JP2003275890A - 疲労寿命向上処理方法およびそれによる長寿命溶接継手 - Google Patents

疲労寿命向上処理方法およびそれによる長寿命溶接継手

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JP2003275890A JP2002074181A JP2002074181A JP2003275890A JP 2003275890 A JP2003275890 A JP 2003275890A JP 2002074181 A JP2002074181 A JP 2002074181A JP 2002074181 A JP2002074181 A JP 2002074181A JP 2003275890 A JP2003275890 A JP 2003275890A
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Abstract

(57)【要約】 溶接止端部を形成する溶接金属の成分を測定し疲労特性
を管理する、および溶接変形矯正終了後マルテンサイト
変態開始温度が所定の範囲内にある付加ビードを溶接止
端部に形成させ疲労強度を向上させる。 【課題】 溶接継手の疲労特性を管理する方法と溶接継
手の疲労強度向上方法を提供する。 【解決手段】 溶接止端部を形成する溶接金属のCr、
Ni成分を測定することにより疲労特性を管理する。溶
接変形矯正を実施する継手の場合で、変形矯正終了後所
定の成分範囲内にある溶接金属を付加ビードとして止端
部に形成させ新たな溶接止端部としその付加ビードが変
態膨張することを利用し残留応力を低減させることによ
り疲労強度を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、実構造物における
溶接継手の疲労特性の品質管理方法および溶接変形矯正
等の溶接後処理工程が必要な溶接構造物の疲労強度向上
方法に関するものであり、より詳しくは、溶接金属の変
態温度が低くなるよう溶接材料の成分を調整しそれによ
る溶接残留応力低減を利用して疲労特性を改善した溶接
継手の管理方法、および溶接後処理を行う必要がある溶
接構造物に対し溶接金属の変態温度が低くなるよう溶接
材料の成分を調整し、それによる溶接残留応力低減を低
減させ、疲労強度を向上させる方法とその管理方法を包
含した疲労向上処理法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の溶接継手疲労特性の改善方法とし
ては、TIGなめ付け溶接や機械加工などによる溶接止
端形状の改善、ピーニングなどによる溶接止端形状の改
善と圧縮残留応力の導入などがあった。これら方法は、
溶接終了後に行う、いわゆる後処理に分類できるもので
あり、溶接部形状が溶接ままの状態と異なるため後処理
を実施したかどうかの判断は、外観検査のみで充分可能
であった。一方、最近になり、溶接金属の変態温度が低
くなるように溶接材料の成分を設計し、変態に伴う体積
膨張を利用し圧縮残留応力を導入することで疲労特性を
改善する技術が提案された(以降、このような溶接材料
を総称して低温変態溶接材料と呼ぶ)。この技術は、例
えば特開平11−138290号公報で開示されてい
る。この方法は、溶接材料を変更するだけで疲労強度が
改善できるという点で後処理をする技術より経済的に優
れている。すなわち、それだけ工程数が少なくて済み、
人件費がその分節約できる方法である。しかし、この方
法にも問題がないわけではない。
【0003】問題点は3つ存在し、1つ目は、後処理を
施す技術と異なり外観検査だけでは残留応力が低減され
それにより疲労強度向上が達成されているかどうかまっ
たくわからない点である。そのために、ある溶接継手に
対して、この継手が疲労強度の改善されている継手なの
かそうでないのか、の判断が難しい。
【0004】問題の2つ目は、既に疲労亀裂が存在する
状態で低温変態溶材を用いた場合は、疲労強度改善効果
が期待しがたい点である。低温変態溶材は、主に板厚方
向の残留応力分布を変化させ、鋼材の表面近傍の溶接止
端部で引張残留応力の低減または圧縮残留応力を導入す
るため、逆に言えば鋼材の内部では、引っ張りの方向に
残留応力が増大する方向にある。そのため、もし、内部
に疲労亀裂が残っている場合は、その亀裂先端での引張
残留応力が増加し、進展が加速し、疲労寿命がかえって
低下する結果となる。
【0005】問題の3つ目は、たとえ残留応力が低減さ
れたとしても、溶接施工後に溶接変形矯正工程などが行
われる場合は溶接部に生じている残留応力が消失してし
まうという点である。残留応力が消失されれば、低温変
態溶接材料を用いようが従来溶接材料を用いようが疲労
強度に差はなく、疲労特性改善は期待できない。残留応
力を低減することにより疲労特性が改善されている継手
であるかどうかの判断をする方法としてまず考えられる
ことは、溶接部の残留応力を実際測定する方法がある。
測定方法としては種々知られているが、実構造物への適
用を考えると、ひずみゲージを用いた応力弛緩法など、
いわゆる破壊法は採用できない。適用の可能性があるの
は、X線法などの非破壊計測法である。これらの方法と
しては、X線法以外にも、磁気歪法、バルクハウゼンノ
イズ法、音弾性法などがある。しかし、磁気歪法、バル
クハウゼンノイズ法、音弾性法で測定できるのは残留応
力そのものではなく、それの主応力の差のみである。例
えば、x方向に−500MPa、y方向に−200MP
aの残留応力がある場合、測定値として得られるもの
は、それらの差、すなわち300MPaである。この値
は、x方向に200MPa、y方向に500MPaの残
留応力がある場合でも同じである。しかし、疲労という
観点からはx方向の残留応力が−500MPaなのか2
00MPaなのかでは大変な違いである。したがって、
非破壊測定法で適用できるとすればX線法の可能性が一
番高い。しかし、X線は、一般に鋼板表面の数ミクロン
程度のごく浅い領域しか入ることができず、したがっ
て、残留応力の測定値もその表面近傍の残留応力の値に
なる。一方、溶接継手の疲労特性を決定しているのは、
たとえ疲労亀裂が表面から入っていくとしても、表面下
ごく数ミクロンの範囲内の残留応力ではなく、もっと深
い、具体的には表面下数ミリメートルの範囲における平
均的な値である。そのためX線法での測定をもってし
て、低温変態溶接材料を用いたときの溶接継手の疲労特
性を管理することにも問題がある。
【0006】溶接施工後の後処理は、残留応力を除去す
る目的で行うSR処理以外にも、溶接変形を矯正するた
めのガスバーナー加熱やプレス加工などが実際、頻繁に
行われている。溶接変形は溶接構造物の工作精度にかか
わる問題であり、さらには、最終構造物の美観にもかか
わる問題でもあるため、ある程度の溶接変形が発生した
ときには、それを矯正する作業を実施するのが通常であ
る。しかし、このような作業は、低温変態溶接材料を用
いて溶接部の残留応力を低減、場合によっては圧縮状態
にさせて疲労強度を改善する技術の効果を無くしてしま
うことをも意味する。なぜならば、残留応力は、外力あ
るいは熱が加わると、それにより再分配を起こしてしま
うからである。一般に、外力あるいは熱を加えても、変
形が弾性変形の範囲内であれば残留応力分布に変化はな
い。しかし、溶接変形を矯正するということは、塑性変
形を導入させない限り達成できないものであるため、残
留応力の再分配は必ず発生してしまい、その再分配の結
果、導入されていた残留応力が引張側に大きく変化すれ
ば、それによる疲労強度改善効果が消失してしまう。そ
