JP4174329B2 - エポキシ樹脂組成物、及び液体噴射記録ヘッド - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、及び液体噴射記録ヘッド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撥水性や撥インク性を付与するための表面処理に用いることができる硬化性のエポキシ樹脂組成物、とりわけ、紫外線照射によってパターン状に塗膜(被膜)を形成することが可能であると共に、エキシマレーザによる選択的な除去が可能な硬化被膜を与えるエポキシ樹脂組成物に関し、更には、該樹脂組成物を用いた表面処理方法、該エポキシ樹脂組成物を用いて撥インク処理された液体噴射記録ヘッド、及びそれを用いた液体噴射記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の分野において、耐水性や撥インク性が要求される部材に、撥水性塗料を適用して耐水性や撥インク性を付与する方法が一般的に知られており、該方法に用いる樹脂素材や塗料が開発されている。例えば、フルオロポリオレフィンやパーフルオロ基を有するフッ素系塗料からなる被膜は、熱的にも化学的にも極めて安定であり、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐溶剤性等に優れ、更に、離型性、耐摩擦性、撥水性にも優れ、各種の用途に広く利用されている。
【0003】
一方、インクのような液体を吐出口から小滴として吐出して、紙等に付着させて記録や画像の形成を行う液体噴射記録ヘッドでは、記録特性をより高度なものとするために、より小さな液滴、より高い駆動周波数、より多くのノズル数へと性能アップが続けられている。従って、ノズル表面を常に同じ表面状態に維持するための処理がますます重要になっている。
【0004】
しかし、既存の材料を使用して、ノズル表面を、インクが付着しないように選択的に、或いはパターン状に精密に表面処理を行うことは困難であった。その理由は、先ず表面処理材料にパターン状の処理に適したフォトレジストのような特性を持たせるためには、感光性の官能基をもった物質を主体とした材料を使用しなければならないが、そうした化合物が、同時に撥水・撥インク特性をもつように分子設計するには、大きな困難を伴うからである。
【0005】
又、仮に既存のフッ素系の材料で表面処理することができたとしても、更に、その表面の性質を長く維持できるように膜構造を設計することが必要となる。そうした性能を有するパターン状の表面処理が可能な材料があれば、以下に説明するように、インクジェットプリントヘッドの表面処理材料として非常に大きな価値を生じる。
【0006】
即ち、インクを小液滴にして飛翔させ、記録を行うインクジェット記録方式において、吐出口(孔)は以下のような性能を有するように設計されていることが好ましい。
(1)液滴化されるインク柱の残部のインクが、速やかにノズル内に再収納されること。
(2)表面に付着したインク滴は、クリーニング操作で容易に掃き出されること。
(3)クリーニング操作や用紙搬送における耐擦傷性に優れること。
(4)繰り返される液滴形成とインクリフィルにおいて、ノズル表面位置にメニスカス(図1の符号23参照)が形成されること。
(5)メニスカスの法線方向が吐出方向になっていること。
(6)表面張力が低いインクであっても、或いは低い負圧の状態であっても、メニスカスを形成しうるだけの十分な界面張力、即ち接触角を持つこと。
【0007】
吐出口に、これらの諸要求性能が求められる理由は、液体噴射記録ヘッドでは、吐出口の周辺に、インク等の記録用の液体が付着していると、吐出口から吐出される液滴の吐出(飛翔)方向にズレが生じ、高精度での印字ができなくなるという印字性能に直接関係するからである。かかる吐出方向のズレの原因となる吐出口付近への液体の付着を防止するために、吐出口が形成されている面に撥水剤処理を行う方法が知られている。
【0008】
これらに関係する先行技術としては、例えば、フルオロアセチル基とシラザン基を有するポリマーで撥インク処理を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。一方、液体噴射記録方式を応用したプリンタによる画像記録への高度な要求に伴って、記録用液体(インク)に対して要求される特性も高度なものとなりつつある。このような記録用液体は、内容物の溶解安定性や分散安定性のより一層の向上のためにpHを7〜11の塩基性に調節されることが多く、そのためプリンタ部材には、耐アルカリ性及び加水分解性に優れた構造材を採用することも必須となってきている。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−39944号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、極性有機溶媒を含む記録用液体や、上記のような高いpHの記録用液体を用いた場合には、上述したような目的で吐出口面の表面処理に適用した撥水剤が、記録用液体に用いた溶媒成分、特に極性有機溶剤成分と接触することで、その撥水性被膜の成膜性や、適用部材との密着性が損なわれ、該撥水性被膜が剥離し、吐出口面の撥水性が失われる場合があった。
【0011】
又、近年においては、液体噴射記録ヘッドから吐出させる液滴のサイズの微細化に伴い、液体噴射記録ヘッドに施す撥水性被膜に対しても微細加工性が要求されてきている。これに対し、エポキシ樹脂の硬化被膜に微細加工を施す方法として、エポキシ樹脂の硬化被膜へのエキシマーレーザによる位置選択的な照射による除去が考えられるが、硬化被膜自体がアブレーション性に優れていないと、高精度な微細加工を施すことは困難である。例えば、硬化被膜のアブレーション性が十分でない場合、被膜の除去部と非除去部との間に堆積物が生成されてしまう場合があった。
【0012】
従って、本発明の目的は、極性溶媒のように、撥水剤の成膜性や密着性を損なう成分を含む溶液や物質との接触機会のある場所に適用する撥水剤又は撥水性塗料として好適に用い得るとともに、微細加工性に優れた、例えば、レーザによるアブレーション性の良好な、硬化被膜を与えることのできるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。又、本発明の目的は、常に同じ表面状態を持続できる表面改質処理が可能なエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
