るエポキシ樹脂は単独で使用し
てもよく、又、上記樹脂よりも低分子量のオリゴマー及
び溶剤から選ばれる少なくとも一方を配合してもよい。
これにより、エポキシ樹脂組成物の被処理物品に対する
塗布適性を高め、溶剤蒸発後の皮膜の乾燥性を高めて処
理の作業性を向上させることができる。即ち、オリゴマ
ーをバインダーとして用いることが、本発明に係るエポ
キシ樹脂組成物の皮膜を形成する際、及び該樹脂組成物
の皮膜にパターン状の露光作業を施す上で好ましい。
尚、前記「オリゴマー」とは、前記エポキシ樹脂よりも
低分子量の樹脂が好ましいが、その他の低分子量のオリ
ゴマーであってもよい。 【0035】本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、前記
したような構造を有するエポキシ樹脂と、後述するトリ
アジン系カチオン重合触媒とを主体とするが、必要に応
じて更に相溶化剤を含むことが好ましい。このような相
溶化剤としては、下記一般式(2)及び/又は下記一般
式(3)で表わされる化合物が好適である。 【0036】 上記化合物の好ましい具体例としては、p=0である化
合物、即ち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェ
ニル)ヘキサフルオロプロパンを挙げることができる。 【0037】 上記化合物の好ましい具体例としてはq=0である化合
物、即ち、m−ビス−[1−(2,3−エポキシプロポ
キシ)−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロ
メチル)エチル]ベンゼンが挙げられる。 【0038】上記一般式(2)及び(3)で表わされる
化合物は、フッ化アルキル基を有するものの、その鎖長
が短いために形成される皮膜の表面エネルギー低下作用
は小さく、撥水・撥インク性は大きくない。上記一般式
(2)及び(3)で表わされる化合物は、何れも一般式
(2)及び(3)で表わされる化合物の両端のエポキシ
基を含む基を除いた化合物に該当する2価アルコールと
エピクロルヒドリンとの反応によって常法によって合成
される。 【0039】更に、本発明に係るエポキシ樹脂組成物
は、それを硬化させるための触媒として、下記に述べる
ような重合開始剤が含有されている。本発明では、特に
低温硬化が可能となるところの活性エネルギー線によっ
て賦活化されるトリアジン系光酸発生剤に対して反応性
が高くなるようにエポキシ樹脂組成物が設計されてい
る。このため、該エポキシ樹脂組成物を用いてフォトリ
ソグラフィー法によって基材の表面を選択的に処理する
ことができ、又、高温に保持することが困難な基材に対
して表面改質を行うのに好適である。そのような触媒と
しては、例えば、(i)2,4−トリクロロメチル−6
−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、(i
i)2,4−トリクロロメチル−6−(4’−メトキシ
ナフチル)−s−トリアジン、(iii)2,4−トリク
ロロメチル−6−ピペロニル−s−トリアジン、(iv)
2,4−トリクロロメチル−6−(4’−メトキシスチ
リル)−s−トリアジン、(v)2,4−トリクロロメ
チル−6−(3’−ブロモ−4’−メトキシフェニル)
−s−トリアジン等が挙げられる。これらの中でも、特
に(iii)の2,4−トリクロロメチル−6−ピペロニ
ル−s−トリアジンが好ましい。 【0040】本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、前記
エポキシ樹脂以外のバインダーポリマーを添加してもよ
い。このとき、バインダーポリマーとしては、側鎖にエ
ポキシ基を持ったアクリルモノマーを共重合したアクリ
ル樹脂、側鎖に環状脂肪族エポキシ基を有するビニルモ
ノマーを重合したビニルポリマー、側鎖に環状脂肪族エ
ポキシ基を有するポリエーテルポリマー(例えば、EH
PE3150;ダイセル化学工業の製品)等、それ自体
も架橋反応に関与しうるエポキシポリマーを用いること
が好ましい。又、バインダーポリマーとして、そうした
エポキシ基を持たないポリマーを使用する場合には、そ
れが適用される用途に応じた物性調製を意図して選択す
る。そうした物質としては、例えば、ビスフェノール型
エポキシ樹脂の重合体である、商品名「PKHC」、
「PKHJ」(ユニオンカーバイド社の製品)、ポリ
(エチレン/酢酸ビニル)、フェノール樹脂、ポリカー
ボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、可
溶性ポリイミド樹脂等の汎用の塗料用高分子化合物が使
用可能である。 【0041】以上のように本発明に係るエポキシ樹脂組
成物は、基本的には A:1分子中に撥水性を有する基を1個以上及び環状脂
肪族エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂 B:トリアジン系カチオン重合触媒、及び必要に応じて C:相溶化剤 を非極性の溶剤中に含有する。これらA、B及びCの各