のため、疲労強度向上を残留応力制御で確実に達成させ
ようとするならば、溶接終了後には溶接変形矯正等の溶
接後処理を実施することはできない。しかし、これら後
処理の実施は、疲労という観点からだけで実施するかど
うかを判断することができないという問題がある。
【0007】以上のように、残留応力を非破壊的に測定
しその結果を用いて継手の疲労特性を管理する方法には
多くの問題があり、また、溶接後処理を行う場合などは
低温変態溶接材料の効果が期待できないという問題もあ
ることがわかった。しかし、低温変態溶接材料を溶接継
手の疲労特性改善に用いる技術は、その効果の大きさを
考えると今後もっとも期待される技術であるため、その
簡便な溶接継手部の疲労特性管理方法や、溶接変形矯正
等の後処理を実施する場合でも効果が発揮できる疲労強
度向上方法が強く望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、溶接構造物
に低温変態溶接材料を用いたときの実用的かつ簡便な溶
接継手の疲労特性管理方法、および溶接変形矯正等の溶
接後処理が不可欠な溶接構造物でも低温変態溶接材料を
用いて疲労強度を向上できる技術、およびこれら技術を
用いた溶接構造物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、以上のよ
うな背景に鑑み、低温変態溶接材料を用いた溶接継手の
疲労特性管理方法、および溶接変形矯正等の溶接後処理
が不可欠な溶接構造物でも低温変態溶接材料を用いて疲
労強度を向上できる技術について鋭意研究を重ねてき
た。本発明は、このような研究の成果の結果なされたも
のでその要旨は次のとおりである。 (1)溶接継手の疲労が問題となる箇所について、事前
処理を行った後、低温変態溶材を用いた付加ビード形成
を行い、さらにその後、品質保証検査を行うことによっ
て、当該溶接継手の疲労寿命を向上させることを特徴と
した疲労寿命向上処理方法。 (2)前記(1)に記載の疲労寿命向上処理方法の事前
処理において、溶接継手の低温変態溶材を用いた付加ビ
ード形成を行う部分とその近傍部分について、塑性加工
や、変形矯正、熱処理、溶接、現場接合など金属内部応
力、表面応力を変化させるプロセスを行ったのち、低温
変態溶材を用いた付加ビード形成を実施し、低温変態溶
材を用いた付加ビード形成後にはそのような溶接継手の
内部応力、表面応力を変化させるプロセスを行わないこ
とを特徴とした疲労寿命向上処理方法。 (3)前記(1)に記載の疲労寿命向上処理方法の事前
処理において、疲労寿命の問題となる箇所について、目
視検査、浸透探傷検査、磁粉探傷検査、渦流探傷検査な
どを実施した上で、亀裂が検出されればその亀裂をグラ
イダーやガウジングなどで除去することを特徴とした疲
労寿命向上処理方法。 (4)前記(1)に記載の疲労寿命向上処理方法の事前
処理において、疲労寿命の問題となる箇所を形成してい
る母材部およびその溶接止端部を形成する溶接金属、に
ついて硬さ測定を行い、その結果に基づいて、付加ビー
ドを形成する低温変態溶材を選定することを特徴とした
疲労寿命向上処理方法。 (5)前記疲労寿命の問題となる箇所を形成している母
材部およびその溶接止端部を形成する溶接金属、の硬さ
が共にビッカース硬さで150以上を示すことにより4
90MPa級以上の強度を持つと判断される場合、付加
ビードを形成する低温変態溶材のマルテンサイト変態開
始温度が200℃〜400℃の間にある低温変態溶材を
選定することを特徴とした前記(4)記載の疲労寿命向
上処理方法。 (6)前記疲労寿命の問題となる箇所を形成している母
材部およびその溶接止端部を形成する溶接金属、のどち
らかの硬さがビッカース硬さで150以下を示すことに
より490MPa級以下の強度を持つと判断される場合
場合、付加ビードを形成する低温変態溶材のマルテンサ
イト変態開始温度が150℃〜300℃の間にある低温
変態溶材を選定することを特徴とした前記(4)記載の
疲労寿命向上処理方法。 (7)前記(1)に記載の疲労寿命向上処理方法の品質
保証検査において、疲労が問題となる溶接継手の止端部
に、付加ビードが形成されていることを目視で確認する
ことを特徴とした疲労寿命向上処理方法。 (8)前記(1)に記載の疲労寿命向上処理方法の品質
保証検査において、付加ビードが低温変態溶材を用いて
形成されたものか疑念が生じた場合、付加ビードの硬さ
を測定し、ビッカース硬さが、付加ビード表面全域にわ
たって350以上を示すことを確認することにより、そ
の付加ビードが低温変態溶材により形成されたことを判
別することを特徴とした疲労寿命向上処理方法。 (9)前記(1)に記載の疲労寿命向上処理方法の品質
保証検査において、付加ビードが適切な低温変態溶材を
用いて形成されたものか疑念が生じた場合、付加ビード
の成分を分析することにより、その付加ビードが適切な
低温変態溶材により形成されたことを判別することを特
徴とした疲労寿命向上処理方法。 (10)前記付加ビードが適切な低温変態溶材を用いて
形成されたものか疑念が生じた場合、付加ビードから金
属粉を採取し、その成分を分析して、その成分のうち質
量%でNiが6〜15%の範囲内にあることを確認する
ことにより、490MPa級かそれ以上の強度を持つ鋼
材および溶材によって形成された溶接継手に適した低温
変態溶材により付加ビードが形成されたことを判別する
ことを特徴とした前記(9)に記載の疲労寿命向上処理
方法。 (11)前記付加ビードが適切な低温変態溶材を用いて
形成されたものか疑念が生じた場合、付加ビードから金
属粉を採取し、その成分を分析して、その成分のうち質
量%でNiが4%から12%、Crが7%から15%の
範囲内にあることを確認することにより、490MPa
級以下の強度を持つ鋼材および溶材によって形成された
溶接継手に適した低温変態溶材により付加ビードが形成
されたことを判別することを特徴とした前記(9)に記
載の疲労寿命向上処理方法。 (12)前記1に記載の疲労寿命向上処理方法の品質保
証検査において、付加ビードの形成によって、引っ張り
残留応力の緩和がなされたかという疑念が生じた場合、
付加溶接施工完了後、付加ビードの止端部の直近でひず
みを計測しながら、設計的に疲労損傷を与えるレベルに
あると予想される活荷重を与える重量を荷重車等を用い
て与え、その載荷除荷プロセスによる荷重ひずみ関係に
おける塑性ひずみの残存が0.02%以下であることを
確認することによって、付加ビード近傍の残留応力分布
の変化が十分に小さく、残留応力が十分に低減されたこ
とを実際に確認することを特徴とした疲労寿命向上処理
方法。 (13)前記1に記載の疲労寿命向上処理方法の品質保
証検査において、付加ビードの形成によって、引っ張り
残留応力の緩和がなされたかという疑念が生じた場合、
付加溶接施工完了後、付加ビードの止端部の直近でひず
みを計測しながら、設計的に疲労損傷を与えるレベルに
あると予想される活荷重を与える重量を荷重車等を用い
て与え、その載荷除荷プロセスによる荷重ひずみ関係に
おいて降伏挙動が見られた場合、載荷前を0点として計
測された降伏応力σytと、ミルシートや材料試験等か
ら得られたその鋼材の降伏強度σyから、残留応力σa
を、σa=σy−σytとして求め、また降伏挙動が見
られない場合は十分に大きな残留応力が入っているとみ
なすことにより、付加ビード止端部に導入された残留応
力を実際に確認することを特徴とした疲労寿命向上処理
方法。 (14)前記(6)記載の溶接部疲労強度向上処理法に
おいて、質量%で、C:0.001〜0.1%、Si:
0.1〜0.7%、Mn:0.4〜2.5%、P:0.