又、本発明の他の目的は、かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、物品の表面の所定の部位に位置精度よく、撥水性を付与することのできる表面処理方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、かかるエポキシ樹脂組成物で基材の表面処理を行うことで、ノズル表面を常に同じ表面状態に維持でき、記録用媒体に長期に接触してもプリントヘッド表面におけるインクの付着がなく、結果として、ドットの着弾精度がよく、印字品位を長く維持できる液体噴射記録ヘッド、及び液体噴射記録装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の一実施態様にかかるエポキシ樹脂組成物は、[1]1分子中に少なくとも2個の環状脂肪族エポキシ基と、少なくとも1つの炭素数6〜12のパーフルオロアルキル基と、少なくとも1つのアルキルシロキサン基と、少なくとも1つの環状基と、を有しているエポキシ樹脂と、カチオン重合触媒と、を含有しているエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂が下記式(10)で示される構造単位を含むことを特徴とする。
Figure 0004174329
(上記式(10)中、a=1〜50の整数、b=1〜50の整数、c=1〜50の整数、d=2〜100の整数、n 4 は2〜200の整数であり、Rfは、炭素数6〜12のパーフルオロアルキル基であり、Zは環状基を表す)。
【0017】
本発明の好ましい形態としては、以下のものが挙げられる。]前記式(10)中のZで表される環状基が下記構造式(2)〜(9)から選ばれる少なくとも1つである上記[]に記載のエポキシ樹脂組成物:
Figure 0004174329
【0019】
]前記カチオン重合触媒が、ルイス酸のオニウム塩である上記[1]又は2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0020】
]前記エポキシ樹脂組成物が、更に下記一般式(11)及び(12)で表わされる化合物の少なくとも一方を含有している上記[〜[3]の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
Figure 0004174329
Figure 0004174329
【0023】
]液体を吐出する吐出口を有する液体噴射記録ヘッドにおいて、少なくとも該吐出口周辺が、上記[1]〜[4]の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化膜で被覆されていることを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明にかかる樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含むので、該樹脂組成物からなる被膜は、各種部材への密着性に優れ、比較的低温でも硬化可能であり、構造物としての物性にも優れた硬化物を提供できる。更に、本発明にかかる樹脂組成物は、その構造中に、アルキルシロキサン基及びパーフルオロアルキル基を有するエポキシ化合物が含有されているので、該樹脂組成物からなる被膜は、水溶性有機溶剤、特に極性有機溶剤に対する耐性が大幅に向上したものとなる。又、顔料系インク中の顔料分散安定化剤等に対しても耐性が向上している。そして、更に、相溶化剤を含む形態の場合は、相溶化剤の作用によって樹脂組成物の成分間に相溶性が与えられるため、本発明にかかる樹脂組成物の材料構成の範囲を広くできる。
【0026】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を塗布及び乾燥して形成される被膜は、活性エネルギー線によって賦活化されるルイス酸のオニウム塩を触媒として含有することによって、パターン状に硬化が可能であり、未硬化部分の被膜を除去することにより物品の表面をパターン状に表面処理することが可能である。
【0027】
パターン状に表面を処理する方法は、エポキシ樹脂組成物を基材に塗布及び乾燥して被膜を形成し、該被膜に所望のパターンを有するマスクを介して活性エネルギー線の照射を行い、次いで現像液を用いた現像処理を行って被膜の未硬化部分を除去することによって行うことができる。このパターン処理は、基本的な工程はフォトリソグラフィー法と同じであるが、現像液としては、樹脂組成物からなる被膜に適した溶剤或いは溶剤組成物を選択する。現像液としては、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類等及びそれらの混合物を使用することができる。
【0028】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を用いてパターン状に表面を処理する方法を実施する場合には、樹脂組成物からなる被膜の硬化の完結を期すために、現像後に被膜を加熱、或いは活性エネルギー線の照射を更に行う、所謂ポストキュアを施すことが望ましい。
【0029】
このようにして本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、極性有機溶剤のように撥水剤の密着性を損なう成分を含む溶液や物質との接触機会のある場所に適用する撥水剤又は撥水性塗料として、更には、液体噴射記録ヘッドの吐出口面の撥水・撥インク処理を行う材料として好適に用いることができる。
【0030】
即ち、インクジェット記録装置に対する本発明にかかるエポキシ樹脂組成物の適用の効果は、該樹脂組成物を使用することで、光重合性を利用した選択的な表面改質、処理の精度、硬化膜としての固体強度、摩擦強度によるデバイスとしての耐久性、撥水・撥インク性の高さが達成され、これによって、インクジェット記録装置における、水系インクのメニスカス保持力、クリーニング性、液滴吐出方向の正確さ、連続吐出における持続性、休止後の印字開始の適性等の諸特性の向上に繋がる。ここでメニスカス保持力とは、インクがノズル先端でそのインク表面を表面張力で維持し、且つ繰り返される液滴吐出に際してメニスカスを所定の位置に回復し保持する性質を指している。この保持力が低いと、インクがノズル先端から滲み出す、或いはメニスカスが後退して吐出するインクの液滴の体積が減少する、或いは極端な場合にはインクの吐出欠損が起こる等の不具合に繋がる場合がある。
