JP2003300109A - ドリルおよびそのホーニング方法 - Google Patents

ドリルおよびそのホーニング方法

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JP2003300109A JP2002102812A JP2002102812A JP2003300109A JP 2003300109 A JP2003300109 A JP 2003300109A JP 2002102812 A JP2002102812 A JP 2002102812A JP 2002102812 A JP2002102812 A JP 2002102812A JP 2003300109 A JP2003300109 A JP 2003300109A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 切刃の耐チッピング性や耐欠損性の向上を図
りつつも、切削抵抗の増大やドリルの破損、加工精度の
劣化等を招くことのないドリルおよびそのホーニング方
法を提供する。 【解決手段】 ドリル本体1の先端部外周に切屑排出溝
4が形成され、この切屑排出溝4の内周面5の先端側に
形成されたすくい面5Aと先端逃げ面3との交差稜線部
に切刃6が形成されるとともに、ドリル本体1の先端部
外周には切屑排出溝4との交差稜線部分8Aに沿ってマ
ージン部8が形成されたドリルをホーニングするに際し
て、切刃6を露出させた状態でマージン部8を被覆材1
4によって覆った上で、切刃6にブラシ11によってホ
ーニングを施すことにより、切刃6にはホーニングを施
す一方、すくい面5Aとマージン部8とは角度をもって
交差させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドリル本体の先端
部外周に形成された切屑排出溝の内周面先端側に形成さ
れたすくい面とドリル本体の先端逃げ面との交差稜線部
に切刃が形成されるとともにドリル本体の先端部外周に
は上記切屑排出溝に沿ってマージン部が形成されたドリ
ル、およびこのようなドリルの上記切刃にホーニングを
施す際のドリルのホーニング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】このようなドリルとしては、軸線を中心
として該軸線回りにドリル回転方向に回転される概略円
柱状のドリル本体の先端側が切刃部とされ、この切刃部
の外周に一対の切屑排出溝が、軸線に関して互いに対称
となるように、該切刃部の先端面、すなわちドリル本体
の先端逃げ面から後端側に向かうに従い軸線回りにドリ
ル回転方向の後方側に捩れる螺旋状に形成され、これら
の切屑排出溝の内周面のうちドリル回転方向を向く部分
の先端側の上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成
された、いわゆる2枚刃のソリッドドリルが知られてい
る。従って、このようなソリッドドリルでは、上記切屑
排出溝内周面のドリル回転方向を向く部分の先端側が、
この切刃のすくい面となる。また、上記切刃部の外周に
は、上記軸線を中心として切刃の外径と略等しい直径の
断面円弧状をなす幅の小さなマージン部が、切刃の外周
端から切屑排出溝と切刃部外周面との交差稜線部に沿っ
てやはり螺旋状に捩れるように形成され、このマージン
部が加工穴の内周に摺接して切刃部が案内されるように
されている。なお、このマージン部のドリル回転方向後
方側の切刃部外周は、該マージン部に対して一段ドリル
本体の内周側に後退した外周逃げ面とされ、切刃部と加
工穴との摩擦が必要以上に大きくならないようにされて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
ソリッドのドリルを初めとする各種ドリルや、またドリ
ル以外の各種の切削工具においても、その切刃の刃先が
鋭利すぎると切削時に作用する負荷によって切刃にチッ