成分の本発明に係るエポキシ樹脂組成物中における好ま
しい配合割合は以下の通りである。 【0042】前記成分Aをオリゴマーとともに用いる場
合には、それぞれの軟化点、ガラス転移温度に依存する
ので一般的な範囲はない。しかし、概ねオリゴマー:成
分A=10:90〜90:10(質量比率)である。触
媒Bは、エポキシ樹脂成分の合計量100質量部に対し
て0.5質量部〜6質量部の範囲である。これらのオリ
ゴマーとポリマーとは互いに相溶性が低い場合があり、
相溶化剤Cを使用することが有利な場合が多い。 【0043】本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、加熱
或いは活性エネルギー線の照射によって基材の表面処理
を行うために用いる。具体的には、本発明に係るエポキ
シ樹脂組成物を、芳香族系、脂肪族炭化水素系、エステ
ル系、エーテル系、フッ素系溶剤等に溶解し、ロールコ
ーター、スピンコーター、スプレイコーター、スクリー
ン印刷、グラビア印刷等の各種塗布/印刷法を用いて基
材表面に塗布することができる。基材表面に塗布した
後、加熱或いは活性エネルギー線の照射を行うことによ
って形成された皮膜を硬化させる。硬化に使用する活性
エネルギー線源としては、波長200〜480nmの範
囲の輝線スペクトルを多量に含む水銀灯、レーザー光、
電子線等が適している。 【0044】本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、乾燥
した固体状の皮膜を与えるように調製し、フォトレジス
トを用いた場合と同様なパターニングを行うことで、選
択的な物品の表面処理を容易に行うことができる。この
場合には、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を含む塗布
液を物品に塗布し、溶剤を除去して乾燥皮膜とした後、
適当なパターンを有するマスクを重ねて活性エネルギー
線を照射するか、或いは上記皮膜にパターン状に活性エ
ネルギー線を照射し、しかる後、未硬化の皮膜を溶解し
うる溶剤系で現像処理を行う。パターン状のエネルギー
線の照射が硬化に十分でない場合には、現像処理後にポ
ストキュアのための硬化処理を行うことが望ましい。そ
のためのエネルギー源としては、熱、マイクロ波等の加
熱処理、電子線、紫外線等の活性エネルギー線照射が用
いられる。 【0045】以上の如き、本発明に係るエポキシ樹脂組
成物を用いた、物品の表面改質方法によれば、皮膜の基
材への密着性、皮膜の表面の硬度に優れた撥水・撥油処
理が行えるので、耐久性において優れた基材の改質が可
能であるという大きな利点がある。 【0046】インクジェット記録ヘッドに対する本発明
に係るエポキシ樹脂組成物の応用例としては、記録ヘッ
ドのノズル表面を本発明に係るエポキシ樹脂組成物で処
理することによって、ノズル表面に対してインクの強固
な付着が起きず、ノズル表面に付着したインクをクリー
ニング処理によって容易に拭き取れる離型性のよい表面
を形成する例が挙げられる。 【0047】インクジェット記録ヘッドに搭載されてい
るクリーニング機構の多くは、インクをゴムのブレード
で拭き取る、インクをポンプで吸引する、記録紙外の位
置でインクの空吐出を行う等である。しかし、これらの
何れの方法であれ、吐出圧によって引き出されたインク
柱が液滴化する時に、すべてのインクが液滴にはならな
いので、余分のインクの微少液滴がノズルの周辺に付着
することを皆無にすることはできない。従って、これら
が自発的に落下、或いはノズル内部に再吸引される、或
いは容易に排除されるならば、インク吐出への影響はな
くなるのである。 【0048】本発明に係るエポキシ樹脂組成物によれ
ば、比較的低温でも硬化して、撥水・撥油性、基材に対
する密着性、耐薬品性、耐摩擦性に優れた硬化皮膜を提
供することが可能となる。 【0049】図1及び2に、本発明に係るエポキシ樹脂
組成物を適用し得るインクジェット記録ヘッドの構成の
一例の主要部を示す。図1は、インクの流路に沿った断
面図であり、図2は、図1のインクジェット記録ヘッド
の斜視図である。 【0050】この記録ヘッド13は、吐出エネルギー発
生装置等が配置された基板15上に、熱硬化性樹脂組成
物及び/又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化
物等を所定のパターンに成形して、少なくとも流路を形
成するようにした部材を積層接合した構成を有する。 【0051】基板15は、アルミナ等の放熱性のよい材
料からなる基体20の表面に、蓄熱層19、金属で形成
される発熱抵抗体層18、アルミニウム等からなる電極
17−1、17−2、及び保護層16をこの順に積層し
た構成を有し、電極17−1、17−2に通電すること
によって、発熱抵抗体層18の電極が積層されていない
部分(nで示す領域内にある部分)に形成された吐出エ
ネルギー発生素子が発熱し、その上方に位置するインク
に熱エネルギーが作用するようになっている。 【0052】記録に際して、インク21は、溝14の端