【0031】
又、本発明によれば、エポキシ樹脂中に、少なくとも1の環状基を導入したことにより、例えば、エキシマーレーザ等によるアブレーション性が向上した硬化被膜を得ることができる。これによって、物品の表面の所定の位置に、極めて精度よく撥水被膜を施すことが可能となる。
【0032】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個の環状脂肪族エポキシ基と、少なくとも1つの炭素数6〜12のパーフルオロアルキル基と、少なくとも1つのアルキルシロキサン基と、少なくとも1つの環状基と、を有しているエポキシ樹脂と、カチオン重合触媒と、を含有していることを特徴とする。
【0033】
上記エポキシ樹脂組成物中、エポキシ樹脂としては、上記の条件を満たす樹脂であれば特に限定されないが、特に、環状脂肪族エポキシ基、パーフルオロアルキル基及び環状基は、当該エポキシ樹脂の分岐鎖中にあり、アルキルシロキサン基は、当該エポキシ樹脂の主鎖中に存在する構造を有することが好ましい。
【0034】
そして、本発明にかかるエポキシ樹脂の具体例として、例えば、下記一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂を挙げることができる。
Figure 0004174329
【0035】
上記式(1)において、aは1〜50の整数、bは1〜50の整数、cは1〜50の整数、dは2〜100の整数である。又、n1〜n3及びn5〜n7は、各々独立に1〜5の整数であり、又、n4は2〜200の整数である。又、上記式(1)において、R1、R4〜R7、R10及びR15は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基であり、又、R2、R3、R8及びR9は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基及びニトリル基から選ばれる何れかである。又、Rfは、炭素数6〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基、特には、炭素数8〜10のパーフルオロアルキル基である。
【0036】
又、上記式(1)において、Zは環状基を表す。ここで環状基は、当該エポキシ樹脂の硬化被膜のアブレーション性を向上させることができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、紫外領域のレーザ等によるアブレーション性の向上を図るうえでは、下記式(2)〜(9)から選ばれる少なくとも1つの環状基を導入することが好ましい。
【0037】
Figure 0004174329
【0038】
前記の如き一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂は、メタクリル酸パーフルオロアルキルエステル、環状基を有するビニル化合物、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシルメチルエステル及びアゾ基含有ポリシロキサンアミドを常法に従って適当なモノマー比で共重合させることによって得られるとともに、市場から入手して使用することもできる。
【0039】
より詳細に述べれば、かかるエポキシ樹脂は、例えば、下記構造式(1)−iで示される化合物を、下記構造式(1)−ii、(1)−iii及び(1)−ivで示されるビニル系モノマーの共存下で、加熱、光照射、或いは加熱及び光照射してラジカル種を生じさせることによって合成することができる。
【0040】
Figure 0004174329
【0041】
(上記式(1)−i中、R11〜R14は、前記R2、R3、R8及びR9と同義であり、各々独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基及びニトリル基から選ばれる。又、n8及びn9は、0又は1〜6の整数を示し、n2、n3、n5及びn6は、各々独立に1〜5の整数を表わし、n4は2〜200の整数を表わす。R4〜R7は各々独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基である。Xはハロゲン原子を表す)。
【0042】
Figure 0004174329
(上記(1)−ii〜(1)−ivにおいて、Rf、R1、R10、R15、n1、n7及びZは、全て前記一般式(1)と同義である)。
【0043】
上記式(1)−iで示される化合物は、例えば、特公平2−33053号公報に記載の方法にて合成することができる。即ち、下記式(1)−vに示すジアミンと、下記式(1)−vi及び(1)−viiで示されるジハライドとを反応させることで得ることができる。これらの式中の符号は、前記(1)−iと同義である。
【0044】
Figure 0004174329
【0045】
上記式(1)で示されるエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、下記式(10)で示される構造単位を含むエポキシ樹脂が挙げられる。尚、下記式(10)中、Rf、Z、n4、a〜dは、前記式(1)と同義である。
【0046】
Figure 0004174329
【0047】
更に好ましい樹脂は、上記構造式(10)において、aが20〜50、bが5〜30、cが5〜40、dが20〜70、n4が20〜150であって、数平均分子量が8,000〜22,000のものが挙げられる。
【0048】
本発明に特に好適に用いられるエポキシ樹脂のより具体的な例(A−1)としては、下記に示される構造のものが挙げられる。
Figure 0004174329
【0049】
又、本発明に特に好適に用いられるエポキシ樹脂の具体例(A−2)としては、上記式(10)において、aのモノマー単位が30モル%、bのモノマー単位が15モル%、cのモノマー単位が15モル%、dのモノマー単位が40モル%、Zが前記に例示した(9)の環状基、及びn4が100であって、その数平均分子量が約20,000であるアクリル系エポキシ樹脂が挙げられる。
【0050】
本発明に係る、上記式(1)で示されるエポキシ樹脂の数平均分子量としては、8,000〜22,000、特には、8,500〜20,000の範囲が、撥水膜の耐久性の点で好ましい。