03%以下、S:0.02%以下、Ni:4〜12%、
Cr:7〜15%、N:0.001〜0.05%を含有
し、残部が鉄及び不可避不純物からなる付加ビード溶接
金属を形成することを特徴とする溶接部疲労強度向上方
法。 (15)質量%で、Cu:0.05〜0.4%Mo:
0.1〜2.0%、Ti:0.005〜0.3%、N
b:0.005〜0.3%、V:0.05〜0.5%の
1種または2種以上をさらに含有する付加ビード溶接金
属を形成することを特徴とする前記(14)記載の溶接
部疲労強度向上方法。 (16)前記(5)記載の溶接部疲労向上処理法におい
て、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.1
〜0.5%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.03
%以下、S:0.02%以下、Ni:6〜15%を含有
し、残部が鉄および不可避不純物からなる付加ビード溶
接金属を形成することを特徴とする溶接部疲労強度向上
方法。 (17)質量%で、Ti:0.01〜0.4%、Nb:
0.01〜0.4%、V:0.1〜1.0%の1種また
は2種以上をさらに含有する付加ビード溶接金属を形成
することを特徴とする前記(16)記載の溶接部疲労強
度向上方法。 (18)質量%で、Cu:0.05〜0.4%、Cr:
0.1〜3.0%、Mo:0.1〜3.0%、Co:
0.1〜2.0%の1種または2種以上をさらに含有す
る付加ビード溶接金属を形成することを特徴とする前記
(16)または(17)記載の溶接部疲労強度強度向上
方法。 (19)前記(1)〜(18)のいずれかの疲労寿命向
上処理方法を用いて処理されたことを特徴とする溶接継
手。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
始めに本発明における技術思想について述べる。本発明
では、低温変態溶接材料を用いて疲労が発生する溶接
部、特に溶接止端部の残留応力を低減、場合によっては
圧縮にすることにより疲労強度を向上させる技術、およ
び、この技術を用いた溶接継手を対象とする。この方法
は、例えば特開平11−138290号公報などにより
その詳細が開示されている。一般に、溶接金属のマルテ
ンサイト変態開始温度は溶接金属成分のみで決定されて
しまうため、溶接金属成分さえ所定の範囲内にあれば、
その効果を期待できる技術である。しかし、既に述べた
ように、残留応力そのものを非破壊的に測定することに
は問題が多い。
【0011】そこで、本発明では、マルテンサイト変態
開始温度は成分のみで決定されることに着目し、実際の
溶接金属成分を測定し、その測定値を利用し溶接継手の
管理を行うというのが本発明における第一の技術思想で
ある。
【0012】次に、本発明の第二の技術思想は、溶接部
の強度によっては、マルテンサイト変態温度が充分低く
なくとも残留応力が効率よく低減できることに着目し、
必要に応じ溶接部が形成される部分の鋼材の硬さを測定
し、その値を溶接継手の管理に用いるというものであ
る。硬さと強度は強い相関があるため、強度測定の代わ
りに硬さを測定するという思想も含まれている。本発明
では、溶接金属がマルテンサイト変態する場合を扱って
いるため、溶接金属の硬さより鋼材の硬さが低くなる傾
向にあるため、硬さ不足による残留応力が低減されない
場合があるとすれば、それは鋼材の硬さである。そのた
め、硬さ測定を行うとすればまず鋼材の硬さを測定しな
ければならない。なお、強度が高い場合、そうでない場
合より変態温度が高くても効率よく残留応力を低減でき
るという技術は、例えば、特開2000−017380
号公報にその詳細が開示されている。また、溶接金属は
マルテンサイト変態を起こす結果、通常は道路橋示方書
で規定している溶接部の硬さ規定を超えるほどになる
が、道路橋示方書の規定は溶接割れを検知する目的で硬
さを規定しているものであり、このような低温変態溶材
を想定したものではなく、その硬さ分布も溶接割れを生
じた場合と全く異なる。そのため、この特性を逆手に取
って、付加ビード形成後、そのビードが低温変態溶材に
よるものであるか疑念が生じた場合、この付加ビードの
硬さを計測することによって、その付加ビードを形成す
る溶材が通常の溶材か低温変態溶材かということを検知
することができる。
【0013】本発明の第三の技術思想は、低温変態溶材
で付加ビードを施工する前に、その箇所で亀裂検査を行
い、亀裂が発見されれば、その亀裂を除去するという点
にある。非破壊検査で発見される程度の寸法の亀裂はグ
ラインダー等で除去し、それから低温変態溶材で付加ビ
ードを形成する。母材に、多少、溝が出来た状態で溶接
を行っても、それはかえって付加ビードを構成する低温
変態溶材のマルテンサイト変態時の拘束を増加させ、む
しろ圧縮方向への効率よい残留応力の変化を可能とす
る。また、非破壊検査で発見し得ない程度の亀裂の場合
は、低温変態溶材でも0.5〜1.0mm程度の溶け込
みは確保できるため、十分に溶かし込んで無害化するこ
とができる。
【0014】本発明の第四の技術思想は、せっかく残留
応力を低減させた溶接継手でも、その後の工程で、ガス
バーナー加熱やプレス加工などの代表されるような、熱
処理や機械的処理を施すと残留応力が消失してしまい疲
労強度改善が期待できないため、このような処理を済ま
せた後に低温変態溶接材料を用いるという点にある。低
温変態溶接材料を用いて疲労強度を改善する方法は、特
開平11−138290号公報や特開2000−288
728号公報などに開示されているが、これら技術で
は、本発明が問題にしているガスバーナー加熱やプレス
加工などが与える影響については何ら言及されていな
い。そのため、特開平11−138290号公報や特開
2000−288728号公報が開示する技術は、熱処
理や機械処理が行われない場合でのみ、その効果が期待
できるものである。しかし、溶接変形を矯正するときに
用いられるガスバーナー加熱やプレス加工は、溶接施工
後に実施されるため、このような場合では、これら技術
では不十分である。一般に、溶接変形矯正が行われる構
造物としては、橋梁、船舶等多岐にわたり、しかも溶接
施工がすべて終了してから実施される。特開平11−1
38290号公報や特開2000−288728号公報
の技術だけでは、このような場合、所定の効果は得られ
ない。そこで、本発明では、低温変態溶接材料を用いる
のは溶接後処理を済ませた後とし、かつ、付加ビードの
みとした。すなわち、本ビードは従来溶接材料で充分と
し、本溶接施工後、溶接変形の矯正、すなわち、溶接後
処理を実施し、その後に低温変態溶接材料で付加ビード
を形成させるという手順である。溶接変形矯正後でも、
付加ビードであれば溶接量そのものが非常に少なくて済
むため、ほとんど溶接変形が生じず、良好な寸法精度を
保つことができる。
【0015】本発明の第五の技術思想は、活荷重時の応
力の変化を計測することによって、導入された残留応力
によって疲労強度が向上されうるかどうかを判定すると
いう点にある。通常、まわし溶接は引張強度800MP
a級以下の鋼材に対して実施した場合は、止端部近傍で
鋼材の引張強度に相当するほどの応力が残留している。
つまり、まわし溶接を実施後、引張荷重をまわし溶接部
を持つ溶接継手に作用させた場合、止端部近傍で確実に
降伏が生じ、その結果、塑性ひずみと応力の再分配が生
じるわけである。一方、圧縮応力を残留、または引張応
力を低減させて疲労強度を向上させるという場合を考え
てみた場合、必要条件として考えられることの一つは繰
り返し作用荷重によって、止端での残留応力が引張方向
に増加せず、残留応力の低減効果が持続するということ
があげられる。これより、低温変態溶材によって、残留
応力が圧縮方向に変化し、十分に疲労寿命が向上すると
いうことを判定するためには、付加ビードを施工した後
で溶接止端部の近傍にひずみゲージ等による計測器を設
置し、その後、設計で疲労に寄与するとされるレベルの
活荷重を荷重車走行等により初めて作用させ、その時に
その荷重によって残留応力の引張方向への変化が生じな
いことを確認することで、引張応力が十分に低減されて
いること、および、残留応力の変化が生じていないこと
を検知することができる。このときの残留応力の変化の
状態は、載荷により得られた荷重ひずみ関係によって判
別される。その荷重ひずみ関係において、降伏挙動が見
られた場合、載荷前を0点として計測された降伏応力σ
ytと、ミルシートや材料試験等から得られたその鋼材
の降伏強度σyから、残留応力σaが、σa=σy−σ
ytとして求められる。一方、降伏挙動が見られない場
合は十分に大きな残留応力が入っているとみなすことが
できる。また、もっと簡易にはその荷重ひずみ関係によ
る残留ひずみで判別し、その基準値は実験による結果か
ら0.02%以下とした。
【0016】以上の技術思想を、疲労寿命向上手法とし
ての流れをもって表現したのが、図1のフローチャート
である。ここでは、前処理として、疲労向上の対象とな
る鋼材の強度の確認、疲労亀裂の有無の確認、および、
矯正や曲げ加工などの残留応力の分布を変化させる過
程、付加ビード施工時の溶接欠陥の発生を防止するため
の塗料の除去や未溶着部分として残りそうなビード形状
の溶け込みやすい形状への整形などの下地処理の過程を
規定している。また、後処理として、外観、硬さ測定お
よびひずみ計測による、品質管理手法を規定している。
ただし、前処理において、亀裂検査と強度確認の順番は
交換可能である。また、品質保証検査も外観検査以外
は、疑念が生じた場合に実施するものとする。
【0017】次に、疲労が問題となる溶接部の成分を測
定する場所を、該溶接部の止端部を形成する溶接金属に
限定した理由について述べる。本発明では、低温変態溶
接材料を用いて溶接部の残留応力を制御することにより
疲労強度を向上させた継手を対象としており、したがっ
て、残留応力低減は溶接金属の変態膨張を利用してい
る。このメカニズムは鋼材の変態膨張を利用しておら
ず、そのため成分測定は溶接金属に対して行われなけれ
ばならない。一方、疲労亀裂は応力が集中している止端
部から発生するため、ここでの残留応力を決定する溶接