部微細開口である吐出口(オリフィス)22まで充填さ
れ、その状態で、記録信号に対応して電極17−1、1
7−2に通電されると、nで示される領域が急激に発熱
し、ここに接しているインク21に膜沸騰による気泡が
発生し、その圧力でインク21が吐出口22より小液滴
24となって吐出され、記録媒体25に向かって飛翔す
る。 【0053】本発明に係るインクジェット記録ヘッドで
は、吐出口面29(図2)の少なくとも吐出口22の開
口部周辺に、本発明に係るエポキシ樹脂組成物からなる
硬化皮膜30が、撥水・撥インク剤として適用されてい
るため、この面に液滴が付着して液滴の吐出方向にずれ
が生じるのが防止される。しかも、本発明に係るエポキ
シ樹脂組成物からなる硬化皮膜は、吐出口面29に対す
る密着性に優れるだけでなく、インクに有機溶剤、特に
極性有機溶剤が含有されていても、それによって撥水性
や密着性が損なわれることがない。 【0054】図3は、図2に示したようなマルチヘッド
を組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す図で
ある。図3において、61はワイピング部材としてのブ
レードであり、その一端はブレード保持部材によって保
持されて固定端となり、カンチレバーの形態をなす。ブ
レード61は、記録ヘッドより記録領域に隣接した位置
に配設され、又、本例の場合、記録ヘッドの移動経路中
に突出した形態で保持される。62はキャップであり、
ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、
記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して吐出口と
当接し、キャッピングを行う構成を備える。 【0055】更に、63はブレード61に隣接して設け
られたインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録
ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。上記
ブレード61、キャップ62、インク吸収体63によっ
て吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク
吸収体63によってインク吐出口面からの水分、塵埃等
の除去が行われる。 【0056】65は、インクジェット方式により記録を
行う記録ヘッドで、例えば、図1、2で示したような熱
エネルギーによってインク等の液体を吐出する構成を有
する。66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65
の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66
はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の
一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接
続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガ
イド軸67に沿った移動、即ち、記録ヘッド65による
記録領域及びその隣接した領域へ移動が可能となる。 【0057】51は、記録媒体を挿入するための給紙
部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りロ
ーラーである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出
口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行
するにつれて排紙ローラー53を介して排紙される。 【0058】上記構成において、記録ヘッド65が記録
終了時でホームポジションに戻る際、吐出回復部64の
キャップ62は記録ヘッドの移動経路から退避している
が、ブレード61は移動経路中の突出している。この結
果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。
又、キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接し
てキャッピングを行う際には、キャップ62は記録ヘッ
ドの移動経路中に突出するように移動する。 【0059】記録ヘッド65がホームポジションから記
録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード
61は上述したワイピング時の位置と同一の位置にあ
る。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐
出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホーム
ポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかり
でなく、記録ヘッドが記録のための記録領域を移動する
間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジション
へ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われ
る。 【0060】インクジェット記録装置では、カラー記録
の場合は、1ヘッド中に、シアン用、マゼンタ用、イエ
ロー用及びブラック用の吐出口を並列した記録ヘッドを
用いて行うことができる。又、各色の記録ヘッドを独立
して並列して配設して用いてもよい。これらの場合、各
色の吐出は、1つの吐出口から行ってもよいし、各色に
ついて同時に複数の吐出口から吐出を行って、2以上の
同一色の液滴が記録媒体に同時に付着するようにしても
よい。 【0061】本発明の記録ヘッドは、これまで説明した
本発明に係るエポキシ樹脂組成物からなる撥インク処理
材料によって表面処理され、後述の実施例に示すような
化学的な性質を有するので、インクの付着が少ない、或
いは付着したインクが極めて容易にクリーニング用ワイ
パーブレードにて除去される。よって、印字の実質の持
続性が飛躍的に高くなる。 【0062】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いて
表面処理する際の具体的な方法に関して、以下に例示す
る。本発明に係るエポキシ樹脂組成物からなる塗布皮膜
を活性エネルギー線で硬化させる例について説明する
が、この場合には、触媒として、光によってラジカルを
放出するトリアジン系カチオン触媒を添加して用いる。 【0063】<皮膜形成方法>この方法で用いる本発明
に係るエポキシ樹脂組成物は、非極性有機溶剤中に溶解
した状態の塗布液として用いられる。形成する皮膜の膜
厚が数μmと薄い場合には、ロールコーター、スピンコ
ーター、スプレイコーター等の通常の精密塗布装置を用
いて塗布液を塗布するとよい。 【0064】パターン状に基板表面を処理する第1の方
法は、前記のようにして形成した塗布皮膜上に所望のパ
ターンを有するマスクを用いて活性エネルギー線の選択
的な照射を行い、次いで現像液を用いた現像処理を行な
って、未硬化の皮膜を除去することによって達成され
る。これらの基本的な工程はフォトリソグラフィー法と
同じであるが、現像液としては、本発明に係るエポキシ
樹脂組成物からなる皮膜に適した溶剤或いは溶剤組成物
を選択することが必要である。現像液としては、芳香族
炭化水素類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテ
ル類等、及びそれらの混合物を使用することができる。
上記皮膜の硬化反応の完結を期すためには、現像後に更
に、加熱、或いは活性エネルギー線の照射を更に行うこ
とが望ましい。 【0065】パターン状に基板の表面を処理する第2の
方法は、前記の方法と同様にして、塗布液を基材に塗布
及び乾燥して塗布皮膜を形成する第1の工程(i)、重
合を促す活性エネルギー線による全面照射により皮膜の
硬化を行う第2の工程(ii)、硬化皮膜の所望の部位を
選択的に除去するように、崩壊性の活性エネルギー線を
照射する第3の工程(iii)を、この順序に施すことに
よって行う。重合を促す活性エネルギー線としては、波
長が250〜480nmの光を豊富に含む紫外線が用い
られる。崩壊性の活性エネルギー線としては、波長が2
10nm以下の光、エキシマーレーザー等を用いる。上
記第2の方法においても皮膜の硬化を完結させるために
は、何れかの段階で皮膜の熱処理や重合性の活性エネル
ギー線の照射を行うことが望ましい。 【0066】本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、以上
のような皮膜形成方法に適用することで、極性有機溶剤
のように撥水剤の密着性を損なう成分を含む液体や物質
との接触機会のある場所に適用する撥水剤又は撥水性塗
料として、更には、インクジェット記録ヘッドの吐出口
面の撥水・撥インク処理に好適に用いることができる。 【0067】 【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更
に詳しく説明する。尚、文中「%」とあるのは特に断り
のない限り質量基準である。先ず、本発明に係るエポキ
シ樹脂組成物の構成例1〜4を以下に例示する。以下の
比率は固形分の質量比率を示す。尚、下記において使用
した樹脂A−1は、先に例示した構造を有する樹脂であ
る。 【0068】(組成物例1:実施例1で使用) A−1:2,4−トリクロロメチル−6−(4’−メト
キシナフチル)−s−トリアジン=96:4 【0069】(組成物例2:実施例2で使用) A−1:2,4−トリクロロメチル−6−ピペロニル−
s−トリアジン=94:6 【0070】(組成物例3:実施例3で使用) A−1:2,4−トリクロロメチル−6−ピペロニル−
s−トリアジン:1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサ
フルオロイソプロピル)ベンゼン=95:5:25 【0071】(組成物例4:実施例4で使用) A−1:2,4−トリクロロメチル−6−ピペロニル−
s−トリアジン:1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサ
フルオロイソプロピル)ベンゼン:2,2−ビス(4−
グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン=
80:5:25:25 【0072】実施例1〜4 先の成分からなる組成物例1〜4の組成物を、ソルベッ
ソ100(芳香族炭化水素)/アイソパーG(脂肪族炭
化水素)混合溶剤(質量比1:1)へ加えて溶解し、濃
度30〜40%の溶液を作成した。これらの溶液をそれ
ぞれ5μmの厚さの熱酸化膜を有するシリコーンウエフ
ァー上に、ウエットで1〜3μmの厚さにスピンナーを
用いて塗布した。次いで、この基材を110℃のホット
プレート上で5分間乾燥して溶剤を除去して皮膜を形成
した。この4枚の基板に、高圧水銀灯を用いた紫外線照
射装置にて2ジュール/cm2の積算量の紫外線を照射
して、皮膜を硬化させた。次に、150℃の炉で15分
間加熱して硬化反応を完結させた。作成した4枚の基板
を用いて以下の測定を実施し、シリコーンウエファー基
板の表面状態を評価した。 【0073】T1:接触角の測定 純水、オレイン酸の10%水溶液、グリセリン20%水
溶液、及び界面活性剤1%水溶液(ポリオキシエチレン
ノニルフェニルエーテル;HLB=10)の4種類の各
液体を用いて、上記各基板の表面に形成された硬化皮膜
の静的接触角の測定を行なった。その際、接触角計(商
品名:CAX−150;協和界面科学(株)社製)を用
い、常温にて測定を行った。 【0074】T2:染料水溶液への浸漬後の接触角(前
進接触角、後退接触角)の測定 ダイレクトブラック168(水溶性染料)の3%水溶液
(pH=10.3)を調製し、この中に、前記で得た表
面に硬化皮膜を有する実施例1〜4の各基板を、60℃
で7日間浸漬した。その後、各基板を純水にて洗浄及び
乾燥し、上記で調製した染料水溶液に対する前進接触角
及び後退接触角を、先に使用したと同様の接触角計を用
いて測定した。尚、これらの接触角の測定には拡張収縮
法を用いた。 【0075】T3:長期印字耐久性 図4に示したようにして、予め吐出エネルギー発生素子
402等が設けられた被処理基板401上に(図4−a
及び4−b参照)、ポジ型フォトレジスト(商品名OD
UR−1010、東京応化工業製)を膜厚13μmにな
るようにスピンコートし、レジスト層403を形成した
(図4−c参照)。次に、レジスト層403上に、図5
の、5−aに示したように、流路形成用材料501とし
て、下記表1の組成を有するエポキシ樹脂組成物を25
μmの層厚で積層した。そして、流路形成用材料層50
1を積層後、ホットプレート上で80℃3分間乾燥を行
った。 【0076】【0077】次に、こうして得られた積層体上に、図5
−bに示すように、組成物例1〜4を含む前記実施例1
〜4の溶液を個々にスピンコートにて塗布して皮膜50
2を形成した。このようにして形成した第1(501)
及び第2(502)の感光性樹脂層に対して、吐出口部
のパターンが形成されたマスク(不図示)を介して、キ
ヤノン製マスクアライナーMPA600を用いて1.0
ジュール/cm2の紫外線露光、及び90℃4分間の加
熱処理した後に、MIBK/キシレン=2/3の現像液
に浸漬して吐出口部503を形成した(図5−c参
照)。次いで図5−dに示すように、Si製の基板40
1を裏面より異方性エッチングによりインク供給口50
4を形成し、最後に図5−eに示したように、ポジ型フ
ォトレジスト403を除去し、更に第1(501)及び
第2(502)の感光性樹脂層を完全に硬化する目的で
200℃/1時間加熱処理を行って、ノズルを完成させ
た(図5−e参照)。 【0078】更に、こうして得られたノズルを組み込ん
だインクジェット記録ヘッドに所定の電気配線を行っ
て、プリンタに組み込み、純水/グリセリン/フードブ
ラック2(水溶性黒色染料)/N−メチルピロリドン=
70/15/3/12(質量部)からなるインクジェッ
ト用インクを用いて、下記のようにして長期印字耐久試
験を行った。その結果を表2に整理した。 【0079】長期印字耐久試験は、文書とインクの着弾
精度を評価するパターンを100枚印字して、最終の印
字サンプルからドットの乱れを下記の基準で評価した。
この結果をT3−1とした。 評価A:ドット位置の乱れがなく、文字は鮮明である。 評価B:ドット位置の乱れが少々あるが、文字の品位へ
の影響は軽微である。 評価C:ドット位置の乱れがかなりあり、文字も鮮明さ
が低下している。 評価D:ドットの欠け、文字品位の大幅な低下が発生し
ている。 【0080】又、使用したプリントヘッドの表面を観察
し、インクの付着量を下記の基準で評価した。この結果