【0051】
尚、上記式(1)や(10)で示した構造において、環状脂肪族エポキシ基として3,4−エポキシシクロヘキシル基を記載したが、環状脂肪族は、何らこれに限定されるものでなく、シクロプロピル基やシクロヘキシル基等であってもよい。
【0052】
上記エポキシ樹脂は単独で使用してもよい。又、該樹脂は高分子量であるので、上記樹脂よりも低分子量のオリゴマー及び溶剤を配合して、樹脂組成物の被処理物品に対する塗布適性を高め、溶剤蒸発後の被膜の乾燥性を高めて処理の作業性を向上させることは、好ましい態様の一つである。即ち、上記一般式(1)で表わされる樹脂又は他の高分子量の樹脂を、被膜形成時のバインダーとして機能させることが好ましい。このようなバインダー性の一般式(1)の樹脂、或いは他の高分子量の樹脂を併用することは、樹脂被膜にパターン状の露光作業を施す上で好ましい。尚、前記「オリゴマー」とは、前記一般式(1)の樹脂よりも低分子量の樹脂が好ましいが、その他の低分子量のオリゴマーであってもよい。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、前記した一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂と触媒とを主体とするが、必要に応じて更に相溶化剤を含むことが好ましい。このような相溶化剤としては、下記一般式(11)及び/又は下記一般式(12)で表わされる化合物が好適である。
Figure 0004174329
上記化合物の好ましい具体例としては、p=0である化合物、即ち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを挙げることができる。
【0054】
Figure 0004174329
上記化合物の好ましい具体例としてはq=0である化合物、即ち、m−ビス−[1−(2,3−エポキシプロポキシ)−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]ベンゼンが挙げられる。
【0055】
上記一般式(11)及び(12)で表わされる化合物は、フッ化アルキル基を有するものの、その鎖長が短いために形成される被膜の表面エネルギー低下作用は小さく、撥水及び撥インク性は大きくない。上記一般式(11)及び(12)で表わされる化合物は、何れも一般式(11)及び(12)で表わされる化合物の両端のエポキシ基を含む基を除いた化合物に該当する2価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって、常法によって合成される。
【0056】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物には、それを硬化させるための触媒としてカチオン重合開始剤を含有している。本発明では、特に低温硬化が可能となるところの活性エネルギー線によって賦活化されるルイス酸のオニウム塩に対して反応性が高くなるように樹脂組成物が設計されている。これによって、該樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法によって基材の表面を位置選択的に処理することができ、又、高温に保持することが困難な基材に対しても表面改質を良好に行うことができる。本発明で好適に利用できる触媒としては、例えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、商品名「オプトマーSP−150」、「オプトマーSP−170」(何れも旭電化工業製)等が挙げられる。
【0057】
上記オプトマーSP−150の化学構造は下記式で表わされる。
Figure 0004174329
【0058】
又、上記オプトマーSP−170の化学構造は下記式で表わされる。
Figure 0004174329
【0059】
更に下記構造式で示される商品名「イルガキュア261」(チバスペシャルティー社製)等を重合開始剤として使用することができる。
Figure 0004174329
【0060】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、先述した一般式(1)で表わされる樹脂以外に、バインダーポリマーとして機能する、側鎖にエポキシ基を持ったアクリルモノマーを共重合したアクリル樹脂、側鎖に環状脂肪族エポキシ基を有するビニルモノマーを重合したビニルポリマー、側鎖に環状脂肪族エポキシ基を有するポリエーテルポリマー(例えば、EHPE3150;ダイセル化学工業の製品)等、それ自体も架橋反応に関与しうるエポキシポリマーを併用してもよく、特にこのような架橋反応に関与しうるものが最適である。もしもそうしたエポキシ基を持たないポリマーを使用する場合には、それが適用される用途に応じた物性調整を意図して選択することを要する。そうした物質としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂の重合体である、商品名「PKHC」、「PKHJ」(ユニオンカーバイド社の製品)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、可溶性ポリイミド樹脂等の汎用の塗料用高分子化合物が使用可能である。
【0061】
以上のように本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、基本的には
A:エポキシ樹脂
B:カチオン重合触媒、及び必要に応じて
C:相溶化剤
を非極性の溶剤中に含有する。これらA、B及びCの各成分の樹脂組成物中における好ましい配合割合は以下の通りである。
【0062】
前記成分Aをオリゴマーとともに用いる場合には、それぞれの軟化点、ガラス転移温度に依存するので一般的な範囲はない。しかし、概ねオリゴマー:成分A=10:90乃至90:10(質量比率)である。触媒Bは、エポキシ樹脂成分の合計量100質量部に対して0.5乃至7質量部の範囲である。これらのオリゴマーとポリマーとは互いに相溶性が低い場合があり、相溶化剤Cを使用することが有利な場合が多い。