ピングや欠損が生じて切削性能を著しく損なうことにな
るため、予めこの切刃の刃先を小さな幅で落として耐チ
ッピング性や耐欠損性を向上させる、いわゆるホーニン
グが行われる。ここで、このようなホーニングは、切刃
が直線状である場合にはホーニング砥石を切刃に沿って
摺動させて刃先を研ぎ落とすことにより比較的容易に形
成可能であるが、切刃が複雑な曲線状であったり、また
切刃の内周側にシンニングが施されたドリルのようにこ
のシンニングによるシンニング切刃にホーニングを施そ
うとすると周囲のシンニング面等がホーニング砥石に干
渉したりする場合には、このようなホーニング砥石によ
ってホーニングを施すことは容易ではない。このため、
そのような場合には、例えばダイヤモンドペースト等の
研磨剤を塗布したブラシや、あるいはブラシの毛自体に
ダイヤモンド砥粒等が含有されたブラシによって切刃を
その全長に亙って研磨してホーニングを施すようにして
いる。
【0004】しかしながら、このようなブラシによる研
磨によってドリルの切刃にホーニングを施そうとした場
合には、特にこの切刃の外周端周辺を研磨する際にブラ
シが切刃部外周の上記マージン部にまでかかってしまう
ことが避けられず、これによりこのマージン部とすくい
面との交差稜線部分までもが研ぎ落とされることにな
る。しかるに、このようにマージン部とすくい面との交
差稜線部が研ぎ落とされたドリルでは、この交差稜線部
と先端逃げ面との交点となる切刃外周端の周辺が、すく
い面から先端逃げ面にかけて切刃に施されたホーニング
以外に、すくい面からマージン部にかけてもホーニング
された状態となって丸味を帯びてしまい、これにより切
れ味が鈍化して切削抵抗が増大し、これに伴いドリルの
回転駆動力の増大を招いたりしてドリル本体の折損等を
生じるおそれがある。また、こうしてすくい面とマージ
ン部との交差稜線が丸味を帯びることにより、すくい面
からマージン部への切屑の噛み込みが生じ易くなって一
層の駆動力の増大を招くとともに、加工穴の内周が噛み
込まれた切屑によって傷つけられて加工穴の品位を損な
うことにもなる。さらに、このように切刃の外周端がす
くい面からマージン部にかけて丸味を帯びることから、
加工穴が穿孔される際にはこの外周端が加工物を弾性的
に押し広げるようにして穴明けが行われることになり、
その反発により加工穴が収縮傾向となって加工精度の劣
化を招く結果ともなる。
【0005】本発明は、このような背景の下になされた
もので、切刃の耐チッピング性や耐欠損性の向上を図り
つつも、切削抵抗の増大やドリルの破損、加工精度の劣
化等を招くことのないドリルおよびそのホーニング方法
を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決してこの
ような目的を達成するために、まず本発明のドリルのホ
ーニング方法は、ドリル本体の先端部外周に切屑排出溝
が形成され、この切屑排出溝の内周面の先端側に形成さ
れたすくい面と上記ドリル本体の先端逃げ面との交差稜
線部に切刃が形成されるとともに、上記ドリル本体の先
端部外周には上記切屑排出溝との交差稜線部分に沿って
マージン部が形成されたドリルのホーニング方法であっ
て、上記切刃を露出させた状態で上記マージン部を被覆
材によって覆った上で、該切刃にブラシによりホーニン
グを施すことを特徴とする。従って、このようなホーニ
ング方法においては、上述のように研磨剤を塗布したブ
ラシやブラシの毛自体に砥粒が含有されたブラシによっ
て切刃にホーニングを施す際に、切刃は露出された状態
であるのに対し、マージン部は被覆材によって覆われて
いるので、このマージン部とすくい面との交差稜線部ま
でが研ぎ落とされてしまうことがなく、この交差稜線部
の断面がそのままの形状で先端逃げ面に至って切刃の外
周端が形成されることとなる。
【0007】しかして、このようなホーニング方法によ
って得られる本発明のドリルにおいては、ドリル本体の