をT3−2とした。 評価A:ノズル表面にインク滴が殆どない。 評価B:ノズル表面に小さいインク滴が見られる。 評価C:ノズルの吐出口近傍に大きなインク滴がある。 【0081】比較例1 本発明に係るエポキシ樹脂組成物における触媒をルイス
酸のオニウム塩のUVI−6974(UCC製)に代
え、溶剤を極性溶剤のジエチレングリコールジメチルエ
ーテル/酢酸ブチル=8/2(質量比)に代える以外は
実施例1〜4と同様にして、シリコーンウエファー基板
の表面処理を行った。そして、得られた基板について、
前記した実施例1〜4の場合と同様に、T1〜T3の評
価を実施した。その結果を表2に示した。 【0082】 【0083】表2に示したように、本発明に係るエポキ
シ樹脂組成物からなる実施例の皮膜は、接触角が高く、
且つその持続性において良好であった。又、インクに長
期に接触してもプリントヘッド表面におけるインクの付
着がなく、結果として、ドットの着弾精度がよく、印字
品位を長く維持できるようになることがわかる。 【0084】実施例5 実施例1及び3で用いた組成物例1及び3を、ポリエー
テルサルフォンの成形板にスピンナーにて、溶剤蒸発後
の膜厚で約2μmになるようにそれぞれ塗布及び乾燥し
た。これらの基板に高圧水銀灯から合計10ジュール/
cm2の光を照射し、皮膜の重合硬化を行った。次いで
この基板にビーム径5μmに収斂した波長195nmの
エキシマーレーザー光を皮膜の上方から照射して、ノズ
ル穴開け加工を行った。穴開けは良好に行われ、エッジ
部にも分解残渣は少なく、良好な加工状態であった。こ
の結果、本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、紫外線レ
ーザーによる加工にも優れた適性を有することがわかっ
た。 【0085】比較例2 比較例1で使用したと同じ撥水処理剤をポリエーテルサ
ルフォンの成形板にスピンナーにて、溶剤蒸発後の膜厚
で約2μmに塗布した。この基板に高圧水銀灯から合計
10ジュール/cm2の光を照射し、重合を行った。次
いで、この基板にビーム径5μmに収斂した波長195
nmのエキシマーレーザー光を皮膜の上方から照射し
て、ノズル穴開け加工を行った。穴開けは良好に行え
ず、表面状態も不均一であった。解析の結果、撥水処理
剤中の極性溶媒によってポリエーテルサルフォンが溶解
していることが原因であると推定した。 【0086】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
撥水剤の成膜性や密着性を損なう成分を含む溶液や物質
との接触機会のある場所に適用する、撥水剤又は撥水性
塗料として好適なエポキシ樹脂組成物が提供される。
又、本発明によれば、常に同じ表面状態を持続できる表
面改質処理が可能なエポキシ樹脂組成物が提供される。 【0087】更に、本発明によれば、上記したエポキシ
樹脂組成物で基材の表面処理を行うことで、ノズル表面
を常に同じ表面状態に維持でき、インクに長期に接触し
ても、プリントヘッド表面におけるインクの付着がな
く、結果として、ドットの着弾精度がよく、印字品位を
長く維持できるインクジェット記録ヘッド、及びインク
ジェット記録装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】インクジェット記録ヘッドの構成の一例の主要
部を示す図である。 【図2】図1の斜視図である。 【図3】マルチヘッドを組み込んだインクジェット記録
装置の一例を示す図である。 【図4】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いて記録
ヘッドを形成する方法の一例を説明する模式図である。 【図5】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いて記録
ヘッドを形成する方法の一例を説明する模式図である。 【符号の説明】 13:記録ヘッド 14:インク溝 15:基板 16:保護層 17−1、17−2:電極 18:発熱抵抗体層 19:蓄熱層 20:基体 21:インク 22:オリフィス(吐出口) 23:メニスカス 24:小液滴 25:記録媒体 29:吐出口面 30:硬化皮膜 51:給紙部 52:紙送りローラー 53:排紙ローラー 61:ワイピング部材 62:キャップ 63:インク吸収体 64:吐出回復部 65:記録ヘッド 66:キャリッジ 67:ガイド軸 68:モーター 69:ベルト 401:被処理基板 402:吐出エネルギー発生素子 403:レジスト層 501:流路形成用材料 502:皮膜 503:吐出口部 504:インク供給口
フロントページの続き (72)発明者 野口 弘道 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2C057 AF65 AF93 AP02 AP12 AP13 AP57 AP60 4J002 CD191 EU186 FD146 GH00 GP03 HA05 4J100 AB02S AL08P AL08Q AL08R BA81Q BB18R BC54P CA06 JA01 JA37