【0063】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、加熱或いは活性エネルギー線の照射によって基材の表面処理を行う際に好適に用いることができる。具体的には、先ず、本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を、芳香族系、脂肪族炭化水素系、エステル系、エーテル系、フッ素系溶剤等に溶解し、かかる塗布液を、ロールコーター、スピンコーター、スプレイコーター、スクリーン印刷、グラビア印刷等の各種塗布/印刷法を用いて基材表面に塗布し、次に、上記のようにして基材表面に形成された被膜に、加熱或いは活性エネルギー線の照射を行うことによって、被膜を硬化させることによって、基材の表面処理を行うことができる。硬化に使用する活性エネルギー線源としては、波長200乃至480nmの範囲の輝線スペクトルを多量に含む水銀灯、レーザー光、電子線等が適している。
【0064】
より好ましくは、本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を、前記のようなバインダー成分を含有させる構成として、基材の表面に乾燥した固体状の被膜を与えるように調製することで、フォトレジストを用いた場合と同様なパターニング処理を行うことができ、これによって、基材の表面処理を位置選択的に行うことが容易にできる。この場合には、先ず、本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を含む塗布液を基材に塗布し、溶剤を除去して乾燥被膜とした後、適当なパターンを有するマスクを重ねて活性エネルギー線を照射するか、或いは上記被膜にパターン状に活性エネルギー線を照射し、しかる後、未硬化の被膜を溶解しうる溶剤系で現像処理を行う。パターン状のエネルギー線の照射が硬化に十分でない場合には、現像処理後にポストキュアのための硬化処理を行うことが望ましい。そのためのエネルギー源としては、熱、マイクロ波等の加熱処理、電子線、紫外線等の活性エネルギー照射を用いることができる。
【0065】
以上の如き本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を用いる表面改質方法によれば、被膜の基材への密着性、基材表面に、位置選択的に硬度に優れた撥水撥油処理が行えるので、耐久性において優れた基材の表面改質が可能であるという大きな効果が得られる。
【0066】
液体噴射記録ヘッド、例えば、インクジェット記録ヘッドに対する本発明にかかるエポキシ樹脂組成物の応用例としては、当該液体噴射記録ヘッドのノズル表面を本発明のエポキシ樹脂組成物で処理することによって、ノズル表面に対してインクの強固な付着が起きず、ノズル表面に付着したインクをクリーニング処理によって容易に拭き取れる離型性のよい表面を形成する例が挙げられる。
【0067】
液体噴射記録装置、例えば、インクジェット記録装置に搭載されているクリーニング機構、或いはクリーニング方法としては、例えば、インクジェット記録ヘッドのオリフィス面に付着したインクをゴムのブレードで拭き取る、ノズル内のインクをポンプで吸引する、記録紙外の位置でインクの空吐出を行う等がある。しかし、これらの何れの方法であっても、吐出圧によって引き出されたインク柱が液滴化する時に、すべてのインクが液滴にはならないので、余分のインクの微少液滴がノズルの周辺に付着することを皆無にすることはできない。従ってこれらが自発的に落下、或いはノズル内部に再吸引される、或いは容易に排除されるならば、インク吐出への影響はなくなるのである。
【0068】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物によれば、比較的低温でも硬化して、撥水・撥油性、基材に対する密着性、耐薬品性、耐摩擦性に優れた硬化被膜を提供することが可能となる。
【0069】
図1及び2に、本発明のエポキシ樹脂組成物を適用し得る液体噴射記録ヘッドの構成の一例の主要部を示す。図1は、インクの流路に沿った断面図であり、図2は、図1の液体噴射記録ヘッドの斜視図である。
【0070】
この記録ヘッド13は、吐出エネルギー発生装置等が配置された基板15上に、熱硬化性樹脂組成物及び/又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物等を所定のパターンに成形して、少なくとも流路を形成するようにした部材を積層接合した構成を有する。
【0071】
基板15は、アルミナ等の放熱性のよい材料からなる基体20の表面に、蓄熱層19、金属で形成される発熱抵抗体層18、アルミニウム等からなる電極17−1、17−2及び保護層16をこの順に積層した構成を有し、電極17−1、17−2に通電することによって、発熱抵抗体層18の電極が積層されていない部分(nで示す領域内にある部分)に形成された吐出エネルギー発生素子が発熱し、その上方に位置するインクに熱エネルギーが作用するようになっている。
【0072】
記録に際して、インク21は、溝14の端部微細開口である吐出口(オリフィス)22まで充填され、その状態で、記録信号に対応して電極17−1、17−2に通電されると、nで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に膜沸騰による気泡が発生し、その圧力でインク21が吐出口22より小液滴24となって吐出され、記録媒体25に向かって飛翔する。
【0073】
本発明にかかる液体噴射記録ヘッドでは、吐出面29(図2)の少なくとも吐出口開口部周辺に、本発明の樹脂組成物からなる硬化被膜30が、撥水・撥インク剤として適用され、この面に液滴が付着して液滴の吐出方向にずれが生じるのが防止される。しかも、本発明の樹脂組成物からなる硬化被膜は、吐出面29に対する密着性に優れるだけでなく、インクに有機溶剤、特に極性有機溶剤が含有されていても、それによって撥水性や密着性が損なわれることがない。
【0074】
図3は、図2に示したようなマルチヘッドを組み込んだ液体噴射記録装置の一例を示す図である。図3において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は、記録ヘッドより記録領域に隣接した位置に配設され、又、本例の場合、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。62はキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して吐出口と当接し、キャッピングを行う構成を備える。
【0075】
更に63はブレード61に隣接して設けられたインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62、インク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によってインク吐出口面からの水分、塵埃等の除去が行われる。
【0076】
65は液体噴射方式により記録を行う記録ヘッドで、例えば、図1、2で示したような熱エネルギーによってインク等の液体を吐出する構成を有する。66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動、即ち、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域へ移動が可能となる。
【0077】
51は、記録媒体を挿入するための給紙部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行するにつれて排紙ローラー53を介して排紙される。
【0078】
上記構成において、記録ヘッド65が記録終了時でホームポジションに戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。又、キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接してキャッピングを行う際には、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。
【0079】
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上述したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のための記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0080】
インクジェット記録装置では、カラー記録の場合は、1ヘッド中に、シアン用、マゼンタ用、イエロー用及びブラック用の吐出口を並列した記録ヘッドを用いて行うことができる。又、各色の記録ヘッドを独立して並列して配設して用いてもよい。これらの場合、各色の吐出は、1つの吐出口から行ってもよいし、各色について同時に複数の吐出口から吐出を行って、2以上の同一色の液滴が記録媒体に同時に付着するようにしてもよい。
【0081】
本発明にかかる液体噴射記録ヘッドは、これまで説明した本発明にかかるエポキシ樹脂組成物からなる撥インク処理材料によって表面処理され、後述の実施例に示すような化学的な性質を有するので、インクの付着が少ない、或いは付着したインクが極めて容易にクリーニング用ワイパーブレードにて除去される。よって印字の実質の持続性が飛躍的に高くなる。
【0082】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を用いる際の具体的な方法に関して、その方法を以下に例示する。本発明のエポキシ樹脂組成物からなる被膜を活性エネルギー線で硬化を行う場合には、前記したように触媒として光によって放出する光カチオン触媒を添加して用いる。
【0083】
<被膜形成方法>
この方法で用いる本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤中に溶解した状態の塗布液として用いられる。被膜の膜厚が数μmと薄い場合には、ロールコーター、スピンコーター、スプレイコーター等の通常の精密塗布装置を用いて塗布液を塗布することができる。又、一度、上記塗布液を離型紙上に塗布及び成膜してドライフィルム化し、該ドライフィルムをラミネーター等で基材表面に貼り合わせて、基材表面に被膜を形成することも可能である。
【0084】
パターン状に基板表面を処理する第1の方法は、前記被膜上に所望のパターンを有するマスクを用いて活性エネルギー線の選択的な照射を行い、次いで現像液を用いた現像処理を行って、未硬化の被膜を除去することによって達成される。これらの基本的な工程はフォトリソグラフィー法と同じであるが、現像液としては、本発明の樹脂組成物からなる被膜に適した溶剤或いは溶剤組成物を選択することが必要である。現像液としては、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類等及びそれらの混合物を使用することができる。上記被膜の反応の完結を期すために、現像後に加熱、或いは活性エネルギー線の照射を更に行うことが望ましい。
【0085】
パターン状に基板の表面を処理する第2の方法は、前記塗布液を基材に塗布及び乾燥して被膜を形成する第1の工程(i)、重合を促す活性エネルギー線による全面照射により被膜の硬化を行う第2の工程(ii)、硬化被膜の所望の部位を選択的に除去するように、崩壊性の活性エネルギー線を照射する第3の工程(iii)を、この順序に施すことによって行う。重合を促す活性エネルギー線としては、波長が250〜480nmの光を豊富に含む紫外線が用いられる。崩壊性の活性エネルギー線としては、波長が210nm以下の光、エキシマーレーザー等を用いる。上記第2の方法においても被膜の硬化を完結させるためには、何れかの段階で被膜の熱処理や重合性の活性エネルギー線の照射を行うことが望ましい。
【0086】
このようにして本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、極性有機溶剤のように撥水剤の密着性を損なう成分を含む液体や物質との接触機会のある場所に適用する撥水剤又は撥水性塗料として、更には、液体噴射記録ヘッドの吐出口面の撥水・撥インク処理に好適に用いることができる。
【0087】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。尚、文中「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。本発明の組成物の構成例を以下に例示する。以下の比率は固形分の質量比率を示す。尚、下記において使用した樹脂(A−1)及び(A−2)は、先に例示した樹脂である。
【0088】
下記組成物例1〜8を調製した。
(組成物例1)
樹脂A−1:オプトマーSP−170=96:4(実施例1で使用)
(組成物例2)
樹脂A−1:オプトマーSP−170=94:6(実施例2で使用)
(組成物例3)
樹脂A−1:オプトマーSP−170:1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン=95:5:25(実施例3で使用)
(組成物例4)
樹脂A−1:オプトマーSP−170:1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン:2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン=80:5:25:25(実施例4で使用)
【0089】
(組成物例5)
樹脂A−2:オプトマーSP−170=96:4(実施例5で使用)
(組成物例6)
樹脂A−2:オプトマーSP−170=94:6(実施例6で使用)
(組成物例7)
樹脂A−2:オプトマーSP−170:1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン=95:5:25(実施例7で使用)
(組成物例8)
樹脂A−2:オプトマーSP−170:1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン:2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン=80:5:25:25(実施例8で使用)
【0090】
[実施例1〜8]
組成物例1〜8のそれぞれを溶剤であるジエチレングリコールジメチルエーテル中へ加えて溶解し、濃度30乃至40%の溶液を作成した。これらの溶液をそれぞれ5μmの厚さの熱酸化膜を有するシリコーンウエハー上に、ウエットで1乃至3μmの厚さにスピンナーを用いて塗布した。次いでこの基材を110℃のホットプレート上で5分間乾燥して溶剤を除去した。この4枚の基板に高圧水銀灯を用いた紫外線照射装置にて2J/cm2の積算量の紫外線を照射した。次に150℃の炉で15分間加熱して硬化反応を完結させて8枚の基板を得た。
【0091】
(評価)
上記のようにして作成した8枚の基板を用いて以下の測定を実施し、それぞれを評価した。測定結果を表2に示した。
<T1:接触角の測定>
純水、及びオレイン酸の10%水溶液、グリセリン20%水溶液、界面活性剤1%水溶液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;HLB=10)の各液体を用いて、上記各基板の硬化皮膜の静的接触角の測定を、接触角計(商品名:CAX−150;協和界面科学(株)製)を用いて常温にて行った。そして、得られた結果を表2に示した。
【0092】
<T2:顔料水分散液への浸漬後の接触角(前進接触角、後退接触角)の測定>
カーボンブラックを5%、スチレンアクリル酸共重合体を1%含む水溶液(pH=10.3)に、上記硬化皮膜を有する各基板を60℃で7日間浸漬した。その後に各基板を純水にて洗浄及び乾燥し、得られた各基板について、上記で調製した顔料水分散液に対する前進接触角、及び後退接触角を、上記の接触角計を用いて測定した。又、これらの接触角の測定は、拡張収縮法を用いた。そして、得られた結果を表2に示した。
【0093】
<T3:長期印字耐久性>
図4−a〜cに示すように、予め吐出エネルギー発生素子402等が設けられた被処理基板401上に、図4−cに示すようにポジ型フォトレジスト(商品名ODUR−1010、東京応化工業製)を膜厚13〜14μmになるようにスピンコートし、レジスト層403を形成した。次に、レジスト層403上に、図5−aに示すように流路形成用材料501として、下記表1の組成のエポキシ樹脂組成物を25μmの層厚で積層した。
【0094】
Figure 0004174329
【0095】
流路形成用材料層501を積層後、ホットプレート上で80℃3分間乾燥を行った。次に、こうして得られた積層体上に、図5−bに示すように組成物例1〜8を含む前記実施例1〜8の溶液を個々にスピンコートにて塗布して被膜502を形成した。このようにして形成した第1(501)及び第2(502)感光性樹脂層に対して吐出口部のパターンが形成されたマスク(不図示)を介して、キヤノン製マスクアライナーMPA600を用いて1.0J/cm2の紫外線露光及び90℃4分間の加熱処理した後に、MIBK/キシレン=2/3の現像液に浸漬して吐出口部503を形成した(図5−c)。次いで、図5−dに示すようにSi製の基板401を裏面より異方性エッチングによりインク供給口504を形成し、最後に図5−eに示すようにレジスト層403を除去し、更に、第1(501)及び第2(502)の感光性樹脂層を完全に硬化する目的で200℃/1時間加熱処理を行ってノズルを完成させた(図5−e)。
【0096】
更に、こうして得られたノズルを組み込んだインクジェット記録ヘッドに所定の電気配線を行って、プリンタに組み込み、純水/グリセリン/フードブラック2(水溶性黒色染料)/N−メチルピロリドン=70/15/3/12(質量部)からなるインクジェット用インクを用いて長期印字耐久試験を行った。
【0097】
印字耐久試験は、文書とインクの着弾精度を評価するパターンを100枚印字して、最終の印字サンプルからドットの乱れを評価した。この結果をT3−1とし、得られた結果を表2に示した。
評価A:ドット位置の乱れがなく、文字は鮮明である。
評価B:ドット位置の乱れが少々あるが、文字の品位への影響は軽微である。
評価C:ドット位置の乱れがかなりあり、文字も鮮明さが低下している。
評価D:ドットの欠け、文字品位の大幅な低下が発生している。
【0098】
又、使用したプリントヘッドの表面を観察し、インクの付着量を評価した。この結果をT3−2とし、得られた結果を表2に示した。
評価A:ノズル表面にインク滴が殆どない。
評価B:ノズル表面に小さいインク滴が見られる。
評価C:ノズルの吐出口近傍に大きなインク滴がある。
【0099】
[比較例1]
実施例1のエポキシ樹脂に代えて含フッ素エポキシ樹脂であるビスフェノールAF(下記構造)を用いた以外は、実施例と同様にT1〜T3の各評価を行った。そして、得られた結果を表2に示した。
Figure 0004174329
【0100】
[比較例2]
本発明で使用した含フッ素/シリコーンアリールエポキシ樹脂組成物に代えて、フロラード(FluoradTM)FC−722(フルオロコーテイング剤;住友スリーエム製)をポリエーテルサルフォンの成形板にスピンナーにて、溶剤蒸発後の膜厚で約2μmに塗布した。更に、100℃で30分間の乾燥を行って表面処理を行った。次いで、この基板にビーム径5μmに収斂した波長195nmのエキシマーレーザー光を被膜の上方から照射して、ノズル穴開け加工を行った。穴開けは良好に行えず、エッジ部には分解残渣が多量に発生して、表面状態も不均一であった。この条件にて実施例1と同様に基板を作成し、実施例と同様にT1〜T3の評価を前記と同様に実施した。そして、得られた結果を表2に示した。