先端部外周に切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝の
内周面の先端側に形成されたすくい面と上記ドリル本体
の先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成されるととも
に、上記ドリル本体の先端部外周には上記切屑排出溝と
の交差稜線部分に沿ってマージン部が形成され、上記切
刃にはホーニングが施される一方、上記すくい面とマー
ジン部とは角度をもって交差させられることとなる。こ
のため、このようなドリルでは、切刃に施されたホーニ
ングによって該切刃の耐チッピング性や耐欠損性の向上
が図られる一方、すくい面とマージン部との交差稜線部
が研ぎ落とされることなく角度をもって交差することに
より、切刃の外周端もこのすくい面からマージン部にか
けては丸味を帯びることなく鋭利なままとされるので、
切削抵抗の増大や切屑の噛み込み、ドリル回転駆動力の
増大等を防ぐことができるとともに、穿孔時に加工物が
弾性的に押し広げられることもなくなって加工精度の向
上を図ることが可能となる。
【0008】なお、上記ホーニング方法においてマージ
ン部を覆う被覆材としては、例えば粘着性の樹脂ペース
ト材をマージン部に盛り付けたり厚めの粘着テープなど
をマージン部に張り付けたりするようにしてもよいが、
マージン部は上述のようにドリル本体の軸線を中心とし
て切刃の外径と略等しい直径の断面円弧状をなしている
ので、この被覆材として、断面円形の内周部を有する円
筒状等の筒状をなし、この内周部に上記マージン部が密
着した状態で上記ドリル本体の先端部が嵌挿可能とされ
た被覆治具を用いれば、この内周部の先端を切刃の外周
端に合わせた状態で該被覆治具をドリル本体先端部に取
り付けることにより、マージン部は被覆したまま切刃の
みを簡単に露出させた状態とすることができ、ブラシで
ホーニングを行ってもすくい面とマージン部との上記交
差稜線部が研ぎ落とされてしまうのを確実に防いで、切
刃だけにホーニングを施すことが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】図1ないし図4は、本発明のドリ
ルの一実施形態を示すものである。本実施形態のドリル
は、そのドリル本体1が超硬合金等の硬質材料によって
軸線Oを中心とした概略円柱状をなし、図1および図2
に示すようにその先端側が切刃部2とされている。そし
て、この切刃部2の外周には、該ドリル本体1先端の先
端逃げ面3から後端側に向けて、軸線O方向に後方に向
かうに従いドリル回転方向Tの後方側に螺旋状に捩れる
一対の切屑排出溝4,4が軸線Oに関して互いに回転対
称となるように形成され、この切屑排出溝4の内周面5
のうちドリル回転方向T側を向く部分がすくい面5Aと
されて、その先端の上記先端逃げ面3との交差稜線部に
切刃6が形成されている。
【0010】ここで、この切刃6は、上記すくい面5A
に対向する側面視においては図1に示すように、内周側
の軸線O近傍からその外周端6Aに向かうに従い軸線O
方向後端側に延びるようにされて所定の先端角が与えら
れる一方、軸線O方向先端視においては図2に示すよう
に、上記外周端6Aから内周側に向けてドリル回転方向
T側に凸となる凸曲線を描いた後に変曲点を介して滑ら
かにドリル回転方向T後方側に凹む凹曲線をなすように
形成されており、従って上記すくい面5Aの軸線Oに直
交する断面もこの切刃6と略同様の形状をなすこととな
る。また、この切屑排出溝4のドリル回転方向T後方側
を向く部分の先端と上記先端逃げ面3との交差稜線部に
はシンニング部7が形成されていて、このシンニング部
7は先端逃げ面3におけるドリル本体1の中心側すなわ
ち切刃6の内周側に延びてこの切刃6の内周にシンニン
グ刃6Bを形成しており、先端視における内周側で上述
のように凹曲線を描いた切刃6は、再びドリル回転方向
Tに凸となる凸曲線部を介してこのシンニング刃6Bに
滑らかに連なり、さらに内周側の上記軸線O近傍に至る
ようにされている。
【0011】一方、このドリル本体1の周方向において
切屑排出溝4,4の間に位置する切刃部2の外周面に
は、そのドリル回転方向T側において螺旋状に捩れた切
屑排出溝4との交差稜線部に、マージン部8が形成され
ている。このマージン部8は、上記切刃6の外周端6A
が軸線O回りになす円の直径すなわち切刃の外径と等し
い直径の該軸線Oを中心とした断面凸円弧状をなし、周
方向に小さな一定幅で、切刃部2の最先端の上記先端逃
げ面3から軸線O方向後端側に向けて該切刃部2の全長
に渡って切屑排出溝4に沿うように延設されている。従
って、このマージン部8と切屑排出溝4の内周面5との
交差稜線部は、その先端側のすくい面5Aとの交差稜線
部8Aが、該すくい面5Aと先端逃げ面3との交差稜線
である上記切刃6の外周端6Aに達して該切刃6に交差
することとなる。さらに、このマージン部8のドリル回
転方向T後方側には、該マージン部8の外周面に対して
一段ドリル本体1の内周側に後退するようにしてマージ
ン部8よりも僅かに小さな直径の断面円弧状をなす外周
逃げ面9が形成されている。なお、上記切刃6やマージ
ン部8および外周逃げ面9も、切屑排出溝4,4と同様
に軸線Oに関して回転対称に一対ずつ形成されている。
また、これらマージン部8や外周逃げ面9にはバックテ
ーパが与えられていてもよい。
【0012】さらに上記切刃6には、その外周端6Aか
ら上記シンニング刃6Bまでの全長に亙ってホーニング
が施されて、その刃先に図3に示すようなホーニング面
10が形成されている。ここで、本実施形態におけるホ
ーニングは図示の通り丸ホーニングであって、すくい面
5Aと先端逃げ面3とが鋭角に交差する切刃6先端の刃
先を研ぎ落とすことにより、該切刃6に直交する断面に
おいて上記刃先に、これらすくい面5Aと先端逃げ面3
とに滑らかに連なる、あるいは鈍角に交差する凸曲面状
の上記ホーニング面10を形成したものとされている。
なお、このような丸ホーニングに代えてチャンファーホ
ーニングを施して、すくい面5Aと先端逃げ面3とに鈍
角に交差する平面状のホーニング面を形成するようにし
てもよく、またこれらの複合ホーニングを施すようにし
てもよい。
【0013】そして、その一方で、上記すくい面5Aと
切刃部2の外周側の上記マージン部8との交差稜線部8
Aは、かかるホーニング面10のように研ぎ落とされた
面を有することなく、最先端の上記切刃6の外周端6A
から後端側に向けて、すくい面5Aとマージン部8とが
直接に角度をもって交差するように形成されている。た
だし、本実施形態では、上述のようにすくい面5Aの軸
線Oに直交する断面形状が切刃6の先端視の形状と略同
様にされているため、その外周側ではドリル回転方向T
側に凸となる凸曲線を描くとともに、マージン部8も上
述のように断面凸円弧状とされており、従って上記交差
稜線部8Aは凸曲面同士が角度をもって交差させられる
こととなって、角張った稜線を画成するように形成され
ることとなる。
【0014】しかるに、このようなドリルにホーニング
を施す場合には、特に切刃6が上述のような複雑な凹凸
曲線状をなし、しかもその内周側にはシンニング刃6B
が形成されているため、ホーニング砥石によって上記ホ
ーニング面10を形成しようとすると、複雑な凹凸曲線
をなす切刃6に沿ってホーニング砥石を摺接させなけれ
ばならなかったり、上記シンニング部7にホーニング砥
石が干渉してシンニング刃6Bの内周側にまで確実にホ
ーニング面10を形成できなくなったりするおそれがあ
るので、上述の通り図7および図8に示すようにブラシ
11によってホーニングを施すことになる。すなわち、
このブラシ11は、回転軸C回りに回転可能とされたブ
ラシ本体12の外周に、適当な柔軟性と硬さとを有する
毛13が多数設けられた円板状のものであって、このブ
ラシ11の毛13にダイヤモンドペーストのようなダイ