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 1分子中に撥水性を有する基を1個以上
    及び環状脂肪族エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹
    脂と、トリアジン系カチオン重合触媒と、非極性の溶剤
    とを少なくとも含有することを特徴とするエポキシ樹脂
    組成物。
JP2003044507A 2002-02-21 2003-02-21 エポキシ樹脂組成物、これを用いた物品の表面の選択的処理方法及びインクジェット記録ヘッド Expired - Fee Related JP4006346B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003044507A JP4006346B2 (ja) 2002-02-21 2003-02-21 エポキシ樹脂組成物、これを用いた物品の表面の選択的処理方法及びインクジェット記録ヘッド

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002-45280 2002-02-21
JP2002045280 2002-02-21
JP2003044507A JP4006346B2 (ja) 2002-02-21 2003-02-21 エポキシ樹脂組成物、これを用いた物品の表面の選択的処理方法及びインクジェット記録ヘッド

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2003313400A true JP2003313400A (ja) 2003-11-06
JP2003313400A5 JP2003313400A5 (ja) 2006-04-13
JP4006346B2 JP4006346B2 (ja) 2007-11-14

Family

ID=29551825

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003044507A Expired - Fee Related JP4006346B2 (ja) 2002-02-21 2003-02-21 エポキシ樹脂組成物、これを用いた物品の表面の選択的処理方法及びインクジェット記録ヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4006346B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP4006346B2 (ja) 2007-11-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100626782B1 (ko) 에폭시 수지 조성물, 표면 처리 방법, 액체 분사 기록헤드 및 액체 분사 기록 장치
KR100541903B1 (ko) 에폭시 수지 조성물, 표면 처리 방법, 액체 분사 기록헤드 및 액체 분사 기록 장치
EP1783153B1 (en) Surface modification process making use of a fluorine-containing epoxy resin composition.
JPH1053639A (ja) 溶剤易溶性のフッ素含有エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた表面処理方法
EP1085031B1 (en) Alkylsiloxane-containing epoxy resin composition, surface modifying method using the same, ink-jet recording head and liquid-jet recording apparatus
EP1251151B1 (en) Epoxy resin composition, method of improving surface of substrate, ink jet recording head and ink jet recording apparatus
US6869541B2 (en) Epoxy resin composition, surface treating method, ink-jet recording head, and ink-jet recording apparatus
EP0942025B1 (en) Inkjet recording head and ink jet recording apparatus containing a fluorinated epoxy resin composition
EP0942026A2 (en) Fluorine-containing epoxy resin composition, and surface modification process, ink jet recording head and ink jet recording apparatus using same
JP4174124B2 (ja) 含フッ素エポキシ樹脂組成物を用いた表面改質方法、インクジェット記録ヘッド、インクジェット記録装置
KR100564851B1 (ko) 에폭시 수지 조성물, 표면 처리 방법, 액체 분사 기록헤드 및 액체 분사 기록 장치
JP4174123B2 (ja) 含フッ素エポキシ樹脂組成物及びこれを用いたインクジェット記録ヘッド
JPH11335440A (ja) 含フッ素エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた表面改質方法、インクジェット記録ヘッド、インクジェット記録装置
JP4175620B2 (ja) エポキシ樹脂組成物、及び液体噴射記録ヘッド
JP2003313400A (ja) エポキシ樹脂組成物
JP2003277472A (ja) エポキシ樹脂組成物
JP4174329B2 (ja) エポキシ樹脂組成物、及び液体噴射記録ヘッド
JP2003020323A (ja) エポキシ樹脂組成物、基材の表面改質方法、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2001158818A (ja) 含アルキルシロキサンエポキシ樹脂組成物及びそれを用いた表面改質方法、インクジェット記録へッド、液体噴射記録装置

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060217

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060217

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070531

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070605

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070718

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070814

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070827

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100831

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110831

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120831

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120831

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130831

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees