JP2003275564A - 攪拌装置 - Google Patents

攪拌装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、比較的簡単な構造の翼により
液体と固体粒子の混合を良好にし、固体粒子を従来より
も均一に分散することによって、固体粒子と液体の接触
面積を増加して、固体粒子と液体との反応あるいは固体
粒子の液体への溶解性を高め、固体―液体系あるいは固
体―液体―気体系で混合を良好にし、効率的に反応を行
える攪拌槽を提供することにある。 【解決手段】攪拌槽の槽底に近接した第1のパドル翼
(2)と前記第1のパドル翼の上部に設けられた前記第
1パドル翼(2)よりも翼径が小さい第2のパドル翼
(3)とがシャフト(1)を介して設置され、前記パド
ル翼同志が前記シャフトに対してある角度を有して配置
され、前記第1のパドル翼(2)と前記第2のパドル翼
(3)の両端同志を繋げて構成される第3及び第4の補
助翼(4)からなる攪拌翼によって達成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体―液体系、固
体―液体系あるいは固体―液体―気体系の混合を行う攪
拌装置に関し、特に効率良く混合及び反応を行わせるた
めに好適な攪拌翼構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、液体―液体系、固体―液体系及び
固体―液体―気体系の攪拌に用いられる翼形状としては
液体混合技術(日刊工業;1989年)の259頁に示
されるように、複数の羽根を有するディスクタービン
翼、パドル翼及びプロペラが公知となっている。あるい
は、特開平06−312122に示されているような格
子状の攪拌翼がある。
【0003】図8には、従来のディスクタービンを用い
た攪拌装置を示す。通常6枚の羽根を有するディスクタ
ービン10が攪拌槽6の中に4枚の邪魔板7(2枚しか
図示されていない)とともに設置されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術は固体粒子の浮遊化及び分散性する配慮が十分で
なかった。
【0005】即ち、図9には、図8に示すディスクター
ビンの固体―液体系での粒子の濃度分布の計算結果を示
す。これは、ケミカルエンジニアリング サイエンス、
42(1987年)、第2949頁から第2956頁
(Chem.Eng.Sci.,vol42,2949
(1987))に記載されているディスクタービンの実
験条件、回転数=6.5s-1、翼径=0.13m、粒子
平均径=139ミクロン、粒子重量=1.5wt%の状
態での水中に粒子が浮遊している解析結果(3次元流れ
解析;有限差分法、k−εモデルによる解析結果)を示
している。6はバッフル4枚と前記ディスクタービン
(6枚羽根)を具備した攪拌槽(槽径=0.39m、液
面高さ=0.464m)を表している。この場合、粒子
の平均濃度C/Cav(Cは槽内の局所濃度、Cavは
槽内全体での平均濃度)が2以上の領域11が翼下部か
ら槽底にかけて存在し、槽内粒子の濃度に不均一が存在
することが分かる。
【0006】本発明の目的は、上記従来技術を改善し、
比較的簡単な構造の翼により液体と固体粒子の混合を良
好にし、固体粒子を従来よりも均一に分散することによ
って、固体粒子と液体の接触面積を増加して、固体粒子
と液体との反応あるいは固体粒子の液体への溶解性を高
め、固体―液体系あるいは固体―液体―気体系で混合を
良好にし、効率的に反応を行える攪拌装置を提供するこ
とにある。
【0007】また、本発明の他の目的は、さらに液体―
液体系においても、従来よりも短い混合時間で効果的に
混合を行え、ある程度の高粘度域まで混合性能が劣化し
ない攪拌装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、攪拌槽の槽