ヤモンド砥粒等の硬質粒子を含んだ研磨剤を塗布した
り、あるいは上記毛13自体にかかるダイヤモンド砥粒
等の硬質粒子を直接含有させたりしておき、かかるブラ
シ11を回転させつつ、その外周にホーニングを施すべ
きドリル本体1の上記切刃6を押し当てることにより、
この切刃6の刃先を上記砥粒で研ぎ落としてホーニング
面10を形成する。
【0015】そして、本実施形態のホーニング方法にお
いては、こうして切刃6にブラシ11によってホーニン
グを施すのに際し、図7および図8に示すようにこの切
刃6を露出させた状態で上記マージン部8を被覆材によ
って覆った上で、該切刃6にブラシ11によりホーニン
グを施すようにしている。さらに、本実施形態における
上記被覆材としては、図5および図6に示すような筒状
の被覆治具14が用いられており、この被覆治具14
は、その内周部14Aにドリル本体11の上記マージン
部8が密着した状態でこのドリル本体11先端の切刃部
2が該内周部14に嵌挿可能とされている。
【0016】すなわち、本実施形態におけるこの被覆治
具14は、内径が上記切刃の外径より極僅かに大きくさ
れた断面円形の内周部14Aを有する概略円筒状をな
し、従ってこの内周部14Aに上記切刃部2が上述のよ
うに両マージン部8,8を密着させた状態で同軸に嵌挿
可能とされている。また、上記被覆治具14の先端部に
は、この被覆治具14の先端に開口して該被覆治具14
をその内外周に貫通しつつ後端側に凹む一対の切欠部1
5,15が、上述のように内周部14Aに切刃部2を同
軸に嵌挿した状態で、ドリル本体1の軸線Oに互いに回
転対称となるように形成されている。この切欠部15は
側面視において図5に示すように「レ」字状をなして開
口するように形成されて、これにより被覆部材14に
は、上述の嵌挿状態において上記軸線Oに平行とされて
上記ドリル回転方向Tを向く平坦面15Aと、この平坦
面15Aの後端から略1/4凹円弧を描きつつドリル回
転方向T側に向かうに従い先端側に向かう凹曲面15B
とが画成されており、これらの平坦面15Aと凹曲面1
5Bとの先端における間隔、すなわち当該切欠部15の
開口幅は、各切欠部15について円筒状の被覆治具14
の周方向に1/4程度の大きさとされている。
【0017】さらに、これらの切欠部15,15よりも
後端側には、上記嵌挿状態において軸線Oを挟むように
一対のネジ孔16,16が、該軸線Oに直交する方向に
被覆治具14を貫通するように形成されて、それぞれク
ランプネジ17がねじ込まれている。これらのネジ孔1
6,16は、この被覆治具14の内周部14Aに嵌挿し
たドリル本体1の切刃6の外周端6Aを軸線O方向には
図5に示すように当該被覆治具14の先端に一致させ、
かつ周方向には図6に示すように切欠部15の上記平坦
面15Aに一致させた状態で、これら図5や図6に示す
ように切刃部2外周の上記外周逃げ面9に対向して開口
する位置に形成されており、この状態からクランプネジ
17をねじ込むことによって被覆治具14はドリル本体
1先端の切刃部2外周に位置決めされて固定され、上記
マージン部8はこの被覆部材14の内周部14Aが密着
して被覆されるとともに、切刃6を含めた上記すくい面
5Aは上記切欠部15によって露出させられた状態とな
る。なお、図5と図6では、説明のためにネジ孔16,
16やクランプネジ17,17の位置が90°ずらされ
て描かれている。
【0018】従って、このように被覆治具14を被覆材
として取り付けて図7および図8に示すように切刃6の
ホーニングを行うと、切刃6を含めたすくい面5Aは上
記切欠部15によって露出させられているため、このす
くい面5Aから先端逃げ面3にかけての切刃6の刃先は
ブラシ11の硬質粒子によって研ぎ落とされてホーニン
グされ、上述のようなホーニング面10が形成される。
その一方で、マージン部8は被覆治具14の内周部14
Aに密着して被覆されているため、ブラシ11の毛13
がこのマージン部8とすくい面5Aとの交差稜線部8A