金属に対して成分測定をしなければならない。成分測定
を、溶接止端部を形成する溶接金属に限定したのはこの
ような理由による。
【0018】次に、溶接止端部を形成する溶接金属の成
分測定値がある範囲内になければならないとした理由に
ついて述べる。本発明においては、溶接金属の成分とし
て、Crを主体とした成分系と、Niを主体とした成分
系に分けることができる。前者をCr系、後者をNi系
と呼ぶこととする。Cr系については、マルテンサイト
変態温度を低くする成分としてまずCrが利用されてお
り、ついで、Niが利用されている。そのため、Cr系
については、CrとNiが必須となる。Crの測定値お
よびNiの測定値が質量%でそれぞれ7%〜15%の範
囲内、および4%〜12%に範囲内に存在するかどうか
で溶接継手の疲労特性を管理するとしたのは、これら成
分がこの範囲内になければ変態温度が充分低減されてい
ないことを意味し、結果的に疲労特性も不十分であるこ
とを意味するため、この範囲内に限定した。
【0019】次に、Ni系についてNiの測定値がある
範囲内になければならないとした理由について述べる。
Ni系は、Crに頼らずNiのみにて変態温度を下げる
ことを目的とした成分系である。Cr添加を必ずしも前
提としていないため、変態温度はCr系より若干高めに
なるが、その分は鋼材強度を限定することにより残留応
力低減が可能となる。このような、残留応力低減におけ
る強度の役割については、例えば特開2000−017
380号公報にてその詳細が開示されている。Ni系に
おいて、その成分測定値が質量%で6%に満たない場合
は、変態温度が低くならず、疲労強度の改善が望めない
継手であるため、この値を設定した。一方、Niが15
%を上回るときは、変態そのものが生じなくなるためこ
の値を上限値とした。
【0020】以上、溶接金属の成分を測定し、その測定
値のあるべき範囲について述べた。本発明においては、
溶接金属成分の測定方法については特に限定しておら
ず、どのような方法を用いても溶接継手部疲労特性の管
理を実施することが可能である。溶接金属成分の測定方
法としては、例えば、付加ビード溶接金属を疲労強度に
影響を与えない程度に削り、それにより切り粉を採取し
て、それを分析するという方法が考えられる。この手順
では、成分分析としては、一般に行われている方法とな
る。あるいは、最近では、非破壊的に成分分析ができる
方法が報告され、一般に行われている成分分析値とよい
一致が確かめられているため、これを用いることも可能
である。この非破壊的に成分分析する方法は、鋼構造論
文集の2000年第7巻第27号1〜8ページに詳しく
説明されている。必要に応じ、両者を併用する方法も考
えられる。
【0021】次に、溶接止端部の溶接金属の成分がNi
系である場合、すなわちNiが6〜15%の範囲内であ
る場合は、鋼材の強度が490MPa級またはそれ以上
である場合に限定した理由について述べる。すでに述べ
たように、Ni系はCr添加を必ずとも前提としておら
ず、また添加したとしてもCr系より低いため、鋼材の
強度の効果を利用して、残留応力を効率よく低減しなけ
ればならない。そのため鋼材強度を限定する必要があ
る。鋼材の強度レベルを490MPa級またはそれ以上
に限定したのは、Ni系溶接金属でも充分に残留応力が
低減され、疲労強度向上が期待できるという範囲という
意味で設定した。
【0022】次に、鋼板およびその本溶接ビードの硬さ
測定値がある値以上でなければならないとした理由につ
いて述べる。鋼板の硬さが重要な意味を持つのは、Cr
系よりもNi系である。それは、変態温度がNi系の方
が高くなるため、その分鋼板強度の影響を援用しなけれ
ば効率よく残留応力を低減できないからである。鋼板の
強度は、一般には、ミルシートと呼ばれる製造元が出し
ている該鋼板の品質を保障する書類で判断することが可
能なので、溶接施工が十分よく管理されていれば、鋼板
の硬さ測定は不要である。しかし、何らかのトラブルが
生じ鋼板の使用に手違いがあるというような疑問を抱か
せる場合や、古い溶接構造物のようにミルシートが手に
入らないような場合で疲労を問題にする場合は、鋼板の
硬さ測定は重要である。ビッカース硬さで150という
のは490MPa級鋼材に相当する値であり、Ni系成
分の溶接金属は490MPa級またはそれ以上の強度を
有する鋼材に対して疲労改善が期待できる成分系である
ため、鋼材の硬さの判断基準としてビッカース硬さで1
50という値を設定した。
【0023】次に、溶接止端部を形成する付加ビード
が、低温変態溶材を用いて形成されたかどうか、疑念が
生じた場合に、その硬さを測定し、その値がビッカース
硬さで350以上であるかどうかで判断するとした理由
について述べる。疲労寿命の向上は、付加ビードのマル
テンサイト変態を利用し、残留応力を制御することで達
成されるものである。一般に、マルテンサイト組織は他
の組織より硬く、さらにその硬さはほぼ炭素含有量のみ
で決定される。マルテンサイト以外の組織の硬さはマル
テンサイト組織ほど硬くはならない。マルテンサイト変
態したとすれば、溶接金属組織はマルテンサイトという
硬い組織になっていることから、逆にその硬さを測定す
ることにより、マルテンサイト変態したかどうかを確認
することが可能である。しかし、合金元素を添加してい
くと、ベイナイト組織等も硬くなるため、確実にマルテ
ンサイト変態を起こしたと判断できる範囲として、付加
ビード溶接金属硬さがビッカース硬さで350以上であ
るかどうかで判断することとした。以上、鋼板および溶
接金属の硬さ測定値について述べた。本発明において
は、硬さ測定方法については特に限定しておらず、どの
ような方法を用いても溶接継手部疲労特性の管理を行う
ことが可能である。最近では、インパクト法、超音波法
などのような、非破壊的に硬さを測定できる方法が報告
され、しかも従来測定方法と比較してその信頼性も示さ
れている。これらは、鋼構造論文集の2000年第7巻
第27号1〜8ページに詳しく説明されている。
【0024】次に、溶接変形矯正等の溶接後処理をした
後に溶接止端部に形成される付加ビード溶接金属のマル
テンサイト変態温度について、その範囲を限定した理由
について述べる。本発明におけるマルテンサイト変態開
始温度の限定範囲は2つ存在し、ひとつめは300℃か
ら150℃の間であり、ふたつめは400℃から250
℃の間である。設定範囲が異なるのは、鋼材強度の効果
を援用するか、しないかという違いである。ひとつめの
300℃から150℃の範囲にマルテンサイト変態温度
を設定する場合は、変態温度がそれだけ低くなっている
ため残留応力低減が効率よく行われるため、鋼材の強度
を特に規定する必要はない。逆に、この範囲より低い変
態開始温度では、残留応力低減が可能でも、その分添加
元素を多くしなければならない、靭性等他の機械的特性
が確保できないなどの理由から下限を150℃とした。
上限の300℃は、それを上回る変態開始温度では鋼板
の強度を規定しなければならないか、どのような鋼板を
もってしても残留応力低減、そして疲労特性改善にはつ
ながらなくなってくるためこの値を設定した。なお、鋼
板の強度が低い、400MPa級鋼板、いわゆる軟鋼を
用いる場合は、残留応力を効率よく低減するためには、
好ましくはマルテンサイト変態開始温度の上限を250
℃とすることが望ましい。ふたつめの範囲は、ひとつめ
よりマルテンサイト変態開始温度が高くなっており、そ
のため鋼材強度の効果を利用せざるを得ない。その一方
で、マルテンサイト変態開始温度が高いということは合
金元素の添加も少なくて済み、経済的であるばかりでな
く他の特性特にシャルピー衝撃特性の確保が容易になる
ため、本発明者らは、鋼材の強度が限定されても、マル
テンサイト変態開始温度を高く設定することは工学的に
意味のあるものと判断した。マルテンサイト変態開始温
度の上限、400℃は、これを上回る変態開始温度で
は、鋼板強度効果をもってしても疲労特性改善効果が期
待できないためこの値を設定した。一方、下限の250
℃は、マルテンサイト変態開始温度がこれを下回る場合
は、他の特性をひとつめよりよくすることができなくな
るためこの値を設定した。なお、ふたつめのマルテンサ
イト変態開始温度の範囲はひとつめの範囲より高い温度
領域であるため、残留応力を低減させ高疲労強度の溶接
継手を作製するために、鋼材の強度を490MPa級ま
たはそれ以上に限定した。以上、溶接金属のマルテンサ
イト変態開始温度の範囲について述べた。本発明におけ
る溶接金属のマルテンサイト変態開始温度とは、溶接金
属より直接フォーマスター試験片を採取し、該試験片で
フォーマスター試験を実施したときに得られるマルテン
サイト変態開始温度で定義されるものである。
【0025】次に、付加ビード溶接金属の成分を限定し
た理由について述べる。本発明では、マルテンサイト変
態開始温度の範囲が300℃から150℃の間のもの
と、400℃から250℃の間のものの2つを設定して
いるが、それを実現するための溶接金属成分系として、
前者はCrとNiを主体とした成分系、後者はNiを主
体とした成分系に分けることができる。CrとNiを主
体とした成分系をCr系と呼び、Niを主体とした成分
系をNi系と呼ぶことにする。
【0026】まず、Cr系溶接金属について、その成分
範囲限定理由について説明する。Cは、それを鉄に添加
することによりMs温度を下げる働きをする。しかし、
その一方で、過度の添加は、溶接割れの問題や靱性劣化
の問題を引き起こすため、その上限を0.1%とした。
しかし、Cが無添加の場合は、マルテンサイトが得られ
にくく、また他の高価な元素のみで残留応力低減を図ら
なければならず経済的とはいえない。Cが0.001%
以上添加する場合に限定したのは、安価な元素であるC
を利用し、その経済メリットが出る最低限の値として設
定した。
【0027】Siは、脱酸元素として知られる。Si
は、溶接金属の酸素レベルを下げる効果がある。特に溶
接施工において、溶接中に空気が混入する危険性がある
ため、Si量を適切な値にコントロールすることはきわ
めて重要である。まず、Siの下限についてであるが、
溶接金属に添加するSi量として0.1%に満たない場
合、脱酸効果が薄れ溶接金属中の酸素レベルが高くなり
すぎ、機械的特性、特に靱性の劣化を引き起こす危険性
がある。そのため、溶接金属については、その下限を
0.1%とした。一方、過度のSi添加も靱性劣化を発
生せしめるため、その上限を0.7%とした。
【0028】Mnは、強度を上げる元素として知られ
る。そのため、本発明における第2の技術思想である変
態膨張時の降伏強度確保という観点から有効利用すべき
元素である。Mnの下限、0.4%は強度確保という効
果が得られる最低限の値として設定した。一方、過度の
添加は、溶接金属の靱性劣化を引き起こすためその上限
を2.5%とした。PおよびSは、本発明では不純物で
ある。しかし、これら元素は、溶接金属に多く存在する
と、靱性が劣化するため、その上限をそれぞれ0.03
%、0.02%とした。
【0029】Niは、単体でオーステナイトすなわち面
心構造を持つ金属である。鉄そのものは、高温域でオー
ステナイト構造になり、低温域でフェライトすなわち体
心構造になる。Niは、それを添加することにより、鉄
の高温域における面心構造をより安定な構造にするた
め、無添加の場合に比べ、より低温度域においても面心
構造となる。このことは、体心構造に変態する温度が低
くなることを意味する。また、Niはそれを添加するこ
とにより溶接金属の靱性を改善するという効果を持つ。
Cr系溶接金属におけるNi添加量の下限4%は、残留
応力低減効果が現れる最低限の添加量および靱性確保の
観点から決定した。Ni添加量の上限12%は、Cr系
溶接金属においては、次に述べるCr添加によりある程
度Ms温度が低減されていること、および残留応力低減
の観点からはこれ以上添加してもあまり効果が変わらな
い上、これ以上添加するとNiが高価であるという経済
的デメリットが生じてくるためこの値を設定した。
【0030】Crは、Niと異なり、フェライトフォー
マーである。しかし、Crは、それを鉄に添加すると、
高温度域ではフェライトであるものの、中温度域ではオ
ーステナイトを形成し、さらに温度が低くなると再びフ
ェライトを形成する。溶接部の場合、溶接入熱量により
熱履歴で、低い温度側のフェライトは一般的に得られ
ず、マルテンサイトが得られることになる。これは、C
rを添加することの利点は、焼入性の増加が原因であ
る。すなわち、Crを添加することによるマルテンサイ
ト変態は、焼入性が増加することになるフェライト変態
が生じない点と、Ms温度そのものが低くなるという2
つの点が存在する。これら両方の効果を満たしながら残
留応力を低減するための変態膨張を有効利用するCr添
加範囲として、下限7%を設定した。上限15%は、こ
れを上回る量を添加してもその効果が大きくならない
上、経済的にもデメリットが大きくなるため、この値を
設定した。
【0031】Cuは、溶接ワイヤにメッキすることによ
り通電性をよくする効果があるため、溶接作業性を改善
するために有効な元素である。また、Cuは焼入性元素
でもあるため、溶接金属に添加することによりマルテン
サイト変態を促進させるという効果も期待できる。Cu
の下限0.05%は作業性改善やマルテンサイト変態促
進のために必要な最低限の値として設定した。しかし、
過度の添加は、作業性改善の効果がないだけでなく、ワ
イヤ製造コストを上げるため産業上も好ましくはない。
Cuの上限、0.4%はこのような理由により設定し
た。
【0032】Nbは、溶接金属中においてCと結合し、
炭化物を形成する。Nb炭化物は、少量で溶接金属の強
度を上げる働きがあり、従って、有効利用することの経
済メリットは大きい。また、本発明における残留応力低
減技術である、Ms温度における降伏強度を高める意味
からもメリットは大きい。しかし、一方で過度の炭化物
形成は、靱性劣化が発生するため自ずと上限が設定され
る。Nbの下限は、炭化物を形成せしめ、強度増加効果
が期待できる最低の値として0.005%を設定した。
上限は、靱性劣化による溶接部の信頼性が損なわれない
値として0.3%とした。
【0033】VもNbと同様な働きをする元素である。
しかし、Nbと異なり、同じ析出効果を期待するために
は、Nbより添加量を多くする必要がある。V添加の下
限0.05%は、添加することにより析出硬化が期待で
きる最低値として設定した。Vの上限は、これより多く
添加すると析出硬化が顕著になりすぎ、靱性劣化を引き
起こすために0.5%とした。
【0034】Tiも、Nb、V同様、炭化物を形成し析
出硬化を生じせしめる。しかし、Vの析出硬化がNbの
それと違っていたようにTiの析出硬化もまたNb、V
と異なる。そのため、Tiの添加量の範囲もNb、Vと
異なった範囲が設定される。Ti添加量の下限0.00
5%は、その効果が期待できる最低量として、上限の
0.3%は靱性劣化を考慮して決定した。
【0035】Moも、Nb、V、Ti同様析出硬化が期
待できる元素である。しかし、Moは、Nb、V、Ti
と同等な効果を得るためには、Nb、V、Ti以上に添
加する必要がある。Mo添加量の下限0.1%は、析出
硬化による降伏強度増加が期待できる最低値として設定
した。また、上限の2.0%は、Nb、V、Ti同様、
靱性劣化を考慮して決定した。
【0036】Nは、オーステナイトフォーマーとして知
られている元素である。Nも添加することによりマルテ
ンサイトが得られやすくなるため、最低限の添加は必要
である。Nの下限、0.001%は、C同様、低Ms温
度が得られるための最低値として定めた。しかし、過大
な添加は窒化物を形成し、靱性劣化や延性劣化の問題が
発生するためその上限を0.05%とした。
【0037】次に、Ni系溶接金属について、その成分
範囲限定理由について説明する。Cは、それを鉄に添加
することによりMs温度を下げる働きをする。しかし、
その一方で、過度の添加は、溶接金属の靱性劣化および
溶接金属割れの問題を引き起こすため、その上限を0.
2%とした。しかし、Cが無添加の場合は、マルテンサ
イトが得られにくく、また他の高価な元素のみで残留応
力低減を図らなければならず経済的とはいえない。Cが
0.01%以上添加する場合に限定したのは、安価な元
素であるCを利用し、その経済メリットが出る最低限の
値として設定した。なお、Cの上限は、溶接金属割れの
観点から、好ましくは0.15%に設定することが望ま
しい。
【0038】Siは、脱酸元素として知られる。Si
は、溶接金属の酸素レベルを下げる効果がある。特に溶
接施工中においては、溶接中に空気が混入する危険性が
あるため、Si量を適切な値にコントロールすることは
きわめて重要である。まず、Siの下限についてである
が、溶接金属に添加するSi量として0.1%に満たな
い場合、脱酸効果が薄れ溶接金属中の酸素レベルが高く
なりすぎ、機械的特性、特に靱性の劣化を引き起こす危
険性がある。そのため、溶接金属については、その下限
を0.1%とした。一方、過度のSi添加も靱性劣化を
発生せしめるため、その上限を0.5%とした。Mn
は、強度を上げる元素として知られる。そのため、本発
明における残留応力低減メカニズムである変態膨張時の
降伏強度確保という観点から有効利用すべき元素であ
る。Mnの下限、0.01%は強度確保という効果が得
られる最低限の値として設定した。一方、過度の添加
は、母材および溶接金属の靱性劣化を引き起こすためそ
の上限を2.0%とした。
【0039】PおよびSは、本発明では不純物である。
しかし、これら元素は、溶接金属に多く存在すると、靱
性が劣化するため、その上限をそれぞれ0.03%、
0.02%とした。Niは、単体でオーステナイトすな
わち面心構造を持つ金属であり、溶接金属に添加するこ
とによりオーステナイトの状態をより安定な状態にする
元素である。鉄そのものは、高温域でオーステナイト構
造になり、低温域でフェライトすなわち体心構造にな
る。Niは、それを添加することにより、鉄の高温域に
おける面心構造をより安定な構造にするため、無添加の
場合に比べ、より低温度域においても面心構造となる。
このことは、体心構造に変態する温度が低くなることを
意味する。Niの下限、6%は、残留応力低減効果が現
れる最低限の添加量という意味で決定した。Niの上
限、15%は、残留応力低減の観点からはこれ以上添加
してもあまり効果が変わらない上、これ以上添加すると
Niが高価であるという経済的デメリットが生じてくる
ためである。
【0040】Cuは、溶接ワイヤにメッキすることによ
り通電性をよくする効果があるため、溶接作業性を改善
するために有効な元素である。また、Cuは焼入性元素
でもあるため、溶接金属に添加することによりマルテン
サイト変態を促進させるという効果も期待できる。Cu
の下限0.05%は作業性改善やマルテンサイト変態促
進のために必要な最低限の値として設定した。しかし、
過度の添加は、作業性改善の効果がないだけでなく、ワ
イヤ製造コストを上げるため産業上も好ましくはない。
Cuの上限、0.4%はこのような理由により設定し
た。
【0041】Nbは、溶接金属中においてCと結合し、
炭化物を形成する。Nb炭化物は、少量で溶接金属の強
度を上げる働きがあり、従って、有効利用することの経
済メリットは大きい。また、Ms温度における降伏強度
を高める意味からもメリットは大きい。しかし、一方で
過度の炭化物形成は、靱性劣化が発生するため自ずと上
限が設定される。Nbの下限は、炭化物を形成せしめ、
強度増加効果が期待できる最低の値として0.01%を
設定した。上限は、靱性劣化による溶接部の信頼性が損
なわれない値として0.4%とした。
【0042】VもNbと同様な働きをする元素である。
しかし、Nbと異なり、同じ析出効果を期待するために
は、Nbより添加量を多くする必要がある。V添加の下
限0.1%は、添加することにより析出硬化が期待でき
る最低値として設定した。Vの上限は、これより多く添
加すると析出硬化が顕著になりすぎ、靱性劣化を引き起
こすために1.0%とした。
【0043】Tiも、Nb、V同様、炭化物を形成し析
出硬化を生じせしめる。しかし、Vの析出硬化がNbの
それと違っていたようにTiの析出硬化もまたNb、V
と異なる。そのため、Tiの添加量の範囲もNb、Vと
異なった範囲が設定される。Ti添加量の下限0.01
%は、その効果が期待できる最低量として、上限の0.