底に近接した第1のパドル翼と前記第1のパドル翼の上
部に設けられた前記第1パドル翼よりも翼径が小さい第
2のパドル翼とがシャフトを介して設置され、前記パド
ル翼同志が前記シャフトに対してある角度を有して配置
され、前記第1のパドル翼と前記第2のパドル翼の両端
同志を繋げて構成される第3及び第4の補助翼からなる
攪拌装置によって達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明に係る攪拌装置の実施の形
態について図面を用いて説明する。
【0010】図1には、本発明の一実施の形態を示す。
攪拌装置5は、回転駆動源(図示せず)の回転駆動軸に
接続されているシャフト1と、該シャフト1に取り付け
られた第1のパドル翼2と、前記シャフト1の上部に設
けられた前記第1のパドル翼2より翼径の小さい第2の
パドル翼3と、前記第1のパドル翼2と前記第2のパド
ル翼3の両端同志を繋げて構成される第3及び第4の補
助翼4とから構成され、前記第1のパドル翼2と前記第
2のパドル翼3とがシャフト1に対してある角度を有し
て配置されている。
【0011】図2は、攪拌槽6に配置された本発明の攪
拌装置5を軸方向から見たもので、第1のパドル翼2と
第2のパドル翼3とは、ある角度θのずれを有してシャ
フト1に設けられている。本実施の形態では、第1のパ
ドル翼2は、回転方向に対して第2のパドル翼3よりも
位置的に先行する構造になっている。従って、第3及び
第4の補助翼4は回転することにより、流体を液面方向
に上昇する流速成分を与える効果がある。
【0012】次に、図3により基本的な液の流れを説明
する。攪拌槽6には、流体8及び本発明の攪拌装置5が
設けられている。シャフト1が適当な回転を行うこと
で、槽底部に設けられた比較的大きな第1のパドル翼2
から吐出された流体は半径方向に旋回しながら、矢印で
示すように攪拌槽上部まで循環し、第2のパドル翼3に
より旋回成分を与えられながら翼のない台形状の空洞部
分9を下降し、再び第1のパドル翼2に戻り、吐出され
る。一方、第1のパドル翼2から吐出される流体の一部
は攪拌槽6の底部に沿って第1のパドル翼2の底部より
吸い込まれる。特に、第3及び第4の補助翼4は流体の
粘度が大きいあるいは回転数が小さいときのような場合
(層流)に、流体を液面方向に円滑に上昇させ、循環さ
せるために効果を発揮する。
【0013】次に、図1により、攪拌装置5の幾何学的
形状について詳しく説明する。第1のパドル翼2の翼径
d1は槽内径Dの1/2から3/4の範囲が好ましく、
前記第1のパドル翼2の高さh1は槽内径Dの1/4以
下の大きさであり、前記第2のパドル翼3の翼径d2は
槽内径Dの3/10から4/10の範囲の大きさであ
り、前記第2のパドル翼3の翼高さh2は槽内径Dの1
/15から1/10の範囲にあることが、攪拌装置5と
して望ましい。さらに、補助翼4の翼幅d3は槽内径D
の1/10から2/10の範囲にあることが好ましい。
また、図2に示す第1のパドル翼2と第2のパドル翼3
との角度のずれθも10°から45°の範囲にあること
が望ましい。このθは流体の粘度が大きくなるほど、大
きくする必要がある。
【0014】図4には、本実施例の攪拌装置5を具備し
た攪拌槽6(前記従来例と同一形状)での構造を示し、
図5には粒子の濃度分布の解析結果を示す。この攪拌槽
6内にも複数の邪魔板7が備えられている。本実施の形
態では、槽底と翼の間の領域に粒子の平均濃度が2以上
の領域11はほとんど存在せず、槽内全体が0.8から
1.2の粒子濃度の範囲にあり、従来例より固体粒子が
より均一に分布していることが分かる。尚、両解析では
攪拌動力を同一にするために、図4の攪拌装置5の回転
数は3.17s-1、第1のパドル翼2の翼径=0.19
5m(槽径の1/2)、第2のパドル翼4の翼径=0.