に当たって上記硬質粒子によりこの交差稜線部8Aが研
ぎ落とされることがなく、該交差稜線部8Aを、ドリル
本体1にすくい面5Aとマージン部8が形成されたとき
のままの、これらすくい面5Aとマージン部8とが交差
稜線部8Aにおいて角度をもって交差した状態に保持し
ておくことができ、すなわち上記実施形態のドリルを得
ることができる。
【0019】なお、本実施形態のホーニング方法におい
ては、図7に示すように上記ブラシ11は、その回転軸
Cがドリル本体1の軸線Oと同一平面上に略位置するよ
うにされ、かつこの平面に直交する方向視において図8
に示すようにその外周面が切刃6,6の一方に対向する
ように位置させられて、これら切刃6,6に一方ずつに
ホーニングを施してゆく。ここで、さらにこのブラシ1
1は、この図8に示すように上記平面に直交する方向視
において、上記回転軸Cに直交する直線Lがドリル本体
1の軸線Oに対して例えば20°の角度θで傾けられ、
かつその外周の毛13が図7に示すようにドリル本体1
の先端から例えば2.5mm程度の切込みDを与えられて
切刃6に当たるように配設される。
【0020】しかして、このようにして得られた上記実
施形態のドリルによれば、切刃6には上述のようなホー
ニング面10を、上記ブラシ11によってその外周端6
Aからシンニング刃6Bの内周端に至るまで確実かつ一
定の幅で容易に形成することができ、これにより切刃8
の耐チッピング性および耐欠損性の向上を図って、効率
的かつ安定した穴明け加工を行うことができる。そし
て、その一方で、すくい面5Aとマージン部8との交差
稜線部8Aはこれらすくい面5Aとマージン部8Aとが
角度をもって交差させられているため、この交差稜線部
8Aと先端逃げ面3との交点となる切刃6の外周端6A
が、すくい面5Aからマージン部8にかけても丸味を帯
びるようなことがなく、これにより切刃6の切れ味の鈍
化を防いで切削抵抗の低減を図ることができ、従って穴
明け加工時のドリルの回転駆動力も低減することができ
るとともに、過大な駆動力が作用してドリル本体1に折
損が生じたりするような事態も防止することができる。
【0021】また、こうして切刃6の外周端6Aが丸味
を帯びることがないために、穿孔時に加工物が弾性的に
押し広げられることもなく、従ってその反発によって加
工穴が縮径することも少なく、加工精度の向上を図るこ
とができる。さらに、交差稜線部8A自体も丸味を帯び
ることがないので、すくい面5Aの外周縁部が加工穴内
周に対して角度をもって交差した状態でマージン部8が
加工穴内周に摺接しながらドリル本体1が回転すること
となり、これにより切屑のマージン部8と加工穴内周と
の間への噛み込みも確実に防がれて、かかる切屑の噛み
込みにより切削抵抗や駆動力が増大したり、加工穴の内
周面が傷つけられて加工穴の品位が損なわれたりするよ
うな事態も避けることができる。
【0022】一方、上記実施形態のホーニング方法にお
いては、被覆材としての上記被覆治具14をドリル本体
1先端の切刃部2に上述のように位置決めして装着する
だけで、後は従来と同様にブラシ11の毛13を切刃6
に押し付けてホーニングを施すだけでよく、ホーニング
作業が徒に煩雑となったり高い熟練を要したりすること
なく、簡単に上記交差稜線部8Aを除いて切刃6にホー
ニング面10を形成することができる。しかも、このよ
うに被覆材として、断面円形の内周部14Aを有して、
この内周部14Aにマージン部8が密着した状態でドリ
ル本体1の先端部が嵌挿可能な筒状の被覆治具14を用
いれば、マージン部8はドリル本体1の軸線Oを中心と
した断面円弧状とされているために、こうしてドリル本
体1先端の切刃部2をこの被覆治具14の内周部14A
に嵌挿するだけで、マージン部8を確実に被覆すること
ができ、ホーニング作業を一層簡単にすることができる
とともに、その交差稜線部8Aがブラシ11によって研
ぎ落とされるのをより確実に防止することが可能とな