4%は靱性劣化を考慮して決定した。
【0044】Crは、Nb、V、Ti同様析出硬化元素
である。また、CrはMs温度を低減する効果も合わせ
持つので有効活用すべき元素である。しかし、本発明に
おけるNi系溶接金属は、主としてNi添加によりMs
温度低減を達成しているため、Cr添加量はNiより少
なくすべきである。過度のCr添加は必ずしも残留応力
低減効果を向上させず、Crが高価であるため産業上好
ましくはない。Cr添加量の下限0.1%は、これを添
加し、残留応力低減効果が得られる最低限の値として設
定した。Cr添加量の上限3.0%は、Ni系溶接金属
については、Ms温度がNi添加によりすでに低減され
ていること、他の析出元素により強度も確保されている
ことから、これ以上添加しても残留応力低減効果があま
り変わらなくなる、靱性劣化が顕著になることにより設
定した。
【0045】MoもCr同様の効果を持つ元素である。
しかし、Moは、Cr以上に析出硬化が期待できる元素
である。そのため、添加範囲はCrより狭く設定した。
下限の0.1%は、Mo添加の効果が期待できる最低限
の値として設定した。上限の3.0%は、これ以上添加
すると、硬化しすぎるため靱性劣化が顕著になってくる
ため設定した。
【0046】Coは、Ti等と異なり、強い析出硬化を
生じせしめる元素ではない。しかし、Coは、それを添
加することにより強度増加をもたらし、かつ強度増加を
期待しながら靱性を確保するという観点からは、Niよ
り好ましい元素であることから有効利用すべき元素であ
る。しかし、Niは、残留応力低減効果を期待できる程
度の低Ms温度を確保するために溶接金属に添加してい
るため、Co添加量の下限0.1%は、Co添加の効果
が期待できる最低限の値として設定した。一方、過度の
添加は、強度増加が過大となり靱性劣化をもたらすため
その上限を2.0%とした。以上、溶接金属の成分につ
いてその範囲限定理由について述べてきたが、これらの
範囲に溶接金属成分を制御する方法として、溶接ワイヤ
の成分を制御する方法や、溶接ワイヤおよびフラックス
の成分を制御する方法、あるいは溶接心線および被覆フ
ラックスの成分を制御する方法などがあるが、本発明に
おいては、これら方法によらず、溶接金属の成分が前述
の範囲内に設定されれば高疲労強度溶接継手が実現でき
る。さらに、本発明における成分範囲となる溶接金属を
形成するような溶接ワイヤ、溶接ワイヤとフラックスの
組み合わせ、または溶接心線と被覆フラックスの組み合
わせ等は、当該技術者ならば容易に成し得るものであ
る。
【0047】
【実施例1】以下に、本発明の実施例を示す。初めに、
溶接継手の成分及び硬さによる品質保証検査についての
実施例を示す。この発明は、疲労特性管理を目的として
いるため、疲労強度と品質保証検査の基準とがよい相関
があることを確認するだけで充分である。図2に試験片
形状を示す。図2の試験片は、角回し溶接部といわれて
いるもので、応力集中が他の溶接継手形状よりも厳し
く、溶接構造物全体の疲労強度はこの継手で決定されて
いるといっても過言ではない。図2は付加ビードがある
場合の図を示しているが、試験によっては本ビード溶接
のみ実施し、付加ビード溶接を実施しない試験片も用意
した。表1は、試験に用いた溶接ワイヤの成分値を示し
ている。これらワイヤを用いて図2の試験片を作製し、
疲労試験を実施した。表2は試験片の作製手順を示して
いる。例えば、表2における試験片No.1は、鋼材は
市販の強度が490MPa級の鋼材を用い、本ビード溶
接部分には490MPa級鋼材用の市販溶接ワイヤを用
い、付加ビード溶接には表1のWAを用いた試験片であ
る。溶接条件は、本ビード、付加ビード共に同じでワイ
ヤ径が1.2mm、電流220A、電圧27V、速度2
0cm/minである。さらに、本発明では、溶接変形
矯正等の溶接後処理を実施した場合とそうでない場合を
区別しているため、本ビード終了後の作業手順も表2に
示している。表2のNo.1では、付加ビード溶接施工
後に溶接後処理を施したことを再現するために、付加ビ
ード溶接後に荷重を試験片に負荷している。また、一部
に試験片には、バーナー加熱を実施した。そのときの最
高加熱温度は溶接表面で約600℃である。それに対
し、表2のNo.2試験片は、本ビード溶接材料および
付加ビード溶接材料はNo.1と同じであるが、付加ビ
ード溶接施工前に荷重を負荷している。これは、溶接変
形矯正終了後に付加ビードを施工することに対応する。
負荷した荷重は、鋼材強度の7割の応力に対応する荷重
であり、その方向は図2が示す方向である。実構造物で
溶接変形矯正時のどの程度の荷重が加わるかはその施工
条件によって異なるが、変形を矯正するためには塑性歪
を導入しなければならないため、部分的には降伏強度以
上の荷重を加えなければならず、鋼材強度の7割または
それ以上の荷重が加わっているものと考えることができ
る。また、表2のNo.3は、試験片に荷重を負荷して
いないので溶接変形矯正を行わない場合に相当する。鋼
材は、強度レベルとして490MPa級のほか、780
MPa級、400MPa級鋼材を用意して試験を実施し
た。止端部を形成する溶接金属の成分測定は、簡易発光
分光分析装置を用いて行った。一部鋼材の硬さ測定も超
音波式硬さ測定器を用いて実施し、その結果も表2に示
した。なお、本ビード溶接に表1のワイヤを用い付加ビ
ード溶接を施工しない試験片も表2にはある。表2に、
疲労試験を実施し、500万回疲労強度を決定した結果
を載せた。疲労試験は、図2に矢印で示された方向に応
力を負荷した。すなわち、荷重負荷方向と同じ方向であ
る。疲労試験における応力は、0MPaから所定の応力
の間を正弦波形で与え、500万回繰り返しても破断し
なかった応力振幅の最大値が疲労限となる。図3に、N
o.13とNo.15のビッカース硬さ分布を示す。試
験片の表面から、母材部、付加ビード部、本ビード部と
直線上で計測していった結果である。本発明では、すべ
ての溶接を施工した後に荷重が負荷された試験片は対象
外になるため、表2におけるNo.1とNo.8は対象
外となる。ちなみに、これら試験片の500万回疲労限
はそれぞれ80MPaと70MPaであり、疲労強度と
しては低い。これは、たとえ、Ni、Crが付加ビード
部に相当量添加されていても、荷重負荷により残留応力
が消失してしまうためである。本発明は、残留応力その
ものを測定する方法ではないため、このような継手を対
象外にしている。表2では、荷重を負荷しない、バーナ
ー加熱をしない、あるいは荷重負荷後またはバーナー加
熱後に付加ビード溶接施工を実施した試験片について、
本発明の合否判断基準を満足しているものに○、そうで
ないものに×をつけた。例えば、No.2、3はNi、
Crの測定値が6.8%、12.5%であるため○であ
る。No.4はNiが10.9%であるがCrが添加さ
れていないものである。本発明では、溶接継手作製に用
いられている鋼板の強度が490MPa級またはそれ以
上の強度の場合は合格となるが、もし、鋼板強度が不明
な場合は、鋼板の硬さを測定し、この値を参照すること
になっている。No.4の継手に用いられた鋼板の強度
レベルが不明と仮定し硬さ測定値を実施したが、その値
はビッカース硬さで161と150を上回っているため
○となったものである。このようにして○および×をつ
けた。一方疲労試験から得られた500万回疲労限は、
○のものは高い疲労強度を有していることがわかり、特
に490MPa、780MPa級鋼材では疲労限が15
0MPa以上であることがわかる。一方、No.6、1
1のようにNi、Crの成分値が本発明の設定する範囲
外のものは疲労限が90MPaと低くなっている。N
o.14は、成分測定値は本発明の範囲に入っている
が、Crが添加されていないNi系の成分であるため鋼
材の硬さ測定を追加した例で、硬さ測定値がビッカース
硬さで150に満たないため×となっている例である。
実際、疲労限は90MPaと低いことが読み取れる。一
方、No.15では、付加ビードを従来材で形成してい
るが、これは施工時の溶接棒の間違いを想定した試験片
である。これは図3より、ビッカース硬さ計測でNo.