15m(槽径の3/10から4/10の範囲)、第3及
び第4の補助翼4の幅=0.039m(槽径の1/1
0)、第1のパドル翼2の高さ=0.0975m(槽径
の1/4)、第2のパドル翼3の高さ=0.0375m
(槽径の1/15から1/10の範囲)及び第1のパド
ル翼と第2のパドル翼の角度のずれθは30°の形状を
用いた。
【0015】従って、本実施の形態によれば、従来翼に
比べて同一攪拌動力で、固体粒子と液体の混合を良好に
し、反応機に適用した場合、固体粒子から液体への物質
移動をより高めるための固液の接触面積の増加を促す効
果があり、ひいては効率的な反応を行うことができる効
果がある。
【0016】図6には、図8で示した従来例のディスク
タービンと図4で示した本実施の形態の攪拌装置の混合
時間を解析した結果を示す。攪拌槽及び翼形状に関して
は前述の実施例ものと同じである。処理液の粘度は比較
的低粘度域の0.1Pa・s(100センチポイズ)で
攪拌動力を同じにするため、ディスクタービンの回転数
=6.5s-1、本実施例の攪拌装置の回転数=3.17
-1で解析した。0秒において攪拌槽の上部の一部の領
域に計算上ある濃度(=1)を発生させる。横軸はその
経過時間(秒)で、縦軸は槽内の濃度の標準偏差を平均
濃度で除した無次元数(以後これを濃度の標準偏差と称
す)である。黒抜きの▲20は従来のディスクタービン
の槽内の濃度の標準偏差の計算値で、白抜きの〇21は
本実施の形態の槽内の濃度の標準偏差の計算値である。
従って濃度の標準偏差が0に近づくほど槽内の濃度の均
一性が高い。尚、攪拌レイノルズ数は約1000である
ため、攪拌槽内の流れは乱流である。図6から早い時間
で本実施の形態の方が濃度の標準偏差が小さくなってい
ることが分かる。このことは、触媒を混入した液体を攪
拌槽に投入した場合には、本実施の形態の方が早く混合
を終了することを意味しており、液―液系の反応機に適
用した場合に効率的に反応を行える効果を生じ、反応時
間を短くできかつ製品の品質を向上できる効果がある。
【0017】図7には、他の条件での混合時間の解析結
果を示す。攪拌槽及び翼形状に関しては前述の実施の形
態のものと同じである。処理液の粘度は比較的高粘度域
の20Pa・s(20000センチポイズ)で攪拌動力
を同じにするため、ディスクタービンの回転数=8.3
-1、本実施の形態の攪拌装置の回転数=3.17s -1
で解析した。尚、攪拌レイノルズ数は約7であるため、
攪拌槽内の流れは完全に層流である。層流では流れを軸
方向に変える効果がほとんどないため、解析では邪魔板
なしの条件で行った。前述した実施の形態と同様に、0
秒において攪拌槽の上部の一部の領域に計算上ある濃度
(=1)を発生させる。横軸はその経過時間(秒)で、
縦軸は槽内の濃度の標準偏差である。黒抜きの▲20は
従来のディスクタービンの槽内の濃度の標準偏差の計算
値で、白抜きの〇21は本実施の形態の槽内の濃度の標
準偏差の計算値である。従って濃度の標準偏差が0に近
づくほど前述した実施の形態と同様に槽内の濃度の均一
性が高い。比較的高粘度では、黒抜きの▲20はかなり
時間が経過しても槽内の濃度の標準偏差は小さくなら
ず、計算範囲内では、濃度の均一化は達成されていな
い。一方、白抜きの〇21の本実施の形態の攪拌装置で
は、時間経過とともに、濃度の標準偏差は小さくなって
おり、濃度の均一化が行われていることが分かる。この
ことは、触媒を混入した液体を攪拌槽に投入した場合に
は、本実施の形態の方が高粘度においても早く混合を終
了することを意味しており、液―液系の反応機に適用し
た場合に効率的に反応を行える効果を生じ、反応時間を
短くでき、製品の品質を向上できる効果がある。また、
ある程度滞留時間を必要とする流通系の反応機に適用し
た場合でも、低粘度からある程度の高粘度域まで完全混
合槽を達成できる効果があり、多段化が必要な場合にお
いても、本実施の形態の一種類の攪拌装置でプロセスを
達成できるので、コストメリットがある。
【0018】
【発明の効果】本発明によれば、従来翼に比べて同一攪
拌動力で、固体粒子の浮遊を容易にし、固体粒子と液体
の混合をより良好にし、反応機に適用した場合、固体粒
子から液体への物質移動をより高めるための固液の接触
面積の増加を促す効果があり、ひいては効率的な反応を
行うことができる効果がある。
【0019】また、本発明によれば、液―液系の反応機
に適用した場合には、従来翼に比べて混合時間が短いの
で、反応時間を短くでき、製品の品質を向上できる効果