【0101】
Figure 0004174329
【0102】
以上示したように、本発明の樹脂組成物からなる被膜は接触角が高く、且つその持続性において良好である。又、インクに長期に接触してもプリントヘッド表面におけるインクの付着がなく、結果としてドットの着弾精度がよく、印字品位を長く維持できるようになることがわかる。
【0103】
[実施例9]
上記実施例1及び3で用いた組成物例1及び3を、ポリエーテルサルフォンの成形板にスピンナーにて、溶剤蒸発後の膜厚で約2μmになるようにそれぞれ塗布及び乾燥した。これらの基板に高圧水銀灯から合計10J/cm2の光を照射し、被膜の重合硬化を行った。次いで、この基板にビーム径5μmに収斂した波長195nmのエキシマーレーザー光を被膜の上方から照射して、ノズル穴開け加工を行った。穴開けは極めて良好に行われ、エッジ部にも分解残渣はなく、非常に良好な加工状態であった。この結果、本発明の組成物は、紫外線レーザーによる加工にも特に優れた適性を有することがわかる。
【0104】
[実施例10]
上記実施例9と同様にして、上記実施例4及び6で用いたエポキシ樹脂組成物を用いて、上記と同様にしてノズル穴開け加工試験を行った。その結果、上記実施例9の場合と同様に、穴開けは極めて良好に行われ、エッジ部にも分解残渣はなく、非常に良好な加工状態であった。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、撥水剤の成膜性や密着性を損なう成分を含む溶液や物質との接触機会のある場所に適用する撥水剤又は撥水性塗料として好適な、エポキシ樹脂組成物が提供される。又、本発明によれば、常に同じ表面状態を持続できる表面改質処理に有効なエポキシ樹脂組成物が提供される。
【0106】
更に、本発明によれば、かかるエポキシ樹脂組成物で基材の表面処理を行うことで、ノズル表面を常に同じ表面状態に維持でき、インクに長期に接触しても、プリントヘッド表面におけるインクの付着がなく、結果として、ドットの着弾精度がよく、印字品位を長く維持できるインクジェット記録ヘッド、及び液体噴射記録装置の提供が可能となる。
【0107】
又、本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、アブレーション性、特に紫外域に発振波長を有するレーザによるアブレーション性に優れた硬化被膜を与えることができるため、微細な加工性の要求される部材の表面への撥水膜の形成に特に好適であり、広い用途において有用な材料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液体噴射記録ヘッドの構成の一例の主要部を示す図である。
【図2】図1の斜視図である。
【図3】マルチヘッドを組み込んだ液体噴射記録装置の一例を示す図である。
【図4】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を使用した液体噴射記録ヘッドの製法を説明する図である。
【図5】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を使用した液体噴射記録ヘッドの製法を説明する図である。
【符号の説明】
13:記録ヘッド
14:インク溝
15、28:基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基体
21:インク
22:吐出口(オリフィス)
23:メニスカス
24:小液滴
25:記録媒体
30:硬化被膜
29:吐出面
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ワイピング部材
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
401:被処理基板
402:吐出エネルギー発生素子
403:レジスト層
501:流路形成用材料層
502:被膜
503:吐出口部
504:インク供給口

Claims (5)

  1. 1分子中に少なくとも2個の環状脂肪族エポキシ基と、少なくとも1つの炭素数6〜12のパーフルオロアルキル基と、少なくとも1つのアルキルシロキサン基と、少なくとも1つの環状基と、を有しているエポキシ樹脂と、カチオン重合触媒と、を含有しているエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂が下記式(10)で示される構造単位を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
    Figure 0004174329
    (上記式(10)中、a=1〜50の整数、b=1〜50の整数、c=1〜50の整数、d=2〜100の整数、n4は2〜200の整数であり、Rfは、炭素数6〜12のパーフルオロアルキル基であり、Zは環状基を表す)。
  2. 前記式(10)中のZで表される環状基が下記構造式(2)〜(9)から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 0004174329
  3. 前記カチオン重合触媒が、ルイス酸のオニウム塩である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記エポキシ樹脂組成物が、更に下記一般式(11)及び(12)で表わされる化合物の少なくとも一方を含有している請求項1〜3の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 0004174329
    Figure 0004174329
  5. 液体を吐出する吐出口を有する液体噴射記録ヘッドにおいて、少なくとも該吐出口周辺が、請求項1〜4の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化膜で被覆されていることを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
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