13と比較すれば、付加ビード部が全く硬さが小さく、
マルテンサイト変態が生じているような溶接金属によっ
て形成されていないことを容易に知ることができること
が理解される。以上のように、本発明によれば、溶接継
手部の疲労特性を判断することが充分可能であることが
わかる。
【0048】
【実施例2】次に、本発明における疲労強度向上処理方
法における、ひずみ付与の影響に関する実施例について
説明する。まず図2に示す試験片を、鋼材強度が490
MPa、780MPa、400MPa級の3種の鋼材を
用いて作製した。その作製条件を表3に示す。溶接変形
矯正に対応する処理として、試験片に荷重を加えている
が、一部バーナー加熱をしている試験片もある。No.
5のみ、荷重負荷やバーナー加熱を実施していない。す
なわち、溶接変形矯正等の後処理を行っていない場合に
対応する。荷重負荷やバーナー加熱の条件は実施例1と
同じである。また、本ビード溶接、付加ビード溶接の溶
接条件も実施例1と同じであり、また付加ビード溶接材
料は表1に記載したワイヤである。次に、同じ試験片を
いくつか作製した後、付加ビード部分よりフォーマスタ
ー試験片を採取し、マルテンサイト変態開始温度を測定
した。表3にはその結果も示した。表3の条件で作製し
た試験片で実施例1と同じように疲労試験を実施し、5
00万回疲労限を決定した。その結果を表4に示した。
表4には、疲労試験後、付加ビードから成分分析試料を
採取し、成分分析を行った結果も示している。表4から
わかることは、付加ビードの成分が同じである継手N
o.1〜4において、500万回疲労限が大きく異なる
ことである。これらの結果は、特開平11−13829
0号公報などの従来技術ではまったく言及されていなか
ったものであり、従来技術に対応するものは、No.5
の溶接後処理を行わない場合のみである。実際、No.
5の継手は、500万回疲労限が175MPaと疲労強
度が高いことが読み取れる。継手No.1〜4では、付
加ビードが同じであるにもかかわらず、500万回疲労
限が高かったものはNo.2、3であった。これらは、
表3からわかるように、荷重負荷またはバーナー加熱後
に付加ビード溶接を施工したものであり、順序が逆にな
っているNo.1、4の疲労限は低い。同様に、No.
8、9継手のように、同じ付加ビードでも荷重負荷と付
加ビード溶接の順序が異なった場合では、疲労強度が異
なってくることが理解でき、本発明に従った作製された
継手の方がいずれも疲労強度は高かった。継手No.1
1,12は、鋼材が400MPa級の場合の実施例であ
り、この場合は、本発明におけるCr系溶接金属の付加
ビードを作製したNo.11の方がNi系のNo.12
より疲労強度が高いことが理解できる。また、図4にN
o.11とNo.12のそれぞれの溶接止端部にひずみ
ゲージを貼り、最初の一回目の載荷を行ったときの荷重
ひずみ履歴を計測したものを示す。これより、鋼材強度
にマッチしていない溶接材料を用いて付加ビード施工を
行ったNo.12では、著しい塑性化を生じて0.04
%ほどの残留ひずみが残っているのに対し、適切な低温
変態溶材を用いて付加ビード施工を行ったNo.11で
は十分に引張残留応力が低減されているために、載荷荷
重に対して弾性挙動が保持されていることが理解でき
る。また、このときNo.12は、500μで降伏が生
じていることから、ヤング率2.06×105MPaよ
り計測された降伏強度σytは103MPaとなる。一
方、この継手の降伏強度σyは260MPaであること
から、残留応力σa=σy−σyt=157MPaと算
出される。また、No.11はひずみ1000μまで降
伏が生じていないため、残留応力は少なくとも260M
Pa−206MPa=54MPa以下であり、No.1
2と比較して残留応力が大幅に低減されていることがわ
かる。以上のように、本発明に従えば、溶接継手の疲労
強度を確実に高くすることができる。溶接施工上の不測
の事態を避けるために、同時に実施例1で示した管理を
さらに行えば、溶接構造物の信頼性はますます確実なも
のになることは明らかである。
【0049】
【実施例3】次に、本発明における疲労強度向上処理方
法における、亀裂除去の必要性に関する実施例について
説明する。まず図2に示す試験片の付加ビードが無い状
態のものを、鋼材強度が490MPa級の鋼材を用いて
作製した。それから、その試験片に繰り返し荷重をある
回数かけたその後に、亀裂検査およびあるものについて
は亀裂補修を行ってから、付加ビード施工を行い、その
後で再び疲労試験を行う。本ビード溶接、付加ビード溶
接の溶接条件は実施例1と同じであり、また付加ビード
溶接材料は表1に記載した材料である。最初にかける繰
り返し荷重は試験片に200MPaの応力を発生させる
荷重である。この応力で、止端部に発生する応力をひず
みゲージでモニタリングしながら載荷を行い、その応力
値の変化量を変えて、載荷回数を決めている。応力値の
変化量が大きいほど、一般に生じた亀裂の深さが大き
い。また、最後の疲労実験は150MPaの応力で実施
している。ただし、500万回で打ち切っている。表5
に、試験片ごとの、最初の載荷回数、亀裂発見の有無、
亀裂除去の有無、およびその後の疲労試験の結果を示
す。ここで亀裂の検査は磁粉探傷試験、継手No.4〜
7の亀裂深さの検査は、電位ポテンシャル法によって行
っている。亀裂除去は、ロータリー式グラインダーで行
い、ある程度削っては磁粉探傷試験を行い、磁粉指示模
様が現れなくなるまで削り込みを続けた。表5からわか
ることは、亀裂が発見されたのに亀裂除去を行わなかっ
た継手No.4とNo.6において、疲労寿命が著しく
短いことである。これは、試験体に残った亀裂が、作用
応力ですぐに進展し、破断に至ったためである。一方、
ひずみでは感知できる程度の深さであるが、亀裂検査で
は発見できなかったNo.2については、500万回で
疲労限が出ている。これは、付加ビード施工時に亀裂が
溶けてしまったことによると考えられる。この亀裂の長
さを計測するために、同じ3%応力低下を生じた試験片
No.3を製作し、その止端部を切り出して亀裂長を調
査したところ約0.3mmの深さであった。付加ビード
施工時に0.5〜1.0mm程度溶け込むため、このよ
うな亀裂検査で発見されないレベルであれば亀裂は無害
化されることが理解される。以上のように、本発明に従
えば、溶接継手の疲労強度を確実に高くすることができ
る。溶接施工上の不測の事態を避けるために、同時に実
施例1〜2で示した管理をさらに行えば、溶接構造物の
信頼性はますます確実なものになることは明らかであ
る。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0050】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、溶接継
手の疲労特性管理を確実に行うことができ、また溶接変
形矯正等の溶接後処理を行う場合の溶接継手の疲労強度
を向上することが可能となる。したがって、本発明は工
業的価値の極めて高い発明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明による疲労寿命向上手法の全
体をフローチャートで表した図である。
【図2】 図2は、疲労試験片のサイズおよび本ビー
ド、付加ビード、荷重負荷方向を説明する図である。
【図3】 従来材で形成された付加ビードを持つ継手、
低温変態溶材で形成された付加ビードを持つ継手、それ
ぞれの硬さ分布を比較した図である。
【図4】 鋼材強度に適した溶材で形成された付加ビー
ドを持つ継手、適していない溶材で形成された付加ビー
ドを持つ継手、それぞれに初めて引張荷重が作用した場
合の溶接止端部近傍での荷重ひずみ関係を表した図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松岡 和巳 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 (72)発明者 佐藤 嘉昭 君津市君津1番地 新日本製鐵株式会社君 津製鐵所内 Fターム(参考) 4E001 AA03 CA02 EA05

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶接継手の疲労が問題となる箇所につい
    て、事前処理を行った後、低温変態溶材を用いた付加ビ
    ード形成を行い、さらにその後、品質保証検査を行うこ
    とによって、当該溶接継手の疲労寿命を向上させること
    を特徴とした疲労寿命向上処理方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の疲労寿命向上処理方法の
    事前処理において、溶接継手の低温変態溶材を用いた付
    加ビード形成を行う部分とその近傍部分について、塑性
    加工や、変形矯正、熱処理、溶接、現場接合など金属内
    部応力、表面応力を変化させるプロセスを行ったのち、