がある。さらに、比較的高粘度域においても従来翼より
も早く混合を終了することができるので、効率的に反応
を行える効果があり、反応時間を短くでき、製品の品質
を向上できる効果がある。
【0020】また、本発明によれば、ある程度滞留時間
を必要とする流通系の反応機に適用した場合でも、低粘
度からある程度の高粘度域まで完全混合槽を達成できる
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す攪拌装置の便宜的
な断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す攪拌装置の軸方向
から見た図である。
【図3】本発明の攪拌装置を用いた攪拌槽内の流体の流
れを示す便宜的な断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す攪拌槽の便宜的
な断面図である。
【図5】本発明の攪拌装置を用いた攪拌槽内の固体粒子
の濃度分布を示す解析結果を示す図である。
【図6】本発明の攪拌装置と従来例のディスクタービン
の混合時間の解析結果の比較を示す図である。
【図7】本発明の攪拌装置と従来例のディスクタービン
の他の条件での混合時間の解析結果の比較を示す図であ
る。
【図8】従来例のディスクタービンを用いた攪拌槽の便
宜的な断面図である。
【図9】従来例のディスクタービンを用いた攪拌槽内の
固体粒子の濃度分布を示す解析結果を示す図である。
【符号の説明】
2…第1のパドル翼、3…第2のパドル翼、4…補助
翼、5…攪拌装置、6…攪拌槽、10…ディスクタービ
ン、11…粒子の平均濃度が2以上の領域、20…ディ
スクタービンの槽内濃度の標準偏差、21…本実施例の
槽内濃度の標準偏差。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 強 山口県下松市大字東豊井794番地 株式会 社日立製作所笠戸事業所内 Fターム(参考) 4G035 AB38 AB46 AB52 4G078 AA02 BA05 CA08 DA01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体が収納される攪拌槽内に設置されて前
    記液体を攪拌する攪拌装置において、 回転駆動源に接続されて回転駆動されるシャフトと、前
    記攪拌槽の槽底に近接して前記シャフトに固定された第
    1のパドル翼と、該第1のパドル翼の上部に前記シャフ
    トに固定され、前記第1パドル翼よりも翼径が小さい第
    2のパドル翼と、前記第1のパドル翼と前記第2のパド
    ル翼の両端同志を繋げて構成される第3及び第4の補助
    翼とを備え、前記パドル翼同志が前記シャフトに対して
    ある角度を有して配置することを特徴とする攪拌装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の攪拌装置において、前記第
    1のパドル翼の翼径が槽内径の1/2から3/4の範囲
    の大きさであり、前記第1のパドルの翼高さが槽内径の
    1/4以下の大きさであり、前記第2のパドル翼の翼径
    が槽内径の3/10から4/10の範囲の大きさであ
    り、前記第2のパドル翼の翼高さが槽内径の1/15か
    ら1/10の範囲の大きさであることを特徴とする攪拌
    装置。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の攪拌装置において、
    前記第3及び第4の補助翼の翼幅が槽内径の1/10か
    ら2/10の範囲の大きさであることを特徴とする攪拌
    装置。
  4. 【請求項4】請求項1又は2又は3記載の攪拌装置にお
    いて、前記第1のパドル翼と前記第2のパドル翼の前記
    シャフトに対する角度が10°から45°の範囲にある
    ことを特徴とする攪拌装置。
  5. 【請求項5】請求項4記載の攪拌装置において、回転方
    向に対して前記第1のパドル翼よりも前記第2のパドル
    翼のほうが、位置的に遅れていることを特徴とする攪拌
    装置。
  6. 【請求項6】請求項1乃至5の何れか一つに記載の攪拌
    装置において、前記攪拌槽内に複数の邪魔板を有するこ
    とを特徴とする攪拌装置。
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