る。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のドリルの
ホーニング方法によれば、ブラシによるホーニングによ
って、切刃の形状が複雑であったりシンニング刃が形成
されていたりしても、すくい面とマージン部との交差稜
線部は研ぎ落とすことなく、切刃のみを確実に研ぎ落と
してホーニングを施すことができる。従って、このよう
にホーニングすることによって得られる本発明のドリル
によれば、切削抵抗およびドリル回転駆動力の増大やこ
れに伴うドリル本体の破損、あるいは加工穴の収縮や切
屑の噛み込みなどを招くことなく、切刃の耐チッピング
性、耐欠損性を確実に向上させることができ、これによ
り長期に亙って効率的かつ安定した穴明け加工を行うこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のドリルの一実施形態を示すドリル本
体1先端の切刃部2の側面図である。
【図2】 図1に示す実施形態を先端側からみた正面図
である。
【図3】 図1に示す実施形態の切刃6の断面図であ
る。
【図4】 図1におけるZZ断面図である。
【図5】 図1に示す実施形態のドリルに被覆治具14
を取り付けた状態を示す側面図である。
【図6】 図5に示す状態を先端側から見た正面図であ
る。
【図7】 被覆治具14を取り付けたドリルにホーニン
グを施す状態を示す、ブラシ11の回転軸C方向視に見
た図である。
【図8】 図7に示す状態をドリル本体1の軸線Oとブ
ラシ11の回転軸Cとを含む平面に直交する方向視に見
た図である。
【符号の説明】
1 ドリル本体 2 切刃部 3 先端逃げ面 4 切屑排出溝 5 切屑排出溝4の内周面 5A すくい面 6 切刃 6A 切刃6の外周端 6B シンニング刃 8 マージン部 10 ホーニング面 11 ブラシ 14 被覆治具 14A 被覆治具14の内周部 O ドリル本体1の軸線 T ドリル回転方向
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池上 智昭 岐阜県安八郡神戸町大字横井字中新田1528 番地 三菱マテリアル株式会社岐阜製作所 内 Fターム(参考) 3C037 DD03 3C058 AA06 AA07 CA02

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ドリル本体の先端部外周に切屑排出溝が
    形成され、この切屑排出溝の内周面の先端側に形成され
    たすくい面と上記ドリル本体の先端逃げ面との交差稜線
    部に切刃が形成されるとともに、上記ドリル本体の先端
    部外周には上記切屑排出溝との交差稜線部分に沿ってマ
    ージン部が形成され、上記切刃にはホーニングが施され
    る一方、上記すくい面とマージン部とは角度をもって交
    差させられていることを特徴とするドリル。
  2. 【請求項2】 ドリル本体の先端部外周に切屑排出溝が
    形成され、この切屑排出溝の内周面の先端側に形成され
    たすくい面と上記ドリル本体の先端逃げ面との交差稜線
    部に切刃が形成されるとともに、上記ドリル本体の先端
    部外周には上記切屑排出溝との交差稜線部分に沿ってマ
    ージン部が形成されたドリルのホーニング方法であっ
    て、上記切刃を露出させた状態で上記マージン部を被覆
    材によって覆った上で、該切刃にブラシによりホーニン
    グを施すことを特徴とするドリルのホーニング方法。
  3. 【請求項3】 上記被覆材として、断面円形の内周部を
    有する筒状をなし、この内周部に上記マージン部が密着
    した状態で上記ドリル本体の先端部が嵌挿可能とされた
    被覆治具を用いることを特徴とする請求項2に記載のド
    リルのホーニング方法。
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