    低温変態溶材を用いた付加ビード形成を実施し、低温変
    態溶材を用いた付加ビード形成後にはそのような溶接継
    手の内部応力、表面応力を変化させるプロセスを行わな
    いことを特徴とした疲労寿命向上処理方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の疲労寿命向上処理方法の
    事前処理において、疲労寿命の問題となる箇所につい
    て、目視検査、浸透探傷検査、磁粉探傷検査、渦流探傷
    検査などを実施した上で、亀裂が検出されればその亀裂
    をグライダーやガウジングなどで除去することを特徴と
    した疲労寿命向上処理方法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の疲労寿命向上処理方法の
    事前処理において、疲労寿命の問題となる箇所を形成し
    ている母材部およびその溶接止端部を形成する溶接金
    属、について硬さ測定を行い、その結果に基づいて、付
    加ビードを形成する低温変態溶材を選定することを特徴
    とした疲労寿命向上処理方法。
  5. 【請求項5】前記疲労寿命の問題となる箇所を形成して
    いる母材部およびその溶接止端部を形成する溶接金属、
    の硬さが共にビッカース硬さで150以上を示すことに
    より490MPa級以上の強度を持つと判断される場
    合、付加ビードを形成する低温変態溶材のマルテンサイ
    ト変態開始温度が200℃〜400℃の間にある低温変
    態溶材を選定することを特徴とした請求項4記載の疲労
    寿命向上処理方法。
  6. 【請求項6】前記疲労寿命の問題となる箇所を形成して
    いる母材部およびその溶接止端部を形成する溶接金属、
    のどちらかの硬さがビッカース硬さで150以下を示す
    ことにより490MPa級以下の強度を持つと判断され
    る場合場合、付加ビードを形成する低温変態溶材のマル
    テンサイト変態開始温度が150℃〜300℃の間にあ
    る低温変態溶材を選定することを特徴とした請求項4記
    載の疲労寿命向上処理方法。
  7. 【請求項7】請求項1に記載の疲労寿命向上処理方法の
    品質保証検査において、疲労が問題となる溶接継手の止
    端部に、付加ビードが形成されていることを目視で確認
    することを特徴とした疲労寿命向上処理方法。
  8. 【請求項8】請求項1に記載の疲労寿命向上処理方法の
    品質保証検査において、付加ビードが低温変態溶材を用
    いて形成されたものか疑念が生じた場合、付加ビードの
    硬さを測定し、ビッカース硬さが、付加ビード表面全域
    にわたって350以上を示すことを確認することによ
    り、その付加ビードが低温変態溶材により形成されたこ
    とを判別することを特徴とした疲労寿命向上処理方法。
  9. 【請求項9】請求項1に記載の疲労寿命向上処理方法の
    品質保証検査において、付加ビードが適切な低温変態溶
    材を用いて形成されたものか疑念が生じた場合、付加ビ
    ードの成分を分析することにより、その付加ビードが適
    切な低温変態溶材により形成されたことを判別すること
    を特徴とした疲労寿命向上処理方法。
  10. 【請求項10】前記付加ビードが適切な低温変態溶材を
    用いて形成されたものか疑念が生じた場合、付加ビード
    から金属粉を採取し、その成分を分析して、その成分の
    うち質量%でNiが6〜15%の範囲内にあることを確
    認することにより、490MPa級かそれ以上の強度を
    持つ鋼材および溶材によって形成された溶接継手に適し
    た低温変態溶材により付加ビードが形成されたことを判
    別することを特徴とした請求項9に記載の疲労寿命向上
    処理方法。
  11. 【請求項11】前記付加ビードが適切な低温変態溶材を
    用いて形成されたものか疑念が生じた場合、付加ビード
    から金属粉を採取し、その成分を分析して、その成分の
    うち質量%でNiが4%から12%、Crが7%から1
    5%の範囲内にあることを確認することにより、490
    MPa級以下の強度を持つ鋼材および溶材によって形成
    された溶接継手に適した低温変態溶材により付加ビード
    が形成されたことを判別することを特徴とした請求項9
    に記載の疲労寿命向上処理方法。
  12. 【請求項12】請求項1に記載の疲労寿命向上処理方法
    の品質保証検査において、付加ビードの形成によって、
    引っ張り残留応力の緩和がなされたかという疑念が生じ
    た場合、付加溶接施工完了後、付加ビードの止端部の直
    近でひずみを計測しながら、設計的に疲労損傷を与える
    レベルにあると予想される活荷重を与える重量を荷重車
    等を用いて与え、その載荷除荷プロセスによる荷重ひず
    み関係における塑性ひずみの残存が0.02%以下であ
    ることを確認することによって、付加ビード近傍の残留
    応力分布の変化が十分に小さく、残留応力が十分に低減
    されたことを実際に確認することを特徴とした疲労寿命
    向上処理方法。
  13. 【請求項13】請求項1に記載の疲労寿命向上処理方法
    の品質保証検査において、付加ビードの形成によって、
    引っ張り残留応力の緩和がなされたかという疑念が生じ
    た場合、付加溶接施工完了後、付加ビードの止端部の直
    近でひずみを計測しながら、設計的に疲労損傷を与える
    レベルにあると予想される活荷重を与える重量を荷重車
    等を用いて与え、その載荷除荷プロセスによる荷重ひず
    み関係において降伏挙動が見られた場合、載荷前を0点
    として計測された降伏応力σytと、ミルシートや材料
    試験等から得られたその鋼材の降伏強度σyから、残留
    応力σaを、σa=σy−σytとして求め、また降伏
    挙動が見られない場合は十分に大きな残留応力が入って
    いるとみなすことにより、付加ビード止端部に導入され
    た残留応力を実際に確認することを特徴とした疲労寿命
    向上処理方法。
  14. 【請求項14】請求項6記載の溶接部疲労強度向上処理
    法において、質量%で、C:0.001〜0.1%、S
    i:0.1〜0.7%、Mn:0.4〜2.5%、P:
    0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:4〜12
    %、Cr:7〜15%、N:0.001〜0.05%を
    含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる付加ビード
    溶接金属を形成することを特徴とする溶接部疲労強度向
    上方法。
  15. 【請求項15】質量%で、Cu:0.05〜0.4%M
    o:0.1〜2.0%、Ti:0.005〜0.3%、
    Nb:0.005〜0.3%、V:0.05〜0.5%
    の1種または2種以上をさらに含有する付加ビード溶接
    金属を形成することを特徴とする請求項14記載の溶接
    部疲労強度向上方法。
  16. 【請求項16】請求項5記載の溶接部疲労向上処理法に
    おいて、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:
    0.1〜0.5%、Mn:0.01〜2.0%、P:
    0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:6〜15
    %を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる付加
    ビード溶接金属を形成することを特徴とする溶接部疲労
    強度向上方法。
  17. 【請求項17】質量%で、Ti:0.01〜0.4%、
    Nb:0.01〜0.4%、V:0.1〜1.0%の1
    種または2種以上をさらに含有する付加ビード溶接金属
    を形成することを特徴とする請求項16記載の溶接部疲
    労強度向上方法。
  18. 【請求項18】質量%で、Cu:0.05〜0.4%、
    Cr:0.1〜3.0%、Mo:0.1〜3.0%、C
    o:0.1〜2.0%の1種または2種以上をさらに含
    有する付加ビード溶接金属を形成することを特徴とする
    請求項16または17記載の溶接部疲労強度強度向上方
    法。
  19. 【請求項19】請求項1〜18のいずれかの疲労寿命向
    上処理方法を用いて処理されたことを特徴とする溶接継
    手。
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